2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

以下において、当社グループの事業その他に関するリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも事業展開上のリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
 当社は、これらのリスクの存在を認識した上で、その回避及び顕在化した場合の対応に努める所存であります。
 なお、本項において将来に関する事項が含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において、当社グループ及び当社経営者が判断したものであります。

(1) 自動車産業の動向

 当社グループの売上は、その90%超が自動車産業向けのものであり、なかでも日系自動車メーカーを主要な取引先としていることから、当社グループの業績は日系自動車メーカーの生産販売動向に影響を受けます。この動向に関係する事象として中国やタイにおける日系OEMの販売低迷やEV車のシェア増加、米国追加関税政策などがあります。また、自動車業界の競争激化が進んでおり、当社グループとしては、合理化による原価低減並びに製品構成の高付加価値化により、製品価格引下げが収益性低下につながらないよう努力いたしております。しかし、サプライヤー間の競争上、収益性を低下させる原材料費や物流費、エネルギー費用などの増加、製品価格の引下げを実施せざるを得ない可能性があり、その場合には当社の収益にも影響することが考えられます。当社としては、今後も取引先との連携を強化し、リスク管理を実施してまいります。

 また今後、カーボンニュートラル実現に向けた取組が急速に進む自動車産業において、CASEに対応した商品の開発、特に電動化対応商品の需要が高まる反面、燃料系部品、駆動系部品などの一部の製品で需要が減退する可能性があります。当社グループはこの受注減のリスクを打ち返すべく、「商品開発部」「MIRAI開発部」「最適開発推進部」を統括する「商品開発本部」を設立し、全社レベルで開発を推し進める体制を整備しております。高付加価値製品の技術開発を推進し、急成長が見込めるCASE新分野での活動を具体化し、CASE対応商品の受注拡大を目指してまいります。

(2) 特定取引先への依存

 当社グループは、日産自動車、そのグループ会社及びこれらに対する部品サプライヤー向け販売の売上に占める比率が高く、当社業績は日産自動車グループの生産販売動向に大きく影響を受けます。そのため、自動車生産台数だけに頼らない経営を目指します。実現に向けた施策の1つとして、2025年4月付でこれまでの商品群別の事業部制を廃止し、機能別の組織体制へ改編いたしました。機能別の体制を敷くことで、戦略の立案、意思決定の迅速化を図り、当社グループの持続的な成長につなげてまいります。また、日系以外の海外自動車メーカーへの拡販活動に注力し、引き続き取引先の多角化に努めてまいります。

 

(3) 品質関連

 当社グループは世界的に認められている品質管理基準に従って各種の製品を製造しております。全ての製品について欠陥がなく、不良品が発生しない製造を行っておりますが、不良品が発生した場合は製品回収費用並びに取引先に対する費用の補填などのコストが発生するリスクがあります。特に販売先である自動車メーカーのリコールにつながる製品の欠陥は多額なコスト負担が発生する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす事があります。そのため、国内外の品質の監理を担う「品質監理室」と「品質保証部」を統括した「品質保証本部」を2025年4月に新設いたしました。品質マネジメントシステムに沿った保証体制を構築することで、品質をさらに向上させ、リコールを発生させないような体制を整えております。

(4) 海外事業に潜在するリスク

 当社グループは、北米・欧州並びにアジア地域で事業展開をしており、これらの海外市場の事業展開において以下に挙げるいくつかのリスクが内在しております。米国の追加関税政策などの地政学的リスクによる事業影響についても今後注視していく必要があります。
 ① 予期しない法律又は規制の変更
 ② 不利な政治又は経済要因
 ③ 潜在的に不利な税影響
 ④ 地政学リスクによる社会的混乱

 ⑤ 諸外国同士による貿易摩擦

 これらの事項が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、海外事業に係る現地通貨建ての会計項目は、連結財務諸表作成のために円換算されていますので、為替相場の変動が業績及び財務状況に影響を及ぼします。

(5) 知的財産保護の限界

 当社グループは、知的財産に関する法律及び契約上の規制に基づき一定の固有財産権を確立し、保護するための措置を講じております。しかしながら、知的財産を保護するための措置は技術の不正流用の防止、第三者による類似技術の開発、もしくは取得の抑止等の防止には十分でないことが、判明する可能性があります。

 結果として、当社グループの技術の不正流用、第三者による類似技術開発及び権利侵害のクレームへの関与が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。そのため、知的財産権に知見を有する部門を設置しリスクの未然防止を図る体制を整えています。

 

(6) 原材料の価格高騰・調達難

 当社グループの製品は、原材料の大部分と一部の部品を外部より調達しておりますが、価格高騰や需給逼迫、調達先の不慮の事故等により、原材料・部品不足が生じ、その結果、当社グループの業績に影響を及ぼすリスクが存在します。そのため、調達先との安定的な取引関係維持に努めております。

 

(7) 物流の混乱と物流費高騰

 地域紛争等の世界情勢の混乱や異常気象に伴い、流通の混乱が発生しております。一部混乱は解消されつつあり、物流費の高騰も収まりつつありますが、北米・欧州並びにアジア地域で事業展開している当社グループの業績に影響を及ぼすリスクが存在します。

 物流費高騰への対策として、当社グループは物流合理化をさらに強化してまいります。

 

(8) 環境規制

 自動車部品業界は、広範囲な環境その他の法的規制の適用を受けております。燃費、安全性及び生産工場からの汚染物質レベル等規制が広範囲に渡っております。その規制の変更等により、規制を遵守するための費用が発生する可能性があることから、常に情報収集及び法規対応に取り組んでおります。

 

(9) 人財の確保

 当社グループの成長には、有能な人財を採用・育成し、雇用の維持を図ることが重要であると考えております。近年、労働市場における人財獲得競争は、ますます激しくなってきており、従業員の高齢化やダイバーシティ対応への遅れにより、多様性が確保できなかった場合や有能な人財を採用、育成できなかった場合、企業の発展が阻害されるリスクがあります。当社グループでは、「パイオラックスグループ人財基本方針」を制定し、多様な人財の確保と育成に積極的に取組、新たな発想力による企業発展を目指しております。

 

(10) 自然災害、感染症等

 国内のみならず全世界的に予期せぬ大規模な自然災害や感染症が発生した場合、原材料の調達を含む製品の製造や物流、販売活動に被害が出ることにより、当社の業績に影響を与えるリスクがあります。そのため事業継続計画(BCP)を策定し、リスクの未然防止を図る体制を整え、日常のリスク体制強化にも取り組んでいます。

 

(11) 情報セキュリティ関連

 当社グループは、情報システムに様々なセキュリティ対策を講じておりますが、外部からのサイバー攻撃、不正アクセス、コンピューターウイルスの侵入等により、情報システム等に障害が生じた場合や、企業情報及び個人情報等が社外に流失した場合は、事業活動の停滞や社会的信用の低下等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、年々多様化、巧妙化するサイバーセキュリティ上の脅威への対策として、情報システム部門が中心となり、情報セキュリティレベル向上の取組を進めております。サイバーセキュリティの脅威に対する技術的な対策に加え、定期的な教育・訓練を通じ、従業員の情報セキュリティに対する意識レベルの向上に努めております。

 

(12) 為替レートの変動

 当社グループの海外売上高比率は約6割を占め、為替変動は、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。将来における為替相場の変動に伴うリスクの軽減を図るため、為替予約を行っております。しかしながら想定を超える急激な為替変動により、当社グループの収益に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 気候変動等による影響

 気候変動が事業に与える影響について、シナリオ分析を通じてリスクと機会を特定し、対策を実施しておりますが、対応の不足や遅れにより以下のリスクが顕在化する可能性があります。

 

①気候変動によるリスク

(移行リスク)

 短中期においては、製造工程の脱炭素化に向けた設備投資、各国の環境規制への対応コスト、カーボンニュートラル達成に向けたエネルギーコスト等の増加リスクがあります。中長期においては、炭素税の導入やエネルギー転換による原材料費、輸送費の高騰、自動車業界におけるCASE動向、特に電動化の加速による既存製品の受注減等のリスクがあります。

(物理リスク)

 中長期においては、異常気象によるサプライチェーンの分断、工場・倉庫の操業停止、修繕コストの増加、エネルギー供給の不安定化等のリスクがあります。

 

②リスクへの対応策

(移行リスク)

 短中期におけるリスクへの対応策として、生産性向上を目的とした真岡工場リニューアルや徹底した省エネ施策等に取り組んでおります。中長期においては、環境配慮原材料の採用、地産地消化による調達コストの削減、CASE対応製品の開発及び販売を実施しております。

(物理リスク)

 地産地消化の拡大による在庫コストの圧縮、サプライチェーンの多極化や原材料の標準化による安定調達、工場や倉庫のレジリエンス強化に向けたインフラ整備等を実施しております。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社グループは、最大より最良を目指す「質重視」の経営方針に基づいて収益力の向上及び資本効率性の向上を実現すべく、自己株式の取得など総還元性向に軸足を置いた諸施策を機動的に実施しております。

 なお、資本政策として、2023年3月期から2027年3月期までの5期間は、自己資本の積み増しの抑制とグループキャッシュマネジメントの徹底により、連結配当性向100%の実施、2027年3月期まで1株当たりの年間配当金を92円以上とすることの維持を掲げております。

 当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会及び取締役会、中間配当については取締役会であります。

 当期の期末配当は当社普通株式1株につき53円とし、すでに実施した中間配当39円とあわせ、1株当たり年間配当92円を実施いたしました。

 また、内部留保金は、中長期的な企業価値増大のため、研究開発並びに生産設備投資に充当いたします。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下の通りであります。

 

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年11月7日

1,381

39.00

取締役会決議

2025年6月24日

1,821

53.00

定時株主総会決議