2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1) リスク管理体制

当社グループでは、「マテリアリティ」への対応をより確実なものとするため、リスク管理体制の整備とその高度化に努めております。

従来から当社グループでは、事業の円滑な運営を阻害するリスクについて、9つのリスク区分を設定し、リスクの把握、評価、対策を通じた全社的なリスク管理を行ってきましたが、サステナビリティ等の新たな領域のリスク管理の必要性を踏まえ、現在は、戦略の遂行において克服すべきリスクを包含した、新たなフレームワークによりリスク管理を行っております。

具体的には、戦略の遂行において克服すべきリスク領域(「戦略リスク」)において、新たに気候変動等のリスク区分を設定、また事業の円滑な運営を阻害するリスク領域(「オペレーショナルリスク」)に、従来からのリスク区分を集約し、これらのリスクを一元的に可視化、全社的に共有・議論することで、より実効的なリスク管理を行っております。

「戦略リスク」の領域では、下表の4つのリスク区分を設定し、リスクへの対策のみならず、機会への取組みを推進しております。「オペレーショナルリスク」の領域では、従来からの9つのリスク区分を設定し、継続してリスクへの対策を強化しております。

 

 

(2) リスク管理体制の運用

当社グループでは、ボトムアップ及びトップダウンの両面から、定期的にリスクを把握・評価し、リスクへの対策と機会への取組みを推進しております。

ボトムアップでの側面では、「戦略リスク」「オペレーショナルリスク」の全てのリスク区分において、各々のリスク管理部署が、リスクアセスメントによるリスクの把握、評価を通じて、優先的に対策し取組むべきリスクを特定しております。

トップダウンの側面では、ボトムアップで洗い出された優先的に対策し取組むべきリスクを参考に、経営陣としての中長期の戦略的視点や環境認識も含め、新たにリスクの把握、評価を行っております。その後、リスク対策・コンプライアンス委員会や取締役会での審議を経て、当社グループとして重点的に対策し取組むべき「重要リスク」を決定しております。

リスク対策・コンプライアンス委員会は、経営陣を中心に構成され、四半期毎に開催されております。そこでは「重要リスク」の審議やモニタリングを行っております。

 

(3) 重要リスク

当社グループとして決定した「重要リスク」は下表のとおりです。

これらのリスクの内容と対応策は「(4)重要リスクの内容と対策・取組み」に記述しております。

 

 

(4) 重要リスクの内容と対策・取組み

 

1.気候変動リスク

関連マテリアリティ

環境配慮型不動産の企画開発・運用

気候変動の緩和への貢献

影響度

<経済損失>中、<信用・評判>大

将来の見通し

内容

気候変動がもたらす風水害等の物理的リスクや、諸制度の変化等の移行リスクが顕在化した場合、当社グループの事業環境が想定を超えて変化する可能性や、リスクへの対応の不十分性が発露する可能性があり、売上高の減少や信用・評判の毀損等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対策・

取組み

当社グループでは、気候変動への対応を「マテリアリティ」として位置づけ、アクションプランを推進し、企業理念「不動産を通じて豊かな社会を実現する」を追求してまいります。

 

 

 

2.人材確保に関するリスク

関連マテリアリティ

人的資本経営の推進

影響度

<経済損失>中、<信用・評判>小

<事業継続>中

将来の見通し

内容

少子高齢化や感染症の拡大がもたらした行動変化、サステナビリティの重要性の高まり等により、当社グループを取り巻く社会構造や事業環境が大きく変化するなか、新たな価値を創造し続け、競争優位性を確保していくための原動力は人材であると考えております。人材の継続的な確保や育成ができない場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対策・

取組み

当社グループでは、長時間労働の削減や有給休暇の取得奨励はもちろん、フレックスタイム制や在宅勤務制度等、社員の多様な働き方に対応した施策を導入しております。また階層別やテーマ別での様々な研修を実施する等、社員の成長に向けた投資を推進しており、社員に選ばれる企業を目指しております。

 

3.新規事業等に関するリスク

関連マテリアリティ

収益構造の最適化

不動産×DXの推進

影響度

<経済損失>大、<信用・評判>小

将来の見通し

内容

収益構造の多様化による安定的な事業基盤の構築に向け、新規事業の立ち上げ等に取組んでおりますが、新規事業への参入には様々なリスクを伴います。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対策・

取組み

当社グループでは、リスクを極小化し、またリスクが顕在化した場合の影響を最小限にとどめるため、「事業投資等に関する規程」を制定し、その推進体制や参入・撤退基準、並びにモニタリング方法を明確化する等の内部管理体制を整備しております。また新たな関係会社の増加に備え、「関係会社管理規程」を制定し、定期的に報告を求め、適宜指示する体制を整備しております。

 

4.特定販売先・商品等への依存リスク

関連マテリアリティ

収益構造の最適化

影響度

<経済損失>大

将来の見通し

内容

当社グループは機関投資家向けの1棟バルク販売に注力しております。金利政策の変更、世界的な景気後退、地政学的リスクの顕在化等により、機関投資家の購買意欲・価格目線が低下した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対策・

取組み

当社グループでは、不動産の環境対応等により、差別化・高付加価値化等を図り、投資家への訴求力の最大化に努めております。中長期的には、新規事業やストックビジネスの強化により、景気変動等の外部環境変化に対応可能なビジネスモデルへの変革に取組んでまいります。

 

5.有利子負債への依存リスク

関連マテリアリティ

資本効率の最適化と財務健全性の両立

影響度

<経済損失>中、<信用・評判>大

<事業継続>大

将来の見通し

内容

当社グループは、物件の仕入等において、必要資金の大部分を、金融機関からの有利子負債により賄っております。そのため市場金利の上昇局面においては、資金調達コストが増加する可能性があります。また財務の安全性指標の悪化等により、資金調達に支障を来すこととなる場合には、事業継続への影響や信用・評判への影響が生じ、売上高の減少等、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対策・

取組み

当社グループでは、オフバランス開発の強化に取組むとともに、中長期的な財務戦略のもと、取引金融機関の構成の見直しやバランスシート思考の推進等により、各種財務指標の改善に取組んでおります。

 

 

6.重大な法令違反リスク

関連マテリアリティ

影響度

<経済損失>小、<信用・評判>大

<事業継続>大

将来の見通し

内容

当社グループの属する不動産業界は、宅地建物取引業法、賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律、不動産特定共同事業法、マンションの管理の適正化の推進に関する法律等、多数の法的規制を受けております。

法令対応等が疎漏した場合や法令違反が生じた場合は、業務停止等の行政処分が下される可能性があり、また信用・評判への影響から、売上高の減少等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対策・

取組み

当社グループでは、常時、法令等改正に係る情報収集に努めており、これらに迅速に対応する社内体制を整備しております。

またリスク対策・コンプライアンス委員会で審議したコンプライアンス計画に基づき、コンプライアンス研修を社員に対し定期的に行う等、コンプライアンスの徹底に努めております。

 

7.サイバーセキュリティリスク

関連マテリアリティ

影響度

<経済損失>小、<信用・評判>大

<事業継続>中

将来の見通し

内容

サイバー攻撃や不正アクセス等により、情報システムが正常に利用できない場合や個人情報等が漏えいした場合、事業継続への影響や信用・評判への影響が生じ、売上高の減少等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対策・

取組み

当社グループでは、「マテリアリティ」としてDXへの取組みを推進しており、情報セキュリティの重要性はこれまで以上に高まっております。

ハード面では、ネットワーク防御機器(UTM)の強化等を推進し、サイバー攻撃に対する防御力の向上に努めております。ソフト面では、情報セキュリティ基本方針やプライバシーポリシー等を整備し、また社員への定期的な教育・啓蒙を図ることで、組織全体のセキュリティレベルの向上に努めております。

 

8.災害・パンデミックリスク

関連マテリアリティ

影響度

<経済損失>大、<事業継続>中

<生命・身体>中

将来の見通し

内容

年初に発生した能登半島地震等の大地震や風水害等の自然災害、戦争やテロ等の人為的災害、並びに感染症の蔓延により、従業者や当社グループが保有・管理している資産が被災した場合、当社グループの事業継続や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対策・

取組み

当社グループでは、災害発生時の防災や減災を推進するため「事業継続管理規程」を制定し、各種の災害に対し、事業継続計画(BCP)を策定し、非常時の指揮命令系統、事業継続のための行動計画等を定めております。また通常時においては、同規程に基づき、定期的に大規模災害を想定した訓練を実施し、事業継続計画(BCP)に定められた対応の確認(役職員の生命や安全の確保、指揮命令系統の確立、事業復旧等)を行っております。

 

 

 

9.品質不良に関するリスク

関連マテリアリティ

安全・安心な不動産の提供

影響度

<経済損失>大、<信用・評判>大、

<生命・身体>小

将来の見通し

内容

不動産開発事業において設計・施工等の不備が発生した場合、またプロパティマネジメント事業において管理上の不備が発生した場合は、当社グループの信用の毀損、想定外の費用の発生及び開発計画の遅延が生じる等、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対策・

取組み

不動産開発事業においては、一定の信用力・技術力を有する第三者に建物の設計・施工業務等を発注し、その設計・施工における品質を確保するため、当社グループにて独自の品質基準を定め、設計・施工業務等の発注先による遵守徹底を図るとともに、発注者として施工状況の確認及び品質検査を実施しております。プロパティマネジメント事業においては、業務内容に応じたマニュアルを策定の上、研修・OJTを通じて業務品質を確保しております。

 

10.原材料費・人件費高騰リスク

関連マテリアリティ

影響度

<経済損失>大

将来の見通し

内容

当社グループの各事業は、建築工事費、エネルギーコスト、人件費等、各種原価の価格変動にさらされております。

当社グループの各事業において、各種原価の上昇分を販売価格や賃料等に反映できず、収益性が悪化した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

対策・

取組み

当社グループでは、各種原価の価格変動の要因・動向を注視し、適切な対策を講じることにより、各種原価のコントロールに努めております。

 

(5) 危機管理体制

当社グループでは、リスク事象が発生した場合に備え「リスク事象報告」制度を設け、リスク管理部署による適切な原因分析と再発防止策の実施を推進しております。

またリスク事象が当社の定める緊急事態に相当する場合には、事業継続管理体制に基づく緊急対策本部が設置され、経営陣の指揮の下、トラブル対応、再発防止対応がなされる体制を整備しております。

配当政策

3 【配当政策】

当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つと位置付けております。剰余金の配当については、中長期的な事業発展のための内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続することを基本とし、事業収益及びキャッシュ・フローの状況を勘案して決定します。

また、当社は、期末配当として年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。その他年1回中間配当を行うことができる旨を定款で定めております。これらの剰余金の配当の決定機関は、取締役会であります。

内部留保資金については、既存事業の強化や新規事業展開等、今後の事業展開に向けて活用してまいります。

利益配分につきまして2022年中期経営計画で、配当性向については30%を基本方針とする一方で、事業拡大に向けて非レジデンス領域をはじめ出資やM&A等エクイティでの投資の可能性を踏まえ、投資状況により配当やその他還元に充当すると開示しております。2023年12月期の期末配当金につきましては、2023年11月に上方修正した業績予想を達成し、非レジデンス領域等へのエクイティ投資動向、財政状態等を総合的に勘案した結果、普通株式1株当たりの配当金を52円50銭から47円50銭増配し、100円00銭としております。また、2023年12月期以降においての1株当たり配当金は100円00銭をベースとし、業績及び投資状況に応じた利益配当を行います。

なお、2024年2月22日付取締役会において、上記基本方針に鑑み、当事業年度に係る剰余金の配当を次のとおり決議しております。

 

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たりの配当額

(円)

2024年2月22日

799,641

100.00

取締役会決議