2023年9月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、当社の事業又は本株式への投資に関するリスクをすべて網羅するものではありません。

 

 (1)セキュアクラウドシステム事業遂行上のリスク

①半導体供給不足について

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、データセンターやテレワーク需要による事業者向けコンピュータ機器の販売拡大、巣ごもり需要によるゲーム機等家庭用電子機器の販売拡大、車載システムの需要回復等を背景に、半導体の需要が増加しております。そのため半導体の供給不足が生じており、サーバーやネットワーク機器などハードウエア製品の不足が生じております。当社ではセキュアクラウドシステム事業にて取り扱うハードウエア製品に関して、半導体不足の影響による納期長期化を考慮し、顧客への発注時期早期化の働きかけや、当社から仕入先への先行発注を行うことにより、納期短縮に努めております。しかしながら、半導体不足が長期化することにより、納期遅延や調達価格の高騰となった場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

②シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社とのパートナー契約について

 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社(本社:東京都千代田区霞が関三丁目2番1号 霞が関コモンゲート西館 23F)は米国Cloud Software Group ,Inc.社の連結決算対象法人です。Cloud Software Group ,Inc.社は、Citrix Systems ,Inc.社とTIBCO Software ,Inc.社の経営統合により設立された、全世界で40万社以上のユーザー企業と約1億人のユーザーを有するアメリカの大手IT企業です。Cloud Software Group ,Inc.社は、クライアント仮想化技術によってアプリケーションとデスクトップをオンデマンドサービスとしてセキュアに提供するソフトウエアやネットワーク機器であるCitrix製品の開発、販売などを手掛けています。

 当社は、2004年4月にシトリックス・システムズ・ジャパン株式会社とシトリックス・ソリューション・アドバイザー/プラチナ契約(コンサルタント又はリセラーとして、Citrix製品の販売に関する専門知識、サービスの提供、顧客の教育、技術的な実装とサポートを提供するパートナー契約の最上位レベル)を締結して以来、同社のパートナー企業としてCitrix製品を活用したプライベートクラウド構築に注力しております。従って、同社並びに同社製品の市場における訴求力が大きく低下した場合や、同社とのパートナー契約が更新できなかった場合等には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③業界の動向について

 当社の属する情報通信サービス産業は、ネットワーク化の進む今日の社会においては必要不可欠なものとなっており、近年では、不正アクセス対策や情報漏洩問題対策、個人情報保護法対策としてのセキュリティ強化、モバイル端末やテレワークでの業務システム利用などを目的として、クラウド環境構築技術が活用されています。

 これらの社会情勢を背景に、今後の当業界は更なる発展を遂げると考えておりますが、企業のシステム投資に対する姿勢の変化や、今後当社の予測に反して相応の市場拡大を遂げない場合は、当社の事業運営及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④技術革新について

 当社の属する情報通信サービス産業においては、技術革新の進捗が早く、それに応じて業界標準及び利用者ニーズが急速に変化します。当社はかねてより技術革新及び顧客ニーズの変化に対応すべく、積極的に最新の情報収集、技術の蓄積等を行っております。しかしながら、当社の対応力を上回る急激な技術革新が生じた場合、或いは当社が想定していない新技術が普及した場合、当社取扱製品やサービスの陳腐化・競争力の低下を引き起こし、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤他社ソフトウエアの活用について

 当社のセキュアクラウドシステム事業は、多数のプラットフォーム案件においてCloud Software Group ,Inc.社のソフトウエアを活用した事業となっております。これは同社の前身の1社である米国のIT企業Citrix Systems ,Inc.社が日本進出前であった同社のメタフレーム(現VirtualApps)を当社が1998年10月より取り扱ってきた経験及び実績により、同社ソフトウエアを利用した仮想化システム構築のノウハウを当社が積み上げてきた結果であります。現在当社では、顧客ニーズに幅広く対応することを目的として、同社以外の複数社のソフトウエアを取り扱うことで、活用ソフトウエアの多様化を図っており、これらのソフトウエアを利用した仮想化システム構築実績も多数あります。しかしながら、当社が何らかの理由でCloud Software Group ,Inc.社のソフトウエアを利用できなくなった場合には、当社がこれまで培ってきたノウハウを活用できなくなることに伴う競争力の低下により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑥競合の状況について

 当社の属する情報通信サービス産業においては、技術革新とともに既存技術の陳腐化が早いため、他社との差別化を図るためには高い付加価値をもった製品・サービスが求められます。

 競合先が多数存在する中、プライベートクラウド構築技術・セキュリティネットワーク構築技術においては、長年クラウド構築に特化した事業を行ってきた当社ならではの、独自に蓄積した実装・コンサルティング能力、ノウハウや実績において他社に対し優位性を有していると考えておりますが、競合先の技術力等の向上により当社の競争力が大きく低下した場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑦プロジェクトの売上計上時期の変動あるいは収支の悪化について

 当社では、2022年9月期より、一定の要件を満たすプロジェクトにおいて一定の期間にわたり収益を認識しており、見積原価総額に対する発生原価の割合をもって売上高を計上しております。この原価総額の見積りには、顧客の要望が高度化・複雑化したこと、あるいは開発段階でのシステム要件の変更などにより、当初の見積り以上に作業工数が増加することで追加費用が発生し、原価総額が増加する可能性があります。その場合、当該会計年度又は当該四半期の売上高が過大に計上される可能性があり、金額の大きさによっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、プロジェクトは、想定される工数を基に見積もりを作成し受注をしております。そのため、当社は顧客との認識のズレや想定工数が大幅に乖離することがないように、工数の算定をしておりますが、この算定業務の大半が顧客企業とのヒアリング等で把握したデータの内容に依存する事から、完全に事前に工数や成果を見込むことは困難であります。そのため見積もり作成時に想定されなかった不測の事態等により、工数が増加し、プロジェクトの収支が悪化する場合があり、特にそれが大規模なプロジェクトの場合は、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑧外注管理体制について

 当社が事業展開する上で、顧客の業務分析及びシステム設計からシステムの開発(プログラミング)までを一括して行っており、その一部については協力会社への外注を活用しております。当社が事業を更に推進して利益を計上するためには、システム開発を含む大規模案件の受注数を増加させることが一つの方策として考えられますが、そのためには、有用な外注先企業の確かな選定と安定的な活用が必要となります。

 現在の外注管理体制としては、当社製造部門のプロジェクトマネージャーによる外注管理のもと、確かな外注先の選定を行うことができておりますが、今後外注先の選定が予定通りに進まない場合や管理体制が十分に機能しなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑨顧客の機密情報管理体制について

 当社は、事業を遂行する上で顧客情報の取り扱いをしており、当該情報中には顧客の営業上・技術上の機密情報や個人情報(以下「機密情報等」といいます)が含まれております。当社では、機密情報等を適切に保護・管理することが重要であると認識しており、情報管理体制の整備及び従業員教育等を通じて、当社内部からの情報漏洩防止及び社外からの不正アクセス防止等に対して必要なセキュリティを施しております。また、外注先に対しても当社と同等の対策を求めており、過去に機密情報等の漏洩が起こった事実は認識しておらず、これらに起因するクレームや損害賠償請求を受けた事実もありません。しかしながら、万一、当社から機密情報等が外部に流出する事態が生じた場合には、顧客からの信用や社会的信用を喪失し、当社に対する損害賠償請求、その他責任の追及により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩仕入価格の変動について

 当社で取り扱っている一部のソフトウエア、ハードウエアについては、その仕入価格が為替の影響により変動する場合があります。当社では、仕入メーカー毎の価格見直しのタイミングを注視し、見積有効期限を短めに設定する等仕入価格の変動を売価に転嫁するよう対策を行っておりますが、急激な円安により仕入価格が大きく変動した場合には、プロジェクトの収支の悪化や価格高騰による競争力の低下により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(2)エモーショナルシステム事業遂行上のリスク

①エモーショナルシステム事業について

 エモーショナルシステム事業については、2023年9月期に営業損益が黒字転換したことを踏まえて、売上高と営業利益の拡大に向けて事業セグメントを継続する方針です。VR(Virtual Reality:仮想現実)やAR(Augmented Reality:拡張現実)関連技術は、今後も技術革新が拡がることが見込まれますが、同事業の技術の源泉となるVR/AR業界では技術革新が急速で、当社の技術が業界の技術革新に追いつかない場合や当社のコンテンツを含むMetaWalkersⓇが一般消費者の支持を得られない場合には、同事業の事業進捗が遅れることにより、当社全体の中長期的な業績向上が遅れる可能性があります。

 また、新技術等への対応のための開発投資やコンテンツ償却費等の支出が拡大した場合には、採算悪化による収益性の低下を招くとともに、事業継続の検討が必要になるなど、当社の事業及び業績・財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

②資産評価リスクについて

 エモーショナルシステム事業では、MetaWalkersⓇとして主にスクリーン等の本体設備及び上映コンテンツを提供しております。当事業年度末現在発生している資産については、収益性の低下に基づく簿価切下げを実施することにより、業績に影響を与える可能性があります。

 

 (3)全社のリスク

①人財の確保について

 当社の継続的な発展及び急速な技術革新に対応して、競争力のある製品及びサービスの提供を行っていくためには、優秀な人財の確保が不可欠となります。現時点では優秀な人財の採用、社内でのノウハウの共有等による人財教育により必要な人財は確保しております。更なる事業の拡大に伴い、人財採用・育成を担う専門部署として人財開発部を2022年11月に新設し、当社の魅力を継続的に情報発信するとともに、人財育成の支援と風通しの良い組織づくり、報酬の充実に努めております。人財採用の機会増進と在職人財の流出の防止に取り組むとともに、人財育成の強化を図る方針でありますが、当社の希求する人財が十分に確保できない場合、又は、現在在職中の人財が流出するような場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

②システム障害の影響について

 当社は、コンピュータシステムのバックアップにより安定的なシステム運用、災害対策を行っておりますが、地震や水害等の大規模広域災害、火災等の地域災害、サイバー攻撃等予測不可能な事由によりシステム障害が生じた場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③当社製品・サービスの不具合等による影響について

 当社が提供する製品・サービスにおいては、納品前に十分な品質管理を行い、不具合(誤作動・バグ・検収遅延等)の発生を未然に防ぐ方策を図っております。しかしながら、万一、当該製品・サービスにおいて、当社に責務のある原因で不具合が生じた場合、無償対応や損害賠償責任の発生、顧客からの当社に対する信頼を喪失すること等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④特定の人物への依存について

 当社代表取締役社長で創業者でもある冨田和久は、当社設立以来代表取締役社長を務め、豊かな知識、経験を基に、経営に関わる者として当社の経営方針や経営戦略・事業戦略の決定をはじめ、当社にとって重要な役割を果たしております。また、冨田和久は当社の筆頭株主として当事業年度末現在当社株式を980,000株(自己株式を除く発行済株式総数の15.12%)所有しております。

 現状において冨田和久が不測な事態を含め当社業務より離脱することは想定しておりませんが、同氏へ依存しない経営体制を整備するとともに、各分野での人財登用・育成を強化しています。未だ同氏への依存の度合いが高いと思われ、何らかの理由により同氏が現在の役割を遂行できなくなった場合や退職をした場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤知的財産権について

 当社は、事業展開する上で、技術・ノウハウ・知的財産権等は重要な位置を占めるため、特許権の取得による保護を図るとともに、これらの保全管理については細心の注意を払っており、また同様に、他社の知的財産権の侵害をすることのない様、リスク管理に取り組んでおります。

 現在、当社が保有している知的財産権を侵害されている、あるいは、第三者から当社が権利侵害をしている旨の通知等を受領した事実はありませんが、今後、当該事実が生じる可能性は否定できません。この場合、第三者より知的財産権の使用料請求、損害賠償請求及び差止請求が発生する可能性があり、当社の信用低下及びブランドの毀損等により、当社の事業及び業績に重要な影響を与える可能性があります。

 

⑥法的規制について

 当社の事業運営において、現在、直接的な法的規制は存在しないと認識しておりますが、今後新たな法令等の制定や既存法令の解釈の変更等が行われる可能性があり、こうした場合に対応して、製品・サービス内容の変更や新たなコストが発生すること等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑦小規模組織であることについて

 当社は、当事業年度末現在、取締役6人、監査役4人、執行役員及び従業員54人と小規模な組織であり、現在の人員構成における最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社は、今後の業容拡大及び事業内容の多様化に対応するため、人員の増強、内部管理体制及び執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進まなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑧配当政策について

 当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つと位置付けております。しかしながら、当社は、現在のところ成長過程にあるため、経営体質の強化及び将来の事業展開のための内部留保の充実に重点を置く必要があると考えており、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。

 

⑨新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社は、当社役員及び従業員等に対するインセンティブを目的として新株予約権を発行しております。これらの新株予約権による潜在株式数は当事業年度末現在119,200株(2023年11月30日現在119,200株)であり、発行済株式総数6,583,500株の1.8%に相当しており、将来的にこれらの新株予約権が行使された場合には、当社の一株当たりの株式価値は希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。なお、新株予約権の詳細は、後記「第4 提出会社の状況 1株式等の状況 (2)新株予約権等の状況」をご参照ください。

 

⑩自然災害やテロ、感染症等の発生について

自然災害やテロの発生、新型コロナウイルス等感染症の拡大により、一時的に事業活動を停止せざるを得ない状況となった場合、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 当社は、新型コロナウイルス感染症への対策として、役職員のテレワーク環境を整え、時差出勤やウェブ会議等の活用と社内での感染予防の徹底を実施しておりますが、新型コロナウイルスの感染拡大により、各報告セグメントに以下の影響を与える可能性があります。

 セキュアクラウドシステム事業においては、顧客のIT投資意欲低下や営業活動の縮小による受注減、各種プロジェクトの遅延、調達物品の納期遅延等の発生により、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 エモーショナルシステム事業においては、アミューズメント施設の休業、各種イベント中止等の長期化により受注が遅延し、当社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪特定の取引先への依存度について

当社の取引先であるエヌ・デーソフトウェア株式会社は、介護事業者向けの業務支援システム「ほのぼの」シリーズをSaaSサービスとして提供しており、当社は同社のSaaSサービスのクラウド基盤構築を行っておりますが、当事業年度末における同社への販売実績が、総販売実績に対して45.1%と高い水準にあります。このため、同社の受注動向等は当社の業績に影響を与える可能性があります。

これに対して当社は、知恵と感性と勇気を振り絞り、コンピュータシステムによって新たな価値を顧客に提供することを志向することで同社との関係を強化するとともに、中堅企業、SaaS事業者及び公共団体等の新規顧客の開拓を目指し、当社の経営成績に及ぼす悪影響の軽減を図っております。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営上の重要課題の一つと位置付けておりますが、同時に経営体質の強化及び将来の事業展開のための内部留保の充実に重点を置く必要があると考えており、当面の間は利益配当を実施しない方針です。

 将来的には、財政状態を勘案し、株主への還元も検討していく方針でありますが、配当実施の可能性及びその実施時期等については未定です。

 なお、剰余金の配当については期末配当の年1回を基本方針としており、期末配当の決定機関は株主総会となっております。また当社は、「取締役会の決議により毎年3月31日を基準日として、中間配当をすることができる」旨を定款に定めており、中間配当の決定機関は取締役会となっております。