2025年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 60,563 100.0 4,131 100.0 6.8

事業内容

 

3 【事業の内容】

当社は、主な事業内容として医療用医薬品及び医療用機械器具の製造・販売やその他にも製造受託、また、不動産の賃貸を営んでおります。

 

当社の事業内容は、次のとおりであります。

なお、セグメント情報を記載していないため、事業別に記載しております。

 

医薬品事業

輸液を中心とする注射剤や人工腎臓用透析剤等の医療用医薬品及び医療用機械器具の製造・販売や医療用医薬品の製造受託等を行っております。

不動産事業

不動産の賃貸を行っております。

 

 事業の系統図は次のとおりであります。


 

業績

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要の増加等により、緩やかな回復基調で推移しました。一方、ウクライナ情勢や中東情勢の長期化、資源・原材料価格の高騰、物価上昇、米国の通商政策、金融資本市場の変動等により、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。

医薬品業界では、薬価制度改革をはじめとして後発医薬品の使用促進策の強化等、医療費適正化諸施策が引き続き推進されており、経営のさらなる強化が求められるなか、研究開発費の増加、開発リスクの増大等、収益環境の厳しさが増しております。

このような状況のもと、当社は、主力製品の人工腎臓用透析剤キンダリー等、人工透析関連製商品及び輸液等のより強固な浸透を図るとともに、後発医薬品の販売促進にも注力してまいりました。

その結果、当事業年度の業績につきましては、腎・透析関連の後発医薬品の販売促進及び輸液・注射剤の他社品代替供給による製造販売増加の影響等により、売上高は605億63百万円と前年同期と比べ51億55百万円(9.3%)の増加となりました。利益面につきましては、原材料費や物流関連諸費用等の高騰は続いているものの、増産及び特例的な不採算品再算定等の影響によって輸液全体の不採算が緩和され売上原価率が若干改善されたため、営業利益は41億31百万円と前年同期と比べ21億67百万円(110.3%)の増加、経常利益は37億80百万円と前年同期と比べ19億12百万円(102.4%)の増加となりました。

また、当社は、東レ株式会社より、2018年12月13日付にて経口そう痒症改善剤ナルフラフィン塩酸塩OD錠2.5μg「フソー」[先発代表製品:レミッチOD錠2.5μg]に関する特許権侵害差止等請求訴訟を東京地方裁判所に提起されました。その後、東京地方裁判所は東レ株式会社の請求を棄却する判決を下したため、2021年3月30日、東レ株式会社はこれを不服とし、知的財産高等裁判所に控訴いたしました。2025年5月27日に知的財産高等裁判所は、東レ株式会社の請求を一部認容し、当社に対し、合計74億7,287万8,838円及びこれに対する遅延損害金の支払いを命じる判決を言い渡しました。本判決に伴って、訴訟関連損失引当金繰入額87億44百万円を特別損失として計上し、当期純損失は32億88百万円(前年同期は当期純利益13億77百万円)となりました。

なお、当社はこれまで、本製品は東レ株式会社が保有する特許権を侵害しないこと等を主張してまいりましたが、控訴審において当社の主張が認められなかったことは誠に遺憾であり承服できかねることから、2025年6月6日付けにて、最高裁判所に上告及び上告受理の申立てを行っております。

 

当事業年度の総資産は、建物(純額)や機械及び装置(純額)の減少等があったものの、現金及び預金や売掛金、ソフトウェアの増加等により前事業年度末から59億27百万円(7.8%)増加し、817億29百万円となりました。

負債は、支払手形や電子記録債務、長期借入金の減少等があったものの、短期借入金の増加や訴訟関連損失引当金の計上等により前事業年度末から95億45百万円(24.4%)増加し、486億85百万円となりました。

純資産は、その他有価証券評価差額金の増加があったものの、繰越利益剰余金の減少により前事業年度末から36億17百万円(9.9%)減少し、330億43百万円となり、自己資本比率は40.4%となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度末の現金及び現金同等物の残高は、前事業年度末に比べ11億44百万円増加し、62億64百万円となりました。

 

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費や訴訟関連損失引当金繰入額の計上等があったものの、税引前当期純損失の計上や売上債権の増加、仕入債務の減少等により33億5百万円の支出となりました。これは、主にサプライチェーン全体の持続的発展を目的に、マルチステークホルダー方針に基づくサプライヤーへの支払期日短縮等への対応による仕入債務支払の一過性の増加によるものです。(前事業年度は6億27百万円の収入)

 

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出等により31億68百万円の支出となりました。(前事業年度は35億36百万円の支出)

 

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の減少や配当金の支払等があったものの、短期借入金の増加により76億18百万円の収入となりました。(前事業年度は14百万円の収入)

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当事業年度における生産実績は次のとおりであります。

事業の名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

29,316

8.4

 

(注) 金額は、卸売価格によっております。

 

b.受注実績

当社は、主に見込生産を行っているため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

当事業年度における販売実績は次のとおりであります。

事業の名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

医薬品事業

60,447

9.4

不動産事業

115

△28.4

合計

60,563

9.3

 

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合

 

相手先

前事業年度

当事業年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

アルフレッサ㈱

9,719

17.5

9,325

15.4

㈱メディセオ

7,816

14.1

9,036

14.9

㈱スズケン

10,889

19.7

8,357

13.8

東邦薬品㈱

6,678

12.1

5,260

8.7

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社の当事業年度の経営成績等は、売上高は605億63百万円と前年同期と比べ51億55百万円(9.3%)の増加となりました。利益面では、売上総利益は165億32百万円と前年同期と比べ26億94百万円(19.5%)の増加、営業利益は41億31百万円と前年同期と比べ21億67百万円(110.3%)の増加、経常利益は37億80百万円と前年同期と比べ19億12百万円(102.4%)の増加となりました。

また、当社は、東レ株式会社より、2018年12月13日付にて経口そう痒症改善剤ナルフラフィン塩酸塩OD錠2.5μg「フソー」[先発代表製品:レミッチOD錠2.5μg]に関する特許権侵害差止等請求訴訟を東京地方裁判所に提起されました。その後、東京地方裁判所は東レ株式会社の請求を棄却する判決を下したため、2021年3月30日、東レ株式会社はこれを不服とし、知的財産高等裁判所に控訴いたしました。2025年5月27日に知的財産高等裁判所は、東レ株式会社の請求を一部認容し、当社に対し、合計74億7,287万8,838円及びこれに対する遅延損害金の支払いを命じる判決を言い渡しました。本判決に伴って、訴訟関連損失引当金繰入額87億44百万円を特別損失として計上し、当期純損失は32億88百万円(前期は当期純利益13億77百万円)となりました。

なお、当社はこれまで、本製品は東レ株式会社が保有する特許権を侵害しないこと等を主張してまいりましたが、控訴審において当社の主張が認められなかったことは誠に遺憾であり承服できかねることから、2025年6月6日付けにて、最高裁判所に上告及び上告受理の申立てを行っております。

主な事業内容である医薬品事業においては、腎・透析関連の後発医薬品の販売促進及び輸液・注射剤の他社品代替供給による製造販売増加の影響等により、売上高は604億47百万円と前年同期と比べ52億1百万円(9.4%)の増加となりました。利益面につきましては、原材料費や物流関連諸費用等の高騰は続いているものの、増産及び特例的な不採算品再算定等の影響によって輸液全体の不採算が緩和され売上原価率が若干改善されたため、営業利益は41億58百万円と前年同期と比べ22億33百万円(116.0%)の増加となりました。

当社は人工腎臓用透析剤や輸液製剤といった基礎的な医薬品を多く取り扱い、安定供給への重大な責任を有していることから、地震等の自然災害やパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症等、突発的に発生する事象に備えて、安定供給に支障を来たしかねない事象が判明した際には、直ちに緊急対策会議を開催し、優先してその解消に努める等の対策を常日頃より行っております。

製造設備に関しても大規模な拠点を東西に分散設置し、製品保管庫を各地に設けており、想定外の需要が生じた場合にも対応可能な在庫数量を確保していることに加え、製品が全体的に重量物の占める割合が高いため、物流コストの上昇による影響は大きく、必然的に売上原価や販売費及び一般管理費は非常に高くなり、営業利益率は低くなる傾向となっております。

その上で、製造原価の低減等のコスト削減に努め、また、販売面においても既存の主力製品だけではなく後発医薬品の販売促進にも注力した結果、売上総利益及び営業利益で増益の結果となりました。

医薬品の安定供給の社会的使命を全うし、同時に経営基盤の強化を行っていくことが今後も必須であると考えております。

なお、文中に記載した内容を以下の表に示しております。(割合(%)には、売上高に対する比率を記載しております。)

 

前事業年度

当事業年度

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

売上高

55,407

100.0

60,563

100.0

売上原価

41,568

75.0

44,030

72.7

販売費及び一般管理費

11,874

21.4

12,401

20.5

 うち、運送費及び保管費等

2,809

5.1

2,951

4.9

営業利益

1,964

3.5

4,131

6.8

 

 

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因

当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性に関する状況

当社の資本の財源及び資金の流動性について、主要な資金需要は、製品製造に使用される原材料の調達、商品の仕入、販売費及び一般管理費並びに生産設備の新設、更新や、透析医療のさらなる活性化や新領域への研究開発に係るものであります。

これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フロー及び自己資金のほか、生産設備投資・研究開発の計画に照らして、金融機関からの借入による資金調達にて対応していく方針であります。

当事業年度におきましては、主にERPシステムに関する投資や、研究開発活動を当該方針のもと資金調達を行いました。翌事業年度におきましては、資本的支出として、主に各工場の医薬品製造装置への投資や、透析医療のさらなる活性化と新領域への研究開発活動を推進していく予定であり、その資金調達につきましても、必要に応じ、当該方針の通り対応いたします。

なお、2024年5月13日付で、今後の当社の事業拡大に伴い運転資金の増加が見込まれることから、より強固な財務基盤を構築するとともに金融費用の圧縮を行うことを目的として、株式会社三井住友銀行をアレンジャーとするシンジケートローン契約を締結し、資金調達を実行しました。

また、東レ株式会社に対して合計74億7,287万8,838円及びこれに対する遅延損害金の支払いを命じる判決が下ったことを踏まえ、中長期的な資金流動性を担保するため、2025年6月2日付で株式会社三井住友銀行と特殊当座借越契約を締結しております。

 

④ 目標とする経営指標について

経営指標につきましては、特定の経営指標を定めておりませんが、当社は、医療用医薬品を主力とする医薬品メーカーであり、社会の高齢化が進むなか、医療技術の進歩と国民意識の健康福祉指向を背景に、医療ニーズの増大、多様化に対応する医薬品の開発とその安定供給に努め、「より良き医薬」のスローガンのもと、生命関連産業の一員としての本分を尽くしております。その上で、株主をはじめとした関係者の皆様の期待に応えていくことを経営の基本方針としながら、健全性、収益性、効率性、成長性などを総合的に勘案し、持続的かつ安定的な企業価値の向上を重視し、経営を行ってまいります。

 

(3) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。

 

① 棚卸資産の評価

当社の棚卸資産の評価は、各在庫品目について滞留により破棄することが見込まれる数量を算出し、該当数量分の正味売却価額を零として評価損の金額を算出した上で、収益性の低下に基づき簿価を切り下げております。その際、当事業年度の販売数量に関する趨勢を踏まえた各在庫品目の将来の販売予測数量を重要な仮定として用いております。当該仮定として用いた販売数量に関する趨勢が変動した場合には、翌事業年度以降の医薬品部門売上原価に追加の評価損を計上する可能性があります。

 

② 固定資産の減損

当社は、一部の製造設備において減損テストを実施するにあたり、回収可能価額を使用価値により測定しております。使用価値は見積将来キャッシュ・フローの割引現在価値により測定を行い、重要な仮定は、販売単価、市場規模、市場シェア及び割引率等であります。

使用価値の算定結果は、一定のリスクを反映させた上で不確実性を評価しておりますが、重要な仮定の変動により、翌事業年度以降の財務諸表において、減損損失が発生する可能性があります。