リスク
3 【事業等のリスク】
当社は、当社グループの事業活動に関するリスクを所管するリスク管理委員会を設置し、リスク管理規程に従い、リスク管理体制の構築と運用にあたっております。
当社グループは、事業展開においてリスク要因となり、経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があると考えられる主な項目を以下のとおり認識しておりますが、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、想定していないリスクや現時点において影響度が小さいと考えられる他のリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
当社グループではこれらのリスクの発生可能性を認識したうえで、その発生の回避及び発生時の適切な対応に努めております。なお、記載内容のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 市場環境・競合状況の変動リスク
主要な販売先である国内外のニット製品メーカーが、消費者の生活様式や消費スタイルの変化、サステナビリティ対応等の環境意識の高まり、経済活動の停滞、暖冬などの天候不順等の影響を受けた結果、横編機等の設備投資が大きく減退する可能性があります。
また、当社グループが展開する各事業においては、日々変化する顧客ニーズに対し、競合他社の技術革新も日進月歩で進んでいます。
併せて資材調達では、国際的な通商問題や感染症の世界的大流行によるサプライチェーンの混乱や燃料費の高騰などによっても、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。(「⑨自然災害、国際紛争、事故、感染症の拡大などのリスク(2)生産面への影響」に詳細記載。)
加えて、顧客や取引先等との重要な契約が増加している中、見解の相違による他社特許の侵害、秘密情報の漏洩等により、賠償問題に発展し、業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。(「⑤知的財産保護戦略の課題」及び「⑧情報セキュリティに関するリスク」に詳細記載。)
こうした環境変化に対し、当社が適切に対応できず、競争優位性を失った場合、当社グループの業績及び財政状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
このような事業リスクに対し、当社グループでは、ホールガーメント横編機とデザインシステムの活用による、消費地における需要動向に対応した適時適量生産の提案を積極的に行う等、製品・サービスの訴求力の向上に日々努めております。
さらに顧客や取引先等とのコミュニケーションを密にし、潜在的なニーズを的確にキャッチすることにより、アパレル・ファッションの業界課題を解決する新たなビジネスモデルの確立や、非アパレル業界でのニット化の推進など、当社グループにおいて新たな事業価値と事業領域の創出を進めております。なお、当社グループは新たな事業領域(新規事業)への投資に積極的に取り組んでいく方針であり、その取り組みについては、綿密な市場調査・分析や、入念な事業計画を策定し、収益化までの期間や撤退基準を設けるなど、より厳しいプロセスを経て行うこととしておりますが、予測とは異なる状況が発生し計画通りに進まない場合には、当社の事業及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、日々変化する事業環境において、経営基盤や社内体制を抜本的に見直し、適切なリスク管理体制の維持・向上に全社一丸となって取り組むことで、当社グループの企業価値の持続的な向上に努めております。
② 事業展開地域での社会的な制度変更などの影響
アパレル産業は、経済のグローバル化の進展に伴い、サプライチェーンも同時にグローバル化してきました。消費国と生産国において貿易摩擦などが発生し、通商問題に発展した場合、設備投資動向にも大きく影響を及ぼします。
米中貿易摩擦に端を発する相互関税の引き上げ、技術輸出規制などの経済措置の動向には細心の注意を払い、適切に対処していくべく努めておりますが、各国政府や国際的枠組みによる規制が新たに導入、変更された場合には、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。このため、世界各国に展開している現地法人・販売代理店などのネットワークを活用して、いち早く現地動向を察知し、迅速な行動が取れるよう体制の整備を進めております。
③ 為替レートの変動
当社グループは海外売上高比率が80%前後で推移しており、取引においては日本円以外に外国通貨建で行われているため、急激な為替レートの変動は当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
このため、当社グループは、連結財務諸表等 注記事項(デリバティブ取引関係)に記載のとおり、売上債権のうち外貨建債権に対して先物為替予約取引などでリスクヘッジを行っております。
④ 与信及び売上債権の回収リスク
売上債権に占める割合の多くは、横編機事業にかかる債権となっております。多くのユーザーは素材仕入れから製品販売までの期間が長期となり、債権回収も長期間にわたることが業界内での特有の商慣習になっております。そのため、当社グループでは、主要地域において直接ユーザーに対する与信管理の強化を行っております。引き続き、アジア市場ではグローバルアパレルとニットメーカーが両輪となり、大規模な生産活動が行われ、1社あたりの取引金額も膨らむ傾向となっております。回収リスク低減のため、債権流動化の実施、担保設定、リース取引の推進、貿易保険の付保を行うと同時に、横編機にPMS(パスワードマネジメントシステム)を搭載し、期日までの支払いを促す仕組みを構築しております。回収遅延などが発生している場合には、過去の実績率や個別の回収可能性等の見積りに基づき保守的に引当金を計上するなどの対策を行っております。
⑤ 知的財産保護戦略の課題
当社グループが保有する独自技術やノウハウの一部は、海外競合他社における法令遵守意識の欠如などにより知的財産権による完全な保護が不可能または限定的にしか保護されない可能性があります。ホールガーメント横編機をはじめとする当社製品は、高度な技術が結集されています。当社グループでは開発本部の中に知的財産開発チームを設け、「横編機等の機構・制御」、「ニットの編成技術」、「デザインシステム関連」など幅広い技術について知的財産権で保護し、他社との差別化を図っています。しかし特許の侵害などにより模倣製品が流通した場合、当社事業に与える影響は大きくなります。
他方、当社グループでは他社の権利を侵害しないように製品等の開発を進めておりますが、見解の相違等により他社の知的財産権を侵害しているとされ、製品等の開発や販売に支障をきたす可能性や多額の損害賠償責任を負う可能性があります。さらに、現在当社グループがライセンスを受けている第三者の知的財産権の使用が将来差し止められる、あるいは不当な条件に変更され、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
このため当社グループは、他社による特許侵害を常に監視し、また各国の現地法人、代理店等からの情報を有効活用し、必要に応じて注意喚起や法的手続きをとる体制を整えるとともに、他社の知的財産に関しては、製品開発の各フェーズにおいて入念な調査・確認を実施しております。万が一、見解の相違等により他社から知的財産権の侵害を指摘された場合やライセンス条件の変更等に備え、非侵害の主張やライセンス条件等の交渉・訴訟を行うための人材を社内法務関連部門に配置するとともに、経験豊富な弁護士と連携し、事案の内容に応じて適切に対応する体制を整えております。
⑥ 組織及び人材に関するリスク
当社は創業当時から、世の中にないものを創り出し、最高機能の製品を経済的な価格で提供することで、業界から高く評価されてきました。これらを支えるのは高度な専門性、創造性、独自性を持つ人材であり、継続的な人材の確保、育成に努めておりますが、その技術の伝承や後継となる人材の確保・育成が計画通りに進まなかった場合、あるいは退職等により人材が流出した場合には、製品開発力や製品品質の低下を招き、その結果事業競争力の低下により、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。このため、若手社員に対する社内研修の充実や各種技能検定へのチャレンジ推奨、ベテラン社員によるOJTの拡充など技術の伝承に積極的に取り組んでおります。さらに、特定の人材、組織に過度に依存しない体制構築のため、当社グループ各組織間の連携・情報共有をより密にし、当社グループ全体の組織力強化に努めてまいります。
⑦ 製造物責任に関するリスク
当社グループでは、最高機能の製品を経済的な価格でお届けするというシマセイキスピリットのもと、品質環境基本方針を定め、専門の委員会活動を展開し、製品品質、顧客満足度の向上に努めておりますが、万一製品の欠陥等が発生した場合、損害賠償や対策コスト等により、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、製造物にかかる賠償責任に備え保険に加入し、リスクの低減を図っております。
⑧ 情報セキュリティに関するリスク
当社グループにおいて、情報システムは重要な要素の一つです。人的ミス、機器の故障、通信事業者などの第三者の役務提供の瑕疵等により、また、外部からのサイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルス感染などにより、情報通信システムの不具合や不備が生じ、取引処理の誤りや遅延などの障害、情報流出などが生じ、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、情報セキュリティポリシーを定め、すべての役員及び従業員などに対する情報の取り扱いの行動規範を定めるほか、情報セキュリティの物理的対策及び技術的対策の取り組みについて情報セキュリティ委員会を通じて継続した啓発活動を実施しています。
⑨ 自然災害、国際紛争、事故、感染症の拡大などのリスク
地震、台風、津波などの自然災害、国際紛争、火災、停電、感染症の拡大(パンデミック)などが発生した場合、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
(1)販売面への影響
主要販売先であるアジア(中国、ベトナムなどASEAN、バングラデシュ等)、イタリアを中心とした欧州市場、トルコを中心とした中東市場でリスクが拡大した場合には、通常の営業活動に支障をきたし、長期化することにより当社業績に与える影響が大きくなります。さらにユーザーの生産活動にも影響を及ぼし、資金繰り悪化による売上債権の回収リスクが高まる可能性があります。(「④与信及び売上債権の回収リスク」に詳細記載。)
(2)生産面への影響
生産面ではサプライヤーの操業停止の長期化により部品不足を招き、生産抑制を余儀なくされることが想定され、当社業績及び財政状況に多大な影響を及ぼします。そのため、当社グループでは緊急時に向けた在庫の確保、複数社からの購買による安定した部品供給体制の構築などの対策に取り組んでおります。
⑩ 生産拠点の一極集中
当社は、製品を本社がある和歌山県で集中的に生産し、開発から製造までの一貫体制を敷くことで効率化やコストダウンを図ってまいりました。このため、和歌山県近郊で大規模な地震、風水害等の自然災害や当社工場での火災等の事故、社内での感染症の拡大が発生した場合、製造ラインの操業が長期間停止する可能性があります。当社は日産体制を構築しておりますので、停止期間が継続する場合、その影響は大きくなります。そのため、当社では、各種保険の付保や操業停止期間を最小化できるよう事業継続計画の整備を行うとともに、建物等の耐震工事、非常時を想定した訓練の実施及び安否確認システムの導入等の対策を講じ、早期に復旧できるような体制を整えております。しかし被害想定を超えた規模の災害等が発生した場合、機能停止・設備の損壊・インフラの供給停止、交通機関や通信手段の停止等により、事業活動の継続に影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 感染症等の流行に関するリスク
新型コロナウイルス感染症等の世界的な拡大(パンデミック)に伴い、社内において感染症の拡大が認められた場合、一時的に工場の稼働停止など事業活動の停止により、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、社長を本部長とする危機管理本部を設置し、感染拡大防止に取り組んでおります。不要・不急の会議・出張の禁止、工場見学の受入中止、予防措置の強化(毎日の検温・マスク着用・手指消毒の徹底等)、在宅勤務、ワクチンの職域接種等を実施することにより従業員の安全確保を優先しつつ事業への影響を最小限に留めるなどの体制を整えております。
⑫ コンプライアンスに関するリスク
当社グループでは事業活動を行うにあたり、様々な法令・規則等の適用を受けておりますが、意図せずに違反する場合も含め不正行為など重大なコンプライアンス違反を起こした場合は、当社グループの社会的な信用を失墜させ、また取引の停止や訴訟等による損害の発生など、事業活動に重大な影響を及ぼす可能性があります。
これに対し、当社グループでは、「シマセイキグループ行動基準」を定め、その遵守に努めるとともに、コンプライアンス体制強化のためのコンプライアンス委員会、法令遵守と企業倫理に関する通報、相談窓口として企業倫理ヘルプラインを設置し、コンプライアンス違反の影響拡大の防止に努めております。
⑬ サステナビリティ課題に関するリスク
ステークホルダーからのESGを重視した経営やSDGsへの関心は年々高まっており、サステナブルな社会の実現への取り組みが、今後ますます重要になっております。
環境面においては、世界的な気候変動対策の観点から脱炭素社会に向けた温室効果ガス排出量の削減や、製品・サービスの環境配慮が、顧客やサプライヤーに加えて社会全体からも求められています。
当社は環境マネジメントシステムの運用に基づき、環境関連諸規制における要求事項の遵守とともに、顧客における環境負荷低減に配慮した製品・サービスの設計・開発を行っています。もの創りにおいてはCO2排出抑制/削減のための電力使用量削減、廃棄物の排出量削減とリサイクルの推進、資源の有効利用などにも取り組んでおります。
しかし各種の法規制が変更又は新たに制定された場合はその遵守対応のための費用が増加し、当社の業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、グローバルに事業を展開する企業に対する「ビジネスと人権」に関する意識はますます高まっており、ステークホルダーによる人権への対応要求やサプライチェーンにおける紛争鉱物や強制労働への対応要求が求められています。
当社は人権方針を策定し、事業活動に関わるすべての人の人権を尊重するためにあらゆる人が固有にもつ多様性を尊重し、誰もが働きやすい職場環境の実現に取り組んでおります。
しかし、当社及びサプライチェーンにおいて適切な対応が取られていない場合、取引の停止や行政罰、企業に対する社会的信頼の喪失、事業機会の損失等により、当社の業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
当社は今後も製品・サービスを通してサステナブルなもの創りを提案し、企業活動を通じて社会課題の解決に取り組んでまいります。
配当政策
3 【配当政策】
当社では、株主のみなさまに対する利益還元を経営の最重要課題のひとつとして位置付けており、事業の持続的な発展を通じて、安定した配当を長期にわたって継続することを基本方針としております。そのうえで、長期的視点に立った成長投資および今後の事業展開に備えた内部留保にもバランス良く配分を行う方針であります。
次期以降の株主還元方針につきましては、2024年度から始まる3ヵ年の中期経営計画「Ever Onward 2026」に基づき、収益力の向上につながる積極的な成長投資と財務体質の強化に努めながら、連結配当性向40%を目安に株主配当を行います。なお、自己株式取得については、株価水準や資金の状況、市場環境などを総合的に勘案し、時機に応じて柔軟に実施してまいります。
当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めており、毎事業年度における剰余金の配当は期末と中間の2回行うことを基本方針としております。なお、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
当期の配当金につきましては、既に中間配当金として1株につき5円00銭を実施しておりますが、期末配当金につきましては、1株につき5円00銭とさせていただきました。これにより中間配当金を加えた通期の配当金は1株につき10円00銭となりました。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。