2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性がある主な事項を記載しております。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。なお、当社は、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避、発生した場合の対応に努める方針です。

なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、別段の記載のない限り、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

 

(継続企業の前提に関する重要事象等)

当社グループは、前連結会計年度まで継続して重要な営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上し、2021年12月期末には債務超過となりましたが、前連結会計年度に実施された第三者割当による新株式の発行及び第10回新株予約権の一部の行使により、前連結会計年度末には債務超過の状態は解消しました。しかし、当連結会計年度においても重要な営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しております。これにより、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる事象または状況が存在しております。

当社グループでは、当該事象または状況を解消するために、以下の施策を実施しております。

 

① 収益力の向上

(アンバサダープログラム運用の業務効率化とプランの見直し)

 当社主力商品である「アンバサダープログラム」は、これまで大企業向け「エンタープライズプラン」と中小企業向けの「セレクトプラン」の2種類で販売しておりましたが、業務効率化を目的に、2023年5月より「セレクトプラン」を終売とし、「エンタープライズプラン」への一本化を行いました。これにより、一連のサービス提供にかかるリソースの削減だけでなく、クオリティや顧客満足度の維持向上効果が見込まれます。また2023年10月より「自社運用プラン」として、運用にかかるリソース・コストに見合った料金プランの見直しを行うなど、既存顧客への価値訴求を行っております。

 当社は今後もアンバサダープログラムを通じたファンによるビジネス貢献を明らかにし、多くの企業への導入を推進してまいります。

 

 

(当社システム機能追加による成果・満足度の向上)

 当社はアンバサダープログラムを運営・分析を支援する基幹ツール「アンバサダープラットフォーム」の機能開発への投資を継続的に行っております。また、2022年にリリースしたLINE連携機能の拡販を進めております。現在は顧客データとの連携や、企業担当者による運営負荷を軽減するオペレーションの自動化機能などの開発を進めており、アンバサダープログラムのさらなる価値向上に努めております。

 

(パートナー企業との事業連携)

 アンバサダープログラムの拡販及び運営負荷軽減の目的からパートナー企業との連携を推進し、強化してまいります。また、アンバサダープログラムと相性のよいSNS公式アカウント運用をメイン事業とするパートナー企業のリサーチ・関係構築の取り組みや、共催でのセミナーを継続して実施してまいります。更には、SNSアカウント運用施策やインフルエンサー施策等を併用することでより高いマーケティング効果を見込めるソリューションを事業とする企業と提携を行います。

 

 

② 資本政策による財務基盤の安定化

当社は、前連結会計年度に、第三者割当による新株式の発行、第三者割当による第10回新株予約権の発行及び本新株予約権のうち一部の行使により、資本増強を図ってまいりました。これにより債務超過の状態は解消しましたが、依然として当社の資本は脆弱であると言え、業容拡大のための投資や安定的な事業運営のための資金調達の実施が不可欠であります。このため、第10回新株予約権による資金調達に加え、今後も更なる資金調達について検討を進めてまいります。

 

しかしながら、これらの対応策は、今後の経済情勢等により収益が計画通り改善しない可能性があることや、資本政策はご支援いただく利害関係者の皆様のご意向に左右されるものであり、現時点においては継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められます。なお、連結財務諸表は継続企業を前提として作成しており、継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を連結財務諸表には反映しておりません。

 

 

(1) 当社グループの事業環境及び固有の法的規制に係わるリスクについて

 

①再発防止への未徹底による不正の発生とこれに起因したレピュテーション毀損リスク

当社は、事業展開において取引先との業務提携を積極的に促進することで事業拡大を図っています。しかしながら、当社は2021年6月に公表しましたとおり、元役員による不適切な資金流用及び会計処理が発覚し、特設注意市場銘柄に指定されたことからステークホルダーの皆様からの信用を損ね、当社のレピュテーションが毀損した状態と認識しています。2022年9月30日に公表した「改善計画・改善報告書」に基づき再発防止策の整備・徹底を進め2023年8月30日付で特設注意市場銘柄の指定は解除されましたが、当社アンバサダーマーケティング事業の業績は依然として不祥事の影響から抜け出せず低迷を続けております。このような不祥事を二度と生じさせないようガバナンスを徹底しておりますが、再発防止が未徹底であることに起因する新たな不正が発生するなどした場合、投資家からの信用毀損、さらには事業展開における取引先や外部機関との連携が進まないことなどによる当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

② インターネット事業に関する一般的なリスク

当社グループは、インターネット関連事業を主たる事業対象としており、インターネットの活用シーンの多様化、利用可能な端末の増加等のインターネットのさらなる普及が成長のための基本的な条件と考えております。インターネットの普及は引き続き進んでいるものの、技術革新や人々のインターネット活用に対する価値観の動向など、今後どのように進展していくかについては不透明な部分もあります。当社では、アンバサダーマーケティング事業部や技術部を中心に市場環境を注視することでリスクの低減を図っておりますが、インターネットに関する何らかの弊害の発生や利用等に関する新たな規制の導入、その他予期せぬ要因によって、今後の普及に大きな変化が生じた場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 競合リスク

当社グループが行うインターネットを活用したマーケティング市場は、マーケティング手法やサービスの形態が日々進化しております。当社の競合が画期的なマーケティング手法を確立する、または当社が取り組んでいるアンバサダーマーケティング事業における革新的なサービスが生まれた場合に当社事業の優位性が毀損することも想定されます。当社は、「当社ASPシステムであるアンバサダープラットフォームの活用」及び「アンバサダーを活かすノウハウの蓄積によるサービスの品質」により他社との差別化を行っておりシェア拡大に努めております。しかしながら、ファンを活用したマーケティング施策を提供する会社が増加し、競争が激化した場合は当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④ アンバサダー事業のサービス拡充に関する追加支出発生に対する収益性低下リスク

当社グループでは、多様化する顧客ニーズに対応するためアンバサダーを起点とした新しいサービス提供を常に検討し、実施していく方針でおりますが、競合他社との顧客獲得や差別化競争、市場獲得争いなどに巻き込まれた場合に、これによりシステム投資、宣伝広告などの追加的な支出が発生し、利益率が低下する可能性があります。自社エンジニアの育成や顧客との接点を獲得するためのセミナー開催等を通じて効果的なシステム投資・宣伝広告によりリスクの低減に努めておりますが、予測とは異なる状況が発生し新サービス、新規事業の展開が計画どおりに進まない場合、投資を回収できず、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 景表法規制強化による需要低下リスク

一部のクチコミサイトでのいわゆるやらせ問題及びステルスマーケティング問題が表面化していることを受けて、2023年10月より、景表法の規制強化が施行されました。当社では、ステマ対策ガイドラインを作成し、企業から何らかの便宜を受けた際にはその内容が伝わる様、継続的な周知・確認、事後対応を行いつつ、顧客広告主向けに対外的なセミナ―も実施し啓蒙につとめております。この規制強化を受けて何らかの罰則を受けるなどの事例が発生した場合には、その事例が当社に無関係であっても、ソーシャルメディアを利用した広告市場の拡大に悪影響を与え、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 ※ステルスマーケティング:消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること。

 

⑥ 技術革新による競争力低下リスク

当社グループが事業を展開するインターネット業界においては、事業に関連する技術革新のスピードや顧客ニーズの変化が速く、それに基づく新サービスの導入が相次いで行われております。当社グループは、これらの変化に対応するため、技術者の確保や必要な研修活動を行っておりますが、これらが想定通りに進まない場合等、変化に対する適切な対応に支障が生じた場合、当社グループの業界における競争力が低下し当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑦ システム障害リスク

当社グループは、クライアント企業にインターネットによりサービスを提供しております。システムの安定的な稼働を図るために定期的バックアップ・稼働状況の監視等により、システムトラブルの事前防止又は回避に努めております。しかしながら、サイトへのアクセスの急増等の一時的な過負荷や電力供給の停止、当社グループソフトウエアの不具合、コンピューターウィルスや外部からの不正な手段によるコンピューターへの侵入、自然災害、事故等、当社グループの予測不可能な様々な要因によってコンピューターシステムがダウンした場合、当社グループの事業活動に支障を生ずる可能性があります。また、サーバーの作動不能や欠陥に起因して、当社グループの信頼が失墜し取引停止等に至る場合や、当社グループに対する損害賠償請求が発生する場合も想定され、このような場合には当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑧ 個人情報管理によるリスク

当社グループはサービス提供にあたり、アンバサダーなどの個人に関連する情報を取得しております。これらの情報の取り扱いには、外部からの不正アクセスや内部からの情報漏洩を防ぐため、「個人情報保護規程」の制定、セキュリティ環境の強化、従業員に対する個人情報の取り扱いに対する教育等、十分な対策を行っております。また、当社は2012年10月にプライバシーマークの認定を受けております。しかし、個人情報に関する従業員教育の不足ならびに情報管理に関する当社システム上の不備により個人情報が漏洩した場合には、損害賠償や信用力の失墜により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 情報取得への制限リスク

当社グループは、ソーシャルメディア等により日々大量に生成されるインターネット上のクチコミを、当社グループが顧客に提供するソフトウエアを通じて自動的に収集しております。しかしながら、ソーシャルメディア等の運営者側の方針転換により、情報の自動収集に制限が加わったり、禁止されたりする可能性があります。このような事象が生じた場合、当社グループは独自の方法により同様のデータの入手に努める方針ですが、現在入手できているデータを取得できなくなることでサービスの品質が低下したり、情報の収集に対して追加コストが発生したりする場合等には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 知的財産権侵害リスク

当社グループによる第三者の知的財産権侵害の可能性については調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社グループの事業分野で当社の認識していない知的財産権が既に成立している可能性又は新たに当社グループの事業分野で第三者により著作権等が成立する可能性があります。かかる場合においては、当社グループが第三者の知的財産権等を侵害することによる損害賠償請求や差止請求等、又は当社グループに対するロイヤリティの支払い要求等を受けることにより、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループは必要に応じて商標権等の知的財産権の申請を行っておりますが、当社グループの知的財産権が第三者に侵害された場合には、解決までに多くの時間や費用を要する等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

⑪ ソーシャルメディアデータ関連法規制リスク

ソーシャルメディアが益々浸透し、クチコミが日々大量に生成されるようになりました。このような状況において、ソーシャルメディアデータに関する法整備においては、2010年1月に施行された改正著作権法でインターネット上の検索サービスを提供する事業者がその検索サービスに必要な情報を収集する行為が一定の条件下で認められるようになりました。しかしながら、今後の新たな法律の制定や既存の法律の改正により、自主規制が求められるようになる可能性があります。このように当社グループのサービスを提供する上での情報収集やサービスの提供の仕方自体に何らかの制約を受けた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社のアンバサダープラットフォームはソーシャルメディアが提供するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を利用してデータ取得を行なっています。ソーシャルメディアの運用元の方針変更があった場合にアンバサダープラットフォームで使用しているデータを取得できなくなり、サービスの品質に影響を与える可能性があります。

 

(2) 経営成績及び財政状態に影響を及ぼすリスク要因について

① インターネット広告市場の縮小リスク

マーケティング支援事業及び広告事業が対象とするインターネット広告市場は拡大傾向にあり、インターネット広告はテレビに次ぐ広告媒体へと成長しており、今後も当該市場は拡大していくものと想定されます。当社は、システム開発体制の強化を通じて事業の付加価値向上を図っているものの、景況感の変化や新たなイノベーションの創出により、インターネット広告市場が拡大傾向の鈍化あるいは縮小傾向に転じた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 景気動向及び顧客企業の広報・広告宣伝予算の縮小リスク

当社の取引はクライアントの広報・広告宣伝予算に強く影響を受けます。景気低迷の折に、広報・広告宣伝予算は相対的に削減の対象となりやすいと考えられ、クライアントの景気やその他の影響が、当社の事業及び業績に大きな影響を与える可能性があります。

 

(3) 当社の事業運営体制に係わるリスク

① 小規模組織であることの経営資源不足リスク

当社は小規模な組織であり、業務執行体制もこれに応じたものになっております。当社は今後の急速な事業拡大に応じて、従業員の育成、人員の採用を行うとともに業務執行体制の充実を図っていく方針でありますが、当社のレピュテーションや業績の悪化などの要因によりこれらの施策が適時適切に進行しなかった場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

② 人材の確保及び育成の進捗不良による人材リソース不足リスク

当社の事業展開においては、利用者向けサイトの構築及び運用面においては高度な技術スキルを有する人材が要求されることから、サイト構築のために必要な人材を適切に確保するとともに、育成を行っていく必要があります。また、今後の事業拡大により受注の獲得機会が増加した場合、受注規模に応じた営業人員の確保が必要となります。当社は今後の事業拡大に応じて必要な人材の確保と育成に努めていく方針でありますが、当社のレピュテーションや業績の悪化などにより必要な人材の確保が計画通り進まなかった場合や、現在在籍する人材の社外流出が生じた場合には、競争力の低下や事業拡大の制約要因が生じる可能性があり、この場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

③ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化リスク

当社では、ストック・オプション制度の活用や資金調達のために新株予約権を発行しております。これらが行使された場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。

 

④ 不十分な配当政策による株主構成変動リスク

当社の利益配分につきましては、業績の推移を見据え、将来の事業の発展と経営基盤の強化のための内部留保を意識しつつ、経営成績や配当性向等を総合的に勘案し、安定的かつ継続的な配当を維持することを基本方針としております。しかしながら当社は、成長過程にあり今後の事業発展及び経営基盤強化といった、内部留保の充実を図るため、配当を行っておりません。

 現在におきましても、内部留保の充実を優先しておりますが、将来的には、業績及び財務状態等を勘案しながら株主への利益の配当を目指していく方針であります。ただし、配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定であります。

 

⑤ 調達資金使途の進捗不良による事業成長の低迷リスク

当社は本増資による資金について、当社の基幹システムである「アンバサダープラットフォーム」の機能強化及びアンバサダーマーケティング事業との事業シナジーが期待できる相手先との資本業務提携やM&A等に充当する計画としております。しかしながら当社の所属する業界の環境変化や、これに伴う今後の事業計画の見直し等により、投資による期待通りの効果があげられなくなる可能性や、場合によっては充当先の変更が生ずる可能性があります。この場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 他社との資本業務提携の進捗不良による業績低迷リスク

当社は、他社との業務提携、資本提携等を通じて事業の拡大、スピードアップに取り組んでいく方針であります。当社と提携先の持つ技術やノウハウ等を融合することにより、事業シナジーを発揮することを目指しますが、当初見込んだ効果が発揮されない場合、またこれらの提携等が何らかの理由で解消された場合、当社の事業展開、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他、自然災害などの一般的なリスク

当社は東京に本社を、大阪に事業所を置き、原則として従業員は当該事業所へ出勤し勤務しています。これらの事業所がある地域において、地震・台風・津波・落雷などの自然災害が発生し、従業員の生命が脅かされる、または事業所での勤務が困難となった場合に、事業活動が遅延または停止するリスクを有しています。これらのリスクに対しては、当社では在宅勤務制度を導入し、事業所以外での勤務を可能とするなどの対策は施しているものの、自然災害の規模が大きい場合には、当社の事業展開、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大発展を目指すため、内部留保の充実が重要であると考え、会社設立以来配当は実施しておりません。しかしながら、株主利益の最大化を重要な経営目標の一つと認識しており、今後の株主への剰余金の配当につきましては、業績の推移・財務状況、今後の事業・投資計画等を総合的に勘案し、内部留保とバランスを取りながら検討していく方針です。内部留保資金につきましては、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大発展を実現させるための資金として、有効に活用していく所存であります。

なお、当社は取締役会の決議により、毎年6月30日を基準日として中間配当をすることができる旨を定款に定めております。