リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性がある主な事項を記載しております。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避、発生した場合の対応に努める方針です。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、別段の記載のない限り、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。
また、本書提出日現在において、以下に記載したリスクが顕在化する可能性はいずれも低いと判断しておりますが、リスクが顕在化する可能性が発生した場合には、早期に財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローへの影響度の検討及び分析を行い、必要な対応を図る方針としております。
(1)市場について
① オンライン英語学習事業の外部環境について
日本の英語学習ビジネスにおいて、オンライン英会話市場は外国語教室市場全体の10.3%、312億円となっております。コロナ禍を経てオンライン学習が一般化したことも含め、市場全体として伸びる余地があります。また、日本人出国者数は1,219,789人(出入国在留管理庁「出入国管理統計」・2024年3月速報値)となり、2019年同月比の約63%まで回復しており、英会話学習ニーズの需要増加が見込まれます。インバウンド需要の増加で日本国内でも英語を利用する機会が増加しており、英語学習ニーズは今後より一層高まると予想されます。
一方で、ChatGPTをはじめAIが加速度的な進歩を遂げている状況下において、競合環境も大きく変化しております。オンライン英会話事業者との品質・価格・サービス競争のみならず、AIを活用した新サービスの台頭、英語学習ニーズそのものの変容等、当社グループのサービス等が優位性を維持できなくなる場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
② ALT派遣事業の外部環境について
ALTは、文部科学省の定義において「基本的には、担当教員の指導のもと、担当教員が行う授業にかかる補助をする」役割と定められております。全国の教育機関に教員として各国の外国人材をALTとして派遣し、現場に立って指導する立場となります。
公立学校の場合、各自治体や教育委員会の方針に基づきALTの配置が決定されるので、経済上の理由などによって人員配置や予算の方針が変更された場合、当事業の遂行および業績に影響を与える可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症の拡大防止を目的とした海外渡航・入国制限が行われたように、人材の物理的な移動に制限が発生した場合、各教育機関への人員配置が困難となることから、当事業の遂行および業績に影響を与える可能性があります。
(2)当社の事業について
① 講師の確保について
オンライン英会話事業においては、質の高い英会話レッスンを行うことができる講師が必要となります。現時点において当社グループでは、これらの講師を確保し、オンライン英会話レッスンを提供できているものと認識しております。ALT派遣事業においては、各教育機関にALTを配置することが事業の基本であり、その人員確保が必要となります。
当社グループでは、引き続きこれらの講師の確保に努めていく方針であります。しかし、今後将来において、当社グループが求める的確なレッスンを行うことができる講師を適切な契約条件によって確保できなくなった場合、あるいはALTとして配置する講師の確保ができなくなった場合、当社グループの事業の遂行及び業績に影響を与える可能性があります。
なお、当該リスクに対して、オンライン英会話レッスンに関してはフィリピン子会社を中心に現地での講師採用及びトレーニングを実施する体制を構築しており、安定的な講師確保に取り組んでおります。ALT派遣事業においては、当社グループの強みを活かしたフィリピンにおける講師ネットワークの活用や、パキスタン政府との連携によるALT受け入れ等、当社独自のALT供給体制を構築し、講師供給力の強化を推進しております。
② フィリピンのカントリーリスクについて
オンライン英会話事業の英会話講師は、主にフィリピン在住のフィリピン人であります。また、当社の海外子会社であるRareJob Philippines, Inc.、RIPPLE KIDS EDUCATIONAL SERVICES, INC.及びRarejob English Assessment, Inc.は、フィリピンにおいて、英会話講師の管理やレッスンの供給を行っております。フィリピンは、近年著しい経済成長率をもって発展を遂げており、今後の経済成長が期待されております。
一方、フィリピンの経済成長による英会話講師の報酬水準の上昇のほか、今後の法令改正及び新たな法令の制定、新たな判例あるいは取引慣行や諸規則及び税制改正等は当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、フィリピンにおいて政情の不安定化や、内乱、テロなどの政治・社会情勢が悪化した場合についても、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
③ 技術、システム面のリスクについて
オンライン英会話事業をはじめ、当社グループのサービス提供及び事業運営において、コンピュータ及びインターネットの利用が不可欠です。また、近年は情報セキュリティ分野における脅威が複雑化・強大化しており、ネットワーク監視やセキュリティシステムの重要性が一層高まっております。
こうした背景を踏まえ、電力供給不足や災害・事故等による通信ネットワークの不具合によるサービス提供の停止や、外部の脅威や従業員の過誤等による重要なデータの消去又は不正流出が発生した場合、当社グループは損害賠償の請求を受ける、あるいは、社会的信用を失うことになり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
サービスの安定稼働や品質向上の観点では、技術進歩に合わせたシステム及びインフラのアップデートが必須となります。そのため、予測に基づくユーザー数等の拡大、新サービスや機能の開発・導入に備えた継続的な投資を計画しております。
ユーザー数の拡大や、サービスや機能の開発・導入の進捗等が当初の計画から大幅に乖離する場合、当初の計画よりも投資回収が滞り、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
④ 新規事業展開について
当社グループでは、今後も引き続き、市場ニーズに応じた英会話サービスの開発及び新規事業として、グローバルリーダー育成研修サービスの展開や海外進出、K12(未就学児から高校卒業までの教育期間)領域、幅広い学びの領域への事業拡大などに取り組んでいく方針ですが、これらによりシステム投資、宣伝広告などの追加的な支出が発生し、短期的に利益率が低下する可能性があります。また、予測とは異なる状況が発生し新サービス、新規事業の展開が計画どおりに進まない場合、投資を回収できず、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
⑤ ALT派遣事業の許認可について
ALT派遣事業においては、国内における人材派遣事業は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下、「派遣法」という。)に基づき、厚生労働大臣の許可を受けて行っております。派遣法では、労働者派遣事業の適正な運営を確保するため、派遣事業を行う者が派遣元事業主としての欠格事由に該当し法令に違反した場合や、当該許可の取消事由に該当した場合、当該事業の全部又は一部の停止や、許可の取消を命じられる場合があります。万一、当社グループにおいて重大な法令違反が発生し、許可の取消又は事業の停止を命じられた場合は、ALT派遣事業の事業活動全体に支障をきたすと想定され、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、政治・経済状況や市場の変化を取り巻く環境変化等を理由として、関係法令の改正や解釈の変更が行われる可能性があります。その場合、ALT派遣事業の事業活動に影響が生じ、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(3)組織体制について
① 代表取締役社長への依存及び当社グループの事業推進体制について
当社の代表取締役社長である中村岳は、経営方針や経営戦略の決定から新サービスの開発等の各業務分野に至るまで、当社グループの事業活動全般において重要な役割を果たしております。また、取引先やその他各分野に渡る人脈など、当社グループの事業推進の中心的役割を担っており、当社グループにおける同氏への依存度は高いものとなっております。
このため当社では、取締役会やグループ経営会議等において、その他の役員及び幹部社員との情報共有や経営組織の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかし、現時点においては、何らかの理由により同氏が当社の経営者として業務遂行が継続できなくなった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
② 人材の確保と育成について
今後の事業の拡大及び業務内容の多様化に対応して、優秀な人材を適切な時期に確保する必要があります。しかしながら、人材の確保が計画通りに進まない場合や、社外流出等の事由により既存の人材が業務に就くことが困難になった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
③ 小規模組織における管理体制について
当社は、2024年3月31日現在、取締役(監査等委員である取締役を除く)2名、監査等委員である取締役3名(全員が社外取締役)、従業員52名と小規模組織にて運営しておりますが、事業成長やM&A等により、当社グループの事業規模は拡大しております。当社では、事業の拡大に応じた組織整備や内部管理体制の拡充を図っておりますが、事業の拡大に応じた組織整備や内部管理体制の拡充が順調に進まなかった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(4)コンプライアンスについて
① 法的規制について
a. 個人情報保護法について
当社グループは、個人情報を含む多数のユーザー情報を保有及び管理しております。当社グループはこれらの情報資産の適切な管理に最大限の注意を払っており、ISMSの認証を取得しております。しかしながら、外部からの不正アクセス、システム運用における人的過失、従業員の故意等による顧客情報の漏洩、消失、改竄又は不正利用等が発生し、当社グループがそのような事態に適切に対応できず信用失墜又は損害賠償による損失が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
b. 特定商取引に関する法律について
当社グループが運営しているオンライン英会話サービスは、その殆どが「特定商取引に関する法律」の通信販売に該当しております。当社グループは同法の規定を遵守して業務を行っておりますが、同法を違反し、違反の旨の公表や通信販売に関する業務の停止命令を受けた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
c. 労働者派遣法について
当社グループが運営しているALT派遣事業は、労働者派遣事業として派遣法及び人材紹介事業として職業安定法に基づき、いずれも厚生労働大臣の許可を受けて行っています。当社グループは同法の規定を遵守して業務を行っておりますが、同法を違反し、許可の取り消しや業務の全部又は一部の停止命令を受けた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
② 知的財産権について
当社グループが各種サービスを展開するにあたっては、第三者に帰属する著作権等の知的財産権、肖像権等を侵害しないよう、事前に権利関係を調査するなど細心の注意を払っております。しかしながら、万が一、第三者の知的財産権、肖像権等を侵害した場合には、多額の損害賠償責任を負う可能性があり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
③ 訴訟発生リスクについて
当社グループでは、役職員に対するコンプライアンス教育を徹底し、法令違反等の発生リスクの低減に努めております。しかしながら、当社グループ及び役職員の法令違反等の有無に関わらず、取引先、第三者との間で予期せぬトラブルが発生し、訴訟に発展する可能性があります。これら提起された訴訟の内容及び結果によっては、多大な訴訟対応費用の発生や企業イメージの悪化等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)その他
① 配当政策について
当社は、株主に対する利益還元を重要な経営上の施策の一つとして認識しております。一方で、将来の成長投資に必要となる内部留保の充実と、財務基盤の確立、株主への利益還元を総合的に勘案することも重要だと考えております。このため、当社の資本コストを上回る投資案件がある場合には、企業価値向上につながる戦略的投資を実行し、持続的な売上高及び利益成長を実現することと、それを可能とする健全な財務基盤の確立を優先することが、株主の皆様との共通の利益の実現に資すると考えております。
したがって、当社は、当面の間は上記政策に沿う範囲の中で、株主の皆様に対して、安定的かつ継続的な増配を実現する形で剰余金の配当を行うことを基本方針といたします。しかしながら、本リスク情報に記載されていないことも含め、当社グループの事業が計画通り進展しない等、当社グループの業績が悪化した場合、継続的に配当を行えない可能性があります。このようなリスクを認識し、今後も経営計画の策定に際しては十分な検討を行い、目標達成を目指して取り組んでまいります。
② 為替変動について
オンライン英会話事業の英会話講師は、主にフィリピン在住のフィリピン人であります。講師報酬は主にフィリピンペソ建てで支払うことになっております。一方、ユーザーからのレッスン料収入は、円建てで決済しております。従いまして、フィリピンペソに対して円が安くなると、当社グループにとって円換算での報酬が高くなり、仕入コストが上昇することから価格競争力が弱くなります。為替変動に対するリスクヘッジを行ってはおりますが、現地通貨と円貨との急激な為替変動などが起こった場合、業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
③ レッスン受講率について
オンライン英会話事業の収益モデルは、売上高はユーザーからの月額固定報酬である一方、主な売上原価である講師に支払う講師報酬は、主にレッスン数に連動して支払いを行っております。ユーザー1人当たりのレッスン受講率が上昇してレッスン提供数が増加した場合、売上原価である講師報酬が増加し、売上高総利益率が悪化する可能性があります。一方、レッスン数が減少した場合、短期的には講師報酬が減少し、売上高総利益率が改善しますが、レッスン数と継続率には一定の相関関係が認められるため、継続率が低下し、売上高が減少する可能性があります。
④ ソフトウエアについて
当社グループは、オンライン英会話事業に関する各種サービスを提供するため、継続的にシステム開発投資を行い、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められたものをソフトウエア(ソフトウエア仮勘定を含む)として無形固定資産に計上しております。これらの資産を利用して提供するサービスの収益獲得又は費用削減が著しく損なわれた場合には、当社グループが保有するソフトウエア等の資産について減損損失の計上が必要となり、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑤ M&A等によるのれんについて
当社グループは、成長戦略の一環として積極的に行っているM&Aに伴い発生した相当額ののれんを計上しております。当社グループは、当該のれんにつきまして、それぞれの事業価値及び事業統合による将来のシナジー効果が発揮された結果得られる将来の収益力を適切に反映したものと考えております。
しかし、事業環境や競合状況の変化等により期待する成果が得られない場合、減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑥ 自然災害等の大規模災害による被害について
地震、津波、台風等の自然災害や火災等の事故及び通信ネットワークを含む情報システムの停止等により、当社グループの事業活動が停滞又は停止するような被害を受けた場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑦ 会計制度・税制等について
会計制度又は税制の予期せぬ新たな導入や変更等が行われた場合、当社グループの業績や財政状態に影響を与える可能性があります。また、税務申告において税務当局との見解の相違が生じた場合にも、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を重要な経営上の施策の一つとして認識しております。一方で、将来の成長投資に必要となる内部留保の充実と、財務基盤の確立、株主への利益還元を総合的に勘案することも重要だと考えております。このため、当社の資本コストを上回る投資案件がある場合には、企業価値向上につながる戦略的投資を実行し、持続的な売上高及び利益成長を実現することと、それを可能とする健全な財務基盤の確立を優先することが、株主の皆様との共通の利益の実現に資すると考えております。
したがって、当社は、当面の間は上記政策に沿う範囲の中で、株主の皆様に対して、安定的かつ継続的な増配を実現する形で剰余金の配当を行うことを基本方針といたします。
剰余金の配当を行う場合には、年1回の期末配当を基本としております。剰余金の配当の決定機関は、株主総会であります。また、当社は会社法第454条第5項に定める中間配当を取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。
当事業年度の剰余金の配当につきましては、上記方針に基づき、連結財務状態等を勘案し、1株当たり13円といたしました。
内部留保資金の使途につきましては、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大発展を実現させるための資金として、有効に活用していく所存であります。
(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。