2025年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 1,907 100.0 75 100.0 4.0

事業内容

3【事業の内容】

 当社は、お客様相談室または製品問い合わせセンター等のコールセンター部門や販売促進活動を行うマーケティング部門を所有するクライアントを対象に、クラウドサービスの開発と提供を行っております。コールセンター運営に必須であるIP(※1)電話交換機システムや顧客情報管理システムの他、業務効率化を促進する各種システム等、企業とユーザーとのコミュニケーションデータをシームレスにつなげるクラウドサービスを、インターネット網を介して月額料金制で提供しております。

 クラウドサービスは、企業が個別にシステム構築をするのではなく、同じシステムをインターネット経由で共同利用することにより大規模な設備投資が不要になるとともに、導入コストの低減及び導入期間の短縮が可能となります。また、業務の変動に合わせ「必要なときに必要な分だけ」利用できるため、コストの最適化を実現できます。さらに、導入後に専門のエンジニアが必要となるシステム保守やバージョンアップなどの運用・管理作業も、月額費用の範囲内で当社にて対応しております。

当社サービスの利用イメージは、次のとおりであります。クライアント企業は当社が開発したサービスを利用して、エンドユーザー向けのコールセンターサービスを提供することが可能となります。

 

 

 当社のサービスは、テレマーケティング事業者やBPO事業者を中心に、メーカー、小売、金融等、様々で、5席前後の小規模コールセンターから300席超の大規模コールセンターまで規模を問わず、豊富な導入実績をもっております。また、コールセンターに必要なサービスはすべてワンストップで提供できる体制をとっており、クライアントのサービス導入にかかる手間や初期コストを抑え、簡易にシステムを連動させることが可能です。

 また、これまでの導入実績から多くのナレッジを蓄積しており、システム構築のみならず、通信事業者とのスケジュール調整等の導入時のサポートや業務開始後の統計レポート分析等の業務改善サポートを併せて実施しており、クライアントに密着したサービス提供を行うことで、企業の生産性向上や業務効率改善に貢献しております。

 

当社のクラウドサービスは、以下のサービスから成り立っております。

なお、当社は単一セグメントとしてクラウドサービス事業を営んでおり、セグメントごとの記載はしておりません。

 

 

■IP電話交換機システム(PBX/CTI(※2))

(1)@nyplace(エニプレイス)

 世界・国内コンタクトセンター市場でトップクラスのシェアを誇るAVAYA(※3)社製IP電話交換機を採用しており、高機能で堅牢性と安定性が特長のハードフォン型コールセンターシステムであります。なお、在宅勤務下でも利用可能なソフトフォン(※4)型も選択可能です。また、オプションとしては、通話録音システム「Packet Folder」やAI技術を搭載したリアルタイム音声認識(※5)システム「AmiVoice Communication Suite provided by コラボス」の提供も行っており、通話内容の自動テキスト化や感情認識による通話品質自動評価などの機能もご利用いただけます。

 価格体系は、設計・設定等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用席数の変更、オプション機能の追加、通話実費等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(2)COLLABOS PHONE(コラボスフォン)

 主に小・中規模コールセンター向けに、Asterisk(※6)ベースで開発した自社開発のコールセンターシステムであります。パソコンとインターネット環境があれば手軽に利用できるため、「@nyplace」よりも低価格、短納期での導入が可能でありながら、「@nyplace」と同等の基本機能を搭載しており、低コストで本格的なコールセンターシステムを導入できます。電話機本体は不要で、在宅勤務下でも利用可能なソフトフォン型で提供しております。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用プランの変更、オプション機能の追加、通話実費等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(3)VLOOM(ヴルーム)

 プラットフォームにAWS(※7)を採用した完全冗長化構成の自社開発AIコールセンターシステムであります。顧客とオペレーターの通話をリアルタイムで音声認識し、通話をテキスト化する機能や通話の自動要約機能を搭載しており、AI技術を活用したコールセンター運営により、業務の効率化を実現します。また、オペレーターと管理者間の情報伝達を円滑にするテキストチャット機能搭載のほか、マルチデバイス対応やロケーションフリーによる利便性の高さも兼ね備えております。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用プランの変更、オプション機能の追加、通話実費等によって、月額利用料が変動いたします。

 

■顧客情報管理システム(CRM)

(4)COLLABOS CRM(コラボスCRM)

 お客様から電話を受ける受電型のコールセンター業務に特化した顧客情報管理システムであります。インターフェイスを特長としており、電話、メール対応、Web問い合わせの一括管理が可能なほか、オプションとして、発信者の顧客情報を画面上に自動表示させるポップアップ機能等も搭載しております。また、「@nyplace」や「COLLABOS PHONE」「VLOOM」と併せて提供することで、業務効率化や顧客満足度向上を図ることが可能であります。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用ID数の変更、オプション機能の追加等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(5)COLLABOS CRM Outbound Edition(コラボスCRM アウトバウンド エディション)

 テレセールスなど発信型のコールセンター業務に特化した顧客情報管理システムであります。架電先リストの作成や架電結果レポートをはじめ、アウトバウンド業務に特化した機能を搭載しております。オプションとして、「@nyplace」や「COLLABOS PHONE」と併せて利用することで、架電先へ自動発信し、不応答の場合は自動的に次の架電を行うプログレッシブ機能等も搭載しており、手作業での架電作業と比べて効率化を実現できます。主に、サービスサポートのフォローコール業務、テレマーケティング業や金融業のアウトバウンド業務に提供をしております。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用ID数の変更、オプション機能の追加等によって、月額利用料が変動いたします。

 

■業務効率化を実現する付加的サービス

(6)GROWCE(グロウス)

 顧客情報管理(CRM)システムにマーケティングの機能を搭載した統合CRMマーケティングシステムであります。コールセンターで収集した顧客情報や応対内容等のオフライン情報と、Webマーケティング部門に集まるサイト閲覧履歴や一斉配信メール後の開封率等のオンライン情報を一元管理することが可能で、コールセンターで収集した情報をマーケティング活動に繋げることで、コールセンターの売上向上に貢献します。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用ID数の変更、オプション機能の追加等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(7)UZ(ウズ)

 独自開発AIエンジンを搭載したAIマーケティングシステムであります。コールセンターで蓄積される通話録音データから顧客の興味・関心をAIで解析し、「興味関心キーワード」を抽出し、その抽出結果を基に生成AI(※8)の活用により、広告テキストやメルマガ、トークスクリプト等が自動作成されるシステムです。生成AIと連携させることで、抽出した「興味関心キーワード」を基に、簡単に様々な例文が作成可能になり、効果的なVoC分析(※9)やマーケティング施策の実施に大きく貢献します。

 価格体系は、設計・設定等に係る初期費用に加え、アップロードする音声データ量(時間)に応じた月額プラン型を採用しております。

 

(8)GOLDEN LIST(ゴールデンリスト)

 AIによる顧客分析・予測を備えたデータマイニングツールであります。企業が保有する購買履歴等の顧客データを当社独自の統計解析技術で解析・分析することにより、購買意欲の高い顧客へ向けた効果的かつ効率的なアウトバウンド施策の実行が可能になります。ダイレクトメール送付やアウトバウンドコールにおける費用対効果の向上のほか、休眠顧客の復活や解約予兆の事前察知等、様々な局面で効果を発揮します。

 価格体系は、解析するデータ件数によるプランごとの従量課金制のほか、月額利用課金型を採用しております。

 

(9)AmiVoice Communication Suite provided by コラボス

(アミボイス コミュニケーション スイート プロバイデッド バイ コラボス)

 AI技術を搭載したリアルタイム音声認識システムであります。通話内容を自動でテキスト化し回答候補を表示することで、応答速度の向上を実現するほか、感情認識による通話品質の自動評価も可能となります。

 価格体系は、設計・設定等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用席数の変更等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(10)Packet Folder(パケットフォルダー)

 高精度な「@nyplace」用音声通話録音システムであります。パケットキャプチャ方式(※10)を採用しているため、通話単位で正確な録音が可能となり、音声ファイルの検索もでき、通話品質の向上を実現できます。

 価格体系は、設計・設定等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用席数の変更等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(11)Afullect(アフレクト)

 コンタクトセンターにおいて、瞬間的に呼量(※11)が増加し、電話がつながらない状態となる「あふれ呼」を防止するためのサービスであります。あふれ呼の収集・分析が可能で、あふれ呼時のIVR(※12)や留守録機能、SMS送信等の自動応答機能を搭載しており、機会損失を可能な限り防止するコールバック支援システムであります。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、電話番号数の変更等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(12)CollasQ(コラスク)

 社外向け、社内向けの両方で利用できるFAQ(※13)情報蓄積システムであります。頻度の高い問い合わせとその回答内容を企業ホームページのよくある質問として外部公開することで、ユーザーの自己解決を促したり、内部FAQとして、オペレーターが回答する際の検索システムとしての利用が可能です。

 価格体系は、プランごとの月額利用課金型を採用しており、利用ID数の変更等によって、月額利用料が変動いたします。

 

〔用語解説〕

※1.IP

インターネット上で通信相手を特定するためのIPアドレスに基づいて、パケット(データ通信ネットワークを流れるデータの単位で、伝送されるデータ本体に送信先の所在データなど制御情報を付加した小さなまとまり)を宛先ネットワークやホストまで届ける(ルーティング)ためのプロトコル。

※2.CTI

コンピュータと電話・FAXを統合する技術のこと。企業で利用しているPBX(構内電話交換機)のほか、CRMシステム(顧客管理システム)やSFA(営業支援ツール)を連携させることで、コールセンターなどの電話対応業務を効率化できる。

※3.AVAYA

アメリカ合衆国の通信、ネットワーク機器メーカー。IP電話交換機、IP電話製品、コールセンター向けソフトウエア等の一連の企業向けコンタクトセンターソリューションを主力製品として提供しており、IP電話交換機製品において国内外に多くの実績がある企業のこと。

※4.ソフトフォン

固定電話やビジネスフォンなどの専用電話機(ハードフォン)を使用せず、パソコンなどに専用のソフトをインストールして、イヤホンとマイクを使用し、インターネットを介して通話をする電話のこと。

※5.音声認識

音声情報と言語情報を組み合わせることで、音声を文字に変換する技術。

※6.Asterisk

アメリカ合衆国のDigium,Inc.が開発しているオープンソースのIP電話交換機システムのソフトウエア。

※7.AWS

Amazon Web Services, Inc.により提供されるクラウドコンピューティングサービス。

※8.生成AI

コンピュータが学習したデータから、新たなデータや情報を自動生成する技術。

※9.VoC分析

顧客の意見や声を収集・分析して企業活動に活かす分析手法。

※10.パケットキャプチャ方式

ネットワーク上に流れるトラフィックのパケットを収集すること。

※11.呼量

ある一定の時間内に電話をかけたり受けたりした回数のこと。

※12.IVR

コンピュータによる音声自動応答システムのこと。営業時間外も電話対応を行うことができる。

※13.FAQ

よくある質問とその回答を集めたもののこと。

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、円安や原材料価格高騰に伴う物価上昇等を背景に、個人消費に一部足踏みの状況がみられたものの、好調な企業収益の下、設備投資の増加や賃上げ等による雇用所得環境の改善、訪日観光客の増加に伴うインバウンド需要の回復等、内需主導で緩やかな回復基調がみられました。一方で、トランプ米新政権下における関税措置の強化や中国の不動産市場の低迷に起因する外部環境の悪化などが輸出や企業収益へ影響を及ぼす懸念もあり、依然として先行き不透明な状況が続いております。

当社が事業を展開するCRMソリューション市場においては、ユーザーニーズの多様化に加え、生産年齢人口の減少や労働力不足、人件費の高騰等を背景に、メール、チャット、Webフォーム、SNS、FAQ等のノンボイス系システム(音声を使わないコミュニケーション手段)の需要が増加しております。また、コールセンターの位置付けが、従来のコストセンターから顧客との重要なタッチポイントとなるプロフィットセンターへと変化してきており、生成AIや音声認識等の技術の進展により、VoC(顧客の声)の収集・分析・活用を促進するとともに、企業のDX化を加速させるものと予想されます。

 

このような環境のもと、当社は、2023年5月10日に公表した中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)に基づき、以下の[成長戦略]による販売拡大並びに業績回復に向けた全社的な[コスト改善施策]により、早期に安定した収益基盤を確立できるよう事業を推進してまいりました。

 

[成長戦略]

(1)「@nyplace」の安定成長

新機能及びサービス拡張、基盤強化等を実装するためのバージョンアップを実施し、継続して既存顧客の移行計画を遂行しております。また、サービス提供に係る作業の自動化・効率化による外注費の削減及びリソースの最適化による固定費削減やサービス提供見合いの通信原価の削減等、コスト削減を図り、利益最大化を推進してまいりました。

 

(2)独自サービスの飛躍成長

AIコールセンターシステム「VLOOM」における顧客要望開発や、AIマーケティングシステム「UZ」及びAI顧客分析/リスト作成サービス「GOLDEN LIST」の大規模バージョンアップ等、顧客ニーズに応じた機能開発と継続的な商品価値向上を図っており、生成AIや音声認識による自動化及びDX化の訴求とともに、顧客ターゲットを明確にした販売戦略やキャンペーン等の実施により、販売拡大を推進してまいりました。

 

[コスト改善施策]

当事業年度の重点施策と位置づける[コスト改善施策]においては、サービス提供体制に合わせた最適な人員配置による、生産性向上や原価構造の抜本的な見直し等を推進した結果、適正な経営資源の再配置が進み、主に外注費等のコスト削減が当初の想定よりも前倒しで進捗いたしました。

 

上記に加えて、各サービスに特化した組織体制による販売推進力の強化を図り、この体制の下、業界最大級のビジネスイベントへの出展、DX化推進やAI活用にフォーカスしたイベントへの登壇、SEO対策(※1)やリスティング広告(※2)、サービスサイトの全面リニューアルによるWeb施策等により、新規リードの獲得に注力してまいりました。また、定期的なヒアリング訪問やアンケート調査活動、顧客ニーズを反映する機能開発やシステムバージョンアップ等のリテンション活動により、クロスセルやアップセルでの収益機会の拡大にも注力したほか、昨今の特殊詐欺犯罪等の防止を背景とした、電話事業者認証機構による優良電話事業者認証の取得により、顧客並びにステークホルダーに対する信頼性向上にも努めてまいりました。

 

これらの取り組みのもと、「VLOOM」「UZ」等の独自サービスにおいては、AIや音声認識機能のニーズの高まりを背景とした新規顧客の獲得等により、新たな収益基盤として確立されつつある一方、主にテレマーケティングやBPO事業者における特定の大口顧客の業務縮小等の影響により、「@nyplace」等の現有サービスにおいて、売上高が大きく減少したことが、当事業年度の業績にも影響している状況となっております。

 

 上記の結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a. 財政状態

当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べて16,430千円減少し、1,735,753千円となりました。

当事業年度末における負債総額は、前事業年度末に比べて203,356千円減少し、444,043千円となりました。

当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べて186,926千円増加し、1,291,710千円となりました。

 

b. 経営成績

当事業年度の経営成績は、売上高1,906,946千円(前事業年度比11.5%減)、営業利益75,493千円(前事業年度は営業損失294,326千円)、経常利益102,944千円(前事業年度は経常損失276,410千円)、当期純利益144,924千円(前事業年度は当期純損失798,320千円)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前事業年度末に比べて128,782千円増加し、1,307,016千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における営業活動の結果得られた資金は、208,583千円(前事業年度は104,179千円の収入)となりました。主な要因は、関係会社株式売却益64,671千円、仕入債務の減少額48,844千円、賞与引当金の減少額27,700千円があった一方で、税引前当期純利益142,056千円の計上、減価償却費97,330千円、その他の増加53,400千円、売上債権の減少額30,926千円、減損損失26,501千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における投資活動の結果得られた資金は、31,295千円(前事業年度は360,694千円の支出)となりました。主な要因は、「@nyplace」用設備への投資や新サービス及び現有サービスへのITソリューション開発投資等の有形及び無形固定資産の取得による支出44,343千円があった一方で、ギークフィード社の関係会社株式売却による収入78,782千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における財務活動の結果支出した資金は、111,096千円(前事業年度は180,795千円の収入)となりました。主な要因は、新株予約権の行使に伴う株式発行による収入49,181千円があった一方で、長期借入金の返済による支出100,000千円及びリース債務の返済による支出54,040千円によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当社の主たる業務はクラウドサービス事業のため、生産活動を行っておらず、生産設備を保有していないため、記載を省略しております。

 

b. 受注実績

a. 生産実績と同様に、当社の主たる業務であるクラウドサービス事業の事業特性に馴染まないため、記載を省略しております。

 

 

c. 販売実績

当事業年度の販売実績について、当社の報告セグメントは単一セグメントでありますが、サービス別に示すと、下表のとおりであります。

サービスの名称

売上高(千円)

前年同期比(%)

@nyplace

1,158,846

83.2

COLLABOS PHONE

413,520

85.8

VLOOM

57,603

248.2

COLLABOS CRM

101,275

82.7

COLLABOS CRM Outbound Edition

33,588

116.5

その他

142,111

134.7

合計

1,906,946

88.5

(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前事業年度

当事業年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

㈱カスタマーリレーションテレマーケティング

276,723

12.85

148,778

7.80

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営成績等

1)財政状態

(資産)

当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べて16,430千円減少し、1,735,753千円となりました。主な要因は、現金及び預金の増加があった一方で、売掛金の減少、減価償却に伴う有形固定資産の減少、ソフトウエアの減損による無形固定資産の減少、関係会社株式の売却に伴う投資その他の資産の減少によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債は、前事業年度末に比べて203,356千円減少し、444,043千円となりました。主な要因は、未払消費税の増加があった一方で、買掛金の減少、未払金の減少、リース債務の減少、長期借入金返済による減少によるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べて186,926千円増加し、1,291,710千円となりました。主な要因は、自己株式の取得による減少があった一方で、新株予約権行使による資本金及び資本準備金の増加、繰越利益剰余金が増加したことによるものであります。

 

2)経営成績

(売上高)

当事業年度における売上高は1,906,946千円(前事業年度比11.5%減)となりました。製品・サービスごとの状況は、以下のとおりであります。

・「@nyplace」につきましては、既存顧客の業務拡大及びシステムバージョンアップや移転作業等による一時売上高の増加があった一方で、特定の大口顧客における業務縮小並びに人件費の高騰に伴う全社的なコストダウン等が重なったことから、期間平均利用席数は5,111席(同1,241席減)、売上高は1,158,846千円(同16.8%減)となりました。

・「COLLABOS PHONE」につきましては、既存顧客における業務拡大や、コストダウンを目的としたソフトフォンへの切り替え等による新規案件の受注があった一方で、特定の大口顧客における業務縮小等により、期間平均利用チャネル数は2,680チャネル(同914チャネル減)、売上高は413,520千円(同14.2%減)となりました。

・「VLOOM」につきましては、AI音声認識需要の高まりに加え、在宅環境や海外拠点での利用といった柔軟性や拡張性が求められるニーズの増加を背景に、協業企業からの紹介や当社既存顧客からの新規案件の獲得が進んだことにより、期間平均利用チャネル数は506チャネル(同151チャネル増)、売上高は57,603千円(同148.2%増)となりました。

・「COLLABOS CRM」及び「COLLABOS CRM Outbound Edition」につきましては、インバウンド用の「COLLABOS CRM」において、既存顧客における業務縮小等により契約数が減少した一方、アウトバウンド用の「COLLABOS CRM Outbound Edition」においては、既存顧客のアウトバウンド業務拡大やシステムリプレイスに伴う新規案件の獲得により、契約数が増加いたしました。この結果、「COLLABOS CRM」につきましては、期間平均利用ID数は1,412ID(同396ID減)、売上高は101,275千円(同17.3%減)となった一方で、「COLLABOS CRM Outbound Edition」につきましては、期間平均利用ID数は502ID(同37ID増)、売上高は33,588千円(同16.5%増)となりました。

・DX化推進による業務効率化やマーケティング活動を支援する各サービスにつきましては、音声認識やVoC(顧客の声)活用のニーズの高まりを背景に、AI技術搭載のリアルタイム音声認識システム「AmiVoice Communication Suiteprovided by コラボス」やAIマーケティングシステム「UZ」において新規獲得が増加したほか、AI顧客分析・予測ツール「GOLDEN LIST」における生命保険業務でのアウトバウンドコールの費用対効果向上の提案や、統合CRMマーケティングシステム「GROWCE」における健診奨励業務での業務効率化提案等、販売戦略に伴う新規受注も獲得しており、売上高は142,111千円(同34.7%増)となりました。

 

(売上原価)

当事業年度の売上原価は、1,227,620千円(同26.1%減)となりました。主な要因としては、サービス提供体制に合わせた最適な人員配置による生産性向上や原価構造の抜本的な見直しを推進した結果、外注費等の大幅なコスト削減が当初の想定よりも前倒しで進捗した他、ソフトウエア償却費及び通信利用料等が減少したことによるものであります。サービス別の売上原価の内訳としては、「@nyplace」は、726,893千円(同22.7%減)、「COLLABOS PHONE」は、217,874千円(同29.6%減)、「VLOOM」は、117,873千円(同23.1%減)、「COLLABOS CRM」及び「COLLABOS CRM Outbound Edition」は、43,115千円(同17.5%減)、その他、新サービス及び業務効率化を実現する付加的サービスは、121,863千円(同40.9%減)となりました。

 

(販売費及び一般管理費)

当事業年度の販売費及び一般管理費は、603,831千円(同23.2%減)となりました。主な要因としては、効率性及び生産性を踏まえた業務の見直しによる旅費交通費及び交際費等の変動費の抑制、前事業年度における検証作業に伴うホスティング一時費用の減少及び人件費の減少等によるものであります。

 

これらの結果、営業利益は75,493千円(前事業年度は営業損失294,326千円)となりました。経常利益については、システム開発における受取損害賠償金26,026千円を計上したこと等により、102,944千円(前事業年度は経常損失276,410千円)となりました。また、関係会社株式売却益64,671千円を特別利益として計上したこと、並びにソフトウエア資産の減損損失26,501千円を特別損失として計上したこと等により、当期純利益は144,924千円(前事業年度は当期純損失798,320千円)となりました。

 

b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社は、設立以来、コールセンター向けクラウドサービスの提供を中心に事業を展開しており、コールセンターのシステム構築から運用における業務課題解決に向けたサポート、また、AIやデータ活用によるマーケティング支援に至るまで、企業の生産性向上や業務効率の改善、販売促進等に貢献すべくサービスの提供に努めております。

当社が属するクラウドサービス市場につきましては、2023年末のクラウドサービス利用企業の割合は前年末より5.5ポイント増加し、77.7%に及んでおり、上昇傾向が続いております。(出典:「令和6年版情報通信白書」(総務省))

また、クラウド型CRM市場の市場規模につきましては、2023年度に5,392億円(前年比15.2%増)となり、2023年度においてクラウド型とオンプレミス型(※3)の市場構成比は、54.8%対45.2%とクラウド型市場の成長率は落ち着いたものの、2022年度にクラウド型市場がオンプレミス型市場を逆転して以降、引き続き、クラウド型のニーズが高く推移している状況となっております。

最近においては、オンプレミス型システムのクラウド提供の開始に伴い、これまで移行に慎重であった比較的大規模な案件のリプレイスも増加しているほか、生成AIの普及に伴う各クラウド製品における生成AIを活用した機能の搭載、顧客設定の多様化やデータ及び機能の連携需要も高まっており、着実にクラウド型での導入が市場全体に浸透してきております。

これらを背景に、2024年度以降も市場は年平均14.9%で成長し、2028年度には市場規模は約1兆円、クラウド型とオンプレミス型の構成比は、80.9%対19.1%にまで広がるものと予測されております。(出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社「マーテック市場の現状と展望2024年度版〈クラウド型CRM市場編〉」)

このような状況の中、当社が属するコールセンター市場は、慢性的な人材不足や人件費の高騰等を背景に、メール、チャット、Webフォーム、SNS等をはじめとしたノンボイス系システムの需要が増加しており、既存業務の生産性向上や顧客対応の自動化等がますます重要視されています。また、生成AIや音声認識等のIT技術の進展により、顧客接点の多様な領域でVoC(顧客の声)の活用が活性化しています。特に生成AIを活用したチャットボット(※4)やボイスボット(※5)の導入によるオペレーター業務の効率化や、データ分析や予測モデルを活用した付加価値の高いサービスが注目されており、今後、企業のDX化が一層加速すると予想されます。

当社は、このような将来の自動化・AI化のニーズを先読みすべく、次世代のコールセンターシステムに関する知的システムの開発に着手し、コールセンターのプロフィット化を推進する新たなサービスのリリースを進めてまいりました。2025年3月期においては、この成長投資による「VLOOM」及び「GROWCE」等の独自サービスについて、着実に売上高を伸長している状況にありますが、当初より想定する売上貢献には至っておらず、加えて「@nyplace」及び「COLLABOS PHONE」等の現有サービスにおける契約数の減少により、売上高は前事業年度比において減少いたしました。一方、重点施策としたコスト改善施策においては、経営資源の再配置等によるコスト削減が、確実に結果に結びついている状況にあります。これらの状況から、引き続き、中期経営計画における「@nyplaceの安定成長」及び「独自サービスの飛躍成長」の2つの成長戦略の実行に注力するとともに、経営資源の最適化やコスト構造の見直しに継続的に取り組み、早期に安定した収益基盤を確立できるよう事業を推進してまいります。具体的な成長戦略は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおりであります。

 

c. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、事業活動の成果を示す売上高及びサービス別月次利用数を重要な経営指標としており、当事業年度における売上高は1,906,946千円(前事業年度比11.5%減)となりました。

サービス別売上高及び月次利用数の内訳は、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 a. 経営成績等 2)経営成績」に記載のとおりであります。引き続き、これらの指標を拡大していくように取り組んでまいります。

 

d. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社の報告セグメントは、クラウドサービス事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

a.資金需要の主な内容

当社の運転資金需要のうち主なものは、情報通信機器の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

 

b.資金調達

当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金や設備投資等の調達につきましては、自己資金、金融機関からの借入及びリースを基本としております。

なお、当事業年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は、285,531千円であります。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、1,307,016千円であります。

 

 

〔用語解説〕

※1.SEO対策

検索エンジンの検索結果で自社サイトを上位に表示されるように最適化すること。

※2.リスティング広告

検索エンジンの検索結果に自社サイトを広告として表示させ集客すること。

※3.オンプレミス型

企業が利用するシステムや設備等を自社で保有し、自社で構築、運用する仕組み。

※4.チャットボット

テキストで自動応答する会話システム。

※5.ボイスボット

音声で自動応答する会話システム。