リスク
3 【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがあります。なお、以下のうち、将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経済環境、社会的及び政治的動向に関するリスクについて
当社グループの主要な市場である国及び地域の経済環境、社会的及び政治的動向により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。日本、米国及び当社グループが事業活動を行うその他の主要な市場において、景気後退による個人消費や民間設備投資の減少によって、当社グループが提供する製品・サービスの需要が減少する可能性があります。今のところ、当該リスクが短期的に顕在化する可能性は低いと予想しております。対策として、優位な品質とコストを実現するための革新的な新技術の確立を目指しており、特許出願も進めていますが、これらが計画どおり進まない場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 海外生産について
当社グループの主力製品のAsReaderシリーズのハードウエアについては、海外企業に製造委託するEMS生産となっております。このうち、Apple社製品用のリーダー機器はApple社のMFi認証の認定工場を保有する韓国のSPS Inc.のみ生産が可能です。当社グループの当連結会計年度の売上高1,759,851千円の中で、当該企業の生産に依存している売上高は約56.3%であります。MFi認証はケーブルやイヤフォン、ホームオートメーション(家電制御)など様々な製品のジャンルが存在しますが、AsReaderのようなLightningコネクタ(Apple社の携帯機器などで用いられる、通信・充電のためのケーブル及び端子の規格)で接続できるリーダー機器を製造できるのは、MFi認証の認定工場のみになります。また、当該生産拠点においては、予期しない法律や規制の変更、経済的変動及び政治的混乱等のリスク、地震など大きな災害発生のリスク、委託企業の経営悪化による生産への影響リスクが存在いたします。今後においても、製造委託による安定的な生産は可能と考えており、短期的に当該リスクが顕在化する可能性は低いと予測しております。対策として、当該企業との良好な関係の構築、維持に努めること、生産拠点の分散、生産技術の蓄積、自社生産のノウハウ獲得などの対策を講じておりますが、リスクが顕在化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 品質に関するリスクについて
当社グループは、世界が様々なITソリューションを模索する中で、従来にない仕様、機能を搭載した製品を開発、展開することを目指しており、新製品も断続的に販売していくこととしています。このような状況下で、従来の知見にない品質上の課題が発現し、当該トラブル解決のための費用発生や品質に起因する販売の遅れが生じた場合、従業員の人為的ミス又は不測の事態の発生等による保守・製品保証に関する費用の発生などが生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが短期的に顕在化する可能性は低いと予想しております。
(4) 為替リスクについて
当社グループの主力製品のAsReaderシリーズは、海外企業に製造を委託するEMS生産によっております。また海外市場での販売が増加することを見込んでおり、この外貨獲得が海外調達の為替変動リスクと相殺されることも想定しているため、事業構造の変化によるリスクの変動も考慮の上、リスクヘッジを検討してまいります。現状アメリカドルによる決済を行っておりますが、為替の変動による調達コストの変動が、同製品の競争力に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループは、海外における子会社の売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目を、連結財務諸表の作成のために円換算しております。これらの項目の現地通貨における価値が変わらなかったとしても、急激な為替変動により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 研究開発投資について
当社グループは先端技術の研究開発を行うための投資を行っており、今後も積極的な研究開発投資を実行していく予定ですが、当該研究開発活動が計画どおりに進む保証はなく、十分な成果が適時に上がる保証もありません。
また、当社グループが選定した研究開発テーマに基づき開発した新規技術やそれを応用した製品が普及しない場合や、技術革新によって当社の研究開発技術が陳腐化した場合、事業環境の変化等によりさらなる研究開発費の負担が生じた場合などには、先行投資した研究開発費の回収が困難になるなど、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現在、積極的な販促活動、マーケティング活動により市場の動向やニーズは的確に把握できていると考えており、短期的に当該リスクが顕在化する可能性は低く、長期的なリスクと認識しております。
(6) 知的財産権について
当社グループは知的財産権(特許権等)の保護について、社内の管理体制を強化し、細心の注意を払っておりますが、将来当社グループが認識していない第三者の所有する知的財産権を侵害した場合、又は当社グループが知的財産権を有する技術に対し第三者から当該権利を侵害された場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。現在、徹底した関連特許の調査を実施していますが、すべての特許を網羅的に把握することは困難であり、当該リスクは常に存在すると認識しています。当社グループとしては、徹底的な調査とともに、積極的に特許取得を進め、複数の企業で所有する特許権等を相互に許諾し合うクロスライセンスによるリスク回避なども念頭に入れた特許戦略を構築してまいります。
(7) 代表者への依存について
当社代表取締役執行役員社長である鈴木規之は、当社グループの創業者であるため、創業以来の最高経営責任者であり、当社グループの事業運営における事業戦略の策定や業界における人脈の活用等に関して、重要な役割を果たしております。当社グループは、当人への過度な依存を回避すべく、経営管理体制の強化、経営幹部職員の育成、採用を図っておりますが、現時点において当人に対する依存度は高い状況にあると考えております。今後において、何らかの理由により当人の当社グループにおける業務遂行の継続が困難となった場合、当社グループの事業運営等に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 製造物責任について
当社グループは、ハードウエアのメーカーとして、製造物責任を負っております。予期しない理由で発生した事故等により、当社グループの社会的信用の低下や多額の賠償義務が生じる場合があります。具体的には、安全設計や安全構造及び表示による残留リスクの低減などの基本対応のほか、通常有すべき安全性の確保について万全の対策、生産委託先の保証体制の充実、米国についてはPL保険への加入を通じて、当該リスクの低減策を講じておりますが、当該リスクの発生によって、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 装着するスマートデバイス仕様変更の可能性について
当社グループの製品のうち、iPhoneなどのスマートデバイスに装着して使用することを前提とした製品について、スマートデバイス側でサイズの変更等があった場合は、必要なモデルチェンジがタイムリーにできるよう常に情報収集に努め、開発を進めておりますが、対応コストの負担や対応期間中の販売ロスにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。ただし、当社グループの製品は、このような仕様変更にも対応可能な商品特性を有していることから、当該リスクが顕在化する可能性は低いと考えております。
(10) 業績の変動について
環境の変化等により予定した大型案件の獲得が実現しなかった場合や、納入先の運用テスト遅延などの理由により製品納入のタイミングが決算期末を越えて遅延した場合の他、大型案件の納入が特定の期や四半期に集中した場合には、当社グループの通期や四半期の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 欠品による販売機会損失、滞留在庫の評価損について
当社グループが販売する製品の大部分は自社企画製品であり、需要予測のもと製造発注を行いますが、実際の受注は市場ニーズの変化等の様々な要因に左右されます。そのため、追加製造が受注量に対応できず販売機会の損失が発生する可能性があります。また、受注量が需要予測に達しない場合は、当社グループに過剰在庫が発生し、キャッシュ・フローへの影響や棚卸資産評価損が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 固定資産の減損について
当社グループが保有する固定資産に減損の兆候が発生した場合は、将来キャッシュ・フロー等を算定し減損損失を計上する可能性があり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 投資有価証券に関わるリスク
当社グループは、投資有価証券について、発行会社の財務状況や今後の見通しなどに鑑み、時価が著しく下落し、その回復が見込めない場合には、減損処理により評価損を計上する可能性があります。このような状況になった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。
(14) 繰越欠損金の課税所得繰入れについて
当社グループは、第17期連結会計年度末時点において税務上の繰越欠損金87,895千円があるため、課税所得が減殺され、納税負担額が軽減されております。今後、業績の推移又は税制の改正内容によっては、税務上の繰越欠損金の全額を使用し、納税負担額を軽減できる可能性や繰越欠損金の繰越期間(第17期連結会計年度末時点における繰越期間は5年超)の満了により欠損金が消滅し、納税負担額を軽減できない可能性があります。繰越欠損金が解消された場合、通常の税率に基づく法人税等が発生し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 法的規制等について
当社グループの主力製品であるAsReaderシリーズの一部について、当該製品を使用するために各国の電波法の認証を受ける必要がある製品があります。当該認証手続きを行わず製品を使用した場合、販売先が法令違反になる可能性があります。対策としては各生産工場、認証代行会社との定期的な情報交換や、JAISA(一般社団法人日本自動認識システム協会)やRAIN RFIDアライアンスなどの業界団体の情報を適時確認して、販売先が法令違反になることがないよう指導しておりますが、認証条件の変更を当社グループが把握できておらず、販売先が法令違反となってしまった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(16) 人材育成・確保について
当社グループが成長を続けていくために不可欠な要素の一つが、優秀な人材の確保であります。当社グループは今後の事業規模拡大を見据えて、人材の採用及び人材育成を重要な経営課題の一つと位置付けており、統括的なプロジェクトマネジメント能力を有する人材を重点的に確保しつつ、将来当社グループを担う人材の育成に注力しております。
しかしながら、人材育成が円滑に進まない場合、又は各部門において中心的役割を担う特定の従業員が万一社外に流出した場合には、当社グループの事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(17) 大株主について
当社創業者かつ代表取締役執行役員社長である鈴木規之の本書提出日の前月末(2023年10月31日)現在での議決権所有割合は、直接所有分として2.3%であります。また、鈴木規之の資産管理会社であるトリプルウィン株式会社の議決権を合算した所有割合は45.0%となっております。鈴木規之及び当該資産管理会社は引続き当社の株式を保有する見通しでありますが、議決権の行使に当たっては、株主共同利益を追求するとともに少数株主の利益にも配慮する方針であります。しかしながら、何らかの事情によって、鈴木規之又は当該資産管理会社が当社株式をやむを得ず売却することとなった場合、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(18) 配当政策について
当社は、現在成長過程にあり、内部留保の充実を図ることが必要な段階にあることから、現在は内部留保の確保が重要であると考え、会社設立以来配当を行っておりません。株主利益の最大化を重要な経営目標の一つとして認識しておりますが、現在は内部留保の充実に注力することを基本的な方針としております。また、内部留保資金の使途につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応できる経営体制強化及び事業拡大のための投資等に充当していく予定であります。今後の株主への配当につきましては、業績や配当性向、将来的な成長戦略などを総合的に勘案し、配当政策を決定する方針でありますが、本書提出日の前月末(2023年10月31日)現在、配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。
(19) ストックオプションの行使による株式価値の希薄化について
当社グループは、役員及び従業員に対するインセンティブを目的として、ストックオプション制度を採用しています。本書提出日の前月末(2023年10月31日)現在付与しているストックオプションに加え、今後付与されるストックオプションについて行使が行われた場合には、既存株主が保有する株式の価値が希薄化する可能性があります。本書提出日の前月末(2023年10月31日)現在、これらのストックオプションによる潜在株式は227,400株であり、本書提出日の前月末(2023年10月31日)現在の発行済株式総数7,109,400株の3.2%に相当しています。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、将来の事業展開などを総合的に勘案しつつ、株主各位に対する利益還元である配当と経営体制強化及び今後の事業拡大のための内部留保、そして経営活性化のための役員及び従業員へのインセンティブにも留意し、適正な利益配分を実施することを基本方針としております。
一方で、当社は現在成長過程にあり、内部留保の充実を図ることが必要な段階にあることから、設立以来剰余金の配当を実施しておりません。今後は、業績や配当性向、将来的な成長戦略などを総合的に勘案して決定していく方針ですが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。
内部留保資金につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応できる経営体制強化及び事業拡大のための投資等に充当していく予定であります。なお、剰余金の配当を行う場合、年1回の期末配当を基本的な方針としており、その決定機関は株主総会であります。また、毎年2月末日を基準日として、取締役会の決議によって、中間配当をすることができる旨を定款に定めております。