2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社及び当社グループの事業展開上のリスク要因について、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項には、以下のようなものがあります。当該事項は当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 なお、当社グループのリスク管理体制については、「第4 提出会社の状況  4.コーポレート・ガバナンスの状況等  (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。

1. 事 業 関 連

(1)鉄鋼および建材市況の変動

 当社グループの購入する主原料(熱延鋼板)、副原料(亜鉛・アルミおよび塗料等)、その他各種資材等の価格は市況に大きく左右されます。主原料である熱延鋼板の価格は、いわゆる鉄鋼原材料である鉄鉱石と原料炭の価格変動の影響を受けますが、これらの価格はときに実需給によらず投機的な商品市況として変動する場合があります。また、熱延鋼板の市況は、海外市場と日本国内市場で乖離が発生する場合もあります。当社グループは原料の機動的な調達を強みとするとともに、顧客に対しても一定の価格交渉力を有しておりますが、当社が販売する商品の市況と原料市況が想定を超えて乖離する場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 世界経済は、ロシアのウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化、米中対立の先鋭化などの地政学リスク、また中国経済の長引く低迷などから不安定な状況が続いております。これらを背景として鐵鋼原材料、鉄鋼製品ともに需給バランスが不安定となり市況に大きな影響を及ぼすリスクがあります。

 これらの状況は当社グループの2025年3月期以降の業績に影響を及ぼす可能性がありますが、その影響の程度については流動的です。

 当社グループとしましては、原料については、重要な調達先と戦略的に資本関係を結ぶなどして供給の安定を図るとともに、複数の調達先と機動的な交渉を行うこと、さらには調達先の一層の多様化を進めることでリスクの低減を図っております。販売価格については、製品の機能・品質はもちろんのこと、デリバリー、各種サポートの充実、顧客との信頼関係の深化など、あらゆる面での競争力強化と差別化を継続的に図り、価格交渉力の向上に取り組んでおります。

 

(2)クレーム

 当社グループが製造・販売する製品や提供するサービス等に起因し、何らかのクレームが発生するリスクがあります。

 このリスクについて、当社グループとして可能な限り低減の措置をとっておりますが、リスクが顕在化する時期やその影響の程度は流動的です。

 当社グループとしましては、ISOの品質マネジメントシステムを主体とする品質保証体制のもと実効的な品質管理を行い、製品の性能と品質の確保に努めております。また、顧客対応の専用部署を設け、苦情や問い合わせに迅速かつ適切に対応することで、リスクの低減を図っております。なお、一部の製品を対象とする賠償責任保険に加入しております。

 当社が2007年から2016年に製造した建築外装用カラー鋼板の一部で発生している美観および耐久性上の不具合に関し、将来の不具合発生にかかる補修費用等の発生リスクについては、「第5経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表(重要な会計上の見積り)製品補償引当金 (2)財務諸表利用者の理解に資するその他の情報」を参照ください。

 

(3)感染症による影響

 新型コロナウイルス感染症については、当連結会計年度末の状況として世界経済はその影響から脱しつつあるものと考えられますが、一方で、新型コロナウイルス感染症を始めとする既知のウイルスの変異種発生などによる大規模な蔓延や未知のウイルスが発生することなどから、再び経済活動への影響を及ぼすリスクが考えられます。同問題は引き続き当社グループの2025年3月期以降の業績と財務状況に影響を及ぼす可能性がありますが、その影響の程度は流動的です。

 当社グループとしましては、引き続き従業員の感染リスク低減と安全確保等に努めるとともに、グループ各社が機動的に連携することで調達・生産・販売のリスク低減に取り組んでまいります。

 

(4)海外情勢の変動

 当社グループは海外では台湾、中国、タイに生産・販売拠点を有しており、各拠点の経済圏のみならず他の地域への輸出販売が連結売上高の相当な比率を占めております。これら海外市場での事業活動には以下のようなリスクが内在しております。

 ①保護主義的な貿易措置による輸出販売の制約

 ②不利な政治または経済要因による事業活動の制約

 ③予期しない法律及び規制並びに税制の変更による事業活動の制約

 ④各種要因からの社会的混乱による事業活動の制約

 これらのリスクが顕在化する時期やその影響の程度については流動的です。

 2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻は、欧米等によるロシアへの経済制裁の影響も含め、世界的なサプライチェーンの混乱や各種資源・エネルギーの供給制約と価格高騰など、世界経済に大きな影響を及ぼしております。これらの状況は当社グループの特に中長期的な事業活動に影響を及ぼす可能性がありますが、その程度は流動的です。

 また、中国においては習近平政権への権力一極集中が進み、権威主義的・強権的姿勢が強まっていることから、台湾問題を含む国際情勢全般において日本および欧米諸国との対立が強まっております。中国との政治的対立や経済的分断が進む場合、当社グループの中長期的な事業活動に影響が及ぶ可能性がありますが、そのリスクが顕在化する時期や程度は流動的です。

 当社グループとしましては、複数の事業拠点を配することでリスクの分散を図るとともに、各拠点が連携をとって機動的に対処してまいります。また、特に台湾問題については、常に諸情勢を注視するとともに有事を想定した対応策を継続して検討してまいります。

 

(5)為替の変動

当社グループの海外連結子会社の取引は、各所在国の現地通貨または米ドルでの契約が大半を占めていることから、これら通貨と日本円との為替レートの変動は、当社の連結の売上高・利益に直接的な影響を及ぼします。

 米ドルに対する日本円の為替レートの変動は、直接的には当社および日本国内のグループ会社の輸出環境、日本国内市場における輸入競合製品との価格競争環境、当社の原材料の調達コスト等に影響を及ぼすとともに、間接的には日本のマクロ経済に影響を及ぼします。

 これらのリスクが顕在化する時期やその影響の程度については流動的です。

 当連結会計年度においても、米国ではインフレ抑制のため金融引き締め政策を継続したことやロシアのウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊迫化などの地政学的リスクの増大から米ドルに対する円安が引き続き進捗するとともに、当社グループの海外連結子会社所在国通貨についても全般的に円安方向の傾向が続きました。

 当社グループでは、これら為替レートの動向に細心の注意を払うとともに、そのときどきの動向に応じた機動的な調達と販売施策を実行することで、収益の安定に努めております。

 

(6)情報セキュリティ

 当社の事業活動は、情報システムを利用して業務の効率化を図っております。また、自社及び取引先の営業秘密や個人情報などの機密情報を、情報システムに保管しています。これらの機密情報の管理には万全を期しておりますが、悪意のある第三者からのサイバー攻撃等で情報が漏洩した場合、社会的信用が著しく低下し、事業活動が滞る可能性があります。また、自然災害による大規模停電やランサムウェア他により、想定外のシステム障害が発生し、復旧に時間を要した場合は、生産・販売・間接業務など事業活動全てにおいて、直接的な影響が及ぶ可能性があります。

 これらのリスクが顕在化する時期やその影響の程度は流動的ですが、当社では、情報システム・情報セキュリティに関する諸規程を定め、適切なシステム管理体制を構築し、セキュリティ対策を実施しております。また、バックアップデータの消失やハード障害への対策として、積極的にクラウドの利用を推進し、リスクの低減に取り組んでおります。

 

(7)気候変動

 気候変動は中長期的に地球環境や世界的マクロ経済に大きな影響を及ぼす可能性があるとともに、当社グループの事業活動、業績や財務状況、ひいては事業形態にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社は2022年6月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同を表明し、ガイダンスに沿った気候変動シナリオ分析を実施しております。脱炭素社会へ向けた移行リスクとしては、カーボンプライシング(炭素税,CO2排出量取引)の導入による原材料及びエネルギー価格の上昇、環境規制の強化による設備投資の発生などが想定されます。また、当社グループ事業への物理的リスクとしては、自然災害の激甚化による当社事業所への被害やサプライチェーンの混乱などが予想されますが、これらのリスクが顕在化する時期や影響の程度については流動的です。シナリオ分析の結果を踏まえ、当社は「2050年カーボンニュートラルの実現」を目指し、「2030年度CO2排出量2013年度比30%削減」をターゲットとして取り組みます。

 当社グループではさまざまな環境問題に対応するべく1999年に「環境宣言」及び「環境行動指針」を定め、「安全・安心・環境・景観」を全ての事業活動におけるキーワードとして、自然と調和し共生する企業活動に取り組んでおります。地球温暖化問題への取組としては、グループ全体で省エネルギーやCO2排出量の削減などを推進する為、環境マネジメントシステムを構築し、国内外の主要事業所においてISO14001を取得しております。

 当社の外装建材商品では高強度かつ軽量で暴風・地震災害に強い鋼板製屋根・外壁商品、空調負荷の低減が期待できる高断熱屋根・外壁商品に注力しており、さらにはゲリラ豪雨時の道路冠水リスクを低減するグレーチング商品にも注力しております。当社グループでは気候変動をリスクとしてだけでなく機会として捉え、事業活動を通じて気候変動に関する社会課題の解決へ貢献してまいります。

 

2. 財 務 関 連

(1)市況変動にともなう財務状況への影響

 当社グループの主力事業である表面処理鋼板事業及びその二次製品である鋼板建材事業は、世界的な鉄鋼および鋼板建材市況の変動の影響を大きく受ける特徴があります。需給環境による販売数量の変動に加え、原材料価格・販売価格の双方の大きな変動に常にさらされるとともに、双方が想定を超えて乖離する場合は、当社グループの業績のみならず短期的なキャッシュフローに大きな影響が及びます。

 当社グループとしてはこのような事業上の特徴を踏まえ、保有する現預金についてキャッシュフローの大きな変動に耐えうる相応の水準維持に努めるとともに、投資有価証券の流動化に加え、金融機関と締結しているコミットメントライン契約の活用などにより、機動的に資金面の対応をしております。

 

(2)減損会計による影響

 当社グループは、各事業のセグメントに属する有形固定資産や無形固定資産を保有しておりますが、これらの資産については減損会計を適用し減損の兆候が認められた場合、当該資産グループから得られる将来キャッシュフローを測定し減損処理が必要な資産については適切に処理を行っております。当連結会計年度末(2024年3月期末)において、主要な資産に減損の検討が必要となるものはございませんが、将来の経営環境の変化等により減損処理が必要となった場合、当社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)保有株式の時価変動

 当社は、事業の拡大と持続的成長のためにはさまざまな企業との協力関係が不可欠であるとの観点から、企業価値を向上させるための事業戦略上の重要性、取引先との事業上の関係等を総合的に判断し、政策的に株式を保有することとしております。この政策保有株式を含むその他投資有価証券については、金融商品会計基準に基づき、個々の銘柄の期末時点における時価が帳簿価額に比べ50%以上下落した場合には「著しく下落した」ものとみなして減損処理を行い、また30%以上50%未満下落した場合にも回復可能性の有無を判断し必要と認められた場合には減損処理を行い、簿価と時価との差額を評価損として特別損失に計上するという会計処理を行っております。経済情勢の変化等により、株価が大きく下落した場合には、この評価損の計上により当社グループの業績と財務状況に影響が及ぶ可能性があります。

 このリスクが顕在化する時期や影響の程度は流動的です。

 当社は、毎年、個別の政策保有株式の保有目的の妥当性や中長期的な保有の合理性について検証し、保有の合理性が認められないと判断したものは、適切な時期に純投資への振替や売却を進めております。

 

(4)退職給付債務

 当社グループは、会計基準に従って退職給付債務を処理しておりますが、今後の経済情勢によっては退職給付債務の計算基礎となる事項(割引率、長期期待運用収益率等)について再検討する必要が生じる可能性があり、また、年金資産の運用環境によっては数理計算上の差異が多額に発生する可能性もあります。これらの場合、未積立退職給付債務の増加等、費用処理すべき債務金額が増加することにより、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。

 このリスクが顕在化する時期や影響の程度は流動的です。

 当社グループとしましては、毎年、年金運用プランの見直しを実施し年金資産の構成比率を変動させることにより、経済情勢に即した運用を実施することによって、退職給付債務が業績に与える影響を抑える取り組みを行っております。

 なお、当社は2023年4月より社員の定年到達年齢を60歳から65歳に制度変更しておりますが、これに伴い退職給付債務が今後の業績に与える影響は極めて軽微であります。

 

配当政策

3【配当政策】

当社は株主の皆様に対する利益還元を最重要課題の一つと認識し、その方策としては業績に応じた配当金のお支払いならびに自己株式取得等としております。業績に応じた配当のお支払いは、安定的、継続的に実施することを基本方針とし、企業価値向上に向けた投資等に必要な資金需要、先行きの業績見通し、健全な財務体質維持等を勘案して実施いたします。「業績に応じた配当のお支払い」の指標としては、連結配当性向年間30%以上を目途といたします。

なお、2023年度~2025年度の3年間における株主の皆様への利益還元としては、配当金のお支払いを重視することとし、設備投資計画ならびに財務状況等を踏まえ、当初の方針を一部見直し1株当たり200円以上の年間配当金を維持した上で、連結配当性向年間75%以上とする(2024年4月25日開示の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」による)こととしております。

剰余金の配当は、中間配当および期末配当の年2回を基本としており、また、決定機関については、会社法第459条第1項に基づき、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議によって配当を行うことができる旨を定款に定めております。

当事業年度の期末配当金につきましては、2024年5月10日開催の取締役会において1株当たり145円と決議しております。これにより2023年11月6日開催の取締役会において1株当たり55円と決議しました中間配当とあわせて1株当たり年間配当金は200円となります。

 

 当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

 決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月6日

1,604

55

取締役会決議

2024年5月10日

4,231

145

取締役会決議