2024年4月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項については、以下のようなものがあります。

 当社では、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。

(特に重要なリスク)

① 他社が運営している動画配信プラットフォームへの依存について

 当社のライブストリーミング領域はYouTube等の他社が運営する動画配信プラットフォーム上において、サービスを提供しております。しかしながら、当社が動画配信プラットフォームの運営会社の利用規約等に違反すること等に起因して先方との契約関係が終了し、当社のサービスが当該動画配信プラットフォーム上で展開できなくなった場合、または当該動画配信プラットフォームが利用者の減少により、動画配信媒体としての価値が低下した場合には、当社事業にも影響が生じ、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がある、特に重要なリスクと認識しておりますが、顕在化のリスクは高くないと認識しております。

 当社では、動画配信ビジネス以外にも、コンテンツ販売やイベント等を通じて、動画配信プラットフォームのみに依存することなく、ファンの蓄積や収益の確保に努めており、当社の収益全体に占める動画配信ビジネスの比率は過度に高い状況にはないと認識しております。また、単一のプラットフォームのみに依存することなく、ファンをSNS等の様々な箇所に蓄積しており、動画配信プラットフォームを移行する等の対応も可能な体制となっております。

 

② 人気VTuberへの依存について

 当社が運営するVTuberグループ「にじさんじ」はグループとしてのデビューに加え、ライブ配信においてVTuberとのコミュニケーションを通じたユーザーとの絆を深めることで、特定のVTuberへの依存が低いと認識しており、幅広いVTuberが多くのファンによって支えられています。一方でコンテンツ・IPサービスを展開しているうえで、人気VTuberへの依存、新規人気VTuberを生み出せないリスク等は常にリスクとして認識しており、当社の強みを生かして安定的にVTuberを増加させるとともに、ファンコミュニティの熱量を維持しつつ拡大していくことを目指します。

 人気VTuberのライバーが活動を休止・停止した場合や、スキャンダルや炎上によりVTuber活動に影響が生じた場合、当社がマネジメント戦略上の理由でVTuber活動を抑制した場合、ライバーとの間での業務委託契約はその期間が限定されており、毎回更新できる保証はなく、上記のような人気ライバーとの業務委託契約が更新に至らなかった場合、新規の人気VTuberを生み出すことができなかった場合等には、当社又は「にじさんじ」のレピュテーションや、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があり、特に重要なリスクと認識しておりますが、顕在化のリスクは高くないと認識しております。

 当社では、VTuberの活動を幅広くサポートしており、ライバーの方々に安心して活動していただける体制の構築に努めております。また、ライバーは「にじさんじ」所属VTuberとしての活動を当社から独立して行うということは困難であり、現在までの「にじさんじ」VTuberの引退は少数となっております。

 

③ 動画内容に不適切な内容が入ることによるレピュテーションリスク

 当社では所属するライバーに対して公序良俗の違反や知的財産権の侵害につながるような動画配信や活動をしないよう指導に努めております。また、第三者からの指摘等により所属ライバーが不適切な活動を行っていることを認識した場合はすみやかに対処するように努めております。しかしながら、当社の対応が不十分だった場合には、当社や所属ライバーのレピュテーション低下や訴訟、訴訟に至らないまでも紛争につながることで、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性がある、特に重要なリスクと認識しておりますが、顕在化のリスクは高くないと認識しております。

 当社では、健全なコンテンツを発信していくことが、中長期的にはファンや顧客企業の獲得・蓄積に資すると考えており、当社に所属するライバーに対するコンプライアンス研修やコンテンツ管理に注力しております。当社では引き続き、当社や所属するライバーを不適切な内容の動画を配信することによるレピュテーション低下から保護するための体制の強化を進めてまいります。

 

 

(重要なリスク)

(1)事業環境に関するリスク

① インターネット環境等について

 当社事業は、主としてインターネットを通じてサービスを提供しております。近年におけるスマートフォンやタブレット型端末機器の普及等を背景として、一般ユーザーのインターネット利用環境は継続的に整備が図られ、インターネット上で提供されるサービス及びその利用は拡大傾向にあります。

 しかしながら、将来において、インターネット利用にかかる規制強化、利用料改定等を含む通信事業者の動向の変化、急速な技術革新が生じた場合、一般ユーザーのインターネット利用動向やその在り方に重大な変化が生じた場合、また当社においてこれらの外部環境変化への対応に支障が生じた場合は、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② VTuber業界の成長性について

 当社の主軸であるVTuberビジネスは、コンテンツ市場の一端を成すものであり、特に事業の特性やファン層の類似性等の観点から、アニメ市場と密接に関連する市場であると考えており、これら市場の動向に影響を受ける可能性があると認識しております。

 当社では、インターネットの普及を通じて、コンテンツを制作するクリエイターと、それを体験するユーザーの垣根がなくなってきていること、SNS等を通じてクリエイターとユーザーでの間やユーザー相互のコミュニケーションの文化が醸成されてきていること等といった背景から、VTuber市場に潜在的に大きな成長可能性があると考えております。

 一方で、当社の事業領域については、比較的新しい市場であることや市場自体が成長途上にあると考えられること等から、現時点においては当該市場の定義が確立されたものにまで至っておらず、今後も定義や形を変えながら進化していくものと考えております。昨今では、未成年者による高額課金が問題となっておりますが、当社は配信動画概要欄・弊社ホームページにおいて未成年者に向けて注意喚起文を掲載し、国民生活センターとも連携しながら当該問題へ対応しております。

当社は、市場の変化に応じた事業展開を推進していく方針ではありますが、今後において規制導入やその強化、業界におけるトラブル等による信頼性の毀損、その他の要因により当該市場の成長に支障が生じた場合、当社事業にも影響が生じ、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、製品・サービス分野における消費動向は、経済環境や社会情勢等に強く影響を受ける可能性があり、景気動向や雇用情勢、税制、災害その他により個人消費や企業の広告出稿等に著しい影響を及ぼす事象が生じた場合、当社事業にも影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 競合他社の動向について

 当社が事業展開するVTuber市場においては、現在までにVTuber専業企業に加えて、ゲーム会社等のエンターテイメント企業、動画配信プラットフォーム企業、タレントマネジメント企業等の多くの企業が事業を展開しており、市場の競争環境は厳しさを増しております。

 当社はこれまでに培ってきたライバーへの各種活動のサポートやVTuber市場における「にじさんじ」ブランドの継続的な拡大を行ってきております。また、既存キャラクターやタレントの活用ではなく、ライバーをプロデュースすることにより、事業を拡大してきており、動画配信に限らずコンテンツ販売やイベント開催、企業案件の獲得等、多岐に渡るサービスを展開している点は当社の強みであり、ゲーム会社等のエンターテイメント企業、動画配信プラットフォーム企業、タレントマネジメント企業等の潜在的な競合企業やアニメ等の他の動画コンテンツとの差別化に繋がると考えております。

 しかしながら、当社のこうした取り組みが予想通りの成果をあげられない場合や、より魅力的・画期的な特徴を持つサービスを展開する競合他社の出現により、当社が展開するサービスからのファンの離反等が生じる場合には、当社事業にも影響が生じ、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2)事業内容に関するリスク

① Google LLCとの契約について

 当社はGoogle LLCとの契約に基づき、当社が同社に対し、当社が管理する動画コンテンツの利用許諾を行う一方で、当社は、同社から提供されるツールを使用して、YouTube上において当該コンテンツを管理し、当該コンテンツから生じる収益の一定料率分を受領しております。

 当該契約は1年間の契約期間で、30日前の終了通知がない限り、さらに1年間自動更新されることになっております。現時点で当該契約が解除になる事由は発生しておりませんが、当該契約が終了する契機は、当社の破産等の債務超過、事業の譲渡等による事由、当該契約条項で秘密保持や保証違反等の重要な条項違反があり、また、両当事者ともに30日前に通知することで中途解約することができるとされております。

 当該契約が解除された場合には、当社事業にも影響が生じ、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 海外展開について

 当社では現在、英語圏及び中国を中心に海外でもVTuberビジネスを展開しておりますが、これらの地域におけるVTuberの普及は発展途上の段階であり、積極的に事業拡大を図っていく中で、海外におけるVTuberの浸透に努めております。また、現在進出していない国・地域におけるVTuberビジネスの可能性についても、継続的に検討しております。

 しかしながら、こうした国及び地域におけるVTuberの普及は不確実性を伴うものであり、また言語、地理的要因、法制度・税制度を含む各種規制、経済的及び政治的不安、文化・ユーザーの嗜好や商慣習の違い、為替変動等の様々な潜在的リスク、事業展開に必要な人材及びライバーの確保の困難性、及びそれぞれの国・地域において競争力を有する競合他社との競争リスクが存在します。当社がこのようなリスクに対処できない場合、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 新規ビジネス開発について

 当社ではVTuberビジネスに次ぐエンターテイメントビジネスとしてVTuberに限らず、「魔法のような、新体験を。」顧客に提供すべく、事業活動を行っております。今後もエンターテイメントの新たな可能性を信じて、積極的にまだ世の中にないようなエンターテイメントを創造し、そうしたサービスを事業上の軸となるよう、成長させていくことに努めております。

 しかしながら、新規ビジネスの立ち上げと拡大については、既存ビジネスよりもリスクが高いことを認識しております。入念な市場分析や事業計画構築にも関わらず、予測とは異なる状況が発生し、計画通りに進捗しない場合には、投資資金を回収できず、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 技術革新について

 当社は、技術の発達によりエンターテイメントの新たな表現が可能になり、ファンの方々に提供できる体験を進化させることができるという認識のもと、新技術への対応を適時に行うことが重要な課題であると考えております。したがって、当社では、VRやAR等を含む、近年において次々と登場する新技術に対応すべく、必要な対応や投資を積極的に行ってまいります。しかしながら、当社が展開する事業領域の技術が革新的に変化し、当社がその潮流についていくことができなかった場合や対応に想定以上のコストを要するような場合には、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ システムトラブルについて

 当社の事業は主としてインターネットを介して提供されており、そのサービス基盤はインターネットに接続するための通信ネットワークに依存をしております。当社では、安定的なサービス運営を行うために、サーバー設備等の強化や社内体制の構築を行っております。しかしながら、システムへの一時的な過負荷や電力供給の停止、ソフトウエアの不具合、コンピュータウィルスや外部からの不正な手段によるコンピュータへの侵入、自然災害、事故等、当社の予測不可能な要因によってシステムがダウンした場合や、当社のシステム外でユーザーのアクセス環境に悪影響を及ぼす事象が発生した場合には、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)法的規制等に関するリスク

① 個人情報管理について

 当社では、所属するライバーや顧客に関する個人情報を保有しており、その情報管理を強化していくことが重要であると考えております。今後も社内規程の厳格な運用や、役職員に対する定期的な社内教育の実施、情報セキュリティシステムの整備等に取り組み、一層の情報管理体制の強化、徹底を図ってまいります。しかしながら、万が一に情報が漏洩した場合には、損害賠償費用の発生、社会的信用の失墜等により、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 知的財産権の侵害・公序良俗違反について

 当社では、当社が運営する事業に関する知的財産権の取得に努め、当社が保有する商標、コンテンツ等についての保護を図るとともに、所属するライバーに対して公序良俗の違反や知的財産権の侵害につながるような動画配信や活動をしないように所属VTuberへのコンプライアンス研修の実施、配信動画のモニタリングを行っております。しかしながら、当社の知的財産権が第三者から保護されない場合や、第三者から知的財産権の侵害を主張される場合において、当社主張に対する防御または紛争の解決のために費用や損失が発生し、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ インターネット、アプリ等についての法令の解釈適用に関するリスク

 当社の主な事業領域であるインターネット上での動画配信やライバーを活用した各種の事業は、新しい業態の事業であるため、当社の事業遂行に関連して、著作権法のほか、肖像権・プライバシー権、特定商取引法に関する法律、不当景品類及び不当表示防止法、個人情報の保護に関する法律、動画配信にかかる租税法等に関して、現行の法令及び権利内容の解釈適用上で論点が生じる可能性があり、その結果として当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)会社組織に関するリスク

① 代表取締役CEO 田角陸への依存について

 代表取締役CEOである田角陸は、当社の創業者であり、創業以来代表を務めております。同氏は、VTuber事業の展開に関する豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において極めて重要な役割を果たしております。当社では、取締役会等における役員及び幹部社員への情報共有や経営組織の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を行っておりますが、何らかの理由により同氏が当社の業務を継続することが困難となった場合には、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 人材に関するリスク

 当社の継続的な成長には、事業拡大に応じた優秀な人材を採用するとともに、組織体制を整備していくことが重要であると考えております。当社のコーポレート・ミッションに共感し、高い意欲を持った優秀な人材を採用していくために、積極的な採用活動を行っていくとともに、従業員が働きやすい環境の整備や人事制度の構築を行っております。また、採用後も、当社で存分に力を発揮することを後押しするために、業務を通じたトレーニングのほか、研修制度等の充実にも努めております。

 しかしながら、人材獲得競争の激化や市場のニーズの変化等により、想定通りの採用が進まない等といった優秀な人材の獲得が困難となる場合や、現在在職する人材の社外への流出が生じた場合には、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 事業体制及び内部管理体制の強化について

 当社のさらなる成長のためには、業務の効率化や、事業の規模やリスクに応じた内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。今後も、事業上のリスクを適切に把握・分析したうえで、社内規程や各種マニュアルの整備、社内教育の充実等を通じて、適正な内部管理体制の整備に取り組んでまいります。また、当社は法令に基づき財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し、運用しております。

 しかしながら、今後の急速な事業規模の拡大等により、十分な内部管理体制の構築に支障が生じた場合には、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の財務報告にかかる内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社の財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 

(5)経営成績及び財政状態等について

  配当政策について

 当社は、企業価値の継続的向上を図るとともに、株主の皆様に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして位置付けております。このような観点から、当社は、将来における安定的な企業成長と経営環境の変化に対応するために必要な内部留保資金を確保しつつ、経営成績に応じた株主への利益還元を継続的に行うことを基本方針としております。具体的には、事業から生み出される利益については、事業費用や設備投資を通じたVTuber事業の成長、株主への還元、将来の投資を見据えた内部留保のバランスを考慮しながら活用していく方針です。株主還元は主として自己株式の取得で対応することを考えており、現時点において配当実施の可能性及び実施時期等については未定であります。

配当政策

3【配当政策】

  「第2 事業の状況 3.事業等のリスク (重要なリスク) (5)経営成績及び財政状態等について」に記載のとおり、当社は、企業価値の継続的向上を図るとともに、株主の皆様に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして位置付けております。

 このような観点から、当社は、将来における安定的な企業成長と経営環境の変化に対応するために必要な内部留保資金を確保しつつ、経営成績に応じた株主への利益還元を継続的に行うことを基本方針としております。具体的には、事業から生み出される利益については、事業費用や設備投資を通じたVTuber事業の成長、株主への還元、将来の投資を見据えた内部留保のバランスを考慮しながら活用していく方針です。株主還元は主として自己株式の取得で対応することを考えており、現時点において配当実施の可能性及び実施時期等については未定であります。

 このほか、当社は剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議によってさだめることができる旨定款に定めております。