リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資者の投資判断において重要であると考えられる事項については積極的に開示しております。
当社は、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の迅速な対応に努める方針でありますが、当社の株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載内容もあわせて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
当社はリスク管理委員会を設置しリスク管理にあたっております。同委員会は代表取締役社長の諮問機関であると同時に、具体的なリスク管理活動又は緊急時対応に関する執行機関であり、取締役、部長及び常勤監査役にて構成しております。委員長を代表取締役社長とし、四半期に一度定時会を開催するほか必要に応じて適宜開催し、当社のリスク管理体制の構築及び運用に関する各種施策のほか、クレーム・インシデント事案の対応について審議し、答申しております。また、緊急事態発生時においては、対応策に関する決定・指示機関として機能することを予定しております。
本項に記載している将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生する可能性のあるリスクの全てを網羅していることを保証するものではありません。
(1)事業に関するリスク
①介護市場の成長性(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社の主たる事業領域である介護関連市場は、人口動態としての超高齢社会の進展、要介護者と介護人材の需給ギャップの拡大、それらの課題解決のための技術革新や国主導のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進などの影響を受け、今後もさらなる市場規模の拡大が想定されます。しかしながら、今後の市場成長率は、介護に対する新たな法規制・政策の導入、関連市場の動向、景気変動による介護の担い手不足の深刻化など外的要因による影響を受けるため、これらの影響による市場成長率の鈍化により、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。当社としましては、介護施設向けのライフリズムナビ+Dr.に加え、在宅介護に向けたライフリズムナビ+HOME等、国が推進する地域包括ケアシステムの枠組みに合わせて事業を推進しつつ、さらに介護業界に留まらず蓄積した睡眠データをベースに、ソリューション事業領域の拡大を行うことで対応してまいります。また法規制等につきましては早期に改正内容を把握し、適宜顧問弁護士等の専門家の指示を仰ぎながら対応を進めていく予定です。
②競合の動向(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社の現在の主たる事業領域である介護施設見守りは、多数の既存事業者が存在するほか、今後も業種にかかわらず大手企業から高度に専門化した新興企業まで、様々な事業者による新規参入が見込まれます。当社は独自の睡眠データ解析技術、膨大な睡眠データ、ハードウェア/ソフトウェアの一貫開発メソッドを中核に、クラウド型かつセンサー複合型の高齢者施設見守りシステムとして競争優位性を保持しており、関連事業者の増大が直ちに競争上の脅威となるものではありません。しかしながら当社より優れたデータ解析技術、営業力、ブランド又は知名度を有する他の事業者の動向によっては、当社の期待通りに顧客を獲得・維持できないことも考えられます。
当社としましては、他の事業者と差別化を図ったサービスを開発・提供できるよう引き続き邁進してまいりますが、競争環境の激化等により、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
③当社の製品について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:中 )
当社の製品(センサー等)・サービスに欠陥等が生じた場合、当社の製品・サービスの質に対する信頼が悪影響を受け、当該欠陥等から生じた損害について当社が責任を負う可能性があるとともに、当社の製品の販売能力に悪影響を及ぼす可能性があり、当社の経営成績、財政状態及び将来の業績見通しに悪影響を及ぼす可能性があります。当社としましては、今後も継続して製品・サービス品質の維持向上に努めてまいります。
④当社製品の原材料、部品について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社の製品(センサー等)に関する原材料、部品の不足は、昨今の半導体不足に代表されるように急激な価格の高騰を引き起こす可能性があります。これらの市況価格の上昇は当社の製造コストの上昇要因であり、当社の経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。このリスクに対しては、市場流通在庫の把握や価格動向の定期的な調査を行うとともに、予算に基づく早期の発注を行い一定の在庫の確保に努めてまいります。
⑤業績の季節変動(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期、影響度:中)
日本国内では商習慣上3月を期末月とする法人が多く、また介護関連の補助金も年度区切りで展開されていることから、当社の顧客法人は3月末までに当社のサービス提供を求める例が多くみられます。そのため、当社の売上高は、当社の第2四半期(2月から4月まで)、特に3月に偏在する傾向があり、特定の四半期業績のみをもって当社の通期業績見通しを判断することは困難であります。また、補助金については国や自治体の方針により補助の金額や継続性が変動することがあり、当社の売上に影響を及ぼす可能性があります。当社としましては、新たに在宅介護向けのライフリズムナビ+HOMEの拡大を推進することで、季節変動の影響を受けにくい、年間を通した収益化を目指してまいります。
なお、当事業年度の当社の売上高及び営業利益の四半期会計期間毎の推移は以下の通りです。
|
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
通期 |
売上高(千円) |
309,163 |
516,109 |
161,367 |
99,603 |
1,086,242 |
営業利益(千円) |
142,031 |
274,553 |
6,049 |
△37,447 |
385,186 |
⑥システム障害(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短中期、影響度:高)
当社がクラウドで提供しているライフリズムナビ事業は、サービスの基盤をインターネット通信網に依存しております。したがって、自然災害や事故によりインターネット通信網が切断された場合には、サービスの提供が困難になります。サイバー攻撃等により当社サービス基盤への攻撃を受けた場合には、システム障害により事業遂行が困難になることや、事業上の重要機密が漏洩する可能性があります。また、予想外の急激なアクセス増加等による一時的な過負荷やその他予期せぬ事象によるサーバーダウン等により、当社のサービスが停止する可能性があります。これまで当社において、そのような事象は発生しておりませんが、今後このようなシステム障害等が発生し、サービスの安定的な提供が行えないような事態が発生した場合には、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。これらのリスクに関しましては、監視ツールの運用により障害を早期に発見可能な体制を整えている他、セキュリティシステムの導入やシステムの冗長化等による安定稼働の継続に努めております。
⑦知的財産権におけるリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社のビジネス上、当社独自もしくは共同開発を行った成果に対して特許、その他知的財産権は重要であります。当社は、サービスに関わる知的財産権の獲得に努めておりますが、当社の知的財産権が十分に保護されない場合には、当社の事業、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社による第三者の知的財産権侵害の可能性につきましては、可能な範囲で調査を行っておりますが、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。かかる場合のロイヤリティの支払や損害賠償請求等により、あるいは当社の知的財産が侵害された場合において、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。当社としましては、今後も知的財産の早期出願を行うとともに、他社の知的財産の調査を継続的に行い、必要に応じて弁理士等専門家の指示を仰ぎながら対応を進めていく予定です。
(2)経営管理体制に関するリスク
①人材の採用及び育成(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短中期、影響度:高)
当社は、事業の拡大に伴い、積極的に優秀なインフラやアプリケーション制作等のソフトウェア開発を行うエンジニア、睡眠データの解析を担うデータサイエンティスト、またライフリズムナビ事業を支えるカスタマーサクセス人材の採用・育成を進めております。しかしながら、事業規模の拡大に応じた当社における人材育成、外部からの優秀な人材の採用等が計画どおりに進まず、必要な人材を確保することができない場合には、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。当社としましては、継続して人材の採用を行っており、現時点におきましても各部ソフトウェアの拡充を行っておりますので、今後も事業の拡大に併せた採用及び育成を行ってまいります。
②特定の人物への依存(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:高)
当社の代表取締役社長渡邉君人は、経営戦略、事業戦略等当社の業務に関して専門的な知識・技術を有し、重要な役割を果たしております。当社では取締役会等において役員及び従業員への情報共有や権限移譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、経営体制の整備を進めており、経営に対するリスクを最小限にしております。しかしながら、渡邉が当社を退職した場合、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。当社におきましては、渡邉以外の経営メンバーへの権限移譲を日常的に実施しており、その依存度の分散を推進しております。
③内部管理体制(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短期、影響度:中)
当社は、企業価値の持続的な増大を図るために、コーポレート・ガバナンスが有効に機能するとともに、人材、資本、サービス、情報資産の適正かつ効率的な活用をすることが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要と認識しております。
そのためにも、当社では内部管理体制の充実に努めております。しかしながら、今後の事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
④コンプライアンス体制(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短中期、影響度:高)
当社は、企業価値の持続的な増大を図るために、コンプライアンス体制が有効に機能することが重要であると考えており、コンプライアンスに関する社内規程を策定するとともに、役員及び従業員を対象として社内研修を実施し、コンプライアンスの重要性の周知徹底を図っております。しかしながら、これらの取組みにもかかわらずコンプライアンス上のリスクを完全に解消することは困難であり、今後の当社の事業運営に関して法令等に抵触する事態が発生した場合、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
⑤情報管理(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短中期、影響度:高)
当社がライフリズムナビ事業で取り扱う情報の中には、高齢施設の重要かつ機密性が高い情報が含まれる場合があります。また、当社が提供するサービスやセンサーからの情報においては、原則的に施設入居者の個人情報を取り扱うことはございませんが、状況により取り扱う可能性がございます。これらの情報の取扱いについては、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)認証を取得し、情報管理に関する諸規程の整備及び適切な運用に努めておりますが、従業員及び委託先関係者の故意・過失、事故、災害、悪意をもった第三者による不正アクセス、その他予期せぬ要因等により情報の漏洩、不正使用または不適切な取扱が発生した場合、損害賠償責任やセキュリティシステム改修のための多額の費用負担を負う可能性及び当局による行政処分等の対象となる可能性があるほか、顧客からの信用を失うことにより取引関係が悪化する可能性があり、当社の事業、財政状態及び業績に重大な影響を与える可能性があります。当社としましては、情報管理に関する諸規程等の社内方針に沿って情報管理を徹底し、また、従業員に対する継続的な教育を行うことなどによって、より一層の適切な情報管理に努めてまいります。
(3)その他のリスク
①大規模な自然災害等(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短中長期、影響度:高)
当社は、有事に備えたBCPを設定し危機管理体制の整備に努め対策を講じておりますが、台風、地震、津波、感染症等の自然災害等が想定を大きく上回る規模で発生した場合、当社又は当社の取引先の事業活動に影響を及ぼし、当社の事業、財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
②新型コロナウイルス(COVID-19)等の感染拡大による影響(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短中期、影響度:中)
国内及び海外主要各国において、COVID-19の長期化による社会的な影響は様々な産業に及んでおり、一定の終息をみた現在においても、何らかの変化により景気の動向に影響を与える状況が続いております。当社のライフリズムナビ事業はCOVID-19等の感染拡大時においては非接触での遠隔見守りのニーズが増大する側面があり、比較的事業上の影響は軽微な傾向があります。
一方で当社では、感染症拡大の長期化に伴うリスクに対応するため、オンラインでの社内コミュニケーションの促進に努めるとともに、全社員に対して感染対策の徹底、感染疑いや体調不良時の就業に関する対応方針を周知し業務基盤を強化しております。
現時点において、COVID-19等の感染拡大は当社の事業展開及び経営成績に重大な影響を及ぼしておりませんが、今後何らかの感染症により当社の想定していない事業環境の変化を招き事業展開が計画どおりに進まない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
③訴訟等(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:短中期、影響度:中)
現時点において、当社において係争中の訴訟はありません。しかしながら、将来において当社の取締役、従業員の法令違反等の有無にかかわらず、予期せぬトラブルや訴訟等が発生する可能性は否定できません。かかる訴訟が発生した場合には、その内容や金額によって、当社の業績、財政状態及び事業展開に影響を与える可能性があります。顧問弁護士等と連携し、適切に対応してまいります。
④新株予約権の行使による株式価値の希薄化(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短中期、影響度:中)
当社では、当社の役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しており、本書提出日現在における発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は14.55%となっております。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の株式が発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
⑤配当政策(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:中長期、影響度:中)
当社は株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。しかしながら、当社は現在、成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、将来の事業展開及び経営体質の強化のための投資等に充当し、より一層の事業拡大を目指すことが、株主に対する最大の利益還元につながると考えております。将来的には、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び当社を取り巻く事業環境を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。
⑥資金使途(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
上場時に実施した公募増資による調達資金につきましては、人材確保費用、ハードウェア調達費用及び研究開発費(ハード・ソフト)等に充当する予定であります。
しかしながら、急激に変化する事業環境により柔軟に対応するため、現時点における計画以外の使途にも充当される可能性があります。また、計画に沿って資金を使用した場合でも想定通りの投資効果を上げられない場合、当社の経営成績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、配当は株主に対する利益の還元手段として重要な経営課題であると認識しております。したがって、将来の事業展開と経営基盤の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、経営成績及び財政状態を勘案して、配当を実施していくことを基本方針といたします。毎事業年度における配当の回数は中間配当と期末配当の年2回を基本としており、期末配当については株主総会が、中間配当については取締役会が決定機関であります。
しかしながら、当社は現在成長過程にあり、当面は株主に配当を実施するよりも、内部に留保することにより経営基盤の強化、事業拡大のための投資等に充当し、企業価値を向上させることが株主に対して最大の利益還元になるものと考えております。
当社は、設立以来配当を実施しておらず、今後においても当面の間は内部留保に努める方針です。内部留保資金については、将来の事業展開と経営基盤の強化のための資金として有効に活用していく所存であります。
なお、当社は、「取締役会の決議により、毎年4月30日を基準日として中間配当できる。」旨を定款に定めております。