事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
-
売上
-
利益
-
利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
---|---|---|---|---|---|
(単一セグメント) | 1,195 | 100.0 | 332 | 100.0 | 27.8 |
事業内容
3 【事業の内容】
当社は、「健康第一」「安全第一」「家庭第一」という基本理念のもと、スピードと環境を重視した経営を行い、社会貢献度の高い研究開発型企業となることを経営方針としています。工場・倉庫・店舗(商業施設)や、一般の住宅などの建物において、地震や地盤の不同沈下(注1)を原因として生じたコンクリート床の沈下・傾き・段差・空隙・空洞を完全ノンフロン(注2)のウレタン樹脂及び小型機械を用いた独自の「アップコン工法」によって修正する施工を主力事業として展開しております。
従来、コンクリート床の沈下修正時には、既設のコンクリートを取り壊し、新たなコンクリート床を打設するコンクリート打替え工法などが用いられてきましたが、アップコン工法では、既設のコンクリート床を破壊するなどの大規模な解体工事が不要であり、また機械や荷物の撤去・移動・引越し作業も必要としないことから、操業や営業を止めることなく短期間でコンクリート床の傾きを修正することを可能としております。
その他、アップコン工法を応用した技術を用いて、主に公共工事として道路・港湾・空港に生じた段差の修正や空隙・空洞充填なども行っております。
また、当社では新たな事業展開推進のため、複数のプロジェクトを進行させ、発泡ウレタン樹脂を用いた新工法・新規応用分野の研究開発を継続しており、2015年には産官学連携で共同開発した新工法を用いた施工(農業用に用いられている水路トンネルの維持・補修に係る施工)の事業化に成功しております。
軟弱地盤の多い我が国において、ウレタン樹脂を使用した沈下修正工事を行うことで、大量生産、大量消費を特徴としてきたこれまでの「フロー型社会」から、工場・倉庫・店舗(商業施設)、住宅などの建物構造物や、道路・港湾・空港などの社会インフラを長寿命化させることによって、持続可能で豊かな社会を実現する「ストック型社会」の形成に貢献しています。
当社は、硬質発泡ウレタン樹脂(注3)の用途開発に取り組むことで、自ら市場を創りながら事業を拡大していきます。
(注) 1.建物などの構造物に生じる沈下量のうち、対象とする領域の最大沈下量と最小沈下量との差。
2.日本工業規格(JIS)A9526:2015において、オゾン破壊係数(ODP)が0、かつ、地球温暖化係数(GWP)が50未満である発泡剤ハイドロフルオロオレフィン(HFO)を使用した処方技術では、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)はフロン類には該当しないと明記。
3.A液(ポリオール)とB液(ポリイソシアネート)の2液により、短時間で液体→クリーム状態→ゲル状態→固体と化学反応により状態を変えながら形成される樹脂。
アップコンのビジネスモデル
1.具体的ビジネス
(1)民間事業
企業の生産・販売活動の拠点である工場・倉庫・店舗(商業施設)のほか、一般の住宅など、地震や地盤沈下で傾いたコンクリート床を修正いたします。
① 工場・倉庫・店舗(商業施設)
工場床下に空隙・空洞が発生、装置が振動し不良品率が増加、倉庫の床が傾き荷物が積み上げられない、段差でフォークリフトの走行が困難、といったこれらの原因である傾いたコンクリート床を、操業や営業を止めずに床の沈下修正を行います。
② 住宅等
地震や地盤沈下によって発生した住宅の傾きを、基礎下にウレタン樹脂を注入し基礎から傾きを修正するものです。住人は住宅に居住したまま、引越しや荷物の移動も必要ありません。
③ その他
施工に先立っての調査や、マンションのエントランス及び事務所等の建物構造物の沈下修正工事が含まれます。
(2)公共事業
我が国の農業用水路、道路、港湾、空港等の老朽化した社会インフラの機能回復に資するために各研究開発プロジェクト(既存工法の応用技術を含む)により開発された技術を新規事業として公共工事に展開したものです。
① 農業用水路・導水路トンネルウレタン空洞充填工事
小規模断面トンネルに特化して研究開発され、老朽化などによって発生したトンネル覆工背面の空洞にウレタン樹脂を充填させることで農業用水路トンネルなどの機能を回復し突発的な崩壊を防止する、小規模断面トンネルの維持・補修を行う工事です。
② 道路・橋梁部踏み掛け版等の空洞・空隙充填工事
高速道路・国道他で多用されているコンクリート舗装版に生じた、沈下・段差・バタつき・空隙・空洞などの変状を、専用に開発した高強度ウレタン樹脂を使用して、開削せずに短工期で修正します。短工期であるため、交通規制の早期開放を実現する工法です。
また、変状を修正するだけでなく表層路盤のゆるみも解消できる工事です。
③ 港湾
地震や地盤沈下によって生じた港湾の岸壁部の路盤の段差やコンテナターミナル内のRTG(タイヤ式門型クレーン)走行路盤に生じた沈下を夜間工事のみなど短工期で修正できる工事です。
④ その他
地震や地盤沈下によって生じた空港エプロンの段差・沈下、防衛施設及び学校体育館のステージのたわみや床の傾きをウレタン樹脂を使用して短工期で修正する工事です。
[事業系統図]
事業系統図(民間事業)
事業系統図(公共事業)
2.工法について
(1)アップコン工法(コンクリート床スラブ(注)沈下修正工法)
沈下・段差・傾き・空隙・空洞などが生じた既設コンクリート床に、1m間隔で直径16mmの小さな穴を開け、ウレタン樹脂を注入します。ウレタン樹脂は短時間で発泡し、その圧力でコンクリート床を床下から押し上げて傾きや段差などを修正します。
ウレタン樹脂の注入は、既設コンクリート床の高さを計測機器で常時ミリ単位で監視しながら行い、ウレタン樹脂の最終強度は約60分で発現します。床下に空隙・空洞が発生している場合、同じ方法でウレタン樹脂を注入、ウレタン樹脂自らが発泡する特性によって、狭い隙間でも入り込み空隙を充填することが可能です。
(注) コンクリート床スラブとは、鉄筋コンクリート造(RC造)のコンクリート床を意味する言葉。
[施工イメージ図]
アップコン工法の特長
■操業・業務を止めずに施工が可能
■短工期/従来工法(コンクリート打替え)と比較して工期1/10
■環境に安全なノンフロンウレタン樹脂を使用
■高い技術力と資格を持った自社社員による安心の施工
■資機材一式がコンパクト(少ないスペースで施工が可能)
(2) 農業用水路トンネル機能回復加圧式ウレタン充填工法
(Functional Restoration Technologies for Agricultural Ditch Tunnels:以下「FRT工法」という。)
「FRT工法」とは、日本全国の農業用水路・導水路など、老朽化によりトンネルの覆工背面に生じた空洞を硬質発泡ウレタンで充填する補修工事によって、トンネルの崩壊を防ぎ、壊さずに延命化を図ることを目的としております。
① FRT工法開発の経緯
高度成長期に整備された農業用水路トンネルでは、覆工背面に空洞が発生したり、空洞が原因で土圧の均衡が取れずトンネルの側面にクラックが生じるなど、その多くが老朽化によって補修が必要とされております。農業用水路トンネルの老朽化対策として、当社、アキレス株式会社、岡三リビック株式会社、株式会社ジオデザインの4社で研究会を立上げ、島根大学、石川県立大学と、農林水産省の2010年度~2012年度の官民連携新技術研究開発事業を活用し、従来の改修工事に拠らずにトンネルが有する本来の機能を回復する「FRT工法」を開発し、2016年1月期事業化に成功しております。
農水路のトンネルの補修施工が可能であるのは、農閑期(11月から2月)となっております。従来の工法では、施工にあたって規模が大きい設備を必要としていたことから、電気設備を引くだけで2週間程度(設置―撤去に約1か月)かかってしまい、施工に時間をかけることができませんでしたが、当社が使用するコンパクトなウレタン注入機を用いることで、大掛かりな設備が不要となり、施工までの準備期間が大幅に短縮され短工期の施工となります。
② 施工の概要
トンネルはアーチ状で全方向から一定の同じ力がかかっていないと崩れてしまう構造(アーチアクション)となっておりますが、当該工法は、地盤が緩んで発生した空洞を充填し、なおかつ上部から圧力を加えてトンネルの形状をもとに戻す(機能を回復させる)ことを目的としております。
業績
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産の部)
当事業年度末における資産合計は、1,792,760千円となり、前事業年度末に比べ458,273千円増加いたしました。
流動資産は1,442,564千円となり、前事業年度末に比べ223,127千円増加いたしました。これは主に、現金預金の増加267,759千円、完成工事未収入金及び契約資産の増加109,162千円及び有価証券の減少100,000千円等によるものであります。
固定資産は350,196千円となり、前事業年度末に比べ235,146千円増加いたしました。これは主に、投資有価証券の増加227,148千円、繰延税金資産の増加12,044千円等によるものであります。
(負債の部)
当事業年度末における負債合計は、253,694千円となり、前事業年度末に比べ208,420千円増加いたしました。これは主に、未払費用の増加32,919千円、未払法人税等の増加101,108千円、未払消費税等の増加53,292千円等によるものであります。
(純資産の部)
当事業年度末における純資産合計は、1,539,065千円となり、前事業年度末に比べ249,852千円増加いたしました。これは主に、当期純利益244,521千円の計上による利益剰余金の増加、その他有価証券評価差額金の増加19,374千円及び株主配当金の支払による減少14,043千円等によるものであります。
② 経営成績の状況
当事業年度(2024年2月1日~2025年1月31日)における我が国経済は、景気の一時的な停滞感から内需主導で緩やかな回復傾向を維持し、長期に渡るマイナス金利が終わりを迎え日経平均株価は史上最高値を更新しました。また地価や賃金に関してもバブル期以来の伸び率を記録し、デフレからの脱却の実現に期待感が膨らんでおります。一方で、世界経済ではトランプ米国大統領による各国への関税政策の行方に懸念が高まり、各分野とも今後の動向に注視する必要があります。
建設業界では、民間事業による住宅関連の需要が停滞しましたが、大手企業による設備投資の拡大が下支えとなりました。一方で、公共事業では国内インフラ事業として政府が掲げた国土強靭化政策により拡大傾向が今後も続くと予想されます。円安による資材等の価格高騰が一段落したものの、建設業就業者の高齢化が進み中長期的な人材確保の必要性や、法改正による労働時間の制限及び有給休暇取得の確保など、労働環境改善による社内業務の効率化やDX化を急務とした経営環境は今後も続くと予想されております。
このような状況のもと、当社におきましては前期からの期ずれによる案件や大型案件の受注を複数獲得しました。営業活動においては、展示会への出展数を増加、調査無料キャンペーンでの好評により期間延長などを行いつつ、IR活動では大阪や名古屋での個人株主様への企業説明会及びウレタンを使用したデモンストレーションなどを行いアップコン工法の知名度・認知度向上に尽力してまいりました。
以上の結果、当事業年度の経営成績は、売上高1,194,781千円(前年同期比40.2%増)、営業利益331,888千円(前年同期比269.3%増)、経常利益337,649千円(前年同期比258.7%増)、当期純利益244,521千円(前年同期比261.8%増)となり会社設立以来の売上高及び各段階利益ともに過去最高益を達成することができました。
なお、当社は沈下修正事業の単一セグメントのため、セグメント別の記載を省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ220,031千円増加し、1,075,736千円となりました。当事業年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により獲得した資金は、334,260千円(前事業年度は25,862千円の使用)となりました。これは主に、税引前当期純利益337,649千円、減価償却費11,034千円、売上債権の増加額118,251千円、未払費用の増加額32,919千円、未払消費税等の増加額53,694千円が生じたこと等によります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により使用した資金は、98,271千円(前事業年度は37,736千円の使用)となりました。これは主に、有価証券の取得による支出180,366千円、有価証券の償還による収入280,366千円、投資有価証券の取得による支出204,203千円が生じたこと等によります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により使用した資金は、15,956千円(前事業年度は22,284千円の使用)となりました。 これは主に、配当金支払額14,097千円が生じたこと等によります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産の形態をとらないため、該当事項はありません。
b.受注実績
当社の工法は受注から施工完了まで短期間で施工を行う工法であり、受注状況に関する記載はしておりません。
c.販売実績
当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は沈下修正事業の単一セグメントのため、施工対象別のみを記載しております。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績に対する割合は次のとおりであります。
(注)前事業年度における梅林建設株式会社、当事業年度における株式会社服部組及び、西松建設株式会社に対する販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
① 経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容
(売上高)
民間事業は、複数の大型案件の受注が寄与し1,072,046千円(前年同期比85.5%増)となりました。
公共事業は、農業用水路トンネルの受注延期が影響し122,735千円(前年同期比55.3%減)となり、その結果1,194,781千円(前年同期比40.2%増)となりました。
(売上原価、売上総利益)
材料使用量は減少したものの、人件費の増加が影響し、売上原価は440,319千円(前年同期比2.3%増)となりました。この結果、売上総利益は754,462千円(前年同期比78.7%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は422,573千円(前年同期比27.2%増)となりました。この結果、営業利益は331,888千円(前年同期比269.3%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
営業外収益は投資有価証券売却益の計上等により、7,708千円(前年同期比40.8%増)となりました。営業外費用は支払手数料の計上等により1,948千円(前年同期比60.7%増)となりました。この結果、経常利益は337,649千円(前年同期比258.7%増)となりました。
(特別利益、特別損失、法人税等合計、当期純利益)
法人税、住民税及び事業税を115,156千円(前年同期比285.3%増)、法人税等調整額を△22,029千円(前期同期は△3,337千円)計上したことにより、当期純利益は244,521千円(前年同期比261.8%増)となりました。
② 財政状態の分析
財政状態の分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。
③ キャッシュ・フローの状況の分析、検討内容
キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は企業体質の強化を図りながら持続的な企業価値の向上を進めるにあたり、事業運営上必要な資金を安定的に確保することを基本方針としております。
当社の財源は主に営業活動によるキャッシュ・フローで生み出した資金を源泉とし、運転資金及び設備資金は主に自己資金で賄うことを基本としております。
⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。
この財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。
⑥ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の進捗については、第22期事業年度において、売上総利益率63.1%(前事業年度49.5%)、売上高経常利益率28.3%(前事業年度11.0%)となっております。今後も、経営効率の重視、原価削減により利益率の向上を目標とし利益率の確保に取り組んでまいります。
⑦ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑧ 経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。