リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。また、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの財政状態、経営成績等に与える影響の内容につきましては、合理的に予見することが困難であるものについては具体的には記載しておりません。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業環境に関するリスク
① 業界の成長性について
当社グループは、個人間で簡単かつ安全に不要品を売買できるCtoCマーケットプレイス「メルカリ」を展開しております。近年の中古品市場の世界的な広がり、また、スマートフォンの高機能化及び普及拡大、Eコマース市場の拡大等を背景として、「メルカリ」の流通取引総額、ユーザ数等は拡大を続けており、今後もこの傾向は継続するものと認識しております。また、2024年3月には、ユーザがスキマ時間を活用して働ける求人プラットフォーム「メルカリ ハロ」の提供を開始し、スポットワーク雇用仲介事業に参入しました。構造的な人手不足への対応策として、多様な働き方の推進が急務となっている中、スポットワーク業界全体も拡大傾向にあり、「メルカリ ハロ」の登録者数は順調に増加しています。
株式会社メルペイでは「メルカリ」アプリを通じてスマホ決済サービス「メルペイ」及びクレジットカードサービス「メルカード」を提供しております。キャッシュレス決済市場の拡大を追い風に利便性の強化に取り組んでおり、決済分野における「メルペイ」の決済総額、利用者数は順調に拡大し、注力している与信分野においても「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い・分割払い)」の利用者数や利用残高、そして「メルカード」の発行枚数について順調に拡大しています。
更に、株式会社メルコインでは「メルカリ」アプリを通じて暗号資産取引サービスを提供しております。「メルカリ」で使わなくなったものを売って得た売上金・ポイントを使って、かんたんに暗号資産取引を始められることから、「メルコイン」の暗号資産取引口座開設数は順調に拡大しております。
しかしながら、中古品市場やEコマース、スポットワーク市場を制限するような法規制、景気動向、個人の嗜好等の変化等により、当該市場の成長が鈍化し、それに伴い当社グループの売上の大部分を占めるCtoCマーケットプレイス「メルカリ」全体の流通取引総額や注力する商品カテゴリーの流通総額が順調に拡大しない場合や、これらの要因によりユーザ離れが生じ、当社グループのビジネスモデルを長期的に維持できない場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合について
現在、多くの企業がスマートフォンを利用したCtoCサービスに参入しており、商品カテゴリーやサービス形態も多岐にわたっております。また、インターネットオークションやリサイクルショップも存在しており、中古品市場の競争環境は厳しさを増しております。更に、決済・金融関連事業についても、電子決済サービス、及びクレジットカードサービス、そしてそれらに関連するサービスを提供する複数の競合他社が存在しております。2024年3月に新規参入したスポットワーク市場は、近年急成長を続けており、市場の拡大に伴い競争環境も激化しています。
当社グループは、今後とも顧客ニーズへの対応を図り、サービスの充実に結び付けていく方針ではありますが、これらの取り組みが予測どおりの成果を挙げられない場合や、より魅力的・画期的なサービスやより競争力のある条件でサービスを提供する競合他社の出現等によって、当社グループが提供するサービスからのユーザ離れ、出品の減少、手数料水準の低下等につながる場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的規制について
当社グループが展開するCtoCマーケットプレイス「メルカリ」においては、出品者が商品を販売した場合、その販売で得られた売上金でポイントを購入し当該ポイントで商品を購入すること及びその販売で得られた売上金でポイントを購入せずに当該売上金の残高で商品を購入することを可能としています。そのため、株式会社メルペイは、資金決済に関する法律(以下、「資金決済法」という。)の第三者型前払式支払手段の発行者及び資金移動業者として登録を受けており、関連法、関連政令、内閣府令等の関連法令を遵守して業務を行っております。なお、現状において取消事由となるような事象は発生しておりません。
また、クレジットカードサービス「メルカード」の提供に加え、スマホ決済サービス「メルペイ」においては購入者にマンスリークリア取引及び分割払取引である「メルペイスマート払い(翌月払い・定額払い・分割払い)」や、少額融資サービス「メルペイスマートマネー」を提供しています。そのため、株式会社メルペイでは割賦販売法(以下、「割販法」という。)のクレジットカード番号等取扱契約締結事業者及び包括信用購入あっせん業者(認定包括信用購入あっせん業者としての認定を含む)並びに貸金業者としての登録を行っており、関連法、関連政令・省令等の関連法令等を遵守して業務を行っております。株式会社メルコインにおいては、暗号資産取引サービスの提供に当たり資金決済法に基づく暗号資産交換業者の登録を行っており、関連法、関連政令・省令等の関連法令の適用を受けています。なお、現状においていずれも取消事由となるような事象は発生しておりません。
求人プラットフォーム「メルカリ ハロ」においては、職業安定法の有料職業紹介事業者としての許可を得ており、同法のほか、労働基準法、最低賃金法、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律を遵守して業務を行っております。また、求人企業(パートナー)による法令遵守の支援にも努めております。なお、現状において取消事由となるような事象は発生しておりません。
米国においては、決済関連の規制対応のため、必要とされる州においてMoney Transmitter Licenseの申請を行っており、申請を行ったすべての州において既に取得が完了しております。
当社グループは、税務当局を含む規制当局の動向及び既存の法規制の改正動向等を踏まえ、適切に対応しておりますが、かかる動向を全て事前に正確に予測することは不可能又は著しく困難な場合もあり、これに適時かつ適切に対応できない場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループが、これらの法規制等に抵触しているとして何らかの行政処分を受けた場合、及び新たな法規制の適用又は規制当局の対応の重要な変更等により、「メルカリ」の運営又はその他の既存若しくは新規の事業展開に何らかの制約が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④ 自然災害等について
大地震、台風等の自然災害及び事故、火災等により、開発・運用業務の停止、設備の損壊や電力供給の制限、配送網の分断や混乱等の不測の事態が発生した場合には、当社グループによるサービス提供に支障が生じる可能性があり、ひいては当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。その他、気候変動に係るリスクについては、「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。
(2)事業に関するリスク
① サービスの健全性の維持について
当社グループが展開するサービスは、取引の場であるプラットフォームを提供することをその基本的性質としております。プラットフォームの健全性確保のため、当社グループでは、サービス内における禁止事項を明記するとともに、監視・通報制度の整備やブランド等の権利者との連携等により、偽造品その他の出品禁止物の排除に努めております。また、当社グループは、ユーザ間の取引において売買契約、役務提供契約又は雇用契約の当事者とはならず、また、サービスの利用規約においても、ユーザ間で生じたトラブルについて、当社グループは責任を負わず、当事者間で解決すべきことを定めております。
加えて、当社グループでは、万一ユーザ間の取引においてトラブルが発生した場合に備え、一定の条件を満たす取引については購入者・出品者の双方を対象に金銭的な損失を補償する「全額補償サポートプログラム」を2025年7月1日より導入しております。本プログラムにより、利用者が安心して取引できる環境を提供し、プラットフォームの安全性・健全性の向上とユーザ保護を図っております。もっとも、本プログラムの運用において想定を超える補償支出が生じた場合や、補償の範囲をめぐってユーザとの紛争が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
しかしながら、当社グループのサービスにおいて、第三者の知的財産権、名誉、プライバシーその他の権利を侵害する行為、詐欺その他の法令違反行為等が行われた場合や、サービス内の不適切な行為を取り締まることができないことにより、プラットフォームの安全性及び健全性が確保できない場合には、当社グループ又は当社グループが提供するサービスに対する信頼性が低下し、ユーザ離れにつながる可能性があります。更に、問題となる行為を行った当事者だけでなく、当社グループもプラットフォームを提供する者としての責任を問われた場合、当社グループの企業イメージや信頼性が毀損され、ひいては当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 不正利用に関するリスクについて
当社グループが展開するマーケットプレイスでは、プラットフォーム上の取引においてクレジットカード決済による決済手段を提供しております。フィッシング詐欺といった不正なアカウント乗っ取りを防止するため、プラットフォームへのログイン時には多要素認証等により第三者による不正ログイン対策を強化しております。また、購入者による第三者のクレジットカード不正利用を防止するために本人認証サービス(EMV-3Dセキュア)の導入や、取引状況の人的監視及びシステム監視を行うことで総合的にリスクを判定し不正利用を防止しております。
しかしながら、プラットフォーム上における不正取引を防止できなかった場合、不正取引に関するユーザへの補填、当社グループの信用の下落等による損害が発生し、万が一損害が拡大した場合、業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
③ 海外展開に関するリスク
当社グループは、収益機会の拡大に向けて米国でも簡単で安全にさまざまなモノが売れるマーケットプレイス「Mercari」を展開しています。また、「メルカリ」の越境取引の展開国数も拡大しており、今後ともグループとして海外展開の強化を図っていく予定であります。
なお、海外展開にあたっては、広告宣伝費や人件費等の投資を今後も相当規模で行う可能性があります。また、言語、地理的要因、法制・税制を含む各種規制、経済的・政治的不安、文化・ユーザの嗜好・商慣習の違い、為替変動等のさまざまな潜在的リスク、事業展開に必要な人材の確保の困難性、及び展開国において競争力を有する競合他社との競争リスクが存在します。当社グループがこのようなリスクに対処できない場合、当社グループの海外展開に影響を及ぼす可能性があります。
④ システムについて
当社グループが展開するCtoCマーケットプレイス「メルカリ」及びその他のサービスの利用に際しては、ユーザのインターネット及びモバイルネットワークへのアクセス環境が不可欠であるとともに、当社グループのITシステムも重要となります。
当社グループは、システムトラブルの発生可能性を低減するために、安定的運用のためのシステム強化、セキュリティ強化を徹底しており、万が一トラブルが発生した場合においても短時間で復旧できる体制を整えております。また、当社の財務諸表におけるさまざまな財務数値は当社のITシステムから取得されており、これらは自社開発の複数の業務処理システムから構成されております。これらのシステム処理の適切性を担保するために適切な業務処理統制を整備・運用しております。
しかしながら、システムへの一時的な過負荷や電力供給の停止、ソフトウエアの不具合、マルウェアや外部からの不正な手段によるコンピューターへの侵入、自然災害、事故等、当社グループの予測不可能な要因によってシステムがダウンした場合や、当社グループのシステム外でユーザのアクセス環境に悪影響を及ぼす事象が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態、適正な財務報告体制等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、サービスの安定稼働及び事業成長のために、継続的にシステムインフラ等への設備投資が必要となります。当社グループの想定を上回る急激なユーザ又はトラフィックの拡大や、セキュリティ強化その他の要因によるシステム対応強化が必要となった場合、追加投資等を行う可能性があり、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ AI技術について
当社グループは、CtoCマーケットプレイス「メルカリ」及びその他の事業において、AI技術を積極的に活用していますが、競合他社においてもAI技術の導入や活用が進みつつあります。こうした状況において、当社グループのAI技術の導入や活用が競合他社に比べて遅れた場合、サービスの利便性や品質で後れを取り、サービス競争力が低下することで、結果としてユーザ離れや流通取引総額の減少が発生する可能性があります。
また、AI技術を効果的に導入・運用するためには、専門人材の確保・育成や高品質なデータの整備が不可欠です。これらのリソースが不足したり、データが適切に管理されない場合には、AI技術の導入や改善の遅れにつながり、当社グループの事業、業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
更に、AI技術の導入・運用には、セキュリティ上の脆弱性、プライバシー侵害、誤情報や偏見を含む出力、知的財産権の侵害といった、技術的及び倫理的なリスクも伴います。これらのリスクに対処するため、当社グループではAI技術に関するガバナンス体制の強化を進めていますが、万一これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの信用やブランド価値が損なわれ、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 訴訟等の可能性について
ユーザによる違法行為やトラブル、第三者の権利侵害があった場合等には、当社グループに対してユーザその他の第三者から訴訟その他の請求を提起される可能性があります。
一方、当社グループが第三者に何らかの権利を侵害され、又は損害を被った場合には、訴訟等による当社グループの権利保護のために多大な費用を要する可能性もあります。
このような場合には、その訴訟等の内容又は請求額によっては、当社グループの事業、業績、財政状態並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 知的財産権に関するリスク
当社グループは、当社グループが運営する事業に関する知的財産権の取得に努め、当社グループが使用する商標・技術・コンテンツ等についての知的財産権による保護を図っておりますが、当社グループの知的財産権が第三者の侵害から保護されない場合、又は知的財産権の保護のために多額の費用が発生する場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループが使用する技術・コンテンツについて、第三者から知的財産権の侵害を主張された場合、当該主張に対する防御又は紛争の解決のための費用又は損失が発生し、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 事業基盤の拡充について
当社グループは、事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するため、メルカリIDにより統合された当社グループのエコシステムの構築を含め、事業基盤の拡充や新規事業に取り組んでいく方針であります。今後も新規サービスの開始や第三者のサービスの導入等を行う可能性がありますが、エコシステムの構想は未だ初期段階であり、競合するサービスとの競争、収益性、規制上のリスク、オペレーションへの負荷、レピュテーションへの影響等、不確定要素が多く存在するため、当社グループの想定どおりにエコシステム構築が進捗しない可能性や、当社グループがエコシステムを構築した場合にも十分な利益を得ることができない可能性があります。
事業基盤の拡充や新規事業展開については、既存サービスとのシナジーやリスク等について企画及び開発段階において十分な検討を行うことによりリスク低減を図る方針であります。また、これら事業基盤の拡充及び新規事業展開に際しては、M&A、ジョイント・ベンチャー、資本業務提携及び投資活動も有効な手段であるものと認識しており、今後も検討を実施していく方針であります。
一方、事業基盤の拡充や新規事業展開においては、不確定要素が多く存在することから、当社グループがこれらを実施する場合には、当社グループの想定どおりに進捗しない、期待するシナジーが得られない又は提供するサービスの内容・性質に応じて新たなリスク要因が発生するなどの可能性があります。また、想定外の費用・のれんの減損等の負担や損失計上が発生し又はこれらの取り組みに付随した追加投資が必要となる可能性があります。更に、M&A等については、デュー・ディリジェンスの限界等から想定外の事象が発生するリスクを有しており、これらに起因して当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 第三者への依存について
当社グループは、ユーザにスマートフォン向けアプリを提供していることから、Apple Inc.及びGoogle LLCが運営するプラットフォームを通じてアプリを提供することが現段階の当社グループの事業にとって重要な前提条件となっております。また、当社グループは、ユーザの決済手段として、クレジットカード決済、コンビニ決済、ATM決済等の外部の事業者が提供するサービスを導入しています。したがって、これらの事業者の動向、事業戦略及び当社グループとの関係等により、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。更に、ユーザ情報(個人情報等含む)については、第三者が管理するデータセンターのサーバーで保管しています。このため、データセンターで有事が発生した場合、ユーザ情報が一部又は全体的に失われるリスクがあります。その結果、当社グループは法的責任やブランドイメージの低下を招く可能性があります。
配送については、ヤマト運輸株式会社や日本郵便株式会社等の配送業者に依存していることから、今後これらの配送業者について取引条件の変更、事業方針等の見直し及び配送状況の変化等があった場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは社内メール及び資料の管理にGoogle LLCが提供するGoogle Cloudを利用していることから、Google Cloudのサービスが何らかの理由で停止又は障害が発生した場合、当社グループの業務に支障をきたす可能性があります。更に、Google LLCのサービス利用に関する利用規約や方針の変更、セキュリティ上の脅威、データの漏えいや不正アクセスなどのリスクも考慮する必要があります。これらの要因が、当社グループの業務運営や情報管理に影響を与える可能性があります。
⑩ 決済・金融関連事業について
決済・金融関連事業について、今後、規制要件等の遵守のために多額の費用を要する、又は規制要件の追加等により当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、サービス、決済、金融関連事業が発展する過程で国内外において、送金、決済、電子商取引、割賦販売、貸金、暗号資産交換に係る業法に加え、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策や本人確認に係る法令など、さまざまな法規制の対象となる可能性があります。社内体制整備がサービスの成長速度に追いつかない等の理由により、万一、そうした法律又は規制上の義務に違反していることが判明した場合、罰金やその他の処分、業務停止命令等の制裁を受けたり、サービス変更を余儀なくされたりするおそれがあります。これらの事態は、当社グループの事業、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、遵守すべき法規制の内容が将来大きく変更される可能性もあり、当該変更に対処するための社内体制を迅速に整備できない場合、当社グループの事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
更に、スマホ決済サービスやその他の決済・金融関連事業に関して、以下のさまざまな追加リスクが生じる可能性があります。
a.不正取引や取引の失敗への対応・顧客対応・委託先管理等に係る運用費・管理コストの増加
b.外部サード・パーティーへの支払い費用増加
c.インフラ構築に伴う資本コストの増加
d.ユーザ、プラットフォーム提携先、従業員又は第三者による潜在的な不正や違法行為
e.開示・報告義務の追加
⑪ 暗号資産交換業について
当社グループが顧客から預託を受けている暗号資産は、株式会社メルコインが管理するウォレット内に保管されており、外部の第三者による不正アクセスにより当該暗号資産が流出するリスク等に備えるため、秘密鍵管理体制やウォレット構造の構築においてさまざまな対策を講じておりますが、仮に不正アクセスにより暗号資産が流出した場合、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
⑫ スポットワーク雇用仲介事業について
スポットワーク雇用仲介事業では、履歴書の提出や面接の実施等一般的な選考過程を経ずに就労することから、クルー(求職者)の適切な本人確認及びパートナー(求人企業)の実態、求人に関する情報の適切な確認を徹底することが求められます。クルー及びパートナーの適切な情報の確認体制を構築しておりますが、パートナー及び求人審査の不備、クルー・パートナー間の連携に多大なトラブルが生じた場合、当社グループの事業及び業績、並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
(3)会社組織に関するリスク
① 人材に関するリスク
当社グループは、当社グループ全体の事業戦略の立案及び実行について、当社グループの経営陣に相当程度依存しており、かかる経営陣が欠けた場合には当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが今後とも企業規模を拡大し社会に求められるサービスを提供していくためには、スマートフォンのアプリ開発、設計等に関する技術的な専門性を有する人材をはじめ、セキュリティ部門、コーポレート部門やカスタマーサポート部門においても、当社グループの理念に共感し高い意欲を持った優秀な人材を確保することが必要不可欠であります。また、海外展開においては、現地の市場動向・ビジネスに精通した人材を確保していく必要があります。
当社グループは、規模拡大やサービス向上に必要な優秀な人材の確保のため、今後も必要に応じて採用活動を行っていく予定ではありますが、人材獲得競争の激化や市場ニーズの変化等により、想定どおりの採用が進まない等優秀な人材の獲得が困難となる場合や、現在在職する人材の社外への流出が生じた場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 事業体制及び内部管理体制について
当社グループは、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、当社グループの事業体制及び内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。事業規模に適した事業体制及び内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、内部統制システムに本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。
③ 個人情報の管理について
当社グループは、CtoCマーケットプレイス「メルカリ」をはじめとするさまざまなサービス展開にあたって、住所、氏名、電話番号等の利用者個人を特定できる情報を取得しております。これらの個人情報については、プライバシーポリシーに基づき適切に管理するとともに、社内規程として個人情報保護規程を定め、社内教育の徹底と管理体制の構築及び改善を行っております。
当社グループは、利用者のプライバシー及び個人情報の保護に最大限の注意を払い、適切な情報管理を行っておりますが、何らかの理由で利用者のプライバシー又は個人情報が漏えいする可能性や不正アクセス等による情報の外部への漏えい又はこれらに伴う悪用等の可能性は皆無とはいえず、そのような事態が発生した場合には、当社グループの事業、業績及び財政状態並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが事業を運営する各法域における利用者のプライバシー及び個人情報の保護に係る法規制に改正等があった場合にも、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)経営成績及び財政状態等について
① 経営成績について
当社は2013年2月に設立され、未だ歴史も浅く発展途上にあります。過年度の連結業績については、CtoCマーケットプレイス「メルカリ」の立ち上げ段階であったことや米国における「Mercari」や国内におけるスマホ決済サービス「メルペイ」等により、長らく親会社株主に帰属する当期純損失を計上しておりました。2022年6月期下期より、利益に対する考え方を経営方針に取り込み、成長と収益のバランスを意識した経営方針へと移行し、メルカリグループの収益力の強化に取り組んできました。2025年6月期からは、更に一歩進み、原則として、増益を伴うトップライン成長を目指すことに経営方針を変更したことに伴い、2023年6月期以降は、親会社の所有者に帰属する当期利益を計上しております。当社グループは、事業規模の拡大と収益源の多様化を図り、グループの将来利益の最大化につながる投資を行っており、今後も継続的に利益拡大していくことを企図しますが、経済の状況・当社グループをとりまく事業環境の状況等により、当社グループの業績計画及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは急速な成長過程にあるため、過年度の経営成績は期間業績比較を行うための十分な材料とはならない可能性があります。
流通取引総額、MAU(注)その他の指標については、当社グループ内において合理的と考える方法により算定したものであり、他社との比較可能性が必ずしもあるとは限らないことに加えて、上記のような事情から過去の数値が今後の動向を判断する十分な材料とはならない可能性があります。
(注)MAUは「Monthly Active Users」の略。1ヶ月に1回以上アプリ又はWEBサイトをブラウジングした登録ユーザの四半期平均の人数。
② 継続的な投資について
当社グループは、継続的な成長のため、認知度、信頼度を向上させることにより、より多くのユーザを獲得するとともに、既存のユーザを維持していくことが必要であると考え、会社設立以降積極的にプロダクトの改善や新規サービス開発のための人材確保や育成、マーケティング施策等に投資を行って参りました。今後も、規律を保ちながら、成長につながる投資を継続する方針であります。
しかしながら、事業環境の変化や広告宣伝効果が十分に得られない場合、コスト上昇等が生じた場合、投資が想定よりも長期に及ぶことにより計画どおりの収益が得られない場合等には、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)その他
株式の追加発行等による株式価値の希薄化について
当社グループは、役員及び従業員に対して、中長期的な企業価値向上に対するインセンティブとして新株予約権及び譲渡制限株式ユニット(RSU)の付与を行っており、今後も優秀な人材を採用し続けるために新株予約権及び譲渡制限株式ユニット(RSU)を利用する可能性があります。また、当社は、取得条項付転換社債型新株予約権付社債の発行をしております。上記の新株予約権の権利行使及び譲渡制限株式ユニット(RSU)の権利確定があった場合並びに当該取得条項付転換社債型新株予約権付社債が株式に転換された場合には、当社の株式が追加的に発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
現在、当社は成長過程にあるため、事業の拡大と効率化に伴う中長期的な企業価値の向上が株主のみなさまに対する最大の利益還元につながると考えております。そのため、当面は、成長投資と内部留保による財務基盤の強化を優先し、現時点において配当の予定はありません。内部留保資金につきましては、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大発展を実現させるための資金として、有効に活用していく所存であります。
なお、剰余金の配当を行う場合は、年1回の剰余金の配当を期末に行うことを基本としており、その他年1回中間配当を行うことができる旨及び上記のほかに基準日を設けて剰余金の配当を行うことができる旨を定款で定めております。なお、当社は、会社法第459条第1項の規定に基づき、剰余金の配当に係る決定機関を取締役会とする旨を定款で定めております。