人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数912名(単体) 2,889名(連結)
-
平均年齢46.5歳(単体)
-
平均勤続年数21.8年(単体)
-
平均年収5,814,000円(単体)
従業員の状況
5【従業員の状況】
(1)連結会社の状況
|
2025年3月31日現在 |
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
建材 |
1,971 |
形材外販 |
673 |
環境 |
48 |
物流 |
107 |
その他 |
30 |
全社(共通) |
60 |
合計 |
2,889 |
(注) 全社(共通)として記載されている従業員数は、特定のセグメントに区分できない管理部門に所属しているものであります。
(2)提出会社の状況
|
|
|
2025年3月31日現在 |
従業員数(人) |
平均年令(才) |
平均勤続年数(年) |
平均年間給与(千円) |
912 |
46.5 |
21.8 |
5,814 |
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
建材 |
804 |
環境 |
48 |
全社(共通) |
60 |
合計 |
912 |
(注)1.従業員数は就業人員であり、出向派遣者(30名)は含めておりません。
2.平均年間給与には、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
3.全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。
(3)労働組合の状況
提出会社及び一部の連結子会社(4社)の労働組合は、不二サッシユニオン(2025年3月31日現在の組合員数は1,263名)として全日本労働組合総連合会・ジェイ・エイ・エムに所属しております。
また、その他の連結子会社の一部においても労働組合が組織されております。
なお、労使関係は安定しております。
(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
①提出会社
当事業年度 |
||||
管理職に占める女性労働者の割合(%) (注)1. |
男性労働者の育児休業取得率(%) (注)2. |
労働者の男女の賃金の差異(%) (注)1. |
||
全労働者 |
正規雇用労働者 |
パート・有期労働者 |
||
5.1 |
40.0 |
61.8 |
60.9 |
60.6 |
(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
②主要な連結子会社
当事業年度 |
|||||
名称 |
管理職に占める女性労働者の割合(%) (注)1. |
男性労働者の育児休業取得率 (%) (注)2. |
労働者の男女の賃金の差異(%) (注)1. |
||
全労働者 |
正規雇用労働者 |
パート・有期労働者 |
|||
不二ライトメタル㈱ |
4.7 |
18.8 |
73.5 |
77.2 |
74.2 |
関西不二サッシ㈱ |
- |
50.0 |
72.8 |
81.7 |
87.7 |
日海不二サッシ㈱ |
9.1 |
100.0 |
72.3 |
70.4 |
55.1 |
㈱不二サッシ九州 |
11.5 |
50.0 |
80.5 |
78.9 |
65.9 |
不二サッシリニューアル㈱ |
3.9 |
- |
80.6 |
78.8 |
109.5 |
(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
3.連結子会社のうち主要な連結子会社以外のものについては、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。
提出会社及び主要な連結子会社における男性労働者の育児休業の平均取得日数は、65日となっております。
男女の賃金格差は、男性の賃金に対する女性の割合を示しております。当社の賃金制度は、年齢、性別に関係なく、同一の職務であれば同一の賃金を支払うこととして設計されております。しかし、現状において、当社及び国内連結子会社において男女間の賃金格差が生じております。これは、上記のとおり、管理職に占める女性従業員の割合が低い水準にとどまっていることなどが要因となっております。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2【サステナビリティに関する考え方及び取組】
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、中期経営計画~2030年度/創業100年に向けた再構築~(FY25-27)において、基本方針として「収益面・経営面の双方で確固たる基盤を構築し、誰もが安定・安心できる企業グループとなる」と掲げております。本計画は、財務・非財務両面からの企業価値向上を目指すものであり、その土台となる経営基盤に重きをおく成長投資と株主還元の拡大に努めてまいります。PBR向上に向けては、ROE8.0%以上を継続しつつPERを引き上げるための施策の方向性として、持続可能性(サステナビリティ/ESG)向上に資する事業展開、人的資本投資の拡充などを設定しております。
これらの取り組みの総体が当社グループのサステナビリティ経営であり、「不二サッシグループ サステナビリティビジョン2050」(以下、「サステナビリティビジョン2050」)は、中期経営計画も含む、経営理念の実現を通じて中長期的な企業価値の向上に努める上での基本方針であります。この長期ビジョンにおいて、「経営理念」とサステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)、さらに環境方針、人権方針やコーポレートガバナンスなどの各種方針との結び付きを示しております。なお、現在のマテリアリティは2022年度に特定したものであり、特定にあたっては持続可能な開発目標(SDGs)やISO26000などを参照し、社会情勢や事業環境を踏まえて「環境」「社会」「ガバナンス」の観点別に整理しております。このビジョンの行動指針に基づき、脱炭素社会やサーキュラ
ーエコノミーの実現、社会の期待する製品づくり、人権を尊重した公正な事業活動を推進してまいります。
図:サステナビリティ経営の概要(左)、サステナビリティビジョン2050(右)
当社グループではアルミサッシ製品をはじめとした「ものづくり」を原点とするメーカーかつエンジニアリング企業の責任として、事業と気候変動および自然資本との関わりについてバリューチェーン全体を通じて検討し、リスク低減と機会の活用に努めております。
この取組の一環として、事業との関係性から生まれるサステナビリティ関連課題のうち気候変動及び生物多様性に関する重要情報を、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)フレームワーク及びTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)フレームワークに沿って文中で開示しております。
1.ガバナンス
当社グループは、2025年を初年度とする新中期経営計画~2030年度/創業100年に向けた再構築~を定め、持続可能性に資する事業を展開しサステナビリティ経営を推進してまいります。気候変動、生物多様性や自然環境に関連する課題につきましても当社にとっての重要課題として認識しております。
ガバナンスの中核となるのはサステナビリティ委員会であり、その事務局はサステナビリティ経営を効率的に進めるための専門組織であるサステナビリティ推進室が担っております(ともに2023年度立ち上げ)。
この委員会は四半期に一度開催され、代表取締役社長が委員長を務め、代表取締役専務・経営会議メンバー、および不二ライトメタル社長で構成されております。
具体的役割として、サステナビリティの基本方針の策定およびサステナビリティ推進活動における計画、短期・中期・長期の目標策定、取組の推進・モニタリングを実施しております。これには気候変動および自然資本課題も含まれており、サプライチェーンにおける依存、影響、リスク、機会の管理・監督に関しても、本委員会によるモニタリングのもとサプライチェーン全体におけるリスクおよび機会への対応を行っております。
対応の一環として、サステナブルな社会実現に向けた「不二サッシグループ人権方針」を定め、販売先・調達先を中心としたビジネスパートナーとの関係において人権を尊重し、これに則ったエンゲージメントを行えるような体制づくりを進めております。
当委員会で議論された内容は、サステナビリティ委員長から取締役会へ四半期に一回の頻度で報告しております。
取締役会は委員会で検討したサステナビリティや気候変動に関する課題について審議、必要に応じて委員会へ諮問を行い、これらの課題の決定と取組(KPIとしてのGHG排出量の削減など)をサステナビリティ委員会委員長の責任のもと、モニタリングしております。
なお、このガバナンスの内容はサステナビリティ全般に関する説明であり、気候変動および生物多様性関連、人権だけでなく、人的資本および多様性などについても包含するものであります。
2.戦略
前記、当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組に記載しております通り、中長期的な持続可能性・将来性向上のためには、サステナビリティに関する戦略に基づく事業展開が重要であると考えております。
この戦略は、サステナビリティ推進室及びサステナビリティ推進部会が立案し、サステナビリティ委員会における審議を経て策定されております。
当社グループは、建材品・アルミ形材の製造及び販売を主な事業としていることから、環境分野において、脱炭素に向けた取組(気候変動への対応)、循環型社会の形成、サプライチェーンマネジメントをマテリアリティに設定しております。
特に、脱炭素推進に際し、2024年6月13日、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量削減に関するSBT(Science Based Targets)認定を短期目標およびネットゼロ目標とも取得しております。また、2024年2月からGXリーグ(GX:グリーントランスフォーメーション)へ参画し、GX ETS(GHG排出量取引制度)におけるGroup X企業(2021年度Scope1(直接排出量)10万t-CO2e未満)としてGHG排出量削減目標および実績を公開しております。いずれも、当社グループが関わるサプライチェーン全体のGHG排出量削減に向けたコミットメントとして、今後も選ばれる企業グループであり続けるために必要な取り組みであると認識しております。
脱炭素社会の構築のための具体的な取り組みとしては、脱炭素関連の商品開発(GHG排出量算定および関連認証取得、断熱・省エネ、創エネ、リサイクル、樹脂または木製組み合わせ等)、アルミリサイクル材・グリーンアルミの積極的利用、太陽光発電による再生可能エネルギーの導入、燃料転換や先進製造設備の導入等を推進しております。
また、社会分野におけるマテリアリティの取組の中で、人的資本への投資について、従業員一人ひとりの成長を支援する「働きがいのある会社」と、多様な人材の多様な働き方を支援する「働きやすい会社」を目指し、従業員が能力を発揮できる制度・環境の整備を包含する持続的な人材輩出サイクルを構築してまいります。
これらの他にも、持続可能な暮らしとまちづくりへの貢献に向けて、リニューアル事業の拡大や防災システム製品の研究にも取り組んでおります。
(1)脱炭素(気候変動対応)
分析のプロセス
TCFD提言で示された各リスク・機会の項目を参考に、気候変動問題が当社グループの事業に及ぼすリスク・機会に関して、以下のステップで検討いたしました。
また、1.5℃~2℃シナリオと、4℃シナリオの二つのシナリオを用いて、政策や市場動向の移行(移行リスク・機会)に関する分析と、災害などによる物理的変化(物理リスク・機会)に関する分析を実施いたしました。
気候変動シナリオ
シナリオ名 |
想定する世界観 |
1.5℃~2℃シナリオ (脱炭素シナリオ) |
気候変動の影響を抑制するためにカーボンニュートラル実現を目指した取り組みが活発化。移行リスクが大きくなると想定している。 |
4℃シナリオ (高排出シナリオ) |
気候変動対策は現状から進展しない。物理リスクにおける異常気象の激甚化や海面上昇リスクによる影響が大きくなると想定している。 |
リスク・機会のインパクト評価と対応策の選定
・リスク
2℃未満シナリオにおいては規制の強化によるエネルギー転換にかかる費用の増加、低炭素商品の投資額の増加、4℃シナリオでは自然災害の激甚化による費用の増加リスクが予想されます。
リスク |
分類 |
ドライバー (要因) |
リスク内容 |
時間軸 |
影響度 |
重要度 |
対応策 |
移 行 リ ス ク |
法規制 ・政策 |
炭素税等による負担 |
自社排出量に対する排出量取引などのコスト発生 |
中期 |
大 |
大 |
〔Scope1〕 |
法規制 ・政策 |
再生可能エネルギー価格の高騰 |
エネルギー費用抑制のための設備省エネ化や燃料転換コスト発生 |
中期 |
大 |
大 |
・生産の集約化・効率化 ・排熱の有効活用およびそれを可能にする生産・設備の最適化 |
|
技術・市場 |
低炭素製品への投資 |
脱炭素関連製品(注)1の需要増加に対応するための開発・設備投資額(注)2増加 |
中期~ 長期 |
大 |
中 |
・脱炭素をテーマとする研究開発の強化 ・新製品への投資に関するグリーンファイナンス活用 ・脱炭素市場動向の調査と製品への反映 |
|
物 理 リ ス ク |
急性 |
自然災害の激甚化 |
〔売上被害〕 自然災害(注)3に伴う営業停止による売上減少 〔直接被害〕 事業所の浸水等により被災した施設等の復旧費の発生 |
短期~ 長期 |
大 |
中 |
〔短中期〕 ・排水設備の増設 〔長期〕 ・工場・設備の防災強化 ・リスク分散のための生産協力体制の構築 ・重要な設備や在庫への防水提の設置、床面の上昇 |
・機会
環境配慮型事業の拡大や防災需要の高まりによる売上の増加が予想されます。
機会 |
分類 |
ドライバー |
機会内容 |
時間軸 |
影響度 |
重要度 |
対応策 |
機 会 |
資源効率 |
エネルギーの効率的利用 |
燃料使用量削減による運用コストの削減 |
中期 |
中 |
中 |
〔Scope1〕 ・ヒートポンプをはじめとする省エネ設備等の導入 ・廃棄物・廃熱利用の促進 〔Scope2〕 ・再生可能エネルギーへの切り替え拡大(PPA、太陽光発電、グリーン電力証書等) |
エネルギー源 |
再生可能エネルギー発電設備の導入 |
太陽光発電や蓄電技術の導入・拡大による、電力や燃料購入コストの削減 |
中期 |
小 |
小 |
・社内炭素価格の導入による省エネ投資の促進 ・設備導入におけるグリーンファイナンス活用 |
|
製品及びサービス |
低炭素製品の選好 |
脱炭素関連製品(注)1の需要増加に伴う売上増加 |
短期~ 長期 |
大 |
中 |
・脱炭素をテーマとする研究開発の強化と市場動向の分析 ・新製品への投資額の増加 |
|
製品及びサービス |
防災需要の高まり |
防災性能の高い製品需要の増加に伴う売上増加 |
短期~ 長期 |
中 |
中 |
・防災をテーマとする研究開発の強化と市場動向の分析 ・新製品への投資額の増加 |
(注)1.省エネ・高断熱・ZEB対応、リサイクル、CFPなどの認証付与、アルミ・樹脂または木複合等
2.スクラップ専用炉、電気炉も含む
3.台風、高潮や洪水による浸水、自然災害によるサプライチェーン断絶など
・使用シナリオ:〔移行リスク〕 IEA WEO2023 NZE2050
〔物理リスク〕 ・IPCC RCP8.5 ・IPCC AR6 SSP5-8.5
・時間軸 :短期 1年以内、中期 ~2030年、長期 ~2050年
・影響度 :大 影響額3億円以上、中 1億円以上~3億円未満、小 1億円未満
・重要度 :時間軸と影響度を勘案して3段階で総合的に判断
気候変動に関するリスク・機会への対応策に関する実績
・全体像
気候変動に関するリスクおよび機会への対応の全体像として、2024年度に「不二サッシグループ 脱炭素ロードマップ」をトランジション戦略も兼ねて策定いたしました。長期的思考が必要となる、設備の低炭素化、太陽光発電量の拡大や低炭素アルミ製品の強化から取り組みを始め、社会課題対応を推進力として価値創造を進めております。
以下、 主な取り組みの進捗および実績を説明いたします。
・Scope1,2の削減
生産拠点の省エネ施策として、将来的なインターナルカーボンプライシングの活用の準備段階として、年間の設備更新計画の事前評価にGHG排出量削減を組み込みました。計画上の削減量あたりの投資額に関する基準を設けることによって、排出量削減に資する計画は評価が向上し、また、インターナルカーボンプライシングの設定の参考といたします。
さらに、当社グループの排出量削減において重要な生産設備を所有する拠点の設備投資については、サステナビリティ推進部会も共同で計画を評価しており、その方針に沿った設備更新を順次実施しています。
なお、これらの設備投資計画の評価に基づき、SBT認定目標およびGX ETSに対するリスクヘッジとして、カーボンクレジットの調達も段階的に実施しております。
・再生可能エネルギー発電設備の導入
当社グループ全体として、主に生産拠点の建屋屋上を利用した太陽光発電システムの導入を進めております。
既に稼働している千葉事業所第一発電所・第二発電所、関西不二サッシ発電所に加え、2024年度には不二ライトメタル本社および不二サッシフィリピン社でも太陽光発電所の稼働を開始いたしました。
2025年度も、千葉事業所に太陽光発電所を増設するほか、不二ライトメタル本社工場で当社グループ初となる再生可能エネルギー電力契約(非化石証書付き)を締結しており、今後もさらなる太陽光発電設備の導入を計画しております。
・脱炭素関連製品の強化
現在、建築物のライフサイクルカーボン算出・評価の動きが行政および建築業界で活発化しております。
建築物ライフサイクルカーボン(生涯CO2排出量)のうち、居住などの使用時におけるオペレーショナルカーボンに関しては、当社グループは多種多様な断熱サッシを製造・販売しており、その中には既存の窓を変更することなく簡易に断熱性を高めたいというニーズに応える樹脂内窓も含まれております。
建築物の使用時を除くエンボディードカーボンに関しては、LCA(ライフサイクルアセスメント)の考え方に基づく低炭素アルミ建材「Reサッシ R100」および「Reサッシ グリーン」の新投入を2025年5月に発表しております。
さらに、2025年6月には、千葉事業所で製造する建材用アルミ形材が、LCAに関する第三者認証である「SuMPO EPD」に登録されました。今後、同様のEPD(Environmental Product Declaration:製品環境宣言)取得を「Reサッシ R100」などへ拡大してまいります。
こうした製品LCAあるいは製品CFP(カーボンフットプリント)には、GHG排出量削減において大きく2つの効果があります。1つは、当社グループのGHG排出量削減の活用です。アルミニウムは「電気の缶詰」と呼ばれるほどエネルギー負荷の高い素材ですが、アルミリサイクル材を使用することで調達する原材料としての排出量を大幅に削減できるため、当社グループのScope3削減に加えて、この削減を反映した数値を製品単位でも確認することが可能となります。Scope1、2の削減も同様に反映されます。もう1つは、販売先にとってのScope3の削減です。LCAが算出されている製品を使用することによって、当社グループの排出量削減が反映された、より低炭素な製品を調達することが可能となります。
さらに、「Reサッシ R100」「Reサッシ グリーン」はいずれもサッシ等の最終製品の構成部材であるため、断熱サッシやアルミ・樹脂または木複合製品へ適用することでより効果の高い低炭素建材とすることも視野に入れております。
また、アルミサッシは解体後の回収材(スクラップ)を再溶解すれば同じ品質のアルミサッシを再生産することができるため、その点でアルミリサイクル材の積極的利用はサーキュラーエコノミー(循環経済)の実現にも資する取り組みとなっております。
ただし、アルミサッシ由来のリサイクル材は建物の解体を起点として市場へ供給される材料であるため、それだけに頼ることは、受注から完成までのサイクルが長くなる傾向にある建築業に対して調達の安定性を損なうというリスクもあります。そのため当社グループでは、再生可能エネルギーで製錬された低炭素な原材料であるグリーンアルミの調達にも戦略的に取り組んでおります。
・自然災害への対策
対応策の第一段階として、当社グループの各生産拠点が実施している浸水等への備えを取りまとめており、今後は有用な施策を横展開するなどグループ全体のBCPを高めてまいります。
・防災をテーマとする研究開発の強化
地震発生後すぐに建物の損傷度合いを把握し、安全性を判断する仕組みとして、建物の変形度合いを測るセンサとLEDを組み込んだ「LED光センサアラートシステム」付きカーテンウォールを開発・検証しております。これまでは、産学連携により実験施設における非構造部材や設備機器などの損傷状況を把握する実験を実施し、迅速な被害判定システムの開発に取り組んでまいりました。2024年度には次のフェーズとして、実建物(小学校)における瞬時損傷判定技術の実証実験を開始いたしました。
(2)生物多様性
LEAPアプローチの実施
当社グループでは、TNFDの提供するLEAPアプローチの手法を活用し、自然との依存影響関係の特定、自然関連のリスク・機会の特定、及び環境負荷の低減施策やリスク・機会への対応策の検討を行っております。
2024年度3月時点でのLEAPアプローチ対象
調査対象
→アルミニウム原材料のボーキサイト(当社ビジネスの主要材料におけるサプライチェーン最上流資源)
対象事業範囲
→アルミニウム製サッシ・ドア製造業(リニューアル事業含む)、アルミニウム・同合金圧延業
調査・分析する場所
→上記事業に関係する当社グループの工場拠点、ボーキサイト鉱山の採掘段階
上記対象については適宜拡大及び深堀を実施いたします。
なお、現段階では、LEAPアプローチの「LE(Locate=発見、Evaluate=診断)」に該当するフェーズを行い、事業と自然との依存影響関係や、要注意地域(TNFDの定義に基づく、生物多様性の観点で重要な地域)を特定いたしました。次の段階である「AP(Assess=評価、Prepare=準備)」についても引き続き実施しており、リスク・機会の特定などを進めているところです。
また、使用したツールにつきましても、以下にお示しいたします。
図:LEAPアプローチの実施フロー
表:分析に使用したツール
自然資源との依存影響項目の把握
事業が自然とどう係わっているかを把握するために、外部ツール「ENCORE」を使用いたしました。これは、事業種別ごとに業界代表値としてどのような自然資源を使い、どう影響を与えるかを評価できるツールとなっております。
自社拠点及びボーキサイト鉱山に関する評価結果と、実際の事業活動(自然資源のインプット/アウトプット)を元に、以下のようなヒートマップを作成し、特に懸念すべき自然との依存影響関係を把握いたしました。
図:ENCOREにおける依存影響項目
※同一事業内で複数の経済活動が考えられる場合には結果の大きいものを採択
直接操業の製造プロセスでの依存と影響
・ 製造過程で出る化学物質や廃棄物が、土壌や水域を汚す可能性がある(影響)
・ 工場の機械による騒音が、周囲の環境に影響を与える可能性がある(影響)
・ 一部の工程で大量の取水を行っており、水資源への依存が高い(依存)
当社グループではいずれの該当項目においてもその影響が最小限となるように対応し、法規制の対象となる項目については規定値以下を順守しておりますので、本結果においては配慮すべき依存影響項目としての認識を持ったうえで引き続き操業を行ってまいります。
サプライチェーン上流(ボーキサイト)の調達プロセスでの依存と影響
・ 鉱山での採掘に大量の水を使っているため、水資源への依存、影響が共に高い(依存・影響)
・ 排ガスや有害物質が出る可能性がある(影響)
調査範囲選定時における認識の通り、採掘段階では自然資本への依存影響はいずれも高い評価となりました。
要注意地域の把握
TNFDは、以下の4つの観点から「要注意地域」を判断するよう推奨しております。
1. 生物多様性の観点での重要性
2. 生態系の健全性の高さ
3. 水資源のリスクの高さ
4. 自然環境の文化的価値
これらをもとに地図分析ツールを使用して、生物の指定保護地域や生物多様性重要地域、洪水リスクや水ストレス(水不足リスク)の状況など、外部データを参考に調査いたしました。(上記 表:分析に使用したツール参照)
・直接操業拠点について
当社保有拠点工場では主にアルミサッシ等を製造しております。国内の拠点では、熊本県有明地域の工場が鳥獣保護区やラムサール条約に基づく湿地に位置していることがわかりました。他にもいくつかの拠点が鳥獣保護区に含まれております。水ストレスや生態系への影響が特に大きい拠点は見られませんでした。
表:直接操業拠点における要注意地域分析結果
・ボーキサイト資源の調達地域について
当社グループにとって重要な原材料であるボーキサイトは鉱山から調達される自然資源のひとつです。このような資源を得るためには、その地域の自然環境や社会の変化を把握することがサステナビリティ課題に対応していく上でも重要であると認識しております。この背景を踏まえ、LEAPアプローチの手法に基づき資源調達地域における自然との関係性の状況を調査いたしました。
調達対象鉱山の選定においては、一次サプライヤー各社とも時期などで調達先が変動するため、確定情報を得ることが困難と判断いたしました。そのためこの度の調査は、収集可能な範囲の情報と外部文献をもとに、主な調達先と見られる地域を調査いたしました。
調査結果は以下の通りであり、調達地域にはそれぞれ異なる特性があることが分かりました。
・ 主要調達先の国の鉱山は、水ストレスの高い地域や保護地域にある可能性がある。
・ 別の主要調達先では、生物多様性が豊かな地域や先住民族との共生が求められる地域が含まれている可能性がある。
・ 特にリスクが高くない地域も存在している。
総括
この度実施した分析においては、対象事業におけるサプライチェーンにおいて特に自然との関連性が強く、注意が必要となる拠点を把握することができました。直接操業においては各拠点の自然保護区域該当箇所などの具体的な情報などが得られ、環境負荷が高いと事前に想定していた調達段階においても想定から大きく逸脱することなく、特に依存影響項目において数多くの自然資本への高い関係性を確認いたしました。
当社では、自然と共にある社会の実現「ネイチャーポジティブ」達成に向け多様なステークホルダーとの連携が必要不可欠であると考えております。その一環として、現在は千葉県主導で行われている絶滅危惧種の保存貢献活動である「ヒメコマツの回復計画」に系統保存サポーターとして2020年より参加しており、苗木の育成と管理を行っております。今後はLEAPアプローチの分析結果を踏まえ、自治体等の外部組織との連携体制も念頭に置きつつ、更なる具体的活動を検討・実施してまいります。
(3)人的資本
当社では企業発展の原動力は優秀な社員であるとの認識に立ち、経営理念・経営方針に則り、仕事に対する生きがいをもった創造的な従業員の育成を図ることを基本的な考え方としております。
今年度より従業員エンゲージサーベイを導入し、その結果をもとにPDCAサイクルを回すことによって組織全体のエンゲージメントの向上に取組んでおります。また、年齢、性別等に囚われない昇進、昇格基準の明確化、多様な業務ごとの公平、公正な評価制度等を骨子とする人事制度改定に着手しており、2025年度の導入を予定しております。
従業員育成に向けた具体的な取組みとして、次世代を担う若手社員を対象に、当社の将来像を考察する機会として「新中期経営計画の策定」「新オフィスビル移転プロジェクト」等に参画させております。また、自らのキャリアパスを自発的に考える仕組みとして社内インターンシップ制度の活用も推進しております。
深刻な労働力不足への対応として、若いサッシ施工技能者の雇用、育成を目的とする「不二サッシ施工技能者育成プロジェクト」を発足、その専担会社として当社の非連結子会社である㈲大沼工業所を母体とする不二サッシS・C㈱を2025年4月に設立致しました。当社では本プロジェクトを通じ、「少子高齢化社会への対応」と「技能伝承」の両立に努めてまいります。
(4)人権
当社グループは、事業活動における人権尊重の責任を果たすため、2022年度に「不二サッシグループ人権方針」を策定いたしました。グループ社員全体への人権課題意識の浸透および、サプライチェーンに対しても人権を尊重した事業活動の促進を図ってまいります。
また、人権リスクの把握及び防止・軽減のため、人権デューデリジェンスのプロセスに基づいた取り組みを推進してまいります。2022年度より、当社サプライヤーに向けたアンケートにおいて人権デューデリジェンスの認識・取り組み状況をヒアリングし、その結果に合わせた情報提供などを実施しております。
今後は、人権課題に取り組む社内ワーキンググループの設置を行い、人権リスクへの対応を進めてまいります。その準備段階として、新たに、不二サッシグループのビジネスにおいて重要な原材料であるボーキサイトの鉱山について、周辺地域のリスク等の調査にも着手いたしました。調査の詳細は前記(2)生物多様性において記載しておりますが、当社グループは一次サプライヤーを介してアルミ新地金を調達しており、それらのサプライヤーが人権も含む様々な情報を勘案するため採掘段階の鉱山は各社時期などで変動することが把握できております。現時点では、それらの中で主要と推測できる鉱山を調査対象とし、先住民族も含む周辺地域のリスク把握に努めております。
3.リスク管理
当社グループは、マテリアリティの特定のプロセスにおいて、リスク及び機会を十分に検討しており、特にリスクについては、その内容に応じた各所管管理部署が経営レベルへ定期的な報告を実施しております。今後は、サステナビリティに関するリスクを一元的に管理し、対応する委員会の設置等も検討してまいります。
(1)特定・評価プロセス
サステナビリティに関するリスクの特定は、サステナビリティ推進室およびサステナビリティ推進部会によって実施しております。特定されたリスクは、サステナビリティ委員会で審議と定量化の評価と対応策の実施難易度に応じて優先順位の評価がつけられ、対応に向けた戦略方針の策定を行うことでリスクを管理しております。
(2)管理監督プロセス
サステナビリティ委員会にて策定した対応策は四半期に一度取締役会に報告・監督され、各事業部に展開されます。対応策の内容により、サステナビリティ推進部会で実施方法を議論し、サステナビリティ推進室が経営会議等を通じてさらに詳細な指示を事業部へ行っております。
(3)全社統合プロセス
各事業部およびグループ会社から抽出されたサステナビリティ関連以外の全社的なリスクもサステナビリティ委員会が評価し、取締役会へ報告しております。今後全社的なリスク管理を行う組織の設立は、別途取締役会および経営会議等で検討いたします。
なお、このリスク管理の内容は、ガバナンスに関する事項と同様にサステナビリティ全般に関する説明であり、気候変動関連、人的資本および多様性、人権についても包含するものであります。
サステナビリティに関するリスクについては、第2.事業の状況3.事業等のリスクを併せてご参照ください。
4.指標及び目標
サステナビリティに関する指標及び目標は、サステナビリティビジョン2050及びマテリアリティの区分に則り設定しております。設定プロセスとしては、サステナビリティ推進室およびサステナビリティ推進部会によって立案され、サステナビリティ委員会における審議を経ております。
現在は、マテリアリティの中で優先順位が高いと判断した項目から順に指標及び目標を設定しております。
(1)脱炭素(気候変動対応)
当社グループは、気候関連問題が経営に及ぼす影響を評価・管理するため、GHGプロトコルの基準に基づき2023年度の温室効果ガス排出量の算定を実施いたしました。温室効果ガス排出量の削減目標は、2021年度比2030年度までにScope1+2を42%削減、Scope3はカテゴリ1、4、11を対象に30%削減を目指しております。長期目標として2050年度までにネットゼロを目指します。
なお、この温室効果ガス排出量の削減目標は、SBTiの審査を受け認定されたものであります。
目標期間における進捗としては、2023年度はScope1+2およびScope3ともに順調に削減が進行し(Scope1+2:線形的な削減で仮定したベンチマーク9%に対して10%削減となり1%先行、Scope3:同様に7%に対して16%削減となり9%先行)、2024年度はScope1+2(内、特にScope1)について削減ペースが落ちたもののScope3は継続して順調に削減を進めております(Scope1+2:ベンチマーク14%に対して11%削減となり3%遅延、Scope3:同様に10%に対して20%削減となり10%先行)。
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Scope1+2 |
Scope3 |
2021年度実績(基準年) |
77,726 t-CO2e |
830,411 t-CO2e |
2023年度実績 |
69,727 t-CO2e |
696,987 t-CO2e |
2024年度実績 |
69,066 t-CO2e |
665,800 t-CO2e |
2030年度目標 基準年:2021年度 |
42%削減 ▲32,645 t-CO2e |
30%削減 ▲240,349 t-CO2e |
2050年度目標 |
ネットゼロ達成 |
(注)1.当社グループSBTにおいては、海外グループ会社を目標の対象から除外しております。
2.当社グループSBTにおけるScope3の2030年度目標の削減対象はカテゴリ1、カテゴリ4、カテゴリ11です。
3.台風、高潮や洪水による浸水、自然災害によるサプライチェーン断絶など
また、当社グループの脱炭素施策において重要なアルミリサイクル率の目標も設定しております。対象は建材事業、アルミリサイクル率の定義は日本サッシ協会に準拠しており、2050年度までにアルミリサイクル率100%を目指してまいります。これに対する2024年度の実績は約70%となっております。
(2)生物多様性
TNFDガイダンスにて開示が要求される項目での、LEAPアプローチによる分析結果を踏まえた自然関連課題の管理指標について現時点で把握可能であった開示指標について以下にお示しいたします。
表:グローバル中核指標
目標設定においては、当社のサステナビリティ経営に関する方針である「サステナビリティビジョン2050」に則り、気候変動課題と生物多様性のトレードオフや相乗効果に対しても考慮しながら現在検討を進めております。
(3)人的資本
当社グループは、女性活躍推進の観点より、2024年6月に女性社外取締役を招聘し、採用者に占める女性割合を30%以上とする目標に向け採用活動を行った結果、当連結会計年度において目標を達成いたしました。
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前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
採用者に占める女性割合 |
28.2% |
30.2% |
国際人材の登用では不二サッシフィリピン社に不二サッシ設計センターを開設いたしました。現地への講師派遣、日本国内の研修等を通じてスキル向上に努めるとともに社内における日本語教育充実等により高度外国人材の採用等を通じて更なる人員の増強を進めてまいります。
また、2022年7月以降、カンボジアから毎年10名の技能実習生の受け入れを継続しており、2025年度はこの中から、特定技能検定合格者を社員として迎えいれる予定であります。
障がい者雇用については社会福祉法人メイプルの運営支援と通じて障がい者の就業機会の確保に努めております。
(4)人権
人権に関する指標及び目標の設定に向けた準備の一環で、2022年度より、当社サプライヤーに向けたアンケートにおいて人権デューデリジェンスの認識・取り組み状況をヒアリングし、回答状況を集計しております。
今後は、人権に関する調査・分析結果を実情に合わせて整理し開示を検討してまいります。