2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループは、事業運営及び展開において様々なリスクの発生が想定され、それらの想定されるリスクを事前に認識し、事実上可能な範囲で想定されるリスクの対応策を検討・実施しております。しかし、全てのリスクを低減または排除することは困難であり、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態、社会的信用等に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、以下において重要なリスクと判断した事項を記載しておりますが、事業に係るリスクをすべて網羅するものではありません。また、将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において判断したものであり、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、経営成績等の状況に与える影響度につきましては、現時点では合理的な予測が困難であり、記載しておりません。

 

(1)事業環境変化に関するリスク

[概要]当社グループは、自動車関連資材及び水処理関連資材を主力製品としております。これらの市場は、グローバルなサプライチェーンに組み込まれており、日本、北米、アジア地域をはじめとする世界経済の変動が、製品の販売動向等に影響する可能性があります。

 特に、米国政府の相互関税政策が発動された場合の影響は大きく、サプライチェーンへの重大な影響が及ぶものと懸念されております。

 また、当社グループが主力とする分野では競合先が存在しており、今後競争が一段と激化した場合には、販売数量の減少及び採算の悪化により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、環境変化に対応するため、自動車関連資材では海外連結子会社と緊密に連携し、最適地生産によるサプライチェーンの強化、グローバルな拡販活動、相互バックアップ体制の構築等を組み合わせ、付加価値向上による商品力の強化に努めてまいります。

 水処理関連資材では、増加する世界の水処理需要に応えるため、新小松島工場の稼働により、特に海水の淡水化や純水を製造する際に使われる「逆浸透膜支持体紙」の生産能力を増やし、生産性の向上に努めてまいります。

 

(2)安定調達に関するリスク

[概要]当社グループは、主要原材料の木材パルプ、リンターパルプなどを海外(北米、南米、欧州など)から調達しているため、原材料の不安定な生産及び為替の影響等を強く受けるほか、国内メーカーの生産停止等の影響を受ける可能性があります。

 こうした場合には、当社の生産調達体制に大きな影響を受け、当期の業績が低下することが懸念されます。

[対応]当社グループは、主要原材料の代替材料の検討や調達における複数購買等による国内外にわたる調達先の分散化及び適正在庫の確保等、グループ全体で安定的な調達に取り組む体制を構築しております。

 

(3)人財確保・育成に関するリスク

[概要]当社グループは、中長期的な企業成長のためには優秀な人財の確保・育成が重要であると認識しています。

 しかし、少子高齢化に伴う労働人口減少による人材確保難、人材の流動化に伴う社外流出の増加、人事制度の見直し遅れによるエンゲージメントの低下等により、人的資本の充実や高度技術の承継に支障が生じ、安定的な成長に影響が及ぶ可能性があります。

[対応]当社グループは、多様な人財を確保するため、新卒採用においてはインターンシップなどに注力するとともに、専門性を持つ人財の中途採用のため引き続き積極的に通年採用を実施してまいります。

 また、幹部人財の育成プログラムを導入するとともに、ワークライフバランスの充実に向けた多様な働き方や健康経営への積極的な取り組みの推進等、エンゲージメントの向上に注力してまいります。

 

(4)事業ポートフォリオに関するリスク

[概要]当社グループは、自動車関連資材及び水処理関連資材の製造・販売を主力の事業分野としております。

 自動車エンジン用濾材やクラッチ板用摩擦材等の自動車関連資材は、今後、電気自動車や燃料電池車等の普及拡大が予想されるため、需要が大きく減少する可能性があります。

 また、水処理関連資材については、新規参入企業や既存競合他社からの販売攻勢により、市場シェアが大きく減少する可能性があります。こうした状況が発生した場合には、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

[対応]当社グループは、主力の事業分野に依存することに伴う事業ポートフォリオリスクを軽減するため、当社の有する製品開発力や生産技術力を活かし、顧客ニーズに対応する高付加価値製品を提供してまいります。

 特に、今後の自動車のEV化進展を見据え、自動車動力源の電動化に伴い発生する熱に対応する断熱材ブランド「M-thermo」の販路拡大によるサーマルマネジメント分野を強化する等、新事業の創出や事業領域の拡大により、事業ポートフォリオの分散化を図ってまいります。

(5)自然災害・パンデミックに関するリスク

[概要]当社グループは、徳島県内に国内生産拠点の全てが集中しているため、大規模地震による津波の発生懸念及び地球温暖化による大型台風や異常渇水等の自然災害発生頻度が高まっている状況下において、生産活動に甚大な被害が発生する可能性があります。

 また、感染症の世界的な流行拡大等によるパンデミックの発生により、サプライチェーンの寸断や従業員の出勤停止等による工場の稼働不能に陥る可能性があります。

 このような事態が発生した場合には、生産能力の著しい低下や設備の復旧に伴う多大な費用の発生が見込まれ、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、「緊急時対応マニュアル」に基づき、大規模地震等の災害発生時にも事業活動を継続し、製品の安定供給を図るためBCP(事業継続計画)を策定しており、定期的に見直しを行うとともに、従業員や家族の安否確認、災害対応備蓄品等を備え、定期的な訓練及び設備の点検を実施しております。

 また、感染症等のパンデミックへの対応については、基本的な感染予防対策の徹底に加え、リモートワークによる在宅勤務体制の推進、WEB会議やDXの活用等、グループ全体において可能な限りの感染防止対策に取り組んでおります。

 

(6)海外事業展開に関するリスク

[概要]当社グループは、タイ国の連結子会社において製造販売及び研究開発活動を行うとともに、中国において駐在員事務所を設置し販売支援を行っており、グローバルに事業活動を展開するにあたり、各国の法的規制、経済情勢、政情不安、パンデミックの発生等事業環境の不確実性等のリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、関係会社管理規程に基づき、海外子会社の情報収集や現地の経営環境に適した事業運営の管理強化に努めております。

 また、親会社の役員が子会社の役員に就任しガバナンスを強化するとともに、幹部社員を子会社に派遣するなど、相互連携強化による業務支援とオペレーショナルリスクの低減に取り組み、グループ管理体制の充実を図っております。

 

(7)コンプライアンスに関するリスク

[概要]当社グループは、社是である「道徳経済合一」主義のもと、企業倫理規範を定めてコンプライアンス経営の徹底に努めておりますが、重大なハラスメント、労働法令違反、人権問題等の重大なコンプライアンス違反が発生した場合、または産業廃棄物や工場排水汚染等、事業活動に関連する重大な法令違反等が発生した場合、行政処分等による生産活動の停止など、社会的な信用が失墜し、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、朝礼において、創業の精神、経営理念、企業倫理規範、コンプライアンスチェックなどを日々周知徹底するともに、内部通報規程を制定し、風通しの良い職場風土の醸成並びにコンプライアンスリスクの未然防止に積極的に取り組んでおります。

 また、定期的にコンプライアンス意識調査を実施し、ハラスメントの防止などの課題解決に努めるとともに、コンプライアンス情報の発信とセルフチェックの実践による、コンプライアンス教育の充実に努めております。

 

(8)品質保証に関するリスク

[概要]当社グループは、国内外のお客様に提供する多様な製品において品質不良や不正などの問題が生じた場合には、お客様や社会から当社グループの信用が失墜し、企業価値や製品ブランドを棄損するほか、損害賠償請求等が発生し、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、品質方針を定め、全員参加で品質マネジメントシステム(QMS)に取り組んでおり、設備の改修も含め、継続的な品質改善活動の実践に努めております。

 また、原材料や製品の不良発生時には品質連絡会を開催し、課題を共有するとともに、不良発生のメカニズムを徹底的に分析・評価の上、発生工程への反映及び類似工程への水平展開を行い、再発リスクの低減や発生予防に努めております。

 

(9)環境問題に関するリスク

[概要]当社グループは、サステナビリティに関する活動のうち、気候変動緩和への対応であるCO₂排出量削減や化石化エネルギーの利用低減などの活動が適切に遂行できず目標を達成できない場合、社会的評価の低下及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 また、地球温暖化への対応については、当社グループ事業と密接な関係を有する森林や河川などの環境破壊が世界規模で進んでおり、今後の事業を展開していくうえで重大なリスクと認識しております。

[対応]当社グループは、環境方針を制定し、事業活動全般を通じて地球環境に関するグローバルな社会課題の解決に貢献するための取り組みを推進するとともに、地球環境問題への取り組みを強化するため、2030年度に二酸化炭素排出量2014年対比37%削減という目標をはじめとした、環境保護に関する重要項目を設定しております。

 また、効率的で実効性の高い事業活動を推進するため、環境マネジメントシステム(EMS)の認証を取得し、環境意識向上のための教育を行うとともに、グリーン調達基準を制定し、当該基準に適合した原材料の購入等、サプライチェーン各社との緊密な連携強化による持続可能な社会の実現に努めております。

 

(10)情報管理に関するリスク

[概要]当社グループは、システム障害やコンピュータウイルスの感染、不正アクセスによるサイバー攻撃、従業員等による個人情報の漏洩、会社機密情報の流出等の情報管理リスクが発生する可能性があります。その場合、当社グループの業績、財政状態及び社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、情報セキュリティ基本方針、個人情報保護方針等を制定し、情報管理を重要な企業活動として位置づけており、情報資産を保護すべく統合セキュリティシステムを最新の状態に保つとともに、重大なセキュリティインシデント発生に備えたサイバー保険を付保しております。

 さらに、教育研修等を通じて情報セキュリティに関する重要性について周知徹底に努めております。

 

(11)知的財産権の侵害に関するリスク

[概要]当社グループは、当社グループが保有している知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、製品差別化や競争優位性が確保されず、期待される収益が失われる可能性があります。

 また、当社グループが製造または販売する製品が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該製品の回収や販売中止を求められる他、損害賠償を請求される可能性があります。その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、特許権を含む知的財産権を適切に管理する体制を整え、継続的なモニタリングを実施することで第三者による知的財産権の侵害に注意を払っております。

 また、専門家やデータベース及び調査機関を利用した調査に加え、発明協会等の研修受講による情報収集を強化することにより第三者の知的財産権の侵害防止に努めるとともに、実際に知的財産権に係る係争が発生した場合は、関係者と協力して事業への影響を最小限にとどめるよう努めてまいります。

 

(12)サプライチェーンの人権等に関するリスク

[概要]当社グループは、世界的な人権尊重の意識が高まる中、事業に関わるすべての人々の人権を侵害する場合や人権を軽視した事象が発生した場合には、サプライチェーンの寸断、訴訟などの法務リスクが発生し、社会的信用の失墜、あるいはお客さまとの取引停止や損害賠償責任等により、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

[対応]当社グループは、企業倫理規範において「人権の尊重および差別の禁止」を明確にし、人権方針を制定する等、企業としての人権尊重に努めております。

 また、国内外の様々なサプライヤーとの連携を強化し、人権デューディリジェンスを定期的に実施することにより、取引の透明性を確保する等、人権に関するリスクの回避・低減に努めております。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題であると認識しており、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、業績及び配当性向等を総合的に勘案して剰余金の処分を行うことを基本方針としております。

 回数に関する基本方針は、中間と期末の年2回としております。

 剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。なお、当社は、「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。

 当社は、2025年6月26日開催予定の定時株主総会の議案(決議事項)として「定款一部変更の件」を上程しており、当該議案が承認可決されると、「剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項について、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる。」旨を新たに定款に定めることになります。配当の回数については、中間と期末の年2回とする基本方針に変更はありません。剰余金の配当の決定機関については、中間配当及び期末配当ともに取締役会となる予定です。

 当事業年度の配当金につきましては、財務状況等を総合的に勘案し、誠に遺憾ながら、中間配当及び期末配当ともに無配とさせていただきます。