リスク
3 【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスクに該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性のある全てのリスクを網羅するものではありません。
(1) 事業環境に関するリスクについて
① 自然災害、有事及び未知の感染症等
当社の本社機能及び製品倉庫等の主要な機能は、愛知県名古屋市にあり、南海トラフ地震や東海地方への台風等の自然災害及び火事等により、設備破損や電力供給の制限等の事態が発生した場合、当社の本社機能、事業活動及びサービス提供に支障をきたす可能性があり、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、戦争、テロリズム等の有事や新型コロナウイルスのような未知なる感染症が蔓延した場合、外出制限や移動制限、事業活動の停止等により、業績に影響を与える可能性があります。
当該リスクへの対応として、当社ではネットワーク冗長化や遠隔地データセンターでのデータバックアップ等の物理的対策や、フルフレックス制度やリモートワークを組み合わせた働き方を取り入れており、緊急事態の発生等により対策が必要となる場合においても、事業活動が継続できる体制を整備しておりますが、これらの対応範囲を超える事態が発生した場合、業績に影響を与える可能性があります。
② 国内景気の動向
当社の提供する主なサービスは、日本国内の通信キャリアや通信回線事業者のオプションサービスとして利用者に提供されています。このため、国内の景気低迷期においては、利用者の通信費用削減の結果、オプションサービスの契約者数が減少する可能性があります。このような状況においては、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 特殊詐欺の傾向及び対策の変化
当社のサービスは、特殊詐欺に使われる電話番号や利用者が迷惑と感じるセールス電話等をデータベーステクノロジーの活用により利用者が特段意識することなくこれらの脅威から守られるサービスです。今後、電話を活用した特殊詐欺が有効で無くなるなど被害が減少し、不審な電話への心理的抵抗が社会的に低下した場合においては、利用者数が減少する可能性があります。このような状況において、当社が新たな詐欺手段に対抗するための製品や機能の提供による代替的な収益源の獲得等、電話による特殊詐欺以外の収益源の獲得ができていない場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 大手通信キャリアの業績
当社の迷惑情報フィルタ事業の主要取引先である国内大手通信キャリアは、現行の料金プランより割安なオンライン専用プランを開始し、その他通信事業者も相次いで値下げを実施いたしましたが、値下げ競争の更なる激化により、通信キャリアの収益が悪化した場合等、通信キャリアから当社への契約単価の下方改定等の要請を受ける可能性があります。当社は、通信キャリアに売上高の約7割(第17期事業年度)を依存していることから、契約単価の下方改定が行われた場合は将来の収益に影響を与える可能性があります。
⑤ 技術革新による陳腐化
当社の提供する各種サービスの関わる技術テクノロジーの革新スピードは非常に早く、顧客ニーズに応じた技術的な付加価値提供やAIを活用したサービス提供が他社に遅れた場合、当社の提供するサービスが急速に陳腐化することで、競合サービスに劣後する可能性があります。当社は、優秀なエンジニアの採用を積極的に行うとともに、最先端の技術をキャッチアップし、新サービスの積極的な投入や研究開発活動の強化を行っておりますが、当社が今後の技術革新に適応できない場合、当社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 不祥事によるレピュテーションリスク
当社は、役職員に向けたコンプライアンス研修や内部監査を継続的に実施しておりますが、役職員の不正行為やその他の要因により当社サービスへの信頼性やイメージ低下、又は当社のレピュテーションが低下することがあります。当社のレピュテーションが低下により、当社の事業展開や顧客の獲得・維持が困難になった場合、当社の事業や業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 競合企業の出現
現在、国内で迷惑電話のフィルタサービスに類似したサービスを展開している企業は当社以外にもありますが、当社と比較してその事業規模はいずれも小規模なものと考えられるため、迷惑電話をフィルタするセキュリティ市場において実質的に独占的地位を確保できるほどの優位性を有しているものと認識しております。また、当社の事業は、警察組織との迷惑電話番号の情報に関する連携や、1,500万人以上の利用者から日々寄せられる迷惑電話番号の情報に関するデータベースの精度、及び通信キャリアやIP電話事業を運営する通信回線事業者が利用者へ提供する契約プランの一部に当社サービスが含まれた販売モデルが不可欠であり、新規参入企業が当社と同等の情報収集精度と販売モデルの構築を行うことは容易ではなく、高い参入障壁を有しているものと認識しております。
しかしながら、市場の拡大に伴い、新規参入企業の増加や競争激化が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業内容に関わるリスクについて
① 特定サービスへの依存
当社の迷惑情報フィルタ事業は特定のサービス「モバイル向けフィルタサービス」に依存した事業となっております。今後も取引の拡大に努めると同時に販売依存度を下げるため、新規のサービス開発を図ってまいりますが、同サービスの競争激化などにより、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 特定取引先への依存
当社の迷惑情報フィルタ事業の主要取引先は、国内大手通信キャリアであり、これら特定の取引先に対する売上高は、第17事業年度において約7割を占めており、当該特定取引先への依存度は高い状況にあります。
当社は、それぞれの企業グループとの間で良好な関係を築いており、現時点において取引関係等に支障をきたす事象は生じておらず、当社としては今後も継続的な取引が維持されるものと見込んでおりますが、今後何らかの理由により契約の更新がなされない場合や、取引条件の変更が生ずる場合等には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。さらに、これら特定取引先に対して提案する新たなサービスに関して、新規契約の締結時期や契約の締結自体が当社の想定どおりに進まない場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ サービスの品質低下
当社は継続的かつ安定的にサービス提供が行えるよう、システムインフラ投資やソフトウエアのメンテナンス等に万全を期しておりますが、当社が提供するスマートフォンアプリがApple Inc.又はGoogle LLCの審査により製品登録を拒絶された場合、又は、システムトラブル等何らかの理由によりサービスの継続が不可能になった場合においては、当社と通信キャリア間における契約に影響を与える可能性があります。また、通信キャリアのオプションパックに採用されるには製品品質や利用者にとっての有用性等、一定の採用基準があるとのことですが、当社が何らかの理由により当該基準を充足することが出来ず、当社サービスがオプション契約パックに含まれなくなってしまった場合や、通信キャリアが提供するオプション契約パックそのものが提供されなくなってしまう場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ アライアンス先との提携
当社は、事業の拡大に向け、当社のデータベーステクノロジーを活用したサービスを提供するパートナーとのアライアンスに積極的に取り組んでおります。具体的には、インターネット回線とIP電話をセットで提供する事業者に対して、当社の迷惑情報データベースを提供し、インターネット回線契約のオプション契約パックとして提供するモデルを推進しております。しかしながら、アライアンス先との関係構築が上手くいかず、想定した成果が得られない場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ システム及びサービスの運用
当社の事業は、インターネット接続環境の安定した稼働を前提として運営されております。継続的かつ安定的なサービス運営を行うため、システムの負荷分散、バックアップ体制や強固なセキュリティの構築等に常時努めておりますが、不測の自然災害や事故等のトラブルによる様々な問題が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ データベースの情報管理
当社のデータベースには、警察等の公的機関による情報提供や、電話番号に関する様々な情報、迷惑電話番号からの着信ログや、迷惑電話番号への発信ログ情報などが蓄積されており、リスク検知情報の一部として活用されております。当社では、ハードウエア、ソフトウエア、人的管理体制等の観点からセキュリティ対策を実施し、情報漏えいが発生しないよう努めておりますが、不測の事態により当社データベースに蓄積された情報の漏えいが発生した場合においては、警察組織や取引先からの信頼の低下を招く可能性があり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 警察組織からのデータ提供
当社の迷惑情報データベースには、警察組織から提供されたデータが含まれており、リスク検知情報の一部として活用されております。当社は警察組織との間で良好な関係を築いており、現時点において情報提供関係等に支障をきたす事象は生じておらず、当社としては今後も継続的な情報提供が維持されるものと見込んでおります。また、当社の迷惑情報データベースは、独自の調査と情報収集により膨大な情報を蓄積しており、警察組織のデータ提供のみに依存するものではございませんが、何らかの理由により警察組織からデータ提供が行われなくなった場合においては、対外的な信用度等の観点から当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 新規事業の立ち上げ
当社は、事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するために、新規事業への取り組みを進めていく方針であります。新規事業が安定して収益を生み出すまでには一定の期間と投資を要することが予想され、全体の利益率を低下させる可能性があります。また、将来の事業環境の変化等により、新規事業が当初の計画どおりに推移せず、新規事業への投資に対し十分な回収を行うことができなかった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 企業買収(M&A)や業務提携
当社は、事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するために、企業買収(M&A)や資本参加を行うことがあります。企業買収(M&A)や資本参加を検討する際には、対象となる企業について詳細な各種デューディリジェンス及び企業価値並びに株式価値算出に際しては、外部の専門家を活用し、精度向上に努め、適切な買収プロセス及び適正な企業価値評価を行うことでリスク回避に努めていますが、買収後に偶発債務等の発生が判明した場合、対象会社の当初想定した収益計画を達成できない場合、対象会社の事業運営に支障をきたすような事態が発生した場合には、当社の事業に影響を受けるほか、のれんの減損等により、当社の業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 法的規制について
① 一般的なインターネットにおける法的規制
当社は、主にインターネットを通じたサービス提供や電話回線の提供を行っていることから、「電気通信事業法」「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報開示に関する法律」「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」といった法規制を受けております。当社は、これらの法規則等を遵守するよう運営を行っておりますが、監督官庁から行政処分などを受けることがあった場合には、当社の事業展開が想定通りに進められず、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 個人情報の保護に関するリスク
当社は、提供するサービスを顧客に販売した際に取得した個人情報や、購買履歴を含む個人情報等を保有しており、「個人情報の保護に関する法律」の規制を受けております。これらの個人情報等の管理は、当社にとって重要な経営課題であると認識しており、お客様に安心してサービスを利用していただくため、プライバシーマークを取得・更新し、個人情報を取り扱う際の業務フローや権限体制を明確化するなど、個人情報管理に関する規程を制定し、個人情報の取扱いに慎重な運用を行っております。しかしながら、これらの情報が何らかの理由によって外部に流出した結果、当社の信用力の低下を招いた場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
③ その他の法的規制に関するリスク
当社の提供するサービスに関連する法令は、前述の2項目に加えて、「不当景品類及び不当表示防止法」「下請代金支払遅延等防止法」「犯罪収益移転防止法」「独占禁止法」「製造物責任法」「建設業法」などがあります。当社は、これらの法規制等を遵守した運営を行っており、今後も法令遵守を徹底する体制及び社内教育を行ってまいりますが、新たな法令の制定や既存法令における規制強化等がなされ、当社の事業が制約される事態が発生した場合、もしくは万が一法令遵守体制が機能しない事象が発生した場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 当社による第三者の知的財産権侵害
当社は、当社が運営する事業に関する知的財産権の獲得に努めるとともに、第三者の知的財産権の侵害の可能性については、顧問弁護士との連携により可能な範囲で対応を行っており、現時点において第三者より知的財産権の侵害に関する提訴等の通知を受け取っておりません。しかし、将来、当社の事業活動に関連して第三者が知的財産権の侵害を主張する可能性がないとはいえません。当社の属する市場が拡大し、事業活動が複雑多様化するにつれ、競合も進み、知的財産権をめぐる紛争が発生する可能性があります。
(4) 事業体制に関するリスクについて
① 優秀な人材の確保
当社が事業拡大を進めていくためには、優秀な人材の確保、育成及び定着が最重要課題であると認識しております。当社では、将来に向けた積極的な採用活動、人事評価制度の整備や研修の実施等の施策を通じ、新入社員及び中途入社社員の育成、定着に取り組んでおります。当社は今後もこれらの施策を継続していく予定ではありますが、これらの施策が効果的である保証はなく、必要な人材が十分に確保・育成できなかった場合や、採用後の人材流出が進んだ場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
② 小規模組織であること
当社の組織体制は小規模であり、業務執行体制及び内部管理体制もそれに応じたものになっております。今後の事業展開に応じて、採用・能力開発等によって業務執行体制及び内部管理体制の充実を図ってまいりますが、当社の事業拡大に応じた十分な人材の確保及び育成ができるかは不確実であり、これらが不十分な場合は、当社の業務遂行に影響を及ぼす可能性があります。
(5) その他のリスクについて
① 新株予約権の行使による株式価値の希薄化
当社では、当社役員及び従業員に対するインセンティブを目的として新株予約権を発行しております。これらの新株予約権が行使された場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。これらの新株予約権による潜在株式数は2023年10月31日現在87,000株であり、発行済株式総数10,629,600株の0.81%に相当しております。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の最重要課題のひとつと位置づけた上で、財務体質の強化と積極的な事業展開に必要な内部留保の充実を勘案し、配当性向35%を基本方針としています。
当事業年度の剰余金の配当につきましては、上記基本方針のもと、1株当たり17.00円といたしました。
内部留保金の使途につきましては、今後の事業展開への備えと成長サービスへの積極投資として投入していくこととしております。
なお、剰余金の配当を行う場合には、年1回の期末配当を基本方針としており、配当の決定機関は取締役会です。また、当社は、中間配当を取締役会の決議により行うことができる旨を定款に定めております。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。