人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数4,808名(単体) 47,455名(連結)
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平均年齢43.4歳(単体)
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平均勤続年数14.4年(単体)
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平均年収11,038,000円(単体)
従業員の状況
5 【従業員の状況】
(1) 連結会社の状況
2025年3月31日現在
(注) 1 従業員数は臨時従業員を除く正社員の就業人員数であります。なお、当社は工数換算ベース(※)で従業員数を把握しております。
(※)正社員のうちパートタイム労働者がいる場合、フルタイム労働者に換算して人数を算出しております。
(2) 提出会社の状況
2025年3月31日現在
(注) 1 従業員数は臨時従業員を除く正社員の就業人員数であります。なお、当社は工数換算ベース(※)で従業員数を把握しております。
(※)正社員のうちパートタイム労働者がいる場合、フルタイム労働者に換算して人数を算出しております。
2 平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。
(3) 労働組合の状況
1948年に武田薬工労働組合連合会(1946年各事業場別に組織された単位組合の連合体)が組織されました。1968年7月に連合会組織を単一化し、武田薬品労働組合と改組いたしました。2025年3月31日現在総数3,572人の組合員で組織されております。
当社グループの労働組合組織としては、友誼団体として1948年に当社と資本関係・取引関係のある6組合で武田労働組合全国協議会が結成されました。その後、1969年に武田関連労働組合全国協議会(武全協)に改称、2006年に連合団体として武田友好関係労働組合全国連合会(武全連)を結成、2009年の武全協と武全連の統合(存続組織は武全連)を経て、2025年3月31日現在は当社を含む14の企業内組合(連合会含む)が加盟しております。
上部団体としては、武全連を通じて、連合傘下のUAゼンセンに加盟しております。
なお、労使関係について特記事項はありません。
(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
① 提出会社
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
3.2024年4月1日から2025年3月31日を期間とした平均年間給与(基本給、各種手当、超過労働に対する報酬、賞与等を含み、退職手当と通勤手当を除く)および平均従業員数に基づき算出しております。当社は同等の役割に対して公平に給与を支払うことを目指しており、一貫した等級構造、信頼できる調査会社による外部調査データ、および年次給与レビュープロセスを通じてこれを実行しております。女性労働者の平均賃金が男性労働者より低い理由は、主として上級職における女性労働者数が少ないことによるものです。当社では管理職やその他の上級職の女性の割合を増やすための取り組みと行動計画を策定しており、これにより長期的には賃金の差異が縮小することを見込んでおります。
② 連結会社
(注) 1.当社グループ従業員の直属の上司である従業員を管理職に含めております。契約社員のみを管理する従業員は管理職に含めておりません。
上記指標の定義や計算方法は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)とは異なっております。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
ガバナンス
当社の取締役会は、ビジネスリスクおよび財務開示に関連するものを含め、当社の業務運営を監督する責任を有しています。取締役会は、当社グループの事業戦略、内部統制およびその他の重要事項により集中するため、一定の意思決定権を当社の取締役に委譲しています。取締役に意思決定権が委譲された事項は、ビジネス&サステナビリティ・コミッティー(「BSC」)およびリスク・エシックス&コンプライアンス・コミッティー(「RECC」)を含む適切な経営幹部レベルの委員会が議論し、意思決定を行います。BSCは、サステナビリティを含む当社の事業戦略および関連する目標、コミットメントを監督する責任を有しています。RECCは、重要なリスクに対する緩和策を含む当社のエンタープライズ・リスク・マネジメント(ERM)プログラムおよびグローバル・モニタリング・プログラムに関連する監視および決定事項にかかる責任を有しています。取締役会は、社長CEO、その他のタケダ・エグゼクティブ・チーム(「TET」)メンバーおよび各経営会議体から定期的に最新情報を入手しています。
チーフ グローバル コーポレート アフェアーズ&サステナビリティ オフィサー(「CGCASO」)は、「Patient すべての患者さんのために」、「People ともに働く仲間のために」および「Planet いのちを育む地球のために」というサステナビリティに係る3つの「私たちの約束」に対して責任を有するTETメンバーと適切に連携し、サステナビリティの取組みを統括しています。
当社では、サステナビリティ/ESG 外部開示コミッティーを設置しており、グローバル サステナビリティ ヘッドが議長を務め、各分野における社内の専門家で構成されています。同コミッティーは、当社のサステナビリティおよび環境、社会、ガバナンス(ESG)などの情報の適時かつ正確な開示を担保する責任を負っており、サステナビリティに関する義務的開示および主要な任意開示の正確性、一貫性、網羅性を精査、確認しています。
コーポレート・ガバナンス体制の変遷
当社のガバナンス体制のさらなる詳細については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 3. 業務執行に係る事項」をご参照ください。
事業戦略
当社のサステナビリティは、経営の在り方そのものです。当社は、バイオ医薬品企業としての強みと能力を活かして、患者さん、株主の皆様、および社会のための長期的な価値を創造すると同時に、環境への悪影響を最低限に抑えることで、当社の存在意義を果たしていきます。
当社の企業理念はサステナビリティに対する当社のアプローチを示しており、「存在意義(パーパス)」を「目指す未来(ビジョン)」および「価値観(バリュー)」と融合させています。当社は、パーパスとビジョンを達成するためにどこに注力をするべきか(事業戦略)を「私たちの約束」および「優先事項」で定めています。
私たちの約束は、「Patient すべての患者さんのために」、「People ともに働く仲間のために」、および「Planet いのちを育む地球のために」の大きく3つの柱に分けられており、データやデジタル、テクノロジーを活用しながら実行されています。これには、当社およびステークホルダーにとって戦略的重要性が高い非財務関連課題の評価(マテリアリティ・アセスメント)の結果が反映されています。
Patient すべての患者さんのために
当社は、科学的根拠に基づき、治療の選択肢が限られている、または選択肢のない患者さんをはじめ、すべての人々の人生を根本的に変え得るような医薬品およびワクチンの創出に取り組んでいます。これは、当社の存在意義(パーパス)の根幹となるものです。当社の研究開発(R&D)は、主要な疾患領域に焦点を当て、高度に差別化されています。私たちは、研究所の専門的な研究開発能力、社外とのパートナーシップ、患者団体との連携、健康の公平性への取り組み、およびデータ、デジタル、テクノロジーの活用などを通じて、当社製品を患者さんにお届けしています。
私たちは、患者さんに高品質な医薬品を途絶えることなく供給する責任があることを理解しています。この責任を果たすために、堅ろうなグローバルサプライチェーンシステムを構築しています。例えば、戦略上、重要な製品および原薬については、地政学的リスクや自然災害など外的要因によるリスクを軽減し、供給継続性を担保できる調達戦略を有しています。当社は製品の品質と患者さんの安全を守るために、製品のライフサイクル全体にわたり厳格な品質基準を適用しています。当社は、外部規制やガイドライン、社内要件およびGxP基準を遵守するとともに、臨床試験から製造、販売に至るまでの各段階で、製品の品質、安全性、有効性を担保しています。また、市販後調査の実施や規制当局から求められる要件に準拠することで製品の安全性と有効性を担保するとともに、追加的な調査やモニタリングを実施することでさらなる臨床データの収集を行っています。
患者さん、社会および株主の皆様のために価値を創造するためには、治療を必要とする患者さんに、当社の革新的な医薬品およびワクチンを持続可能な形でお届けする必要があります。そのため、当社では次のことに注力しております。
・アンメット・メディカル・ニーズ:人生を根本的に変え得るような非常に革新性が高い新製品を患者さんにお届けできるように、グローバルに「タケダの成長製品・新製品」を創出、開発および上市しています。特に、希少疾患領域では、当社の製品が初めてで且つ唯一の治療薬である場合が多くあります。
・医薬品のアクセスに関するスピード、対象範囲、価値および持続可能性のバランス:医薬品のアクセスおよび価格戦略において、スピード、対象範囲および持続可能性の最適なバランスの実現を目指しています。当社は、保険者、医療システムおよび社会に与える価値を反映した価格設定を行っています。価格に起因するアクセスの障壁を軽減するために、国の経済レベルや医療制度の成熟度などに応じて、国ごとに異なる価格帯を設定しています(ティアード・プライシング)。また、保険者と連携して価値に基づく契約を締結することで、新薬上市時における臨床成績や財務的影響に関する不確実性に保険者が対処できるようにしています。また、患者支援プログラムを提供し、患者さんの個々の状況に応じて経済的な支援を行うことで、革新的な医薬品へのアクセスを可能にしています。
・医療システムの強化および支援を目的としたステークホルダーとの連携:公的セクターや市民社会と連携し、医療システムに内在する当社の医薬品や関連する治療へのアクセスの障壁を特定し、対処しています。これら取組みにおいては、持続可能な方法で、各国それぞれの優先課題に沿い、地域社会と連携しながら医療システムの強化に努めています。また、パートナーと連携して患者さんの治療成績を高めるとともに、患者さんや社会により多くのベネフィットをお届けすることができる価値に基づく医療モデルへの転換を支援し、医療システムの変革を促進しています。
当社では、このように医薬品のアクセスを事業戦略に組み込むとともに、研究開発から販売にいたる当社の事業運営において取り組みを進めています。また、地域主導のアプローチを採用することで、当社の医薬品をお届けするにあたって、各地域における患者さんのニーズに応えるとともに、医療システムにおける特有のアクセス障壁に対処しています。
当社の患者さんに対する取り組みの詳細は、2025年6月30日に当社ウェブサイトに掲載を予定している2025年統合報告書「すべての患者さんのために」をご参照ください。
People ともに働く仲間のために
当社は、科学技術がどれほど進歩しても、知識を核とした「人」の力が会社を支えることを認識しています。私たちの従業員はイノベーションの源泉であり、患者さん、株主、社会のために長期的な価値を創造することを可能にしています。当社は、人生を根本的に変え得るような医薬品およびワクチンを患者さんや地域社会にお届けするため、人材開発・育成ならびに生涯学習への投資、あらゆる種類の差別を排除し従業員の潜在能力を最大限に引き出す包括性を推進する職場環境の整備、職場において従業員が能力を最大限に発揮できる帰属意識の高い企業文化の醸成に注力しています。
企業文化の醸成と人材の育成
当社の企業文化は、価値観によって形作られています。当社は、法律や規制を順守するだけでなく、常に目的意識と高い倫理的、道徳的基準に基づいて意思決定を行い、それを行動で示すことを重視しています。グローバル行動基準や新任の上級管理職がタケダの伝統や価値観を学ぶ場であるグローバル・インダクション・フォーラム、そしてロールモデルとなり従業員への価値観の浸透を担うバリュー・アンバサダー制度など様々な仕組みや学習プログラムを通じて、価値観に基づく企業文化の醸成に努めています。
また、当社は、従業員自らが自身の学習およびキャリア成長に責任をもって取り組む生涯学習の文化を重視しています。生涯学習およびキャリア成長への取り組みは、従業員の職務経験、モチベーションおよび専門性を高め、新しい発想につながり、結果的に患者さんへの価値創造につながります。当社では、従業員に対して、様々なオンライン学習や対面での学習機会を提供し、必要な知識や学びたい知識を、必要な時に最適な形で習得できるよう、学びをカスタマイズできるようにしています。
従業員の学びとキャリア成長をサポートする取組みの一つは、2024年1月に導入したAIを活用したタレントマーケットプレイス(人材と業務のマッチング)のプラットフォームであるCareer Navigatorの活用です。Career Navigatorを活用することで、従業員は自身のキャリア形成過程で身につけたいスキルや得たい経験に沿ったキャリア機会を追求することができます。2025年には、Career Navigatorに短期のプロジェクト機会に関する情報を追加しました。これにより、当社の事業に貢献しながら、自身のスキルの向上や経験の蓄積を実現することが可能になりました。また、リスクのない環境下で新しいスキルを実践できる、AIによるコーチングやロールプレイの機会も提供することで、従業員の学びや能力開発をサポートしています。2025年は、ライブ講義、自己学習、メンター制度、グループ・プロジェクトやディスカッションを組み込んだ一貫した学習体験を、何千人もの従業員に同時に提供できる新しいオンライン・プラットフォームに投資しています。
当社では、生涯学習への取組みを全社的に推進しています。例えば、製造部門および品質部門においては、従業員は月3時間をスキルの向上やスキルの再習得のために利用することができます。この時間は、必須のトレーニングや業務に関連したトレーニングの時間とは別に提供されています。
当社では、従業員が自らのキャリア成長を明確化し、その意欲を高める上で極めて重要な役割を担うリーダーの育成を最優先課題として取り組んでいます。2024年度には、包括的な育成プログラムおよび革新的なチェンジマネジメントツールキットを導入しました。育成プログラムには、新たに採用した上級管理職や上級管理職に昇進した社員を効果的に受け入れるためのシニアリーダー・インダクション・プログラムと、将来の戦略的役割を担うシニアリーダーの育成を支援する16ヶ月間のタケダ・アスパイア・プログラムが含まれます。
当社では、テクノロジーを業務に組み込み、未来のヘルスケアに対応できる組織にするため、従業員のデジタルスキルやデジタル活用意識の強化に投資しており、自動化プログラムの構築や、個人の生産性向上、生成AIの活用など従業員がデジタル活用能力を向上することができるよう、事業部門や機能全体でスキル向上の機会を提供しています。2024年7月には、新たなデジタルデクステリティ(デジタル技術を高度に活用する能力・意欲)の最初の重要なステップとして、当社の学習プラットフォームにおいてEveryday AIを立ち上げました。Everyday AIは、AIおよび生成AIの必要なスキルを育成するためのプラットフォームです。
当社は、革新的な医薬品を創出し患者さんにお届けするという価値観に基づき、デジタルスキルを含め、生涯学習およびキャリア開発を促進する企業文化を醸成することに取り組んでいます。
当社は、グローバルなバイオ医薬品企業として、異なる考え方や経験を尊重するとともに、あらゆる種類の差別を排除し、包括性を推進する職場環境を整備することで、 優秀な人材をグローバルに惹きつけ、育成し、定着を図っています。当社では、価値観によって形作られた企業文化を醸成することで、従業員一人ひとりが自身の価値を認められ、所属に関係なく、自身の潜在能力を最大限に発揮できるような機会やリソースにアクセスすることができます。
社内環境整備方針
「世界中の人々の健康と、輝かしい未来に貢献する」という当社の存在意義(パーパス)は従業員が心身ともに健康であることを前提に実現されるものです。当社のウェルビーイングプログラムは、精神面、身体面、社会面、経済面の4つの分野から従業員の心身の健康に焦点を当てています。当社の全従業員はThrive Globalプログラムにアクセスし、睡眠、栄養、運動といったウェルビーイングの要素を管理することができます。Thrive Globalプログラムは、ストレスを軽減し生産性を向上させるツールやリソースを提供することで行動変化を促し、ウェルビーイングを改善していくことを目的としたプラットフォームです。
また、この1年間において、ウェルビーイングの取組みを強化するためにさらなる施策を実施しました。この一環として、従業員支援プログラムをより多くの国に拡大させました。同プログラムには、電話や現地語による短期カウンセリング、法的・経済的サポートが含まれ、全ての従業員が同じ福利厚生や支援を利用できるようになりました。
ライフ・ワーク・アライメントは従業員が新しいよりフレキシブルな勤務形態に適応する上で最も考慮すべき点であり、顔を合わせて行う協働と在宅勤務を両方取り入れるなど、従業員の能力を最大限に引き出すために多様な働き方を尊重しています。具体的な勤務形態はチームによって異なりますが、イノベーションを促進するためにオフィスの空間デザインにも工夫を凝らし、従業員のウェルビーイング(心身の健康)とパフォーマンスを向上させ、柔軟性があり、対面でのコミュニケーションの価値を実感できるような環境づくりを行うなど、働き方改革を加速させています。また、レジリエンス(回復力)のスキルを強化するための学習プログラムを活用し、メンタルヘルスについて話すためのツールをマネージャーに提供しています。
当社は、国連グローバル・コンパクトの署名企業として、バリューチェーンやタケダが貢献する地域社会を含む当社事業のあらゆる場面において、国際的に認められた人権の尊重と推進に力を入れて取り組んでいます。
当社の人材、人材育成と企業文化の醸成、および社内環境整備にかかる方針のさらなる詳細は、2025年6月30日に当社ウェブサイトに掲載を予定している2025年統合報告書「ともに働く仲間のために」をご参照ください。
Planet いのちを育む地球のために
当社は、気候変動や環境悪化が患者さんや人々の健康に影響を及ぼすことを理解し、環境の分野において積極的に取り組んでいます。当社は、事業活動およびバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量の最小化、天然資源の保全、ならびに持続可能性に配慮した製品設計および生産に重点を置いて、環境サステナビリティ活動に取り組んでいます。「Planet」に係る取り組みは、現在、環境サステナビリティの様々な側面に専念した3つのプログラムで構成されています。
•気候変動対策プログラム
2035年度までに自社の事業活動に起因する温室効果ガス排出量(スコープ1および2)を、2040年度までにバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量(スコープ1、2および3)をネットゼロにすることを目標に掲げています。これらの目標は、2024年にSBTi(科学的根拠に基づく目標イニシアチブ)の認証を取得しました。
•環境配慮設計プログラム
製品の設計や開発に、環境ライフサイクルの視点を取り入れることで、バリューチェーン全体で環境負荷を最小限に抑えることを目指します。
・天然資源保全プログラム
水の保全、責任ある廃棄物管理、生物多様性保全活動などを通じて、気候変動以外の事業による環境負荷の低減を目指します。
当社は、気候変動に関連したリスクに対するレジリエンスの強化および機会の特定に積極的に取り組んでいます。気候変動による物理的リスクおよび移行リスクの評価と管理は、コーポレートEHS(環境、健康・衛生、安全)のチームが主導し、組織全体のリスク管理フレームワークに組み込んでいます。事業所に固有の気候変動による業務運営リスクは、事業所や施設レベルのリスク評価からボトムアップのアプローチにより特定しています。また、サプライチェーンにおけるリスクは、第三者リスク管理プログラム(TPRM)を利用したサプライヤーのスクリーニングを通じて特定しています。
当社は、気候変動によるリスクを軽減し、自社の事業活動に起因する温室効果ガス排出量をネットゼロにするため、製造拠点、バイオライフ(血漿収集施設)、オフィスにまたがる拠点において、事業所固有のロードマップを策定し、温室効果ガス排出量を削減するための様々な脱炭素施策を展開しています。これらの施策には、低炭素技術への投資(ハイブリッド自動車や電気自動車など)および可能な場合は100%再生可能電力への移行が含まれます。また、サプライヤーと協力して排出量削減目標を設定し、製品開発に係る排出量を最小化し、航空輸送の代替として海上輸送を増やすことにより、バリューチェーン排出量の削減を目指すとともに、削減が困難な排出に対処するために、新たな外部連携にも戦略的な投資を行っています。当社は、気候変動に係る目標を達成するために、短期および長期の排出量削減戦略を進化・強化しています。
当社は、2024年に、気候変動のリスクと機会についてシナリオ分析を刷新し、特定のサプライチェーンリスクを含め、移行リスクおよび物理的リスクに焦点を当てて評価を実施しました。
移行リスク評価では、2050年までの時間軸について、気候変動に対する世界の対応レベルの違いによって異なる3つの気候変動シナリオ(「迅速な気候変動対策」、「気候変動対策の遅延」、「中道的な気候変動対策」)を設定し、当社の規制、技術、市場および評判(レピュテーション)に関するリスクを評価しました。当該評価では、当社が現在計画しているネットゼロ達成のための施策を考慮した場合と、それらの施策がない場合に、移行リスクにどの程度晒されるかも考慮しました。
物理的リスク評価では、当社の事業運営および第三者である主要な医薬品製造受託機関(CMO)およびサプライヤーについて、気温、水、風および土地に関連する危険性を、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって設定された2つの共通社会経済経路シナリオ(SSP2-4.5とSSP5-8.5)に基づいて評価しました。物理的リスクは、グロスベースで評価しており、当社の事業運営またはCMOの事業運営に対して、現在実施中の緩和策あるいは現在計画中の緩和策の更新が及ぼす影響は考慮されていません。
このプロセスを通じて、当社に潜在的に該当するいくつかの気候関連リスクと機会を特定することができました。移行リスクに関しては、潜在的な国レベルおよび地域レベルの炭素税導入に伴って、サプライヤーからのコストが増加する可能性や、化石燃料由来のエネルギー源の価格上昇に起因する事業運営費の増加に晒される可能性があるものの、前述の脱炭素施策を引き続き実施すれば、そのようなコストは大幅に減少することが示唆されました。さらに、低炭素製品に関する市場トレンドの定性的な分析では、当社は製品プロファイルが差別化できており、比較可能な代替品がないことから、低炭素製品における競争リスクが比較的低いことが示されました。
物理的リスクに関して、モデル化されたシナリオでは、当社の直接的な事業運営あるいはCMOの事業運営に対する以下の潜在的な気候関連リスクと影響を特定しました。
(1) SSP2-4.5シナリオ: 温室効果ガス排出量が2050年まで現在のレベルで続き、その後減少するが、2100年までに地球の気温が2.1~3.5℃上昇すると推定される中程度の排出経路を示しています。
(2) SSP5-8.5シナリオ: 現在のCO2排出量が2050年までに約2倍、2075年までに約3倍に増加し、2100年までに地球の気温が3.3~5.7℃上昇すると推定される、非常に高い温室効果ガス排出経路を示しています。
出典:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)政策決定者のための要約
上記の事業運営に対する物理的リスクの中で、水不足によるリスクは最も増加することが予測されており、熱ストレスによるリスクは分析されたリスクの中で最も影響度が大きいと予測されています。いずれも当社の事業全体に加え、現在提携しているCMOおよびサプライヤーに及ぶものです。2つのシナリオのいずれにおいても、影響の深刻度(Impact Severity)はほぼ同等であったものの、特に干ばつと熱ストレスによるリスクについては、SSP5-8.5シナリオにおける影響がやや大きくなっています。さらに、当社の日本の事業運営では、熱帯低気圧と地震のリスクがある一方、ヨーロッパに拠点を置くCMOは地滑りのリスクに晒されていますが、シナリオ評価においては、気候変動によるこれらの危険性の増加は予測されていません。
当社は、これらのリスク評価および得られた知見をリスク管理プロセスに統合し、物理的リスク評価を考慮して各施設の気候変動適応戦略を精査しています。
さらに、2024年度には、生物多様性への影響や取水、水使用および廃棄物の潜在的な影響など、環境への影響に関する初期評価を実施し、環境への取組みや目標の検討に活用しました。当該評価を行うために、エネルギー使用、土地使用、水の消費、廃棄物発生など事業運営に関わる主要な指標を、確立された第三者の科学的データと比較してリスクスコアを算出し、潜在的なリスクエリアおよび対策を優先的に実施すべき事業所を特定しました。
この分析から、当社が環境に与える影響の中で、最も影響度が大きなものはエネルギー使用であることが特定されました。主に製造活動に関連する水および廃棄物関連の影響は、主要な自然関連の直接的な影響として特定されましたが、これらの影響に関連するリスクの財務的な重要性の評価は実施しませんでした。
また、バリューチェーンの上流および下流における環境への潜在的な影響も評価しましたが、利用可能なデータが不足していることから、特に原材料調達に関して、分析は限定的なものとなりました。このような制約があったものの、トウモロコシ(細胞培養、エタノール)、パルプ由来の材料(二次紙パッケージ)、木材(パレット、オフィス用品)、ウシ由来血清(バイオ医薬品製造)、サトウキビ(エタノール、賦形剤)については、バリューチェーンの上流において依存していることが特定されましたが、これらの依存関係に関連するリスクの財務的な重要性の評価は実施しませんでした。
当社は、将来的に、環境への影響および依存関係に関連する財務リスクのさらなる分析を行う予定です。
リスク管理
リスク管理は、当社で働く人材、資産、社会的評価・評判(レピュテーション)を守り、当社の成長と成功に向けた長期的な戦略を支える柱となります。これまでに特定されたサステナビリティに関連するリスクは、既存のグローバルおよび事業場レベルのリスク管理プロセスを通じて対処されています。
全社的なリスク管理プロセスは、取締役会の監督のもとチーフ・エシックス&コンプライアンス・オフィサーが統括しています。また、主要な全社的リスクおよびそれらのリスクの発生防止・低減措置の実効性は、RECCおよび取締役会によって毎年承認されています。
リスク管理は全社的な事業体制に組み込まれており、全社的リスク評価プロセスによって、サステナビリティに関連するリスクを含めたリスクを識別、評価し、またそのリスク低減施策を実施しています。このプロセスは、リスクの全体像を把握し、リスクに基づいた意思決定を行う企業風土を醸成するようデザインされています。関連する各部門は、担当領域ごとに主要なリスクとその対応への責任を担っています。
当社のリスク管理プロセスのさらなる詳細については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 3. 業務執行に係る事項 <内部統制システムに関する基本的な考え方とその整備状況> ③損失の危険の管理に関する規程その他の体制」をご参照ください。
指標および目標
当社は、企業理念に基づく行動を通して、長期的な価値の創造を目指しています。関連する部門で働く従業員が意見を出し合って「企業理念に基づく私たちの指標(corporate philosophy metrics)」を策定しました。従業員は、各評価指標の進捗状況を社内ポータルサイトでいつでも確認できるようになっています。透明性の高い情報共有は、従業員一人ひとりがタケダの持続的な成長に責任を持ち、社外ステークホルダーとの信頼関係の構築を促します。
Patient すべての患者さんのために
(注)2023年度および2024年度の上表の各種指標については、KPMGあずさサステナビリティ株式会社より、国際監査・保証基準審議会(IAASB)によって発行されたISAE(国際保証業務基準)3000及びISAE3410に準拠した限定的保証業務を受けています。その結果、同社より、2023年度の指標については2024年6月25日付で、2024年度の指標については2025年6月24日付で、すべての重要な点において、会社の定める規準(2023年度については当社のウェブサイトに掲載されており、2024年度については2025年6月30日に当社のウェブサイトに掲載予定)に従って算定され、表示されていないと認められる事項は発見されなかったとの結論を受領しております。
People ともに働く仲間のために
(注)2023年度および2024年度の上表の各種指標については、KPMGあずさサステナビリティ株式会社より、国際監査・保証基準審議会(IAASB)によって発行されたISAE(国際保証業務基準)3000及びISAE3410に準拠した限定的保証業務を受けています。その結果、同社より、2023年度の指標については2024年6月25日付で、2024年度の指標については2025年6月24日付で、すべての重要な点において、会社の定める規準(2023年度については当社のウェブサイトに掲載されており、2024年度については2025年6月30日に当社のウェブサイトに掲載予定)に従って算定され、表示されていないと認められる事項は発見されなかったとの結論を受領しております。
Planet いのちを育む地球のために
当社は、スコープ1および2の温室効果ガス排出量を、2025年度までに2016年度基準から40%削減する目標を2020年に設定しました。また、排出量の67%を占めるサプライヤーが2024年度までに科学的根拠に基づく目標を設定する目標も設定しました。これらの目標はSBTi(科学的根拠に基づく目標イニシアチブ)の認証を取得しました。2022年には、2035年度までに当社の事業活動に起因する温室効果ガス排出量(スコープ1および2)を、2040年度までに当社のバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量(スコープ3の温室効果ガス排出量の見積もり(注1)を含む)をネットゼロ(注2)にする新しい目標を公表しました。これらのコミットメントは、必要とされる短期的な排出削減目標とともに、2024年にSBTiの認証を取得しました。当社は、2022年度まで、カーボンニュートラルを維持してきましたが、2024年度からは、気候変動対策の目標としてのカーボンニュートラルからの転換を行いました。当社は、ネットゼロに焦点を当てる一環として、自主的炭素市場(Voluntary Carbon Market:VCM)を引き続き支援し、人々の健康に役立ち、SBTiの企業ネットゼロ基準に適合するカーボン除去のソリューションやプロジェクトに優先的に投資していきます。
(注1)実際のスコープ3の排出量は測定が困難であり不透明性が残ることからも、これらは取り組みを進めていく上で今後克服すべき重要な課題です。
(注2)当社は、SBTiの企業ネットゼロ基準に従ってネットゼロ排出量を定義しています。
* 当社の温室効果ガス排出量を計算するための方法の詳細については、2025年6月30日に当社ウェブサイトに掲載を予定している「ESGデータブック」をご参照ください。
(注)2023年度および2024年度の上表の各種指標については、KPMGあずさサステナビリティ株式会社より、国際監査・保証基準審議会(IAASB)によって発行されたISAE(国際保証業務基準)3000及びISAE3410に準拠した限定的保証業務を受けています。その結果、同社より、2023年度の指標については2024年6月25日付で、2024年度の指標については2025年6月24日付で、すべての重要な点において、会社の定める規準(2023年度については当社のウェブサイトに掲載されており、2024年度については2025年6月30日に当社のウェブサイトに掲載予定)に従って算定され、表示されていないと認められる事項は発見されなかったとの結論を受領しております。
データ・デジタル&テクノロジー
(注1)2023年度および2024年度の上表の各種指標については、KPMGあずさサステナビリティ株式会社より、国際監査・保証基準審議会(IAASB)によって発行されたISAE(国際保証業務基準)3000及びISAE3410に準拠した限定的保証業務を受けています。その結果、同社より、2023年度の指標については2024年6月25日付で、2024年度の指標については2025年6月24日付で、すべての重要な点において、会社の定める規準(2023年度については当社のウェブサイトに掲載されており、2024年度については2025年6月30日に当社のウェブサイトに掲載予定)に従って算定され、表示されていないと認められる事項は発見されなかったとの結論を受領しております。
(注2)医療用医薬品の適正使用に関する情報やWeb講演会を提供する日本の医療従事者向け会員サイト。
事業の成長
(注)2023年度および2024年度の上表の各種指標については、KPMGあずさサステナビリティ株式会社より、国際監査・保証基準審議会(IAASB)によって発行されたISAE(国際保証業務基準)3000及びISAE3410に準拠した限定的保証業務を受けています。その結果、同社より、2023年度の指標については2024年6月25日付で、2024年度の指標については2025年6月24日付で、すべての重要な点において、会社の定める規準(2023年度については当社のウェブサイトに掲載されており、2024年度については2025年6月30日に当社のウェブサイトに掲載予定)に従って算定され、表示されていないと認められる事項は発見されなかったとの結論を受領しております。
当社のサステナビリティへの取り組みのさらなる詳細は、2025年6月30日に当社ウェブサイトに掲載を予定している2025年統合報告書をご参照ください。