人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数4,335名(単体) 52,757名(連結)
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平均年齢43.8歳(単体)
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平均勤続年数19.7年(単体)
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平均年収6,783,723円(単体)
従業員の状況
5 【従業員の状況】
(1) 連結会社の状況
2024年3月31日現在
(注)1.従業員数には、臨時従業員及び企業集団外への出向者を含めておりません。
2.サービス・開発等の従業員数には、当社の本部部門等、全社共通の業務に従事する人員数が含まれております。
(2) 提出会社の状況
2024年3月31日現在
(注)1.従業員数には、臨時従業員及び出向者を含めておりません。
2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
3.サービス・開発等の従業員数には、当社の本部部門等、全社共通の業務に従事する人員数が含まれております。
(3) 労働組合の状況
当社グループには、古河電気工業労働組合をはじめとする労働組合が組織されており、全日本電線関連産業労働組合連合会(日本労働組合総連合会加盟)等に所属しております。なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。
(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
① 提出会社
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
② 連結子会社
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
③ 提出会社・国内連結子会社グループ
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ共通
当社グループは、2030年におけるありたい姿「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、ビジョン2030)を定めております。ビジョン2030の達成に向け、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指すESG経営を推進しています。
2023年度は、従業員一人ひとりが誇りを持って働き挑戦し続けるために、当社グループの理念体系を見直し、当社グループの存在意義を示した「古河電工グループ パーパス」を制定し、2024年4月19日から施行しています。2022年度に若手従業員を中心に「パーパス制定プロジェクトチーム」を立ち上げ、これまでに日本国内はもとより海外グループ会社(米国、欧州、南米、中国、東南アジア)を対象に、合計30回、100人以上の従業員との対話を実施しました。また取締役会でも複数回の議論を重ねてきました。今後は、パーパスの浸透活動を通じて、従業員一人ひとりがその内容や意義を理解し、グループ全体にパーパスへの共感を醸成する取組みを進め、従業員エンゲージメント向上や組織実行力を高めることを目指していきます。
パーパスの本文については、「1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](1)会社の経営の基本方針」を参照してください。
① ガバナンス
当社グループのサステナビリティに関する議論を集約し、実行の質・スピードをさらに高めることを目的として、「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ委員会は、委員長を社長、副委員長を戦略本部長、委員を経営層で構成され、サステナビリティに関する基本方針、収益機会・リスクのマテリアリティに関する基本的事項、サステナビリティに関する基本的な情報開示等の当社グループのサステナビリティに関する課題についての審議及び当該事項に関する進捗状況の確認をし、取締役会に提案・報告を行っています。事務局はサステナビリティ推進室が担当し、原則、年に2回開催します。リスクのマテリアリティに関する事項は、当社グループの経営上のリスクとも密接に関わることから、リスクマネジメント委員会と連携して対処しています。
また、取締役会には、気候変動や人的資本、知的財産を含めたサステナビリティに関する業務の執行状況を四半期ごとに報告・共有しています。なお、サステナビリティ委員会や経営会議の議題は、取締役会の実効性評価の実施結果や株主・機関投資家からのフィードバック等も踏まえて、設定しています。
<当社グループのサステナビリティに関する主な議論>
<ESG連動報酬>
当社では、取締役の選解任や評価、経営陣の報酬に関する審議等を行う任意の委員会として、委員の過半数及び委員長を社外取締役とする指名・報酬委員会を設置しており、2023年度は同委員会を6回開催しました。社外取締役及び監査役以外の役員等への報酬については、ESGへの取組み結果をより直接的に反映すること等を目的に役員報酬制度を一部改定し、2023年7月から運用を開始しています。改定後の報酬項目は、基本報酬、短期業績連動報酬(個別)、短期業績連動報酬(全社)、ESG連動報酬及び中長期業績連動報酬で構成され、ESG連動報酬は、当社グループが対処すべき経営上の重要課題(マテリアリティ)におけるサステナビリティ目標の達成状況を評価項目としています。報酬総額に占めるESG連動報酬の割合は、報酬項目毎に定めた標準報酬水準の合計額を100%とした場合、役位毎に2~3%で設定されています。
初年度である2023年度は、「温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2)」に関する目標(2017年度比21.2%削減)の達成有無を評価項目としています。なお、ESG連動報酬として採用する評価指標については、指名・報酬委員会で定期的に確認・見直しを実施しております。
詳細については、「4[コーポレートガバナンスの状況等](4)役員の報酬等」を参照してください。
② 戦略
<古河電工グループのESG経営とマテリアリティ>
※ 当社グループのESG経営において、「マテリアリティ」は、ビジョン2030を達成するために当社グループが対処すべき経営上の重要課題と定義しており、財務・会計上における重要課題(業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のある項目)とは、異なる意味で使用しています。
<マテリアリティの特定>
収益機会の観点から、当社グループが事業活動を通じて様々な社会課題を解決していくためには、プロダクト・アウト重視の姿勢から脱し、マーケット・イン、更にアウトサイド・インのアプローチへの転換が必要不可欠と考え、「社会課題解決型事業の創出」をマテリアリティとして特定しました。その具体例として、ビジョン2030で描く社会の基盤となる「次世代インフラを支える事業の創出」、カーボンニュートラルやサーキュラー・エコノミーの実現に貢献する「環境配慮事業の創出」をサブ・マテリアリティとしています。また、自ら積極的に変革する企業を目指すという思いと知的資産の活用等を通じた絶え間ないイノベーションの創出を表した「Open, Agile, Innovative」と、外部との共創に注力する「多様なステークホルダーとのパートナーシップの形成」を社会課題解決型事業の創出に向けた経営上の重要課題として、マテリアリティに特定しています。
一方、リスクの観点からは、企業が持続的な成長をしていく上で「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」は必須であるため、環境(E)のマテリアリティとしています。また、自ら積極的に変革する企業になるための「人材・組織実行力の強化」を社会(S)のマテリアリティ、コーポレートガバナンス、グループガバナンス、サプライチェーンマネジメント及び人権・労働慣行をサブ・マテリアリティとする「リスク管理強化に向けたガバナンス体制の構築」をガバナンスのマテリアリティとしています。
<マテリアリティの特定プロセス>
マテリアリティの特定及び見直しは、Step1~Step3 のプロセスで行います。まず、Step1では「外部要因」と「内部要因」を参考に社会課題を洗い出し、重複項目を整理した上で項目リストを作成します(現在、29項目に整理されています)。Step2では「株主・投資家にとっての重要度」と「ビジョン2030達成にとっての重要度」の2軸に対して重要度評価(高・中・低)をし、優先順位付けを行います。Step3で、優先度の高い項目をマテリアリティ項目として特定します。特定したマテリアリティ項目は、ビジョン2030達成に向けた重要課題として収益機会及びリスク側面で類型化・再整理し、収益機会のマテリアリティ及びE・S・G各々のリスクのマテリアリティとして表現します。
2023年度は、生物多様性及び自然資本に対する昨今の社会的要請の高まりを受け、「生物多様性(陸域/海洋・河川)」を「ビジョン2030達成にとっての重要度」の低領域から中領域に評価し直しました。
<2030年に向けた価値創造プロセス>
当社グループは「古河電工グループ パーパス」、「Core Values」及び「古河電工グループCSR行動規範」に基づき、企業活動を展開しています。2030年のありたい姿を描いた「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、ビジョン2030)から遡るバックキャスティングによって示された2025年の姿に向かって、現在からのフォワード・ルッキングの考え方で策定された「中期経営計画2022-2025」(以下、25中計)を確実に実行していきます。25中計では、特定したマテリアリティごとに2025年度の目指す姿を定め、それらを実現する施策を策定するとともに、進捗を測定・管理するサステナビリティ指標と目標を設定しています。
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するために、資本効率を意識した事業の強化と創出、資本コスト低減に向けた経営基盤の強化を行います。
当社グループは、現在「メタル」「ポリマー」「フォトニクス」「高周波」の4つのコア技術を強みに、特定市場に限定されない開発力と提案力によって、お客様の信頼を培ってきました。知的資産の活用を含めた当社グループの強みの強化と外部パートナーとの共創による新しいビジネスモデルの構築をOpen, Agile, Innovativeに推進していきます。
まず、2025年に向けて、情報・エネルギー・モビリティ分野での収益を安定化させ、社会課題解決型事業の強化を通じて成長し、情報/エネルギー/モビリティの融合社会へ貢献していきます。具体的には、25中計の目標達成のため、特に情報通信ソリューション事業に注力するとともに、各事業の収益拡大に向け、引き続き収益性・成長性等の観点から投資配分の最適化を進め、事業ポートフォリオの見直しを含む、資本コストをより意識した経営管理と意思決定を一層加速していきます。
さらに、2030年に向かって、ビジョン2030で描く融合社会の基盤となる「次世代インフラを支える事業」、カーボンニュートラルやサーキュラー・エコノミーの実現に貢献する「環境配慮事業」等の社会課題解決型事業の創出によって飛躍をしていきます。具体的な例として、Beyond5G社会に対応するため、フォトニクス技術及び高周波技術を活かし、次世代の情報通信環境において必要となる光電融合の実現に向けた光半導体デバイス等の開発を進め、オール光ネットワークと高効率エネルギー社会の実現に貢献します。また、安全でサステナブルなエネルギーの供給に貢献する核融合発電関連製品の共同研究開発等を進めます。さらに、カーボンニュートラルの実現に貢献するために、化石資源を使用しないグリーンLPガス(※)について引き続き研究開発に取り組みます。加えて、社会インフラ維持管理向けデジタルソリューションについて、顧客への提案活動を進めるとともに、更なる高度化を目指します。
※ グリーンLPガス:バイオガス(家畜の排泄物や生ゴミ等を発酵させた際に発生するメタンガスと二酸化炭素)を原料に生成したLPガスのこと。
一方、「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」は、低炭素経済への移行を支援する一連の目標と行動である気候移行計画を策定し、それに基づいたカーボンニュートラル実現への取組みを実行していきます。また、「人材・組織実行力の強化」は、人材に対するグループ・グローバル共通の考え方である「古河電工グループPeople Vision」に基づき、従業員エンゲージメントの要素を含む人材・組織実行力調査を実施し、これをモニタリングツールとして、人材マネジメントに関わる取組みを強化していきます。「リスク管理強化に向けたガバナンス体制の構築」は、当社グループ全体のリスクマネジメントのみならず、サプライチェーンマネジメントと人権マネジメントに関わる取組みも強化していきます。
※1 4つのコア技術:メタル、ポリマー、フォトニクス、高周波
※2 知的資産の活用強化を含む。
※3 B5G:Beyond5G
③ リスク管理
<サステナビリティ関連機会及びリスクの管理>
25中計において、各々のマテリアリティにおける2025年度の目指す姿を実現するためのサステナビリティ指標(KPI)と2025年度サステナビリティ目標を設定しております。
収益機会・リスクのマテリアリティの対応状況やサステナビリティ指標の進捗状況は、サステナビリティ委員会と取締役会に半期ごとに報告・共有されています。また、サステナビリティ推進室長は、マテリアリティやサステナビリティ指標の進捗状況、サステナビリティ指標や目標の妥当性等について各担当部門と定期的(原則、年に2回)に対話をし、目標に達しない見込みの指標を担当している部門に対しては、対応策や改善策の作成と実行を促しています。
収益機会のマテリアリティ:
「Open, Agile, Innovative」及び「多様なステークホルダーとのパートナーシップの形成」の進捗を測定するサステナビリティ指標として、「新事業研究開発費増加率」と「事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率」を設定し、新事業創出に向けた基盤整備を推進しています。「事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率」の詳細については、「(4)知的財産」を参照してください。
また、「社会課題解決型事業の創出/環境配慮事業の創出」の詳細については、「(2)気候変動」を参照してください。
リスク(ガバナンス)のマテリアリティ:
「リスク管理強化に向けたガバナンス体制の構築」の進捗を測定するサステナビリティ指標として、事業等のリスク項目を含む「全リスク領域に対するリスク管理活動フォロー率」を設定し、統制活動による改善を推進しています。さらに、特に強化すべきリスク管理としてガバナンスのサブ・マテリアリティに掲げているサプライチェーンマネジメントと人権マネジメントは、それぞれに対応したサステナビリティ指標を「主要取引先に対するCSR調達ガイドラインに基づくSAQ(※)実施率」及び「管理職に対する人権リスクに関する教育実施率」と設定し、進捗状況や対応策をフォローしています。
サプライチェーンマネジメントに関しては、2021年度から当社の主要取引先56社を対象にCSR調達ガイドラインに基づくSAQを開始し、2022年度以降、国内外グループ会社の取引先へ対象範囲を拡大させています。当社が高リスクと設定した調査項目に該当する取引先に対しては、ヒアリング等の対話を通じて状況を再確認し、必要に応じて是正していただくように働きかけを行っています。
人権マネジメントに関しては、2021年度に当社グループの人権課題として優先すべき対象ステークホルダーを「従業員」と「取引先」として、人権デューディリジェンスを実施しています。従業員については職場でのハラスメントを課題とし、内部通報やコンプライアンス意識調査の結果を分析し、必要な改善策を実施しています。また、改善策の一つとして2022年度から当社及び国内外グループ会社の管理職層を対象とした「差別・ハラスメント教育」を実施しており、サステナビリティ指標「管理職に対する人権リスクに関する教育実施率」として設定しています。2023年度に実施したコンプライアンス意識調査の結果を分析し、2024年度は改善策の効果を検証する予定です。一方、取引先については主要取引先に対するCSR調達ガイドラインに基づくSAQの実施によって、当社がサプライチェーン上の人権リスクと設定した調査項目に該当する取引先の把握を行っています。現時点では、本調査の結果で人権に負の影響を与える重大な問題は発見されていません。
※ SAQ(Self-Assessment Questionnaire) : 自己評価調査。
リスク(環境)のマテリアリティ:
「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」の詳細については、「(2)気候変動」を参照してください。
リスク(社会)のマテリアリティ:
「人材・組織実行力の強化」の詳細については、「(3)人的資本(多様性を含む。)」を参照してください。
<全社経営戦略(25中計)・全社リスクマネジメントへの統合>
資本効率を意識した事業の強化と創出に向け、資本効率を重視した事業ポートフォリオの変革を推進することを目的とした「事業ポートフォリオ検討委員会」を2022年度から設置しています。事業ポートフォリオ検討委員会は、戦略本部長(委員長)、財務本部長(副委員長)及び営業統括本部長で構成され、中期経営計画における各事業の位置づけ等、事業ポートフォリオの変革に関する重要事項を審議し、経営会議に提案・報告を行っています。事務局幹事は経営企画部長が担当し、原則、年に3回開催しています。2023年度は、ビジョン2030の達成に向けたありたい事業ポートフォリオについての検討を開始し、ビジョン2030の具体化を進めています。
資本効率重視の経営を推進するために、各事業を評価する管理指標として、投下資本利益率(ROIC)や投下資本利益額(FVA)(※1)を導入しています。事業ポートフォリオ最適化に向け、成長性(売上高平均成長率)と収益性(ROICスプレッド)の視点で明確にした各事業の現状の位置づけと合わせ、将来の成長性、当社の競争力及び炭素効率性(GHG(※2)排出量売上高原単位)を加味した上で、M&Aを含む成長を模索、撤退有無の判断等、必要なアクションを迅速に進めています。また、事業別FVAの資本コストの算出には、財務要素に加えて「気候変動」(※3)や「人権・労働慣行」等のESG要素も組み込まれています。事業別FVAは毎年振り返りや見直しを行い経営会議に報告され、事業ポートフォリオ最適化や経営資源配分等に活用しています。
※1 FVA(Furukawa Value Added) : EVAを当社向けにアレンジし、社内管理指標として2022年度より導入。
※2 GHG(greenhouse gas):温室効果ガス
※3 具体的には、事業別の「GHG排出量」及び「GHG排出量売上高原単位」を考慮。
当社グループ全体のリスク管理は、委員長を社長、副委員長をリスクマネジメント本部長、委員を経営層で構成した「リスクマネジメント委員会」を設置し、当社グループのリスク管理、内部統制、コンプライアンスについての課題を審議し、監督・推進する体制をとっています。同委員会では、経営視点及びオペレーショナル視点のリスク評価等によりリスクを俯瞰し、全社的に対応すべき重要リスクを定めています。リスクのマテリアリティに関連する「気候変動」、「人材・組織」及び「人権・労働慣行」は、経営視点の重要リスクとして認識し、対応しています。
詳細については、「3 [事業等のリスク]」を参照してください。
④ 指標と目標
<サステナビリティ指標と目標>
2023年度のサステナビリティ指標は、環境調和製品売上高比率、新事業研究開発費増加率及び従業員エンゲージメントスコア(単体)を除き、2023年度目標を達成あるいは達成の見込みです。
環境調和製品売上高比率の2023年度実績は65.9%でした。自動車部品関連製品を中心に環境調和製品売上高全体は前年度実績に比べ増加しましたが、情報通信関連製品の主に北米市場での需要減による売上の低下により、当年度目標66%に対しては僅かに未達となりました。2024年度以降も環境負荷の低減に寄与する・良い影響を与える本環境調和製品の売上拡大を進めます。
新事業研究開発費増加率(2021年度基準)の2023年度実績は121%で、前年度実績116%より増加したものの、当年度目標125%には達しませんでした。これは、新事業の実証・検証プロセスや共創による案件立上げが集中したため、これらを優先したことに起因するものです。2024年度以降も、新事業創出に向けた基盤整備に必要な研究開発活動を推進していきます。
従業員エンゲージメントスコア(単体)の2023年度実績は63で、当年度目標65に対して未達成でした。従業員エンゲージメントスコアについては2023年度からグループ全体で把握ができるようになったため、単体のみで設定していた2024年度以降の目標をすべて単体からグループへ拡大しました。2025年度の到達目標はグループで80と設定し、単体だけではなくグループ全体で従業員エンゲージメントが高い状態を目指していきます。
※1 2022年時点で設定した事業強化・新事業創出テーマに関して、全件実施を意味します。
※2 2025年目標を前倒しました。
※3 2024年度から基準年度が2021年度に変更になりますが、従来の2017年度基準に当てはめた場合の削減目標も参考値として示しています。
※4 2023年度に対象範囲を国内外グループ会社へ拡大し、単体目標からグループ目標に変更しました。
※5 新規採用者は新卒採用者及びキャリア採用者を示し、その対象は管理職層、総合職、一般職です。
※6 各年度30%程度維持することを意味します。
※7 各年度100%を継続することを意味します。
(2)気候変動
① ガバナンス
リスクのマテリアリティである「気候変動に関するビジネス活動の展開」に関する事項は、当社グループの経営上のリスクとも密接に関わることから、サステナビリティ委員会、リスクマネジメント委員会及びその特別委員会である古河電工グループ環境委員会(以下、環境委員会)や中央防災・BCM推進委員会が連携して対処しています。
気候変動や自然災害等の気候関連リスクは、環境リスクの最重要課題として位置づけ、気候関連リスクへの事前対策については主に環境委員会、リスク発生後の事業継続対策については主に中央防災・BCM推進委員会で定期的に議論されています。
環境委員会は、委員長をリスクマネジメント本部長とし、事業経営を担当する統括部門長や事業部門長、本部長等の経営層によって、3ヶ月に1回定期的に開催され、気候変動に関連する課題等を審議し、経営会議や取締役会に提案・報告します。
中央防災・BCM推進委員会は、委員長をリスクマネジメント本部長とし、事業部門長や事業所長等の委員によって、3ヶ月に1回定期的に開催され、事業継続マネジメント(BCM)の構築、自然災害等を含む事業継続リスクの特定をし、その特定プロセスを推進・管理しています。
また、気候変動に関する業務の執行状況については、取締役会に四半期ごとに報告・共有されています。
<当社グループの気候変動に関する主な議論>
② 戦略
<気候関連リスク及び機会の分析対象事業>
当社グループは、TCFD提言が推奨する「2℃以下のシナリオを含む異なる気候関連のシナリオを考慮した組織戦略のレジリエンス」を示すために、2019年度から気候関連リスク(移行リスク、物理リスク)及び機会を特定し、中期経営計画をベースラインとして、2℃以下のシナリオを含む異なる気候関連のシナリオ分析を実施しています。2019年度は環境省が実施する「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」に参加し、インフラ事業(情報通信ソリューション事業の光ファイバ・ケーブルとエネルギーインフラ事業の電力ケーブル)からシナリオ分析を開始しました。以降、2020年度は自動車部品事業、2021年度はAT・機能樹脂事業と銅条・高機能材事業、2022年度はファイバ・ケーブル事業と電力事業、2023年度は、銅箔事業と電池事業、ファイテル製品事業のシナリオ分析を完了しました。引き続き事業分野別に段階的に対象事業の拡大を進めています。
<気候関連リスク及び機会の項目の特定プロセス>
気候関連リスクと機会の特定は、Step1~Step3のプロセスで行います。まず、Step1では「外部情報」と「内部情報」を参考に、当社グループのみならずサプライチェーンの上流及び下流も含めて気候関連リスクと機会の項目リストを作成します。Step2では洗い出した項目に対して、「当社グループに与える影響度」を点数化し優先順位を付けます。Step3で、優先度の高い項目を気候関連リスク・機会の項目として特定します。特定した気候関連リスク・機会の項目は1.5℃シナリオや4℃シナリオにおける影響パラメーターを用いて、2030年度における事業への影響度評価を行います。
<シナリオ群の選択>
TCFD提言が推奨する「2℃以下のシナリオを含む異なる気候関連のシナリオ」を検討するに当たり、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照し、2021年度までは「2℃以下シナリオ」と「4℃シナリオ」の検討を進めてきました。2022年度からは、2050年カーボンニュートラルへの取組みを加速するため、環境目標2030を改定し、SBT1.5℃認定にも申請したことに伴い、選択するシナリオを「1.5℃シナリオ」と「4℃シナリオ」に見直しました。
<気候関連リスク及び機会の期間の定義>
<シナリオ分析の概要>
<当社グループのカーボンニュートラル実現に向けた取組みと気候移行計画の策定>
気候関連の機会及びリスクを特定し、収益機会の獲得とリスクの低減の両面からカーボンニュートラル実現に向けた取組みを進めています。2021年10月にTCFDより公表された「指標、目標、移行計画に関するガイダンス」を踏まえ、2023年度から低炭素経済への移行を支援する一連の目標と行動である気候移行計画の策定を開始しました。
リスクの対応策については、長期目標として環境ビジョン2050を策定し、事業活動における温室効果ガス排出量(スコープ1、2)を2050年ゼロにするチャレンジ目標とバリューチェーン全体で温室効果ガス排出量を削減することを目標に掲げています。そこからのバックキャスティングによる環境目標2030、25中計のサステナビリティ目標において温室効果ガス排出量削減の目標を設定しています。事業活動における温室効果ガス排出量(スコープ1、2)削減に対する取組みでは、工場の省エネや燃料転換を進めるとともに、サステナビリティ指標として「全電力使用量に占める再生可能エネルギー比率」を設定し、再生可能エネルギーの利用比率向上に向けた取組み(水力発電の活用、太陽光発電設備の設置、再生可能エネルギー由来電力の導入)を進めています。2023年度は、環境ビジョン2050と環境目標2030の達成に向けた気候移行計画策定の一環として、エネルギーロードマップの作成に着手しました。
収益機会の対応策については、25中計期間において既存事業の収益安定化と新事業創出に向けた基盤整備を進め、2030年にはそれぞれの分野における社会課題を解決するとともに、カーボンニュートラル実現に貢献していきます。例えば、通信トラフィック急増に伴う5G/B5G整備加速に対しては、情報通信分野の開発力と提案力を強みとしたフォトニクス新製品を創出し、大容量情報通信と高効率エネルギー社会の同時実現に貢献します。洋上風力発電等の再生可能エネルギー普及拡大に不可欠な海底ケーブルや地中ケーブルの供給・布設によるカーボンニュートラル実現への貢献、次世代エネルギー導入拡大に向けた技術開発に対しては、グリーンLPガス創出技術によるカーボンニュートラルの実現と地産地承(※)できる社会基盤の構築への貢献や、高温超電導線材の開発によって化石燃料に代わる新エネルギー源として期待されている核融合エネルギーの推進等に取り組んでいます。
※ 地産地承:地産地消に加えて地域の資源や文化を次世代に承継すること。
③ リスク管理
<気候関連リスク及び機会の管理>
リスク及び収益機会のマテリアリティである「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」及び「環境配慮事業の創出」の進捗を測定するサステナビリティ指標として、「温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2)」、「電力消費量に占める再生可能エネルギー比率」及び「環境調和製品売上高比率」を設定し、半期ごとにサステナビリティ委員会にて、これらの指標の進捗状況と対応策をフォローしています。
2020年度から事業部門ごとに環境目標2030に沿ったGHG排出量の目標を、2022年度からは事業部門ごとのGHG排出量売上高原単位の目標も定め、四半期ごとに経営会議で「GHG排出量」と「GHG排出量売上高原単位」の進捗状況をフォローしています。
インターナルカーボンプライシング(Shadow price)は、2019年度から事業部門ごとのGHG排出量を炭素価格(2023年度は2万円/トンCO2eを適用)によって試算し、四半期ごとの環境委員会での評価・掲示効果により、脱炭素化に向けた気候変動リスク回避への準備を促しています。また、2023年度より、各事業部門がGHG排出量目標に対して未達成となった場合、再生可能エネルギー調達コスト増加分を各事業部門で負担するルールを定め、目標に達しない見込みの事業部門に対して再生可能エネルギーの導入計画の策定を促進しています。
<全社経営戦略(25中計)・全社リスクマネジメントへの統合>
当社は、事業ポートフォリオ最適化のプロセスや事業別FVAの資本コストの算出において、財務要素に加えてESG要素である「GHG排出量」及び「GHG排出量売上高原単位(炭素効率性)」を活用しています。
詳細については、「(1)サステナビリティ共通③リスク管理」を参照してください。
当社グループ全体のリスク管理において、「気候変動(カーボンニュートラル)」は経営視点でのリスク項目として掲げております。
詳細については、「3 [事業等のリスク]」を参照してください。
④ 指標と目標
<古河電工グループ環境ビジョン2050>(2021年3月策定)
環境ビジョン2050では、環境に配慮した製品・サービスの提供及び循環型生産活動を通じ、バリューチェーン全体で持続可能な社会の実現に貢献することを掲げています。脱炭素社会への貢献としては、バリューチェーン全体で温室効果ガス排出削減を目指し、2050年の事業活動における温室効果ガス排出量(スコープ1、2)ゼロを、チャレンジ目標としています。
<環境目標2030>(2022年11月改定)
環境ビジョン2050の実現に向け、マイルストンとなる環境目標2030を設定しています。脱炭素社会への貢献として、以下の2030年目標を掲げています。
(1)事業活動における温室効果ガス排出量(スコープ1、2) :2021年度比42%以上削減
(2)バリューチェーンにおける温室効果ガス排出量(スコープ3):2021年度比25%以上削減
スコープ1:自社工場・オフィスからの直接排出
スコープ2:自社が購入した電力、熱等の使用による間接排出
スコープ3:スコープ1、2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
<実績と目標> ★はサステナビリティ指標
2023年度は、2022年度から積極的に進めている再生可能エネルギーの導入をさらに進めました。当社光ファイバ・ケーブル三重工場に導入した実質再生可能エネルギー由来電力の利用に伴う年間の温室効果ガス排出削減量(スコープ2)は20,000トンCO2e以上を見込んでいます。その他の当社事業所及び国内外の生産拠点においても太陽光発電設備の設置や購入電力の再生可能エネルギーへの転換を進め、「温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2)」及び「電力消費量に占める再生可能エネルギー比率」の2023年度目標は達成の見込みです。
※1 当社グループが排出する温室効果ガスは、主にエネルギー起源による二酸化炭素(CO2)と六フッ化硫黄(SF6)です。
※2 2024年度から基準年度が2021年度に変更になりますが、従来の2017年度基準に当てはめた場合の削減目標も参考値として示しています。
(3) 人的資本(人材の多様性を含む。)
<人と組織に関する基本的な考え方(古河電工グループPeople Vision)>
当社グループでは、従業員一人ひとりが誇りを持って挑戦し続けるために、グループの理念体系を見直し、当社グループの存在意義を示した「古河電工グループ パーパス」を2024年3月に制定しました。このパーパスの実現に向けた人と組織のありたい姿として「古河電工グループPeople Vision」を位置づけ、多様な人材一人ひとりの成長が当社グループの成功の原動力であり、チームで成果を生み出すことを通じて個人と組織がともに成長する事を目指しています。
パーパスの本文については、「1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](1)会社の経営の基本方針」を参照してください。
① ガバナンス
リスクのマテリアリティである「人材・組織実行力の強化」に関する事項は、当社グループの経営上のリスクのみならず,経営戦略に直結する最も重要な経営上の重要課題であることから、戦略本部長(CSO)をトップとした人事戦略の遂行体制を確立し、経営会議での執行と討議、決議を行っています。2023年度は、エンゲージメント、リスキリング施策、自律的なキャリア形成の観点での社内公募の導入、組織設置基準の見直しといった組織のあり方等、人事政策に関する14件の議題につき、経営会議にて報告・討議を実施しました。
また、経営課題に直結する個別のテーマについては、社長あるいはCSOを委員長とした委員会を設置し、戦略の策定と活動計画の決定、施策の実行を推進しています。高度な専門性を持つ人材を認定する「プロフェッショナル任用委員会」、働き方改革やダイバーシティ&インクルージョンを促進する「HK(※)・D&I委員会」、労働安全衛生に関する「古河電工グループ安全衛生委員会」を設置しています。
こうした業務の執行状況については、取締役会に定期的に報告・共有されています。
※ HK:働き方改革
<当社グループの人的資本に関する主な議論>
② 戦略
<25中計における人材マネジメント戦略>
経営戦略・事業戦略の実行にあたり、対話を通じた成長ベクトルのすり合わせを行うことで、個人と組織がともに実行力を向上させ成長するとともに、社会課題を解決しビジョン2030を達成します。(図1)
(図1)古河電工グループの人材マネジメント戦略
個人と組織がともに成長していくためには、「魅力的な個人」と「魅力的な組織」であることが必要不可欠であると考えています。組織は個人が活躍する場をつくり、伝え、そこで活躍していくための成長を支援します。そして、個人がその場(組織や職場環境)に魅力を感じてもらい、さらに活躍し続けてもらうと同時に、組織の持続的な成長・成功につなげていくことを目指します。そのために、人と組織について6つの視点・要素から働きかけを行い、活動の全体像を把握するとともに、日常の事業活動の中で、意識的に改善に向けた取組みを推進していきます。(図2)
(図2)人と組織の成長に向けた具体的活動の枠組み
<具体的な活動>
■組織構造・人員構成、採用・配置■
経営戦略・事業戦略に必要な組織体制及び人材の獲得・定着を目指し、後継者育成、要員管理の取組みを展開しています。
(1)サクセッションプランと育成計画の立案
経営人材及び各組織の部長候補の育成を目的として、サクセッションプランと育成計画を策定し、実行しています。経営人材については、外部アセスメントを活用した人材プールの形成や外部研修への派遣を進めるとともに、育成計画に基づくタフアサインメントを含む計画的な異動を進めています。また、社外取締役が過半を占める指名・報酬委員会において、経営人材育成の仕組みの適正性及び運用状態をモニタリングするとともに、執行役員の登用やCEOサクセッションプランに関して複数年かけて計画的に取り組んでいます。部長層のサクセッションプランについては、2023年度に全組織にてサクセッションプランと育成計画の策定まで完了しました。2024年度は、さらに部長候補へのパイプラインを意識した課長層のサクセッションプラン策定と育成について、各組織と人事部門との議論を進めます。
(2)採用力の向上
① キャリア採用
経営戦略、事業戦略の実行に向けた多様な人材の確保という観点で、キャリア採用活動に継続的に注力して取り組んでいきます。
② 新卒採用
採用環境の変化に加え、就職に対する学生の意識変化もあり、人材獲得競争は激しさを増しています。学生に対する訴求力向上の一環として、初任配属時の職種をある程度限定した「コース別採用」を導入しました。配属する職種を限定することで、キャリアパスの解像度を高め、個々人の成長イメージを描きやすくし、多様な考えを持った優秀な人材の獲得を推進していきます。
■情報の流れ・調整・意思決定の仕組み■
■業務スキル・職務遂行能力■
経営戦略・事業戦略の実現と、多様な人材の挑戦と成長を支援する両面の観点から、各種施策を展開しています。
(1)人材育成
① リスキリング施策
2023年度には、事業戦略を実現するために組織と個人、双方の成長の観点から必要とされる能力・スキルと現状とのギャップの可視化、及び能力・スキル獲得に向けた仕組みづくりについて、経営層や各組織と議論し、当社グループのリスキリングの定義を「新規・既存問わず、業務遂行に置いて必要な知識・スキルを自律的に学ぶこと」としました。
具体的には、個人のスキル習得・成長のプロセス(図3)を支援するために、「一部の個人が、決まったタイミングと回数と場所で、全員で一律のスキルを学ぶ環境」から、「個人が、いつでも、どこでも、何度でも、多種多様なスキルを学ぶことができる環境」へ変更し、その機会提供を可能にする新たなEラーニング・システムを2024年度に全社導入することを決定しました。これにより、個人がいつでも多種多様なスキルを学習できるコンテンツを提供し、さらに各種研修カリキュラムとの連携や、職場や組織の垣根を超えた学び合いの機会を創出すること等、個人の自律的な学びの支援を進めていきます。
(図3)個人のスキル習得・成長のプロセス
② グローバル人材育成体系
「グローバルビジネスリーダー(GBL)研修」を2006年度から開始し、2013年度からは、グローバル人材の育成の観点を強化した「グローバルマインドセットプログラム(GMP)」に衣替えして継続実施しています。また、海外の現地従業員を対象に「グローバルデベロップメントプログラム(GDP)」を2010年度から実施しており、グループの結びつきの強化を狙って、一部のカリキュラムをGMPと合同で実施しています。
さらに、2014年度からは一定期間にわたり若手従業員を海外に派遣する「グローバル・チャレンジ・プログラム(GCP)」を開始し、多様な人材の確保と成長の場を提供しています。
(2)キャリア形成支援
① キャリアサポート室
2021年度にキャリアサポート室を立ち上げ、年代・階層別のキャリアデザイン研修やキャリア形成に役立つセミナーの開催、個別のキャリア面談実施等、既存の人事制度と連携しながら従業員の自律的キャリア形成を支援する取組みを行っています。
② 個人がキャリアを選択する仕組み
2021年度より社内副業制度(Fキャリアチャレンジ)を運用開始しており、業務の20%を上限に、自ら手をあげて、興味あるプロジェクトに参加することで、自身の成長・やりがい・キャリア形成に結び付けてもらう仕組みとしています。制度はじまって以来48プロジェクト、112名が参加しており、受け入れ部門によい刺激を与え、本人のモチベーションが向上し、送り出し部門にも良い影響を与えています。
2023年度は、より従業員の自律的なキャリア実現を加速させるため、従業員が自ら手をあげ異動をすることが可能な社内公募制度を試行導入し、社内求人数57件に対して応募者数34名、マッチング数10名となりました。結果を踏まえて2024年度に本導入を決定しています。
■コミュニケーション・組織風土■
(1)ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進
D&Iを「人材・組織実行力の強化」における重要な要素と位置づけ、社長直下のHK・D&I委員会を設置し、全社を挙げて積極的な取組みを展開しています。
① 女性活躍推進
企業成長の基盤として特に意思決定層の多様性確保が重要と考え、管理職層の女性比率を25中計におけるサステナビリティ指標に設定し、取組みを進めています。女性従業員の絶対数が少ないことを最大の課題と捉え、採用から中核人材の育成・登用まで、すべての局面でパイプラインを維持・強化する取組みを粘り強く進めるとともに、女性自身やその上司がキャリアアップを前向きに捉えられるよう、上司のリーダーシップ変革、フィードバック強化、柔軟な働き方の整備、自律的なキャリア形成支援といった全社的な組織風土・環境整備も並行して実施しています。
② 働き方改革
生産性と働きがいの向上をねらいとする「ワークスタイル変革」と、当社グループのCore Valuesの体現を促進することを狙いとした「組織風土改革」の両面から、さまざまな施策を推進しています。
2023年5月には、新型コロナの5類感染症移行に伴い、コロナ禍以降の働き方に関する方針を策定しました。今後も従業員の働きがいと生産性向上を目指し、リモートワークと対面の双方のメリットを最大限活用するハイブリッドなワークスタイルを推進していきます。
③ 障がい者雇用推進
社会的責務を果たすだけでなく、企業成長の基盤として多様な人材や組織の可能性を追求するD&Iの観点から、障がい者の方に働いていただける環境の拡大を目指し、積極的な取組みを進めています。
グループ各社及び特例子会社古河ニューリーフ㈱での雇用拡大と、リモートワークやバリアフリー等の職場環境や働き方の更なる改善を進め、より働きやすい環境を整備していきます。
グループ全体での取組みとしてグループ適用拡大を進めています。2023年度は、障がいを持つ方が従事している職務が限定的であるということを重点課題として、職域拡大を目的に古河ビジネス&ライフサポート㈱をグループ適用会社として追加しました。
(2)安全衛生と健康経営の推進
① 従業員の安全・衛生
主に労働災害 、交通事故、疾病等による、従業員の死亡、就業不可、障がいの残存、長期休業、体調不良といったリスクを認識し、事業継続の大前提として「安全と健康を全てに優先する」との考えから様々な施策を展開しています。安全については災害ゼロに向けた3つのアプローチ(①安全人間化教育による安全知識の付与と実践、②本質安全化活動による設備の安全化推進、③安全管理レベルの向上による安全組織の構築)により安全推進活動を進めています。
② 「健康経営の推進」
健康経営を、従業員一人ひとりが身体的・精神的・社会的に良好な状態(well-being)を目指すことと定義し、従業員の活力やパフォーマンスが上がることが組織や企業の成長にもつながるとの考えのもと、全社一丸となって健康経営の諸施策を推進しています。当社グループでは、経営的な視点から、戦略的に従業員の健康管理・健康づくりに取り組む「健康経営」を推進していくため、2017年に「古河電工グループ健康経営宣言」を制定し、従業員が健康意識を高め、自らの健康づくりに積極的に取り組んでいくための支援を行っています。具体的には、以下のようなユニークな取組みを行っています。
・2025年に向けた「産業保健の中期5ヵ年計画」を策定し、ヘルスリテラシー向上・喫煙対策・メタボリック対策・メンタルヘルス対策・身体機能向上施策、熱中症対策、化学物質管理体制構築施策等の様々な施策を各拠点で展開し従業員の健康づくり活動を推進
・従業員一人一人の健康意識を相互に高めるため、社内の挨拶には製造業として愛着のある「ご安全に!」とともに「ご健康に!」を使用
・2015年に「喫煙対策5か年計画」を策定、2020年に全社で敷地内全面禁煙を達成
これらの活動が評価され、2017年から8年連続で「健康経営優良法人」に認定されています。
(3) 理念浸透
当社グループが持続的に成長していく上で、特に大事にし、より強化していきたい価値観をCore Valuesとして定めています。Core Valuesの浸透に向けたワークショップを定期的に開催するとともに、日常的な会議の場での振り返り等を行い、浸透に向けた取組みを継続して実施しています。
なお、当社グループでは、従業員一人ひとりが誇りを持って挑戦し続けるために、グループの理念体系を見直し、当社グループの存在意義を示した「古河電工グループ パーパス」を2024年3月に制定しました。今後はパーパスの浸透活動を通じて、グループ全体にパーパスへの共感を醸成する取組みを進めます。
■リーダーシップ・チームマインド■
「チームで成果を上げる」組織を目指し、2020年に「良いチームをつくる」リーダーとなるための大事な1つの心構えと6つの行動原則「古河電工流上司心得七則(フルカワセブン)」を定めました。役員及び課長以上の管理職が周囲に「行動宣言」し日々実践するとともに、360度フィードバックによる振り返りを実施し、さらなる行動変容に繋げています。取組みを開始して4年が経過し、リーダーの意識・行動に良い変化が見られ、チームにおけるメンバーの関係性が改善してきました。今後は、チーム活動と成果との結びつきによりフォーカスし、チーム力のさらなる強化に向けた取組みを加速していきます。
■エンゲージメント■
(1)従業員エンゲージメント測定と活用
2022年度より従業員エンゲージメントスコア調査として、「フルカワEサーベイ」を開始しました。「フルカワEサーベイ」における「持続可能なエンゲージメント」のスコアを25中計におけるサステナビリティ指標として目標を設定し、各種施策を着実に実行していきます。
(2)報酬制度の見直しと評価への納得度の向上
2021年12月に「チャレンジの促進」「シンプル&オープン」「人材育成」をコンセプトとした人事処遇制度の改定を実施し、報酬制度を見直し、個人のやりがいを高められるよう、制度運用の強化に取り組んでいます。
① 個々人の挑戦意欲と健全な社内競争を喚起することを目指し、給与制度を年功による積み上げ型から、現在発揮している能力や意識姿勢を評価し昇降給があるゾーン型の給与体系に見直しました。
② 人事考課に関連するコミュニケーションプロセスを改めて規定し、上司は一人ひとりの成長に繋がるよう、評価と改善点について責任あるフィードバックを通して評価納得度を高めています。
(3)フィードバックの強化
2021年度の人事制度改定では、目標管理制度の運用見直しを行いました。具体的には、期首には従業員一人一人にチャレンジングな目標を掲げるよう促し、期中には上司の支援やフィードバックの頻度をあげるよう意識づけしました。PDCAサイクルを短くし、頻繁なフィードバックを行うことで、人材育成と業績向上の両面に良い影響を与える運用に変更しました。期末には日常の業務遂行状況をもとに上司部下の面談の場で一人一人に良い点と改善点のフィードバックを行い、翌年度の動機づけに繋げています。
2022年度結果より人事考課点を全従業員に通知しています。2023年度に実施したモニタリング結果(回収率76%)では、2022年度期末面談実施率は98%、「事実に基づいたフィードバック」の実感度、「期末評価」への納得度は共に、「納得できる」「ある程度納得できる」の回答割合が90%を超え、フィードバックがなされていることを確認しました。今後も目標管理の実施状況をモニタリングし、運用を継続改善します。また、現場の運用上の悩みへの人事のアドバイスや好事例の共有等のフォローを充実させ、個々人が主体的に高い目標に挑戦し、自身の成長と組織への貢献を感じられるよう、活動を進めていきます。
③ リスク管理
<人材・組織関連リスク及び機会の管理>
当社グループは、2022年度より人材・組織実行力調査 「フルカワEサーベイ」を実施して人材・組織の状態を可視化し、その結果は毎年経営会議にて報告・討議されています。結果を踏まえた改善施策を事業活動に反映するというPDSサイクル(※)を回すことで、リスクの低減及び収益機会の獲得を推進しています。
また、「フルカワEサーベイ」における「持続可能なエンゲージメント」のスコアは、サステナビリティ指標「従業員エンゲージメントスコア」として設定されており、「管理職層に占める女性比率」及び「新規採用者に占めるキャリア採用比率」も含めて、サステナビリティ委員会で進捗状況と対応策がフォローされています。
このような定期的なリスクアセスメントを適切に実行し、その結果を踏まえてリスク認識を都度改めながら各施策の取組みに反映しています。現状のリスク認識については「人材・組織」「人権・労働慣行」は経営視点の重要リスクとして認識しています。さらに、「従業員の安全・衛生」はオペレーショナル視点の重要リスクと認識しています。そして、それらへの施策は前述「②戦略<具体的な活動>」の中に織り込み取り組んでいます。
※ PDSサイクル:Plan Do Seeサイクル
④ 指標と目標
<実績と目標>
■組織構造・人員構成、採用・配置■
新規採用者に占めるキャリア採用比率(管理職層、総合職、一般職)は、経営戦略、事業戦略の実行のための多様な人材の確保と成長事業の強化という観点で、各組織の採用要請をすり合わせながら継続的に注力して取り組んでいます。2023年度実績は48.8%と目標30%を超える水準となっています。
■エンゲージメント■
2023年度の従業員エンゲージメントスコアはグループ全体で76、単体で63でした。2023年度から直接作業者及び海外関係会社の対象範囲を拡大した影響に加えて、ビジネス環境の影響や改善活動進捗に応じて組織によりスコアが上がった部門と下がった部門があり全体としては大きな変化が見られませんでした。
2024年度は単体及び国内グループ会社を改善活動の優先対象とし、サーベイ結果の分析を踏まえて、単体では部門長や上司が戦略や目標をしっかり伝え、従業員一人一人が自分事化して仕事に向き合える状態をつくることを重点課題として取組みを加速します。
なお、エンゲージメントスコアについては調査対象を拡大し、グループ全体の状況が把握できるようになったことから、単体のみで設定していた2024年度以降の目標を単体からグループへ拡大しました。2025年度の到達目標はグループで80と設定し、グループ全体でエンゲージメントが高い状態を目指していきます。
■組織風土・コミュニケーション■
管理職層に占める女性比率の2023年の実績は5.4%と目標の5.0%を達成しました。採用から育成・登用までのパイプラインの維持・強化に向けて、2023年度には各部門と対話を重ね、候補人材をリストアップし、個別育成計画の作成に着手しました。
<参考指標>
■業務スキル・職務遂行能力■
■エンゲージメント■
■組織風土・コミュニケーション■
※1 国内グループは単体を含む。一部、関係会社で他社からの出向者の数字を含まない。
※2 2023年度より算出基準を「取得率=当年度内に育休を開始した人数÷出産者の人数」として提示。
2022年度までは「取得率=育休取得中の人数÷出産者の人数」として提示していたため、表記の2022年度実績も2023年度の算出基準に合わせて変更済み。また、産前産後休暇取得者は育休取得者には含まない。
※3 2023年度より「当年度復職者の平均取得日数」を提示。2022年度までは「当年度育休取得者の平均取得日数」を提示していたため、表記の2022年度実績も2023年度の算出基準に合わせて変更済み。
(4)知的財産
当社グループでは、特許やノウハウ等の知的財産、さらに人的資産、組織力、顧客ネットワーク等を含む、当社の強みとなる知的資産を重要な経営資源と位置付け、その活用を図ることを目的に、以下の3つの柱からなる基本方針を定めています。事業・研究開発・知的財産を三位一体として、グループ・グローバルな知財活動を推進しています。
<古河電工グループの知財戦略>
3つの基本方針
(1) IPランドスケープによる経営・事業戦略策定力の強化:
知財情報を戦略策定プロセスに取り込んで解析・活用するIPランドスケープにより、経営・事業戦略策定力を強化します。
(2) オープン&クローズ戦略による知的資産活用:
オープン&クローズ戦略による知的資産活用を起点に、知的資産を創出・蓄積し、事業・コア技術を保護する活動サイクルを、IPランドスケープによる環境分析で変化を捉えながら回すことで、事業競争力を強化します。
(3) 知財リスク低減による事業遂行の安定化:
権利侵害リスク、技術流出リスク、契約リスク、技術模倣リスクの4つを、影響度及び頻度の高い知財リスクとして認識し、継続的なリスク低減に努め、事業遂行を安定化します。
① ガバナンス
当社グループは、研究開発本部長を委員長とする「全社知財推進委員会」を設置し(原則、年に1回開催)、全社の知財活動方針を決定するとともに、事業部門及び研究部門に置かれた知財総括責任者を中心に知財活動を推進しています。
社長をはじめとする業務執行を指揮する役員に対しては、研究開発本部長が主催する「知財戦略会議」(原則、年に2回以上開催)にて、全社の知財戦略に関わる提案・報告を実施するとともに、知的財産部長が主催する「知財総括責任者会議」(原則、年に1回開催)にて、全社の知財戦略に沿った活動の決定をしています。また、各事業部門長に対しては、知的財産部長が主催する「知財戦略対話」(原則、年に2回開催)にて、各事業部門の知財戦略に関わる情報共有・共創を実施しています。
こうした業務の執行状況については、取締役会に四半期ごとに報告・共有されています。
<当社グループの知的財産に関する主な議論>
② 戦略
当社グループは、知財戦略である3つの基本方針を踏まえ、「古河電工グループ ビジョン2030」の達成に向けて、チャンスマキシマム(事業機会拡大)とリスクミニマム(事業安定化)の2つの観点から、知財活動を推進しています。
<チャンスマキシマム:IPランドスケープ(※)>
当社グループは、「IPランドスケープによる経営・事業戦略策定力の強化」を知財戦略の第1の柱に掲げています。自他社の知財情報等を用いて競争環境・市場環境を分析することで、新しい事業分野・ビジネスモデルを探索する活動を推進しています。
下図に示すように、既存市場・既存製品の領域(A領域)は、資本効率重視による既存事業の収益最大化を目指し、IPランドスケープで戦略の確からしさを判断しています。一方、新規市場や新規製品に関わる領域(B・C・D領域)は、開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備を目指し、IPランドスケープで戦略の策定力を強化しています。このように、リスクミニマムの観点に加えて、チャンスマキシマムの観点で、IPランドスケープを活用しています。
※ IPランドスケープ:経営戦略又は事業戦略の立案に際し、(1)経営・事業情報に知財情報を取り込んだ分析を実施し、(2)その結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること(引用:特許庁「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究報告書」)
<リスクミニマム:知的財産ポートフォリオ>
当社グループ固有の差別化技術を知的財産権・技術ノウハウで保護し、ビジネスリスクを最小化します。
社会課題解決型事業の強化による成長を実現するため、情報・エネルギー・モビリティでは、詳細な競合分析に基づく知的財産ポートフォリオの構築とその活用を徹底し、2025年に向けた資本効率重視による既存事業の収益最大化を支えます。
当社の保有する知的財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権)の約半数が、光ファイバ・ケーブル(ファイバ・ケーブル事業部門)、電力ケーブルシステム(電力事業部門)、ワイヤハーネス(自動車部品事業部門)、半導体製造用テープ(AT・機能樹脂事業部門)に関係するポートフォリオになります。これらの事業でオープン&クローズ戦略による知的資産活用と、知財リスク低減による事業遂行の安定化を遂行します。
③ リスク管理
<知財リスクマネジメントシステム>
当社グループのCSR行動規範には、①知的財産権の保護、②秘密情報の管理、の2つが含まれます。
CSR行動規範に則り、詳細な競合分析に基づく知的財産ポートフォリオの構築(前述)とその活用を徹底するとともに、技術情報流出防止等グローバルな知財リスク低減活動を推進しています。このようなリスクミニマムの仕組みとして、次の3つのステップによる知財リスクマネジメントシステムを導入しています。
知財リスク評価は、各事業部門の重点知財活動製品を、①事業を妨害されないための知財網があるか、②他社の権利を使っていないか、③技術ノウハウ漏洩対策ができているか、等の観点で、原則、年に1回見直すとともに、リスク管理活動計画のひとつとしてリスクマネジメント委員会に報告しています。
なお知財リスクは下記の4つに分類し、継続的にリスク対応を喚起することで、事業遂行を安定化しています。
④ 指標と目標
<チャンスマキシマム:IPランドスケープ>
知的資産を活用するチャンスマキシマムの観点が経営レベルで実行されていることを確認するため、収益機会のマテリアリティのサステナビリティ指標として、「事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率」を設定し、全件実施(100%)を目指しています。
IPランドスケープ実施率は、2023年度末時点で77%を達成しています。具体的には「2025年に向けた資本効率重視による既存事業の収益最大化」(光ファイバ・ケーブル、電力ケーブルシステム等)及び「2030年までに実現する新事業創出に向けた基盤整備」(グリーンLPガス等)に関するテーマ等、事業戦略の確認や事業化構想の立案、顧客アクセスの足掛かり等優先度が高いと判断されたテーマについて実施しました。
※1 2022年時点で設定した事業強化・新事業創出テーマに関して、全件実施を意味します。
※2 2025年度目標を前倒ししました。
<リスクミニマム:知的財産ポートフォリオ>
※3 光ファイバ・ケーブル、電力ケーブルシステム、ワイヤハーネス、半導体製造用テープを含むファイバ・ケーブル事業部門、電力事業部門、自動車部品事業部門、AT・機能樹脂事業部門の合計
<参考指標>