リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループでは、クレハグループの経営に悪影響を及ぼすリスクを把握し、その顕在化を未然に防止し、また、リスクが顕在化した場合の影響を軽減して許容範囲に収めるよう、必要な対応策を予め講じ備えておくことをクレハグループリスク・マネジメント基本方針としております。当社では「リスク・マネジメント規程」を定め、リスク・マネジメントの推進・統括のために、サステナビリティ推進委員会の下部組織としてリスク・マネジメント部会を設置し、その役割を以下としております。また、部会の主管部署がグループ会社のリスクの最小化および機会の最大化を支援する役割も担っています。
1. 当社のリスク・マネジメントに関する年度計画の策定および進捗管理
2. 当社に存在するリスクの特定および分析・評価
3. 2.の分析・評価に基づき、「重要リスク」と評価されたリスクへの対応策の検討・実施、実施状況の
モニタリング
4. 当社のリスク・マネジメント・システム(体制、実施プロセスを含むリスク・マネジメントの仕組み)
の維持、是正・改善の実施
5. 当社グループ各社のリスク・マネジメントの支援
6. 当社事業継続計画(BCP) 策定・具備、運用および改善の取組みの検討
7. その他リスク・マネジメントに関すること
当社グループの経営成績等の状況に重要な影響を与える可能性がある「重要リスク」は、以下のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項および記載したリスクは、提出日現在において判断したものです。
① 各事業セグメントにおける事業環境の変化
当社グループの事業分野は、PGA(ポリグリコール酸)樹脂加工品、フッ化ビニリデン樹脂、PPS樹脂等を中心とする「機能製品事業」、農薬、医薬品、工業薬品等を中心とする「化学製品事業」、家庭用品、食品包装材を中心とする「樹脂製品事業」、建設、エンジニアリングを中心とする「建設関連事業」、環境関連事業等の事業を含む「その他関連事業」と多岐にわたっており、地域的にもグローバルに事業展開しております。当社グループの事業および経営成績等は、市場や顧客の動向、あるいは競合他社との競争激化といった事業環境の変化や各国・地域における政治的・軍事的緊張の高まりによる地政学的リスク等により影響を受ける可能性があります。当社の各事業部、各グループ会社は事業環境の変化およびその兆候の把握に努めるとともに、各事業セグメントにおける事業環境の変化の有無および対応策について経営会議で議論、定期的に取締役会等に報告しております。
機能製品事業
PGA(ポリグリコール酸)樹脂加工品:中東情勢が一因となるオイル・ガスの国際市況変動、米国大統領選挙結果に伴う同国のエネルギー政策方針の転換、物価高騰や景気減退等を要因とした、主要顧客である米国シェールオイル・ガス掘削事業会社の操業度変動や当社の製品開発状況、競合各社の動向等により事業活動への影響が生じる可能性があります。
フッ化ビニリデン樹脂:リチウムイオン二次電池用バインダー用途向けに中長期においては需要の拡大を見込んでおりますが、米国大統領選挙結果に伴う同国のエネルギー政策方針の転換、電気自動車の販売動向や原材料価格の変動、競合他社の生産状況、競合素材の動向等により事業活動への一時的な影響が生じる可能性があります。
炭素製品:高温炉用断熱材向けの炭素繊維を製造・販売しておりますが、シリコンウェハの生産・販売動向等により事業活動への影響が生じる可能性があります。
上記製品を含め機能製品事業は、主に自動車、電気・電子分野での用途へ展開している為、これらの分野での顧客の生産活動動向の影響を受け、事業活動への影響が生じる可能性があります。
化学製品事業
工業薬品:販売先の事業分野の裾野が広く、国内外の経済活動の停滞による需要減退、原燃料価格、製品市況等の影響を受ける可能性があります。
農薬:外部委託生産に依っているため、委託先の操業リスクの影響を受ける可能性があります。また、各国の法規制や登録制度の改変、見直し等により事業活動への影響が生じる可能性があります。
樹脂製品事業
業務用食品包装材:生産拠点を海外に有しており、現地の物価やエネルギーコスト、国際的な物流網に混乱が生じた場合等、事業活動への影響が生じる可能性があります。なお、熱収縮多層フィルムにおいては、戦略の見直しを進めた結果、事業撤退の手続きを開始しております。
建設・その他関連事業
建設事業:国内の経済活動停滞に起因して民間建設工事件数減少による影響を受ける可能性があります。
環境事業:産業廃棄物処理事業において廃棄物の排出量が減少することによる影響を受ける可能性があります。
② コンプライアンスリスク
当社グループは、「クレハグループ企業行動憲章」、「クレハグループ行動規範」および「コンプライアンス規程」を策定し、当社グループ各社における教育・研修等の取組みを通じて、法令および社会的規範の理解と遵守の徹底を図っております。しかしながら、当社グループの事業は多岐にわたっており、国内外の関連法令等が頻繁に改正される等の理由からコンプライアンスリスクを完全には回避できない可能性があります。法令等に抵触する事態が発生した場合、当社グループの社会的信用やブランドイメージの低下、課徴金の支払い等により、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。
③ 原燃料等の市況・調達
当社グループが使用する原燃料は市況の影響を受けるため、価格変動時に当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。また、希少原料や海外調達原料等については、供給元の状況や物流状況等の影響による調達リスクにより、当該原料を使用する製品生産に影響が出る可能性があります。原燃料価格の変動については顧客の理解を得ながら製品販売価格への転嫁、調達面では、購買先の複数化推進、価格変動のヘッジ等により、影響の低減に努めております。
④ 自然災害・事故等の発生
当社グループは、大規模地震や台風等の自然災害、火災や事故等により生産設備が損害を受けた場合、また、新型コロナウイルス感染症等のパンデミック発生等により事業活動が甚大な影響を受けた場合には、操業停止、人身災害、財産損害に伴う修理費用が発生し、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。当社グループでは、事業継続計画(BCP)の整備、防火・防災訓練の実施や生産設備の保全、更新等安全の確保に継続的に取り組んでおります。
⑤ 製造物責任・製品品質
当社グループの生産品に重大な品質問題が発生した場合等には、製品回収や交換、賠償請求、ブランドイメージの低下などが生じ、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。当社グループでは、品質マネジメントシステムの運用により製造物および製造行為に係るリスクを抽出・認識して継続的な改善を図っており、また、製造物責任(PL)保険の付保によりリスクの軽減を図っております。
⑥ 環境リスク
当社グループは、気候変動問題や循環型経済への関心が高まる中、当社グループ事業活動において環境負荷軽減の対策を実施しておりますが、環境に係る新たな規制等の導入や当社事業活動が環境に対して重大な負荷を発生させた場合、これらへの対応のために当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。当社グループでは、不断に事業活動での環境負荷低減に努めるとともに、レスポンシブル・ケア部会を中心に、環境関連情報を収集し諸規制の状況を監視し、事業部門・生産部門・研究開発部門と対応策を立案しリスク軽減を図っております。
⑦ 訴訟等の発生
当社グループは、国内外事業に関連して、知的財産権侵害、製造物責任、環境違反、労働紛争等に関する訴訟を受けるリスクがあり、重要な訴訟等が提起された場合、訴訟費用、賠償請求、企業イメージの低下などが生じ、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。当社グループでは、法務や知的財産等に関する教育・研修を通じた予防措置を講じるとともに、弁護士等の専門家と連携を適宜図ることでリスクの低減を図っております。
⑧ 情報セキュリティリスク
当社グループは、事業運営に係る営業・技術、顧客を含む個人情報等の重要情報を有しており、事業活動においては基幹システム・プラント制御システム等を活用し、IoT・AI等のデジタル技術の導入に取り組んでおります。これらのデジタル技術の活用にあたり重要情報の漏洩、各種業務システムの大規模障害およびサイバー攻撃・コンピューターウイルスの感染等により事業活動に影響が出た場合、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。当社は、情報セキュリティ部会を設置しており、情報セキュリティ基本方針および情報セキュリティ管理規程を運用し、当社グループとしての管理体制を整備しております。その下で、外部リソースを適宜活用しつつ、当社グループ従業員に対する情報セキュリティ教育、情報セキュリティ対策の遵守状況のモニタリング、各種セキュリティシステムの更新等によりリスク軽減を図っております。
⑨ 海外事業展開リスク
当社グループは、グローバルに事業活動を展開しており、事業活動を行う各国・地域における政治・経済・社会情勢の悪化、法規制の変更、自然災害等の不測の事態が発生した場合等には、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。また、海外グループ会社の財務諸表の換算、各種外貨取引について、為替相場の変動により、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。当社グループでは、海外動向に係る情報収集に努め、為替変動については、為替予約等によるリスクの低減に努めております。
⑩ 新技術の登場と開発リスク
当社グループは、各事業分野において研究開発を展開しております。特に機能製品事業においては、対象市場での技術革新の進展のスピードが著しく、市場の変化が想定の範囲を超え新製品の開発・市場投入ができない場合や他社での画期的な技術革新により当社製品・技術の一部が陳腐化する等の事象により、当社グループの経営成績等が影響を受ける可能性があります。当社の研究開発部門および新事業推進本部は、事業部門との協働を図り、研究開発方針に基づく研究テーマの改廃・見直し、研究資源の配分の見直し、産学連携活動等を通じて新製品の開発を積極的に進めております。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、2030年度のありたい姿を見据えた 2023年度~2025年度の定量計画を含む『クレハグループ中長期経営計画ローリングプラン2025』において、剰余金の配当については、将来の事業展開に向けた積極投資に資する内部留保を充実させつつ、安定的な配当を行い、目標配当性向を30%以上とすることを基本方針としております。
本方針を踏まえ、当期末の配当金は1株につき43円34銭(下記に示す株式分割前換算は1株当たり130円2銭)とし、これにより中間配当金130円(株式分割前換算)を加えた年間配当金は1株につき260円2銭(株式分割前換算)となります。なお、2024年1月1日を効力発生日として、普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っております。また、2025年度までは年間配当額の下限を1株当たり86円70銭(株式分割前換算260円相当)としております。
当社は、剰余金の配当を中間配当と期末配当の年2回行うことを基本的な方針としており、会社法第459条第1項に基づき剰余金の配当等を取締役会が決定する旨を定款に定めております。
内部留保資金については、企業価値向上のために、重点事業分野における新設・増設投資、研究開発投資、社会課題の解決に向けた環境負荷低減等への投資に充当する考えでおります。
なお、当社は中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりです。
※2024年1月1日を効力発生日として、普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っています。括弧内には株式分割を考慮しない場合の1株当たり配当額を記載しています。