2023年12月期有価証券報告書より
  • 社員数
    388名(単体) 7,836名(連結)
  • 平均年齢
    43.8歳(単体)
  • 平均勤続年数
    19.1年(単体)
  • 平均年収
    7,490,878円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

2023年12月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

色材・機能材関連事業

2,040

ポリマー・塗加工関連事業

1,498

パッケージ関連事業

1,790

印刷・情報関連事業

1,931

    報告セグメント計

7,259

その他

189

全社(共通)

388

合計

7,836

 

(注) 1  従業員数は就業人員であります。

2  全社(共通)として記載されている従業員数は、持株会社である当社の従業員数であります。

 

(2) 提出会社の状況

2023年12月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

388

43.8

19.1

7,490,878

 

(注) 1  従業員数は就業人員であります。

2  平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3  提出会社の従業員数は全てセグメントの「全社(共通)」に含まれるため、合計人数のみ記載しております。

 

(3) 労働組合の状況

当企業グループにおける主要な組合組織は、東洋インキ労働組合であり、当組合の組合員数は1,867名でいずれの上部団体にも属さず、労使協調して企業の発展に努力しております。

なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業等取得率及び労働者の男女の賃金の差異

当連結会計年度の提出会社における多様性に関する指標の実績は、以下のとおりであります。

管理職に占める
女性労働者の
割合(%) (注1)

男性労働者の
育児休業等
取得率(%) (注2)

労働者の男女の賃金の差異(%) (注1)

全労働者

うち正規雇用労働者

うち非正規雇用労働者

5.5

100.0

77.1

77.3

39.8

 

(注) 1  「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号。以下「女性活躍推進法」という。)の規定に基づき算出したものであり、2024年1月1日現在の数値を記載しております。

   2  「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。

   3  提出会社原籍の労働者を対象としており、提出会社から連結子会社等への出向者を含んでおります。

   4  連結子会社のうち、女性活躍推進法及び育児・介護休業法の規定により、3指標以外を公表している会社及び公表義務の対象ではない会社は、記載を省略しております。

 

(労働者の男女の賃金の差異に関する補足)

当企業グループでは、従事する役割(職務)に応じた賃金制度を適用しており、同一役割における性差による処遇差はありません。上記の差異は、平均賃金を単純比較しているため、男女それぞれの役割別人数構成(管理職社員/一般社員)の影響が数値に表れております。これを受けて、統計分析の手法を用いて年齢・学歴・勤続年数の影響を排除したうえで男女の賃金の差異を計算したところ、管理職社員については統計的に有意な差異は認められませんでしたが、非管理職(一般社員)については85.6%という差異が確認されました。当企業グループは、これを実質的な男女の賃金の差異であると認識し、この差異を解消するための要因分析や取組みを実施しております。

また、上記の表における非正規雇用労働者の値は、当該労働者の内訳が、定年後再雇用者である男性労働者7名、パートタイマー(短時間労働者)である女性労働者2名の計9名からなる賃金をもとに算出しております。雇用区分及び労働時間の違いから、上記のような差異が発生しております。

 

 

 

 

 

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当企業グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

①ガバナンス

当社は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載の企業統治の体制を採用しております。この体制において、当企業グループの経営に関わる重要事項について、広範囲かつ多様な見地から審議する会議・委員会を設置することで、業務執行や監督機能などの充実を図っており、サステナビリティに関しては、「サステナビリティ委員会」を設置しております。

当企業グループは、artienceグループのCorporate Philosophy(経営哲学)、Brand Promise & Slogan(ブランドプロミス&スローガン)、Our Principles(行動指針)からなる理念体系に基づき、サステナビリティの推進、すなわち「事業を通じて地球環境と社会の持続可能性の向上に貢献するとともに、自らの持続的成長を実現する」ために、サステナビリティ憲章及びサステナビリティの個別のテーマに関する基本方針等を定め、これらに沿って取組みを進めております。

当企業グループが主な取組み対象としているサステナビリティテーマは、以下のとおりであります。

いずれのテーマも重要と位置付けて取り組んでおりますが、特に、環境分野での気候変動対応を継続重点テーマとして掲げ、CO2をはじめ温室効果ガス(GHG)の排出削減を積極的に推進しております。同様に社会分野では、人権対応と人的資本マネジメント(人材育成、DE&I、健康経営など)に注力しております。

分野

サステナビリティテーマ

環境(E)

気候変動(エネルギー消費、GHG排出)、水管理、資源循環、汚染防止(大気・水・土壌)、化学物質管理、生物多様性 など

社会(S)

人権、人的資本マネジメント(人材育成、DE&I、健康経営)、調達(サプライチェーン)、労働安全衛生、品質保証 など

ガバナンス(G)

コーポレート・ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンス、公正取引、腐敗防止、情報セキュリティ、個人情報保護、知的財産、事業継続 など

 

 

サステナビリティ委員会は、当企業グループの全社サステナビリティに関する活動を計画策定、推進、評価するとともに、活動の実施部門に対するフォローを行っております。これらの活動は、取締役会やグループ経営会議において経営層に定期的に報告され、必要に応じて対応指示を受けております。また、年1回定期的に全社会議体である「サステナビリティ会議」を開催し、全社サステナビリティ活動及びグループ各社の個別活動の報告や、サステナビリティに関する方針の共有などを行っております。

同委員会は、その下位にESG推進部会、コンプライアンス部会、リスクマネジメント部会の3部会を設置しており、代表取締役による監督のもと、サステナビリティ担当役員(取締役)が委員長、上記3部会の部会長3名が委員として、3部会の各々で推進されたサステナビリティ事項について対応しております。

 

 

サステナビリティ推進体制(2024年1月1日現在)

 

②戦略

当社は、当企業グループのサステナビリティ推進の基本戦略を「事業を通じて地球環境と社会の持続可能性の向上に貢献するとともに、自らの持続的成長を実現する」としており、これに基づいた多様な施策を実施達成することで、当企業グループの経済価値と社会価値を示し、企業価値の向上を図ります。

この基本戦略に基づいて、経営として取り組む重要課題(マテリアリティ)を特定し、これらを中長期の経営計画に反映させることで、多様なサステナビリティ施策を計画、遂行しております。

当企業グループの「5つの重要課題」は、2018~2027年度を対象期間とした長期構想「Scientific Innovation Chain 2027」(SIC27)に合わせて策定され、2018年度に運用を始めました。その後、前中期経営計画SIC-Ⅱ期間(2021~2023年度)の開始に合わせてKPI/目標の見直しを図りました。

(「5つの重要課題」の策定プロセス)

 

なお、2024年度は、商号・理念体系変更に伴う新たな中期経営計画「artience2027」に連動した、新たな重要課題の策定を計画しております。

 

(経営として取り組む重要課題)

当企業グループは、経営として取り組む重要課題(マテリアリティ)を「1.お客様の期待を超える価値を提供し、社会に貢献する」、「2.革新的技術を通じて環境と共生する」、「3.サプライチェーンと共存共栄を図り、ステークホルダーの信頼に応える」、「4.社員を大切にして幸せや働きがいを追求する」、「5.信頼を支える堅実な企業基盤を築く」の5つに整理しております。

それぞれの重要課題について、想定したバウンダリー(影響の範囲)を設定し、実行項目を掲げております。

重要課題

バウンダリー

実行項目

1.お客様の期待を超える価値

を提供し、社会に貢献する

お客様、
社会

・ライフ、コミュニケーション、サステナビリティの方向性で

の生活文化創造

・安全な製品・サービスの提供を通じたお客様の安心の実現

・圧倒的に高い品質の保証

・高いお客様満足度の達成

2.革新的技術を通じて環境と

共生する

環境

・環境負荷を低減する革新的な技術・製品・サービスの開発と

普及

・気候変動問題の解決や対応に向けた取組み

・化学物質の適切な管理

・環境マネジメントの堅実な推進

3.サプライチェーンと共存

共栄を図り、ステークホルダーの信頼に応える

サプライ
チェーン

・協働を通じたサプライチェーンとの共存共栄

・あらゆるステークホルダーの人権尊重

4.社員を大切にして幸せや

働きがいを追求する

社員

・社員の満足につながる労働安全衛生の徹底と健康経営の推進

・組織の活性化に向けたダイバーシティ推進

・グローバルな視野・能力を持つ人材の育成

5.信頼を支える堅実な企業

基盤を築く

間接的に
あらゆる
ステーク
ホルダー

・コンプライアンスの徹底

・腐敗・汚職の撲滅

・確実なリスクマネジメント、災害対応の推進

・適時・適切かつ積極的な情報開示とステークホルダー・

コミュニケーションの強化

・事業を通じた地域社会発展への貢献

・地域が抱える課題解決への貢献

 

 

③リスク管理

当社では、サステナビリティ委員会下のリスクマネジメント部会が中心となって全社リスクマネジメント体制を構築し、グループ全体の事業継続に影響を及ぼす可能性のあるリスクを特定し、網羅的・総括的に管理しております。また、当企業グループの各社・各部門においては、社会環境の変化や日常業務に潜むリスクを抽出して評価・検討し、対策を実施しております。

詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ③企業統治に関するその他の事項 a.内部統制システムの整備の状況 (1)取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他業務の適正を確保するための体制 ③損失の危険の管理に関する規程その他の体制」に記載しております。

 

 

リスクマネジメント体制(2024年1月1日現在)

 


 

④指標及び目標

当社は、上記「経営として取り組む重要課題」の各々について、課題に対する取組み状況を管理し、実績を評価するためのKPI(主要取組み指標)を設定しております。これらのKPIに対しては、それぞれ定性的な達成レベルもしくは定量的な目標値を設定しております。

重要課題

SIC-Ⅱ中期経営計画期間

(2021~2023年度)でのKPI/目標

2022年度実績

1.お客様の期待を

超える価値を提供し、社会に貢献

する

・社会への価値提供に資する製品・サービス・技術の創出

 

・品質向上に向けた取組み(「品質グローバルスタンダード」を国内外の生産拠点に展開)

 

2.革新的技術を通じ

て環境と共生する

・CO2排出量の削減(国内)67,500t(2020年度比12%減)

73,404t

・エネルギー原単位の改善(海外)165.0L/t(2020年度比3%減)

164.1L/t

・化学物質排出量の削減(国内)62.2t(2020年度比10%減)

78.8t

・廃棄物外部排出量の削減(国内)10,500t(2020年度比19%減)

13,466t

・環境調和型製品売上高構成比の向上70.0%(2020年度比4.0ポイント増)

62.4%

・植樹などによる森林保全と、地域の河川・湖などの環境保全の推進(用水リスクの高い拠点における取水・排水管理の強化など)

 

3.サプライチェーン

と共存共栄を図り、ステークホルダーの信頼に

応える

・調達先選定基準に基づく国内主要サプライヤーの評価の実施(評価実施率100%)

13.9%

・主要サプライヤーに対するサステナビリティ調査の実施(調査実施率100%)

92.7%

・物流の効率化の推進(サプライヤーとの協業によるホワイト物流の推進など)

 

・海外赴任前研修における人権教育の継続(研修受講率100%)

92.9%

4.社員を大切にして

幸せや働きがいを追求する

・健康経営の推進による「ホワイト500」認定の継続

 

・女性の活躍推進による「えるぼし」認定の継続(国内女性採用比率30%、女性管理職比率8%)

32.5%、4.5%

・育児・介護支援の推進による「くるみん」認定の継続(国内男性社員の育児休業10日以上の取得率80%)

100%

・重大事故の発生ゼロ

0件

5.信頼を支える堅実

な企業基盤を築く

・重大コンプライアンス違反の発生ゼロ

0件

・コンプライアンス拠点ミーティングの開催と内容の充実

 

・拠点の地域事情を考慮したコンプライアンス講習会(独禁法、下請法、贈収賄防止、個人情報保護規制など)開催と内容の充実

 

・地域とのコミュニケーション活動の推進

 

・地域社会での教育・文化活動の推進

 

・社会貢献活動の推進(ボランティア休暇の活用など)

 

 

当社は、これらのKPIを活用して取組みを推進し、その実績を定期的に開示するとともに、社内外のステークホルダーとのコミュニケーションを図っております。上記の表に、定量目標を持つKPIについて2022年度の実績を記載しております。他のKPIの実績等については、当社の統合レポート2023の39~40ページをご参照ください。

 

(2)気候変動対応
①ガバナンス

気候変動対応に関する情報収集、リスク/機会の特定・分析・評価、社内ルール策定、情報開示などの実務は、サステナビリティ委員会下のESG推進部会が担っておりましたが、これら活動の経営に対する実効性を高めるべく、2023年7月にESG推進室を新設いたしました。新たな組織体制の下、ESG推進室では全社サステナビリティ活動の実務的中心として、経営層やコーポレート部門、事業各社経営部門と協働し、気候変動対応の経営計画への組込みを強化するとともに、気候関連目標の諸活動への展開や予算化を推進しております。

 

気候変動対応体制(2024年1月1日現在)

 

②戦略
(基本方針、基本戦略)

当企業グループは、世界的な気候変動及び各国や地域行政が講じる政策・施策は、市場環境や原材料調達、消費者の選好性を大きく左右し、事業の継続や業績に強い影響を及ぼしうると認識しております。これに関して「気候変動対応に関する方針」を掲げ、こうしたリスク/機会を分析し、経営計画や事業計画に反映させております。

気候変動対応に関する方針

 

artienceグループ(以下、「当社グループ」という)は、世界的なGHG(温室効果ガス)排出増大に起因する地球温暖化がもたらす気候変動は、グローバル社会が直面する最重要の社会課題の一つであり、気候変動への対応は当社グループの事業活動に重大な影響を及ぼしうる重要な経営課題であると認識しています。この認識に基づき、当社グループは、気候変動に関するグローバルな要請に積極的に対応し、気候変動対応活動を通じて、社会の持続可能性向上への貢献に努めます。

 

1.     気候変動対応推進体制の構築

当社グループは、当社グループの全社の気候変動対応活動を統括する、経営直轄の推進体制を構築し、グループとしての気候変動対応施策の推進に取り組むとともに、経営戦略や事業戦略への気候変動対応の導入を推進します。

 

2.     GHG排出量の把握と削減

当社グループは、2050年でのカーボンニュートラル達成を目標に掲げ、グループ全体の事業活動におけるGHG排出量の把握と削減に努めます。特にGHG排出量削減については、サプライチェーンも含めた実効的な削減施策を推進します。

 

 

3.     気候変動対応に貢献する製品・サービスの提供

当社グループは、製造時のCO2排出量が少ないだけでなく、使用時のCO2排出を抑制したり、気温上昇した環境への適応を支援したりするなど、お客様や生活者の気候変動対応活動に貢献する製品・サービスを開発、提供することで、社会に「環境価値」を提供します。

 

4.     気候変動リスクへの対応と事業・拠点の強靭化

当社グループは、グループの事業活動や操業拠点における気候変動が及ぼすリスクを評価し、継続的なモニタリングとリスク低減・回避に向けた適切な対応策を講じることで、事業や拠点のレジリエンス向上に努めます。

 

5.     気候変動対応活動に関する適切な情報開示

当社グループは、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)をはじめ、気候変動対応に関する主要なイニシアチブに賛同・参加し、当社グループの気候変動対応活動について積極的かつ適切に情報開示します。

 

6.     気候変動に関する啓発と教育

当社グループは、社内において気候変動およびその対応に関する意識や知見を高め、あらゆる事業活動への気候変動対応の導入を推進するため、当社グループの役員、顧問および社員を対象とした適切な啓発・教育活動を行います。

 

2022年4月25日 制定

2024年1月1日 改定

(2023年12月8日取締役会にて決議)

 

 

 

(シナリオ分析)

当社では、TCFD提言に則り、平均気温上昇を産業革命以前と比較して1.5℃に抑制するために施策が行われる想定の1.5℃シナリオと、気候変動が進行しリスクが顕在化していく想定の4℃シナリオを参照しリスク分析を行いました。

そこで特定したリスク4項目と機会2項目について、分析の対象期間としている2030年度までにおける財務影響度と発現可能性を3段階で定性的に示しております。

カテゴリー

リスク/機会

財務影響度/発現可能性

影響の

増大時期

1.5℃シナリオ

4℃シナリオ

移行リスク:政策と法、市場

原材料コスト・エネルギー価格の上昇

財務影響度3

発現可能性3

財務影響度2

発現可能性3

中期

移行リスク:技術、市場、評判

パッケージ・印刷関連需要の減少

財務影響度3

発現可能性3

財務影響度2

発現可能性2

短期

移行リスク:政策と法

炭素価格のコストへの影響増大

財務影響度3

発現可能性3

財務影響度2

発現可能性3

短期

物理リスク:急性的

気象災害の激甚化に伴う事業機会の喪失

財務影響度2

発現可能性2

財務影響度3

発現可能性3

長期

機会:エネルギー源、製品とサービス

低排出製品の売上増大

財務影響度3

発現可能性3

財務影響度2

発現可能性3

短期

機会:製品とサービス、市場

猛暑・感染症対策素材などの事業機会の獲得

財務影響度2

発現可能性3

財務影響度3

発現可能性3

長期

財務影響度:3=影響が数十億円に及ぶ 2=影響が10億円程度 1=影響が10億円を下回る

発現可能性:3=既に発現しているか、将来ほぼ確実に発現する 2=発現の可能性が比較的高い 1=発現の可能性が低い

影響増大時期:短期=1年程度(年度計画の期間) 中期=3年程度(中期経営計画の期間) 長期=10年程度(asv2050/2030の中間目標年度=2030年度までの期間)

1.5℃シナリオ:IEA World Energy Outlook: Net Zero Emission by 2050 Scenario及びIPCC:SSP1-1.9を参照

4℃シナリオ:IEA World Energy Outlook Stated Policy Scenario及びIPCC:SSP5-8.5を参照

分析対象範囲:当企業グループ全体の既存事業、及び現時点で想定している新規事業

 

 

また、定量分析として、日本国内及び海外の事業展開地域における炭素税の導入による影響額、水リスクの高い地域での洪水・浸水発生時の損害額、及び、サステナビリティ貢献製品の「環境価値」製品群の使用によるCO2排出の削減効果を試算し開示しております。これらの定量分析結果の詳細については、2023年6月発行の統合レポート2023(43~44ページ)をご参照ください。

 

③リスク管理

当企業グループは、「(1)サステナビリティ全般③リスク管理」にて記載のリスクマネジメント部会を中心とした全社リスクマネジメント体制を構築しております。気候関連リスクも他の企業リスクと同様、グループの持続的成長に影響を与える要因であり、戦略上の適切な対応を図ることによって、リスクの顕在化の予防、顕在化した際の影響の軽減はもとより、事業上の収益増大や市場評価の向上などの機会にもつながると認識しております。気候関連のリスク/機会は、ESG推進部会がリスクマネジメント部会と連携し、企業リスク全般と同様の管理プロセスを適用して管理しております。

ESG推進部会では、気候関連リスクを特定・評価し、グループ経営会議及び取締役会へ提案・報告するとともに、年1回開催のサステナビリティ会議をはじめ、適宜グループ内での情報と認識の共有を図っております。経営層ならびにグループ各社は、これらのリスク/機会を基点とした対応策やアクションプランを中期経営計画や事業計画に組み込み、具体的施策に反映しております。

 

④指標及び目標
(気候関連のリスクに関する指標)

当社では、2010年度に「CO2削減プロジェクト」を発足して以来、国内・海外の生産拠点におけるCO2排出量の削減に取り組んでおります。当企業グループのサステナビリティビジョン「asv2050/2030」では、当企業グループのScope1及びScope2排出量の合算値であるCO2排出量をasv2050/2030の中核的な指標として、「2050年度におけるカーボンニュートラル達成(生産活動でのCO2排出量を実質ゼロにする)」を宣言しております。なお、2030年度での中間目標asv2030では、より具体的に、CO2の国内排出量を2020年度比35%削減、海外排出量を2030年度BAU比35%削減することを定量目標に掲げております。

 

 

(参考)2022年度GHG排出量

当企業グループは、GHGのうちCO2のScope1及びScope2排出量を、改正「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」に基づいて算定し、国内全拠点と海外主要生産系関係会社を対象範囲として算出しております。

(単位:t-CO2

 

提出会社及び

国内関係会社

海外関係会社

合計

Scope1排出量

45,469

25,947

71,417

Scope2排出量

27,934

83,186

111,121

合計

73,404

109,134

182,538

 

(気候関連の機会に関する指標)

当企業グループは、早くから製品の環境調和性の向上に取り組み、1990年代からさまざまな環境調和型製品を上市してきました。2022年度に策定した当企業グループのサステナビリティビジョン「TSV2050/2030」(現 asv2050/2030)では、そのような「環境価値」に加えて、人びとの暮らしの快適さ、健康・福祉、安全・安心などの「生活価値」にも領域を拡げ、社会の持続可能性向上に貢献する製品を「サステナビリティ貢献製品」と定義しています。気候変動に対する当社のシナリオ分析において、気候関連の機会として「低炭素製品の売上拡大」と「猛暑対策、感染症対策素材などの事業機会の獲得」を特定しており、サステナビリティ貢献製品にはこれらの機会に対応する製品・製品群も含まれます。

当企業グループは、このサステナビリティ貢献製品のグループ全製品売上高に対する売上高構成比率を「サステナビリティ貢献製品売上高比率」と定義して指標の一つに掲げております。同比率は、2022年度は62.4%でしたが、2030年度までに国内外合わせて80%以上とする目標を設定しております。

 

(3)人的資本・多様性

①ガバナンス

企業グループは、グループ人事部が戦略・実務主体となって、人事戦略における基本的な方針や規則などを体系化した「人事ポリシー」をもとに人材マネジメントを推進しております。また、事業活動を展開する国・地域の労働法令・慣行を踏まえ、国内外のグループ各社と連携して人材育成、風土醸成、職場環境整備に取り組んでおります。

 

人材マネジメント体制(2024年1月1日現在)

 

②戦略
(人材マネジメントの基本的な考え方)

当企業グループでは、社員は価値創造と持続的成長の源泉であると捉え、社員一人ひとりが当企業グループの成長と、世の中への貢献を通じて自身の成長を実感することを目指し、「長期的なキャリアを歩めるしくみの構築」「多様な人材が活躍できる風土の醸成」「安心して働ける職場環境づくり」を人材戦略の柱として、さまざまな育成施策やDE&I、健康経営推進など、経営基盤強化につながる人的資本価値の向上に取り組んでおります。


 

(経営戦略における人的資本の重要性)

2024年度に刷新した理念体系のOur Principles(行動指針)では、社員に期待する行動を「core(共創/楽しさ・わくわく/主体性)」「art(好奇心/感性・感謝・感動/多様性)」「science(厳しさ/スピード・挑戦)」の3つの視点で描いております。これらは人材が「感性に響く価値を創りだし、心豊かな未来に挑む」ことを期待したものであります。当企業グループではこれら行動指針の浸透を図り、行動を実践できる人材を育成するための投資を行っております。

また、当企業グループでは、2024年度よりスタートする中期経営計画artience2027の基本方針の一つに「経営基盤の変革」を掲げております。この方針のもと、ヒト/風土/組織といった経営基盤の変革に必要な人的資本投資を実施し、企業価値最大化と持続的成長の源泉となる人材のエンゲージメント向上に取り組んでまいります。

 

(多様性の尊重と浸透、DE&Iの推進)

DE&Iは、Corporate Philosophy(経営哲学)「人間尊重の経営」の観点から、当企業グループの人的資本強化として取り組むべき最優先課題の一つであると認識しております。性別や年齢、国籍、障がいの有無などにかかわらず、多様な価値観・考え・発想が尊重され、すべての社員が存分に仕事に取り組める職場環境をあるべき姿として、DE&Iを推進しております。

当企業グループでは、2021年度に「ダイバーシティ推進プロジェクト」を発足し、現状分析や経営層とのディスカッション、管理職向けの研修などを実施してきました。2023年度には、同プロジェクトの役割を承継する組織として「D&I推進室」をグループ人事部内に新設しました。

DE&Iとして取り組むべき多くの課題の中でも、女性管理職比率が国内全業種平均の半分程度であったことから、女性活躍推進には特に注力しております。また、社員一人ひとりの可能性や能力を最大限に発揮していくためには、それぞれの状況に合わせた公平な機会の提供が不可欠です。これまでの活動を通じて、多様性を推し進めていくうえで、公平性(エクイティ)の視点が非常に重要であると考え、2024年度から同推進室を「DE&I推進室」に改称し、グループ全体へのDE&I浸透に向けた取組みを加速してまいります。

 

 

(人材開発)

当企業グループの持続的成長の実現に向けて、社員一人ひとりが自身の成長のビジョンを持ち、それに向かって着実に成長していけるよう、研修をはじめ多彩な人材開発プログラムを提供しております。

「教育研修プログラム」を通しての学びの機会を提供するとともに、社員の主体的なキャリア形成を支援する「キャリア開発制度」によりチャレンジする機会を提供することで、社員の「知」の習得と実践を支援しております。

 

 a. 教育研修プログラム

階層別研修、職種別研修、グローバル人材育成研修をはじめ、マインドセットやスキル習得を推進しており、人材の底上げと将来の経営幹部の育成を基本方針とした様々な研修や活動を実施しております。2023年度は、全社員を対象としたDX(デジタルトランスフォーメーション)関連教育、次世代リーダー育成、リスキリング推進やリカレント教育支援などに特に注力しました。また、社員の多様性を尊重し、社員が主体的にカリキュラムを選択できるよう、サブスクリプション型の教育ツールの導入や、カフェテリア方式(自身の嗜好に合わせて選択する方式)などの要素を取り入れることも積極的に行っております。

 

 b. キャリア開発制度

当企業グループのキャリア開発制度は、社員が部署や職務の異動を通じてスキルの向上・増強を図り、各々が主体的にキャリアを形成していくことを基本としております。国内においては、社員自らが希望の部署に挙手して異動できる制度(キャリアチャレンジ制度)を実施しているほか、社会情勢を考慮して中断していた海外実習制度(海外ワークショップ)を再開し、グローバル人材の育成も推進しております。

 

 c. 新理念体系に基づく今後の方針

「人間尊重の経営」のCorporate Philosophy(経営哲学)に則り、社員の主体性を最大限尊重することを基本とし、さまざまなキャリアを選択することができる制度を拡充していくことを方針に掲げております。

また、2024年1月の商号変更・理念体系改定に伴い、Brand Promise & Slogan(ブランドプロミス&スローガン)「感性に響く価値を創りだし、心豊かな未来に挑む/Empowering Feeling」を実現する人材を育成していくため、研修・教育システム・カリキュラムの刷新を遂行し、人材育成の仕組みのさらなる強化を計画しております。

 

(人事制度)

当社の人事制度は、役割グレードに応じた目標設定と評価を基本とする役割マネジメントシステムを導入しておりますが、中期経営計画artience2027の方針や雇用を取り巻く環境変化を踏まえ、社員のエンゲージメント向上と多様なキャリア開発の実現を目指した新人事制度へのリニューアルを進めております。

高い専門性と技術力を駆使して価値創出を実現しようとする行動や、失敗を恐れずにチャレンジする行動を評価する仕組みを検討しております。その一端として、2024年度より、従来のマネジメント重視の幹部グレード制に加え、高度な専門性を有する人材が能力を存分に活かすことのできる「スペシャリスト幹部グレード制」を導入し、キャリアの複線化と高度専門人材の育成を進めてまいります。

 

③リスク管理

当企業グループは、「(1)サステナビリティ全般③リスク管理」にて記載のリスクマネジメント部会を中心とした全社リスクマネジメント体制を構築しております。人的資本や多様性に関連するリスクは、グループの長期視点での持続的成長に大きく影響すると認識し、全社リスクマネジメント体制の中でグループ人事部がリスクマネジメント部会と連携して、他の企業リスクと同様の管理プロセスを適用して管理しております。

 

(法令の遵守、労務リスクへの対応)

働き方の多様化や雇用の流動化が進む中で、労働法規の改正に伴う社内規則・規程の改定を随時実施しております。また、労務リスク発生の可能性については、人事部門や各社・各拠点の管理部門において日々の労務管理を実施しつつ、労働組合とも定期的な協議の場で意見交換を行い、未然防止に努めております。さらに、年々変化する労働法規や社内規則・規程に組織が適応できるよう、すべての管理職、管理人材向けに労務研修会を実施するなど、労務リスクに対する知識向上を図っております。

 

(人材の確保)

国内において、少子高齢化による労働人口の減少や、終身雇用・年功序列社会の終焉、多様な働き方の普及、雇用の流動化などの社会的要因によって、人材不足や人材確保の困難化といったリスクが上昇すると想定しております。このようなリスクに対抗し、多彩・多様な人材を確保するため、新卒採用に加え、経験者採用・アルムナイ採用(退職した元社員の再雇用)を積極的に進めております。特に経験者採用については、重点事業の拡大に直結する人材や、情報・システム系、経理・財務系など、高い専門性を有する人材の確保につながる具体的な対策を講じております。

 

④指標及び目標
(女性活躍推進)

女性活躍推進は、当企業グループの人的資本強化における最重要課題の一つであり、多くの女性が活躍できる企業グループとなることを目指しております。当企業グループの「5つの重要課題(マテリアリティ)」では、重点課題4「社員を大切にして幸せや働きがいを追求する」における具体的なKPIならびに定量目標として、国内の新規採用における女性比率30%以上を維持すること、同じく国内の管理職任用における女性比率を8%に達成させることを設定しております。そのための具体的施策として、女性のキーポジション任用を推進する制度改革や、女性管理職候補者へのキャリア研修、育児休業からのスムーズな復職をサポートする仕組みの構築、女性のヘルスリテラシー向上を目的とした役員及び全社員向けセミナーなどを実施しております。

女性活躍推進には、男性側の意識改革も不可欠であるとして、男性社員の育児休業取得推進のための啓発セミナーの開催や、男性社員が育児休業を取得する際は原則10日以上を推奨する制度改定なども行っております。

当連結会計年度における、国内の管理職任用における女性比率、ならびに男性社員の育児休業等取得率の実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業等取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。また、国内の新規採用における女性比率は37.0%でした。

 

(仕事との両立に関する取組み)

さらに、柔軟な働き方を可能とするリモートワーク、フレックスタイムの整備や、育児・介護・治療のサポートとして、過去の未消化有給休暇を積立有給休暇として利用できる休暇制度改定を実施しました。これらの活動が評価され、当社は2023年8月に厚生労働省の「プラチナくるみん認定」を取得しました。

当社は、この認定を継続取得することを、育児・介護と仕事の両立に関する取組みにおける定性的な指標及び目標としており、これまでも2010年、2015年及び2021年に3期連続で「くるみん認定」を取得しております。

今後も、育児・介護・治療と仕事の両立に関する取組みに注力し、さまざまな状況にある人材が自身のキャリアプランに沿った活躍ができる就労環境の整備や職場の風土醸成に取り組んでまいります。