2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    98名(単体) 3,310名(連結)
  • 平均年齢
    44.4歳(単体)
  • 平均勤続年数
    8.8年(単体)
  • 平均年収
    8,857,000円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

医薬品等の製造及び販売

3,310

[321]

 

(注)1.当社グループは医薬品等の製造及び販売の単一セグメントであるため、グループ全体での従業員数を記載しております。

2.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は、[ ]内に年間平均人員を外数で記載しております。

 

(2) 提出会社の状況

2025年3月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

98

[12]

44.4

8.8

8,857

 

(注)1.当社は医薬品等の製造及び販売の単一セグメントであるため、セグメント別の従業員数の記載はしておりません。

2.従業員数は就業人員であり、臨時雇用者数は、[ ]内に年間平均人員を外数で記載しております。

3.平均勤続年数については従前の沢井製薬からの勤続年数を引き継いで計算しております。

4.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

5.前事業年度末に比べ従業員数が21名増加しております。主な理由は、新規事業や事業拡大に伴い採用をおこなったことであります。

 

(3) 労働組合の状況

当社グループには「化学一般・沢井製薬労働組合」があり、一部の連結子会社を含め労働組合は日本化学エネルギー産業労働組合(JEC連合)にも加盟しております。

労使関係は円満に推移しており、特記すべき事項はありません。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

 連結子会社

当事業年度

補足説明

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)1

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注)2

労働者の男女の賃金の差異(%)(注)3

全労働者

うち正規雇用労働者

(注)4

うちパート・有期労働者

(注)5

沢井製薬株式会社

10.3

46.2

75.6

78.2

61.5

(注)6、7

トラストファーマ
テック株式会社

6.7

45.5

68.5

68.5

86.2

 

 

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき、2025年4月1日時点で算出したものであります。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出(「2024年度中に育児休業を取得した男性従業員数」÷「2024年度中に配偶者が出産した男性従業員数」)したものであります。

3.男女の賃金の差異については、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであり、賃金制度における性別による処遇の差はなく、同等の役割であれば大きく賃金の差異が生じることはありません。なお、賃金は、基本給、超過労働に対する報酬、賞与等を含み、通勤手当等を除く、平均年間賃金を用いております。

4.正規雇用労働者のうち出向者については、当社グループと当社グループ外における出向者及び出向受入者を除き、当社グループ内においては出向先の会社に含んでおります。

5.有期契約社員、パートタイマーを含み、派遣社員は除いております。

6.「労働者の男女の賃金の差異」の「うちパート・有期労働者」には、高度な技能、技術等を有し、かつ、特別な任務を担当する契約社員は除いております。

7.正規社員の男女の賃金の差異の主な要因は、男女の管理職比率の差が影響しています。男女の賃金差異の解消に向けて、採用において女性比率を高めているほか、年齢や性別に関係なく能力による登用を行い、女性活躍推進の取り組みに注力しております。女性管理職比率の目標(2027年度末までに女性管理職比率15%以上)を目指す中で、中長期的には賃金の差異は縮小していくものと見込んでおります。具体的な取り組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において当社グループが判断したものであります。

今やジェネリック医薬品は医療においても必要不可欠なインフラとなり、その公共性は極めて高くなりました。当社グループは、中核事業であるジェネリック医薬品の提供を通じて、患者さんの医療へのアクセス向上と医療財政の健全化に貢献することが最大の社会貢献であり、当社の存在意義であると考えています。

近年、医薬品全体で生じている供給不安を踏まえ、患者さんや医療関係者を始めとするステークホルダーの皆様に安心してご使用いただけるように取り組んでいる事項、例えば、高品質の原薬の確保、生産人員をはじめとする雇用・人財育成、省エネかつ低炭素排出の製造機器の導入、健康的な職場環境の整備等は、サステナビリティの取り組みと密接に関連しております。

 

(基本的な考え方)

1.当社グループにとって、「健全な社会の存在とその持続的(サステナブル)な発展」こそがその存立の基盤である。

2.「持続可能な社会の実現」のために、当社グループが必要な存在(=「社会の公器」)であると認められ、かつ、当社グループがすべてのステークホルダーとの間でしっかりとした信頼関係を継続できてこそ、当社グループのサステナビリティが実現できる。

3.社会は絶えず変化するものであり、当社グループも社会の変化に即応して絶え間ない進化を遂げることにより、サステナブルな存在であり続けることができる。

 

(基本方針)

1.「なによりも健やかな暮らしのために」という企業理念のもと、事業そのものを通じて、人々の健やかな暮らしと優れた医療制度等の維持・発展に貢献することで、サステナブルな社会実現の一翼を担うこと。

2.患者さん・生活者、医療機関等ヘルスケア従事者、取引先、社員、株主、地域社会、地球環境など、すべてのステークホルダーとの継続的なエンゲージメント(相互信頼に基づく絆の構築)に努めること。

3.当社グループがサステナブルな存在であり続けるために、創造性を追求し、社会とともに絶え間ない進化を遂げること。

 

この基本方針に沿って、当社グループで進めるサステナビリティに関する取り組みは次のとおりであります。

 

(1) サステナビリティ共通

当社グループの企業理念「なによりも健やかな暮らしのために」には、ジェネリック医薬品事業を中核に、社会とともに持続的に発展するヘルスケア企業グループとして、ひとりでも多くの人々の健康に貢献していきたいという願いを込めています。この実現のため、当社グループが取り組むべきテーマがサステナビリティの推進であり、気候変動及び生物多様性への取り組みやダイバーシティ&インクルージョンの推進、コーポレート・ガバナンスの強化などについて、定期的に取締役会及びグループサステナビリティ委員会等で議論しております。

 

<ガバナンス>

サステナビリティは、環境、社会、従業員、人権の尊重、贈収賄・腐敗防止、ガバナンス、サイバーセキュリティ、データセキュリティ等、多岐にわたる重要課題を包含することから、当社ではテーマごとにグループサステナビリティ委員会、グループリスクマネジメント委員会、グループコンプライアンス委員会、グループ情報セキュリティ委員会等を設置し、全社的なサステナビリティ推進体制を構築しています。これらの委員会は、各テーマを所管する部門の担当役員を委員長とし、グループ各社の代表者等で構成され、サステナビリティに関する課題の特定、施策の検討及び実行状況の評価を行っています。

取締役会は、これらの委員会の活動を通じて特定されたサステナビリティ関連のリスク、機会、戦略及び目標に対する達成状況等について、少なくとも年1回の報告を受け、重要施策や対応方針等の承認を行うことで監督責任を果たしています。加えて、委員会での協議内容や対応状況については、必要に応じて経営会議等での議論を経て取締役会に報告され、経営層との間で議論や意見交換が行われるほか、委員会を通じて各担当部門へ経営層からのフィードバックがなされ、改善される仕組みになっています。こうしたプロセスを通じて、取締役会はサステナビリティに関する意思決定や施策の実行に対する適切な統制と監督を実現しています。

また、これらの取り組みを統括・支援するため、グループサステナビリティ推進部を設置しており、担当役員のもと、全社方針の策定、KPIの設定とモニタリング、各委員会・各社との連携、情報収集・共有などを担う実務部門として機能しています。グループサステナビリティ推進部は、各委員会と連携しながら、施策の実効性を高めるとともに、全社的なサステナビリティ推進を着実に進めています。

 

<サステナビリティに関する取締役会への報告内容>

 

報告時期

担当委員会

内容

2024年10月

グループコンプライアンス委員会

外部弁護士の委員会への参加、全社コンプライアンスDay及び毎月の法令遵守週間の制定、企業倫理ヘルプラインに関する審議、コンプライアンスeラーニング、企業風土改革プロジェクトの進捗確認

2025年1月

グループ情報セキュリティ委員会

技術的対策・人的対策・物理的対策、情報セキュリティ診断、データ持ち出し対策、サイバーセキュリティ対策、CSIRT体制整備、特権ID管理の強化、セキュアプリント

2025年2月

グループリスクマネジメント委員会

オールハザードBCP、リスク評価シートの見直し、リスクカテゴリーと重要度の見直し、AED講習

2025年3月

グループサステナビリティ委員会

ESG各推進チームの取組み、人権ポリシーの改定、環境データの第三者検証、インターナルカーボンプライシングの導入、外部評価機関の評価結果、TNFD検討、健康経営、パートナーシップ構築宣言、SSBJ基準の動向

 

 

 

<戦略>

当社グループでは、企業理念やグループビジョンのもと、「ジェネリック医薬品を通じて、すべての人々の健康に貢献する」という社会的使命を果たすとともに、環境・社会・経済に対する影響を踏まえたサステナビリティ経営を推進しています。その一環として、様々な社会課題の中から、当社グループが中長期的に優先して取り組むべき重要な課題(マテリアリティ)を特定し、持続的成長の実現と企業価値の向上につなげています。

マテリアリティごとに目指す姿や中期的な目標を設定し、これらを新たな中期経営計画に戦略として反映することで、経営とサステナビリティの一体化を図っています。また、マテリアリティに関する取り組み状況は、関係部門の連携のもとグループサステナビリティ委員会にて定期的に確認し、PDCAを通じて実効性のある対応に取り組んでいます。

2024年度からの新中期経営計画の策定にあたっては、「ステークホルダーの関心」と「当社グループにとっての重要度」の双方を踏まえ、マテリアリティの見直しを行いました。その結果として、2023年度に「価値創造につながるマテリアリティ」と「持続的成長の基盤となるマテリアリティ」の観点から整理及び見直しを行ったマテリアリティは、2024年度も継続させることを確認しました。

 


 

価値創造につながるマテリアリティ

医療アクセスの向上

製品の品質・安全性

安定供給

充実した情報提供

医療財政への貢献

付加価値の高いジェネリック医薬品開発

健康寿命延伸への貢献

未病・予防を含むより広いヘルスケア領域に事業拡大

人財育成

経営人財の育成

 

 

持続的成長の基盤となるマテリアリティ

環境に配慮した事業

気候変動への対応

省資源(リサイクル推進・エネルギー/廃棄物の抑制)

水の使用削減

生物多様性の保全

働き方・働きがい・人権尊重

従業員エンゲージメントの向上

ID&E(インクルージョン・ダイバーシティ・エクイティ)の推進

人権デューデリジェンスの取り組み

コーポレート・ガバナンス

リスクマネジメント・コンプライアンスの強化

社外ステークホルダーエンゲージメント

公正・透明な取引/贈収賄・腐敗防止の推進

サプライチェーンマネジメントの強化

情報セキュリティの強化

 

 

マテリアリティの特定にあたっては、外部評価や国際ガイドラインも参照しながら、次のステップで進めました。

 

STEP1:課題のリストアップ

SASBスタンダード(バイオテクノロジー・医薬品)、GRIスタンダード、SDGsなどの国際的イニシアチブ、ならびに当社グループの企業理念・行動基準、事業特性やバリューチェーンに基づいて、ESGの各観点からグループサステナビリティ委員会メンバーによるワークショップを行い、中長期的な企業価値に関連する課題を抽出しました。

 

STEP2:課題の抽出と重要度評価

STEP1でリストアップした課題を、「ステークホルダーの関心」と「当社グループにとっての重要度」の2軸で評価・マッピングし、影響度の大きい領域を「価値創造につながるマテリアリティ」と「持続的成長の基盤となるマテリアリティ」に分類・評価しました。

 

STEP3:妥当性の確認と戦略への反映

特定されたマテリアリティに対しては、それぞれに関連する目標・取り組み・モニタリング指標を設定し、グループサステナビリティ委員会にて妥当性を検証。経営陣との議論を経て、取締役会で承認されたうえで、中期経営計画へ戦略として統合しました。

 

今後も、社会課題やステークホルダーの期待の変化に応じてマテリアリティの見直しを行いながら、企業としての責任を果たすとともに、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的成長を両立させてまいります。

 

<リスク管理>

当社グループでは、収益や損失に影響を与えると考えられる事象発生の不確実性をリスクと定義し、これらを低減・回避・移転、戦略的保有するためのリスクマネジメント体制を整備しています。

全社的なリスク管理は、グループリスクマネジメント委員会が統括しており、各部門や関連委員会と連携しながら、当社グループを取り巻く環境を踏まえたリスク及び機会の洗い出しと現状分析を行っています。これらのリスク及び機会については、過去の発生事実、他社事例その他様々な公開資料を参考に、発生頻度と事業に与える影響度の二軸で評価を行い、グループ全体として重要性の高いものを合理的と考えられる範囲で特定します。特定された事項に関しては、各担当部門が対応策を策定し、その進捗状況や有効性を定期的にモニタリングし、継続的な改善に取り組んでいます。これらの状況は、グループリスクマネジメント委員会での審議を経て、年1回、取締役会に報告され、経営層による監督の下で適切な統制が図られる体制を構築しています。

主要なリスクの詳細については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

また、サステナビリティ課題に係るリスク及び機会についても、全社的なリスク管理の枠組みの中で特定・評価・管理・対策等の対応を行っています。具体的には、当社が特定したマテリアリティのうち、「環境に配慮した事業」「働き方・働きがい・人権尊重」「コーポレート・ガバナンス」「人財育成」などの領域は、対応を誤ると企業価値の毀損につながる重大なリスクであると同時に、適切に対応することで新たな機会の創出につながる可能性を持った重要分野であると認識しています。

例えば、生活に必要なインフラとしてのジェネリック医薬品の社会的役割の拡大に伴い、当社が医療アクセスの向上に貢献し続けることによって、ステークホルダーからの信頼獲得につながる可能性があります。また、安全・品質管理を徹底し、信頼性の高い医薬品を安定的に供給することで、顧客ロイヤリティの向上につながります。さらに、CO2排出量の削減などの環境対応は、社会的責任を果たす企業としてのブランド価値向上にも寄与します。

こうした機会の特定と対応にあたっては、グループサステナビリティ推進部が中心となり、関係部門と連携しながら横断的な情報共有や取り組み状況の把握を行っています。これにより、サステナビリティに関するリスクと機会を包括的に捉え、持続可能な成長に資するマネジメントを推進しています。

 

<指標及び目標>

当社グループが特定したサステナビリティ重点課題(マテリアリティ)に対し、それぞれの目標を設定し、その達成に向けて、進捗をモニタリングしながら取り組みを推進しております。「気候変動」及び「人的資本」に関する目標及び実績は、それぞれの項目をご確認ください。

 

(2) 気候変動

気候変動が社会や経済にもたらす影響は大きく、当社グループに重大な財務的影響を与える可能性があるため、気候変動への対応を当社グループとして取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の1つと捉えております。そのため、当社は、気候関連財務情報開示の重要性を認識し、2021年9月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明いたしました。

当社グループは、パリ協定を始めとする国際的方針、日本国が決定する貢献(NDC)や気候変動に関連する法規制や政策を支持し、温室効果ガス排出量の低減に取り組むとともに、TCFDの開示枠組みに沿った情報開示を行ってまいります。

 

<ガバナンス>

当社グループでは、環境課題への対応を企業の重要な責務と位置づけ、取締役会の監督のもとでサステナビリティに関する体制を整備・運用しています。気候変動への対応や生物多様性の保全、ネイチャーポジティブの達成に対する責任は、グループCOO(GCOO)およびグループサステナビリティ推進部担当役員に割り当てられており、取締役会がその職務執行状況を監督しています。

執行面では、GCOO、統括役員、担当役員およびグループ各社の代表者で構成される「グループサステナビリティ委員会(以下、委員会)」を設置し、年4回の開催を通じて、気候変動課題やその他の自然関連課題を含むサステナビリティ全般に関する方針や施策について協議・検討を行っています。委員長はグループサステナビリティ推進部担当役員が務め、委員会の審議内容は取締役会へ年1回以上定期的に報告されます。また、取締役会からの指示・助言を受けながら、必要な意思決定を迅速に行う体制としています。

委員会の下部組織として、グループ各社の実務担当者で構成される「地球環境チーム」を設置し、省エネルギーや再生可能エネルギーの導入、温室効果ガス排出量の削減等の気候変動対応と生物多様性の保全及び復興を含む環境課題への具体的な施策を推進しています。同チームは四半期ごとに委員会へ報告を行い、委員会からの指示や助言をもとに取り組みや改善活動を継続しています。

なお、グループにおける投資判断や環境コスト評価の高度化を目的に、2024年度には委員会においてインターナルカーボンプライシング(以下、ICP)の導入を審議し、グループ戦略会議およびグループ投資委員会の承認を経て導入を決定しました。ICPは今後も、委員会におけるモニタリングと定期的な見直しを通じて、グループ全体の意思決定に活用してまいります。

 

<戦略>

当社グループは、企業理念「なによりも健やかな暮らしのために」および中核企業である沢井製薬の企業理念「なによりも患者さんのために」のもと、ジェネリック医薬品の製造販売を主たる事業として展開しています。人々の生命と健康に深く関わる事業を担う企業として、医薬品やヘルスケアサービスの安定供給を果たしつつ、気候変動リスクにも対応していくことが極めて重要な責務であると認識しています。

一方、事業活動の拡大に伴い、当社グループにおける温室効果ガスの排出量も増加傾向にあります。当社では、短期的には原単位ベースでの排出量削減、中長期的には再生可能エネルギーの導入なども含めた排出量削減の取り組みを進めており、気候変動への対応と事業の持続的成長の両立を図っています。

こうした認識のもと、当社グループではサステナビリティ課題への対応を経営の重要テーマと位置づけ、日本国のNDCも念頭に2030年度および2050年度に向けたCO₂排出量削減目標を中期経営計画に明記しております。これらの目標に向けた具体的施策として、省エネルギー設備への更新や、再生可能エネルギー電力の活用検討、また排出量の削減効果を定量的に把握し投資判断に活かすため、ICPを設定し、省エネ投資に反映する仕組みを整えています。ICPは国際エネルギー機関(IEA)のネットゼロシナリオを達成するために必要な2050年時点の予想炭素価格を参考とし、WACCおよび社内為替レートをもとに毎年算出・設定しています。これにより、CO₂排出量に価格を付けて将来的なコストとして見積もることで、省エネ設備の導入によりどれだけのCO₂排出量の削減効果が見込めるかを比較評価して投資判断材料として活用します。

また、当社ではIEAやIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が提示するシナリオを参照し、気温上昇が1.5℃に抑えられるケース(脱炭素が進む社会)と、対策が進まず平均気温が4℃程度まで上昇するケース(物理的リスクが顕在化する社会)の両シナリオを想定し、短期(1年~3年)、中期(4年~9年)、長期(10年以上)の3期に分類した分析を実施しています。これにより、規制強化に伴うコスト増加(例:カーボンプライシング)や、災害リスクの増大によるサプライチェーンへの影響など、多様なリスクを検討し、当社グループが想定する主なリスクおよび機会について、以下のとおり整理しています。

 

区分

リスクの種類

ビジネス・戦略・財務計画への影響

影響度

当社グループの対応

1.5℃

シナリオ

4℃

シナリオ

移行リスク

政策・法規制リスク

カーボンプライシング(炭素税、排出量取引制度)の導入や負担の増加

・当社グループが負担するカーボンプライシングによる負担が発生

・GHG排出量の多い原材料サプライヤーへのカーボンプライシング負担分の当社グループ購買価格への転嫁が発生

・当社グループがGHG排出量削減のための必要な省エネ設備投資負担が発生

・再生エネルギー導入の検討

・廃棄品の減少を含む生産効率化の検討・実施

移行リスク

人口・経済・地政学リスク

人口増加、気温上昇による生物由来の原材料の価格高騰

・新興国を中心に増加する人口に伴い、食料や飼料へ穀物(でんぷん、ショ糖、とうもろこし等)の価格上昇が発生し、医薬品の添加剤原料価格上昇が発生

・購買先の分散

・代替技術の検討

移行リスク

水害リスク(急性)

台風・豪雨・洪水・大雪等の増加

・当社グループ事業所の被災リスクが増加

・当社グループのサプライヤー事業所の被災リスクが増加

・製品在庫周辺への土嚢積み上げ

・損賠保険によるカバー

・当社グループ及びサプライチェーンにおけるBCP整備

機会

現状では気候変動により当社グループの事業に影響を及ぼす機会のうち、戦略や財務状況に重要な影響を与えるものは分析・評価の結果、特定されませんでした。

 

 

なお、移行リスクのうちカーボンプライシングに伴う炭素コストは、1トンあたり14,500円と想定した場合、当社グループの2024年度のScope1とScope2の排出量に対して、理論上は最大で年間およそ10億円規模のコスト影響が生じる可能性があります。これはエネルギーコストや製造原価への影響が大きいため、経営判断における重要な評価項目と位置付けています。実際、操業への影響を考慮し、一度にすべての設備を更新することはできません。そのため、事業拡大や設備の老朽化に合わせて、計画的かつ段階的に設備更新を進めていく必要があります。また、当面は省エネ設備への投資に限ってICPを活用する予定です。さらに、クリーン電気や非化石証書の購入によって、理論上の単価よりも低いコストで削減効果を得られる場合もあります。これらを踏まえると、気候変動対応の取り組みが財務に与える影響は、毎年1億円未満にとどまる見込みであり、これが今後緩やかに増加していくと考えられます。

なお、製薬業界においては気候変動が直接的な事業機会に結びつく例は多くありませんが、例えば温暖化に伴い感染症の流行範囲が変化する可能性や、災害時の医薬品供給体制の強化といった面で、社会的な役割の拡大が求められる可能性もあります。当社グループは、こうした社会的要請を機会ととらえ、医薬品の安定供給体制やBCPの強化といった取り組みの検討を継続してまいります。

今後も当社グループは、気候関連リスクと事業成長の両立を図りながら、持続可能な社会の実現に向けた取り組みを着実に進めてまいります。

 

<リスク管理>

当社グループでは、気候変動を含むサステナビリティ関連リスクを、経営に影響を与え得る重要なリスクの一つとして認識しています。原材料の調達から製造・販売に至るまでのサプライチェーンの各段階において、気候変動に関連する移行リスクおよび物理リスクを把握・評価し、必要な対応策を講じています。

気候変動に関連するリスクの特定および評価プロセスは、グループサステナビリティ委員会の下部組織である「地球環境チーム」のメンバーを中心に、関係部門および関連会社の協力を得て実施しています。これにより、気候変動の関連するリスクの発生可能性および財務的影響度を評価し、当社グループにとって重要なリスクを特定しています。

評価されたリスクは、グループサステナビリティ委員会および取締役会に報告され、経営層により検討・審議が行われます。こうした議論を経て、対応方針が定められ、毎年の事業計画と中長期的には中期経営計画に取り込まれます。

また、今後の炭素税や排出権取引制度の導入・強化といった外部環境の変化に備えるため、当社グループでは、将来のCO₂排出に伴うコストを投資判断に組み込む手段としてICPを導入しています。ICPは、省エネ投資等に対する費用対効果の定量的評価に活用され、長期的なコスト回避の観点からもリスク管理に資するツールとして位置付けられています。

 

<指標及び目標>

当社グループは、気候変動対応に取り組むにあたって温室効果ガス排出量の削減に向けた目標を設定し、毎年のScopeごとの実績を当社コーポレートサイト(注.1)に開示しております。

Scope1、Scope2の排出量については、2013年度を基準年とし、2030年度までに総量で2013年度+α(注.2)比46%削減、および2050年までにネットゼロを目指しています。さらに、事業拡大が続く中にあっても短期目標として毎年度、Scope1、Scope2とも前年比少なくとも1%以上の削減を目標としています。また、Scope3についても算定範囲の拡大・精緻化を進めており、重要なカテゴリーについてモニタリングを行っています。

2025年度においては、CO₂排出量10,000トン相当以上の削減を見込んでおり、その実現に向け、非化石エネルギーの導入(約6,000トン相当)や省エネルギー設備投資、非化石証書の活用等の施策を計画的に進めています。また、ICPを1トンあたり14,500円に設定し、投資判断やコスト評価に活用しています。

加えて、排出量データの透明性・信頼性向上の観点から、2024年度のScope1、Scope2の実績については、一般社団法人日本品質保証機構(JQA)に第三者検証を依頼し、検証報告書を取得しています。

(注)1.URL https://www.sawaigroup.holdings/sustainability/environment/tcfd/

 2.比較対象となる2013年度時点における当社グループの構成会社状況が変化しているため、基準となるCO2排出量を適宜調整するため+αで表現しております。

 

(3) 生物多様性に関する取り組み

自然資源や生物多様性の損失は社会に大きな影響を与えており、当社としても重要課題(マテリアリティ)に省資源、水の使用削減、生物多様性の保全を掲げています。自然関連課題に取り組むため、2024年度よりTNFD(※1)フレームワークで提供されている考え方に基づき、グループの自然関連課題の把握や整理を行っています。

当社グループは、昆明・モントリオール生物多様性枠組みをはじめとする国際的方針や、日本国の生物多様性国家戦略や関連する法規制および政策を支持して、循環型社会の実現や生物多様性の保全を目指し、TNFD提言に沿った情報開示を行ってまいります。

※1 TNFD:企業・団体に自然資本と生物多様性に関連する財務情報の分析および開示を推奨するために2021年に発足した、自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)の略称。

 

<ガバナンス>

生物多様性に対する当社グループのガバナンスは、(2)気候変動に関する取り組みに記載のとおりです。

 

<戦略>

当社グループの事業活動は、地球上の多様な生物がつながることで生まれる生物多様性の恵みに大きく支えられています。また、事業を継続する過程で自然環境に一定の負荷をかけていることも認識しており、その負荷を低減し、ネイチャーポジティブの達成に向けて進めることが重要だと考えています。こうした認識から、生物多様性に関わる課題を当社グループの重要課題の一つと位置づけ、生物多様性の保全および復興に向けた活動に取り組んでいます。

当社グループでは、自然との重要な接点や、そこから生ずるリスクや機会を特定する際に、TNFDが推奨する「LEAPアプローチ(※2)」に基づき、事業活動における自然への依存度や影響、リスクおよび機会の識別・評価を行っています。また、この考察にあたっては、ENCORE、IBAT、WWF Biodiversity Risk Filterなど、国際的に広く利用されている代表的な外部ツールを活用し、状況の把握や評価を実施しています。

※2 LEAPアプローチ:自然との接点を発見(Locate)、依存・影響関係などの接点を診断(Evaluate)、リスク・機会の特定・評価(Assess)、対応および情報開示(Prepare)という分析ステップに焦点を当てた、自然関連課題評価の統合的アプローチ

 

① 依存影響関係の把握

当社グループの医薬品製造販売事業、並びにサプライチェーン上流である原材料の調達過程、下流である廃棄過程における自然との依存影響関係のスクリーニングにあたっては、外部ツール「ENCORE」を活用して、その関連性を確認しています。また、ENCOREの評価結果についてはその評価ロジックをベースとしながら、当社グループの医薬品製造販売事業における活動実態やサプライヤーポートフォリオの事情を鑑みて、出力結果を踏まえた定性的な依存影響の程度を再評価しています。

 

ENCOREによる評価の結果、当社グループは医薬品の製造過程において、汚染物質の流出リスクや清浄な水資源の利用といった観点から、水資源との関わりが深いことが示されています。実際、当社グループの医薬品製造工程では、取水量や排水量の把握、水質や大気の汚染につながる物質の管理に努めており、取水や汚染物質の排出を通じて自然環境に影響を及ぼし得ることを認識しています。

また、医薬品の製造には動植物や石油由来の原料、包装材などが必要であり、自然資源そのものへの依存に加え、資源生産に不可欠な気候や環境条件を調節する生態系サービスにも依存しています。

これらのENCORE分析結果および当社の実態を踏まえ、水資源や原材料などの項目は、自然関連課題を検討するうえで特に重要な自然との関わりであると考えています。

また、サプライチェーンにおける評価結果としては、自然への影響面では原材料となる植物の栽培過程における、土地や水などの自然資源利用、土壌や流域への汚染物質の排出、大気汚染物質の排気、廃棄物の排出を通じて自然に大きく影響を与え得ることが示唆されています。また、依存の側面でも植物生育の面では、気候システムや水資源の循環システムを支える生態系サービスへの依存度が大きいことが示されています。

その他、石油由来の原材料や包装材の他、プラスチック素材、原薬の製造過程においても、特に水資源との関連性が強く示唆されており、バリューチェーン全体を通して、水資源との深い関連性が示唆される形となっています。

 

要注意地域の把握

TNFDでは、生物多様性の観点から重要とされる「要注意地域」と、企業にとって重要なリスクや自然への影響が伴う「マテリアルな地域」という2つの視点から、特に企業として懸念するべき自然環境を有する「優先地域」を把握することが推奨されています。

この考え方に基づき、当社グループの医薬品製造事業に関わるバリューチェーン上の要注意地域について調査を行いました。その結果、当社グループの保有拠点の中では、仙台にある一つの支店が鳥獣保護区内に所在していることが判明しました。また、他にも東京と福岡の2支店、および大阪の同じビル内にある支店と営業所が、保護区やKBA(※3)に近接していることも特定できました。これらの拠点は販売や製品管理といったオフィス業務が主であり、上下水道の利用以外に顕著な自然資源の利用や環境汚染物質の排出といった活動はない事から、自然との依存影響関係の程度は工場拠点と比べて低いことが想定されます。なお、医薬品製造を担う工場拠点については、要注意地域に該当する場所はありませんでした。

一方、バリューチェーン全体では、当社グループが直接調達している植物の栽培拠点の中に、保護区や生物多様性の重要地域に所在、または近接している拠点が複数あることが確認できました。さらに、当社グループ主要製品の原材料製造を行うサプライヤーの国内の工場拠点が保護区に近接していることや、海外拠点において水ストレスの高い地域に立地するサプライヤーの工場が存在することも把握しています。

※3 KBA:Key Biodiversity Areaの頭文字で、生物多様性の保全上重要な鍵となる地域が存在する。

 

③ リスクと機会の特定

自然関連リスクおよび機会は、自然との依存影響関係から生ずるという認識の下で、当社グループにもたらされるリスクと機会、また当社グループの事業活動が環境や社会に及ぼすリスクと機会の双方向の観点で、重要課題の特定を行っています。リスク項目については、TNFDの提供するTNFD Risk and opportunity registersやセクター別ガイダンスを参考に洗い出しを行い、シナリオ分析の手法を通じて、バリューチェーンにおいて発生することが想定されるインパクトや、当社グループにもたらされる財務的影響の規模感を想定しています。

 

④ シナリオを考慮したリスクおよび機会の評価

当社では、TNFDが推奨する移行リスクと物理リスクの2軸の相互関係から想定されるシナリオに基づき、当社グループの事業活動と自然との依存・影響について、要注意地域分析、WWFが提供するBiodiversity Risk Filterのデータ、ハザードマップによる被災リスク調査、地域固有の自然環境の状態や法令規制の調査を踏まえて、リスクと機会を期間と重要度の観点から検討・評価するとともに、当社グループのみならず社会や自然環境にとっての重要度も考慮し、定性的に評価しました。特定、評価したリスクおよび機会については、以下の表に示すとおりです。

 


 

区分

リスクの概要

ビジネス・戦略・財務計画への影響

期間

※A

重要度

※B

当社グループの対応

スク

政策・規制

石油由来製品の使用に関する規制強化

・石油由来の原材料やプラスチック材の調達コスト増加、調達物見直しや原材料転換の研究等の対応コストが増加

中長

・リサイクルが可能な包装材素材の探索、導入

・関連する法規制の遵守、汚染物質量のモニタリング

・環境負荷低減への取り組みを購買ガイドラインに明記して、原材料調達段階から化学物質管理や環境負荷低減を注視

水質、土壌、大気汚染物質に関する規制強化

・設備更新等の対応コストや、運営コストが増加

中長

技術

環境負荷低減の技術が発展

・技術利用の競争が激化し、対応の遅れにより収益が減少

評判

事業活動が自然に与える影響への関心が向上

・原材料調達、操業段階での自然への悪影響や地域住民との衝突が生じる場合、評判低下に伴い不買運動などに繋がり収益が減少

賠償

責任

・事故等により操業拠点から汚染物質が流出した場合や、操業において周辺生態系に悪影響を与えていることが外部組織に指摘された場合、賠償責任が発生

短中長

急性

異常気象の激甚化

・サプライヤーや自社の操業拠点において、異常気象(洪水や地滑りなど)による施設の損害により、操業停止に伴う利益減少や修理費用が発生

短中長

・製品在庫周辺の土嚢積み上げ

・損害保険によるカバー

・当社グループ及びサプライチェーンにおけるBCPの整備

・外来種駆除や河川敷清掃の取組

・自治体との協働による植林活動

・工場敷地内の樹木管理

・輸送路の寸断により原材料/最終製品の配送へ影響が生じ、生産・操業の遅延による利益減少、対応コストが増加

短中長

慢性

自然資本の生産を支える生態系の劣化が進行

・事業に必要な自然資本の供給が不安定化することで、価格の高騰が起こり、調達コストや調達先見直しの対応コストが増加

中長

生態系サービス損失に伴う土壌劣化、水不足、異常気象などの慢性化

・植物栽培条件の慢性的な変動は、契約農家、保有農地における植物の安定栽培が妨げられ、事業停滞による損失発生、対応コスト増加

中長

機会

資源

効率

資源効率化技術の発展

・水・エネルギー、石油由来加工物などの資源使用量削減および廃棄物量削減により、生産性が向上し利益が増加

・省エネに向けたエネルギー効率の良い最新機器の更新、既存設備の改善

・廃棄物削減のための3R推進

・リサイクルが可能な包装材素材の探索、導入

・透明性を持ったサステナビリティに関する情報開示の促進

製品とサービス

環境負荷低減の技術が発展

・リサイクル可能な包装材の活用など、原材料転換等により環境負荷の低減に貢献できる製品を上市することにより、収益が増加

中長

評判

ステークホルダーにおける自然関連課題への関心が向上

・適切な情報開示やステークホルダーとの対話を通じ、投資家やサプライヤーからの評判が向上

短中長

※A 期間:短期(~3年)、中期(4~9年)、長期(10年~)

※B 重要度:当社グループへの影響、自然環境への影響の両側面への深刻度、発生可能性を考慮して定性的に評価

 

 

⑤ 優先地域の選定

以上のLEAPアプローチに基づく調査分析工程を踏まえ、当社グループは、医薬品の研究開発や試験、製造、販売を行っていますが、製造工場拠点に対する自然関連課題の重要性が高いことが想定されます。製造段階における汚染物質の取り扱いや製造に使用する原材料の調達、資源の有効活用が、リスクおよび機会においても重要な要素であると考えられるため、工場拠点は要注意地域には該当していませんが、当社グループにとっての優先地域と認識しております。

また、要注意地域に該当または近接した拠点については、自然保全活動を行う際に優先的に選定してまいります。

上流サプライヤーについては、今後サプライヤーにおける自然保全や環境負荷低減の取り組みについてヒアリング等を行う際に、要注意地域に所在または近接しているかどうかが判断指標の一つになると認識しています。

これらの分析結果は現在、当社グループの医薬品製造販売事業における一部のバリューチェーンを対象に実施した分析結果です。今後は、サプライチェーン全体の事業活動が環境に与える影響やリスクを事前に評価するプロセスである、環境デューデリジェンスの整備と実施を通じて、適宜対象の範囲を拡げ、ネイチャーポジティブへの貢献を念頭に取り組みを深化してまいります。

 

⑥ 生物多様性の保全および復興に向けた取り組み

当社は、一般社団法人日本経済団体連合会に加入しており、「経団連生物多様性宣言」の趣旨に賛同し、「経団連生物多様性宣言イニシアチブ」に参加して、生物多様性の保全に取り組んでいます。

今回の調査の結果、特に懸念が示唆された水資源に関連する取り組みとしては、淀川の「生物多様性民間参画パートナーシップ」行動指針シンボルフィッシュでもあるイタセンパラ(※4)の保護を目的として、当社発祥の地に近い大阪市旭区の城北ワンドで、外来魚の駆除や河川敷の清掃活動に参加しています。

また、優先地域として選定した沢井製薬関東工場では、法令の定めに従った適切な排水処理と管理に加え、洪水対応を兼ねた調整池を整備・保全することにより、工場周辺の生物が生息しやすいような環境を整えています。

有害物質管理の観点では、製品の有害物質生成関連リスクの低減に向けた開発努力も推進しています。代表的な例では、医薬品製剤中に発生する有害物質であるニトロソアミン生成のリスクを抑えた新規製剤開発手法の確立などがあり、本件については外部からの表彰(※5)も受賞するなど評価を得ています。

※4 イタセンパラ:タナゴの一種で国の天然記念物に指定され、絶滅危惧種となっている魚類。

※5 旭化成創剤開発技術賞:国際的な製剤の品質に関する考え方の変貌に応える製剤・創剤開発の基礎および応用に関するハードおよびソフトの優れた研究を対象として授与される学会賞。

 

<リスク管理>

当社グループでは、「地球環境チーム」のメンバーを中心に、サプライチェーンの各段階に関係が深い部門または関連各社の関与と協力を得て、自然関連リスクおよび機会の識別・評価・特定を実施しています。

自然関連リスクおよび機会の識別と評価にあたっては、当社グループのバリューチェーンの各段階における自然との関連性(依存影響関係)の把握を踏まえ、想定されるリスクおよび機会の洗い出しを実施しています。洗い出されたリスクおよび機会項目については、関連する活動量の測定、政府や研究機関による関連公開データ、シナリオ分析の手法を通じて、「深刻度」および「発生頻度」の2つの観点で重要性を評価し、優先課題を特定しています。

特定された優先課題は「グループサステナビリティ委員会」ならびに取締役会へ報告されるとともに、当該報告をもとに「グループサステナビリティ委員会」ならびに取締役会における検討・審議を経て決定がなされた自然関連リスクおよび機会に対する取り組みは、短期的には毎年の事業計画に、中長期的には中期経営計画に適宜組み込まれる仕組みになっています。

なお、「グループサステナビリティ委員会」には自然関連リスクおよび機会のほか、サステナビリティ関連課題が集約され、各課題の相互関係も考慮の上、総合的な重要性判断を行っています。

また、経営成績およびキャッシュフローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があるリスクについては、「グループリスクマネジメント委員会」による全社的なリスクマネジメントプロセスに統合され、各担当部門が講じるリスク対策を確認し、その進捗管理および評価を行うことで、継続的な改善が行われる体制を構築しています。

 

 

<指標及び目標>

当社グループでは、各自然資源の利用状況を含むESG関連データについて、専用ページにて公開しています。また、現在の中期経営計画「Beyond 2027」の中で、自然資源の利用および排出に関する環境関連目標として、2023年度比での原単位水使用量の3%削減、2030年までに廃プラ再資源化率65%の達成を掲げ、取り組みを推進しています。(詳細はそれぞれ、各専用ページをご確認ください。)

なお、TNFDが定めるコアグローバル指標と当社の開示状況については以下のとおりです。

 

測定指標番号

自然の変化の要因

指標

測定指標内容

数値/開示該当箇所

C1.0

陸/淡水/海洋利用の変化

総空間フットプリント

組織が管理する土地面積

設備情報として一部の工場、研究所の面積を有価証券報告書にて開示

C1.1

陸/淡水/海洋の利用変化の範囲

緑化を行っている工場(関東工場・九州工場・第二九州工場)における緑地面積

59,123 m2

C2.0

汚染/汚染除去

土壌に放出された汚染物質の種類別総量

土壌に放出された汚染物質量

土壌への汚染物質の放出実績なし

C2.1

廃水排出

総廃水量

ESGデータにて開示

廃水に含まれる汚染物質(BOD/COD)濃度

533 mg/L

C2.2

廃棄物の発生と処理

廃棄物量

ESGデータにて開示

廃棄物の再資源化量・率

ESGデータにて開示

C2.3

プラスチック汚染

プラスチック廃棄量

832 トン

C2.4

温室効果ガス以外の大気汚染物質総量

NOx

ESGデータにて開示

SOx

ESGデータにて開示

C3.0

資源使用/資源補充

水不足の地域からの取水量と消費量

水資源投入量

ESGデータにて開示

 

※2023年度のデータとなります。ESGデータのURLは以下のとおりです。

https://www.sawaigroup.holdings/sustainability/esg/

 

(4) 人的資本・多様性に関する取り組み

当社グループでは「社会インフラとして国民の生命と健康を守るために、高品質なジェネリック医薬品を安定供給し続け、業界をリードする存在となる」「ジェネリック医薬品を中核にしつつ、予防や診断領域まで含めた製品・サービスを提供することで、社会課題の解決と社会の発展に寄与する」という2030年Visionの実現に向け、多様な視点を持ち、状況変化を素早く感じ取って自ら判断し、自律的に行動に移せる人財が必要であると考えております。

 

<ガバナンス>

当社グループは、中期経営計画及び長期ビジョンに基づき、グループ人事部門の責任者と各事業責任者が議論・検討を重ね、求める人財要件を定義しています。人財の採用及び育成に関する方針・計画については、グループ戦略会議における審議を経た後、グループ人事部担当役員が経営会議に付議し、取締役会において審議・承認されるプロセスとなっています。

また、当社は人的資本に関わるリスク管理の観点から、人財の確保、育成、評価、報酬、離職や定着率の管理などの重要課題について継続的にモニタリングを行い、適切なマネジメントを行っています。取締役会は、人員計画の充足状況や各種研修の実施状況について、適宜グループ人事部門の責任者に報告を求めることで、監督機能を果たすとともに、人的資本経営の実効性を確保しています。

 

<戦略>

現在の中期経営計画では、2027年3月期に生産能力を220億錠に拡大して、高品質なジェネリック医薬品の安定供給を目指します。この実現のためには、製造及び品質管理、品質保証を担う人財の確保と育成が不可欠です。同時に、多様な人財が活躍できる環境の整備も重要な戦略の一つです。さまざまな医薬品市場のニーズに応えるため、異なる専門性や経験を持つ人財が協働し、革新を生み出せる組織づくりが求められています。また、人財確保の手段としても、柔軟な働き方の推進やキャリアの選択肢を広げることで、多様な人財が能力を最大限に発揮できる環境を整備していきます。

①人財の確保と育成

当社グループでは、事業の成長を支える優秀な人財の確保に向けて採用活動を強化しています。2025年4月にはグループ全体で214名の新卒社員が入社しました。また、2024年度の中途採用では、グループ全体で321名を採用しました。

当社グループの企業理念に共感する主体性のある人財を迎えられるように、採用活動の専任部署としてグループ人事部に採用・要員グループを設置するとともに、各部門にも採用担当者を配置し、全社一体となって採用活動に取り組んでおります。未来を担う若手を求める新卒採用では、初任給の引き上げを実施して待遇面の魅力を高めるとともに、実際の業務を体験できるインターンシッププログラムを開催しています。また、各本部に所属する社員が学生向けの説明会に参加し、当社の業務内容や職場環境を第一線の社員から直接感じられる機会を提供しています。学生と社員の接点を増やすこれらの取り組みにより、応募者と当社グループが求める人財のニーズのマッチングを重視し、入社後にすぐに活躍できる仕組みを整えています。特に、製薬会社間で激しい競争となっている品質管理や品質保証を担う人財の採用力を高めるため、職場紹介の動画を作成し、当社グループで働くことの魅力と安心を伝えています。

即戦力を求める中途採用では、他社で豊富な経験を有する方が、当社グループの技術力や品質へのこだわりに共感して応募されることが増えています。当社グループの高品質なジェネリック医薬品を生み出す環境で、さらに自身を成長させたいと望む人々が増えていると感じています。このような期待に応え、社員と企業がともに成長し続けられる組織力の強化に取り組みます。

多様な人財がそれぞれの強みを発揮し、活躍できる環境を整えることも持続的な成長には不可欠です。当社グループの女性管理職比率は2025年3月時点で9.5%という現状にあります。この数字は単なる統計上の課題ではなく、多様な視点やアイデアを活かしきれていない組織としての重要な経営課題を示しています。この状況を改善するためには、数値目標の達成だけを目指すのではなく、組織全体の意識改革と行動変容を通じた持続的な変革が必要と考え、この課題に取り組む専任部署である「ID&E推進室」を中心に、女性活躍を支援する次の施策を継続して実施しています。

②階層別アプローチによる相乗効果の創出

組織変革を効果的に進めるためには、各階層での意識改革と実践が不可欠です。そこで、部門長層、管理職層、次世代女性リーダーという3つの階層に対して、それぞれの役割と課題に応じた研修プログラムを展開しました。特に、次世代女性リーダー育成研修と、その上長向けの管理職研修を連動させることで、日常業務における実践と支援の具体化を図りました。

③「知る」から「行動する」へ

単なる知識提供に終わらないよう、それぞれの研修では実践的なワークショップやディスカッションを重視しました。特に、アンコンシャスバイアス研修では具体的なデータと事例を用い、また、次世代リーダー育成研修では社内ロールモデルとの対話の機会を設けるなど、参加者の気づきを実際の行動変容につなげる工夫を取り入れています。

④組織全体での理解促進

女性活躍推進は特定の層だけの課題ではありません。そのため、WEBセミナーなど、より多くの社員が参加できる形式も取り入れ、組織全体での理解促進を図りました。両立支援と活躍支援の違いや、平等(equality)と公平(equity)の概念など、基本的な考え方の共有にも注力しています。

このように、複数の研修プログラムを有機的に連携させることで、組織全体での意識改革と実践的な行動変容の実現を目指しています。

 

<女性活躍の支援策として実施した研修>

研修名

開催時期

回数

対象者

参加

人数

形式

部門長層向け女性活躍推進研修

2025年1月

2回

部門長

51名

オンライン

次世代女性リーダー育成のための管理職研修

2024年11月~

2025年2月

3回

マネージャー層

22名

対面及び
オンライン

次世代女性リーダー育成研修

2024年11月~

5回

一般職(女性)

24名

対面及び
オンライン

 

 

一方、これらの研修プログラムを通じて、組織全体での意識改革と行動変容を進める中で、意識改革だけでは乗り越えられない、次のような課題が認識されました。

・育児や介護などのライフイベントとキャリア形成の両立

・時間的制約がある中でのマネジメント経験の獲得

・柔軟な働き方を実現するための職場環境の整備

これらの課題に対応するためには、意識面での改革に加えて、それを支える制度や仕組みの整備が不可欠です。そこで当社グループでは、「働き方改革」と「キャリア支援」の両面から、以下のような制度の整備を進めてきました。

<近年に整備した人事制度>

制度

導入時期

内容

対象会社

対象者

在宅勤務制度

2023年4月

自宅で業務を行うことで生産性の向上を目指す

沢井製薬、メディサ新薬

全社員(一部業務は除く)

社内公募・社内兼業制度

2024年4月

人財を求める部署が社内で募集を行う

グループ全社

 

正社員(一般職)

社外専門家による
キャリア相談窓口

2024年4月

社員の主体的・自律的なキャリア形成の相談対応

化研生薬を除く全社

正社員及び定年再雇用者

育児目的休暇制度

2025年4月

子の出生や育児のための特別休暇

化研生薬を除く全社

正社員、契約社員

 

 

<リスク管理>

当社グループでは、人的資本に関わるリスクと機会の両面から課題にアプローチし、企業価値の向上を目指しています。特に、優秀な人財の確保・育成に加え、多様な人財が活躍できる環境の整備が、持続的な成長の基盤であると考えています。年齢、性別、国籍、キャリア志向など、多様なバックグラウンドを持つ人財が、それぞれの強みを発揮できるよう、公平な評価制度の整備や偏見のない職場環境の構築を進めています。そのために、社員が健康で安心して働ける環境を整えることを最優先課題の一つとし、高品質なジェネリック医薬品の安定供給や、予防・診断領域を含む製品・サービスの提供につなげています。

一方で、ハラスメントによる職場環境の悪化、長時間労働による生産性の低下、メンタルヘルス不調や労働災害の発生といったリスクを未然に防ぐための取り組みも推進しています。具体的には、ハラスメントの撲滅に向けた企業姿勢の明文化と「ハラスメントヘルプライン」の設置により、心理的安全性の確保を図っています。また、長時間労働の是正に向けた労務管理の徹底、国内主要事業所への保健師の配置、産業医との連携を通じたメンタルヘルスケアの強化、労働災害の未然防止策を実施しています。

これらの取り組みを通じて、多様な人財が活躍できる環境を整えながら、人的資本の価値を高め、企業の持続的成長の機会を創出してまいります。当社グループは今後もリスク管理を徹底しながら、社員が能力を最大限に発揮できる環境の実現に向けた取り組みを推進してまいります。

 

<指標及び目標>

当社グループは、高品質なジェネリック医薬品の安定供給を実現するため、優秀な人財の確保・育成に加え、多様な人財が活躍できる環境づくりを重要な課題と位置付けています。中期経営計画において従業員エンゲージメントの強化やダイバーシティ推進を目標として掲げ、具体的な指標を設定し、取り組みを進めてまいりました。

従業員エンゲージメントについては、従来の年1回の調査を半年ごとに実施する仕組みに変更し、調査項目も従業員満足度でなく、会社への貢献意欲をより的確に把握できる内容へと見直しました。調査結果は、本部長及び経営層と共有することで、調査により判明した課題や変化をタイムリーに捉え、速やかに対策を実施し、その効果を次の調査で測定することを可能としています。社員が抱える不満や課題を定期的に把握し、改善することで、より働きやすい職場環境の構築を推進しています。

2023年度に8.3%であった女性管理職比率は、2024年度には9.5%に向上しました。意欲と能力のある女性社員の管理職登用を積極的に進めるとともに、次世代女性リーダーの育成研修を実施し、管理職候補となる人財の育成にも注力しています。今後も毎年着実な向上を見込んでおります。

男性の育児休業取得率は、2023年度の37.3%から2024年度には44.0%に増加しました。対象となる男性社員への育児休業制度の周知に加え、その管理職に対しても部下が育児休業を取得できることを周知し、取得を積極的に支援するよう働きかけています。また、男性社員が安心して育児休業を取得できるよう、職場環境の整備を推進しています。2025年度は関連法令の改正も踏まえ、さらなる取得率向上を目指して取り組んでまいります。

障がい者雇用については、障がい者の特性に応じた業務の開発に努め、2024年度も多くの方を新たに雇用しました。しかし、グループ全体に及ぶ新規採用者の増加により、雇用率としては前年と同率にとどまっています。今後も引き続き、積極的な障がい者雇用を推進してまいります。

 

指標

目標

目標年

2025年3月期実績

従業員エンゲージメント

4.5以上

2027年3月期

3.55

女性管理職比率

15%以上

2027年3月期

9.5%

男性育児休業取得率

100%

2027年3月期

44.0%

障がい者雇用率

2.85%以上

2027年3月期

2.60%