2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社の事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項についても投資判断の上で、あるいは当社の事業活動を理解する上で重要と考えられる事項について、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めております。なお、文中における将来に関する記載事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。

当社は、リスクを適切に把握するため、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 イ.企業統治の体制の概要 e.リスク・コンプライアンス委員会」に記載しておりますリスク・コンプライアンス委員会を設置し、日常的にリスクの把握に努めております。

 

<事業環境等に関するリスク>

(1) サービスの健全性・適切性について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:小)

当社の提供するサービスでは、スペース掲載者に対しては、本人確認書類の提出を前提とした反社チェックを網羅的に実施し、メールアドレスの実在確認や電話番号認証などをおこなうことでスペース掲載者と連絡が取れる状態を整備しております。また、スペース利用者に対しては、スペース予約時にスペースごとに設定された用途を制限し、用途の詳細の記載を促すなど、利用規約違反の予防や問題が発生した際に予約内容が確認できるよう努めております。さらに、監視カメラなどIoT機器とのシステム連携などを進め、スペース掲載者がリアルタイムでスペースの利用状況を確認し、録画画像を事後確認できるような仕組みの提供も開始しております。当社においてはクレーム管理マニュアルを策定し、適宜適切にクレームのエスカレーションが行われる体制や口コミのモニタリング体制など、サービス利用の健全性維持の体制や仕組みを構築しており、サービス利用規約やスペース掲載規約において、第三者の権利を侵害する行為や虚偽の情報の登録などの禁止事項を明記するとともに、違反者に対してはサービスの利用停止や登録の抹消等の厳正な対応を講じる方針であることを明確にしております。このように健全性・適切性が保たれるよう取り組んでおりますが、悪質な行為等により当社サービスに対する信頼性が低下した場合には、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(2) 競争環境について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社が提供するサービスについては、類似会社や競合が存在するものの、サービスコンセプトやターゲット ユーザー(スペース利用者)、Webサービスとしての機能、顧客対応など多面的に差別化を図っております。しかしながら、同業他社において同様の方針転換や対応をおこなってくる可能性も考えられ、さらには新規参入の増加等による競争の激化や技術革新、業界規制の変更等により、当社事業の優位性が保てなくなった場合には、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

<事業運営に関するリスク>

(3) 事業展開の遅延発生について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:中)

当社では、「インスタベース」及び新規事業の構築・成長拡大・機能改善などサービス展開に関する計画に基づき、プロジェクトリーダーが各種KPIやプロジェクトの進捗を管理徹底し、計画に対する遅延発生を未然に防止するよう努めておりますが、予測できない要因により、計画に対する遅延が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(4) システム障害及び情報セキュリティについて(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:大)

当社のサービスは、通信事業者が提供する公衆回線、専用回線及びインターネット回線等の利用を前提としたものであるため、自然災害または事故・外部からの不正な手段によるコンピュータへの侵入・コンピュータウイルス・サイバー攻撃等により、通信ネットワークの切断やアプリケーションの動作不良が発生する可能性があります。また、予期せぬシステム障害や当社のシステムの欠陥により当社サービスが停止する可能性もあります。このようなリスクを回避するため、外部・内部からの不正侵入に対するセキュリティ対策、24時間のシステム監視、システム構成の冗長化、保険への加入等により然るべき対応を図っております。しかしながら、このような事象が発生した場合は、当社への損害賠償請求や障害事後対応等により、営業活動に支障をきたし、機会損失が発生し、さらに当社サービスへの信用が失墜することにより、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(5) データセンターにおける障害について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:大)

当社が提供するサービスは、「Amazon Web Services」や「Google Cloud Platform」などのクラウドサービスに各種データが格納されております。当社は外部のクラウドサービスを活用し、それぞれのクラウドサービスが提供する最新のセキュリティ対策サービスを積極的に活用し、常時セキュリティチェックを稼働させ、セキュリティ改善を続けることで、安全性を確保しております。また、自然災害に対する対策として、本番環境を物理的に冗長化させて運用する Multi-AZ (Available Zone) を採用し対策をおこなっております。さらに、極力ベンダーに依存しないインフラ設計をしており、特定のクラウドサービスが恒久的にサービス停止に陥った場合でも他のクラウドサービスで運用を引き継ぐことが可能な対応を行っております。しかしながら、大地震、火災、その他の自然災害及び設備の不具合、運用ミス等が発生した場合、外部のクラウドサービスの障害等によりサービスの提供や格納された情報に重大な支障が生じ、当社サービスへの信用が失墜することにより、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(6) サービスの不具合について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:中)

当社が提供するWebサービスやアプリケーションにおいて、リリース前にテスト等をおこなうことで万全を期しているものの、完全に不具合を解消することは不可能であります。そのため、サービスの大規模な不具合が発生した場合、顧客の信頼を喪失し、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(7) 特定のプラットフォーム事業者の動向について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:小)

当社の事業は、スマートフォン向けアプリケーションを提供しており、Apple Inc.及びGoogle LLCが提供するプラットフォームを通じてアプリケーションを提供することが現段階における当社の事業の重要な前提条件であります。当社は、常にApple, IncやGoogle LLCのルール変更の動向について情報収集、調査を行い、両社の変更に対して迅速に対応できる体制を整備しておりますが、これらプラットフォーム事業者の事業戦略の転換並びに動向によっては、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 人材の確保について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:中)

プロジェクト管理能力を有するリーダークラスや組織マネジメント能力を有するマネージャークラスの従業員を中心に人材の採用を積極的に行っており、また、従業員の教育にも力を入れておりますが、採用マーケットの状況によっては、計画どおりに希望するレベルの従業員が採用できず、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(9) 小規模組織について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:小)

当社の役員及び従業員数は、本書提出日現在、役員8名、従業員38名と小規模組織であり、内部管理体制も組織規模に応じたものとなっております。当社は、内部管理体制の充実、業務遂行能力の向上に努め、業務が属人化しないようマニュアル等の作成による業務の平準化、特定人物に権限が集中しないように規程に基づく権限移譲を図っております。

また、今後の事業の拡大及び多様化に対応して、人員の増強と内部管理体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、限りある人的資源に依存しているため、急激な事業拡大を図り人員増加が進んだ場合には人件費等の負担増加や内部管理体制の不足など、または、規模縮小等に伴い当該人的資源の流出が生じた場合には事業の運営人員の不足など、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

 

(10) 当社サービスへの集客における外部検索エンジンへの依存について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社サービスにおける顧客獲得チャネルのうち多くの割合が外部検索エンジンとなっており、当社では外部検索エンジンにおける最新の検索ロジックへの技術的対応、既存顧客との関係性強化や認知拡大による他社プラットフォームに依存しない利用拡大等の対応に努めております。しかしながら、今後、検索エンジンの運営会社による検索結果の表示ロジックの変更などにより、検索エンジン経由の集客力が低下した場合、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

<経営体制に関するリスク>

(11) 特定人物への依存について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:中)

当社の代表取締役であります佐藤 海は、当社の共同創業者であるとともに、大株主であり、創業以来当社の経営方針や事業戦略の立案及び遂行において重要な役割を果たしております。

また、当社の取締役であります髙畠 裕二は、当社の共同創業者であるとともに、大株主であり、創業以来当社のシステム開発全般において重要な役割を果たしております。

そのため、各事業部門長である役職員に権限委譲を行い、両氏への過度な依存を回避すべく、経営管理体制の強化、人材の育成を進めておりますが、何らかの理由により両氏が当社業務を継続することが困難になった場合には、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(12) 特定サービスへの依存について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:中)

当社の売上について、創業以来サービス提供している「インスタベース」に大きく依存しており、全体の売上高に対して97.4%(2024年3月期実績)を占めております。既存サービスと新規サービスのシナジーを創出し、継続的に顧客ニーズと新たな価値提供を目指した事業を積極的に展開し、競合企業との差別化を図ってまいりますが、競合企業との競争激化や新たな企業による参入、その他市場環境の変化により、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

<内部統制に関するリスク>

(13) ソフトウエア資産の減損について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:小)

当社で開発したソフトウエアについては、将来の収益獲得が確実であると認められたものを資産計上しております。しかしながら、事業計画の変更などにより当初予定の収益が得られない場合、資産の償却または減損が必要となり、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(14) 知的財産権の侵害等について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:中)

当社は、運営するサービスに関する知的財産権の取得に努め、使用する商標や技術等の保護を図っておりますが、知的財産権が第三者に侵害された場合には経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、弁護士や弁理士等の外部の専門家と連携して、第三者の知的財産権を侵害することがないように細心の注意を払っておりますが、当社が使用する技術やコンテンツについて、第三者から知的財産権の侵害を主張され、当該主張を退けるための費用または損失が発生した場合、事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社サービスのユーザーが掲載したコンテンツについて第三者の知的財産権が侵害されていた場合に、当該サービスに対する信頼の低下が発生した場合、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(15) 法令等について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:中)

当社の事業は、企業活動に関わる各種法令のほか、不動産関連法令や旅行業・旅館業関連法令など、直接的・間接的を問わず様々な法令の規制を受けております。したがって、コンプライアンス体制の充実が重要であると考えており、社内規程を整備し、適宜研修を実施して周知徹底を図っております。しかしながら、今後国内において新たに当社の事業に関連した法規の制定やインターネット関連事業者を規制する新たな法律等による法的規制の整備が行われる場合、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

 

(16) 内部管理体制の確立について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:小)

当社は、業容の拡大及び従業員の増加に合わせて内部管理体制の整備を進めており、今後も一層の充実を図る予定ですが、適切な人的・組織的な対応ができずに、事業規模に応じた事業体制、内部管理体制の構築が追いつかない場合には、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(17) 配当政策について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:小)

当社は、創業以来配当を実施しておりませんが、株主に対する利益還元は経営の重要課題であると認識しております。しかしながら、当社は未だ成長過程にあると考えており、さらなる内部留保の充実を図り、経営体質の強化、事業拡大のための投資等に充当していくことが企業価値の向上、ひいては株主に対する最大の利益還元につながると考えております。将来的には、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び当社を取り巻く事業環境を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針でありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。

 

(18) 個人情報の取り扱いについて(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:大)

当社は、各サービスにおいて取得した個人情報及び機密情報を保有しており、「個人情報の保護に関する法律」の適用を受けております。これらの個人情報については、個人情報保護方針に基づき適切に管理するとともに、社内規程として「個人情報保護規程」を定め、さらに2021年12月に「プライバシーマーク」を取得しており、社内教育の徹底と適切な個人情報の取扱いをおこなえる管理体制の構築に努めております。

しかしながら、コンピュータウイルスの感染、不正アクセスや盗難、その他不測の事態により個人情報または機密情報が消失、または社外に漏洩した場合には、企業としての社会的信用力が低下することにより、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

(19) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(顕在化の可能性:大、顕在化の時期:短期、影響度:小)

当社の役員及び従業員等に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しております。提出日現在、新株予約権の目的である普通株式の数は370,700株であり、当社発行済株式総数4,608,800株の8.04%に相当しております。これらの新株予約権、また、今後付与される新株予約権の行使が行われた場合、当社の株式価値を希薄化させる可能性があります。

 

<その他のリスクについて>

(20) 訴訟等について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:中)

本書提出日現在において当社を当事者とする訴訟等の法的手続はありません。しかしながら、将来訴訟等による請求を受け、またはその他の形で当社を当事者とする訴訟等の法的手続が行われる可能性はあります。

また、当社サービスの利用者による違法行為やトラブル、第三者の権利侵害があった場合には、当社の利用規約において当社は損害賠償責任を負わない旨を定めておりますが、当社サービスの利用者による違法行為等により、当社に対する訴訟を提起される可能性があります。このような事態が生じた場合、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

 

 

(21) 当社株式の流動性について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:小)

当社の株主構成は当社代表取締役 佐藤海と同氏の資産管理会社、取締役 髙畠裕二と同氏の資産管理会社等であり、株式会社東京証券取引所の定める上場維持基準は25%であるところ、2024年3月31日現在、当社の流通株式比率は32.28%となっております。今後は、ストックオプションの行使による流通株式数の増加等により流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(22) M&A等によるリスクについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社が出資した関連会社において、当社が当初想定したシナジーや事業拡大等の効果が得られないことや当該事業領域の市場変化などの事業固有のリスクによる事業計画の未達などにより減損損失を計上した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。こうした減損リスクへの対応策として、弁護士・税理士・公認会計士等の外部専門家の助言を含めたデューデリジェンスを実施し、その結果を踏まえて取締役会や経営会議にて検討・議論を実施しております。また、買収後の事業計画実現に向けたPMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)への注力や、取締役会へのオブザーバーとしての参加等により、業績のモニタリングに関する体制の強化を図ってまいります。

 

(23) 自然災害等によるリスクについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

想定外の大規模地震・津波等の自然災害や火災等の事故災害、また、感染症の世界的流行(パンデミック)、その他の要因による社会的混乱等が発生したことにより、当社の業務やサービス運営に支障が生じた場合、当社の事業及び業績に影響が及ぶ可能性があります。

こうしたリスクへの対応策として、システムやデータ等における定期的なバックアップやモニタリングの実施、従業員の安否確認等の災害対策等により災害等発生時の影響を最小限に止めるられるよう事前対応に努めております。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つとして位置付けておりますが、現在、成長過程にあると考えており、経営基盤の強化及び積極的な事業展開のために内部留保の充実を図り、財務体質の強化と事業拡大のための投資等に充当し、より一層の業容拡大を目指すことが株主に対する最大の利益還元に繋がると考えております。

そのため、当面の間は、優秀な人材の採用、将来の新規事業展開等のための必要運転資金として内部留保の充実を図る方針であり、当事業年度の配当は実施しておりません。

利益配分につきましては、各期の経営成績を考慮の上、年1回の期末配当にて適切な剰余金の配当を行うことを基本方針としております。剰余金の配当決定機関は株主総会であります。また、当社は中間配当を取締役会決議により毎年9月30日を基準日として行うことができる旨を定款に定めております。

将来的には、各事業年度の財務状態及び経営成績を勘案しながら株主への利益還元を検討していく予定ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。