2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    758名(単体) 4,495名(連結)
  • 平均年齢
    41.0歳(単体)
  • 平均勤続年数
    17.1年(単体)
  • 平均年収
    7,153,000円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

国内ベルト事業

1,383

海外ベルト事業

2,683

建設資材事業

72

その他

135

全社(共通)

222

合計

4,495

(注)1  従業員数は、就業人員数(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であります。

2  全社(共通)は、親会社の管理部門の従業員であります。

 

(2) 提出会社の状況

 

 

 

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

758

41.0

17.1

7,153

 

セグメントの名称

従業員数(人)

国内ベルト事業

418

建設資材事業

49

その他

69

全社(共通)

222

合計

758

(注)1  従業員数は、就業人員数(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であります。

2  平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3  全社(共通)は、管理部門の従業員であります。

 

(3) 労働組合の状況

提出会社の労働組合はユニオンショップ制であり、その所属上部団体は日本ゴム産業労働組合連合であります。

なお、組合員数は579人であり労使関係は安定しており、特記事項はありません。

また、関係会社においては、労使関係について特に記載すべき事項はありません。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

①  提出会社

 

 

当事業年度

補足説明

管理職に占める女性労働者の割合(%)

 (注)1.

男性労働者の育児休業取得率(%)

 (注)2.

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)3.

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

2.5

50.0

77.0

77.4

30.1

 

(注)1  「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2  「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3  「労働者の男女の賃金の差異」の「パート・有期労働者」については、対象となるパート・有期労働者が短時間勤務のため差異が大きくなっております。

 

②  連結子会社

連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1) サステナビリティ経営の推進体制とマテリアリティ

① サステナビリティ経営に対する考え方

 当社グループは、基本理念「人を想い、地球を想う」のもと、企業価値と社会価値のトレードオンを図るべく、ESG経営の実践に取り組んでいます。2030年度の「ありたい姿」においては、「持続可能な社会の実現への貢献(社会・環境・経済価値の向上)」を掲げ、特定したマテリアリティを主とする各ESG課題の解決に取り組んでいます。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

② サステナビリティ経営の推進体制

 環境や社会に対する企業の果たすべき役割がより大きくなった現在において、当社グループが果たすべき役割と存在意義を改めて見つめ直し、ESG経営を迅速かつ効果的に実行することを目的として、2022年4月、代表取締役社長が委員長を務めるサステナビリティ推進委員会を設置しています。また、2024年7月にその役割と機能の一層の強化を図るべく、同委員会を「サステナビリティ会議」として新たに位置付け、より実効性のある運営体制としています。

 特定したマテリアリティについては、課題ごとに推進組織が設定され(推進組織は、各委員会、事業部門・関係会社、またはサステナビリティ会議の直轄組織となるワーキンググループが担当)、各課題解決への取り組み及びKPI管理が行われています。それら取り組みの進捗状況はサステナビリティ会議に報告され、同会議により、監視・指示・判断・評価されています。また、サステナビリティ会議の活動内容は、必要に応じて取締役会に報告されます。

 

 

 

 

a.サステナビリティ会議構成

  議 長   : 代表取締役社長

  メンバー  : 取締役兼執行役員4名、執行役員4名、部門長3名

  オブザーバー: 監査役 1名

  事務局   : サステナビリティ推進室

 

b.サステナビリティ会議体制

開催頻度  : 1回/月

審議内容  : ⅰ) グループ全体のサステナビリティ課題戦略の

策定、進捗状況の監督及び助言

ⅱ) マテリアリティ・各実行課題の取組み状況に

関する討議

ⅲ) サステナビリティ課題

の特定と取締役会への報告

 

c.サステナビリティ会議主要議題一覧

開催期

カテゴリー

主要議題

第1四半期

 

 

▶ 2023年度CO排出量、水資源、廃棄物などの実績報告

 

▶ マテリアリティとKPIの見直しについて

 

▶ 統合報告書のコンテンツについて

 

▶ 有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示について

第2四半期

 

▶ ESGに係る法規制(EUDR等)への対応状況について

 

 

 

▶ 人権デューディリジェンスの推進について(2024年度の計画)

 

 

 

 ▶ サステナビリティ・リンク・ローンにおける第三者検証結果報告

 

 

 

▶ 第三者評価機関(CDP)への回答内容について

第3四半期

 

 

▶ サプライチェーンにおけるサステナビリティの取り組みについて

 

 

 

▶ 2030年度に向けたCO排出量削減施策及び計画について

 

 

 

▶ 人的資本経営推進に係る施策について(行動規範ハンドブックの作成)

 

▶ SDGs推進委員会の活動内容について

第4四半期

 

 

▶ 人権デューディリジェンスの推進について(グリーバンスメカニズムの構築)

 

 

 

▶ サーキュラーエコノミー推進の取り組みについて

 

 

 

▶ 環境配慮型製品の開発体制強化について

 

▶ SSBJによるサステナビリティ開示基準への対応について

 

 

③ ESG課題に関するマテリアリティ

 環境及び社会課題の解決を企業活動の前提条件と捉え、持続可能な社会の実現に貢献するため、取り組むべき重点課題(マテリアリティ)を特定し、また実行施策ごとのKPIを設定しました。

 

a.マテリアリティの特定プロセス

 SDGs、ISO26000、GRIなどの国際的なガイドラインを参考にし、当社グループの事業環境・事業構造を分析し、社会・環境に対する依存と影響の両面から当社グループが取り組むべき課題を抽出し、サステナビリティ会議での審議を重ね、マテリアリティを決定(特定)しました。

 

b.当社グループのマテリアリティと取り組む課題・課題の施策一覧

※ 各課題のKPIは当社ウェブサイトにてご確認ください。

https://www.mitsuboshi.com/sustainability/sustainability/

 

(2) 気候変動に関する取組み

 地球温暖化を原因とした様々な気候災害の発生頻度が増加し、被害の激甚化も年々進んでおり、当社グループは、“気候変動への対応”を経営における重要課題(マテリアリティ)として取り上げています。

 また、当社グループは、気候変動に係る取り組みをより加速させるべく、2022年12月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明するとともに、賛同企業や金融機関が議論する場である、TCFDコンソーシアムに入会しました。

 気候変動に関する取り組み強化を推進するとともに、TCFDのフレームワークに基づいた適時・適切な情報開示を行い、全てのステークホルダーの皆さまとのより一層のエンゲージメント向上を目指しています。

 

① ガバナンス

a.気候変動関連のリスクと機会についての取締役会による監視体制

・ 気候変動に関する経営の方向性については、サステナビリティ会議([第2-2-(1)-②-a参照])において気候関連のリスク及び機会などを踏まえて取りまとめられた提言が取締役会に報告の上、同会にて意思決定・監督することとしています。

 

b.気候変動関連のリスクと機会を評価・管理する上での経営の役割

・ マテリアリティの各課題進捗については、課題ごとに決められた施策を担当する推進部門(事業部門、委員会・関係会社またはワーキンググループ)からサステナビリティ会議へ実施状況が報告され、同会議にてレビュー・監視・目標や課題の進捗確認が行われ、活動の継続的な改善を図っています。

・ マテリアリティのひとつである気候変動対応活動については、「CO削減活動」、「省エネ活動」、「環境配慮型製品の開発」、「サプライヤーの排出量管理」等がサステナビリティ会議において議論されています。2024年度でのサステナビリティ会議における主な議題は[第2-2-(1)-②-c参照]に記載の表のとおりです。

 

② リスク管理

a.気候変動関連リスクの特定及び評価プロセス

・ 気候変動関連リスクは、全ての事業部門・関係会社の責任者が参加して行うリスクアセスメントにより様々な事業リスクの一つとして洗い出され、リスク管理委員会(取締役が委員長、全関係会社・事業部門、及び本社全管理部門の責任者が委員)にて、発生の可能性と影響の大きさ(影響度: 大:10億円以上、中:1億円~10億円、小:1億円未満/時間軸: 短期:~2026年、中期:~2030年、長期:~2050年)から対応すべき重大リスクを特定しています。

 

b.気候変動関連リスクの管理プロセス

・ 事業部門及び関係会社の責任者は、特定したリスクを集約し、取り組むべき課題、対応施策、対応部門、目標等を明確にして方針書に展開し、当社社長の承認を得ます。承認された方針書は、対応部門により実行計画書に展開、事業部門・関係会社責任者の承認の後、実行に移されます。

・ 実行の状況は事業部門・関係会社の責任者により監視・評価され、原則、年1回の頻度で経営会議(当社ウェブサイトのサステナビリティ/コーポレート・ガバナンスに関する取り組み参照)に報告、レビューを受け、その結果は次年度の方針書に反映されます。ESG経営のマテリアリティ課題に対応した施策の実施状況は、月1回の頻度で開催されるサステナビリティ会議に報告され、必要に応じて指示・評価されます。

 

c.気候変動関連リスク管理と全体リスク管理の統合

・ リスク管理委員会の審議を経て決定された重大リスク案は、同委員会を通じて取締役会に報告されます。決定された重大リスクに対する施策は、対応部門が所属する事業部門・関係会社の責任者により日常の監視・評価が実施され、その内容はリスク管理委員会に報告されます。

・ 2024年度も前年度に続き、“CO排出量削減目標未達による企業価値低下”が、リスク管理委員会が実施するリスクアセスメントにおいて気候変動に関連したリスクとして特定されています。事業部門・関係会社で実施されるCO排出量削減活動は、サステナビリティ会議により監視・評価され取締役会に報告されています。

・ 気候変動をはじめとしたESGのマテリアリティに係るリスクについては、サステナビリティ会議において当該リスクに対する実施内容の進捗について管理を行っています。

 

 

 

① 事業部門・関係会社にてリスクと機会の洗い出しを行い発生の可能性と影響の大きさから対応すべきリスクと機会を特定

 

② リスク管理委員会にて、グループ全体で対応する重大リスクを評価・特定、対応組織を指名

 

③ リスク管理委員会は対応組織の実施状況を監督・指示し、その内容を取締役会に報告

 

※ 図の重なり部分=「ESGのマテリアリティに関わるリスク管理」については、コンプライアンス、情報セキュリティを除きサステナビリティ会議が実施状況を監督・指示し、その内容を取締役会に報告

 

③ 戦略

 気候変動が当社グループのバリューチェーンに与える将来的な影響及び気候変動対策の有効性検証を目的に、脱炭素トレンドが強まり移行リスク・機会の影響が大きくなる「1.5℃上昇シナリオ」と、気候変動が大きく進み物理的リスクの影響が強まる「4℃上昇シナリオ」の2つの気候変動シナリオに基づきシナリオ分析を実施しました。シナリオ及びシナリオから洗い出したリスクと機会の詳細は、当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

 

・ 自動車の電動化の進展に伴うリスクと機会について

 自動車の電動化進展に伴い、2030年度までに内燃機関用ベルトの需要は2019年度と比べて約60億円減少する見通しですが、同期間において、自動車・電動ユニット用ベルト(EPB、EPS、PSDなど)や電動2輪車向け後輪駆動用ベルトなどの販売拡大により約100億円の売上増を見込んでおります。自動車の電動化進展を機会と捉え、持続可能な成長を実現できる製品の開発に努めてまいります。

 

[製品区分別・自動車業界向け売上計画]

 

・CO排出量

 従来より取り組んでまいりました各事業所における太陽光発電設備の導入、再エネ電力への切り換え、重油を燃料とする設備のガス化などの取り組みを進めた結果、2024年度における国内拠点のCO排出量は27,108t(対2013年度比 ▲33.7%)となりました。海外拠点のCO排出量は44,878t(対2013年度比 ▲20.7%)となっています。

 また、自社における排出量だけではなく、バリューチェーン全体での排出量削減の取り組みにも注力しています。2024年度、当社グループのScope3を含むバリューチェーン全体での排出量は350,502tとなりました。自社での排出削減活動に継続して取り組むと共に、特に、Scope3のうち構成比の高いカテゴリ1(購入した製品・サービス)の排出量について、取引先とも協業のうえ温室効果ガスの削減に取り組んでまいります。2024年度は取引先の排出量管理を目的の一つとして、取引先ESG情報管理ツールを導入し、主要30社を対象としたESG課題の実施状況に関するアンケート調査を実施しております。

 

■2024年度CO排出量の内訳(対象:当社グループ拠点、Scope1,2,3)

■Scope1~3構成比

 

■Scope3,カテゴリ構成比

 

 

④ 指標と目標

 当社グループでは、事業活動において重要な要素と位置付けているマテリアリティの1つに「脱炭素社会実現への貢献」を挙げており、国内拠点に対しては、基準年度を2013年度とし、2026年度までに40%削減、2030年度までに46%削減、そして2050年度までにカーボンニュートラルを達成するという長期目標を設定しています(対象:国内8拠点、Scope1及び2)。また、海外拠点に対しては、基準年度を2013年度とし、2026年度までに27%削減、2030年度までに40%削減、2050年度までにカーボンニュートラルを達成する目標を設定しています(対象:海外9拠点、Scope1及び2)。

マテリアリティ

取り組む課題

対象

2026年度

目標

2030年度

目標

2050年度

目標

脱炭素社会実現への貢献

CO排出量の削減

(2013年度比)

国内拠点8拠点

Scope1及び2

40%削減

46%削減

CN達成

海外拠点9拠点

Scope1及び2

27%削減

40%削減

CN達成

 

(3) 生物多様性保全への取り組み

 人類の活動による地球温暖化、環境汚染、乱開発、乱獲等により生物多様性が急速に失われつつあり、生態系の維持が危機的な状況にあります。今、対応を怠れば、将来、生態系サービスを享受できないことにより社会全体が大きなダメージを受け、SDGsが目指す「持続可能な社会」が実現できなくなります。

 当社グループは、これまで地球温暖化の抑止に向けてCO排出量削減活動に取り組んでまいりましたが、生物多様性の損失もまた、社会全体にとって地球温暖化と同じく重要性・緊急性の高いリスクであると認識しています。当社は、マテリアリティとして「生物多様性の保全」を取り上げ、「水資源の保全」、「環境保全/環境汚染の防止」等に取り組み、具体的な施策・KPIを設定のうえ種々の活動に取り組んでまいります。

 「生物多様性に関するガバナンスとリスク管理のプロセス」は「気候変動に関する取り組み」と共通しておりますので、[第2-2-(2)-①]「ガバナンス」、[第2-2-(2)-②]「リスク管理」をご参照ください。

 

① 戦略

 サステナビリティ会議において、当社グループの事業活動と自然資本の「依存と影響」について調査、検討を行い、国連等が提供するオンラインツールENCOREを使って検証を行いました。そして、TNFDが推奨する開示フレームワークLEAPアプローチに従って「生物多様性の保全」に関するリスクと機会の洗い出し、また、それらが当社グループの事業活動に与えるインパクト評価を実施し、その結果を戦略と目標に展開いたしました。

 当社グループの事業活動と自然資本の「依存と影響」の調査結果、事業活動と生物多様性にとっての重要な地域との接点、設定しましたシナリオ及びシナリオから洗い出したリスクと機会の詳細は、当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

 結果として、当社グループの生産活動は水に依存していること、伝動ベルトの原材料である天然ゴムは、栽培地の拡大に伴い森林破壊の一因となっており、同様に綿についても水資源が逼迫している地域における栽培において、取水や農薬汚染等が水の需給バランスをさらに悪化させる要因となっていることなどを取り組むべき課題として特定しました。

 水と当社グループの事業活動との関係は当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

② 目標

 これまで当社グループでは、水の消費量を減らすために、日本に比べ取水環境の厳しい海外生産拠点を中心に「冷却水循環システム」、「ミスト冷却システム」等を導入してまいりました。ゴム製品の生産においては、化学反応によりゴム弾性を発現させる加硫工程が不可欠ですが、この工程では、ゴムに硫黄等を加え、高温(100℃以上)で反応させるため、加硫後には冷却が必要であり、この冷却に水を使用しています。以上のように、加硫及び加硫後の冷却は、ゴム製品を作るために欠かせない工程です。

 

 当社グループ・国内生産拠点の取水量は、海外生産拠点の約2.5倍(2024年度実績)であり、特に国内生産拠点における取水量の削減が急務となっておりますので、「国内拠点の取水量を2030年度 2021年度比50%削減する」を目標にして「冷却水循環システム」の導入を中心とした削減活動に取り組んでまいります。既に「冷却水循環システム」が導入されている海外生産拠点では生産量の増加に伴う取水量の増加が見込まれますが、「海外拠点の2030年度の取水量原単位を2021年度と同等とする」を目標にして水消費効率の維持・改善を進めてまいります。

 

③ 実施状況

■取水量削減活動

 2024年度の国内拠点の取水量は、名古屋工場において「冷却水循環システム」の導入、全拠点で水消費効率の改善を進めた結果、744,795㎥(2021年度比 ▲15.1%)となりました。海外拠点の取水量原単位は、全拠点で水消費効率の改善を進めた結果、15.18㎥/t(2021年度取水量原単位:16.77㎥/t)となりました。

 

国内拠点の取水量の推移

 

海外拠点の取水量原単位の推移

 

■天然ゴム、綿に関するサプライヤーエンゲージメント

 当社グループでは、天然ゴムや綿を使用しない製品仕様の開発は既に完了していますが、それらの製品では止むを得ず一部再生可能ではない原材料を使用せねばならず、資源枯渇を考えた場合、天然ゴムや綿は引き続き重要な役割を果たす原材料であると考えています。こうした背景から、今後、2023年度に策定しました調達ガイドラインに基づき、生物多様性の保全に配慮した天然ゴムや綿の調達を行っていきます。

 

 2024年度、EUの「欧州森林破壊防止規則(EUDR)」に対応するため、天然ゴムサプライヤーを対象にEUDRに準拠した天然ゴムの供給が可能であるかどうか(森林破壊に関与していないか)調査いたしました。EUDRでは森林破壊を伴う7種類のコモディティ、及びその加工製品のEU域内への持ち込み、取引を禁止しており、天然ゴムを使用した当社グループの伝動ベルトはその対象となります。2025年度、調査結果に基づいてデューディリジェンスを実施し、デューディリジェンスステイトメントをEU当局の管理ツールに登録する計画です。

 

(4) 「人財戦略の強化」人的資本経営の推進

■基本的な考え方

 当社グループは、当社が今後も社会価値の向上とともに持続可能な成長を実現するためには「人財」が最も重要な成長の源泉であると認識し、2030年度の「ありたい姿」において、下記に示す「人財戦略」を掲げています。

 また、2024年5月に開示しました'24中期経営計画では、収益性向上のための最重要課題として「人財戦略強化」を掲げ、その取り組みをさらに加速しています。

 

2030年度の「ありたい姿」 -人財戦略

変革を推進する人材の育成

▶ 「人」の力を最大限に発揮できる人事制度、教育制度、職場環境の充実

▶ 多様性を尊重した新しい発想、変革を恐れないチャレンジ精神を大切にする「企業風土」の醸成

① ガバナンス

 当社グループにおける人材育成と職場環境整備に関する戦略と方針は、各推進組織において立案され、サステナビリティ会議で審議、決定のうえ、取締役会に報告されます。

 

人的資本経営の推進体制と役割

 

役割

推進組織

 

異動、報酬、評価などの人事制度

ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン

人事部

 

人材マネジメント、育成・リスキリングの企画・実行

人材開発室、DX推進室

 

安全衛生、健康管理などの

職場環境管理

総務部

 

職場環境管理に係る制度管理

安全環境管理部

 

働きがいのある職場づくり など

働き方改革推進委員会

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、職場環境の整備、生産性改善に関する施策を組織横断的に実施し迅速に普及させることを目的として、取締役が委員長を務め、ダイバーシティ(性別、年齢、職種、職制)を意識した委員で構成する働き方改革推進委員会が設けられています。本委員会では、実行課題、対象部門、対応施策、目標を設定し、対応施策の実施状況を監視・評価し、必要に応じて施策内容の変更を指示します。これら活動内容は、対応施策の進捗状況に応じて、社長及びサステナビリティ会議に報告・審議され、この内容は取締役会の報告事項となっています。

 さらに、サステナビリティ会議([第2-2-(1)-①及び②]項参照)においては、人的資本経営推進の観点から、マテリアリティの1つに「人財戦略の強化」が取り上げられ、施策ごとに推進組織(下記表参照)が指名されています。施策推進組織からサステナビリティ会議へは実施状況報告がなされ、施策実施内容の監視・評価が行われています。

 

マテリアリティ:「人財戦略の強化」  課題ごとの推進組織

取り組む課題

課題の施策

推進組織

DE&Iの推進

女性管理職比率の向上

人事部

人的資本経営の推進

従業員エンゲージメントの向上

働き方改革推進委員会

 「人財戦略の強化」に関するリスク管理のプロセスは「気候変動に関する取り組み」と共通しておりますので、[第2-2-(2)-②]「リスク管理」をご参照ください。

 2024年度、リスク管理委員会において、人的資本経営に関する重大リスクは特定されませんでした。サステナビリティ会議では、前述の通り「人財戦略の強化」がESG経営におけるマテリアリティとして特定されています。

 

② 戦略

 日本企業の経営において、労働人口の減少、従業員の高齢化は各社共通した課題ですが、当社では、これら以外に、女性従業員比率・女性管理職比率の向上、従業員エンゲージメントの向上も課題となっています。従業員エンゲージメントの向上は、「人」の力を最大限に発揮するための重要な要因の一つであると考えており、2023年度より、当社単体の従業員を対象としたエンゲージメントサーベイを開始いたしました。

 「リスクと機会の洗い出し」の詳細は、当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

a.チャレンジを是とする企業風土改革

 『2030年度の「ありたい姿」-人財戦略』に記載の通り、当社では、『多様性を尊重した新しい発想、変革を恐れないチャレンジ精神を大切にする「企業風土」の醸成』を最重点課題として捉え、社長が先頭に立ち種々の施策に取り組んでいます。働き方改革や従業員エンゲージメントに係る内容については後述しますが、チャレンジを是とする企業風土への変革を目的とし、従業員からの意向も取り入れた人事制度に改定、従業員の手上げ制度としてジョブマッチング制度の導入、従業員向け株式交付制度の導入などの施策を実施しました。これら施策の結果、定量的な結果を示すことは難しいものの、心理的安全性が向上した新たな企業風土の芽生えを感じられるようになっています。また、これらの施策は、女性従業員比率・女性管理職比率の改善にも有効に機能すると考えており、先に述べました従業員エンゲージメントを指標にして活動を更に活性化させてまいります。さらには、今後、外部人材の活用を通じて新たな発想を取り入れ、企業風土改革を加速させてまいります。

 

 

b.労働人口の減少とダイバーシティの確保

 日本においては、労働人口減少への対応を進めることが今後の事業を継続していくための重要な課題であると認識しています。労働人口が減少する中、DXを推進して生産性改善と自動化を進め、事業拡大に伴う要員の増加をゼロ、或いはマイナスにするための施策推進に取り組んでいます。

 

DX活用に係る施策

施策

推進組織

受講者数(人)

2022年度

2023年度

2024年度

DX研修プログラムの実施

DX推進室

33

730

558

 

 一方、女性従業員及び女性管理職が少ない状況(2024年度での当社の女性従業員比率:11.4%、同 女性管理職比率(課長):3.4%)は、当社のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I、多様性・公平性と包摂性)における課題を明確に示しています。このような状況に対して、女性活躍を推進するために、積極的な女性の採用を行うとともに、女性にも男性にもワーク・ライフバランスの取れた制度設計など職場環境の整備を進め※1、女性に長く働いてもらい、管理職にもチャレンジしたくなる職場づくりを目指します。また同時に、すべての従業員が自身の能力を最大限に活かせる多様性と包摂性を尊重する取り組みを行います。

 

※1 育児休業制度、短時間勤務制度、時間単位ごとの年次有給休暇制度、フレックス勤務制度等、従業員一人ひとりの生活に合わせて勤務時間を調整する諸制度を導入済です。

 

c.従業員の高齢化への対応

 日本企業の経営において、従業員の高齢化は大きな課題の一つです。現状では70歳までの雇用が当たり前になりつつあり、“経験”というメリットを活かしながら、“身体的な衰え”や“技術の陳腐化”というデメリットを打ち消す施策の導入が必要となります。さらに、少子化問題が依然として改善されない現状においては、労働者の高齢化問題は持続的な課題として残存することが考えられます。高齢者層の従業員には“経験”に加えて、リスキリングによる新しい知識・スキルの習得が求められます。

 “従業員の高齢化”への対応として、まず考えなければならないのが健康の維持です。当社では、人間ドック、心臓ドック、脳ドック、生活習慣病健診等の健診サービス制度を導入しています。これらサービスが有効に機能するよう、産業医の意見を反映させながらその内容を改善してまいります。また、健康の維持に加えて、健康増進のための取り組みもまた重要です。まずは“喫煙”と“肥満”に着目し、指標(従業員の喫煙者割合 : 2030年度までに15%以下/肥満率(BMI 25以上の割合)を2030年度までに25%以下にする)を明確にして活動を進めています。

 高齢者のリスキリングについては、要員計画に基づく人材に関する要求事項に応じて、人材開発室またはDX推進室が主体となり教育プログラムの開発を行い、人材育成が実行されています。

 

d.能力開発と事業活動への展開

 当社グループでは、あらゆる職場で実施される新入社員教育、初期作業者教育が、従業員の能力開発の第一歩となります。その後、役割の変化に伴う階層別研修、職務内容に応じた専門研修、法令が定めるところの研修、自己啓発を支援する研修等、様々な能力開発プログラムを実行しています(下表参照)。また、QCサークル活動、海外拠点を含む全拠点での改善活動を発表、支援する場である「GLOBAL GEMBA KAIZEN ACTIVITY」、及びそれらの成果報告会も従業員の能力開発に大いに貢献しており、報告会において優秀な活動に付与される報奨は活動の原動力の一つとなっています。これら能力開発プログラムは、スキルマトリックスをベースにして、部門、あるいは定められた組織で年度ごとに計画・実行され、有効性を評価したのち、次年度の活動に展開されています。

 また、DE&I、人権、コンプライアンス、または企業理念に係る研修についても能力開発プログラムと同様に重要視しており、教育研修の充実に取り組んでおります。これらの研修プログラムは、主に、新入社員研修、入社3年目研修などの階層別研修を中心に実施されています。

 これら教育活動により開発された個人の能力が事業活動において有効に活用されることにより、会社の業績と従業員エンゲージメントがともに好転し始めると考えられます。当社では2025年度からタレントマネジメントシステムを導入して個人の能力を見える化し、事業戦略が求める人材をどのようにして提供していくのかを明確にした人財戦略の立案を目指してまいります。

 

表) 能力開発プログラム一覧

 

e.従業員エンゲージメント向上のための環境整備

 当社グループの基本理念「人を想い 地球を想う」は、個の尊重、ダイバーシティの尊重を謳っており、当社は性別や人種はもとより、生活環境や考え方を異にする全ての従業員が安全、安心に生産性を高め、充足感をもって働くことのできる職場づくりを目指しています。

 2023年度より従業員エンゲージメントの測定を開始しました。”やりがい”、”達成感”、”上司”との関係” 等とスコアの相関が高いことから、1on1ミーティングなどの施策による上司と部下の関係改善、ジョブマッチング制度などによる”やりがい”を醸成することにより、従業員エンゲージメントスコアの改善を図ります。

 

 

 その他、従業員エンゲージメント向上に係る取り組みの一例は下記の通りです。

◆ 女性活躍推進

2025年3月末時点の当社の女性従業員比率は11.4%、女性管理職比率は課長で3.4%、定期採用者に占める女性の比率は22.0%となっています。'21中期経営計画の見直しにおいて「人財戦略」を重要項目として取り上げ、「人財戦略の強化」をマテリアリティとしました。当社では、女性管理職比率の改善を目指し、先ずは課長職における女性比率をKPIとし、「ダイバーシティの推進」に取り組んでいます。

「管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」につきましては、[第1-5-(4)]をご参照ください。

 

◆ 年次有給休暇制度

生活における様々な状況に対応して働き続けられるように、繰り越し日数も含め、最大で40日の年次有給休暇を取得することができ、また、休暇を取得しやすいように半日単位、時間単位の取得もできる制度としています。

年次有給休暇取得率

2022年度

2023年度

2024年度

53.1%

68.3%

67.1%

 

◆ 育児休業制度、短時間勤務制度

育児休業は法律に則り、最長で子供が2歳になるまで取得ができます。育児休業からの職場復帰後は、労働時間を最大で2時間短縮できる短時間勤務の選択が可能です。短時間勤務は子供が小学校の始期に達するまで選択可能で、子供が3歳になるまでは賃金の減額もありません。また、所定外労働・深夜業の制限等の制度もあり育児に配慮しています。

育児休業取得率

 

2022年度

2023年度

2024年度

男性

26.5%

59.3%

50.0%

女性

100%

100%

100%

当年度権利取得者中の取得率(継続者は含まない)

 

③目標

 2024年度、サステナビリティ会議では「人財戦略」における課題の施策「女性管理職比率の向上」と「従業員エンゲージメントの向上」を迅速、確実に改善することを目的としてそれぞれにKPIを設定いたしました。

課題の施策

KPI

女性管理職比率の向上

女性管理職比率(課長)

2026年度 : 5%以上、2030年度 : 10%以上 (三ツ星ベルト単体)

従業員エンゲージメントの向上

スコア改善目標(2023年度比)

2026年度 : 10%改善、2030年度:13%改善

 

 (5) 人権の尊重

■基本的な考え方

 三ツ星ベルトグループは、当社の事業活動に係る全ての人の人権を尊重することが社会及び当社グループの持続可能な成長の最大の前提条件であると考えており、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」及びその他の国際基準に基づきマテリアリティの1つに「人権と人格の尊重」を取り上げ、人権尊重の取り組みを推進しています。

 

①ガバナンスとリスク管理プロセス

 「人権と人格の尊重」に係るリスクはサステナビリティ会議のワーキンググループが実施する人権デューディリジェンス(人権DD)により特定され、サステナビリティ会議が指名する推進組織により人権リスクに対する施策が実行されます。活動の進捗状況はサステナビリティ会議により監視・評価され、その内容はサステナビリティ会議から取締役会に報告されています。

 人権リスクは全社的なリスク管理プロセスにおいても特定されます([第2-2-(2)-②]「リスク管理」をご参照ください)。

 

②取り組み状況

人権方針の制定と人権DD

 2023年1月、人権方針を制定するとともに、サステナビリティ会議のワーキンググループでの人権DD及びサステナビリティ会議での議論により、当社のサプライチェーンを含む事業活動において、以下の人権リスクを特定しました。2024年2月には、調達ガイドラインをウェブサイトに開示し、取引先に人権DD活動への協力を要請しました。

特定した人権リスク

推進組織

児童労働、強制労働を伴う原材料(天然ゴム、綿等)の使用

サステナビリティ会議事務局+購買部

人権方針、調達ガイドラインの詳細は、当社ウェブサイトの「サステナビリティ アーカイブ」をご参照ください。

 

人権救済メカニズムの構築

 2024年度、当社はサステナビリティ会議において、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」が求める人権救済メカニズム(グリーバンスメカニズム)の構築に向けた取り組みを開始いたしました。2025年度も引き続き、より実効性の高い仕組みの実現に向けて、調査・研究を積極的に進めてまいります。

 

サプライチェーンエンゲージメント

 2024年度、取引先ESG情報管理ツールを導入し、主要30社を対象とした人権課題を含むESG課題の実施状況に関するアンケート調査を実施し、調査結果説明会を開催いたしました。2025年度も本ツールを活用してサプライヤーと協働し、持続可能で責任ある調達を推進してまいります。

 2024年度、EUの「欧州森林破壊防止規則(EUDR)」に対応し、天然ゴムサプライヤーを対象にEUDRに準拠した天然ゴムの供給が可能であるかどうか(森林破壊、児童労働、強制労働に関与していないか)調査いたしました。2025年度、調査結果を人権DD活動に展開する計画です。