2026年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    780名(単体) 4,568名(連結)
  • 平均年齢
    41.0歳(単体)
  • 平均勤続年数
    17.1年(単体)
  • 平均年収
    7,256,000円(単体)
  • 平均年収の
    対前年増減率
    1.4%(単体)

従業員の状況

人材戦略に関する基本方針等

(1)【人材戦略に関する基本方針等】

(人材戦略に関する基本方針)

 当社グループは、社会価値の向上と持続可能な成長の実現に向け、「人財」を最も重要な成長基盤であると位置付けております。この認識のもと、2030年度の「ありたい姿」として、以下の人財戦略を掲げております。

 また、2024年5月に開示した「'24中期経営計画」においては、収益性向上に向けた最重要課題の一つとして「人財戦略の強化」を位置付け、その取組みを一層加速させております。

 

2030年度の「ありたい姿」 -人財戦略

変革を推進する人材の育成

▶ 「人」の力を最大限に発揮できる人事制度、教育制度、職場環境の充実

▶ 多様性を尊重した新しい発想、変革を恐れないチャレンジ精神を大切にする「企業風土」の醸成

 

① ガバナンス

 「'24中期経営計画」で掲げている「人財戦略強化」の中核となる推進体制として、2026年1月、それまでの「働き方改革推進委員会」を廃止し、「人財戦略委員会」を新たに設置しました。本委員会は、経営戦略と人財戦略をより強く連動させ、中長期的な企業価値向上を図ることを目的としています。委員会では、人材の育成・活躍・配置にとどまらず、社員一人一人の働きがい、健康、成長意欲を高める施策を横断的に検討し、各部門と連携しながら計画的かつ継続的に実行していきます。

 

人財戦略委員会の推進体制と役割

 

推進組織

主な役割

 

人的資本経営部会

・グローバル人材の確保

・技術開発力強化

・世界最適生産力

・DX化

・女性活躍(DEI)

 

健康経営部会

・従業員の健康維持、増進

・生産性、パフォーマンスの向上

・働きやすい職場づくり

・ワークライフバランスの向上

・喫煙対策

 

 また、人的資本経営推進の観点から、マテリアリティの1つに「人財戦略の強化」が取り上げられ、施策ごとに推進組織(下記表参照)が指名されています。施策推進組織から人財戦略委員会へは実施状況報告がなされ、施策実施内容の監視・評価が行われています。

 

マテリアリティ:「人財戦略の強化」  課題ごとの推進組織

取り組む課題

課題の施策

推進組織

DEIの推進

女性管理職比率の向上

人事部

人的資本経営の推進

従業員エンゲージメントの向上

人財戦略委員会

 

 

② リスク管理

 当社グループでは、人財戦略の推進に伴うリスクについても、継続的な管理を行っております。具体的には、従業員エンゲージメントの低下、多様な人材の活躍が進まないことによる組織力の低下、デジタル活用におけるスキル格差の拡大、人材不足等、リスク発生に繋がる可能性も視野に入れています。

 これらのリスクに対しては、人財戦略委員会及び各推進組織において定期的に進捗状況をモニタリングし、エンゲージメント調査や各種KPIの分析結果を踏まえ、必要に応じた施策の見直し・強化を実施しております。

 

③ 戦略

 当社グループの人財戦略は、「人を想い、地球を想う」という基本理念のもと、「共にあゆみ、共に成長する」を人事の根幹に据え、経営戦略との連動を図りながら構築しております。人財を「資源」ではなく「資本」として捉え、共創による変革を推進し、持続的に成長する組織の実現を目指しております。

 

a. グローバル共創を担う人材の育成

 当社グループは、グローバル事業の持続的成長を支える人材基盤の強化を重要な経営課題と位置付けています。この取組みの一環として、海外での活躍が期待される人材の戦略的な確保と育成を推進しています。具体的には、海外赴任経験者及び現任者に加え、語学力に優れた人材や海外留学経験者並びに海外赴任を志向する人材を対象と捉え、語学力強化や異文化理解、グローバルビジネススキルの習得を目的とした育成プログラムを計画的に実施し、海外赴任に即応可能な人材の育成に取り組んでいます。これにより、グローバル人材の裾野拡大と質的向上を図り、海外事業の成長を支える持続的な人材供給体制の構築を目指しています。

 

b. “挑戦と共感”の推進

 挑戦を促進する組織風土の醸成に向け、従業員からの意向も取り入れた人事制度に改定、従業員の手挙げによるジョブマッチング制度の導入、従業員向け株式交付制度の導入などの施策を実施しております。

 一方で、エンゲージメント調査の結果からは、まだ十分とは言えない状況にあると認識しており、その要因として心理的安全性の不足があると捉えています。

 また、経営層が掲げる「挑戦」と従業員一人ひとりの受け止めとの間に認識の差が存在していることも課題の一つであり、こうした課題への対応として、座談会等による双方向の対話機会の創出に取り組んでまいります。

 

c. 承認と対話による“つながり強化”

 「ありたい姿」の実現に向け、「承認」と「対話」を基軸に据えています。これまで、上司と部下の対話機会の創出に向け、1on1ミーティングの導入や人事評価におけるフィードバック機会の充実に取り組んでまいりましたが、その運用については部門ごとに実施状況や内容にばらつきがあると認識しております。

 こうした状況を踏まえ、対話の質及び頻度の向上を重要な課題と位置付け、全社的な定着を推進してまいります。

 

d. デジタル活用による“共創の生産性”向上

 当社グループでは、デジタル技術の活用を着実に進めており、クラウド型業務システムを通じた報告書の共有により、タイムリーな情報連携を実現しています。これらの情報は、お客さまとの関係性を可視化する重要な情報資産として蓄積されています。

 また、AI技術の進展に伴い、生成AIツールの活用による個々の業務支援が進展し、生産性向上に寄与しています。今後は、AIエージェントの活用を通じて個人業務のさらなる高度化を図るとともに、デジタル技術を活用した組織横断的な業務効率化にも取り組んでまいります。

 

DX活用に係る施策

施策

推進組織

受講者数(人)

2023年度

2024年度

2025年度

DX研修プログラムの実施

DX推進室

730

558

820

 

 

e. DEIと働き方改革による多様な“価値創出”

 当社グループは、売上の過半及び生産活動の大部分を海外に展開しており、グローバルでの事業成長を支えるうえで、多様な人材の活躍が不可欠であると認識しています。この認識のもと、女性、外国人、障がいのある人材を含む多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮できる環境づくりを推進するとともに、その基盤として働き方や人事制度は時代に合わせた見直しを進め、柔軟でインクルーシブな組織運営の実現に取り組んでいます。

 一方で、女性活躍の推進は当社におけるDEI上の重要な課題となっています。この課題に対しては、女性の積極採用を進めるとともに、男女を問わずワークライフバランスを実現できる制度設計や職場環境の整備を推進し、女性が長期的に働き続け、管理職への挑戦を志向できる職場づくりを目指します。

具体的な取組みは以下のとおりです。

 

◆ 女性活躍推進

「'24中期経営計画」において「人財戦略」を重要項目として取り上げ、「人財戦略の強化」をマテリアリティとしました。当社では、女性管理職比率の改善を目指し、先ずは課長職における女性比率をKPIとし、「ダイバーシティの推進」に取り組んでいます。

「管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の額の差異」につきましては、[第4提出会社の状況-5従業員の状況等-(2)従業員の状況]をご参照ください。

当社の状況

 

2023年度

2024年度

2025年度

a 女性従業員比率

11.3%

11.4%

13.1%

b 女性管理職比率

(課長)

3.1%

3.4%

4.5%

c 定期採用者に

占める女性比率

25.8%

22.0%

35.7%

 

※a,bは各年度3月末時点、cは各年度4月1日時点

◆ 育児休業制度、短時間勤務制度

育児休業は法律に則り、最長で子供が2歳になるまで取得ができます。育児休業からの職場復帰後は、労働時間を最大で2時間短縮できる短時間勤務の選択が可能です。短時間勤務は子供が小学校の始期に達するまで使用する事ができ、子供が3歳になるまでは賃金の減額もありません。また、所定外労働・深夜業の制限等の制度もあり育児に配慮しています。

育児休業取得率

 

2023年度

2024年度

2025年度

男性

59.3%

50.0%

78.6%

女性

100%

100%

100%

当年度権利取得者中の取得率(継続者は含まない)

 

 

f. 能力開発プログラム

 当社グループでは、あらゆる職場で実施される新入社員教育、初期作業者教育が、従業員の能力開発の第一歩となります。その後、役割の変化に伴う階層別研修、職務内容に応じた専門研修、法令が定めるところの研修、自己啓発を支援する研修等、様々な能力開発プログラムを実行しています(下表参照)。また、QCサークル活動、海外拠点を含む全拠点での改善活動を発表、支援する場である「GLOBAL GEMBA KAIZEN ACTIVITY」及びそれらの成果報告会も従業員の能力開発に大いに貢献しており、報告会において優秀な活動に付与される報奨は活動の原動力の一つとなっています。これら能力開発プログラムは、スキルマトリックスをベースにして、部門、あるいは定められた組織で年度ごとに計画・実行され、有効性を評価したのち、次年度の活動に展開されています。

 

表) プログラム一覧

 

g. 従業員の高齢化への対応

 日本企業の経営において、従業員の高齢化は大きな課題の一つです。現状では70歳までの雇用が当たり前になりつつあり、“経験”というメリットを活かしながら、“身体的な衰え”や“技術の陳腐化”というデメリットを打ち消す施策の導入が必要となります。さらに、少子化問題が依然として改善されない現状においては、労働者の高齢化問題は持続的な課題として残存することが考えられます。高齢者層の従業員には“経験”に加えて、リスキリングによる新しい知識・スキルの習得が求められます。“従業員の高齢化”への対応として、まず考えなければならないのが健康の維持です。当社では、人間ドック、心臓ドック、脳ドック、生活習慣病健診等の健診サービス制度を導入しています。これらサービスが有効に機能するよう、産業医の意見を反映させながらその内容を改善しております。また、健康の維持に加えて、健康増進のための取組みもまた重要です。まずは“喫煙”と“肥満”に着目し、指標(従業員の喫煙者 割合:2030年度までに15%以下/肥満率(BMI25以上の割合)を2030年度までに25%以下にする)を明確にして活動を進めています。高齢者のリスキリングについては、要員計画に基づく人材に関する要求事項に応じて、人材開発室またはDX推進室が主体となり教育プログラムが実行されています。

 

④ 目標

 「人財戦略」における課題の施策「女性管理職(課長)比率の向上」と「従業員エンゲージメントの向上」を迅速、確実に改善することを目的としてそれぞれにKPIを設定しております。

課題の施策

KPI(三ツ星ベルト単体)

女性管理職(課長)比率の向上

女性管理職(課長)比率

2026年度 :   5%以上、2030年度 : 10%以上

従業員エンゲージメントの向上

スコア改善目標(2023年度比)

2026年度 : 10%改善、2030年度 : 13%改善

 

 

(従業員給与等の決定方針)

 当社グループは、変化にぶれない強い企業体質の確立をめざしており、その結果として安定した経営基盤を維持しております。これにより、社会情勢の影響を受けにくい経営を実現し、従業員の処遇向上に向けて継続的な賃上げに取り組んでおります。今後もこうした基盤を活かし、給与水準のさらなる向上を図ってまいります。

 また、その施策の一環として、ものづくり企業としての原点に立ち返り、現場で活躍する従業員へのインセンティブを強化するための手当の拡充を進め、モノづくり機能のさらなる強化に取り組んでおります。加えて、技能手当についても見直しを行い、専門的な資格や高度な技能を有し、会社に貢献する人材を適切に評価する制度を取り入れています。

 

(2)【従業員の状況】

① 連結会社の状況

 

2026年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

国内ベルト事業

1,411

海外ベルト事業

2,732

建設資材事業

77

その他

136

全社(共通)

212

合計

4,568

(注)1  従業員数は、就業人員数(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であります。

2  全社(共通)は、親会社の管理部門の従業員であります。

 

② 提出会社の状況

 

 

 

 

2026年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

平均年間給与の

対前事業年度増減率

(%)

780

41.0

17.1

7,256

1.4

 

セグメントの名称

従業員数(人)

国内ベルト事業

449

建設資材事業

49

その他

70

全社(共通)

212

合計

780

(注)1  従業員数は、就業人員数(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であります。

2  平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3  全社(共通)は、管理部門の従業員であります。

 

③ 労働組合の状況

提出会社の労働組合はユニオンショップ制であり、その所属上部団体は日本ゴム産業労働組合連合であります。

なお、組合員数は581人であり労使関係は安定しており、特記事項はありません。

また、関係会社においては、労使関係について特に記載すべき事項はありません。

 

④ 管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の額の差異

a.  提出会社

当事業年度

補足説明

管理的地位にある

労働者に占める女性労働者の割合(%)

 (注)1.

男性労働者の育児休業取得率(%)

 (注)2.

労働者の男女の賃金の額の差異(%)

(注)3.

全労働者

正規雇用労働者

パート・

有期労働者

2.5

78.6

74.6

74.8

26.7

 

(注)1  「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2  「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3  「労働者の男女の賃金の額の差異」の「全労働者」については、女性の新卒採用の増加により、女性の平均年齢及び平均勤続年数が低下したことにより前年度より2.4%低下しています。また、「パート・有期労働者」については、対象となるパート・有期労働者が短時間勤務のため差異が大きくなっております。

 

 

b.  連結子会社

連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。

 

⑤ 従業員株式所有制度の内容

(従業員向け株式交付制度)

当制度は、対象従業員に株式を交付することで経営参画意識を醸成し、業績向上への貢献意欲や士気を一層高めることを目的としています。これにより、従業員エンゲージメントの向上を図り、当社の持続可能な企業価値の向上に繋げることを目指します。

当制度の内容については、「1 株式等の状況 (8)役員・従業員株式所有制度の内容」に記載しております。

 

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティ経営の推進体制とマテリアリティ

① サステナビリティ経営に対する考え方

 当社グループは、基本理念「人を想い、地球を想う」のもと、企業価値と社会価値のトレードオンを図るべく、ESG経営の実践に取り組んでいます。2030年度の「ありたい姿」においては、「持続可能な社会の実現への貢献(社会・環境・経済価値の向上)」を掲げ、特定したマテリアリティを主とする各ESG課題の解決に取り組んでいます。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

② サステナビリティ経営の推進体制

 環境や社会に対する企業の果たすべき役割がより大きくなった現在において、当社グループが果たすべき役割と存在意義を改めて見つめ直し、ESG経営を迅速かつ効果的に実行することを目的として、2022年4月、代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会を設置しました。また、2024年7月にその役割と機能の一層の強化を図るべく、同委員会を「サステナビリティ会議」として新たに位置付け、より実効性のある運営体制としています。

 特定したマテリアリティについては、課題ごとに推進組織が設定され(推進組織は、各委員会、事業部門・関係会社、またはサステナビリティ会議の直轄組織となるワーキンググループが担当)、各課題解決への取組み及びKPI管理が行われています。それら取組みの進捗状況はサステナビリティ会議に報告され、同会議により、監視・指示・判断・評価されています。また、サステナビリティ会議の活動内容は取締役会に報告されます。

 

 

 

 

a.サステナビリティ会議構成

  議 長   : 代表取締役社長

  メンバー  : 取締役兼執行役員4名、執行役員4名、部門長4名

  オブザーバー: 監査役 1名

  事務局   : コーポレートコミュニケーション本部

サステナビリティ推進室

 

b.サステナビリティ会議体制

開催頻度  : 1回/月

審議内容  : ⅰ) グループ全体のサステナビリティ課題戦略の

策定、進捗状況の監督及び助言

ⅱ) マテリアリティ・各実行課題の取組み状況に

関する討議

ⅲ) サステナビリティ課題の特定と取締役会への報告

 

c.サステナビリティ会議主要議題一覧

 

③ ESG課題に関するマテリアリティ

 環境及び社会課題の解決を企業活動の前提条件と捉え、持続可能な社会の実現に貢献するため、取り組むべき重点課題(マテリアリティ)を特定し、また実行施策ごとのKPIを設定しました。

 

a.マテリアリティの特定プロセス

 SDGs、ISO26000、GRIなどの国際的なガイドラインを参考にし、当社グループの事業環境・事業構造を分析し、社会・環境に対する依存と影響の両面から当社グループが取り組むべき課題を抽出し、サステナビリティ会議での審議を重ね、マテリアリティを決定(特定)しました。

 

b.当社グループのマテリアリティと取り組む課題・課題の施策一覧

※1 各課題のKPIは当社ウェブサイトにてご確認ください。

https://www.mitsuboshi.com/sustainability/sustainability/

 

※2 2025年度より、「環境配慮型製品」を、より積極的な価値創出を示す「環境貢献型製品」へと名称変更し、環境分野における取組みを一層強化しています。

 

(2) 気候変動に関する取組み

 地球温暖化を原因とした様々な気候災害の発生頻度が増加し、被害の激甚化も年々進んでおり、当社グループは、“気候変動への対応”を経営における重要課題(マテリアリティ)として取り上げています。

 また、当社グループは、気候変動に係る取組みをより加速させるべく、2022年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明するとともに、賛同企業や金融機関が議論する場である、TCFDコンソーシアムに入会しました。

 気候変動に関する取組み強化を推進するとともに、TCFDのフレームワークに基づいた適時・適切な情報開示を行い、全てのステークホルダーの皆さまとのより一層のエンゲージメント向上を目指しています。

 

TCFDコンソーシアムは、2026年4月1日より脱炭素成長型経済構造移行推進機構(GX推進機構)が事務局を務める「GX フューチャー・コンソーシアム」に改組されました。

 

① ガバナンス

a.気候変動関連のリスクと機会についての取締役会による監視体制

・ 気候変動に関する経営の方向性については、サステナビリティ会議([第2-2-(1)-②-a参照])において気候関連のリスク及び機会などを踏まえて取りまとめられた提言を取締役会に報告し、同会にて意思決定・監督することとしています。

 

b.気候変動関連のリスクと機会を評価・管理する上での経営の役割

・ マテリアリティの各課題進捗については、課題ごとに決められた施策を担当する推進部門(事業部門、委員会・関係会社またはワーキンググループ)からサステナビリティ会議へ実施状況が報告され、同会議にてレビュー・監視・目標や課題の進捗確認が行われ、活動の継続的な改善を図っています。

・ マテリアリティのひとつである気候変動対応活動については、「CO削減活動」、「省エネ活動」、「環境貢献型製品の開発」、「サプライヤーの排出量管理」等がサステナビリティ会議において議論されています。2025年度でのサステナビリティ会議における主な議題は[第2-2-(1)-②-c参照]に記載の表のとおりです。

 

② リスク管理

a.気候変動関連リスクの特定及び評価プロセス

・ 気候変動関連リスクは、全ての事業部門・関係会社の責任者が参加して行うリスクアセスメントにより様々な事業リスクの一つとして洗い出され、リスク管理委員会(取締役が委員長、全関係会社・事業部門、及び本社全管理部門の責任者が委員)にて、発生の可能性と影響の大きさ(影響度: 大:10億円以上、中:1億円~10億円、小:1億円未満/時間軸: 短期:~2026年、中期:~2030年、長期:~2050年)から対応すべき重大リスクを特定しています。

 

b.気候変動関連リスクの管理プロセス

・ 事業部門及び関係会社の責任者は、特定したリスクを集約し、取り組むべき課題、対応施策、対応部門、目標等を明確にして方針書に展開し、当社社長の承認を得ます。承認された方針書は、対応部門により実行計画書に展開、事業部門・関係会社責任者の承認の後、実行に移されます。

・ 実行の状況は事業部門・関係会社の責任者により監視・評価され、原則、年1回の頻度で社長に報告、レビューを受け、その結果は次年度の方針書に反映されます。ESG経営のマテリアリティ課題に対応した施策の実施状況は、月1回の頻度で開催されるサステナビリティ会議に報告され、指示・評価されます。

 

c.気候変動関連リスク管理と全体リスク管理の統合

・ リスク管理委員会の審議を経て決定された重大リスク案は、同委員会を通じて社長及び取締役会に報告されます。決定された重大リスクに対する施策は、対応部門が所属する事業部門・関係会社の責任者により日常の監視・評価が実施され、その内容はリスク管理委員会に報告されます。

・ 2025年度は、気候変動を含む様々な要因による自社の事業活動停止サプライヤーの事業活動停止が、リスク管理委員会が実施するリスクアセスメントにおいて気候変動に関連したリスクとして特定されています。事業部門・関係会社で実施されるCO排出量削減活動は、サステナビリティ会議により監視・評価され取締役会に報告されています。

・ 気候変動をはじめとしたESGのマテリアリティに係るリスクについては、サステナビリティ会議において当該リスクに対する実施内容の進捗について管理を行っています。

 

 

 

① 事業部門・関連会社にてリスクと機会の洗い出しを行い、発生の可能性と影響の大きさから対応すべきリスクと機会を特定

 

② リスク管理委員会にて、グループ全体で対応する重大リスクを評価・特定、対応組織を指名

 

③ リスク管理委員会は対応組織の実施状況を監督・指示し、その内容を取締役会に報告

 

※ 図の重なり部分=「ESGのマテリアリティに関わるリスク管理」については、コンプライアンス、情報セキュリティを除き、サステナビリティ会議が実施状況を監督・指示し、その内容を取締役会に報告

 

③ 戦略と実施状況

 気候変動が当社グループのバリューチェーンに与える将来的な影響及び気候変動対策の有効性検証を目的に、脱炭素トレンドが強まり移行リスク・機会の影響が大きくなる「1.5℃上昇シナリオ」と、気候変動が大きく進み物理的リスクの影響が強まる「4℃上昇シナリオ」の2つの気候変動シナリオに基づきシナリオ分析を実施しました。シナリオ及びシナリオから洗い出したリスクと機会の詳細は、当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

 

・ 自動車の電動化の進展に伴うリスクと機会について

 自動車の電動化進展に伴い、2030年度までに内燃機関用ベルトの需要は2019年度と比べて約60億円減少する見通しですが、同期間において、自動車・電動ユニット用ベルト(EPB、EPS、PSDなど)や電動2輪車向け後輪駆動用ベルトなどの販売拡大により約100億円の売上増を見込んでおります。自動車の電動化進展を機会と捉え、持続可能な成長を実現できる製品の開発に努めてまいります。

 

[製品区分別・自動車業界向け売上計画]

 

・CO排出量

 従来より取り組んでまいりました各事業所における太陽光発電設備の導入、再エネ電力への切り換え、重油を燃料とする設備のガス化などの取組みを進めた結果、2025年度における国内拠点のCO排出量は26,086 t-COe(対2013年度比 ▲36.2%)となりました。海外拠点のCO排出量は44,058t-COe(対2013年度比 ▲22.2%)となっています。

 また、自社における排出量だけではなく、バリューチェーン全体での排出量削減の取組みにも注力しています。2025年度、当社グループのScope3を含むバリューチェーン全体での排出量は416,592t-COeとなりました。自社での排出削減活動に継続して取り組むと共に、特に、Scope3のうち構成比の高いカテゴリ1(購入した製品・サービス)の排出量について、取引先とも協業のうえ温室効果ガスの削減に取り組んでまいります。2025年度は取引先の排出量管理を目的の一つとして、取引先ESG情報管理ツールを導入し、主要70社を対象としたESG課題の実施状況に関するアンケート調査を実施しております。

 

 CO排出量はGHGプロトコルに従い、財務諸表と一致した範囲で算定しています。2025年度の生産活動を伴わない営業拠点のCO排出量は800t-COeとなっており、グループ総排出量に占める割合が1.14%と総排出量に与える影響が軽微であることから、GHGプロトコルの重要性の原則に基づき、排出量の算定範囲から除外しています。

 

■2025年度CO排出量の内訳(対象:当社グループ拠点、Scope1,2,3)

■Scope1~3構成比

 

■Scope3,カテゴリ構成比

 

 

・インターナルカーボンプライシング

 当社グループでは、気候関連リスク・機会の定量的評価手法の一つとして、インターナルカーボンプライシング(ICP)の導入可能性を検討しています。現時点では制度の運用には至っていませんが、事業戦略や設備投資判断への組み込みの可否を含め、今後も導入に向けた検討を継続します。

 

④ 指標と目標

 当社グループでは、事業活動において重要な要素と位置付けているマテリアリティの1つに「脱炭素社会実現への貢献」を挙げており、国内拠点に対しては、基準年度を2013年度とし、2026年度までに40%削減、2030年度までに46%削減、そして2050年度までにカーボンニュートラルを達成するという長期目標を設定しています(対象:国内8拠点、Scope1及び2)。また、海外拠点に対しては、基準年度を2013年度とし、2026年度までに27%削減、2030年度までに40%削減、2050年度までにカーボンニュートラルを達成する目標を設定しています(対象:海外7拠点、Scope1及び2)。

マテリアリティ

取り組む課題

対象

2026年度

目標

2030年度

目標

2050年度

目標

脱炭素社会実現への貢献

CO排出量の削減

(2013年度比)

国内8拠点

Scope1及び2

40%削減

46%削減

CN達成

海外7拠点

Scope1及び2

27%削減

40%削減

CN達成

 

(3) 生物多様性保全への取組み

 人類の活動による地球温暖化、環境汚染、乱開発、乱獲等により生物多様性が急速に失われつつあり、生態系の維持が危機的な状況にあります。今、対応を怠れば、将来、生態系サービスを享受できないことにより社会全体が大きなダメージを受け、SDGsが目指す「持続可能な社会」が実現できなくなります。

 当社グループは、これまで地球温暖化の抑止に向けてCO排出量削減活動に取り組んでまいりましたが、生物多様性の損失もまた、社会全体にとって地球温暖化と同じく重要性・緊急性の高いリスクであると認識し、マテリアリティとして「生物多様性の保全」を取り上げ、「気候変動への対応」、「水資源の保全」、「森林破壊の防止」、「環境保全/環境汚染の防止」等に取組み、具体的な施策・KPIを設定のうえ種々の活動に取り組んでまいります。

 

① ガバナンスとリスク管理

 「生物多様性に関するガバナンスとリスク管理のプロセス」は「気候変動に関する取組み」と共通しておりますので、[第2-2-(2)-①]「ガバナンス」、[第2-2-(2)-②]「リスク管理」をご参照ください。

 

② 戦略

 サステナビリティ会議において、当社グループの事業活動と自然資本の「依存と影響」について調査、検討を行い、国連等が提供するオンラインツールENCOREを使って検証を行いました。そして、TNFDが推奨する開示フレームワークLEAPアプローチに従って「生物多様性の保全」に関するリスクと機会の洗い出し、また、それらが当社グループの事業活動に与えるインパクト評価を実施し、その結果を戦略と目標に展開いたしました。

 当社グループの事業活動と自然資本の「依存と影響」の調査結果、事業活動と生物多様性にとっての重要な地域との接点、設定しましたシナリオ及びシナリオから洗い出したリスクと機会の詳細は、当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

 結果として、当社グループの生産活動は水に依存していること、伝動ベルトの原材料である天然ゴムは、栽培地の拡大に伴い森林破壊の一因となっており、同様に綿についても水資源が逼迫している地域における栽培において、取水や農薬汚染等が水の需給バランスをさらに悪化させる要因となっていることなどを取り組むべき課題として特定しました。

 水と当社グループの事業活動との関係は当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

③ 目標

 これまで当社グループでは、水の消費量を減らすために、日本に比べ取水環境の厳しい海外生産拠点を中心に「冷却水循環システム」、「ミスト冷却システム」等を導入してまいりました。ゴム製品の生産においては、化学反応によりゴム弾性を発現させる加硫工程が不可欠ですが、この工程では、ゴムに硫黄等を加え、高温(100℃以上)で反応(加硫)させるため、熱源として水から生成した高圧蒸気を使用しています。また、加硫後には冷却が必要であり、この冷却に水を使用しています。以上のように、加硫及び加硫後の冷却は、ゴム製品を作るために欠かせない工程であり、水は欠かせない生態系サービスとなっています。このように当社グループの生産活動は水に依存し、水の供給不足は生産活動を抑制するリスクとなっているため、水の消費量を減らす活動を行ってまいりました。

 

 当社グループ・国内生産拠点の取水量は、海外生産拠点の約2.7倍(2025年度実績)であり、特に国内生産拠点における取水量の削減が急務となっておりますので、「国内拠点の取水量を2030年度 2021年度比50%削減する」を目標にして「冷却水循環システム」の導入を中心とした削減活動に取り組んでまいります。既に「冷却水循環システム」が導入されている海外生産拠点では生産量の増加に伴う取水量の増加が見込まれますが、「海外拠点の2030年度の取水量原単位を2021年度と同等とする」を目標にして水消費効率の維持・改善を進めてまいります。

 

④ 実施状況

■取水量削減活動

 2025年度の国内拠点の取水量は、名古屋工場において「水循環システム」の導入、全拠点で水消費効率の改善を進めた結果、692千(2021年度比 21.1%)となりました。海外拠点の取水量原単位は、全拠点で水消費効率の改善を進めた結果、13.33/t(2021年度取水量原単位:16.77/t)となりました。

 

国内拠点の取水量の推移

 

海外拠点の取水量原単位の推移

 

■森林破壊防止活動

 当社グループでは、天然ゴムを使用しない製品仕様の開発は既に完了していますが、それらの製品では止むを得ず一部再生可能ではない原材料を使用せねばならず、資源枯渇を考えた場合、天然ゴムは引き続き重要な役割を果たす原材料であると考えています。一方で天然ゴムは、天然ゴム農園における森林破壊が懸念され、生物多様性を棄損するリスクを有する原材料でもあります。

 当社グループは、天然ゴムをはじめとした主要原材料について 森林破壊及び自然生態系の転換に関与しないサプライチェーンの構築を企業の重要な責務と位置づけています。さらに、欧州森林破壊防止規則(EUDR)が求める「森林破壊ゼロ」及び「合法性の確保」に対応するため、透明性の高いトレーサビリティとデューディリジェンス体制を整備し、取引先と連携しながら生態系保全に貢献する調達体制を継続的に推進してまいります。

 

 2025年度、EUDRは2025年12月30日が適用開始日とされていましたので、2025年9月までにEU向け製品に使用される天然ゴムを、100%、森林破壊に関与しない天然ゴムに切り替えることを目標として活動を行いました。

EUDRの適用時期は2026年12月30日に延期されましたが、当社グループがEU向け製品に使用する天然ゴムは、2025年9月時点で、すでに100%、森林破壊に関与しない天然ゴムに切り替わっており、2026年度も継続してこの供給体制を維持、改善していく計画です。

 

(4) 人権の尊重

■基本的な考え方

 三ツ星ベルトグループは、当社の事業活動に係る全ての人の人権を尊重することが社会及び当社グループの持続可能な成長の最大の前提条件であると考えており、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」及びその他の国際基準に基づきマテリアリティの1つに「人権と人格の尊重」を取り上げ、人権尊重の取組みを推進しています。

 

① ガバナンスとリスク管理プロセス

 「人権と人格の尊重」に係るリスクはサステナビリティ会議のワーキンググループが実施する人権デューディリジェンス(人権DD)により特定され、サステナビリティ会議が指名する推進組織により人権リスクに対する施策が実行されます。活動の進捗状況はサステナビリティ会議により監視・評価され、その内容はサステナビリティ会議から取締役会に報告されています。

人権リスクは全社的なリスク管理プロセスにおいても特定されます([第2-2-(2)-②]「リスク管理」をご参照ください)。

 

②取組み状況

人権方針の制定と人権DD

 2023年1月、人権方針を制定するとともに、サステナビリティ会議のワーキンググループでの人権DD及びサステナビリティ会議での議論により、当社のサプライチェーンを含む事業活動において、以下の人権リスクを特定しました。2024年2月には、調達ガイドラインをウェブサイトに開示し、取引先に人権DD活動への協力を要請しました。

特定した人権リスク

推進組織

児童労働、強制労働を伴う原材料(天然ゴム、綿等)の使用

サステナビリティ会議事務局+購買部

人権方針、調達ガイドラインの詳細は、当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

個別の人権課題への取組み

 当社は、人権DDを通じて特定した人権リスクへの対応を強化するため、2025年度に「個別の人権課題への取組み」を策定しました。本取組みでは、5つの観点(労働に関する権利、差別・ハラスメントの防止、プライバシーの保護、サプライチェーンと地域社会への配慮、救済と対話)から、当社が特定した人権リスクに対する考え方及び取組みを整理・明示しています。

 

人権救済メカニズムの構築

 2024年度、当社はサステナビリティ会議において、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が求める人権救済メカニズム(グリーバンスメカニズム)の構築に向けた取組みを開始いたしました。2026年度も引き続き、より実効性の高い仕組みの実現に向けて、具体的な取組みを進めてまいります。

 

サプライチェーンエンゲージメント

 2024年度、取引先ESG情報管理ツールを導入し、主要30社を対象とした人権課題を含むESG課題の実施状況に関するアンケート調査を実施し、調査結果説明会を開催いたしました。2025年度には調査対象を主要70社へ拡大し、本調査を通じて、サプライチェーンにおける人権リスクや課題の把握を進めるとともに、サプライヤーとの対話を通じた改善に取り組んでいます。

 2024年度からEUの「欧州森林破壊防止規則(EUDR)」に対応し、天然ゴムサプライヤーを対象にEUDRに準拠した天然ゴムの供給が可能であるかどうか(森林破壊、児童労働、強制労働に関与していないか)調査を実施しています。EUDRの適用開始は当初予定から延期されましたが、当社はEUDRの趣旨である人権尊重及び環境負荷低減を重要と考え、適用に先行する形で対応を進めています。2025年度は、調査結果を踏まえ、EUDRに準拠した天然ゴムの供給を受け、製品の製造を開始しました。