2026年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがある。

なお、当社グループでは、これらの事項をリスクとしてのみ捉えるのではなく、機会となり得るものとして認識し、リスクと機会の両面から戦略的に捉えている。

 このような認識のもと、当社グループでは各種リスクおよび機会の発生の可能性を把握し、迅速かつ的確な対応が可能となるよう、体制の整備およびその運用に努めている。

 下記(1)に記載のリスクについては、毎月の取締役会、四半期ごとの予算編成会議、領域別の各分科会、リスク検討部会、サステナビリティ委員会等を通して対応策の議論や意思決定をおこなっている。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものである。

 

(1)通常リスク(業務リスクや市況変化への対応等)

①原材料の市況変動および調達

(リスク)

・経済環境や需給バランスの変動、通商政策による原材料調達の困難化

・上記に起因する生産コスト上昇や製品供給の停止

(対応策)

・原材料調達ソースの多様化

・継続的な原価低減施策

・販売価格の改定

 

※中東情勢の悪化による影響に関して

 原材料の調達制約や価格上昇が想定されるが、調達先の分散や代替品等のヘッジ策の推進、復旧後の着実な対応、価格転嫁、高機能品へのシフト等で対応していく。

 また、今後も当該地域の動向や各影響について継続的に注視するとともに、適切かつ機動的な対応で影響が最小限になるよう努めていく。

 

②為替・金利・保有資産価格の変動

(リスク)

・外貨に対する円の価値変動による外国通貨建ての取引や、在外連結子会社等の財務諸表の円換算額への影響

・金利変動による受取利息・支払利息の増減や、住宅事業における需要動向への影響

・市場環境・経営環境の変化に伴う保有不動産、棚卸資産や有形固定資産、のれん等の無形固定資産、投資有価証券等の投資その他の資産の減損の発生

(対応策)

・外国通貨建取引における、実勢との乖離回避のための社内為替レート(米ドル・ユーロ)の四半期ごとの見直し

・現在の事業展開と規模における、為替変動が営業利益に与える影響額の開示(1円/米ドルにつき約5億円、1円/ユーロにつき約1億円)

 

③経済動向および製品市況の動向

高機能プラスチックスカンパニーの事業

(リスク)

・モビリティ分野の事業における、グローバルでの自動車・航空機市場動向への依存性

・エレクトロニクス分野の事業における、技術革新の速さと需要変動の大きさに起因する短期間での需要縮小

(対応策)

・エアモビリティ市場等関連領域への進出

・R&Dセンターの強化検討や新技術・M&A候補の探索

 

 

住宅カンパニーの事業

(リスク)

・国内の住宅取得に関する政策や税制、金利動向および個人消費や各エリアの経済動向の影響

・必要な労働力を確保できない場合の工期遅延や労務費上昇

(対応策)

・エリア別の事業戦略、商品展開

・ユニット住宅の生産工場内の物流効率化等の生産革新の計画や、現地での施工工数削減についての研究

 

環境・ライフラインカンパニーの事業

(リスク)

・政府および地方自治体の政策によって決定される公共投資の動向による影響

・住宅、非住宅の着工戸数の動向の影響

(対応策)

・エリア(国内/海外)や顧客(公共/民間)等のポートフォリオによるリスク分散

 

ライフサイエンス分野の事業

(リスク)

・社会環境変化等を背景とした医療制度改革による影響

・感染症等の流行の予測困難性

・技術革新への対応遅れに起因する競争優位性の低下

(対応策)

・新たな事業領域の取り組み強化

・地域戦略の見直し、ポートフォリオ強化推進

 

その他の分野の事業(コーポレート)

(リスク)

・ペロブスカイト太陽電池事業における、工場設備立ち上げや開発の遅れ、需要獲得の苦戦

(対応策)

・生産ライン垂直立ち上げに向けたリソースの強化

・パートナーとの関係強化

 

④安全・衛生・産業事故

(リスク)

・産業事故の発生

・上記を起因とする社会的信用の失墜や補償等を含む対応費用の発生

(対応策)

・各生産拠点でのリスクマネジメント活動によるリスク抽出と対応

・本社の専門部門による実地監査と是正指導(設備本質安全化等)の定期的な実施

・海外危機管理事務局を中心とした地域統括会社との危機管理情報の共有やタイムリーな注意喚起等

 

⑤製品・品質

(リスク)

・重大な製品事故、安全性や各規制対応への不足、知的財産に係る紛争

・上記を起因とする社会的信用の失墜や補償等を含む対応費用の発生

(対応策)

・開発段階での事前予測による品質問題の発生の未然防止

・製造部門における日常管理の基本的指針徹底

 

 

⑥コンプライアンス

(リスク)

・法規制の改正や予期しない法規制の導入等に起因した違反事案

・業績目標達成のプレッシャー等に起因した不正等の重大なコンプライアンス違反事案の発生とその対応に要するコストと顧客からの信頼喪失

(対応策)

・「コンプライアンス宣言」など、コンプライアンスを通じて社会から高い信頼を獲得するという姿勢の明確化

・取締役会における「コンプライアンスに関する基本方針等」の審議

・社長が委員長を務めるサステナビリティ委員会の専門分科会である「コンプライアンス分科会」の設置と、コンプライアンスに関する重要事項の企画、検討及び決定

・本社の専門部門による監査と是正指導のグローバルでの定期的実施

 

⑦情報管理

(リスク)

・サイバー攻撃や停電、自然災害、機器やソフトウェアの障害・欠陥等に起因した事業中断や損害賠償の発生、情報漏洩の発生

(対応策)

・指針となる「情報セキュリティ方針」の制定。CSIRT(シーサート、Computer Security Incident Response Team)を通した、インシデント発生の有無の常時監視

・データセンターの複数か所への分散設置や重要業務システムの完全二重化等

・より機密性の高い特定の事業における、関係省庁のサポート獲得と情報管理推進

 

⑧第三者との提携や合併・買収およびR&D活動

(リスク)

・新事業領域における新たなリスクの発現

・開発および事業立ち上げの遅れ

(対応策)

・事前調査および実行後モニタリングの強化

・社内外技術融合による開発スピードアップ

・ビジネスレビュー、デザインレビューの効果的運用

 

 上記(1)に加え、当社グループの事業に影響を及ぼすと考えられる不可逆な外部環境変化(以下、メガトレンド)をふまえ、中長期視点から各々のシナリオを基に発生頻度や経営への影響度を測り、当社グループにとって重要なリスクおよび機会を新たに整理、特定している。

 現時点では以下の12のメガトレンドが当社グループにとって重要であると捉え、中期経営計画の戦略へ反映している。今後は、環境変化を掴みながら内容を見直す仕組みについて、さらに構築、運用していく予定である。

 

(2)12のメガトレンドおよびリスクと機会のシナリオ

 

<地球環境に関するもの>

①気候変動・異常気象

前項「サステナビリティに関する考え方及び取組」内の「(2)気候変動への対応」に記載のとおり

 

②大規模災害の増加

(リスク)

・事業活動の中断

・それに伴い生ずる機会損失および顧客に対する補償等の発生

(機会)

・持続可能なエネルギーや災害対策関連製品の需要増加

(対応策)

・「(1)通常リスク ④安全・衛生・産業事故」内の対応策に記載のとおり

・持続可能なエネルギーや災害対策関連の製品や事業の創出と拡大

 

 

③生物多様性の喪失

(リスク)

・原材料の調達の困難化および原材料価格の上昇

・土地開発や化学物質規制等、企業活動に対する要請の高度化

(機会)

・規制対応を前提とした新素材や新技術に対する需要増加

(対応策)

・原材料調達ソースの多様化

・継続的な原価低減施策の推進

・規制対応型の新素材や新技術の開発加速

 

④天然資源の枯渇

(リスク)

・原材料の調達の困難化および原材料価格の上昇

・資源使用の効率化や代替素材の活用等、企業活動に対する要請の高度化

・対応の遅れによる社会的信頼や競争力の低下

(機会)

・資源効率の高い技術や持続可能エネルギーへの需要増加

(対応策)

・原材料調達ソースの多様化

・継続的な原価低減施策の推進

・非化石由来および再生材料の使用拡大

・廃棄物の再資源化

・企業イニシアティブの「CPs(※1)」や「SusPla(※2)」への参加を通した産官学や企業連携

・資源効率の高い技術の開発加速や持続可能エネルギー関連製品や事業の創出と拡大

※1.経済産業省が「成長志向型の資源自律経済戦略」に基づき設立したパートナーシップ

※2.品質向上・安定供給に資するマテリアルリサイクルによる再生プラスチック市場の拡大を目指して設立された団体

 

<政治・経済・社会に関するもの>

⑤ステークホルダーの多様化と要求高度化

(リスク)

・品質水準や法規制対応の不十分さによる社会的信頼喪失等の影響

・対応コスト(体制整備、開示、監査等)の増加

(機会)

・効率的な経営の推進による企業価値の向上

(対応策)

・関係部門間の連携強化による開示内容の整合性確保

・全社横断の体制構築やシステム活用による標準化、高度化、効率化への継続的取り組み

・ポートフォリオ経営の強化

 

⑥地政学リスクの高まり

(リスク)

・テロや戦争などの政治的混乱、関税、予期しない政策・法律・規制の変更、税制改正、人種差別、不買運動等による事業活動への影響

・上記に起因とする原材料価格の高騰

(機会)

・保護主義の進行による新たな経済圏、事業機会の創出

(対応策)

・各地域統括会社を通じた経済、社会、政治的状況や動向についての情報収集

・グループ会社、地域統括会社および日本本社の専門部門の連携

・事業の多角化や展開地域のグローバル化等によるリスク分散

・各地域統括会社を活用した市場動向の把握

 

⑦都市への集中、地方の過疎化進行

(リスク)

・地方部を中心とした労働力不足

(機会)

・インフラ老朽化やコンパクトシティ化に伴う事業機会の創出

(対応策)

・多様な人材の活躍推進

・健康で安心して働ける環境整備

・インフラ老朽化やコンパクトシティ化に対応する製品や事業の創出と拡大

 

⑧少子高齢化の進行

(リスク)

・人材確保の困難性の高まり

・労働力構成の偏在

(機会)

・ヘルスケア、ウェルネス市場やスマート領域の市場拡大

(対応策)

・人材公募制度などの挑戦機会の提供やキャリア自律に向けた風土づくり

・次代を担うリーダーの早期育成と抜擢や高度専門人材の確保と事業ニーズに即したリスキル

・多様な人材の活躍推進および健康で安心して働ける環境の整備

・ヘルスケア、ウェルネス市場やスマート領域に関する製品や事業の創出と拡大

 

<技術・デジタルに関するもの>

⑨AI技術の台頭

(リスク)

・情報流出

・誤情報の利用による意思決定の誤り

(機会)

・生産性の向上

・付加価値の増大

・AIを活用した開発スピードの向上

(対応策)

・ガイドラインの策定と遵守徹底

・情報のセキュリティレベル毎の管理

・従業員教育によるリテラシー向上

・各現場、各業務における活用推進

・生成AI活用による有望市場発掘やパートナー候補探索

・マテリアルインフォマティクス(MI)による開発高速化、事業貢献

 

⑩次世代通信の普及

(リスク)

・ITシステムの依存度上昇

・上記に伴うサイバー攻撃や停電、自然災害、機器やソフトウェアの障害・欠陥等に起因した事業中断や損害賠償の発生、情報漏洩の発生

(機会)

・通信、自動運転関連やモニタリング市場の拡大

(対応策)

・「(1)通常リスク ⑦情報管理」内の対応策に記載のとおり

・通信、自動運転関連やモニタリング市場関連の製品や事業の創出と拡大

 

 

⑪高度医療技術の進歩

(リスク)

・技術開発に伴うコスト増加および競争激化

(機会)

・ライフサイエンス領域の市場拡大

(対応策)

・対象領域を明確化した研究開発の推進

・ライフサイエンス領域の製品や事業の創出と拡大

 

⑫航空・宇宙ビジネス拡充

(リスク)

・自動車関連事業への需要構造変化による影響

(機会)

・航空宇宙ビジネスの市場拡大

(対応策)

・自動車関連事業以外の成長分野の特定と市場注視

・航空宇宙ビジネスに関連した製品や事業の創出と拡大

配当政策

3【配当政策】

  当社は企業価値を増大させ、株主への利益還元を積極的に行うことを経営上の重要課題の一つと位置づけている。株主還元については、2026年度からの中期経営計画において、前中期経営計画と同様、連結配当性向を40%とした上でDOEを3.5%以上に引き上げ、加えて累進配当(原則として減配せず、配当を維持もしくは増配を続ける配当政策)を導入することとした。総還元性向は50%以上(ネットD/Eレシオが0.5以下の場合)を確保する方針としている。

当社は中間配当と期末配当の年2回の配当を行うことを基本方針としており、これらの配当の決定機関は期末配当については株主総会、中間配当については取締役会である。

当事業年度の期末配当については、1株につき普通配当40円とする旨、2026年6月19日開催の第104回定時株主総会において決議する予定である。これにより、中間配当40円を含めた当期の年間配当金は1株につき80円となる予定である。

また、内部留保資金の使途については将来の企業価値を高めるために必要不可欠な研究開発、設備投資、戦略投資、投融資等に充てる方針である。

なお、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨を定款に定めており、当事業年度の剰余金の配当については以下のとおりである。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2025年10月30日

16,603

40

取締役会決議

2026年6月19日

16,203

40

定時株主総会決議

(予定)