2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループでは、「経営戦略及び経営目標の達成に影響を与え得る当社グループを取り巻く事象がもたらす不確実性及び変化」をリスクと捉え、中長期的かつ継続的な視点に立ち、リスクによる「脅威」の最小化を図るとともに、「機会」を見逃すことなく最大限に活用することにより、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。

 当連結会計年度においては、2023年3月31日開催の取締役会決議を経て構築した、全社視点でのリスクマネジメントシステム(以下「本システム」といいます。)の運営を開始しました。当社グループは、本システムが当社グループのマテリアリティへの取り組みと密接に関連するものとの認識の下、両者を連動させてまいります。

 本システムにおけるリスク管理体制、プロセス及び本システムの運営により認識した当社グループの将来の経営成績、財政状態に影響を与えうる主要なリスクは以下のとおりです。

 なお、以下の内容は、いずれも当連結会計年度末日現在において当社グループが認識し、全社重点リスクと判断したものです。リスクは常に変化するものであることから、当社グループは、本システムの運用を今後も継続し、内外環境変化を捉えたPDCAを回していく中で適宜の見直し・更新を図ってまいります。

 

(1) リスク管理体制及びリスク管理プロセス

 当社グループでは、本システムの構築に伴い、社長を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置しております。本委員会においては、各役付執行役員が所掌する領域のリスクを俯瞰的・網羅的に把握し、優先順位付を行った上で、当社グループ全体に展開し、経営計画システムの中でPDCAサイクルを確実に実行する必要のある「全社重点リスク(案)」として選定します。

 この際、各役付執行役員は、それぞれが所掌する領域に関するリスクマネジメントオーナーとなり、所掌領域に関するリスク管理の統括責任を負うとともにリスクマネジメント委員会の構成メンバーとして同委員会での活動を担います。

 選定された「全社重点リスク(案)」は、経営会議の審議を経て取締役会の決議により正式に当社グループの「全社重点リスク」として設定されます。

 

<リスクマネジメント委員会概要>

位置付け

社長及びCSO(Chief Strategy Officer)が全社リスクマネジメントに関する役割・責任を果たすための諮問機関

役割

①当社グループ全体のリスクマネジメントの基本方針案、戦略案、計画案、各種施策案及びその他重要事項(リスクマネジメントにかかるプロセスやツールの改善、従業員のリスクマネジメント意識やリテラシー向上の施策を含む)の審議

②全社リスクレビューを通じた全社重点リスク(案)の審議

③個別の重要リスクに関する討議(当該個別リスクが当社グループに及ぼす影響や対応方針にかかる討議を含む)

④当社グループ全体のリスクマネジメントの状況(全社重点リスクのモニタリング状況を含む)の報告及び討議

構成

委員長    :社長

副委員長   :CSO

委員(※1)  :役付執行役員

事務局(※2):経営企画部

(※1)常勤監査役も本委員会に出席の上、適宜意見を述べる。

(※2)ESG推進室、総務・法務部、人事部、経理部、生産・技技術企画部、RC・品質保証部及びCSOが指名する本社機能部門と本委員会の運営に関して協働する。

取締役会・経営会議との関係

①CSOは、本委員会の審議結果及び活動実績を経営会議に報告する。

②本委員会で審議し、経営会議の承認を受けた事項のうち、全社重点リスク(案)は取締役会決議をもって全社重点リスクとして設定する。

 

 

 当社グループでは、本システムの下、毎年次のプロセス(以下「全社リスクレビュー」といいます。)により全社重点リスクを当社グループの経営計画システムに反映し、PDCAを回していきます。

① 各リスクマネジメントオーナーは、それぞれが所掌する業務領域のリスクにつき、戦略ローリングを通じて抽出の上、俯瞰的・網羅的に把握し優先順位付けを行い、全社的に重要と判断するリスクをリスクマネジメント委員会に報告する。なお、リスクマネジメントオーナーは、重点リスクの選定と優先順位付けにあたり、自身が担当する委員会や会議体を適宜活用する。

② リスクマネジメント委員会は、各リスクマネジメントオーナーから報告されたリスクについて、俯瞰的・網羅的観点から長期・中期・短期別の重要度評価を行い、全社重点リスク(案)を策定する。

③ 全社重点リスク(案)は、経営会議審議を経て、取締役会決議をもって当社グループの全社重点リスクとして設定される。

④ 設定された全社重点リスクは、戦略ローリング・年度予算・実行計画等当社グループの経営計画システムに展開し、各リスクマネジメントオーナーの責任の下、各部門が実務を実行する。

⑤ リスクマネジメント委員会は継続的に全社重点リスクのモニタリングを行い、環境変化によるリスクの変容等に適時対応する。

 

<本システム運用イメージ図>

 

    <全社重点リスク(案)選定プロセスイメージ>

 

各リスクマネジメントオーナーが所掌する業務領域のリスクを抽出の上、影響度、発生確率等を考慮し、優先順位付けを行います。

 

(2) 全社重点リスク

 当連結会計年度においては、全社リスクレビューにより次のものを当社グループの全社重点リスクとして設定しております。

 また、当社グループは、全社重点リスクについては、環境変化に柔軟に対処し、経営/戦略にタイムリーに反映させるべく、全社リスクレビューを定期的に実施し、影響度・発生確率も含め適宜更新してまいります。

 

 

①事業継続に関するリスク

リスク概要と対応

影響度

発生確率

[脅威]

・当社グループは、国内外で幅広く事業活動を展開しておりますが、大規模な災害・事故、地政学リスクの顕在化、感染症の発生・拡大、サイバー攻撃等に起因して、生産・販売・研究開発の停止・制限、サプライチェーンの分断等、事業活動の継続に重大な影響が発生する可能性があります。

低~中

[対応]

・当該リスクに対しては、後述(3)のとおり、2024年度における最重要リスクとして対応を図ってまいります。

※ 密接に関連するマテリアリティ:安定生産、住みよいまち、食の安心、健康とくらし、デジタルトランスフォーメーション

 

②製造・品質に関するリスク

リスク概要と対応

影響度

発生確率

[脅威]

・当社グループは、国内外の拠点(工場)にて化学製品の製造を行っておりますが、運転・設備・工事・保全作業に起因するトラブル(事故、危険物の漏洩等)が発生する可能性があります。このようなトラブルが発生した場合は、労働災害のみならず、近隣地域に対しても被害を及ぼす恐れがあります。また、当社グループは、VISION 2030を推進する中で積極的にM&Aにも取り組みますが、安全管理レベルの異なる会社や事業が当社グループに新たに加わることに起因してトラブルが発生する可能性もあります。

・製品の輸送・外部倉庫保管中の事故が発生する可能性もあります。特に危険性の高い製品に関する輸送中の事故は、近隣地域に与える被害も大きくなる恐れがあります。

・化学品については、昨今、世界各国で用途制限物質の増加やそれに伴う代替品市場の拡大が進んでおりますが、当社製品に含まれる化学物質が規制対象となり、既存製品の生産・販売が不可能となることにより市場を喪失する、代替品の開発が遅れる、あるいは新材料調達等のためのコストが増大する等の可能性があります。

・当社グループの製品の多くは最終消費財の原料として使用されておりますが、予期せぬ品質欠陥の発生や製造物責任訴訟の提起等の可能性があります。また、当社グループが、VISION 2030を推進しソリューション型ビジネスの拡大や新しい分野への参入を図る中で、品質保証に関する責任範囲の拡大も見込まれますが、その際に顧客製品の機能・性能に対する理解が不足し、顧客製品に不具合を発生させる可能性もあります。更には、M&Aにより当社グループに新たに加わった関係会社や事業における品質管理・保証体制の整備・運用状況に起因するトラブルが発生する可能性もあります。

[機会]

・一方で当該リスクについては、グループ・グローバルでの保安力の強化、設備・運転管理レベルの向上、トラブル撲滅による収益改善、代替物質開発による新製品の創出、適切な品質設計・品質保証による新製品の上市・シェア拡大への貢献等、当社グループの成長につながる可能性もあります。

低~中

[対応]

・当該リスクに対しては、次のとおり取り組んでまいります。

⇒安全に関する社内啓蒙活動の徹底、高度なリスクアセスメント体制の構築・推進、関係会社への展開等によるグループ・グローバルでの保安力強化

⇒安全監視/管理技術、設備診断技術、設備管理技術の高度化によるトラブル撲滅、機会ロス・固定費削減

⇒規制される製品の特定/データ収集と社内共有の徹底、当社事業への影響評価/対応方針の策定・見直しの適切な実施、代替品の開発強化等による化学品規制への対応

⇒新たな分野の品質ガイドラインの策定・運用、専門人材の確保・育成等による品質マネジメントの適切な運用

※ 密接に関連するマテリアリティ:安全、安定生産、品質

 

③コンプライアンスに関するリスク

リスク概要と対応

影響度

発生確率

[脅威]

・重大なコンプライアンス違反が発生した際には刑事罰や損害の発生に加え、レピュテーション低下等の可能性があります。また、コンプライアンスについては、新規事業への参入に伴う新たな法規制への対応や法規制の継続的な強化への対応も必要となります。

・また、昨今では、主要国における経済安全保障確保に向けた動き、働き方改革法案等各種制度の強化等、事業活動に影響を及ぼす法令・規制に変化の動きが見られますが、必要な法規制に適切に対応できず、各国当局からの訴追、取引機会喪失、社会実装遅延による負担増につながる可能性もあります。

[機会]

・一方で、当該リスクについては、規制変化への適切・迅速な対応による事業基盤の優位性向上等、当社グループの成長につながる可能性もあります。

[対応]

・当該リスクに対しては、次のとおり取り組んでまいります。

⇒グループコンプライアンス施策の計画的推進、教育・啓蒙活動の強化、「三井化学グローバル・ポリシープラットフォーム(M-GRIP)」(※)を活用したグローバル・ポリシーの浸透等によるコンプライアンス意識の改善

(※)グローバルに関係会社のガバナンスを強化し、ベストプラクティスを共有するためのプラットホーム。

⇒官公庁、業界団体等からの情報収集と社内共有、新たな法令・規制への対応策の確実な実行等、規制変化への適切かつ迅速な対応等による事業基盤の優位性向上

※ 密接に関連するマテリアリティ:コンプライアンス

 

④技術革新に関するリスク

リスク概要と対応

影響度

発生確率

[脅威]

・昨今では、市場の複雑化・多様化、事業領域の曖昧化が進み、当社グループの既存アセットだけでは対応できない潜在領域も拡大する等、当社が事業展開を行う各国/地域特有のニーズ・習慣・市場構造変化を踏まえた対応の重要性が高まっております。このような状況に適切に対応できず、継続的な新事業の創出が進まない場合、競争劣位に陥り、成長の機会を逸する可能性があります。

・また、革新的な新技術が勃興し、市場環境に変化が起きた際に、当社グループの技術優位性が失われ、製品が陳腐化し競争力を失う可能性もあります。

[機会]

・一方で当該リスクについては、変化するニーズに対応した新製品開発による新たなビジネスチャンスの創出、グローバルなソリューション型ビジネスの進展、開発体制の適切な構築による新事業パイプラインの充実化・継続的な新事業の創出等、当社グループの成長につながる可能性もあります。

[対応]

・当該リスクに対しては、次のとおり取り組んでまいります。

⇒社内外連携(他社、アカデミア、当社新事業開発センター等)の強化、領域をまたぐ事業開発体制の構築、コーポレート研究の事業化、目指す市場・地域での事業開発拠点整備、地域発のビジネスアイディアの発掘等によるグローバルでの新事業創出

⇒中長期的な技術開発計画の策定・見直し、部門間連携プロジェクトを活用した開発体制の強化等による技術革新

※ 密接に関連するマテリアリティ:イノベーション、ライフサイクル全体を意識した製品設計

 

⑤気候変動に関するリスク

リスク概要と対応

影響度

発生確率

[脅威]

・2015年のパリ協定の採択を契機として、脱炭素社会実現への取り組みが世界規模で活発しており、世界各国におけるカーボンプライシング制度導入の進展、国内におけるGX(グリーントランスフォーメーション)政策の進展等、GHG排出量削減への社会的要請が高まっております。多くの化石燃料・エネルギーを使用しGHGを排出する当社グループにおいても、カーボンニュートラルに向けた施策を進めておりますが、GHG排出削減計画の遅延によるレピュテーションの低下、カーボンプライシングや低炭素原燃料確保の困難化に伴うコストの増加、Blue Value®/Rose Value®製品の開発が遅れることによる製品付加価値の低下・販売の伸び悩み等の可能性があります。

[機会]

・一方で当該リスクについては、社会の脱炭素化に貢献する新規事業創出による企業成長、GHG削減による当社グループのカーボンコストの低減、低炭素・脱炭素の製品提供による顧客のカーボンコストの低減等、当社グループの成長につながる可能性もあります。

[対応]

・当該リスクに対しては、次のとおり取り組んでまいります。

⇒低炭素原燃料への転換、高エネルギー効率機器の導入等による省エネ、再生可能エネルギーの導入、CCUS等カーボンネガティブ技術の開発・導入、バイオマス品、リサイクル品の開発、Blue Value®/Rose Value®製品・サービスの拡大、カーボンプライシングに伴うコストの低減等カーボンニュートラル戦略に関する各施策の適切な推進

※ 密接に関連するマテリアリティ:気候変動、サーキュラーエコノミー、ライフサイクル全体を意識した製品設計

 

⑥自然資本に関するリスク

リスク概要と対応

影響度

発生確率

[脅威]

・プラスチックは広範な用途に用いられる素材として、生活の利便性向上や社会課題の解決に貢献してきましたが、昨今では、資源の枯渇、海洋に流出したプラスチックごみによる環境汚染等の社会課題が深刻化しており、循環型社会への転換が求められております。化学製品の製造・販売を行う当社グループは、この問題に真摯に向き合い、資源の効率的な利用や再生可能資源の活用として、バイオマス原料への転換、バイオマス製品群の拡充やリサイクルの推進等の施策を進め、循環型社会への貢献を目指しておりますが、プラスチックバッシングの増大や各施策の対応が遅れることによるレピュテーションの低下、廃プラスチック等の原料調達困難化によるコスト増加等の可能性があります。

・昨今では、自然資本の保全・回復に対する社会的要請も高まっております。当社グループにおいても水資源及び生物多様性の保全に関する基本的な考え方を制定し、製造プロセスにおける効率的な水資源の利用や水環境の保全・適正管理、化学製品のライフサイクル全体における生物多様性への悪影響の最小化に努めておりますが、これらの対応が遅れることによるレピュテーションの低下や、水資源価格の高騰によるコスト増加等の可能性があります。

[機会]

・一方で当該リスクについては、リサイクル技術の向上、製品の高付加価値化、原料・製品の調達・供給のサークル構築等資源循環に関する業界リーダーポジションの確保、水問題に資するビジネスの開発・構築等、当社グループの成長につながる可能性もあります。

中~大

[対応]

・当該リスクに対しては、次のとおり取り組んでまいります。

⇒AEPWやCLOMA等業界を超えた連携への参加によるグローバルでの課題の最新動向の把握、リサイクル量/比率の定義・目標設定、リサイクル技術の向上やリサイクル価値を訴求する製品戦略等によるプラスチック問題に関する業界リーダーポジションの確保

⇒水セキュリティに対する取り組みの深化、水問題や生物多様性の保全に資するビジネスの開発・構築、TNFD、CDP他への開示対応等を通じた、グループ全体での自然資本の保全・回復に対する意識の向上

※ 密接に関連するマテリアリティ:サーキュラーエコノミー、ライフサイクル全体を意識した製品設計

 

⑦人権に関するリスク

リスク概要と対応

影響度

発生確率

[脅威]

・昨今では、企業活動における人権尊重に対する社会的要請が高まっており、バリューチェーンを巡って生じ得る様々な人権リスクに適切に対処することが企業に求められております。当社グループも、企業活動における人権の尊重は、事業展開を行っていく上で基本となる事項と認識し、「すべての人を大切にする」という視点を持ちバリューチェーン全体を通じて正しいビジネスを追求しております。しかしながら、人権リスク管理体制の構築・運用が不十分であり、人権上問題のある調達・購買、不適切な労働環境等がバリューチェーン上に存在することが発覚した場合、レピュテーションの低下ひいては企業価値を毀損する可能性があります。

[機会]

・一方で当該リスクについては、人権尊重の取り組み推進によるステークホルダーからの信頼獲得等、当社グループの成長につながる可能性もあります。

[対応]

・当該リスクに対しては、次のとおり取り組んでまいります。

⇒人権デュー・ディリジェンスの実施、苦情処理メカニズムの構築等、バリューチェーン全体を通じた人権リスクへの対応体制整備による人権リスクの低減

※ 密接に関連するマテリアリティ:人権尊重、パートナーシップ

 

⑧事業基盤に関するリスク

リスク概要と対応

影響度

発生確率

[脅威]

・当社グループが今後も事業を継続し成長して行くためには、適切な人材の確保は不可欠です。当社グループでは、必要な人材を確保の上、会社・従業員ともに成長できるよう経営戦略に連動した人材戦略を推進しておりますが、生産労働人口の減少、人材流動化に加え、特定領域における人材ニーズの高まり等により、必要な人材を採用・確保できず、成長戦略が実行できない可能性があります。

・また、昨今では、多様な人材が互いに尊重し合い力を発揮できる、多様性が包摂された組織に対する社会的要請が高まっております。当社グループでは、社会的責任を果たすためだけではなく、当社グループの持続可能な成長のためにもダイバーシティを推進しておりますが、目標未達成によるレピュテーションの低下、採用競争力の低下やエンゲージメントの低下等の可能性があります。

・企業活動は、様々なステークホルダーからの理解の下成り立っておりますが、昨今は、ステークホルダーからの評価基準も多様化しており、情報開示が不十分である、あるいは、当社への認知・共感が進まないことによる当社への評価の低減ひいては企業価値の毀損の可能性があります。

[機会]

・一方で当該リスクについては、人材獲得による企業文化の変革、組織の活性化、ステークホルダーの意見も踏まえた経営の実現等、当社グループの成長につながる可能性もあります。

低~中

[対応]

・当該リスクに対しては、次のとおり取り組んでまいります。

⇒グループ人材の活用促進、リスキル、イノベーター人材・特定の分野の人材が活躍できる社内制度の構築等による新たな人材の獲得・企業文化の変革

⇒女性活躍推進のための方策のブラッシュアップ、グループ全体での障害者雇用の促進、性的マイノリティ社員に対する制度の適用拡大・必要な環境整備等による組織の活性化

⇒情報開示、主要機関投資家との対話活動の充実等による株主意見の経営への適切な反映、ステークホルダーに対する持続的成長・企業価値創造ストーリーの訴求、財務と非財務を統合した経営の推進等による企業価値の向上

※ 密接に関連するマテリアリティ:企業文化、人的資本、パートナーシップ

 

⑨DX(デジタルトランスフォーメーション)に関するリスク

リスク概要と対応

影響度

発生確率

[脅威]

・昨今では、デジタル技術の進化により、ビジネスにおける様々な側面で変化のスピードが高まっております。他業界での新たなビジネスモデルにより既存ビジネスが破壊される事例が発生する等、デジタル技術の導入・活用は事業の継続・成長に不可欠な要素となっておりますが、対応が遅れ、業務変革や開発力の強化が進まない可能性があります。

・また、アプリケーションの高度化・専門化によるシステムトラブルの増大に加え、サイバー攻撃も激化しておりますが、情報システムセキュリティの構築が不十分な場合、情報システムが機能不全に陥る、あるいは社内からの情報漏洩が発生する等業績や信用にダメージを与える可能性があります。

・当社グループは、VISION 2030の基本戦略として「DXを通じた企業変革」を掲げており、それを支えるIT・データ基盤の整備・強化が急務となっております。企業に対する要請が多様化する中、現行の業務システムの使用を継続する場合、新たに対応すべき業務に関する工数の増加やヒューマンエラーの発生等により効率化が実現しない可能性があります。

[機会]

・一方で当該リスクについては、最適なデジタル技術の活用による開発力強化、生産性向上、生成AI等の新規技術の積極的活用による業務効率化・生産性向上の実現、業務システム更新による経営効率の向上等、当社グループの成長につながる可能性もあります。

中~大

低~中

[対応]

・当該リスクに対しては、次のとおり取り組んでまいります。

⇒当社グループのDXロードマップ維持・更新、グループ内DX技術交流の実施による各分野の最新動向・実践状況の共有、GPT等重要技術活用に関する全社ガイドラインの制定・遵守等によるDXへの組織適応力向上、競争優位の実現

⇒デジタル技術の活用による業務の見直し、効率化、生産・技術力の向上

⇒サイバー攻撃に対する防御体制の構築、インターネットトレーサビリティの向上、従業員の意識向上と学習

機会の設置・社則の周知徹底等による情報システムセキュリティの強化

⇒新たな業務システム導入の推進による経営効率の向上

※ 密接に関連するマテリアリティ:デジタルトランスフォーメーション、安定生産、ライフサイクル全体を意識した

                 製品設計

 

⑩経営管理・監督に関するリスク

リスク概要と対応

影響度

発生確率

[脅威]

・当社グループは、VISION 2030 において、当社グループが目指す未来社会である「環境と調和した循環型社会」、「健康・安心にくらせる快適社会」、「多様な価値を生み出す包摂社会」の実現に向けて、従来の素材提供型ビジネスからの転換を図るとともに、強靭な経営基盤・事業基盤を構築し、企業変革の加速に努めておりますが、必要な経営資源の確保、配分及び成長に向けた投資を適切に実行できず、事業の育成・拡大が遅延し、経営目標が未達となる可能性があります。また、タイムリーな投資の意思決定ができず成長の機会を逸する可能性もあります。

・当社グループの各事業領域においては、M&Aや事業再編の動きが活発化してきており、案件の増加、規模の拡大及びデュー・ディリジェンスの対応範囲の拡大が見込まれますが、適切な人材を十分に育成・確保できず、成長機会を逸するあるいは、M&Aで取得した会社や事業の瑕疵、PMIの不調等により業績への悪影響が発生する可能性もあります。

・近年は、資本コストを意識した経営が強く求められており、当社グループにおいてもROIC経営を浸透させるべく、社員一人一人の投下資本の回収に対する意識を強め、資本収益性の向上を図っておりますが、単なるKPI管理に終始する等施策の徹底が不十分となり、意図した結果が得られない可能性があります。

[機会]

・一方で当該リスクについては、適切な経営資源の確保・配分による経営目標の実現、タイムリーな投資の実行による競争優位の実現、社員一人一人の意識変革による資本収益性の向上等、当社グループの成長につながる可能性もあります。

低~中

[対応]

・当該リスクに対しては、次のとおり取り組んでまいります。

⇒重点事業分野への集中的な資源投下、重点課題明確化による経営効率の向上、必要な投資を実施するための必要十分な経営資源の確保・配分

⇒ROIC経営浸透に向けた教育の充実、投下資本削減によるROICの向上

⇒M&Aに関する知見・情報の全社的な共有・展開、関連人材の育成・獲得、PMI実施・サポート体制の充実化等によるM&Aシナジーの最大化

 

⑪マクロ環境に関するリスク

リスク概要と対応

影響度

発生確率

[脅威]

・当社グループの事業は、顧客、市場、提携先や業界全体の動向、競合他社の事業展開等外部環境の影響を受ける恐れがあり、これらの外部環境の影響により、当社グループの事業戦略の前提となった事実が変化した場合には、事業戦略が予定どおり進まず、期待したとおりの効果を奏せず、又はそれらの変更を余儀なくされる可能性があります。

・製品については、価値観やライフスタイルの変化、技術革新等による顧客ニーズや市場構造の変化、競合他社の能力拡大や品質・性能向上による価格競争の激化、原材料や物流等のコスト増加、金利・為替相場の変動による収益の悪化等の可能性があります。

・また、当社グループは、国内外で幅広く事業活動を展開しておりますが、各国/地域毎にニーズやペインの多様化が進んでおり、グローバルな市場環境に合わせた対応ができず、海外で競争劣位となり、成長機会を失う可能性もあります。

・昨今では、国内競合を中心とした業界の再編機運も高まりを見せておりますが、対応が後手に回る場合、当社のプレゼンス低下や競争劣位に陥る可能性があります。

[機会]

・一方で、当該リスクについては、地域・他社との連携拡大を通じた資本効率の高い事業への転換、新たな市場に対応する素材や機能・サービスの提供による事業の優位性の強化、各地域の市場環境へのタイムリーな対応によるグローバルな事業成長の実現等、当社グループの成長につながる可能性もあります。

低~中

[対応]

・当該リスクに対しては、次のとおり取り組んでまいります。

⇒差別化製品・高機能/環境型製品の市場投入、新規市場の開拓、知的財産への取り組み強化、技術開発ロードマップの策定等による市場競争力の維持・向上

⇒当社製品の付加価値向上・価格転嫁、原材料の安価調達、最適な稼働調整による原料・製品在庫管理の徹底、設備投資額の精査・最小化等による製品競争力の強化

⇒環境変化を捉えた、他社連携も含む当社の取り得るオプションの検討等による資本効率の改善

⇒地域戦略グランドデザインの策定、グローバルコミュニケーション体制の構築、ローカル人材の育成、国/地域発のビジネスアイディアの発掘による事業発信力強化、地域に即した事業企画、製品開発の創出力強化等による各地域の市場環境にタイムリーに対応したグローバルな事業成長の実現

 

(3) 最重要リスク

 全社リスクレビューにより、当連結会計年度において設定した全社重点リスクは、上述「(2)全社重点リスク」のとおりですが、そのうち「事業継続に関するリスク」を当社グループの最重要リスクとして全部門の2024年度予算に展開し具体的な対応方策を策定しております。

 昨今では、大国間競争や地域紛争など国際情勢における緊張の高まり、世界各地での自然災害の増加に加え、企業に対して気候変動や環境問題への適切な対応がより強く求められる等、当社グループを取り巻く環境の変化の速度も増しており、グループ・グローバルでのレジリエンスの強化が急務であると認識しております。本システム運用の初年度においては、今一度全社横断的な目線で上記のようなリスクへの対応状況の検証及び高度化を図ってまいります。

 

[最重要リスク:主な想定事象・対応方策の概要]

想定される事象

対応方策

原因

事象

大規模な災害・事故、地政学リスクの顕在化、感染症の発生・拡大、サイバー攻撃等の不測の事態

・生産・販売・研究開発の停止・制限

・サプライチェーンの分断

・BCPのアップデート

⇒原材料調達先の複数ソース化、グローバル拠点やプラントの相互活用、物流ルートの複数化

⇒災害時の生産・研究拠点のレジリエンス強化

⇒適正在庫の確保

⇒サイバー攻撃発生時の復旧計画のアップデート

⇒委託先災害時の対応方法の策定・更新

⇒大規模地震を想定したBCPシナリオの更新、全社横断的かつ、より実践的な訓練の実施 等

・国内外関係会社の情報システムセキュリティチェック結果に応じた脆弱性への対応

・海外有事に備えた地域統括会社との定期的な情報共有、地域安全状況の確認 等

気候変動や循環型社会の実現等の社会課題に関する要請の高まり

・生産・販売・研究開発の停止・制限

・レピュテーションの低下、格付低下、投資撤退

・地域統括会社や参画団体を通じた法令・規制に関する情報やグローバル動向の把握、社内情報共有体制の強化

・Blue Value・Rose Value認定・運用ルールの更なる精緻化と実装

・リサイクル/バイオマス戦略に関する指標・目標の設定 等

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、株主の皆様への利益還元、更なる成長・拡大加速のための投融資、革新的な新技術創出のための研究開発等への充当を総合的に勘案して利益を配分いたします。なお、株主還元につきましては、自己株式取得を含めた、親会社の所有者に帰属する当期利益に対する総還元性向30%以上、親会社の所有者に帰属する持分に対する分配率3%以上としております。

当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

当連結会計年度の配当は、中間配当1株当たり70円、期末配当1株当たり70円を実施することを決定いたしました。

また、当社は、「毎年9月30日の最終の株主名簿に記録された株主又は登録株式質権者に対し、取締役会の決議により中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。

 当連結会計年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

中間配当

2023年11月8日

13,310

70.00

取締役会決議

期末配当

2024年6月25日

13,309

70.00

定時株主総会決議