2023年12月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

ホリゾンタルDX事業 自動車産業DX事業
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
ホリゾンタルDX事業 2,701 51.5 686 -235.6 25.4
自動車産業DX事業 2,543 48.5 -978 335.6 -38.4

事業内容

3【事業の内容】

 当社は「幸せを、後世に。」のミッションの下、社会に根付く事業作りを通じ、時代を超えて人々の幸せに貢献します。また、豊かで幸せな未来を次の世代に紡いでいくため、ビジョンを「日本を変革する矢」とし、絶え間なき自己変革を繰り返しながら、日本を良くするための事業に挑戦し、日本のDX課題を解決する「産業DXカンパニー」として、各種事業を展開しております。

 創業以来、当社はDX及びマーケティングを中心にインターネットを活用した各種技術、ノウハウを蓄積し、その強みを活用して、「ホリゾンタルDX事業」及び「自動車産業DX事業」を運営しております。今後も様々な領域で画期的な事業を生み出し続ける「事業家集団」として、デジタルマーケティングの知見を駆使した事業作りを続け、社会をより良く変えていくべく、取り組んでまいります。

 なお、「ホリゾンタルDX事業」及び「自動車産業DX事業」の2事業は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げる当社のセグメントの区分になります。「ホリゾンタルDX事業」及び「自動車産業DX事業」の事業内容等は以下のとおりです。

 

 

 

 

(1)ホリゾンタルDX事業

 社会構造の変化や、消費活動の多様化に伴い、企業におけるマーケティング活動は高度化、複雑化しており、企業においてはDX・マーケティング戦略の迷走や進行の遅延、業務効率化、広告効果の最大化、良質な広告出稿先の確保等のDX課題が生じており、それらに即したマーケティング施策を実行することが重要な経営課題になってきています。

 当事業では、創業以来培ってきたDXやマーケティングを中心とするインターネットを活用した技術・ノウハウを強みにして、顧客企業に対するコンサルティングサービスを主軸としつつ、生成AIによる業務自動化支援、メディア開発・運営及びデジタル広告に関するソリューション提供を通じた事業支援を行っております。

 

 

①DX&マーケティング事業

 DX&マーケティング事業では、インターネットを活用した顧客企業の売上成長・利益成長支援を行っております。具体的には、デジタル戦略コンサルティングによる顧客企業の課題特定と課題解決策としてのDX・マーケティングに関するコンサルティングや実行支援、メディア開発・運営支援、コンテンツマーケティング支援、ユーザー解析に基づくWebサイト改善コンサルティング支援、生成AIによる業務自動化支援等、顧客企業のニーズに応じインターネットを活用した様々なソリューションを提供しております。これらに加え、顧客企業のニーズに応じた提供メニューの拡充を継続的に行うことで、模倣難易度の高い事業構築を進めております。当社のコンサルティング実績は、当事業年度の取引実績で182社に及ぶとともに、顧客継続率は約92%(注1)となっており、顧客企業との円滑な関係構築による安定収益基盤を構築しております。

 また、当事業における幅広い業種業態の顧客企業に対する事業成長のためのDX・マーケティング/課題把握と課題解決策特定の知見は、新規事業の創出のみならず、他事業・領域における事業成長力や収益力向上に向けた取り組みにもつながっております。具体的には、自動車産業DX事業における各ステークホルダーとの業務オペレーションのDX化、AIを活用した効率化・自動化、エンドユーザー集客におけるインターネット活用やメディア&ソリューション事業におけるアプリ情報サイト「Appliv」のユーザー集客の効率化などは、当事業から派生する技術・ノウハウに基づくものとなっております。

 

②メディア&ソリューション事業

 メディア&ソリューション事業では、主に複数のメディアの開発・運営及びデジタル広告に関するソリューション提供を通じ、顧客の事業成長支援を行っております。

 当事業は、DX&マーケティング事業の技術・ノウハウを活用し、メディア開発・運営を通じた顧客の事業成長を支援する事業として、2012年に開始いたしました。6万件を超える(2023年12月末時点)スマートフォンアプリ情報を掲載する国内有数メディア「Appliv」(注2)、スマートフォンユーザー向けに役立つライフスタイル情報を豊富に掲載するメディア「Appliv TOPICS」(注2)、アプリを運営する事業者向けのデジタル広告ソリューション「NYLE TRIDE」(注3)などを通じて顧客の事業成長を幅広く支援しております。当社の運営するメディア群の月間ユーザー数は約760万人(2023年12月末時点)となります。

 

(注)1.ある月の6ヶ月前以前に取引のあった顧客の数を顧客数とし、また、そのうち当該月以前6ヶ月間において取引がない顧客の数を解約数として顧客数及び解約数を各月毎に計算のうえ、過去12ヶ月における顧客数の合計(延べ数)から同期間における解約数の合計(延べ数)を控除した数を当該顧客数の合計(延べ数)で除して算出した比率になります。

   2.Appliv及びAppliv TOPICSは、スマートフォンアプリ情報又はスマートフォンユーザー向けに役立つライフスタイル情報を掲載するメディアとなります。顧客企業の広告を掲載し、アプリのマーケティング支援(主にはメディア経由によるインストール報酬もしくはクリック報酬による)やその他顧客商品・サービスの販促支援を行うことで収益を計上しております。

   3.NYLE TRIDEは、顧客企業のデジタル広告の配信にあたり、連携した媒体への一括配信による工数削減と厳格な基準に基づくアドフラウド(無効な表示やクリックによって広告費用に対する成約件数や効果を不正に水増しする広告不正のこと)被害の最小化を提供することで広告効率を最大化することができるサービスです。当社は、顧客企業の広告配信における成果報酬条件とアドフラウド除外条件の調整及び各種媒体とのアドフラウド除外条件の折衝を通じた粗利を手数料として取得します。当事業の運営は、顧客企業の広告運用効果を最大化に貢献するとともに、当社技術・ノウハウの向上にも寄与しております。

 

(2)自動車産業DX事業

 自動車産業DX事業は、DX及びマーケティングの知見を活用して、自動車産業のDX化を推進する事業として、2018年に立ち上げた事業です。当事業では、「おトクにマイカー 定額カルモくん」の事業運営を主軸として、個人向けに日系メーカー全車種(注1)の新車及び中古車を取り扱っており、頭金やボーナス払なしで月1万円台からマイカーを利用できるサブスクリプションサービスを提供しています。

 従来、個人が自動車を購入する際には、ディーラーや自動車販売店の店舗を訪問する必要がありました。また、ディーラーや自動車販売店が取り扱うローンやリースなどの金融商品は、各社の提携ファイナンス会社が提供するケースが多く、与信の弱い個人は自動車金融商品(注2)を活用できない場合があります。

 当事業では、個人の車購入におけるプロセスをDX化することで、マイカー購買の手間暇を省力化するとともに、与信の弱い個人に対する自動車金融商品の提供可能性を模索することで、自動車領域における金融包摂サービスの提供を進めており、新車・中古車の販売市場における新たな市場創出に取り組んでおります。

 当社が提供する「おトクにマイカー 定額カルモくん」のビジネスモデル上の特徴は、以下のとおりです。

 

①自動車購入プロセスのデジタル化により実現した効率性の高い事業運営

 当事業ではマイカーのサブスクリプションに関して、車探しから料金シミュレーション、申込といった諸手続を24時間オンラインで受け付けております。また、納車についても顧客の自宅まで配送するというオペレーションを構築しており、実店舗に一度も来店する必要がなくマイカー利用を開始することが可能です。加えて、エンドユーザー、提携金融事業者、ディーラー、陸送事業者、損害保険事業者などのステークホルダーとの業務プロセスをDX化することで、エンドユーザーに向けた自動車購入プロセスのUI(注3)/UX(注4)の利便性を高めるとともに、実店舗を持たず効率性の高い事業運営を行っております。

 

 

②車両在庫を持たないアセットライトなビジネスモデルの構築

 上記のとおり、当事業においては、マイカーのサブスクリプションに伴うリース車両については、リース期間にわたり、提携金融事業者が保有するため、中古車リースの一部のスキーム(注5)を除き、当社は原則として車両在庫を持たないアセットライトなビジネスモデルを構築しております。

 

③契約獲得に伴うスポット収益と、契約期間中に計上される月額収益

 「おトクにマイカー 定額カルモくん」では、車両本体に加えてマイカーの利用中に発生する維持管理コスト等も含めて月額定額のサブスクリプションとするオプションなどを提供しており、顧客(注6)のニーズに沿ったプラン設計を行うことが可能です。

 当事業では、当社が提携する金融事業者と顧客間におけるリース契約の獲得を仲介することで、提携金融事業者からの初期紹介手数料として納車時にスポット収益を計上いたします。また、当社が提携する金融事業者とリース契約を締結したリース車両について、整備費用等のメンテナンスサービスを中心としたオプションをリース期間にわたり提供しており、顧客からその対価として定額の月額料金を受領しております。リース料金相当分は、当社が顧客から収納して提携金融事業者に分配しております。中古車リースの一部のスキームは、顧客からの契約申込に基づき、当社にてその中古車を一度仕入れて、提携金融事業者に車両を売却するため、車両売買収益も発生いたします。

 結果として、当事業においてはスポット収益(初期紹介手数料及び車両売買収益)により早期に顧客獲得コストを回収しながら、顧客からの月額収益を受け取ることで、安定的な収益を計上できるビジネスモデルが形成されています。なお、当事業年度の平均カスタマーチャーンレート(注7)は0.21%と低水準を維持しており、契約から生じる収益は長期にわたり安定的に生じることが期待されます。加えて、契約満期後に改めて当社サービスを再契約したいとの意向を持つ顧客がおり、契約満了後の再契約による追加収益を加味すると、当事業は長期的な時間軸の中で収益を計上していくとの予測を当社は持っております。当事業年度の新規顧客との平均契約期間は8.8年、顧客から受領する収益のうち当社に帰属する平均月額料金は5,039円となっております。当事業年度末時点において確保されている契約残高(注8)は、58億円になります。

 

 

 

④与信の弱い個人に向けた与信枠拡大の取り組み

 当社の自動車産業DX事業の顧客に対する与信判断は提携金融事業者にて行われておりますが、提携金融事業者と共に与信の弱い個人に向けた与信拡大の取り組みを行い、自動車金融商品を活用できない方々に向けたサービス開発を推進しております。

 

⑤一般的には自動車メーカー系ファイナンス会社が取り扱っていない最長11年・月額が安価なサブスクリプションプランを提供

 3〜5年の契約期間のローン商品を主体とする自動車メーカー系ファイナンス会社が多い中、日本人の平均新車保有期間は約9年(注9)となっております。長期にわたり1台の車に乗り続ける消費活動が一般的であることに加え、月額リース料が安価となる長期のカーリース契約には需要があります。そこで、当社は比較的契約期間の短いプランのみならず、最長11年の長期のプランまでのラインナップを用意して、様々な顧客のニーズに対応しております。

 

 当事業は、マイカーのサブスクリプション市場を含む個人向け自動車金融市場の持つ広大なTAM(注10)に加え、当社が培ってきたDX及びマーケティングの技術・ノウハウの活用によるオペレーション合理化、顧客からの認知度向上及びマーケティングコストの最適化により、2018年のサービス開始以降、契約件数は増加しております。当事業年度において契約価値粗利(CV)(注11)は平均661千円となり、契約獲得に係る広告宣伝費に対するROI(注12)は平均2.2倍、対CPA(注13)におけるペイバックピリオド(注14)は15ヶ月となっております。その結果、延べ契約件数(注15)は、2023年12月末時点において14,778台となっております。

 

(注)1.一部貨物車、商用車は取り扱っておりません。

   2.自動車金融商品とは、リースや残価設定ローン、マイカーローン、割賦販売による自動車の購入のための金融商品を指します。

   3.UIとはUser Interfaceの略で、ユーザーとサービスとの接点となるソフトウェアの操作画面などを指します。

   4.UXとはUser Experienceの略で、ユーザーがサービスの使用で得られる体験を指します。

   5.中古車リースの一部のスキームは、当社にて車両仕入れを行い、顧客との契約が決まった際に提携金融事業者に売却するスキームになっており、提携金融事業者への売却までの期間は当社の車両在庫になります。なお、人気車種を事前に当社にて仕入れを行う場合と顧客からの契約申込に基づき、車両を仕入れる場合がありますが、大半は顧客からの契約申込に基づく車両仕入であり、一時的な在庫として所有するものであります。

   6.2018年3月から2023年12月における当社の顧客属性は、8割強が7年以上の長期契約を選択しており、全国に分布しております。

   7.カスタマーチャーンレートは、解約件数を延べ契約件数から過去の解約件数を除いた契約件数で除して算出しております。

   8.契約残高とは、顧客との契約に基づき、顧客に対し、当社が負うメンテナンスサービスを中心としたオプションに関する残存履行義務の残高になります。

   9.出所:内閣府経済社会総合研究所「消費動向調査(2023年3月)」

   10.TAMとは、「Total Available Market」の略で、「ある市場で獲得できる可能性のある最大の市場規模」のことです。

   11.契約価値粗利(CV)は、スポット収益の平均粗利に、平均月額収益×12ヶ月に平均契約年数を乗じた金額からメンテナンス原価を減算した金額を加算して算出しております。なお、CVとはContract Valueの略であります。

   12.ROIとは、「Return On Investment」の略で、日本語では「投資収益率」や「投資利益率」と呼ばれています。当社では契約価値粗利(CV)を契約1件を獲得するために要した広告宣伝費の平均額で除して算出しております。

   13.CPAとは、「Cost Per Acquisition」又は「Cost Per Action」の略で、「顧客獲得単価」のことです。顧客や成果を獲得するために、1人当たりにかかった費用を指し、当社では契約1件を獲得するために要した広告宣伝費の平均額で算出しております。

   14.ペイバックピリオドとは、顧客獲得コストを回収して利益を生み出すまでの期間のことです。当社ではCPAからスポット収益を減算した数字を平均月額収益で除して算出しております。

   15.延べ契約件数とは、過去累計で獲得した契約件数であり、解約や満了を含んだ件数です。

 

[事業系統図]

 当社の事業系統図は以下のとおりであります。

 

 

 

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

①経営成績の状況

 当社は「幸せを、後世に。」のミッションの下、社会に根付く事業作りを通じ、時代を超えて人々の幸せに貢献します。また、豊かで幸せな未来を次の世代に紡いでいくため、ビジョンを「日本を変革する矢」とし、絶え間なき自己変革を繰り返しながら、日本を良くするための事業に挑戦し、日本のDX課題を解決する「産業DXカンパニー」として、各種事業を展開しております。

 創業以来、当社はDX及びマーケティングを中心にインターネットを活用した各種技術、ノウハウを蓄積し、その強みを活用して、「ホリゾンタルDX事業」及び「自動車産業DX事業」を運営しております。今後も様々な領域で画期的な事業を生み出し続ける「事業家集団」として、デジタルマーケティングの知見を駆使した事業作りを続け、社会をより良く変えていくべく、取り組んでまいります。

 当事業年度における日本経済におきましては、新型コロナウイルス感染症の第5類移行に伴い、対面イベントの増加、またインバウンド需要の回復などにより経済活動の正常化が進み、景気に緩やかな持ち直しの動きが見られました。一方で世界情勢におきましてはロシアによるウクライナ侵攻は収束の兆しが見えず、また中東ガザ地区においても紛争が勃発しております。これら情勢の影響による食料・エネルギー価格の高騰を原因とした物価上昇は消費動向にも一定の影響を与えており、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。

 このような環境のなか、当社が手掛ける事業は全体として堅調に推移し、全社として大幅な増収と赤字幅の縮小を実現しました。ホリゾンタルDX事業については、DX&マーケティング事業は体制拡充と受注の進捗により売上・利益ともに大幅に伸長するとともに、メディア&ソリューション事業については、運営するメディアのトラフィックも上昇傾向にあり、またデジタル広告ソリューションの売上が大幅に伸長し、事業全体としては着実に成長いたしました。また、自動車産業DX事業については、新車の半導体不足による新車納期の長期化については緩和されつつありますが、納期が明確な中古車ニーズが依然堅調に推移しております。当社では、ユーザー基盤の更なる拡大のため新車・中古車の契約獲得に注力し、サブスクリプション契約締結に伴う初期紹介手数料の向上や、広告宣伝費の抑制的なコントロールを通じた採算性の向上を実現し、結果として売上の大幅な成長と赤字幅の縮小を実現しました。

 その結果、当事業年度における売上高は5,244,053千円(前年度比26.7%増)、営業損失は677,163千円(前年度は1,336,839千円の営業損失)、経常損失は738,701千円(前年度は1,354,022千円の経常損失)、当期純損失は743,211千円(前年度は1,355,440千円の当期純損失)となりました。

 セグメントの経営成績は、次のとおりであります。

 

a.ホリゾンタルDX事業

 ホリゾンタルDX事業は、創業以来培ってきたDXやデジタルマーケティングに関する技術・ノウハウを強みにして、顧客企業に対するコンサルティングサービスを主軸にしつつ、生成AIによる業務自動化支援、メディア開発・運営及びデジタル広告に関するソリューション提供を通じた事業支援を行っているDX&マーケティング事業と、アプリレビューサイト「Appliv」やスマートフォンユーザー向けに役立つ情報をお届けする「Appliv TOPICS」などの情報メディア運営や、デジタル広告ソリューション「NYLE TRIDE」の提供を中心としたメディア&ソリューション事業から構成されています。

 当事業年度においては、DX&マーケティング事業において、既存顧客に対するアップセルが順調に拡大を続けたことを主な要因として、受注は堅調に拡大しました。また、コンテンツ体制の拡充を中心とした採用計画は予定通りに進捗したことで、当事業としてのサービス提供体制は順調に拡大しました。その結果、受注の増加とサービス提供体制の拡充がバランス良く進捗したことにより、売上・利益ともに大幅に伸長しました。

 またメディア&ソリューション事業において、情報メディアでは編集を中心とした組織体制の強化により、記事制作体制を一層強固なものとしてまいりました。主要検索エンジンにおけるアルゴリズムのアップデートの影響を受け「Appliv」にてトラフィックが一時停滞したものの、各種メディアへのコンテンツ投資強化により「Appliv TOPICS」をはじめとした他メディアにおけるトラフィックは上昇傾向にあり、メディア全体としてのトラフィックは上昇トレンドを形成しております。またデジタル広告ソリューション「NYLE TRIDE」では、既存広告主(クライアント)からの広告需要拡大により広告の取扱高は大幅に増加し、かつ当事業年度にて注力してまいりました複数の中規模案件を柱とする売上全体の構成戦略が、顧客基盤の拡大等の結果としても表れております。当事業全体としては売上・利益ともに大幅な成長を実現しました。

 この結果、当事業年度の経営成績は、売上高は2,701,043千円(前年度比19.5%増)、セグメント利益は686,360千円(前年度比73.8%増)となりました。

 

b.自動車産業DX事業

 自動車産業DX事業は、DX及びマーケティングの知見を活用して、自動車産業のDX化を推進する事業として、2018年に立ち上げた事業です。当事業では、「おトクにマイカー 定額カルモくん」の事業運営を主軸として、個人向けに幅広い車種の新車及び中古車を対象としたマイカーのサブスクリプションサービスを提供しています。従来、個人が自動車を購入する際には、ディーラーや自動車販売店の店舗を訪問する必要がありました。また、 ディーラーや自動車販売店が取り扱うローンやリースなどの金融商品は、各社の提携ファイナンス会社が提供するケースが多く、与信の弱い個人は自動車金融商品を活用できない場合があります。当事業では、個人の車購入におけるあらゆるプロセスをDX化することで、マイカー購買の手間暇を省力化するとともに、与信の弱い個人に対する自動車金融商品の提供可能性を模索することで、自動車領域における金融包摂サービスの提供を進めており、新車・中古車の販売市場における新たな市場創出に取り組んでおります。

 ビジネスモデルとしては、車両本体に加えてマイカーの利用中に発生する維持管理コスト等も含めて月額定額のサブスクリプションとするオプションなども幅広く提供しており、顧客のニーズに沿ったプラン設計を行うことが可能です。当事業では、当社が提携する金融事業者と顧客間におけるリース契約の獲得を仲介することで、提携金融事業者からの初期紹介手数料として納車時にスポット収益を計上いたします。また、顧客が、当社が提携する金融事業者とリース契約を締結したリース車両について、整備費用等のメンテナンスサービスを中心としたオプションをリース期間にわたり提供しており、顧客からその対価として定額の月額収益を受領しております。

 当事業においては、顧客獲得活動に係る費用が一時点で発生する一方、獲得された長期契約から生じる収益は契約期間にわたって計上されることから、拡大期においては費用が先行する構造にありますが、長期的な採算性を考慮して安定的な収益基盤構築に取り組んでおります。

 当事業年度においては、ユーザー基盤の更なる拡大のため新車・中古車の契約獲得に注力するとともに、初期紹介手数料の向上や、広告宣伝費の抑制的なコントロールを通じた採算性の向上を実現し、結果として売上の大幅な成長と赤字幅の縮小を実現しました。

 この結果、当事業年度の経営成績は、売上高は2,543,009千円(前年度比35.3%増)、セグメント損失は977,625千円(前年度は1,358,884千円のセグメント損失)となりました。

 

②財政状態に関する状況

(資産)

 当事業年度末における流動資産は2,943,396千円であり、前事業年度末に比べ438,566千円増加いたしました。現金及び預金が311,288千円増加したことが主な要因であります。

 当事業年度末における固定資産は214,748千円であり、前事業年度末に比べ24,360千円増加いたしました。投資その他の資産が23,801千円増加したことが主な要因であります。

 この結果、総資産は3,158,144千円となり、前事業年度末に比べ462,926千円増加いたしました。

 

(負債)

 当事業年度末における流動負債は1,022,625千円であり、前事業年度末に比べ160,034千円増加いたしました。未払費用が62,130千円、未払法人税等が35,396千円増加したことが主な要因であります。

 当事業年度末における固定負債は843,445千円であり、前事業年度末に比べ56,484千円増加いたしました。長期借入金が56,484千円増加したことが要因であります。

 この結果、負債合計は1,866,070円となり、前事業年度末に比べ216,518千円増加いたしました。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産は1,292,073千円であり、前事業年度末に比べ246,407千円増加いたしました。公募増資及び新株の発行により資本金及び資本準備金が991,067千円増加し、当期純損失を計上したことにより利益剰余金が743,211千円減少したことが主な要因であります。

 この結果、自己資本比率は40.5%(前事業年度末は38.3%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物は2,098,322千円となり、前事業年度末に比べ311,288千円増加いたしました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 税引前当期純損失738,903千円、棚卸資産の増加額69,865千円があった結果、営業活動によって支出した資金は668,231千円(前事業年度は1,472,040千円の支出)となりました。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 定期預金の払戻による収入40,000千円、定期預金の預入による支出40,000千円、投資有価証券の取得による支出3,000千円があった結果、投資活動によって支出した資金は841千円(前事業年度は95,053千円の収入)となりました。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 新規上場等の新株の発行による収入979,755千円、長期借入れによる収入400,000千円、長期借入金の返済による支出368,168千円があった結果、財務活動によって増加した資金は980,361千円(前事業年度は946,762千円の収入)となりました。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当事業年度の受注実績は、次のとおりであります。なお、「自動車産業DX事業」は当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載に馴染まないため、記載を省略しております。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年1月1日

 至 2023年12月31日)

受注高

(千円)

前年同期比(%)

受注残高

(千円)

前年同期比(%)

ホリゾンタルDX事業

1,552,198

144.2

621,115

155.3

自動車産業DX事業

合 計

1,552,198

144.2

621,115

155.3

(注)金額は販売価格によっております。当社はセグメント間の取引についてはありません。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2023年1月1日

 至 2023年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

ホリゾンタルDX事業

2,701,043

119.5

自動車産業DX事業

2,543,009

135.3

合計

5,244,053

126.7

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当事業年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

オリックス自動車株式会社

1,103,996

26.7

1,614,686

30.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、重要となる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。当社は、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、会計上の見積りを行っておりますが、見積りの不確実性により、実際の結果がこれら見積りと異なる可能性があります。

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。

 

③資本の財源及び資金の流動性

 当社は、主に自動車産業DX事業において、認知度の向上及びユーザー数の拡大をすべく、積極的に広告宣伝活動を実施してまいりましたが、今後も広告宣伝投資を継続して実施する方針です。当社の資金需要の一定割合は広告宣伝投資であり、必要な資金は自己資金、金融事業者からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定であります。

 

④経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑤経営者の問題意識と今後の方針に関して

 経営者の問題意識と今後の方針については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。