人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数4,433名(単体) 51,167名(連結)
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平均年齢43.5歳(単体)
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平均勤続年数19.1年(単体)
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平均年収6,984,561円(単体)
従業員の状況
5 【従業員の状況】
(1) 連結会社の状況
2025年3月31日現在
(注)1.従業員数には、臨時従業員及び企業集団外への出向者を含めておりません。
2.サービス・開発等の従業員数には、当社の本部部門等、全社共通の業務に従事する人員数が含まれております。
(2) 提出会社の状況
2025年3月31日現在
(注)1.従業員数には、臨時従業員及び出向者を含めておりません。
2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
3.サービス・開発等の従業員数には、当社の本部部門等、全社共通の業務に従事する人員数が含まれております。
(3) 労働組合の状況
当社グループには、古河電気工業労働組合をはじめとする労働組合が組織されており、全日本電線関連産業労働組合連合会(日本労働組合総連合会加盟)等に所属しております。なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。
(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
① 提出会社
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
② 連結子会社
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
③ 提出会社・国内連結子会社グループ
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ共通
当社グループは、2024年3月、経営の判断軸となり、従業員一人ひとりが誇りを持って働き挑戦し続けるために当社グループの存在意義を示した「古河電工グループ パーパス」(主文:「つづく」をつくり、世界を明るくする。)を制定し、これまでの理念体系を見直しました。制定に向けては、若手従業員を中心に「パーパス制定プロジェクトチーム」を立ち上げ、海外グループ会社(米国、欧州、南米、中国、東南アジア)も含めた合計30回、100人以上の従業員との対話を行い、また取締役会でも複数回の議論を重ねました。そして現在、従業員一人ひとりにパーパスの内容や意義を理解してもらい、共感を醸成するための浸透活動に取り組んでいます。この活動を通じて、従業員エンゲージメントや組織実行力を高めるとともに、パーパスを軸に定めた2030年におけるありたい姿「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、ビジョン2030)の達成に向けた取組みを実行し、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指しています。
パーパスの本文については、「1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](1)会社の経営の基本方針」を、パーパスの浸透活動については、「(3)人的資本(人材の多様性を含む。)」を参照してください。
① ガバナンス
当社グループは、サステナビリティに関する議論を集約し、実行の質・スピードをさらに高めることを目的として、「サステナビリティ委員会」を設置しています。サステナビリティ委員会は、委員長を社長、副委員長を戦略本部長、委員を経営層で構成され、サステナビリティに関する基本方針、収益機会・リスクのマテリアリティに関する基本的事項、サステナビリティに関する基本的な情報開示等の当社グループのサステナビリティに関する課題についての審議及び当該事項に関する進捗状況の確認をし、取締役会に提案・報告を行っています。幹事はサステナビリティ推進室が担当し、原則、年に2回開催します。リスクのマテリアリティに関する事項は、当社グループの経営上のリスクとも密接に関わることから、リスクマネジメント委員会と連携して対処しています。
また、取締役会には、気候変動や人的資本、知的財産を含めたサステナビリティに関する業務の執行状況を四半期ごとに報告・共有しています。なお、サステナビリティ委員会や経営会議の議題は、取締役会の実効性評価の実施結果や株主・機関投資家からのフィードバック等も踏まえて、設定しています。
<当社グループのサステナビリティに関する主な議論>
※ 上記はサステナビリティ活動全体に関する主な議題を掲載しています。
「(2)気候変動」「(3)人的資本(人材の多様性を含む。)」「(4)知的財産」に関する主な議題は各ページを参照ください。
<ESG連動報酬>
当社では、社外取締役及び監査役以外の役員等への報酬については、ESGへの取組み結果をより直接的に反映すること等を目的に役員報酬制度を一部改定し、2023年7月から運用を開始しています。改定後の報酬項目は、基本報酬、短期業績連動報酬(個別)、短期業績連動報酬(全社)、ESG連動報酬及び中長期業績連動報酬で構成され、ESG連動報酬は、当社グループが対処すべき経営上の重要課題(マテリアリティ)におけるサステナビリティ目標の達成状況を評価項目としています。報酬総額に占めるESG連動報酬の割合は、報酬項目毎に定めた標準報酬水準の合計額を100%とした場合、役位毎に2~3%で設定されています。
2024年度は、「温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2)」に関する2023年度目標(2017年度比21.2%削減)の達成有無を評価項目としました。なお、ESG連動報酬として採用する評価指標については、指名・報酬委員会で定期的に確認・見直しを実施しており、2025年度からは「従業員エンゲージメントスコア」を評価項目に追加します。
詳細については、「4[コーポレートガバナンスの状況等](4)役員の報酬等」を参照してください。
② 戦略
<古河電工グループのESG経営とマテリアリティ>
※ 当社グループのESG経営において、「マテリアリティ」は、ビジョン2030を達成するために当社グループが対処すべき経営上の重要課題と定義しており、財務・会計上における重要課題(業績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のある項目)とは、異なる意味で使用しています。
<マテリアリティの特定>
収益機会の観点から、当社グループが事業活動を通じて様々な社会課題を解決していくためには、プロダクト・アウト重視の姿勢から脱し、マーケット・イン、更にアウトサイド・インのアプローチへの転換が必要不可欠と考え、「社会課題解決型事業の創出」をマテリアリティとして特定しました。その具体例として、ビジョン2030で描く社会の基盤となる「次世代インフラを支える事業の創出」、カーボンニュートラルやサーキュラー・エコノミーの実現に貢献する「環境配慮事業の創出」をサブ・マテリアリティとしています。また、自ら積極的に変革する企業を目指すという思いと知的資産の活用等を通じた絶え間ないイノベーションの創出を表した「Open, Agile, Innovative」と、外部との共創に注力する「多様なステークホルダーとのパートナーシップの形成」を社会課題解決型事業の創出に向けた経営上の重要課題として、マテリアリティに特定しています。
一方、リスクの観点からは、企業が持続的な成長をしていく上で「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」は必須であるため、環境(E)のマテリアリティとしています。また、自ら積極的に変革する企業になるための「人材・組織実行力の強化」を社会(S)のマテリアリティ、コーポレートガバナンス、グループガバナンス、サプライチェーンマネジメント及び人権・労働慣行をサブ・マテリアリティとする「リスク管理強化に向けたガバナンス体制の構築」をガバナンスのマテリアリティとしています。
<マテリアリティの特定プロセス>
マテリアリティの特定及び見直しは、Step1~Step3 のプロセスで行います。まず、Step1では「外部要因」と「内部要因」を参考に社会課題を洗い出し、重複項目を整理した上で項目リストを作成します(現在、29項目に整理されています)。Step2では「株主・投資家にとっての重要度」と「ビジョン2030達成にとっての重要度」の2軸に対して重要度評価(高・中・低)をし、優先順位付けを行います。Step3で、優先度の高い項目をマテリアリティ項目として特定します。特定したマテリアリティ項目は、ビジョン2030達成に向けた重要課題として収益機会及びリスク側面で類型化・再整理し、収益機会のマテリアリティ及びE・S・G各々のリスクのマテリアリティとして表現します。
<2030年に向けた価値創造プロセス>
当社グループは「古河電工グループ パーパス」、「Core Values」及び「古河電工グループCSR行動規範」に基づき、企業活動を展開しています。2030年のありたい姿を描いた「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、ビジョン2030)から遡るバックキャスティングで中間地点として定義した2025年の姿に向かって、フォワード・ルッキングの考え方で策定した「中期経営計画2022-2025」(以下、25中計)を実行しています。25中計では、特定したマテリアリティごとに2025年度の目指す姿を定め、それらを実現する施策を策定するとともに、進捗を測定・管理するサステナビリティ指標と目標を設定しています。
当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を実現するために、資本効率を意識した事業の強化と創出、資本コスト低減に向けた経営基盤の強化を行っています。
詳細は「1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](2)経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題」を参照してください。
※1 4つのコア技術:メタル、ポリマー、フォトニクス、高周波
※2 知的資産の活用強化を含む。
※3 B5G:Beyond5G
③ リスク管理
<サステナビリティ関連機会及びリスクの管理>
当社グループは、25中計において、各々のマテリアリティにおける2025年度の目指す姿を実現するためのサステナビリティ指標(KPI)と2025年度サステナビリティ目標を設定しております。
収益機会・リスクのマテリアリティの対応状況やサステナビリティ指標の進捗状況は、サステナビリティ委員会と取締役会に半期ごとに報告・共有されています。また、サステナビリティ推進室長は、マテリアリティやサステナビリティ指標の進捗状況、サステナビリティ指標や目標の妥当性等について各担当部門と定期的(原則、年に2回)に対話をし、目標に達しない見込みの指標を担当している部門に対しては、対応策や改善策の作成と実行を促しています。
収益機会のマテリアリティ:
「社会解決型事業の創出」を収益機会のマテリアリティとして取り組んでいます。「社会課題解決型事業の創出」の全般については「1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](2)経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題」を参照してください。「社会課題解決型事業の創出」のうち、「環境配慮事業の創出」の詳細については「(2)気候変動」を参照してください。
また、「Open, Agile, Innovative」及び「多様なステークホルダーとのパートナーシップの形成」の進捗を測定するサステナビリティ指標として、「新事業研究開発費増加率」と「事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率」を設定し、新事業創出に向けた基盤整備を推進しています。「事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率」の詳細については、「(4)知的財産」を参照してください。
リスク(ガバナンス)のマテリアリティ:
「リスク管理強化に向けたガバナンス体制の構築」の進捗を測定するサステナビリティ指標として、事業等のリスク項目を含む「全リスク領域に対するリスク管理活動フォロー率」を設定し、統制活動による改善を推進しています。さらに、特に強化すべきリスク管理としてガバナンスのサブ・マテリアリティに掲げている「サプライチェーンマネジメント」と「人権マネジメント」は、それぞれに対応したサステナビリティ指標を「主要取引先に対するCSR調達ガイドラインに基づくSAQ(※)実施率」及び「管理職に対する人権リスクに関する教育実施率」と設定し、進捗状況や対応策をフォローしています。
「サプライチェーンマネジメント」に関しては、2021年度から当社の主要取引先を対象にCSR調達ガイドラインに基づくSAQを開始し、2022年度以降、国内外グループ会社の取引先へ対象範囲を拡大させています。当社が高リスクと設定した調査項目に該当する取引先に対しては、ヒアリング等の対話を通じて状況を再確認し、必要に応じて是正していただくように働きかけを行っています。
「人権マネジメント」に関しては、2021年度に当社グループの人権課題として優先すべき対象ステークホルダーを「従業員」と「取引先」とし、人権デューディリジェンスを実施しています。2024年度は、より正確に人権リスクを把握するため、深刻度と発生可能性の評価区分細分化により、各々の対象について人権リスクの再評価を行いました。その結果、従業員に対しては、これまでの職場でのハラスメントに加えて、強制労働・児童労働、労働安全衛生を改めて優先すべき人権課題として再認識しました。取引先に対しては、強制労働・児童労働、労働安全衛生を再認識しました。
従業員のハラスメントについては、内部通報やコンプライアンス意識調査の結果を分析し、必要な改善策を実施しています。また、改善策の一つとして、2022年度から当社及び国内外グループ会社を対象とした「差別・ハラスメント防止教育」を実施しており、サステナビリティ指標として「管理職に対する人権リスクに関する教育実施率」を設定しています。強制労働・児童労働については、グループ全体で法令違反のないことを確認するとともに、引き続き発生防止に努めています。労働安全衛生については、ゼロ災の達成をはじめ各職場で様々な目標を掲げ防止・低減に取り組んでいます。なお、これらの人権課題の特定に当たっては、専門弁護士や従業員を代表する労働組合と対話を行っており、特に労働組合とは、負の影響の防止・低減に向けて継続的にコミュニケーションを図っています。
取引先については、特に責任ある鉱物調達の観点から、対象鉱物として取扱量が多い「銅」も含めた調査を行い、このたび課題と再認識した強制労働・児童労働や労働安全衛生も含めた負の影響を低減する取組みを進めています。また、CSR調達ガイドラインに基づくSAQの実施によりサプライチェーン上の人権リスクの実態把握を行っています。現時点では、本調査の結果で人権に負の影響を与える重大な問題は発見されていません。
従業員の人権マネジメントの詳細については、「(3)人的資本(人材の多様性を含む。)」を参照ください。
※ SAQ(Self-Assessment Questionnaire) : 自己評価調査。
リスク(環境)のマテリアリティ:
「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」の詳細については、「(2)気候変動」を参照してください。
リスク(社会)のマテリアリティ:
「人材・組織実行力の強化」の詳細については、「(3)人的資本(多様性を含む。)」を参照してください。
<全社リスクマネジメントへの統合>
当社グループ全体のリスク管理は、委員長を社長、副委員長をリスクマネジメント本部長、委員を経営層で構成した「リスクマネジメント委員会」を設置し、当社グループのリスク管理、内部統制、コンプライアンスについての課題を審議し、監督・推進する体制をとっています。リスクのマテリアリティを含むリスク項目を担当する各部門は年間取組み計画と活動実績をリスクマネジメント委員会へ半期ごとに報告しています。リスクマネジメント委員会はその取組み内容について、リスク統制が適切に行われているか評価し、必要に応じて指導を行っています。
詳細については、「3 [事業等のリスク]」を参照してください。
④ 指標と目標
<サステナビリティ指標と目標>
当社グループでは、ビジョン2030を達成するための経営上の重要課題であるマテリアリティごとに2025年度の目指す姿を定め、それらを実現するための施策を実行するとともに、進捗を測定するサステナビリティ指標・目標値を設定しております。2024年度のサステナビリティ指標は、従業員エンゲージメントスコア及び管理職層に占める女性比率を除き、2024年度目標を達成あるいは達成の見込みです。
事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率は、2022年目標策定時に設定したテーマに関し2025年度に100%(全件実施)達成を目標としていましたが、2024年度に全件実施となりこの目標を達成したため、2025年度は具体的な事業活動へ展開を進めていきます。
従業員エンゲージメントスコアについては2023年度からグループ全体で把握ができるようになったため、単体のみで設定していた2024年度以降の目標を単体からグループへ拡大しました。2025年度の目標はグループで80と設定し、2024年度は77を目標としましたが、結果は72と未達成でした。未達成の要因は、回答者構成比の変動により回答に占める日本(単体及び関係会社)の割合が高まったこと、海外関係会社のビジネス環境変化等によるものと推察されます。パーパス共感醸成の取組みや管理職のマネジメントの見直し推進、各部門内での対話促進等により改善を図っていきます。
管理職層に占める女性比率については、2024年度の目標6%に対し実績は5.4%でした。事業戦略に基づき技術系人材中心の採用活動を行った影響により、全体的な女性採用数の伸びが鈍化し、前年と同水準に留まりました。今後は採用から育成・登用までパイプラインを充実させるとともに、女性管理職層とその候補層に対して個別フォローを実施し、管理職層に占める女性比率の向上に繋がる活動に粘り強く取り組んでいきます。
※1 2022年時点で設定した事業強化・新事業創出テーマに関して、全件実施を意味します。
※2 2024年度に前倒して目標達成。2025年度は具体的な事業活動へ展開を進めていきます。
※3 2024年度から基準年度が2021年度に変更になりますが、従来の2017年度基準に当てはめた場合の削減目標も参考値として示しています。
※4 2023年度に対象範囲を国内外グループ会社へ拡大し、単体目標からグループ目標に変更しました。
※5 新規採用者は新卒採用者及びキャリア採用者を示し、その対象は管理職層、総合職、一般職です。
※6 各年度30%程度維持することを意味します。
※7 各年度100%を継続することを意味します。
(2)気候変動
① ガバナンス
リスクのマテリアリティである「気候変動に関するビジネス活動の展開」に関する事項は、当社グループの経営上のリスクとも密接に関わることから、サステナビリティ委員会、リスクマネジメント委員会及びその特別委員会である古河電工グループ環境委員会(以下、環境委員会)や中央防災・BCM推進委員会が連携して対処しています。
気候変動や自然災害等の気候関連リスクは、環境リスクの最重要課題として位置づけ、気候関連リスクへの事前対策については主に環境委員会、リスク発生後の事業継続対策については主に中央防災・BCM推進委員会で定期的に議論されています。
環境委員会は、委員長をリスクマネジメント本部長とし、事業経営を担当する統括部門長や事業部門長、本部長等の経営層によって、3ヶ月に1回定期的に開催され、気候変動に関連する課題等を審議し、経営会議や取締役会に提案・報告します。
中央防災・BCM推進委員会は、委員長をリスクマネジメント本部長とし、事業部門長や事業所長等の委員によって、3ヶ月に1回定期的に開催され、事業継続マネジメント(BCM)の構築、自然災害等を含む事業継続リスクの特定をし、その特定プロセスを推進・管理しています。
また、気候変動に関する業務の執行状況については、取締役会に四半期ごとに報告・共有されています。
<当社グループの気候変動に関する主な議論>
② 戦略
<気候関連リスク及び機会の分析対象事業>
当社グループは、TCFD提言が推奨する「2℃以下のシナリオを含む異なる気候関連のシナリオを考慮した組織戦略のレジリエンス」を示すために、2019年度から気候関連リスク(移行リスク、物理リスク)及び機会を特定し、中期経営計画をベースラインとして、2℃以下のシナリオを含む異なる気候関連のシナリオ分析を実施しています。2019年度は環境省が実施する「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」に参加し、インフラ事業(情報通信ソリューション事業の光ファイバ・ケーブルとエネルギーインフラ事業の電力ケーブル)からシナリオ分析を開始しました。以降、2020年度は自動車部品事業、2021年度はAT・機能樹脂事業と銅条・高機能材事業、2022年度はファイバ・ケーブル事業と電力事業、2023年度は、銅箔事業と電池事業、ファイテル製品事業のシナリオ分析を完了し、現在は産業電線・機器事業のシナリオ分析を行う等、引き続き事業分野別に段階的に対象事業の拡大を進めています。
<気候関連リスク及び機会の項目の特定プロセス>
気候関連リスクと機会の特定は、Step1~Step3のプロセスで行います。まず、Step1では「外部情報」と「内部情報」を参考に、当社グループのみならずサプライチェーンの上流及び下流も含めて気候関連リスクと機会の項目リストを作成します。Step2では洗い出した項目に対して、「当社グループに与える影響度」を点数化し優先順位を付けます。Step3で、優先度の高い項目を気候関連リスク・機会の項目として特定します。特定した気候関連リスク・機会の項目は1.5℃シナリオや4℃シナリオにおける影響パラメーターを用いて、2030年度における事業への影響度評価を行います。
<シナリオ群の選択>
TCFD提言が推奨する「2℃以下のシナリオを含む異なる気候関連のシナリオ」を検討するに当たり、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が公表する複数の既存シナリオを参照し、2021年度までは「2℃以下シナリオ」と「4℃シナリオ」の検討を進めてきました。2022年度からは、2050年カーボンニュートラルへの取組みを加速するため、環境目標2030を改定し、SBT1.5℃認定にも申請したことに伴い、選択するシナリオを「1.5℃シナリオ」と「4℃シナリオ」に見直しました。
<気候関連リスク及び機会の期間の定義>
<シナリオ分析の概要>
<当社グループのカーボンニュートラル実現に向けた取組みと気候移行計画の策定>
気候関連の機会及びリスクを特定し、収益機会の獲得とリスクの低減の両面からカーボンニュートラル実現に向けた取組みを進めています。2021年10月にTCFDより公表された「指標、目標、移行計画に関するガイダンス」を踏まえ、2023年度から低炭素経済への移行を支援する一連の目標と行動である気候移行計画の策定を開始しました。
リスクの対応策については、2024年11月に環境ビジョン2050を改定し、バリューチェーン全体で温室効果ガス排出量ネットゼロを目指すことを目標に掲げています。また、2050年に向けたマイルストンである環境目標2030において温室効果ガス排出量(スコープ1、2及びスコープ3)削減の目標を設定し、そのうち温室効果ガス排出量(スコープ1、2)は、25中計のリスクのマテリアリティ「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」のサステナビリティ指標として2025年度目標を設定しています。
環境ビジョン2050と環境目標2030の達成に向けた気候移行計画策定の一環として、当社グループの事業活動における温室効果ガス排出量削減にむけたロードマップを策定し、取組みを推進しています。スコープ1、2の目標達成のためには、工場の省エネや燃料転換を進めるとともに、再生可能エネルギーの積極的な利活用が不可欠であり、サステナビリティ指標として「全電力使用量に占める再生可能エネルギー比率」を設定し、再生可能エネルギーの利用比率向上に向けた取組み(水力発電の活用、太陽光発電設備の設置、再生可能エネルギー由来電力の導入)を進めています。
また、バリューチェーン全体での排出量削減に向け、バリューチェーン排出量(スコープ3)の算定及び把握に努めています。バリューチェーン排出量(スコープ3)算定に当たっては、環境省及び経済産業省が発行する「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する 基本ガイドライン (ver.2.6)」に則り、排出原単位は「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース(Ver.3.3)」及び「AIST-IDEAv3.3(日本語版)」を参照しています。当社グループのバリューチェーン排出量(スコープ3)のうち割合の高いカテゴリーは、カテゴリー1「購入した製品・サービス」及びカテゴリー11「販売した製品の使用」です。このうち、カテゴリー1については素材(銅・アルミ・樹脂)のリサイクル材活用を推進するとともに、サプライヤーに対し温室効果ガス排出量の算定及び削減の働きかけを行い、CSR調達ガイドラインに基づく自己評価調査票(SAQ)と併せて実施するアンケートにより購入製品に係る排出量データの把握に努めています。
サプライチェーンマネジメントの詳細については、「(1)サステナビリティ共通」を参照してください。
収益機会の対応策については、25中計期間において既存事業の収益安定化と新事業創出に向けた基盤整備を進め、2030年にはそれぞれの分野における社会課題を解決するとともに、カーボンニュートラル実現に貢献していきます。例えば、情報通信の高度化や生成AIの普及拡大によりエネルギーマネジメントの高度化や温室効果ガス排出量の削減が促進されていくことが期待されていますが、同時にデータセンタの増加による電力消費量の増加が懸念されています。当社グループにおいてはデータセンタ市場の拡大を収益機会と捉え、光ファイバ・ケーブル及び光デバイス等の供給を通して高度情報通信の実現に寄与するとともに、データセンタの電力消費の要因となるCPUやGPU等の高発熱化に対し、熱伝導性の高い半導体製造用テープであるAT製品や高性能ヒートシンク及びヒートパイプ等のサーマル製品の供給を通してデータセンタの低消費電力化に貢献します。また、情報通信領域における更なる大容量・低遅延・低消費電力化の要請に備え、光電融合技術の研究開発に取り組んでいます。
モビリティ領域の電動車市場に対しては、軽量化に寄与するアルミワイヤハーネスに加え、高圧関連製品(高圧ワイヤハーネスや高圧ジャンクションボックス等)の供給を拡大し、低炭素なモビリティの普及拡大に貢献します。また、情報通信領域やモビリティ領域における電力消費量の増加により、エネルギー領域においては再生可能エネルギーの普及拡大による電力分野の低炭素化と基幹系送電網増強の必要性が高まっています。第7次エネルギー基本計画等の国内のエネルギー政策の動向を注視し、洋上風力を中心とする再生可能エネルギーの拡大や次世代電力ネットワークの構築を電力ケーブルの供給により支えてまいります。併せて、核融合発電の実現に向けた高温超電導線材の開発や、グリーンLPガスの量産技術の確立等、研究開発及び新事業創出を推進しています。
③ リスク管理
<気候関連リスク及び機会の管理>
リスク及び収益機会のマテリアリティである「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」及び「環境配慮事業の創出」の進捗を測定するサステナビリティ指標として、「温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2)」、「電力消費量に占める再生可能エネルギー比率」及び「環境調和製品売上高比率」を設定し、半期ごとにサステナビリティ委員会にて、これらの指標の進捗状況と対応策をフォローしています。
2020年度から事業部門ごとに環境目標2030に沿ったGHG排出量の目標を、2022年度からは事業部門ごとのGHG排出量売上高原単位の目標も定め、四半期ごとに経営会議で「GHG排出量」と「GHG排出量売上高原単位」の進捗状況をフォローしています。
インターナルカーボンプライシング(Shadow price)は、2019年度から事業部門ごとのGHG排出量を炭素価格(2024年度は2万円/トンCO2eを適用)によって試算し、四半期ごとの環境委員会での評価・掲示効果により、脱炭素化に向けた気候変動リスク回避への準備を促しています。また、2023年度より、各事業部門がGHG排出量目標に対して未達成となった場合、再生可能エネルギー調達コスト増加分を各事業部門で負担するルールを定め、目標に達しない見込みの事業部門に対して再生可能エネルギーの導入計画の策定を促進しています。
<全社経営戦略(25中計)・全社リスクマネジメントへの統合>
当社は、事業ポートフォリオ最適化のプロセスや事業別FVAの資本コストの算出において、財務要素に加えてESG要素である「GHG排出量」及び「GHG排出量売上高原単位(炭素効率性)」を活用しています。
詳細については、「1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](2)経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題」を参照してください。
当社グループ全体のリスク管理において、「気候変動(カーボンニュートラル)」は経営視点でのリスク項目として掲げております。
詳細については、「3 [事業等のリスク]」を参照してください。
④ 指標と目標
<古河電工グループ環境ビジョン2050>(2024年11月改定)
環境ビジョン2050では、環境に配慮した製品・サービスの提供及び循環型生産活動を通じ、バリューチェーン全体で持続可能な社会の実現に貢献することを掲げています。脱炭素社会への貢献としては、バリューチェーン全体で温室効果ガス排出量ネットゼロを目指しています。
<環境目標2030>(2022年11月改定)
環境ビジョン2050の実現に向け、マイルストンとなる環境目標2030を設定しています。脱炭素社会への貢献として、以下の2030年目標を掲げています。
(1)事業活動における温室効果ガス排出量(スコープ1、2) :2021年度比42%以上削減
(2)バリューチェーンにおける温室効果ガス排出量(スコープ3):2021年度比25%以上削減
スコープ1:自社工場・オフィスからの直接排出
スコープ2:自社が購入した電力、熱等の使用による間接排出
スコープ3:スコープ1、2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
<実績と目標> ★はサステナビリティ指標
2024年度は、2022年度から積極的に進めている再生可能エネルギーの導入をさらに進めました。AT製品を製造する三重第1工場では2023年4月より使用電力の100%を再生可能エネルギー由来電力に切り替えましたが、それに加えて2024年5月に開設した三重第2工場では建屋の屋根に太陽光発電設備をオンサイトPPA方式で設置しました。使用電力の一部を太陽光発電電力でまかなうことによりAT製品製造時の温室効果ガスの排出低減に寄与する見込みです。その他の当社事業所及び国内外の生産拠点においても太陽光発電設備の設置や購入電力の再生可能エネルギーへの転換を進め、「温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2)」及び「電力消費量に占める再生可能エネルギー比率」の2024年度目標は達成の見込みです。
※1 当社グループが排出する温室効果ガスは、主にエネルギー起源による二酸化炭素(CO2)と六フッ化硫黄(SF6)です。
※2 2024年度から基準年度が2021年度に変更になりましたが、従来の2017年度基準に当てはめた場合の削減目標も参考値として示しています。
(3) 人的資本(人材の多様性を含む。)
<人と組織に関する基本的な考え方(古河電工グループPeople Vision)>
当社グループは、2024年3月、経営の判断軸となり、従業員一人ひとりが誇りを持って働き挑戦し続けるために当社グループの存在意義を示した「古河電工グループ パーパス」を制定し、これまでの理念体系を見直しました。このパーパスの実現に向けた人と組織のありたい姿として「古河電工グループPeople Vision」を位置づけ、多様な人材一人ひとりの成長が当社グループの成功の原動力であり、チームで成果を生み出すことを通じて個人と組織がともに成長する事を目指しています。
パーパスの本文については、「1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](1)会社の経営の基本方針」を参照してください。
① ガバナンス
リスクのマテリアリティである「人材・組織実行力の強化」に関する事項は、当社グループの経営上のリスクのみならず、経営戦略に直結する最も重要な経営上の重要課題であることから、戦略本部長をトップとした人事戦略の遂行体制を確立し、経営会議での執行と討議、決議を行っています。
また、経営課題に直結する個別のテーマについては、社長あるいは戦略本部長を委員長とした委員会を設置し、戦略の策定と活動計画の決定、施策の実行を推進しています。高度な専門性を持つ人材を認定する「プロフェッショナル任用委員会」、働き方改革やダイバーシティ&インクルージョンを促進する「HK(※)・D&I委員会」、労働安全衛生に関する「古河電工グループ安全衛生委員会」を設置しています。こうした業務の執行状況については、取締役会に定期的に報告・共有されています。
※ HK:働き方改革
<当社グループの主な人事課題に対するガバナンス体制>
<当社グループの人的資本に関する主な議論>
② 戦略
<25中計における人材マネジメント戦略>
経営戦略・事業戦略の実行にあたり、対話を通じた成長ベクトルのすり合わせを行うことで、個人と組織がともに成長し実行力を向上させ、社会課題を解決しビジョン2030を達成します。(図1)
(図1)古河電工グループの人材マネジメント戦略
経営戦略・事業戦略を実行する上で必要な人材を集めて 組織を形成し、その人材の成長を組織が支援して活躍してもらうことで、やりがいを感じながら活躍し続けられる組織風土を醸成していくストーリーを描き、それらをWill・Can・Needsの3つの要素で捉えて具体的な活動に取り組んでいます(表1)。
日常の事業活動の中で3つの要素に関わる課題を抽出し、戦略に応じた形で改善に取り組むことで、事業戦略の実現と持続的な業績向上へ貢献し、ビジョン2030を達成します。
(表1)Will・Can・Needsの3要素について
<具体的な活動>
1)Needsを共有
a)サクセッションプランと育成計画の立案
経営人材及び各組織の部長候補の育成を目的として、サクセッションプランと育成計画を策定し、実行しています。経営人材については、外部アセスメントを活用した人材プールの形成や外部研修への派遣を進めるとともに、育成計画に基づくタフアサインメントを含む計画的な異動を進めています。また、社外取締役が過半を占める指名・報酬委員会において、経営人材育成の仕組みの適正性及び運用状態をモニタリングするとともに、執行役員の登用やCEOサクセッションプランに関して複数年かけて計画的に取り組んでいます。部長層のサクセッションプランについては2023年度に全組織にて策定したプランと育成計画に基づき継続して実行に取り組んでいます。また、課長層については、各組織と人事部門との議論を通じ、部長候補へのパイプラインを意識したサクセッションプランを策定しました。2025年度はそのプランに基づいて育成計画を策定し、実行していきます。
b)採用力の向上
経営戦略、事業戦略の実行に向けた多様な人材を確保する体制構築に取り組んでいます。2024年度は採用活動の業務効率化に取組み、特にキャリア採用において、各組織からの採用要請に効率的に応える採用オペレーションの確立や採用リードタイムを短縮(前年比△47%)しました。その他の取組みについては以下のとおりです。
・キャリア採用・・・リファラル採用の導入、入社後の定着フォロー体制の強化
・新卒採用・・・・・コース別採用(※)の導入、採用媒体の刷新(会社案内や新卒採用WEBサイト)
※ 初任配属時の職種を「事業推進」「組織管理」「ポテンシャル」にグルーピングしコース化
c)目標管理制度の運用見直しとフォロー
2021年の人事制度改定では、「チャレンジの促進」「シンプル&オープン」「人材育成」をコンセプトとし、目標管理制度の運用見直しを行いました。個々人の目標達成を上位方針の達成、業績向上につなげることを目指し、部や課の方針と個々人の目標管理の連動を強化しています。具体的には、組織目標設定時のメンバーの参画、資格毎の役割期待を踏まえた「重要度」や「資格相当度」の設定、部門内での目標ランクの基準を合わせる調整会議の実施等を行っています。2024年度に実施した期首目標面談に関するアンケート調査では、90%以上の従業員が組織方針について「十分理解できた」あるいは「概ね理解できた」と肯定的に捉えています。
d)「人権・労働慣行」及び労務分野のリスクの対応
「人権・労働慣行」のリスクに対しては、人権尊重に対する企業の責任を果たすため、古河電工グループ人権方針に基づいた人権を尊重した事業活動の推進、人権デューディリジェンスを実施しています。また、内部通報やコンプライアンス意識調査の結果を分析し、必要な改善策を実施しています。さらに、従業員を代表する労働組合とも意識を共有し、負の影響の防止・低減に向けた対話も行っています。
労務分野におけるリスク低減に向けては、グローバルでは当社グループが進出している各国の法令に基づいた労務コンプライアンスの遵守状況確認のためのチェックリストを作成し、グループ全体での労務リスクを定期的に確認しています。さらに、国内ではグループ会社の人事担当責任者が集い、当社グループにおける人事・労務に関する取組みの方針や課題を共有する場を年2回開催し、連携強化に努めています。
2)Canを増やす
a)リスキリング
当社グループでは、事業戦略を実現するために組織と個人の双方の成長に必要な能力・スキルと現状とのギャップを可視化し、能力・スキル獲得に向けた仕組みづくりについて、経営層や各組織と議論しました。その結果、当社グループのリスキリングの定義を「新規・既存問わず、業務遂行において必要な知識・スキルを自律的に学ぶこと」としました。
具体的には、個人のスキル習得・成長のプロセス(図2)を支援するために、「一部の個人が、決まったタイミングと回数と場所で、全員で一律のスキルを学ぶ環境」から、「個人が、いつでも、どこでも、何度でも、多種多様なスキルを学ぶことができる環境」へ変更し、その機会提供を可能にする新たなEラーニングシステムを2024年度に導入しました。これにより、個人が自由に多種多様なスキルを学べる環境が提供され、さらに一部の研修を置き換えることで個人のタイミングでいつでも受講や予習復習をすることが可能になりました。また、従来の研修カリキュラムの事前・事後学習にEラーニングを活用し、学びを最大化する連携にも取り組んでいます。さらに、職場や組織の垣根を超えた学び合いの機会を創出する等の場を提供しています。今後もさらに個人の自律的な学びや成長の支援に取り組んでいく予定です。
(図2)個人のスキル習得・成長のプロセス
b)グローバル人材育成体系
「グローバルビジネスリーダー(GBL)研修」を2006年度から開始し、2013年度からは、グローバル人材の育成の観点を強化した「グローバル・マインドセット・プログラム(GMP)」に衣替えして継続実施しています。また、海外の現地従業員を対象に「グローバル・デベロップメント・プログラム(GDP)」を2010年度から実施しており、グループの結びつきの強化を狙って、一部のカリキュラムをGMPと合同で実施しています。さらに、2014年度からは一定期間にわたり若手従業員を海外に派遣する「グローバル・チャレンジ・プログラム(GCP)」を開始し、多様な人材の確保と成長の場を提供しています。
c)キャリア自律支援
ⅰ)キャリアサポート室
2021年度にキャリアサポート室を立ち上げ、年代・階層別のキャリアデザイン研修やキャリア形成に役立つセミナーの開催、個別のキャリア面談実施等、既存の人事制度と連携しながら従業員の自律的キャリア形成を支援する取組みを行っています。
ⅱ)個人がキャリアを選択する仕組み
2021年度より社内副業制度(Fキャリアチャレンジ)を運用開始しており、業務の20%を上限に、自ら手をあげて、興味あるプロジェクトに参加することで、自身の成長・やりがい・キャリア形成に結び付けてもらう仕組みとしています。制度はじまって以来72プロジェクト、170名が参加(2024年度は24プロジェクト、58名が参加、増加傾向)しており、受け入れ部門によい刺激を与え、本人のモチベーションが向上し、送り出し部門にも良い影響を与えています。2024年度は、より従業員の自律的なキャリア実現を加速させるため、従業員が自ら手をあげ異動が可能な社内公募制度を本導入しました。社内求人数82件に対し応募者数34名、マッチング数13名となり、2023年度の試行導入時(社内求人数57件、応募者数34名、マッチング数10名)を上回る結果となりました。いずれの制度においても、認知度の向上に伴い、キャリア自律支援が個人と組織に良い影響を与えており、今後も継続して取り組んでいきます。
3) Willを高める
a)理念浸透
当社グループでは、経営の判断軸となり、従業員一人ひとりが当社グループで誇りを持って働くことにつながる当社グループの存在意義を示した「古河電工グループ パーパス」を2024年3月に制定し、これまでの理念体系を見直しました。
パーパスの浸透には、認知・理解・共感・行動の4つのステップがあると捉え、2024年度はまず認知拡大を、そして理解・共感の醸成を目的とした施策を開始しました。認知拡大については、トップメッセージ発信、グループ報特集号発行、動画発信、ポスター掲示、クレドカード配布のほか、パーパスをテーマにしたTVCM放映等を行いました。また、理解・共感の醸成に関しては、当社グループ全体のパーパスと、それぞれの組織や従業員自身とのつながりを考えてもらう機会をつくりました。具体的には、組織については、当社グループの経営層を対象にワークショップを開催し、「古河電工グループパーパス」が各自の組織にとってはどのような意味を持っているのかをグループ討論し、各組織のパーパスを作成しました。その上で、そこに込めた思いも含めて、自部門に自分の言葉で伝えてもらう取組みを行いました。また、個人については、トライアルとして、本部系組織の管理職を対象に、自分にとって重要な価値観(個人のパーパス)を探すゲーム等を通じて、楽しみながらパーパスについて考える「マイパーパスワークショップ」を実施しました。
当社グループの理念体系では、将来に向けて持続的に成長していく上で特に大事にし、より強化していきたい価値観を「Core Values」として定めており、その浸透に向けたワークショップを定期的に開催するとともに、日常的な会議の場での振り返り等を行い、浸透に向けた取組みを継続して実施しています。
従業員一人ひとりがやりがいや成長実感を得て自身の存在意義を感じ、組織のエンゲージメント向上や目標達成につなげるため、パーパスを「自分事化」し、「Core Values」に基づいて日々行動する状態を目指して、粘り強く取り組んでいきます。
b)エンゲージメント
従業員一人ひとりがパーパスに共感し、当社グループで成長・活躍し続けたいと思えるようなエンゲージメントの高い組織風土を醸成することで、事業戦略の遂行に必要な多くの人材が成長・活躍し、持続的な企業価値向上に貢献できると考えています。そのために、人材・組織の状態を可視化し、その結果を踏まえた改善施策を事業活動に反映する目的で、2022年度より人材・組織実行力調査「フルカワEサーベイ」を開始しました。この調査における「従業員エンゲージメント」のスコアを25中計におけるサステナビリティ指標として目標を設定し、各種施策を着実に実行しています。
エンゲージメント向上に向けては、単体各部門や一部の関係会社と人事部門で調査結果を踏まえて対話を行い、組織の悩み事や人材マネジメントにおける課題を特定しました。その改善活動においては人事部門が伴走支援を行いました。また、対話を通じて得られた各組織の取組みを「好事例」として社内ポータルサイトに掲載し広く情報共有しました。
また、サーベイ結果を分析したところ、エンゲージメントスコア向上に相関が高い「理念・方針の浸透度」「業務運営の効率性の向上」については改善傾向が見られました。また、単体各部門との対話から「上司部下のコミュニケーションが改善した」「組織運営体制の強化が必要」「管理職層の一層のマネジメントスキル向上が必要」等の定性情報が得られたことから、特に単体においては、次の改善活動に重点を置いて取り組んでいます。
・理念・方針の一層の浸透
部門長や上司がパーパス、事業戦略・目標についてしっかり伝え、従業員一人ひとりが自分事化し、やりがいと成長実感を持ちながら仕事に向き合えるように、各組織でコミュニケーションの強化・改善を行う。
・業務運営の効率性の向上
成果の創出や目標達成に向けて「業務プロセスや組織運営」を改善し、より生産性の高い組織に変化することを目指して、管理職層のマネジメントスキルの向上に取り組む。
c)ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進
女性活躍推進については、特に意思決定層の多様性確保が重要と考え、管理職層の女性比率を25中計におけるサステナビリティ指標に設定しています。女性従業員の少なさを課題と捉え、採用から育成・登用までパイプラインを充実させる取組みを進めています。育成・登用については、各部門と人事部門が人材プールやポストの可能性について相互認識を深め、女性管理職候補者層の個別育成計画を策定・実行しています。当社の男女賃金差異については、資格・職群毎に見ると制度面では賃金差が生まれにくい仕組みを整えていますが、管理職層に比べて一般職層の女性比率が高いことが賃金差の主要因と捉えており、特に子育て世代の男女の働き方の違いによる影響が考えられます。そのため、パイプラインを充実させる取組みを継続するとともに、両立支援の観点で職場環境の整備、従業員への情報発信と啓蒙活動に取り組んでいきます。
障がい者雇用推進については、社会的責務を果たすことに加えて、D&Iの観点から共生社会の実現に向けて貢献するべく積極的な取組みを進めています。グループ各社及び特例子会社古河ニューリーフ㈱での雇用拡大と、バリアフリー化やリモートワーク導入等の職場環境や働き方の更なる改善を進め、より働きやすい環境を整備していきます。
d)リーダーシップ・チームマインド
「チームで成果を上げる」組織を目指し、2020年に「良いチームをつくる」リーダーとなるための大事な1つの心構えと6つの行動原則「古河電工流上司心得七則(フルカワセブン)」を定めました。役員及び課長以上の管理職が周囲に「行動宣言」し日々実践するとともに、360度フィードバックによる振り返りを実施し、更なる行動変容に繋げています。取組みを開始して5年が経過し、リーダーの意識・行動に良い変化が見られ、チームにおけるメンバーの関係性が改善してきました。今後は、チーム活動と成果との結びつきによりフォーカスし、チーム力の更なる強化に向けた取組みを加速していきます。
e)安全衛生と健康経営の推進
ⅰ)従業員の安全・衛生
主に労働災害、交通事故、疾病等による、従業員の死亡、就業不可、障がいの残存、長期休業、体調不良といったリスクを認識し、事業継続の大前提として「安全と健康を全てに優先する」との考えから様々な施策を展開しています。安全については災害ゼロに向けた3つのアプローチ(①安全人間化教育による安全知識の付与と実践、②本質安全化活動による設備の安全化推進、③安全管理レベルの向上による安全組織の構築)により安全推進活動を進めています。
ⅱ)健康経営の推進
健康経営を、従業員一人ひとりが身体的・精神的・社会的に良好な状態(well-being)を目指すことと定義し、従業員の活力やパフォーマンスが上がることが組織や企業の成長にもつながるとの考えのもと、全社一丸となって健康経営の諸施策を推進しています。当社グループでは、経営的な視点から、戦略的に従業員の健康管理・健康づくりに取り組む「健康経営」を推進していくため、2017年に「古河電工グループ健康経営宣言」を制定し、従業員が健康意識を高め、自らの健康づくりに積極的に取り組んでいくための支援を行っています。具体的には、健康経営戦略MAPを策定し、「ヘルスリテラシー」「メンタルヘルス」「生活習慣」「運動機能」「喫煙」を重要な5本柱を軸とした各施策を検討し、取組みを推進しています。
これらの活動が評価され、2017年から9年連続で「健康経営優良法人」に認定されています。
③ リスク管理
<人材・組織関連リスク及び機会の管理>
リスクのマテリアリティである「人材・組織実行力の強化」に関する事項は、当社グループの経営上のリスクのみならず、収益拡大等の経営戦略にも直結する最も重要な経営課題です。そのため、2022年度より人材・組織実行力調査「フルカワEサーベイ」を実施して人材・組織の状態を可視化し、結果を踏まえた改善施策を事業活動に反映するというPDSサイクル(※)を回すことで、リスクの低減及び収益機会の獲得を推進しています。
また、エンゲージメントが低下した場合、従業員のモチベーション低下に伴う生産性や業績、サービスの質の低下、離職率の上昇や優秀な人材の確保困難といったリスクが増大します。一方で、エンゲージメントが向上すればその逆の影響が考えられます。そのため、「フルカワEサーベイ」における「従業員エンゲージメント」のスコアをサステナビリティ指標に設定し、「管理職層に占める女性比率」及び「新規採用者に占めるキャリア採用比率」も含めて、経営会議やサステナビリティ委員会で進捗状況をフォローし、対応策を討議しています。それらを定期的に取締役会に報告・共有しています。
このような定期的なリスクアセスメントを適切に実行し、その結果を踏まえてリスク認識を都度改めながら各施策の取組みに反映しています。現状のリスク認識については「人材・組織」「人権・労働慣行」は経営視点の重要リスクとして認識しています。さらに、「従業員の安全・衛生」はオペレーショナル視点の重要リスクと認識しています。そして、それらへの施策は前述「② 戦略 <具体的な活動>」の中に織り込み取り組んでいます。
現状のリスク認識の詳細については、「3[事業等のリスク]」を参照してください。
※ PDSサイクル:Plan Do Seeサイクル
④ 指標と目標
<実績と目標>
1)従業員のエンゲージメントスコア
「フルカワEサーベイ」における「従業員エンゲージメント」のスコアを25中計におけるサステナビリティ指標とし、2025年度の到達目標はグループ全体で80と設定しています。2024年度の目標はグループ全体で77でしたが、回答者構成比の変動により回答に占める日本(単体及び関係会社)の割合が高まったこと、海外関係会社のビジネス環境の変化等により、結果は72(前年比94.7%)でした。一方で、日本(単体及び関係会社)は63(前年比100%)でしたが、サーベイ結果を分析したところ、エンゲージメントスコア向上に相関が高い「理念・方針の浸透度」「業務運営の効率性の向上」については改善傾向が見られました。また、単体各部門との対話から「上司部下のコミュニケーションが改善した」「組織運営体制の強化が必要」「管理職層の一層のマネジメントスキル向上が必要」等の定性情報を得られたことから、今後も継続してエンゲージメントスコア向上に繋がる活動に粘り強く取り組んでいきます。なお、当初は単体のみで目標設定していましたが、グループ全体に調査対象を拡大し2024年度以降の目標をグループへ拡大しました。
エンゲージメントスコア向上に向けた具体的な活動については、「② 戦略 <具体的な活動>」を参照してください。
2)管理職層に占める女性比率
管理職層に占める女性比率について、2024年度の目標は6%に対して実績は5.4%でした。事業戦略に基づき技術系人材中心の採用活動を行った影響により、全体的な女性採用数の伸びが鈍化し、前年と同水準に留まりました。今後は採用から育成・登用までパイプラインを充実させるとともに、女性管理職層とその候補層に対して個別フォローを実施し、管理職層に占める女性比率の向上に繋がる活動に粘り強く取り組んでいきます。
3)新規採用者に占めるキャリア採用比率(管理職層、総合職、一般職)
経営戦略、事業戦略の実行のための多様な人材の確保と成長事業の強化のため、「新規採用者に占めるキャリア採用比率」をサステナビリティ指標に設定し、各組織の採用要請とすり合わせを行いながら継続的に注力して取り組んでいます。2024年度実績は54.4%と目標30%を超える水準となっています。
<参考指標>
4)一人当たり教育研修費
5)離職率
6)その他実績
※1 国内グループは単体を含む。一部、関係会社で他社からの出向者の数字を含まない。
※2 「男性の取得率=当年度内に育休を開始した人数÷パートナーが出産した人数」、「女性の取得率=当年度内に育休を開始した人数÷出産者の人数」として提示。また、産前産後休暇取得者は育休取得者には含まない。
※3 「当年度育休取得者の平均取得日数」として提示。
(4)知的財産
当社グループでは、強みの源泉となる特許やノウハウ等の知的財産、さらに人的資産、組織力、顧客ネットワーク等を含む知的資産を重要な経営資源と位置付けています。その活用を図ることを目的に、以下の3つの基本方針を定め、事業・研究開発・知的財産を三位一体として、グループ・グローバルな知財活動を推進しています。
<古河電工グループの知財戦略>
3つの基本方針
(1) IPランドスケープによる経営・事業戦略策定力の強化:
知財情報を戦略策定プロセスに取り込んで解析・活用するIPランドスケープにより、経営・事業戦略策定力を強化します。
(2) オープン&クローズ戦略による知的資産活用:
オープン&クローズ戦略による知的資産活用を起点に、知的資産を創出・蓄積し、事業・コア技術を保護する活動サイクルを、IPランドスケープによる環境分析で変化を捉えながら回すことで、事業競争力を強化します。
(3) 知財リスク低減による事業遂行の安定化:
権利侵害リスク、技術流出リスク、契約リスク、技術模倣リスクの4つを、影響度及び頻度の高い知財リスクとして認識し、継続的なリスク低減に努め、事業遂行を安定化します。
① ガバナンス
当社グループは、研究開発本部長(CTO)を委員長とする「全社知財推進委員会」を設置し(原則、年に1回開催)、全社知的財産活動方針を決定しています。また、事業部門及び研究部門に置かれた知財総括責任者を中心に知財活動を推進しています。
社長を含む業務執行役員に対しては、研究開発本部長が主催する「知財戦略会議」(原則、年に2回以上開催)にて、全社の知財戦略に関わる提案・報告を実施しています。さらに、知的財産部長が主催する「知財統括者会議」(原則、年に1回開催)にて、全社の知財活動の推進を図っています。事業部門長に対しては、知的財産部長が主催する「知財戦略対話」(原則、年に2回開催)にて、各事業部門の知財戦略に関わる情報共有・共創を実施しています。
こうした業務の執行状況については、取締役会に四半期ごとに報告・共有されています。
<当社グループの知的財産に関する主な議論>
② 戦略
当社グループは、知財戦略で定めた3つの基本方針を踏まえ、「古河電工グループ ビジョン2030」の達成に向けて、チャンスマキシマム(事業機会拡大)とリスクミニマム(事業安定化)の2つの観点から、知財活動を推進しています。
<チャンスマキシマム(事業機会拡大):IPランドスケープ(※)>
当社グループは、「IPランドスケープによる経営・事業戦略策定力の強化」を知財戦略の第1に掲げています。自他社の知財情報等を用いて競争環境・市場環境を分析し、新しい事業分野・ビジネスモデルを探索しています。
既存市場・既存製品の領域(A領域)は、資本効率重視による既存事業の収益最大化を目指し、IPランドスケープで戦略の確からしさを判断します。一方、新規市場や新規製品に関わる領域(B・C・D領域)は、開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備を目指し、IPランドスケープで戦略の策定力を強化します。具体的には、技術の先読み、共創相手や新市場の探索等の調査を行います。
具体的なIPランドスケープの活用事例は下記のとおりです。「古河電工グループ ビジョン2030」の達成に向けて、持続的成長を実現する基盤を築くために、IPランドスケープで「強み」を可視化して既存市場での競争力を高めるとともに、新たな市場に展開する力も強化しています。
・既存事業の補強(A・B領域): 半導体製造用テープ
半導体製造用テープでは、より進化させた新規製品を既存市場に投入しています。発展著しい半導体市場に対して、IPランドスケープにより当社グループの強みの可視化や技術の先読みを行い、開発戦略の補強を行うことで事業強化に貢献しています。
・新事業の創出(C領域): インフラレーザ
インフラレーザは、当社グループの光通信技術で培った半導体レーザ技術を応用した新規製品で、新規市場に投入しています。新規市場への参入に当たっては、IPランドスケープにより自他社の知財状況を分析し、想定する事業領域における知的財産権の確保を進め、お客様へのアピール力を向上させ事業競争力を高める戦略策定を行いました。
※ IPランドスケープ:経営戦略又は事業戦略の立案に際し、(1)経営・事業情報に知財情報を取り込んだ分析を実施し、(2)その結果(現状の俯瞰・将来展望等)を経営者・事業責任者と共有すること(引用:特許庁「経営戦略に資する知財情報分析・活用に関する調査研究報告書」)
<リスクミニマム(事業安定化):知的財産ポートフォリオ>
当社グループ固有の差別化技術を知的財産権・技術ノウハウで保護し、事業リスクを最小化します。
社会課題解決型事業の強化による成長を実現するため、情報・エネルギー・モビリティ分野では、詳細な競合分析に基づく知的財産ポートフォリオの構築とその活用を徹底しています。これにより、25中計目標達成に向けた資本効率重視による既存事業の収益最大化を支えます。
当社の保有する知的財産権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権)の約半数が、光ファイバ・ケーブル(ライテラジャパン株式会社)、電力ケーブルシステム(電力事業部門)、ワイヤハーネス(自動車部品事業部門)、半導体製造用テープ(AT・機能樹脂事業部門)に関係するポートフォリオになります。これらの事業でオープン&クローズ戦略による知的資産活用と、知財リスク低減により事業リスクを最小化します。
③ リスク管理
<知財リスクマネジメントシステム>
当社グループのCSR行動規範には、「知的財産権の保護」と「秘密情報の管理」が含まれます。
CSR行動規範に則り、詳細な競合分析に基づく知的財産ポートフォリオの構築(前述)とその活用を徹底し、技術情報流出防止等グローバルな知財リスク低減活動を推進しています。これを実現するため、①知財リスク評価、②知財リスクコミュニケーション、③知財リスク管理の3つのステップによる知財リスクマネジメントシステムを導入しています。
このうち知財リスク評価は、各事業部門の重点知財活動製品について、事業を妨害されないための知財網があるか、他社の権利を侵害していないか、技術ノウハウ漏洩対策ができているか、を確認します。この評価は、原則、年に1回見直します。また、リスク管理活動計画のひとつとしてリスクマネジメント委員会に報告しています。
なお知財リスクは下記の4つに分類し、継続的にリスク対応を喚起することで、事業リスクを最小化します。
④ 指標と目標
<チャンスマキシマム(事業機会拡大):IPランドスケープ>
知財情報を戦略策定プロセスに取り込み、経営・事業戦略策定力を強化することを目的として実施しているIPランドスケープを推進するため、収益機会のマテリアリティのサステナビリティ指標として、「事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率」を2022年度に設定しました。設定時の目標は2025年度に100%(全件実施)としていましたが、2024年度にこの目標を前倒しで達成しました。
具体的には「25中計目標達成に向けた資本効率重視による既存事業の収益最大化」(光ファイバ・ケーブル、電力ケーブルシステム等)及び「2030年までに実現する新事業創出に向けた基盤整備」(グリーンLPガス等)に関するテーマ等、事業戦略の確認や事業化構想の立案、顧客アクセスの足掛かり等優先度が高いと判断されたテーマについて実施しました。なお、2025年度には、これらの結果を具体的な事業活動へ展開していきます。
※1 2022年時点で設定した事業強化・新事業創出テーマに関して、全件実施を意味します。
※2 2024年度に前倒し達成。具体的な事業活動へ展開を進めていきます。
<リスクミニマム(事業安定化):知的財産ポートフォリオ>
※3 光ファイバ・ケーブル、電力ケーブルシステム、ワイヤハーネス、半導体製造用テープを含むファイバ・ケーブル事業部門、電力事業部門、自動車部品事業部門、AT・機能樹脂事業部門の合計
<参考指標>