2024年8月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 2,766 100.0 290 100.0 10.5

事業内容

3【事業の内容】

(1)企業理念

 当社は「ゆたかな世界を、実装する」を企業理念に掲げ、ミッションクリティカル業務へのAI導入支援のため、基盤システムとなるABEJA Platformの開発・導入・運用を行っております。

 また、当社は一般社団法人日本ディープラーニング協会の設立を支援し、正会員としてディープラーニングをはじめとしたAI技術の普及に取組むとともに、最先端技術の動向把握や先進的な取組事例の創出に努めております。

 2019年3月には約5,200名が参加した自社リアルカンファレンス「ABEJA SIX 2019」を、2020年5月、2022年7月には自社オンラインカンファレンス「デジタルトランスフォーメーション2020」、「ABEJA SIX 2022」を開催しており、マーケットの醸成、AIに関するリテラシーの向上、IT人材の育成を推進しております。

 

(2)事業概要

 当社は、デジタルプラットフォーム事業の単一セグメントとなります。ABEJA Platformを核に事業展開しており、AIの導入支援と周辺サービスの提供を行う「トランスフォーメーション領域」と、その後の人とAIの協調による運用を行う「オペレーション領域」に区分しております。

 これらを含めた当社の事業全体像は図1のとおりであります。

 

 

図1:当社の事業全体像

 

 

デジタルプラットフォーム事業として展開する当社のビジネスモデルは、EMS(Electronics Manufacturing Service)に近い形態となります。

当社は、これまでの多種多様な業界・業態300社以上のAI導入を支援する上で培ったナレッジ(EMSにおける製造プロセスノウハウ)を活かし、顧客のニーズにあわせ、ABEJA Platformを核にデジタル版EMSとして、コンサルティングからABEJA Platform上でのオペレーションまでを一括支援しております。顧客はこのデジタル版EMSを採用することで、ABEJA Platformの最先端の技術・ノウハウを活用することができます。

当社の事業を製造業に例えた場合のイメージは図2のとおりであります。

 

 

図2:当社の事業を製造業に例えたイメージ図(デジタル版EMS)

 

トランスフォーメーション領域で設計し、ABEJA Platform上に構築したビジネスプロセスを、オペレーション領域で運用する事業モデルとなります。このため、運用におけるフィードバックがビジネスプロセスの精度向上やオペレーションの高度化に結びつくなど、2領域は密接に連携しております。

 

 

 

① ABEJA Platform

a.ABEJA Platform概要

 ABEJA Platformは、ミッションクリティカル業務における堅牢で安定的な基幹システムとアプリケーション群であり、生成AIをはじめとする最先端技術を人とAIの協調により運用するプラットフォームとなります(図3)。

 ABEJA Platformは、大きく6つのレイヤーで構成されております。顧客企業は必要なデータをABEJA Platformに蓄積することにより、コンピューティングリソースの管理やセキュリティを担保した環境の中で、データ加工等を行い、当該データとAIを組み合わせることにより、ミッションクリティカル業務におけるアプリケーションを構築し、人とAIの協調によって運用することができます。

 

 

図3:ABEJA Platform

 

また、ABEJA Platformの強みとして、数多くの導入・運用実績から安定した品質を素早く提供できる点などが挙げられます。

ABEJA Platformにおけるコア技術については、特許(「機械学習又は推論のための計算機システム及び方法(PCT/JP2018/3824)」)を取得しており、競合他社への牽制、優位性の一要素になっているものと考えております。また、2023年5月には、「ABEJA LLM Series」をリリースし、生成AI、特にLLMとその周辺領域の機能・技術の提供を開始しております。

 

ABEJA Platformの強み

開発速度の向上・早期運用開始

・既に実装されたモジュールを即座に提供することが可能

高い品質安定性

・過去の案件で実際に使われ、品質安定性について個別の検証を必要としないテスト済みのモジュールを利用可能

最先端の技術をいつでも利用可能

・最新のMLライブラリ、最新技術を用いたMLモデルなど、常に最新で最適な技術を利用可能

AutoMLをベースに本番適用

・AutoMLをベースに本番適用できる先進的なシステム

運用コスト・負荷の低減

・フルマネージドサービスとして提供されているため、MLエンジニア以外の運用人員が不要

堅牢なセキュリティ

・医療、金融、自治体でも実績のある高いセキュリティ

・システムダウンが大規模事故につながるような案件での実装経験

 

 

b.ABEJA Platform上でのHuman in the Loopの仕組みについて

 従来、AIを活用した運用を行うためには、PoC(Proof of Concept:実証実験)を繰り返し行い、AIの精度を継続的に向上させていました。しかし、企業にとってPoC期間は投資期間であり、精度の保証が難しいAIの開発において、継続して投資の意思決定を行うことがボトルネックとなる等、PoCに留まっている企業の割合は63%にものぼります(出所:アクセンチュアニュースリリース「アクセンチュア最新調査―AI活用において、60%以上の企業が概念実証に留まる」2022年6月23日)。

 一方で、ABEJA Platform上で、Human in the Loopの仕組みを利用することにより、PoCを行わず、初期からAIを導入・運用することが可能となります(図4)。

 

 

図4:導入プロセスの比較

 

 当社の提供するHuman in the Loopとは、ABEJA Platform上にビジネスプロセスの運用ノウハウや知識をデータとして蓄積するとともに、人が判断や意思決定を補うことで効率的にAIを構築していく仕組みとなります。例えばデータ量が少なく、AIが効果的に学習することができない、高い精度を発揮できない初期段階においても、人が補うことでAIの運用サイクルを成立させることができ、人とAIの協調(人とAIの相互補完)により、当初より実運用を可能としています。また、最終的には、AIが全体のプロセスに導入されることで、AIによる改善を行うことが可能となり、オペレーションの高度化を実現することができます。

 具体的には次のステップにより、ABEJA Platform上でHuman in the Loopの仕組みを実現しております(図5)。

 

図5:ABEJA PlatformにおけるHuman in the Loopの仕組み

 図5におけるABEJA Platformの導入と運用について、ステップ2で人が行うビジネスプロセスにABEJA Platformを導入することで、人とAIが協調してオペレーションを実行する環境が創出されます。これにより、運用ノウハウや知識がデータとしてABEJA Platformに蓄積できるようになります。当該環境のもと、日々のオペレーションにより、運用ノウハウや知識のデータ蓄積と活用が進み、ビジネスプロセスのAI化が進んでいきます。また、ステップ4では人とAIが協調しながらオペレーションの高度化を実現、ステップ5まで進むとAIが全体を改善するフェーズに入ります。

 

ステップ

状況

ステップ1(取組前)

 人が実行

・人が、リアル空間で、ビジネスプロセスを行っている

・運用ノウハウや知識は個々人等に分散

ステップ2

 人が実行

・人が行うビジネスプロセスに、ABEJA Platformを導入

・人が、ABEJA Platform上で、ビジネスプロセスを行っている

・運用ノウハウや知識がデータとしてABEJA Platformに蓄積される

ステップ3

 人が実行・AIが支援

・人が、ABEJA Platform上で、ビジネスプロセスを行っている

・ABEJA Platformに徐々に蓄積される運用ノウハウや知識がデータとして活用され、AIが支援、人の負荷が軽減される

・日々のビジネスプロセスにより、データの蓄積と、ABEJA Platformでの活用が進み、さらにAIの支援内容が高度化する

ステップ4

 AIが実行・人が支援

・AIが、ABEJA Platform上で、ビジネスプロセスを行っている

・人が支援(監督・監査)しており、負荷がさらに軽減される

・運用ノウハウや知識がデータとしてABEJA Platformで活用され、さらに実行内容が高度化する

ステップ5

 AIが実行・AIが改善・人が支援

・AIが、ABEJA Platform上で、ビジネスプロセスを行っている

・AIが様々なビジネスプロセスに導入されており、全体の改善を行うことが可能となる

・人が支援(監督・監査)しており、最終的な改善の意思決定などの重要事項は人とAIが協調して行う

 

 具体的なHuman in the Loopの仕組みを利用した取組事例として、プラント事業者において工場内配管の腐食度の定常的な検査・モニタリングにAIを活用し、人とAIが協調しながらAIが成長する仕組みを構築しております(図6)。

 

 

図6:Human in the Loopの仕組みを利用した具体例

c.適用領域の拡大について

 AI、特にディープラーニングは日進月歩の技術進化を辿っており、2012年での画像認識適用から、2023年における自然言語コミュニケーション適用に至るまで、技術の適用領域が拡大されています。それに伴い、当社の提供サービスも適用領域が拡大している状況にあります。

 

d.取組範囲の拡大について

 一顧客において、単一のビジネスプロセスから、複数のビジネスプロセスに取組範囲を広げることにより、重層的に顧客企業のAI導入を推進できます。ABEJA Platformに蓄積済みの連携データを再活用することで、サービス提供の速度を上げていくことが可能となります(図7)。

 

 

図7:重層的なデジタルトランスフォーメーションの推進

 

 

② トランスフォーメーション領域とオペレーション領域

 a.トランスフォーメーション領域

 顧客ニーズに対応したABEJA Platformの導入支援とその周辺サービスを提供しており、仕組みづくり・構築フェーズに位置づけられます。なお、仕組みづくり・構築は段階的に進めていくため、多くの収入はフロー型(都度契約)の契約となりますが、一方で長期間にわたる計画的なプロセスとなるため、継続顧客の割合は高くなっております。

   ・継続顧客からの売上比率(注) 81.2%(2024年8月期)

(注)継続顧客からの売上比率は、既存顧客(前事業年度に売上が発生した顧客)の当事業年度の売上高/当事業年度の売上高。

 導入支援にあたっては、経営レベル、全社レベルのビジョンの策定・共有から、ビジョンを具現化するためのプランニング、ビジネスプロセスにあわせたABEJA Platformの導入を伴走型で支援しております。

 また、当社では顧客企業のAI研修等を通じて、企業内のデジタル人材の育成も推進しております。

 

 b.オペレーション領域

 ABEJA Platform上で人とAIの協調による運用を行う運用フェーズに位置づけられます。このため、主な収入はストック型の継続収入となります。

 現状では、小売業、不動産業、製造業、金融業などが対象となり、複数の業界にわたってABEJA Platform上で人とAIの協調による運用を行っております。

 また、オペレーション領域主体の具体例として、ABEJA Platform上に構築したABEJA Insight for Retailを、小売業中心に提供しております。ABEJA Insight for Retailでは、店舗に設置したカメラなどデバイスを通して消費者の動線分析や年代・性別の推定を行い、入店から購買に至る消費者行動をデータとして可視化・数値化することで、店舗の課題を客観的に把握し、運営の改善に繋げることが可能となります。

 

 

 c.具体例

 具体的な取組事例は以下のとおりとなります。

 

顧客業種

取組内容

想定する効果

小売

販売データに基づく販売在庫の自動発注最適化システムの構築・運用

食品サプライチェーンの最適化

プラント

画像データに基づきプラントインフラの定期的検査・モニタリングを行うシステムの構築・運用

保守人員の削減

製造業

トラブル等のデータに基づき対処方法を選定するシステムの構築・運用

トラブル対応コストの削減

電力

稼働データに基づく電力需要予測システムの構築・運用

電力量の効率的コントロール

医療

画像データに基づく疾患検出システムの構築・運用

予防医療と関連疾患の早期発見

介護

介護データに基づく被介護者の自立支援システムの構築・運用

介護従事者の効率性向上、サービス品質向上

金融

アンダーライティング(引受業務)の高度化を行うための支援

引受工数削減、リスクマネジメントの高度化、収益向上

情報

購入データに基づくコンテンツレコメンドシステムの構築・運用

利用者の利便性の向上、購入率の向上

不動産

ハイブリッドワーク(オフィス出社とリモートワーク)下における情報・コミュニケーション格差が発生しないためのオフィス環境の構築・運用

入居者ターゲットの拡充

中間流通

効率化のためにDX化すべきオペレーションを予測するシステムの構築・運用

中間工数の削減

 

 d.ABEJA Platformと2領域の連携

 当社では、トランスフォーメーション領域とオペレーション領域で得た知見を基盤であるABEJA Platformに還元するとともに、2つの領域間でも相互に連携をとる、シナジー効果の高い事業モデルとなっております。2領域で獲得した知見をABEJA Platformに蓄積することで、継続的な効率化や安定性の向上、ユーザーインターフェース・ユーザーエクスペリエンスなどの改善を行っております(図8)。

 

 

図8:ABEJA Platformと2領域の連携

 

[事業系統図]

 

 

用語集

用語

内容

デジタルトランスフォーメーション(DX)

データとデジタル技術を活用することで製品・サービス・ビジネスモデルの変革を行い、新たな競争優位性を作り出すこと。

人工知能

(Artificial Intelligence/AI)

人工知能。学習・推論・認識・判断などの人の知能的な作業・活動を行う人工的な仕組み。

機械学習

(Machine Learning/ML)

コンピュータが、大量のデータから反復的に学習することでルールやパターンを見つけ出し、それをもとに分類や予測を行うアルゴリズムやモデルの総称。

深層学習

(Deep Learning/DL)

機械学習の一種。人間の脳神経回路を模したニューラルネットワークを多層にしたアルゴリズムの総称。

従来は人が行っていたデータから潜在的な特徴を抽出する作業をコンピュータが行うことが特徴。

生成AI

(Generative AI/GAI)

学習データをもとに、テキストや画像など新たなデータを生成するAI(人工知能)のこと。

大規模言語モデル

(Large Language Model/LLM)

巨大なデータセットとディープラーニング技術を用いて構築された大規模言語モデルのこと。

Human in the Loop

(HITL)

段階的に運用ノウハウや知識データを蓄積し、人とAIが協調してオペレーションする環境を創出する仕組み。

EMS

(Electronics Manufacturing Service)

電子機器をはじめとした他社の製品の製造を請け負うサービスのこと。

EMSは、規模の経済を働かせ製造コストを抑えるといったモデルで拡大、近年では請け負う製品領域が多様化しており、また、サービス領域も製造のみならず設計、保守運用に拡がりを見せている。

PoC

(Proof of Concept/実証実験)

構想、企画したシステムが意図した結果を生み出すかを確認するために、AIの精度などの不確実性が高い部分に絞り実験的に検証すること。

AutoML

(Automated Machine Learning)

データ収集、データの加工、モデルの生成などの機械学習のプロセスを自動化する技術や手法、概念のこと。

BaaS

(Backend as a Service)

アプリケーションのバックエンド機能を提供するクラウドサービス。

ABEJAでは、属性推定や需要予測等のAIを、一定程度の精度が担保された状態で予め準備し、顧客が簡単に利用できるように提供。

RAG

(Retrieval Augmented Generation)

LLMにプロンプトを入力すると、そのプロンプトをもとに外部データから関連する部分を取り出し、それを元に回答を生成する方法のこと。

Agent

プロンプトで入力した内容をもとにLLMが必要なアクションを考え、コンピュータ上でそのアクションを実行する機能のこと。

Fine-tuning

既に学習済みのモデルに、特定の用途を見据えて再学習を行うこと。

事前学習

 (Pre-Training)

モデルに基本的な言語能力や語彙、知識を習得させるために自己教師あり学習を行う手法のこと。

事後学習

 (Post-Training)

Pre-Trainingしたモデルを、ユーザが使いやすい応答をするように追加で学習を行うこと。

ガードレール

LLMの入力と出力を監視するアルゴリズムのこと。

アノテーション

AIが学習する教師データ(正解データ、ラベル)を作成するため、画像やテキストなどのデータに関連する情報を注釈として付与する作業のこと。

ユーザーインターフェース(UI)

ユーザーがサービスを利用する際に触れる操作画面や操作方法などの、ユーザーとサービスの接点を指す。

ユーザーエクスペリエンス(UX)

製品やサービスを通して、ユーザーが感じる使いやすさや印象といったユーザー体験のこと。

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

 当社は「ゆたかな世界を、実装する」を企業理念に掲げております。この企業理念のもと、テクノロジーの産業界への社会実装を支援することにより、産業横断的なイノベーションを創出することを目指し、ミッションクリティカル業務へのAI導入支援のため、基盤システムとなるABEJA Platformの開発・導入・運用を行っております。

 当事業年度におけるわが国経済は、社会活動の正常化や雇用環境の改善等により、国内景気には緩やかな回復の動きがみられます。一方で物価上昇、ウクライナ及び中東地域をめぐる情勢の長期化、中国経済の景気減速懸念等の影響により、先行きは依然として不透明な状況が続いております。

 当社の事業環境としましては、ビジネスプロセスのデジタル化や既存のビジネスモデルを変える新たな試み、大規模言語モデル(Large Language Model:LLM)といった生成AIへの関心・利活用など取組みは広がりをみせ、企業のIT投資への意欲は引き続き強いものとなっております。今後は少子高齢化に伴う労働生産人口の減少、働き方改革を背景に、多くの企業においてその動きが一層活発化するものと捉えております。

 このような環境の中、当社はミッションクリティカル業務における堅牢で安定的な基盤システムとアプリケーション群であるABEJA Platformを提供し、生成AIをはじめとする最先端技術による運用を人とAIの協調により実装してまいりました。

 第1四半期から取組みを始めた社内の運営体制の見直し等の効果は、第2四半期に過去最高の売上高を達成するなど、徐々に成果が表れているものの、四半期単位では変動が生じており、現状、巡航速度にのせる過程にあります。

 当事業年度は、LLM案件や新規取引が増加した一方で、既存取引先のボリューム減(個社事情)の影響等を受け、売上高は前事業年度とほぼ同水準となりました。粗利率は良好な水準を維持できていますが、リソース拡大(人件費増)と売上高拡大のバランスが引き続きの課題となります。安定的な成長のため、継続した運用体制等の改善、企業や事業の状況をより見定めた質の高い提案を推進してまいります。また、LLM関連については、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)のプロジェクトとして、「日本語LLM及び周辺技術(RAG、Agent)」の研究開発を行いました(2024年2月採択、8月まで実施。以下、「NEDOの第一期プロジェクト」)。次年度以降もLLM関連を注力領域とし、顧客企業へのサービス提供に加え、研究開発等を推進してまいります。

 以上より、当事業年度の経営成績は、売上高2,766,251千円(前年同期比0.3%減)、営業利益290,341千円(前年同期比27.9%減)、経常利益286,672千円(前年同期比24.5%減)、当期純利益218,712千円(前年同期比48.1%減)となりました。

 なお、当社はデジタルプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

② 財政状態の状況

 (資産)

 当事業年度末の資産合計は4,239,819千円となり、前事業年度末に比べ130,328千円増加いたしました。これは主にNEDOの第一期プロジェクトに係る助成金相当額(注)を未収計上したことにより未収入金が684,736千円増加した一方で、当該プロジェクトに係る費用(注)の支払いを主な要因として、現金及び預金が671,624千円減少したこと等によるものであります。

 (負債)

 当事業年度末の負債合計は、341,758千円となり、前事業年度末に比べ286,849千円減少いたしました。これは主に法人税等の納付により未払法人税等が118,958千円減少したこと、消費税の納付により未払消費税等が98,294千円減少したこと、借入金の返済により1年内返済予定の長期借入金が80,000千円減少したこと等によるものであります。

 (純資産)

 当事業年度末の純資産の残高は、3,898,061千円となり、前事業年度末に比べ417,178千円増加いたしました。これは主に新株予約権行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ99,494千円増加したことに加え、当期純利益を218,712千円計上したことにより利益剰余金が増加したこと等によるものであります。

 

(注)NEDOの第一期プロジェクトに係る助成対象費用(主にLLM 構築に必要な計算リソースに係る費用)は研究開発費として未払計上するとともに、助成金相当額を研究開発費のマイナスとして未収計上しているため、助成対象費用は当期の損益に影響はございません。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」)は、前事業年度末に比べ671,624千円減少し、当事業年度末には2,868,910千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により使用した資金は、760,011千円となりました(前事業年度は460,532千円の収入)。これは主に税引前当期純利益286,672千円の計上があった一方、売上債権の増加額95,554千円、未収入金の増加額684,736千円及び法人税等の支払額132,974千円があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は、28,569千円となりました(前事業年度は5,638千円の支出)。これは主に有形固定資産の取得による支出13,647千円及び無形固定資産の取得による支出19,947千円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により得られた資金は、116,955千円となりました(前事業年度は1,241,104千円の収入)。これは長期借入金の返済による支出80,000千円があった一方、新株予約権の行使による株式の発行による収入196,955千円があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

b.受注実績

 当社で行う事業は、提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

c.販売実績

 販売実績を領域別に示すと以下のとおりであります。なお、当社はデジタルプラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。

領域の名称

前事業年度

(自 2022年9月1日

 至 2023年8月31日)

当事業年度

(自 2023年9月1日

 至 2024年8月31日)

金額

(千円)

前年同期比

(%)

割合

(%)

金額

(千円)

前年同期比

(%)

割合

(%)

トランスフォーメーション領域

2,268,613

136.4

81.7

2,104,350

92.8

76.1

オペレーション領域

506,855

160.8

18.3

661,901

130.6

23.9

合計

2,775,469

140.3

100.0

2,766,251

99.7

100.0

 

 (注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2022年9月1日

 至 2023年8月31日)

当事業年度

(自 2023年9月1日

 至 2024年8月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

SOMPOホールディングス株式会社

801,500

28.9

565,376

20.4

味の素株式会社

223,868

8.1

311,278

11.3

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は特有の不確実性があるため、見積りと異なる場合があります。なお、当社における重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項」の「重要な会計上の見積り」に記載のとおりであります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、前記「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」をご参照ください。

 

③ 財政状態の分析

 財政状態の分析につきましては、前記「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」をご参照ください。

 

④ キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの分析につきましては、前記「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フロー

の状況」をご参照ください。

 

⑤ 資本の財源及び資金の流動性

 当社における主な資金需要は、継続的なサービス提供のための開発・研究に関する費用や人件費、人員獲得のための採用費、当社の認知度向上及び潜在顧客獲得のための広告宣伝費であります。これらの資金需要に対しては、自己資金金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。

 

⑥ 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社は、前記「3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境、事業体制、法的規制、その他の様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 そのため、当社は常に市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保し、市場のニーズに合ったサービスを展開していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因を分散・低減し、適切に対応を行ってまいります。

 

⑦ 経営者の問題意識と今後の方針に関して

 経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

⑧ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討内容

 当社は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、顧客支援の総量である売上高、当社事業の基盤となるABEJA Platformの活用を示すABEJA Platform関連売上比率、安定的な収益獲得を示す継続顧客からの売上比率、当社の収益力を示す営業利益を重要な指標としております。

 当事業年度における売上高は2,766,251千円(前事業年度2,775,469千円)、前事業年度比0.3%減となりましたが、個社事情による既存取引先のボリューム減の影響が大きく、当該減少分については、LLM案件や新規取引の増加でカバーした状況にあります。これにより、継続顧客からの売上比率も81.2%(前事業年度91.8%)となりました。また、当事業年度はNEDOのプロジェクトとして日本語LLMの構築と周辺技術の研究開発を進めるなど、LLM関連を注力領域と位置付け、リソースを投下しました。この結果、営業利益は290,341千円(前事業年度402,788千円)となりました。一方で、注力領域であるLLM案件や新規取引は増加しており、これに関連してAI導入の基盤システムであるABEJA Platformに関連する売上比率も92.2%(前事業年度84.9%)に上昇していること等は、来期以降に向けてポジティブな要因と捉えています。今後の各指標の向上の施策については前記「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。