リスク
3【事業等のリスク】
当社グループの事業その他に関するリスクとして、投資判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には以下のようなものがあります。当社グループでは、これらのリスクを把握し、発生の可能性を認識した上で、可能な限り発生の防止に努め、また、発生した場合の的確な対応に努めていく方針であります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)事業環境に関わるリスクについて
① デジタルトランスフォーメーション市場について
デジタルトランスフォーメーション市場は今後高い成長率で成長すると予測されるものの、当社グループの予想を上回るほどの景気悪化や経済情勢の変化に伴い、企業のデジタルトランスフォーメーションへの投資が抑制される等、事業環境が悪化した場合、あるいは既存顧客の継続、新規顧客の獲得が想定通りとならない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
② 競合について
当社グループは、新規事業や顧客体験の変革、ビジネスモデルの変革などクライアントの売上向上に関わる部分のデジタルトランスフォーメーションに強みを持ち、さらにグローバルでスケーラブルなサービスが提供できるというユニークなポジショニングを作り上げてきました。
しかしながら、当社グループを取り巻く市場の競争環境が激化し、コスト面や技術力等で競合他社に対し、競争優位性を確保することが困難となる場合、あるいは既存顧客の継続、新規顧客の獲得が想定通りとならない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業内容に関わるリスクについて
① 人材の確保について
当社グループは、デジタルトランスフォーメーションを担う人材の確保が重要な事業となっております。そのため人材採用やM&Aといった手段でグローバルに人材を確保できるよう取り組んでおります。しかしながら、当社の想定を超える人材市場の逼迫や何かしらの組織的要因により人材が確保できなくなった場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクに対し、当社グループでは人材育成プログラムの強化、人事評価の適正性の確保、ワークライフバランスの実現等により、優秀な人材の確保・育成及び流出防止に努めております。
② 外注先について
当社グループは、自社の人材の確保及び育成に注力していますが、一方でプロジェクトを成功させるためには、プロジェクトの各局面に応じてタイムリーに適切な外注先を確保することも必要と考えています。そのため、パートナー・外注先との関係を強化し、柔軟に事業規模の拡大が図れるような仕組み作りに取り組んでいます。しかしながら、プロジェクトに対するパートナー・外注先の関与割合が高まった場合には、顧客が要求する品質水準に達するまでに、契約時点では予見不能な追加コストが発生する可能性があるほか、当社グループの品質水準を満たすパートナー・外注先を選定できない可能性や、パートナー・外注先の経営不振等によりプロジェクトが遅延し又は遂行できなくなったり、パートナー・外注先の提供するサービスの瑕疵により当社が顧客に対して責任を負担することとなったものの当該パートナー・外注先からの当社の損害の回復が困難となったりする可能性があります。
かかるリスクに対し、当社グループでは外注先に委託する比率を低減するほか、国内・海外拠点のリソースをグローバルで管理するチームを組成し、外注先の選定について与信等も含めて十分な検討を行っております。さらに、プロジェクトの遅延や外注先の納品物の品質水準に懸念が生じる可能性がある場合には、早い段階で顧客に相談して調整を図ることで、リスクの低減に努めております。しかしながら、これらの取り組みによってもリスクを回避できない場合、プロジェクト業績の採算の低下等により、当社グループの事業展開、経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
③ 開発プロジェクトの採算性について
当社グループでは、プロジェクト管理者が品質・納期・コスト・リスク等の管理を行うとともに、プロジェクト管理システム等で工期や費用の費消の状況をモニタリングしております。しかしながら、システム開発においては、契約の受注時に採算性が見込まれるプロジェクトであっても、開発中の大幅な仕様変更等が発生し、作業工数が当初の見積り以上に増加することにより、最終的に案件が不採算化することがあります。また、長期のプロジェクトは環境や技術の変化に応じた諸要件の変更が生ずる可能性があると考えられます。
かかるリスクに対して、当社グループではプロジェクトのフェーズを顧客と合意の上で細分化し、各フェーズにおいて追加の対応やスケジュールの調整などの必要性を顧客と都度整理しております。また、追加の見積等が発生する可能性が見えた段階で顧客ときめ細かいコミュニケーションを取ることにより、不採算化のリスク低減に努めております。しかしながら、突発的で大幅な仕様変更や諸要件の変更あるいは品質上のトラブルが発生した場合、プロジェクトの採算の低下等により当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
④ 技術革新等について
IT業界では、技術革新や顧客ニーズの変化のスピードが非常に速く、それに伴い、常に新しい技術やサービスが生み出されております。当社グループのデジタルコンサルティング事業においては技術力が競争力の源泉であるため、技術革新への対応が遅れることは当社グループにとって重大なリスクになると考えております。従いまして、技術革新に迅速に対応できるよう、グローバルで優秀なエンジニアを確保し、世界の各地域ごとの市場動向を注視し情報を共有することやクライアントのニーズや他社状況を把握することで技術革新への対応を講じることにより、今後も競争力のあるサービスを提供できるように取り組んでおります。
しかしながら、予想以上の急速な技術革新や代替技術・汎用的な競合商品の出現等により、当社グループのサービスが十分な競争力や付加価値を確保できない場合には、新規受注の減少や既存顧客の離反を招来し、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 売掛債権等の貸倒れについて
当社グループは、受注時には信用リスクの回避のために与信枠を設定し、かつ貸倒れリスクに対して適正な会計処理を行っていますが、景気の悪化等により当社グループが計上している貸倒引当金を上回る予想し得ない貸倒れリスクが顕在化し、追加的な損失や引当の計上が必要となる場合には、当社グループの今後の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 海外での事業展開について
当社グループは、日本国内のほか、アジア、欧州、北米及び中東に事業拠点を設置し、事業を展開しております。海外での事業展開において適用を受ける関連法令・税制・政策の制定、改正又は廃止、並びに解釈の相違、政治経済情勢・外交関係の変化、法令・規制・商慣習の実務上の取扱いの変更、人件費の上昇、著しい為替レートの変動等が発生した場合や、一般的に売掛債権の回収期間が長期となることなど日本との商習慣との違いから生じる取引先等との潜在的リスクが顕在化し、現地での事業活動に悪影響が生じる場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクへの対応として、当社グループでは海外で事業展開する各子会社と本社(日本)との連携を通じてグローバルな政治・経済情勢や各国法規制動向等を定常的に把握しております。また、地域毎に弁護士等の専門家と連携し、当社の事業運営に影響を及ぼすリスクが顕在化した場合には、対応策を早急に講じることができる体制を整えています。為替レートの変動リスクについては、海外拠点において日本から包括的に外貨建て預金残高の調整を行い、海外子会社でも必要に応じて外貨建て預金残高を増減させることにより、為替変動リスクの低減に努めております。また、当社グループは収益を実現する拠点及び原価の発生する拠点が世界各国に分散していることから、為替変動の影響を自然とヘッジできる収益構造となっております。インフレに関連した人件費の上昇につきましては、顧客へ理解を求めつつ、同時に海外拠点の従業員のスキル向上も推進することで、顧客が売価上昇の要因を許容しやすくなるよう努め、売価上昇を実現することで収益性を維持しております。
⑦ 自然災害や事故、新型コロナウイルス感染症等について
当社グループは、日本国内のほか、アジア、欧州、北米及び中東において事業を展開しており、拠点がある国において様々な自然災害、伝染病、テロ、戦争、電力・輸送・通信等のインフラの停止や遅延等の影響を受ける可能性があります。当社グループでは地域毎に想定されるこれら事象に対して、各拠点との月次の報告会議を通じて、現地情勢を迅速に把握し対応策を早急に検討できる体制を整えているほか、各拠点の関係部門と常に連携し、情報の錯綜を防ぐ有事発生の際のレポートラインの強化に努めております。また、状況によっては事業継続計画(BCP)を検討し、情勢の変化に応じて適宜見直しを行っております。しかしながら、当社グループが甚大な人的または物的被害を受けた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症等の感染症拡大によるリスクについては、当社グループはリモートワーク環境下においてもオンラインでサービス提供できる体制・ノウハウを構築しており、サービス提供への影響の最小化を図っています。今後も、感染の状況等を注視しながら事業運営を行っていきますが、感染拡大の長期化により経済活動が停滞した場合には、顧客企業のIT投資の抑制によるプロジェクト数の減少やプロジェクト規模の縮小を招き、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3)事業運営体制に関わるリスクについて
① 特定人物への依存について
当社グループの代表取締役社長である鮄川宏樹は、創業以来当社グループの事業に深く関与しており、また、当社事業に関する豊富な経験と知識を有していることから、経営戦略の構築やその実行に際して極めて重要な役割を担っております。当社グループは、特定の人物に依存しない経営体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏の当社グループにおける業務執行が困難になった場合、当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 訴訟等の可能性について
当社グループは、国内外に事業を展開しており、国内外の法令の適用を受けております。それら法令を遵守することに努めていますが、将来において当社グループを構成する企業及びその役職員の法令違反等の有無に関わらず、顧客や第三者との間で予期せぬトラブルが発生し、訴訟に発展する可能性があります。当社グループに対して訴訟が提起された場合には、その訴訟の内容及び結果によっては、損害賠償責任の負担その他多大な訴訟対応費用や企業ブランドイメージの悪化等により、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクについて、当社グループではコンプライアンス行動指針を定めたコンプライアンス規程を制定しております。さらに、コンプライアンス委員会を設置し、社内研修及び教育活動を通じて、各拠点の従業員1人1人が法律や社内規程等で決められたことを守り、かつ社会の常識に従って行動するよう周知徹底を図ることで、法令違反等の発生リスクの低減に努めています。また、拠点がある国において現地弁護士と契約して法務的な確認を都度実施することで、リスクの顕在化を未然に防ぐことに努めております。
(4)法的規制及び知的財産等に関するリスクについて
① 知的財産について
当社グループは、事業活動において、第三者の特許権、商標権等の知的財産権を侵害しないよう、常に注意を払うとともに、必要に応じて当社グループの知的財産権の登録を申請することで、当該リスクの回避を図っています。しかしながら、当社グループの認識していない第三者の知的財産権が既に成立している可能性や当社グループの事業分野で新たに第三者の知的財産権が成立する可能性があること等から、当社グループによる第三者の知的財産権の侵害が生じる可能性があり、その第三者より、損害賠償請求、使用差止請求及びロイヤリティの支払い要求等が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 情報セキュリティについて
当社グループでは、事業遂行にあたり、顧客の企業情報や顧客が保有する個人情報等、様々な機密情報に接する機会があります。万が一、当該機密情報が外部に漏洩した場合には、当社グループの信用低下や損害賠償責任の負担等を通じて、当社グループの経営成績や財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
かかるリスクについて、当該機密情報が外部漏洩のないよう従業員等と秘密保持契約を締結するとともに、それらの情報管理やセキュリティ管理に対しては個人情報保護規程や情報システム管理規程を整備するとともに、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得し、情報の適正な取扱いと厳格な管理を的確に行うための対策を講じております。さらに、リスクへの対応を確かなものとするため、国内・海外拠点のセキュリティ部門を束ねるグループ・セキュリティ機能を設け、進化する脅威にたいしてリスク管理とセキュリティ施策を行っております。また、従業員教育を通じて情報セキュリティへの意識向上を促すことやグループ内をグローバルに横断するセキュリティ委員会の設置を通じて、セキュリティインシデントの低減に努めると共にリスクを網羅的に把握できる仕組みの構築に取り組んでおります。
(5)その他
① M&A等の投融資に関するリスクについて
当社グループでは、今後の事業拡大の過程において、サービスラインの強化、グローバル展開の加速及び新たな事業領域への展開等を目的として、出資、M&A等の投融資を実施する場合があります。投融資については、弁護士・税理士・公認会計士等の外部専門家の助言も得ながら緻密にデューディリジェンス(適正価値精査)を実施し、投資リスクを十分に検討しております。しかしながら、事業環境や競合状況の変化等に伴って当社グループが期待する利益成長やシナジー効果が当初の想定どおりに実現できない可能性があり、これが顕在化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクの発生タイミングの予想は困難でありますが、定量的かつ明確なKPIの設定及びそれに基づく定期的なモニタリングを通じ、最重要会議体にて適宜報告・議論を行う体制をとることにより、リスクに備えております。また、当社グループとのシナジー効果を十分に発揮できず売上や利益が想定を大きく下回るなど、期待したリターンが得られないリスクについては、当社グループとのシナジー創出による買収先会社の継続的成長を重要視し、案件の規模や内容に応じてロングタームインセンティブ(一定期間の勤続に伴う報酬)やアーンアウト(買収価格の分割払い)等のスキームを活用しています。
なお、企業買収に伴い発生した相当額ののれんについて減損発生の兆候が識別された際は、適切な測定手続きを実施して、適正に財務諸表に反映する体制を構築しております。業務執行と監督の体制は「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を、リスクが顕在化したときの影響額については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 9.のれん及び無形資産、11.非金融資産の減損」をご参照ください。
また、投融資を計画する場合において、適切な対象会社が発掘できない際には、事業成長を視野に入れた出資、M&A等が実施できないことが想定され、事業成長に悪影響を与える可能性があります。
② のれんについて
当社グループは、企業買収に伴い発生した相当額ののれんを計上しております。当該のれんにつきまして、それぞれの事業価値及び事業統合による将来のシナジー効果が発揮された結果得られる将来の収益力を適切に反映したものと考えておりますが、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が得られない場合、減損損失が発生し、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。リスクの発生時期、対策、規模等については上記「① M&A等の投融資に関するリスクについて」をご参照ください。
③ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社グループでは、取締役、従業員等に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。2023年12月末時点における新株予約権による潜在株式数は3,327,500株であり、発行済株式総数34,326,950株の9.69%に相当します。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存株主の保有する株式の価値が希薄化する可能性があります。
④ 過年度の経営成績及び税務上の繰越欠損金について
当社グループは、過年度を含め当期純損失を計上しているため、当事業年度末において税務上の繰越欠損金が1,169,172千円(国内拠点)存在しております。一般的には、繰越欠損金を課税所得から控除することにより、税額を減額することができます。しかし、今後の税制改正の内容によっては、納税額を減額できない可能性があります。また、繰越欠損金が解消された場合、通常の税率に基づく法人税等が発生し、当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローに悪影響を与える可能性があります。
⑤ 配当政策について
当社は、利益配分につきましては、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としています。しかしながら、本書提出日現在では事業の成長段階にあることから財務体質の強化及び事業拡大のための内部留保の充実を図り、事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えています。このことから、創業以来配当を実施しておらず、内部留保資金につきましては、財務体質の強化及び事業拡大のための財源として利用していく予定です。
なお、剰余金の配当を行う場合は、年1回の剰余金の配当を期末に行うことを基本としており、その他年1回中間配当を行うことができる旨及び上記の他に基準日を設けて剰余金の配当を行うことができる旨を定款で定めております。なお、当社は、会社法第459条第1項の規定に基づき、剰余金の配当に係る決定機関を取締役会とする旨を定款で定めております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、利益配分につきましては、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としています。しかしながら、本書提出日現在では事業の成長段階にあることから財務体質の強化及び事業拡大のための内部留保の充実を図り、事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えています。このことから、創業以来配当を実施しておらず、内部留保資金につきましては、財務体質の強化及び事業拡大のための財源として利用していく予定です。
なお、剰余金の配当を行う場合は、年1回の剰余金の配当を期末に行うことを基本としており、その他年1回中間配当を行うことができる旨及び上記の他に基準日を設けて剰余金の配当を行うことができる旨を定款で定めております。
将来的には、各事業年度の経営成績を勘案しながら株主への利益還元を検討していく方針ですが、現時点において配当実施の可能性及び実施時期等については未定であります。