リスク
3【事業等のリスク】
当社グループの経営成績、株価及び財務状況等に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において判断したものであります。
当社グループでは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスクを最小化するためにリスク管理体制の整備・充実に努めてまいります。
(1)経済・金融市場動向に関するリスク
①景気後退による需要減少のリスク
当社グループの製品は、自動車、各種産業機械や建築・建設等に多く採用されております。よって、世界や我が国の景気後退や経済成長の減速が発生した場合、自動車生産・販売台数や着工件数等が減少し、当社製品の需要が減少する可能性があります。
当社グループは需要動向の早期把握、動向に応じた仕掛品・在庫品の適正水準の維持、リードタイム短縮、コストダウンを強化する等、安定的な収益基盤を強化する取り組みを行っておりますが、想定を超える需要変動があった場合やその他の要因で大きな需要変動があった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②原材料価格等の上昇及び調達リスク
当社グループ製品の主要材料である鉄、合金や硬質粒子などの金属材料、石炭、樹脂系原料等は需給バランス、為替レート変動等に伴い市場価格が変動することがあり、また一部調達先が限定されるものもあります。これらの原材料価格等が需給変化や市況変動により上昇する場合は、製造コストの上昇につながります。昨今、世界的な原材料価格等の高騰リスクも顕在化しております。
当社グループは生産の合理化、調達先の分散化、代替材料の選定など、原価低減策による影響緩和を図るとともに、顧客に対する適切な価格転嫁交渉の取り組みを鋭意すすめておりますが、予測を超えて市場価格に急激な変化が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③為替レートの変動リスク
当社グループは海外における事業展開及び、海外の顧客向けに販売活動を展開していることから、外貨建取引から発生する為替変動の影響を受ける可能性があります。また、売上・費用・資産を含む現地通貨建の項目は、連結財務諸表の作成時に円換算いたしますが、現地通貨における価値に変動がない場合も、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
当社グループは輸出入等を中心とした外貨建取引については、為替予約等を通じて為替レート変動の影響を抑えるよう努めておりますが、予測を超える変動が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業及び外部の事業環境に関するリスク
①海外展開に伴うリスク
当社グループは海外において北米(米国、メキシコ)、欧州(ドイツ)、アジア(インドネシア、中国、台湾、タイ、インド、シンガポール、マレーシア)の拠点で生産・販売活動を展開しております。これら各国は政治、経済、社会的混乱等によるリスクが潜在しており、これらの事象により、影響を受ける可能性があります。
また、当社グループは、海外において現地資本と合弁で事業を行っている会社について、合弁パートナーの経営や財務その他の要因が、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは各社の在外子会社を所管する部門が定期的に海外子会社との情報交換及び継続的モニタリングに加え、経営状況の他、周辺環境の変化等についても情報の把握・分析を行い、可能な限りリスクの抑制を図っております。
しかしながら、当社グループの製品を製造・販売している各国の政治・経済・社会体制に予想を超える急激な変化が生じた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②特定業種(乗用車エンジン向け)への高依存度リスク
当社グループは自動車エンジン向け、特に乗用車エンジン(乗用ICE)向け部品関連事業の売上高が事業全体の半分以上を占めておりますが、自動車産業では電気自動車や自動運転等の開発・実用化等の技術革新のスピードが速まっております。この産業構造変化に伴う自動車構成部品の変動は、電動化による内燃機関搭載車市場の縮小として、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは中期経営方針において「既存ICE領域の収益力向上」「非ICE領域であるネクストコア事業・新製品事業を育成・売上比率向上」の事業ポートフォリオ改革を掲げ、非ICE領域の育成に経営資源を積極的に投入しております。
しかしながら、自動車産業における構造変化への対応が結果として不十分だった場合や変化が予想を超え急激に進展した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③価格競争リスク
当社グループの主要販売先である自動車、各種産業機械業界をはじめとして、すべての業界ではグローバルに激しい競争が行われております。よって、当社グループ製品自体のグローバル市場における競争力、ひいてはグローバルな製品供給能力、技術開発力、国際価格競争力が当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、競合他社と差別化できる製品・生産技術の開発を必要な経営資源を投じて推し進めるとともに、お客さまのニーズを捉え、適時適切なソリューションを提供する技術提案型の営業体制の構築や評価技術サービスの展開、コストダウンの強化等の諸施策により、競争力の維持強化に努めてまいりますが、これらの取り組みが結果として不十分だった場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④知的財産権リスク
当社グループは当社グループの産業財産権やノウハウ等の知的財産権がお客さまの課題解決に貢献し、環境性能に優れた魅力ある製品・サービスを提供し続けるために不可欠であり、競争力・差別化の源泉であると認識しています。
当社グループは自社権利の取得、活用及び保護と、他社権利の尊重に努めておりますが、第三者による当社グループの知的財産権の侵害、又は当社グループが意図せず他社等の知的財産権を侵害した場合、事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(3)業務運営に関するリスク
①品質リスク
当社グループの製品は、自動車、各種産業機械や建築・建設等に多く採用されております。よって、これら製品の品質に関する何らかの瑕疵が顕在化し、顧客等に付随した損害を与えるような場合、製造物責任やリコールにより、当社グループの事業が影響を受ける可能性があります。
当社グループは「品質方針」を定めるとともに、お客様の要求する品質保証体制を構築の上、ISO9001やIATF16949といった外部認証を取得し、品質の保持、向上に努めておりますが、品質に瑕疵のある製品の流出を防止できず、それが大規模なリコールや製造物責任賠償につながった場合、その補償や社会的評価の低下等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
②環境汚染リスク
当社グループは製品の製造においては多種多様な環境負荷物質の取り扱いを行っております。よって、これら環境負荷物質が法定、あるいは社内基準以上に環境に流出し、環境汚染の原因となった場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは「環境方針」を定めるとともに、地球環境保全に向けた環境負荷の低減のためISO14001に沿った環境マネジメント体制を構築しておりますが、想定外の事態による環境汚染が発生した場合、その処理費用の負担や行政命令等に基づく操業の停止、社会的評価の低下により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③情報セキュリティリスク
当社グループは研究開発、生産、販売等に関する当社グループ及びお客様の機密情報に加え、お客様や従業員等の個人情報を保有しております。また、事業活動全般において、様々な情報技術、ネットワーク、システム等を活用しております。よって、これらの情報資産が不正アクセス等により「機密性」「完全性」「可用性」に関する脅威にさらされた場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、情報セキュリティを強化するため「情報セキュリティ基本方針」を定め、サイバー攻撃からの防御の強化、各種情報・機器の取扱い規定に基づく管理、従業員等の教育・啓発を行う等の取り組みを行っております。
しかしながら、サイバー攻撃の手口はますます高度化、複雑化しており、想定を大幅に超える不正アクセス等のサイバー攻撃により、当社グループのシステム停止や機密情報の外部流出が発生するなど、想定を超える事案が発生した場合、業務中断や社会的評価の低下により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④企業買収、資本提携及び事業再編リスク
当社グループは中期経営方針において「既存ICE領域の収益力向上」「非ICE領域であるネクストコア事業・新製品事業を育成・売上比率向上」の事業ポートフォリオ改革を掲げ、その実現に向けた企業買収、資本提携及び事業再編を実施しており、当社及び出資先企業の事業環境の変化、経営や財務その他の要因が、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、買収や提携等の検討対象企業のデューデリジェンスを慎重に行い、買収や提携後の事業計画を検証することによりリスクの低減に努めておりますが、当社グループ及び出資先企業を取り巻く事業環境に想定外の変化が生じた場合、のれん及び無形資産の減損等により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑤人材に関するリスク
当社グループの持続的成長においては、人材に依存する部分が大きく、優秀な技術者をはじめとする、必要な人材
の採用・育成(キャリア開発)を行うとともに、安全、安心して働くことができる職場環境を整備することが重要であると認識しております。
今後、人的資本経営を展開するためには、事業ポートフォリオに連動した人材ポートフォリオを戦略的に企画・
構築し、人材の多様性やリスキリングなどを通じて、組織・個人の活性化を図ることが求められておりますが、この展開が停滞した場合は、人材の流出など、当社グループの持続的成長に影響を及ぼす可能性があります。
(4)法的手続き・災害等のイベント性のリスク
①法的リスク
当社グループはグローバルに事業を展開しており、環境法、安全衛生法、独禁法、贈収賄防止、安全保障貿易管理など、各国の多岐にわたる法令・規制が関連しています。
当社グループはこれらの法令等に適合する社内規定に基づく管理、従業員等の教育・啓発を行うとともに、法令等の改正に適宜対応しておりますが、これらのコンプライアンスの徹底が十分でなく、結果として適用法令等の違反が発生した場合、処罰、処分その他の制裁、対応費用の負担、社会的評価の低下により、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
②災害・感染症・テロ等の事業継続に影響を及ぼす事象に伴うリスク
当社グループの製品は自動車、各種産業機械や建築・建設等に多く採用されており、その供給責任を果たすことの重要性を認識しております。一方、当社グループの各国事業拠点において大規模地震、水害、火災、感染症の蔓延、テロなど、様々な障害による調達・製造・物流に関わる製品供給停止が発生した場合、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは供給責任を全うするため「事業継続マネジメント(BCM)基本方針」を定め、災害時の事業継続又は早期復旧・再開を図るための取り組み方針、手続、組織・体制等について定めた事業継続計画(BCP Business Continuity Plan)を策定し、適切な管理体制を整備するとともに、建屋の耐震補強、製品や材料の安全在庫の確保、代替調達先、代替生産拠点の整備などの取り組みを行っています。
しかしながら、深刻な障害が発生した場合の被害や製品供給停止を完全に回避することは困難であるため、有事の際には当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社の剰余金の配当につきましては、株主の皆様への利益還元を経営上の重要課題と位置づけ、成長と企業価値向上のための投資や財務の健全性とのバランスを考慮し、安定的な配当を継続して実施するとともに、機動的な自己株式取得を行い、資本効率と総還元性向を意識した株主還元を行うことを基本方針としております。加えて、第一次中期経営計画期間(2024年度~2026年度)につきましては、配当性向40%以上、総還元性向70%以上(3年平均)、株主還元額の総額200億円(うち自己株式取得100億円)を目途とし、従来対比で株主還元水準の引き上げを図っていく予定です。
当期の配当につきましては、今般の経営統合における株主の皆様のご支援に対する感謝の意を込めて普通配当45円に記念配当25円を加え、期末配当は1株当たり70円とさせていただきました。
次期の配当予想につきましては、上記方針に従い、現時点での業績予想の達成を前提に、1株につき年間配当金を115円とし、中間配当金並びに期末配当金は、それぞれ1株につき45円、70円とさせていただく予定です。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たりの配当額(円) |
2024年6月21日 |
1,969 |
70.00 |
定時株主総会決議 |