2024年6月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また、当社グループとして必ずしもそのようなリスクには該当しない事項につきましても、投資判断の上で、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する積極的な情報開示の観点から記載しています。

 当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、その発生の予防及び発生時の対応に努力する方針ですが、当社グループの経営状況及び将来の事業についての判断は、本項及び本書中の本項以外の記載を慎重に検討した上で行われる必要があると考えています。なお、以下の事項における将来に関する事項については、提出日時点において当社グループで想定される範囲で記載したものです。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクの全てを網羅するものではありません。

 

1.事業を取り巻く経営環境に関するリスク

経済状況の影響等について

 当社グループが属する不動産業界は、景気動向、金融環境並びに不動産市況等の経済環境や不動産関連税制の改廃等の影響によって、企業業績が大きく左右される傾向があります。特に、土地代金及び建築費等の変動や金利の動向などが価格に影響を与え、購買者の購入意欲に影響を与えると考えられます。これらにより、顧客の資産運用型マンションの購買意欲が減退した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

2.当社グループの業態に関するリスク

(1)資産運用型マンションの販売に関するリスク

 当社グループの不動産販売事業におきましては、主として資産運用を目的とした顧客にマンションを分譲しておりますが、マンションによる資産運用には、入居率の悪化や家賃相場の下落による賃貸収入の低下、金融機関の貸出条件の変更や金利の上昇による借入金返済負担の増加等、収支の悪化につながる様々な投資リスクが内在します。当社グループは、顧客に対し、これらの投資リスクについて十分説明を行い、理解していただいた上で売買契約を締結するよう営業社員の教育を徹底すると共に、入居者募集・集金代行・建物維持管理に至るまで一貫したサービスを提供することで顧客の長期的かつ安定的なマンション経営を全面的にサポートし、空室の発生や資産価値下落等のリスク低減に努めております。しかしながら、営業社員の説明不足等により、顧客の投資リスクに対する理解が不十分なままマンションを購入されたこと等により、訴訟等が発生した場合、当社グループの信頼が損なわれ、当社グループの事業に影響が及ぶ可能性があります。

 また、販売チャネルにつきましては、主に既存顧客からの紹介による新規契約及び既存顧客による買増に依存しております。そのため、当社グループの信頼が損なわれた場合には、新規契約の販売件数の継続的拡大という点において、課題に直面する可能性があります。

 さらに、資産運用型マンションの販売方法について、当社としては、法令遵守等のための体制を整えておりますが、同業他社の強引な販売方法等が社会問題に発展する可能性があり、それに伴う法的規制等が強化され、その対応に時間や費用を要する場合、資産運用型マンションの販売計画の遂行に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 不動産販売事業につきましては、2024年6月期において連結売上高の72.1%を占めており、将来において、不動産関連税制や所得税関連等の税制が変更された場合に、不動産取得コストの増加、顧客の購買意欲、マンションオーナー等の事業意欲の減退等により、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)仕入に関するリスク

 仕入には、「完成マンションの一棟仕入(専有売買)」と「土地を取得しての開発」、「新築・中古の戸別仕入」の形態があります。

① 仕入コストについて

 当社グループは、東京23区内の物件を中心に仕入れておりますが、いずれの仕入形態におきましても地価の上昇、建築費の上昇により仕入コストが上昇し、計画どおりに仕入れできなかった場合や当該上昇分を販売価格へ転嫁できなかった場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 仕入決済について

 当社グループは、販売用不動産に関して取引先であるゼネコン、建設会社等より竣工後に仕入れを行っております。資金決済は、概ね、竣工後3か月程度であることから、販売用不動産仕入後、営業部門が販売を行い、仕入資金を回収いたします。したがって、資金決済までの期間、資金負担は仕入に係る手付金に限られますが、販売戸数の多寡等の事由により販売用不動産の販売期間が資金決済期間を超える場合は、残物件に係る資金・在庫負担が発生します。その場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 事業用地について

 当社グループが行っている、東京23区内をマーケットとした資産運用型マンションの販売は、販売用不動産の調達力の優劣や当該地域における地震その他の災害、地域経済の変動等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社は、事業用地の売買契約の際、一定の調査を行った上、土壌汚染等の問題がないことを確認しておりますが、着工後に問題が発覚したり、売主が瑕疵担保責任を遂行しない場合、プロジェクト開発計画に支障をきたし、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)建築に関するリスク

① 建築工事について

 当社グループの不動産販売事業におきましては、建築工事を建設会社に外注しております。外注先である建設会社の選定にあたっては、施工能力、施工実績、財務内容等を総合的に勘案したうえで行い、また、建設会社の管理においては、建設会社現場所長、監理者(設計事務所責任者)、サブコン(電気・設備業者責任者)、当社物件担当者で、概ね隔週で行う定例会議による進捗把握、仕様確認、条例、基準法等の法定事項実施の確認を行っております。また、監理者のみならず当社一級建築士による試験杭の立会い及び特定法定検査の立会いを行い、ダブルチェックによる品質管理の徹底を行っております。

 しかしながら、外注先である建設会社に倒産等の予期せぬ事象が発生した場合、工事中の事故や、物件の品質に問題が発生した場合には、計画どおりの開発に支障をきたす可能性があり、また、施工完了後、建設会社の経営破綻等が発生し、工事請負契約に基づく建設会社の契約不適合責任が履行されなかった場合、当社に補修等の義務が生じ、想定外の費用が発生して、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 近隣住民の反対運動について

 当社は、マンションの建設にあたり、関係する法律、自治体の条例等を十分検討したうえ、周辺環境との調和を重視した開発を企画するとともに、周辺住民に対する事前説明会の実施等適切な対応を講じており、現在まで、近隣住民との重大な摩擦は発生しておりません。しかしながら、今後、建設中の騒音、電波障害、日照問題、景観変化等を理由に近隣住民の反対運動が発生する可能性があり、問題解決のための工事遅延や追加工事費用が発生する場合や、プロジェクト開発が中止に至る場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 建築コストについて

 当社グループの不動産販売事業におきましては、建築コストは仕入コストとともに売上原価の主要項目でありますが、建築資材の価格や建築工事にかかる人件費が想定を上回って上昇した場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)引渡し時期による業績変動について

 当社グループの不動産販売事業におきましては、マンション等の売買契約成立後、顧客への引渡しをもって売上を計上するため、その引渡し時期により、想定した売上や収益が翌期に繰り越される可能性があり、当社グループの有価証券報告書等に記載される当社グループの経営数値に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)在庫について

 当社グループは、中期的な経済展望に基づき、マンションの企画・開発を行い、物件の早期完売に努めておりますが、急激な景気の悪化、金利の上昇、不動産関連税制の改廃等により、販売計画の遂行が困難となった場合、販売先の確定に時間を要した場合には、プロジェクトの遅延や完成在庫の滞留が発生し、資金収支の悪化を招く可能性があります。

 また、当社グループは「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号 2019年7月4日)を適用しております。これに伴い、時価が取得原価を下回った販売用不動産、仕掛販売用不動産の評価損失が計上された場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)賃貸管理物件について

 当社グループの不動産管理事業のうち、賃貸管理におきましては、マンションの所有者より賃借してテナントに賃貸するサブリース業務及び賃貸管理業務がありますが、サブリース物件の入居率の低下により入居者からの不動産賃貸収入が想定以上に減少した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)法的規制等について

① 法的規制について

 当社グループが行う不動産取引は、宅地建物取引業法、建物の区分所有等に関する法律、建築基準法、都市計画法、建設業法、建築士法、国土利用計画法、借地借家法、消防法、住宅の品質確保の促進等に関する法律、マンションの管理の適正化の推進に関する法律等、不当景品類及び不当表示防止法、不動産の表示に関する公正競争規約により、法的規制を受けております。

 東京23区を中心に、ワンルームマンション規制が条例等に定められております。具体的には、25㎡以上等への最低住戸面積の引き上げ、一定面積以上の住戸の設置義務付け、狭小住戸集合住宅税の導入等がありますが、当社グループでは、これらの条例等に沿った商品開発を行っているため、現時点において、かかる規制が当社グループの事業に影響を及ぼす可能性は少ないものと認識しております。しかしながら、今後さらに各自治体による規制強化が進められた場合は、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。当社は、当該指導・規制への対応を図っておりますが、不動産取引関連法令の制定、既存の法令が改廃された場合等には、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 瑕疵担保責任について

 当社グループは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、新築住宅の構造上主要な部分及び雨水の浸水を防止する部分について10年間の瑕疵担保責任を負っております。万が一、当社グループの販売した物件に重大な瑕疵があるとされた場合、その直接的な原因が当社グループ以外の責任によるものであっても、当社グループは売主として瑕疵担保責任を負うことがあります。当社グループは特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律において規定される住宅瑕疵担保責任保険を付保しておりますが、発生した瑕疵担保責任が保証限度を超える可能性や当該保険の適用対象外となる可能性があります。その結果、補修工事費の増加や当社グループの信用力低下により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 許認可等について

 当社グループの主要事業におきましては、事業活動に際して、以下の免許、許認可等を取得しております。現在、当該免許及び許認可等が取消となる事由は発生しておりませんが、今後、何らかの理由によりこれらの免許、登録、許可の取消等があった場合、当社グループの主要事業の活動に支障をきたすとともに業績に重大な影響を与える可能性があります。

許認可等の名称

会社名

許認可番号等/有効期間

規制法令

免許取消

条項等

宅地建物取引業者免許

㈱デュアルタップ

東京都知事(4)第86482号

2021年9月23日~2026年9月22日

宅地建物取引業法

第5条、

第66条等

マンションの管理の適正化の推進に関する法律に基づくマンション管理業者登録

㈱デュアルタップ

コミュニティ

㈱建物管理サービス

 

国土交通大臣(2)第034338号

2023年1月31日~2028年1月30日

国土交通大臣(2)第033600号

2019年11月10日~2024年11月9日

マンションの管理の適正化の推進に関する法律

第47条、

第83条等

 

④ 海外での不動産販売活動について

 当社グループは、海外不動産事業において国内投資家に海外の不動産を紹介する事業を行っておりますが、国によっては、外国人による投機的な不動産購入を抑制するため、外国人が不動産を購入する際の最低購入価格及びキャピタルゲイン課税の引上げ等、規制が強化されている国があります。本規制により国内投資家の投資意欲が衰退した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、国内不動産を主にシンガポール、台湾、上海等の投資家に販売しており、為替変動や各国の不動産関連法令等の改正等により、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)新規事業への参入について

 当社グループは、新規事業へ積極的に参入していく方針であります。その過程において、人材、内部体制の構築、情報収集及び広告宣伝に先行的に費用を支出し、利益率が低下する可能性があります。また、事業環境の影響等により新規事業が計画どおりに進まない場合等には、当社グループの業績及び事業の展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

3.当社事業体制に関するリスク

(1)小規模組織であることについて

 当社グループは2024年6月30日現在、従業員215名と小規模組織であり、内部管理体制についても組織の規模に応じたものとなっております。当社グループは今後、業容拡大に応じて人材の採用を行うとともに社内管理体制を構築していく予定です。しかしながら、当社グループが事業の拡大に対して適切かつ十分な組織構築に至らなかった場合、当社グループの事業遂行及び拡大に支障が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)人材の確保・育成について

 当社グループが展開する不動産販売事業、海外不動産事業は、不動産関連法令の法的規制の中、競争力のあるサービスの提供が求められており、高度な知識、経験、指導力を持った優秀な人材が最も重要な経営資源であります。当社グループにおいては、優秀な人材の確保、育成及び定着が不可欠であり、OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)、専門講師による勉強会を実施し、人材の育成に努めております。

 しかしながら、必要とする人材が十分に確保できない場合、事業展開に伴う人材確保・育成が順調に進まなかった場合、当社グループの役職員が社外に流出した場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)個人情報の管理について

 当社グループがお預かりしているお客様の個人情報については、外部侵入防止システムの採用、データアクセス権限の設定、個人情報保護規程等による規程化、コンプライアンス委員会による規則遵守の徹底とセキュリティ意識の向上を目的とした教育、研修等による周知徹底等により、細心の注意を払い取り扱っておりますが、個人情報の不正利用、その他不測の事態によって重要な情報が外部に漏洩した場合、当社グループへの信用の低下や損害賠償請求等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)代表取締役社長臼井貴弘への依存について

 当社グループでは、役員及び幹部社員の情報の共有化や権限の委譲を進め、創業者である代表取締役社長臼井貴弘に過度に依存しないような経営体制の整備を行っておりますが、同氏は、当社設立以来、当社グループの経営方針、経営戦略、資金調達等、事業活動の推進にあたり重要な役割を担ってまいりました。特に当社グループの主力事業である不動産販売事業における方針の決定については、同氏の資質に依存している部分があります。同氏が職務を遂行できなくなるような不測の事態が生じた場合、当社グループの業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

4.その他のリスク

有利子負債への依存について

 当社グループの有利子負債残高は以下の表のとおりであります。当社グループは、不動産販売事業における土地の仕入れ及び建築費の一部に係る開発資金並びに固定資産を主に金融機関からの借入金によって調達しております。当社グループは特定の金融機関に依存することなく、個別案件ごとに販売計画の妥当性を分析したうえで借入金等の調達を行っておりますが、販売の不振、金融情勢の変動によって金利上昇や借入金の調達が困難になることがあり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

区分

2020年6月期

(連結)

2021年6月期

(連結)

2022年6月期

(連結)

2023年6月期

(連結)

2024年6月期

(連結)

有利子負債残高

(千円)(A)

1,578,806

4,948,041

2,578,206

2,603,622

3,770,840

総資産額

(千円)(B)

4,202,090

7,387,339

5,034,147

5,277,312

5,996,235

有利子負債依存度

(%)(A/B)

37.6

67.0

51.2

49.3

62.9

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つとして位置付けており、将来の企業成長と経営基盤の強化のための内部留保を確保しつつ、株主に継続的に配当を行うことを基本方針としております。

 また、株主の皆様の日頃のご支援に対する感謝の気持ちを表すとともに、当社株式の投資魅力を高め、より多くの皆様に保有いただくことを目的として、株主優待制度の新設し、規定株式数(100株)以上の株主に対してQUOカード4,000円分、継続保有期間1年以上の株主に対して追加株主優待QUOカード1,000円分を年1回贈呈することを決定いたしました。

 当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回を基本方針としており、決定機関は株主総会であります。

 なお、当社は、「取締役会の決議により、毎年12月31日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。

 上記方針に基づき、当事業年度の業績を勘案し、期末配当は1株当たり12.50円の配当を実施することを決定しました。今後は、確実に配当額を増やしていく体制を敷くとともに、次期事業年度につきましては、期末配当1株当たり12.50円を予定しております。

 2024年6月期より、将来の企業成長と経営基盤の強化のため、中期計画を策定し実行しておりますが、その中で「資本政策 及び 配当政策」の見直しを行う予定でおります。株主に継続的に配当を行うことを基本方針として変更せず、業績に応じて配当額を決定していく予定です。

 内部留保資金につきましては、今後の事業展開並びに経営基盤の強化、拡充に役立てることとし、将来における株主の利益確保のために備えてまいります。

 なお、基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

1株当たり

配当額

2024年9月26日

43,205千円

12.50円

定時株主総会