2024年8月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅することを保証するものではありません。また、リスクの発生可能性、発生時期及び影響度についても、当社が判断したものであり不確実性を内包しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(1)事業環境に関するリスク

① デジタルトランスフォーメーション関連市場、AI市場の動向(発生可能性:低~中、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

 今後、多様な産業においてデジタルトランスフォーメーションへの取組み、AI導入が一層進展し、当社事業が属する市場は拡大を続けるものと見込んでおります。当社では、市場の動向を調査しその兆候を経営に反映させるとともに、顧客基盤の拡充を図っておりますが、企業の景気動向による影響やその他の各種新技術に対する投資を受け、市場の成長ペースが大きく鈍化した場合は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、市場が成熟していないため、新規参入の増加等による価格競争の激化等が起こった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合環境(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社が提供している関連サービスについては、他業種大手企業から高度に専門化した新興企業に至るまで、様々な企業による新規参入が多く見受けられ、類似のサービスを提供している会社も複数存在しております。これらの会社が当社と同様のサービスへ参入し競争が激化した場合は、当社の期待どおりに顧客を獲得・維持できないことも考えられます。当社は、早い段階から「ABEJA Platform」への戦略的な投資を実行し、AI導入実績について他社に先駆けて積み上げることによって、他社との差別化・競争優位性の確立に努めておりますが、他社との競合環境の変化によっては、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 技術・ビジネスモデルへの対応(発生可能性:低~中、発生時期:特定時期なし、影響度:大)

当社が事業を展開しているデジタルトランスフォーメーション関連産業は、市場が未成熟であり、グローバル市場において技術革新のスピードやビジネスモデルの移り変わりが早いため、当社では新技術及び新サービスの開発を継続的に行うとともに、優秀な人材の確保に取組んでおります。しかしながら、今後何らかの事由によって当社が市場の動向に適した技術やビジネスモデルを創出できない場合、当社のサービスが市場での競争力を失い、顧客の維持・獲得が困難になる可能性があります。その結果、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 当社のビジネスモデルについて(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

顧客企業に対してABEJA Platformの導入やインテグレーション(システム連携や実際の現場への施工)を行う場合、顧客企業の現行システムの状況などによってプロジェクト進捗が遅延する可能性がございます。当社では、ABEJA Platformの導入やインテグレーションを簡易化する追加機能開発、コンサルティングフレームワークの充実により、負荷を軽減させる取組みを行っておりますが、当社の想定を上回る顧客企業数において進捗遅延や想定を超える期間を要した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 事業の拡大について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社では、今後の成長機会の創出に向けて、既存の顧客企業及び見込み顧客企業のニーズを前提とした新機能の開発等を実施しております。また、収益源の多角化の観点から、現在の事業領域と異なる分野にも進出する可能性があります。当社では、収益見通しを吟味した上でこれらの取組みについて進めておりますが、開発遅延や、現在の事業領域と異なる分野に進出した場合において、当該分野における収益化が進まない場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また当社は、非連続的な成長を含む自社の成長のため、M&Aや資本業務提携は有効な手段の一つと考えております。M&Aや資本業務提携の実施にあたっては、対象企業の財務内容や契約関係等について事前調査を行い、リスクを検討した上で進めてまいりますが、対象企業における偶発債務の発生や未認識債務の判明など事前の調査によって把握できなかった問題が生じた場合や、事業計画が予定どおり進捗しない場合には、株式やのれんの減損処理を行う等、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ システム障害等(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社の事業は、サービスの基盤をインターネット通信網に依存しているため、自然災害や事故等により通信ネットワークが遮断された場合や、システムへの一時的な過負荷によって当社のサーバーが停止した場合には、サービスを提供することが不可能となる若しくはサービスの提供に支障を与える可能性があります。また、「ABEJA Platform」はGCP(Google Cloud Platform)やAWS(Amazon Web Service)等のクラウド上で運営されているため、何らかの事情で当該クラウドサービスに障害等が発生した場合には、サービスを提供することが不可能となる可能性があります。当社としましては、データのバックアップ、データセンターへの分散配置などによってトラブルへの備えをしておりますが、システムエラー、人為的な破壊行為、自然災害等やその他当社の想定していない事象の発生によりクラウドサービスの稼働が停止した場合や、コンピュータ・ウイルスやクラッカー等の侵入、その他の不具合によりシステム障害が生じた場合、一時的なサービス提供の停止及びそのことに伴う当社のサービスに対するレピュテーションの悪化や顧客からの損害賠償請求などが想定され、結果として当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 先行投資から得られる効果が期待どおりに実現しないリスクについて(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社において、先行的に研究開発費、広告宣伝費、人件費を投下し、研究開発と顧客企業獲得を進めることが必要であります。今後も、収益性の向上に努めながらも、事業成長のための投資を継続する方針です。

しかしながら、予期せぬ経営環境の変化、追加開発の必要性やその他の理由により、これらの先行投資が想定どおりの成果につながらなかった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす場合があります。

 

⑧ 大規模な自然災害等について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社は、有事に備えた危機管理体制の整備に努め対策を講じておりますが、台風、地震、津波等の自然災害が想定を大きく上回る規模で発生した場合、当社又は当社の取引先の事業活動に影響を及ぼし、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業体制に関するリスク

① 優秀な人材の確保及び育成(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社が今後更なる事業の拡大に対応するためには、生成AI、特にLLM領域等における優秀なエンジニアやデータサイエンティストを継続的に確保することが重要であり、現在もこうした人材の獲得・定着・育成に積極的に取組んでおります。しかしながら、高度な技術を持つ人材の獲得競争は激化しており、事業規模の拡大に応じた社内における人材育成、外部からの優秀な人材の採用等が計画どおりに進まず必要な人材を確保することができない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 内部管理体制(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、企業価値の持続的な増大を図るためにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに法令遵守の徹底が必要と認識しております。そのため、当社では内部管理体制の強化に努めております。しかしながら、今後の事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 特定の人物への依存(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社の代表取締役CEOであります岡田陽介は、創業者であると同時に最高経営責任者として経営戦略、事業戦略等、当社の業務に関しての専門的な知識を有し、重要な役割を果たしております。当社では、他役員や社員への情報共有や権限委譲を進めるなど、代表取締役CEOに過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、何らかの理由により代表取締役CEOが当社の経営執行を継続することが困難になった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

④ 機密情報や個人情報に関わる情報管理及びプライバシー権の保護(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社は、その業務の性格上、顧客側で保有している機密情報や個人情報に触れる場合があります。具体的には顧客の販売データ等の機密情報、顔認証に用いる画像データ等の個人情報を扱っております。情報の取扱いについては、情報セキュリティに関する規程、個人情報保護規程等を整備するとともに、プライバシーマークを取得することによって、適切な運用に努めております。しかしながら、このような対策にも関わらず当社の人的オペレーションのミス等、その他予期せぬ要因等により情報漏洩が発生した場合には、当社が損害賠償責任等を負う可能性や顧客からの信用を失うことにより取引関係が悪化する可能性があり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ コンプライアンス体制(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、今後企業価値を高めていくためにはコンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えております。そのためコンプライアンスに関する社内規程を策定するとともに適宜研修を実施し、周知徹底を図っております。しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、今後の当社の事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 小規模組織であること(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は小規模な組織であり、内部管理や業務執行についてもそれに応じた体制になっております。当社では、今後の業務拡大に対応するため、人員の増強や内部管理体制及び業務執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、何らかの事由でこれらの施策が適時適切に進行しなかった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 業績変動について(発生可能性:中~大、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社の事業の中には、案件ベースで受注をし、成果物の提出とサービスの提供完了をもって収益認識をしているものがあるため、案件によっては数か月分の稼働に対する売上高が1か月にまとまって計上されることがあります。当社では、各月の売上が平準化するよう努めていますが、個別案件によっては売上高が非連続となる場合や、案件の進行が遅れることで売上高の計上タイミングが想定より遅くなる場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、これにより四半期・月次ごとに業績が変動し、期間分析が困難となる可能性があります。

 

⑧ プロジェクト管理について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

当社は、品質・コスト・進捗などに対するプロジェクト管理体制を整備・強化しておりますが、当初想定した以上の開発工数の増加及び機能改善などにより、当初見積ったコストを上回り採算が悪化することがあります。また、納入及び売上の確定後における瑕疵補修などによって追加費用が発生することもあり、これらのことにより、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ SOMPOホールディングス株式会社及びSOMPO Light Vortex株式会社との関係について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)

a.資本的関係

 当事業年度末現在、SOMPO Light Vortex株式会社(以下「SOMPO Light Vortex」)は当社の議決権の18.31%を保有しており、当社のその他の関係会社になります。また、SOMPO Light Vortexの100%親会社は、SOMPOホールディングス株式会社(以下「SOMPOホールディングス」)となります。

b.役員派遣

 当社社外取締役1名は、SOMPOホールディングス及びSOMPO Light Vortexからの派遣役員となります。

c.承認等

 当社には、SOMPOホールディングス及びSOMPO Light Vortexの事前承認又は事前報告を必要とする取引や業務は存在しません。

d.取引関係

 当社とSOMPOホールディングスは、2021年4月にデジタルトランスフォーメーション推進等を目的とし、業務提携基本契約を締結しました。当社の売上高のうち、SOMPOホールディングスに対する売上高は2024年8月期においては20.4%を占めております。なお、SOMPOホールディングスとの取引にあたっては、当社の関連当事者取引管理規程に則り、適切に実施しております。

 当社は、SOMPOホールディングス及びSOMPO Light Vortexと良好な関係を維持しておりますが、今後も新規顧客の開拓を実施し、特定の取引先への依存度を低下させる方針です。しかしながら、当面は特定の取引先への依存が高い水準で推移することが考えられ、この間に同社の事業戦略方針の転換等により、同社との関係に変化が生じ受注が減少した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)法的規制に関するリスク

① 法的規制・制度動向による影響(発生可能性:低~中、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

現在、日本国内においてインターネットに関連する主要な法規制は電気通信事業法となっておりますが、インターネット上の情報流通のあり方についても様々な議論がなされている段階であります。当社では、事業に関連する法規制の制定や改定について、事前に事業に及ぼす影響や対応策等を検討しております。しかしながら、今後、インターネットの利用者や関連するサービス及び事業者を規制対象とする法令等が制定された場合や、取得データの利活用に関するガイドラインの変更や、業界内で何らかの自主規制規則等が制定された場合には、当社の事業が制約され、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 知的財産権(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社における第三者の知的財産権侵害の可能性については、調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握はその性質上困難であります。このため、当社が認識せずに他社の特許を侵害してしまう可能性があります。その結果、損害賠償請求や知的財産権の使用に係る対価の支払い等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 訴訟等(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中~大)

当社では、当事業年度末現在において業績に影響を及ぼす訴訟や係争は発生しておりません。また、当社は法令違反となるような行為を防止するための内部管理体制を整備しております。しかしながら、当社及び当社の役員、従業員による法令違反の有無にかかわらず、予期せぬ訴訟等が発生する可能性があります。係る訴訟等が発生した場合は、その内容によって、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他のリスク

① ストック・オプションの行使による株式価値の希薄化(発生可能性:高、発生時期:短期、影響度:低)

当社は役職員等に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブ等を目的として、ストック・オプション(新株予約権)を発行しております。ストック・オプションが権利行使された場合には、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、当事業年度末現在、新株予約権による潜在株式数は1,225,600株であり、発行済株式総数である9,260,900株の13.23%に相当しております。

 

② 配当政策(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:低)

当社は、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を経営の重要課題として認識しております。しかしながら、当社は、成長過程にあると考えており、内部留保の充実及び事業拡大のための投資等に充当することが、株主に対する利益還元につながると考えております。将来的には、事業環境及び財政状態を勘案しながら、株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及び実施時期については未定であります。

 

③ 税務上の繰越欠損金、繰延税金資産について(発生可能性:低、発生時期:中期、影響度:中)

当社は、当事業年度末現在、税務上の繰越欠損金が3,985百万円存在しております。そのため、現在は通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が課せられておりません。今後、繰越欠損金の使用、又は期限切れによる繰越欠損金の解消により、課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の法人税率に基づく法人税、住民税及び事業税の負担が発生し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また当社は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討し、繰延税金資産を計上しています。しかしながら、将来の課税所得が予測と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合、また、税率変更を含む税制の改正等があった場合には、繰延税金資産の取崩しが必要となり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を経営の重要課題として認識しております。しかしながら、当社は、成長過程にあると考えており、内部留保の充実及び事業拡大のための投資等に充当することが、株主に対する利益還元につながると考えております。将来的には、事業環境及び財政状態を勘案しながら、株主に対する利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及び実施時期については未定であります。

 剰余金の配当を行う場合、年1回の期末配当を基本方針としており、その他年1回中間配当を行うことができる旨及び上記の他に基準日を定めて剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めております。また、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議によって定めることができる旨を定款に定めております。