リスク
3 【事業等のリスク】
当社の業績は、現在および将来において様々なリスクにさらされており、リスクの顕在化により予期せぬ業績の変動を被る可能性があります。以下では、当社が事業を展開していくうえで直面しうる主なリスクを記載しています。なお、以下に記載したリスクは当社の全てのリスクを網羅したものではなく、記載以外の潜在的かつ不確実なリスクも存在し、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。
当社のグローバルリスク管理ポリシーについては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 3.業務執行に係る事項 <内部統制システムに関する基本的な考え方およびその整備状況> ③ 損失の危険の管理に関する規程その他の体制」をご参照ください。
なお、本項目に含まれる将来に関する事項およびリスクは、当年度末現在において判断したものです。
(1)研究開発に関するリスク
当社は、持続的成長を実現するために、最先端の科学で革新的な医薬品を創出することを目指しています。当社は、研究開発機能の向上および社外パートナーとの提携等により研究開発パイプラインを強化すると共に、世界各国の市場への一日も早い新製品の上市を目指し、質の高い革新的な研究開発パイプラインを構築することで研究開発の成功確率を高める等により効率的な研究開発活動に努めています。しかしながら、医薬品は、自社創製候補物質、導入候補物質にかかわらず、所轄官庁の定めた有効性と安全性に関する厳格な審査により承認されてはじめて上市可能となります。
研究開発の途上において、当該候補物質の有効性・安全性が、承認に必要とされる水準を充たさないことが判明した場合またはその懸念があると審査当局が判断した場合、その時点で当該候補物質の研究開発を途中で断念、または追加の臨床試験・非臨床試験を実施せざるを得ず、それまでにかかったコストを回収できないリスクや製品の上市が遅延するリスク、および研究開発戦略の軌道修正を余儀なくされる可能性があります。
(2)知的財産権に関するリスク
当社の製品は、物質・製法・製剤・用途特許等の複数の特許によって、一定期間保護されています。
当社では特許権を含む知的財産権を厳しく管理し、当社が事業を行う市場における知的財産権や第三者からの侵害状況を継続的にモニタリング、評価および分析し、知的財産権に関するリスクの回避と、受けうる影響の低減を図っていますが、当社の保有する知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が大幅に失われる可能性があります。また、当社の自社製品等が第三者の知的財産権を侵害した場合には製造販売の差止めおよび損害賠償等を請求される可能性があります。
(3)特許権満了等による売上低下リスク
当社は、効能追加や剤型変更等により製品のライフサイクルを延長する努力をしていますが、多くの製品について、特許または規制上の独占権の喪失・満了による後発品の市場参入は避けられず、米国や欧州では後発品が参入すれば通常、短期間で先発品から後発品へ切り替わり、先発品の収益が大きく減少します。国内では、当局が後発品の使用促進を積極的に進め、また、長期収載品のさらなる価格引下げが行われています。これに加え、競合品の特許権満了によるその後発品、および競合品のスイッチOTC薬の出現などによって、国内外の競争環境は格段に厳しいものになってきており、その影響如何で当社製品の大幅な売上低下を招く可能性があります。
なお、特許権満了時期等の詳細については「第2 事業の状況 6 研究開発活動 知的財産」をご参照ください。
(4)副作用に関するリスク
医薬品は、世界各国の所轄官庁の厳しい審査を経て発売されます。当社は発売後の医薬品について安全性情報を収集し有効性とリスクのバランスを評価することを含め、安全性監視活動とリスク最小化活動を実施し、ファーマコビジランス活動を推進し、副作用に関するリスクの回避と受けうる影響の低減に努力していますが、市販後の使用成績が蓄積された結果、発売時には予期していなかった副作用が確認されることがあります。新たな副作用が確認された場合には、添付文書の「使用上の注意」への記載を行う、使用する対象患者を制限する、使用方法を制限するなどの処置が必要となるほか、重篤なケースが認められた場合には、販売中止・回収等を余儀なくされることもあり得ます。また、このような場合において、当社は製造物責任を負うとともに、金銭的、法的および社会的信頼に関する損害を負う可能性があります。
(5)薬剤費抑制策による価格引き下げのリスク
医薬品市場では、多くの国々において医療予算の削減が推進され、医療技術評価および国際価格を参照する政策により医薬品価格が低下しています。最大市場である米国では、医薬品価格を下げるための医療計画や仲介機関による取り組みに加え、継続的な法令および規制の制定により先発品への価格引き下げ圧力が一層高まっています。2022年には、米国議会において、インフレ抑制法(Inflation Reduction Act:IRA)が可決され、薬価上昇率がインフレ率を上回った製薬会社に対するペナルティの賦課、メディケア受給者の自己負担額の上限設定、2026年よりメディケアの対象となる特定の医薬品に関する連邦政府への価格設定権限の付与等、メディケア・プログラムに基づく医薬品の補償条件が大幅に変更されました。また、2025年5月には、米国の処方薬価格を、選定された「同等に発展した国々」での最も低い価格に連動させる価格設定メカニズムである「最恵国待遇(MFN)」価格の導入に関する大統領令が発出されました。日本においては、政府による一層の後発品の使用促進に加え、医療保険制度における多くの製品の公定薬価が、毎年引き下げられています。欧州においても、薬剤費を抑制し、価格透明性を高め、国際価格を参照する政策により、医薬品価格が低下していますが、さらに欧州委員会が、知的財産権に関するインセンティブ、規制当局によるデータ保護、希少疾患用医薬品の市場独占期間の短縮または修正を含むEUの薬事法制の改正案を提案していることから、今後価格引き下げ圧力が高まることが予想されます。また、当社は、中国を含む新興国等のその他の国・地域においても同様の価格圧力を受けています。当社がこれらの国・地域に事業を拡大するに伴い、今後も引き続き価格圧力を受けると予想されます。
当社は、各国の薬剤費抑制策の詳細な分析やモニタリングを行い、医薬品の価格状況を管理する組織体制を構築することでリスクの回避と影響低減の努力を行うと共に、各国政府や医療サービス供給者・保険者等と協力して、革新的な医薬品に対する適切な報酬制度を確立するために、価値に基づく新しい価格設定モデル(バリューベースド・プライシング)等の解決策を追求していますが、これら各国の薬剤費抑制策による価格引き下げにより、当社製品の価格が影響を受け、当社の業績および財務状況に悪影響が生じる可能性があります。
(6)企業買収に関するリスク
当社は、持続的な成長を加速させるため、必要に応じて企業買収を実施しています。世界各国における事業活動は、法令や規則の変更、政情不安、経済動向の不確実性、商慣習の相違その他のリスクに直面する可能性があり、その結果当初想定した買収効果や利益が実現されない可能性があります。取得した資産の価値が下落し、評価損等が発生した場合や、買収した事業の統合から得ることが期待されている利益が実現されない場合には、のれんおよび無形資産等の減損損失の計上等により、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、過去の企業買収に関連する金融機関からの多額の借入れを含め、当社は多額の債務を負っています。当社は、利益の創出および選択的な非中核資産の売却等を通じてレバレッジの速やかな低下を進めていますが、将来の当社の財務状況が悪化した場合には、信用格付けが引き下げられ、その結果、既存の債務の借り換えや新規借入れ、その他資金調達の条件にも影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社のコミットメントラインは必要に応じて随時資金の引き出しが可能なものであり、これに関連して、一定の財務制限条項が付されています。かかる条項に抵触した場合には、当該コミットメントラインの利用が制限され、また、同コミットメントラインを使用した全ての債務残高等について即時返済が求められる可能性があり、その結果、当社の財務状況に影響を及ぼすおそれがあります。
(7)安定供給に関するリスク
当社は、販売網のグローバル化に確実に対応するとともに、当社製品への需要に対し適切な供給量を確保していくため、供給ネットワークと品質保証体制を強化しており、具体的には、製造設備への適切な投資、必要に応じて複数のサプライヤーと適切な在庫水準を確保するための製造供給戦略の策定、代替サプライヤーの選定、当社内の製造ネットワークに係る危機管理規則の制定、事業継続管理システムの導入および定期的な内部監査等を行っています。しかしながら、当社または委託先の製造施設・物流施設等において、技術上もしくは法規制上の問題、原材料の不足、想定を超える需要、または自然災害の発生や新興感染症の流行、進出国における紛争あるいは各国・地域間における地政学的緊張の高まり等により、製商品の安定的供給に支障が発生する可能性があります。その動向によっては、当社の業績、財務状況および社会的信頼に影響を及ぼす可能性があります。
(8)IT セキュリティ、情報管理およびデジタル技術に関するリスク
当社は、顧客ニーズに合致したデジタルビジネスモデルへ移行するためデジタル変革を加速しています。とりわけデジタル技術活用の強化は、当社の持続的成長に不可欠であり、今後の成長戦略の基盤として位置付けています。一方で、事業の特性上、センシティブな個人情報を含む大量の機密情報を取り扱っていることから、データ保護ならびにセキュリティ対策の重要性がいっそう高まっています。データ活用やデジタルプラットフォームへの依存度が高まる中、大規模かつ複雑なIS/IT システム(アウトソーシング企業のシステムを含む)の利用に伴い、従業員またはアウトソーシング企業の不注意または故意の行為に加え、AIを利用した高度化するサイバーアタックなど、悪意をもった第三者による攻撃により、システムの停止やセキュリティ上の問題が発生するリスクは増大し、影響範囲も拡大しています。さらに、世界的なプライバシー規制の強化、法的要求事項の複雑化、急速に進歩する新たなデジタル技術やソーシャルメディアの普及により、データとテクノロジーの倫理的かつ適切な活用に関するガバナンスや意識向上が不可欠となっています。
当社は、業務効率と収益性の向上を目的としたデジタル変革を推進し、ネットワーク基盤の改修とクラウド移行をはじめとした効果的なテクノロジー投資を行うとともに、重点領域のリスク低減に係る専門チームの配置を含むグローバルレベルでのサイバーセキュリティ戦略の策定等によりセキュリティの継続的な強化に努めています。また、包括的なポリシーや手続きを整備するとともに、事業リスク評価および監査や第三者によるリスク低減テストを実施し、モニタリングを含めデータ管理に関する組織的な意識向上を図るなど、リスクを低減するための戦略的な取組みを進めています。
しかしながら、当社がデジタル変革により期待される効果や利益を創出できない場合、当社の市場競争力が低下する可能性があります。また、システムの停止やセキュリティ上の問題が発生した場合、あるいはデジタル技術が適切に活用されない場合、当社の事業活動への悪影響、業績および財務状況の悪化、ならびに当社に対する社会的信用が失墜する可能性があります。
(9)コンプライアンスに関するリスク
当社は事業の遂行にあたって、薬事規制や製造物責任、独占禁止法、個人情報保護法等の様々な法的規制やGMP (Good Manufacturing Practice)、GQP(Good Quality Practice)、GCP (Good Clinical Practice)、GLP (Good Laboratory Practice)等のガイドラインの適用を受けています。また、当社は多数のエージェント、サプライヤーや卸売業者等の第三者と協力関係にありますが、顧客に対するエンゲージメント戦略の進化に伴うデジタル・オムニチャンネルの利用拡大、希少疾患およびワクチン領域への製品ポートフォリオの拡大およびデータ・デジタル技術の進化に伴う外部ステークホルダーとのパートナーシップの増加など、当社の事業活動の進化に伴い、これらの第三者による業務遂行の影響は増加しています。さらに、当社ではソーシャルメディア・プラットフォームを含むデジタルプラットフォームの使用が増加していますが、これらが法令および社内規定に遵守しない方法により使用される可能性があります。当社は、グローバルエシックス&コンプライアンス部門を設置し、グローバルでコンプライアンスを推進する体制を整備し、当社および当社が関係する第三者の事業活動が法令および社内規定を遵守して実施されていることをモニタリングしています。また、第三者との取引あるいは対話にかかる社内ポリシーを新たに制定あるいは更新し、リスクの低減にも努めています。第三者リスク管理(サードパーティリスク管理)の一環として、デューデリジェンスを強化するとともに、潜在的なリスクを特定できるよう取引業者および取引内容の継続的なスクリーニングについても更なる強化を図っています。しかしながら、当社の従業員や、当社が関係する第三者がこれらの法令等に違反した場合や社会的要請に反した行動をとった場合、法令による処罰や制裁、規制当局による処分、訴訟の提起を受ける可能性があり、社会的な信頼を失うとともに金銭的損害を負う可能性があります。
(10)進出国および地域におけるカントリーリスク
当社は、グローバルな事業展開に伴い、進出国や地域における政治不安、経済情勢の悪化、関税その他の貿易制限措置、新興感染症の流行、社会混乱、進出国における紛争、各国・地域間における地政学的緊張の高まり等に伴う投資、データの越境規制など様々なリスクにさらされています。また、各国においてビジネスと人権に関する法規制の整備が進んでおり、バリューチェーン全体での人権侵害リスクへの対応の必要性が高まっています。当社は、各部門の連携のもと、これらのリスクが当社の事業に与える影響の分析や各地域における社会情勢のモニタリング、人権デューデリジェンスの実施等を通じてリスクに対応する体制を構築しており、患者さんの医薬品へのアクセスを保護することを優先事項として、リスクの抑止策や発生時の対処法を検討する等のリスク管理に努めています。しかしながら、当社または当社と協力関係にある第三者が事業を行っている地域において、不測の事態が生じた場合には、当社の業績、財務状況及び社会的信頼に影響を及ぼす可能性があります。
(11)為替変動、金利変動およびインフレーションに関するリスク
当社の当年度における海外売上収益は4兆1,631億円であり、連結売上収益全体の90.9%を占めており、そのうち米国での売上収益は2兆3,797億円にのぼり、連結売上収益全体の51.9%を占めています。従って、売上収益については円安は増加要因である一方、研究開発費をはじめとする海外費用が円安により増加するため、利益に対する影響は双方向にあります。また、機能通貨以外で実行される事業上の取引、金融取引および投資に関して為替変動リスクにさらされています。さらに、金利変動による資金調達コストの上昇や、世界的なインフレーションの進行が当社の利益を圧迫する可能性があります。当社は為替および金利リスクを集約的に管理し、これらの財務リスクをヘッジするためにデリバティブ取引を行うとともに、取引先との契約条件の見直し等により潜在的な影響の緩和を図っていますが、経済環境や金融市況が当社の想定を超えて変動した場合には、当社の業績および財務状況に影響が生じる可能性があります。
(12)訴訟等に関するリスク
当社の事業活動に関連して、現在関与している訴訟のほか、将来、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題、公正取引等に関連し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、当社の業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、係属中の重要な訴訟の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 32 コミットメントおよび偶発負債」をご参照ください。
(13)環境に関するリスク
環境はウェルビーイング(心身の健康)の基礎であり、私たちは事業活動に欠かせない自然資源を環境から得ています。環境保全に対する責務の遂行は、当社の事業の発展に不可欠であり、当社の価値観(バリュー)に沿うものです。これは、単に正しい行いをするというだけではなく、人生を変えうるような医薬品やワクチンを責任をもって患者さんにお届けできるようにするものです。そのために、当社は、ステークホルダーからの期待に沿いつつ法規制にも遵守した厳格な環境マネジメントシステムおよび社内プログラムを整備するとともに、これらが有効に運用され、期待する結果を実現していることを確認するための内部監査手続を定めています。しかしながら、万が一、予期せぬ汚染や法規制への不適合、不十分な環境保全活動が顕在化した場合には、社会的信頼を損なうとともに、行政措置の対象となり、保険の適用範囲外または補償金額を超える支払義務を伴う改善措置の実施や法的責任を負うことにより、当社の事業活動に悪影響が生じる可能性があります。また、環境法規制の改正や社会の期待の変化により、より厳しい要請への対応が課せられ、当社の研究、開発、製造その他の事業活動に影響が及ぶ可能性もあります。かかる要件の遵守や課題への対応が行われない場合には、法規制上の責任を負い、当社の社会的信頼に影響を及ぼすとともに、当社の業務遂行能力に悪影響が生じ、ステークホルダーに対する魅力が低下する可能性があります。
これまでのところ、気候変動に起因するコンプライアンスまたは訴訟等の重大な影響はありませんが、当社は、気候変動を、人々の健康に大きな影響を及ぼす深刻なグローバル課題であるとともに、当社の事業に財務的なリスクをもたらす可能性のある課題であると認識しています。当社は、2024年に気候関連リスクと機会に関するシナリオ分析を更新し、移行リスクおよび物理的リスクに焦点を当てた評価を実施しました。当該評価には、特定のサプライチェーンリスクも含まれています。移行リスク評価では、規制、技術、市場、および評判に関するリスクを対象とし、気候変動に対するグローバルな対応レベルによる異なる3つの気候変動シナリオ(すなわち、「迅速な気候変動対策(Rapid Climate Action)」、「気候変動対策の遅延(Delayed Transition)」、「中道的な気候変動対策(Middle of the Road)」)に基づき、2050年までの時間軸における当社への影響を評価しました。物理的リスク評価では、当社の事業運営および第三者である主要な医薬品製造受託機関(CMO)およびサプライヤーについて、気温、水、風および土地に関連する危険性を、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によって設定された2つの共通社会経済経路シナリオ(SSP2-4.5(1)とSSP5-8.5(2))に基づいて評価しました。本プロセスを通じて、当社に潜在的に該当する気候関連リスク・カテゴリーを特定することができました。これには、各国および地域レベルでの炭素税導入に伴うサプライヤーからのコスト転嫁の増加の可能性、および高温ストレス、水資源の不足、洪水による当社の事業運営および医薬品製造受託機関(CMO)への物理的リスクが含まれており、これらが顕在化した場合には、当社の事業、業績および財務状況に影響が生じる可能性があります。また、当社では、気候変動関連リスクを全社的リスク管理体制に組み込んでおり、今後新たに顕在化しうるリスクの傾向を適切にモニタリングできる体制を取っています。当社では、潜在的な影響を緩和するため、低炭素型事業への移行を進めています。当社は、2022年度まで、カーボンニュートラルを維持してきましたが、2024年度からは気候変動対策の目標としてのカーボンニュートラルからの転換を行い、ネットゼロのロードマップを進めるための取り組みにリソースを集中させる一方で、バリューチェーンを超えた自然を活用したカーボン除去プロジェクトへの投資を継続しています。
当社の重要なステークホルダーは当社に対して優れた環境保全活動を遂行することを期待していると認識しており、当社は自社の製品および事業活動から生じる環境への影響を緩和するための方策を継続的に模索しています。当社は、事業活動およびバリューチェーン全体における温室効果ガス排出量の最小化、天然資源の保全、ならびに持続可能性に配慮した製品設計および生産に重点を置いて、環境サステナビリティ活動に取り組んでいます。また、これら取り組みを補完する分野にも引き続き注力しており、水資源の保全を支援するための自然資源保護への取り組み、責任ある廃棄物処理、生物多様性の保全をはじめとし、製品ライフサイクル全体を通じて環境への影響を最小限に抑えるため、製品開発のすべての段階においてサステナビリティの原則を取り入れています。これらの取り組みにより成果が得られた場合には、地球の生態系と人々の健康を守りながら、当社に対する社会的評価の向上と当社事業の強化に繋がることとなり、患者さんに貢献するという当社の揺るぎない使命を果たし続けられることになります。一方で、当社が掲げているサステナビリティの高い目標に向けた行動を実施できない場合や、ステークホルダーの期待に沿う結果が得られない場合には、当社に対する社会的信頼が損なわれ、その結果、従業員の採用・維持や顧客や投資家との関係の構築において問題が生じ、当社の業績および財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
(1) SSP2-4.5シナリオ:温室効果ガス排出量が2050年まで現在のレベルで続き、その後減少するが、2100年までに地球の気温が2.1~3.5℃上昇すると推定される中程度の排出経路を示しています。
(2) SSP5-8.5シナリオ:現在のCO2排出量が2050年までに約2倍、2075年までに約3倍に増加し、2100年までに地球の気温が3.3~5.7℃上昇すると推定される、非常に高い温室効果ガス排出経路を示しています。
(14)人材の採用および配置に関するリスク
当社の長期的に持続可能な成長には、人材の獲得競争の激しい市場や地域において、事業を支える適切な人材の採用と配置が重要であると認識しています。当社は、組織の有効性、文化、価値観を維持しながら、働き方の柔軟性をより高め、職場環境をより良くする施策を実施するとともに、継続的なキャリア開発機会の提供やエンゲージメントの推進を図り、従業員に対して魅力的な価値を提案することで、人材採用における競争力の強化と人材の定着を促進しています。しかしながら、計画通りに採用や定着が進まない場合は、人材の喪失や不足を通じて、当社の競争力が低下し、その結果、当社の業績および財務状況に影響が及ぶ可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、革新的な医薬品を創出し続けるという「私たちが目指す未来」(ビジョン)のもと、健全な財務基盤を維持しながら(堅実な投資適格格付を維持し、調整後純有利子負債/調整後EBITDA 倍率2倍を目指す)、患者さんに持続的な価値を、株主には魅力的なリターンを提供できるよう資本を配分してまいります。
当社の資本配分に関する基本方針は次の通りです。
・ 成長ドライバーへの投資
・ 株主還元
「成長ドライバーへの投資」では、パイプライン拡充のための社内外の機会や新製品の上市、血漿分画製剤事業に対して戦略的な投資を行ってまいります。また、「株主還元」においては、毎年の1株当たり年間配当金を増額または維持する累進配当の方針を採用し、自己株式の取得については適切な場合に取り組んでまいります。
なお、当社は中間配当ができる旨を定款に定めており、当社の剰余金の配当は中間配当及び期末配当の年2回を基本的な方針としております。剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議によって定めることができる旨を定款に定めております。
(基準日が当事業年度に属する剰余金の配当については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 26 資本及びその他の資本項目」をご参照ください。)