2024年1月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 852 100.0 90 100.0 10.5

事業内容

 

3 【事業の内容】

当社は、「健康第一」「安全第一」「家庭第一」という基本理念のもと、スピードと環境を重視した経営を行い、社会貢献度の高い研究開発型企業となることを経営方針としています。工場・倉庫・商業施設や、一般の住宅などの建物において、地震や地盤の不同沈下(注1)を原因として生じたコンクリート床の沈下・傾き・段差・空隙・空洞を完全ノンフロン(注2)のウレタン樹脂及び小型機械を用いた独自の「アップコン工法」によって修正する施工を主力事業として展開しております。

従来、コンクリート床の沈下修正時には、既設のコンクリートを取り壊し、新たなコンクリート床を打設するコンクリート打替え工法などが用いられてきましたが、アップコン工法では、既設のコンクリート床を破壊するなどの大規模な解体工事が不要であり、また機械や荷物の撤去・移動・引越し作業も必要としないことから、操業や営業を止めることなく短期間でコンクリート床の傾きを修正することを可能としております。

その他、アップコン工法を応用した技術を用いて、主に公共工事として道路・空港・港湾に生じた段差の修正や空隙・空洞充填なども行っております。

また、当社では新たな事業展開推進のため、複数のプロジェクトを進行させ、発泡ウレタン樹脂を用いた新規応用分野の研究開発を継続しており、2015年には産官学連携で共同開発した工法を用いた施工(農業用に用いられている水路トンネルの維持・補修に係る施工)の事業化に成功しております。

軟弱地盤の多いわが国において、ウレタン樹脂を使用した沈下修正工事を行うことで、暮らしやすい社会を築くとともに、大量生産、大量消費を特徴としてきたこれまでの「フロー型社会」から、住宅や橋・道路などの社会インフラを長寿命化させることによって、持続可能で豊かな社会を実現する「ストック型社会」の形成に貢献する社会貢献度の高い研究・開発企業を目指しております。

当社は、硬質発泡ウレタン樹脂(注3)の新規用途開発への研究開発に取り組むことで、自ら市場を創りながら事業を開拓していくサイクルを目指す研究開発型企業を目指しております。

(注) 1.建物などの構造物に生じる沈下量のうち、対象とする領域の最大沈下量と最小沈下量との差。

2.日本工業規格(JIS)A9526:2015において、オゾン破壊係数(ODP)が0、かつ、地球温暖化係数(GWP)が50未満である発泡剤ハイドロフルオロオレフィン(HFO)を使用した処方技術では、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)はフロン類には該当しないと明記。

3.A液(ポリオール)とB液(ポリイソシアネート)の2液により、短時間で液体→クリーム状態→ゲル状態→固体と化学反応により状態を変えながら形成される樹脂。

 

 

アップコンのビジネスモデル


 

 

1.具体的ビジネス

(1)民間事業

企業の生産・販売活動の拠点である工場・倉庫・商業施設のほか、一般の住宅など、地震や地盤沈下で傾いたコンクリート床を修正いたします。

① 工場・倉庫・商業施設

工場床下に空隙・空洞が発生、装置が振動し不良品率が増加、倉庫の床が傾き荷物が積み上げられない、段差でフォークリフトの走行が困難、といったこれらの原因である傾いたコンクリート床を業務・操業を止めずに床の沈下修正を行います。

② 住宅等

地震や地盤沈下によって発生した住宅の傾きを、基礎下にウレタン樹脂を注入し基礎から傾きを修正するものです。住人は住宅に居住したまま、引越しや荷物の移動も必要ありません。

③ その他

施工に先立っての調査、マンションのエントランス及び事務所等の沈下修正工事が含まれます。

 

(2)公共事業

わが国の農業用水路、道路、空港等の老朽化した社会インフラの機能回復に資するために各研究開発プロジェクト(既存工法の応用技術を含む)により開発された技術を新規事業として公共工事に展開したものです。

① 農業用水路・導水路トンネルウレタン空洞充填工事

小規模断面トンネルに特化して研究開発され、老朽化などによって発生したトンネル覆工背面の空洞にウレタン樹脂を充填させることで農業用水路などの突発的な崩壊を防止する、小規模断面トンネルの維持・補修を行う工事です。

② 道路・橋梁部踏み掛け版等の空洞・空隙充填工事

高速道路・国道他で多用されているコンクリート舗装版に生じた、沈下・段差・バタつき・空隙・空洞などの変状を、専用に開発した高強度ウレタン樹脂を使用して、開削せずに短工期で修正します。短工期であるため、交通規制の早期開放を実現する工法です。

また、変状を修正するだけでなく表層路盤のゆるみも解消できる工事です。

③ 港湾

地震によって生じた港湾の岸壁部の路盤の段差やコンテナターミナル内のRTG(タイヤ式門型クレーン)走行路盤に生じた沈下を夜間工事のみなど短工期で修正できる工事です。

 

④ その他

地震や地盤沈下によって生じた空港エプロンの段差・沈下、防衛施設及び学校体育館のステージのたわみや床の傾きをウレタン樹脂を使用して短工期で修正する工事です。

 

 

[事業系統図]

事業系統図(民間事業)

 


 

事業系統図(公共事業)

 


 

 

2.工法について

(1)アップコン工法(コンクリート床スラブ(注)沈下修正工法)

沈下・段差・傾き・空隙・空洞などが生じた既設コンクリート床に、1m間隔で直径16mmの小さな穴を開け、ウレタン樹脂を注入します。ウレタン樹脂は短時間で発泡し、その圧力でコンクリート床を床下から押し上げて傾きや段差などを修正します。

ウレタン樹脂の注入は、既設コンクリート床の高さを計測機器で常時ミリ単位で監視しながら行い、ウレタン樹脂の最終強度は約60分で発現します。床下に空隙・空洞が発生している場合、同じ方法でウレタン樹脂を注入、ウレタン樹脂自らが発泡する特性によって、狭い隙間でも入り込み空隙を充填することが可能です。

(注) コンクリート床スラブとは、鉄筋コンクリート造(RC造)のコンクリート床を意味する言葉。

 

 [施工イメージ図]

 


 アップコン工法の特長

 ■業務・操業を止めずに施工が可能

 ■短工期/従来工法(コンクリート打替え)と比較して工期1/10

 ■環境に安全なノンフロンウレタン樹脂を使用

 ■高い技術力と資格を持った自社社員による安心の施工

 ■施工機材一式がコンパクト(少ないスペースで施工が可能)

 


 


環境に安全な完全ノンフロンウレタン樹脂を用途別に開発し使用している

 

ミリ単位で常時レベル確認をしながら制度の高い施工をおこなう

 

 

 

 


 


技術と資格を持った自社スタッフで安心対応

 

 

コンパクトで機動性が高い、資機材一式を搭載した施工プラント車

 

 

 

(2) 農業用水路トンネル機能回復加圧式ウレタン充填工法

(Functional Restoration Technologies for Agricultural Ditch Tunnels:以下「FRT工法」という。)

「FRT工法」とは、日本全国の農業用水路・導水路など、老朽化によりトンネルの覆工背面に生じた空洞を硬質発泡ウレタンで充填する補修工事によって、トンネルの崩壊を防ぎ、壊さずに延命化を図ることを目的としております。

① FRT工法開発の経緯

高度成長期に整備された農業用水路トンネルでは、覆工背面に空洞が発生したり、空洞が原因でトンネルの側面にクラックが生じるなど、その多くが老朽化によって補修が必要とされております。農業用水路トンネルの老朽化対策として、当社、アキレス株式会社、岡三リビック株式会社、株式会社ジオデザインの4社で研究会を立上げ、島根大学、石川県立大学と、農林水産省の2010年度~2012年度の官民連携新技術研究開発事業を活用し、従来の改修工事に拠らずにトンネルが有する本来の機能を回復する「FRT工法」を開発し、2016年1月期事業化に成功しております。

農水路のトンネルの補修施工が可能であるのは、農閑期(11月から2月)となっております。従来の工法では、施工にあたって規模が大きい設備を必要としていたことから、電気設備を引くだけで2週間程度(設置―撤去に約1か月)かかってしまい、施工に時間をかけることができませんでしたが、当社が使用するコンパクトなウレタン注入機を用いることで、大掛かりな設備が不要となり、施工までの準備期間が大幅に短縮され短工期の施工となります。

② 施工の概要

トンネルはアーチ状で全方向から一定の同じ力がかかっていないと崩れてしまう構造(アーチアクション)となっておりますが、当該工法は、地盤が緩んで発生した空洞を充填し、なおかつ上部から圧力を加えてトンネルの形状をもとに戻す(機能を回復させる)ことを目的としております。

 


業績

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態の状況

(資産の部)

当事業年度末における資産合計は、1,334,486千円となり、前事業年度末に比べ58,370千円減少いたしました。

流動資産は1,219,436千円となり、前事業年度末に比べ99,289千円減少いたしました。これは主に、その他の増加61,396千円、現金預金の減少135,884千円、未成工事支出金の減少16,774千円等によるものであります。

固定資産は115,049千円となり、前事業年度末に比べ40,919千円増加いたしました。これは主に、投資有価証券の増加30,710千円、機械・運搬具の増加9,296千円等によるものであります。

(負債の部)

当事業年度末における負債合計は、45,274千円となり、前事業年度末に比べ116,683千円減少いたしました。これは主に、未払法人税等の減少72,622千円、未払消費税等の減少26,066千円及び工事未払金の減少20,100千円等によるものであります。

(純資産の部)

当事業年度末における純資産合計は、1,289,212千円となり、前事業年度末に比べ58,312千円増加いたしました。これは主に、当期純利益67,590千円の計上による利益剰余金の増加、その他有価証券評価差額金の増加5,338千円及び株主配当金の支払による減少20,991千円等によるものであります。

 

② 経営成績の状況

当事業年度における我が国経済は、社会経済活動が正常化し、インバウンド需要等が回復したことにより景気は上昇傾向にありますが、物価高や各国の金融引き締め等により世界経済の減速が懸念されます。一方で、国内金融市場は新NISAの導入による投資資金が流入したことや外国人投資家による日本企業への株式投資により、日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新し、株高の勢いを見せております。しかし、依然として我が国経済を取り巻く環境は、物価高や人口減少による人材の確保など不安定な状態であり、今後も注視していく必要があります。

建設業界におきましては、公共投資の増加や民間設備投資の回復等により、需要面では微増に向かっております。しかし、供給面については原材料の高騰及び人手不足の解消傾向が見られず、今後も経営環境に大きく影響してくるものと思われます。

このような状況のもと、当社におきましては、営業活動において調査無料キャンペーンの実施や展示会への出展、並びにIR活動等を中心に進めてまいりました。当事業年度における受注工事は、能登半島地震の影響による施工工事延期、仕入れ原価の高騰及び施工による材料使用量増が影響した結果、当事業年度の営業利益、経常利益及び当期純利益は前事業年度実績を下回る結果となりました。以上の結果、当事業年度の経営成績は、売上高852,483千円(前年同期比7.1%減)、営業利益89,878千円(前年同期比46.8%減)、経常利益94,139千円(前年同期比47.2%減)、当期純利益67,590千円(前年同期比41.8%減)となりました。

なお、当社は沈下修正事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載を省略しております。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ85,884千円減少し、855,705千円となりました。当事業年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

 

  (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により使用した資金は、25,862千円(前事業年度は263,982千円の獲得)となりました。

主な要因は、税引前当期純利益94,139千円、減価償却費8,518千円、仕入債務の減少20,100千円、法人税等の支払額103,887千円が生じたこと等によります。

 

  (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用した資金は、37,736千円(前事業年度は47,794千円の獲得)となりました。
主な要因は、投資有価証券の取得による支出22,620千円、有形固定資産の取得による支出15,347千円が生じたこと等によります。

 

  (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により使用した資金は、22,284千円(前事業年度は110,516千円の獲得)となりました。
主な要因は、リース債務の返済による支出1,276千円、配当金支払額20,883千円が生じたこと等によります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績

当社は生産の形態をとらないため、該当事項はありません。

b.受注実績

当社の工法は受注から施工完了まで短期間で施工を行う工法であり、受注状況に関する記載はしておりません。

c.販売実績

当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は沈下修正事業の単一セグメントのため、施工対象別のみを記載しております。

施工対象

金額(千円)

前年同期比(%)

民間事業

577,914

100.9

公共事業

274,568

79.8

合計

852,483

92.9

 

   (注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2022年2月1日

至 2023年1月31日)

当事業年度

(自 2023年2月1日

至 2024年1月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

クレハ建設㈱

117,280

12.8

  ―

㈱服部組

114,000

13.4

西松建設㈱

86,537

10.2

 

(注)クレハ建設㈱は、2022年4月にクレハ錦建設㈱より社名変更しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

① 経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容
(売上高)

民間事業は、主に工場の施工件数が増加しました。倉庫に関しては請負金額の大きい案件が減少しましたが、商業施設等の施工が寄与し577,914千円(前年同期比0.9%増)となりました。

公共事業は、道路の施工件数が減少し274,568千円(前年同期比20.2%減)となり、その結果852,483千円(前年同期比7.1%減)となりました。

(売上原価、売上総利益)

仕入れ原価の高騰や施工による材料使用量増等が影響し売上原価は430,278千円(前年同期比4.5%増)となりました。この結果、売上総利益は422,205千円(前年同期比16.4%減)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

販売費及び一般管理費は332,327千円(前年同期比1.2%減)となりました。この結果、営業利益は89,878千円(前年同期比46.8%減)となりました。

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

営業外収益は有価証券評価益、助成金収入が減少したこと等により、5,473千円(前年同期比43.5%減)となりました。営業外費用はリース資産による支払利息、有価証券評価損も計上等により1,212千円(前年同期比159.5%増)となりました。この結果、経常利益は94,139千円(前年同期比47.2%減)となりました。

(特別利益、特別損失、法人税等合計、当期純利益)

法人税、住民税及び事業税を29,886千円(前年同期比56.7%減)、法人税等調整額を△3,337千円(前期同期は△7,052千円)計上したことにより、当期純利益は67,590千円(前年同期比41.8%減)となりました。

 

② 財政状態の分析

財政状態の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析、検討内容

キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社は企業体質の強化を図りながら持続的な企業価値の向上を進めるにあたり、事業運営上必要な資金を安定的に確保することを基本方針としております。

当社の財源は主に営業活動によるキャッシュ・フローで生み出した資金を源泉とし、運転資金及び設備資金は主に自己資金で賄うことを基本としております。

 

 

⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。

 

⑥ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の進捗については、第21期事業年度において、売上総利益率49.5%(前事業年度55.1%)、売上高経常利益率11.0%(前事業年度19.4%)となっております。今後も、経営効率の重視、原価削減により利益率の向上を目標とし利益率の確保に取り組んでまいります。

 

⑦ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑧ 経営者の問題認識と今後の方針について

経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。