2025年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

レーザデバイス事業 視覚情報デバイス事業 レーザアイウェア事業
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
レーザデバイス事業 1,121 85.6 141 - 12.6
視覚情報デバイス事業 188 14.4 -312 - -165.7

事業内容

 

3 【事業の内容】

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社、非連結子会社QD Laser Deutschland GmbH(ドイツ)、QD Laser America,Inc.(米国)で構成されております。

当社はレーザ(※)技術を用いた製品の開発・製造・販売を行っており、レーザデバイス事業と視覚情報デバイス事業を展開しております。非連結子会社QD Laser Deutschland GmbHは視覚情報デバイス事業における欧州での治験結果の維持管理、事業開発、販売を目的としております。非連結子会社QD Laser America,Inc.は視覚情報デバイス事業における米国での網膜投影製品の販売を目的としております。

当社のコア技術として、下記6点があります。

● 半導体結晶成長・・・MBE法(Molecular Beam Epitaxy法、分子ビームエピタキシー法)を用いて半導体結晶を半導体基板上に一原子層ずつ成長させる技術です。当社レーザ製品はこの半導体結晶から製造されます。

● レーザ設計・・・用途毎に所望の機能を満たす最適な半導体レーザを設計する技術です。例えば精密加工用半導体レーザでは10psの超高速パルスを実現しています。

● 小型モジュール・・・半導体レーザは半導体レーザチップをパッケージの中に実装しますが、そのパッケージのことをモジュールと言います。当社は波長532nmや561nmレーザを実装した世界最小クラスのモジュールを製品化しました。

● VISIRIUM Technology・・・超小型レーザプロジェクタから、網膜に直接映像を投影する技術です。

● 回折格子・・・半導体レーザ内部に波長を選択するための周期100ナノメートル程度の凹凸を作り込んでおり、これを回折格子と呼んでおります。これによって、レーザ波長の精密制御が可能になり、黄緑(561nm)、橙色(590nm)等の半導体レーザを商用化しました。

● 量子ドットレーザ・・・量子ドットレーザとは、直径約10nm(ウイルスの1/10程度のサイズ)の半導体量子ドットを活性層に用いて、光を増幅、発振する半導体レーザです。この量子ドットレーザは、1)摂氏マイナス40度から120度近辺まで電流無調整で動作する、2)200度以上の超高温でも動作する、3)高信頼で長寿命である、4)シリコンフォトニクスチップに低雑音でレーザ光を導入できる、という優れた特徴を持っています。


 

※ レーザ(Laser)とは、Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation(誘導放出による光増幅放射)の頭文字を取ったもので、共振器を用いて電磁波を増幅して得られる人工的な光であり、指向性や収束性に優れ、また波長を一定に保つことができる等の物理的な特長があります。

 

なお、当事業年度より、従来「レーザアイウェア事業」としていた報告セグメントの名称を「視覚情報デバイス事業」に変更しております。この変更は報告セグメントの名称変更のみであり、セグメント情報に与える影響はありません。

 

(レーザデバイス事業)

当社のレーザデバイス事業は、結晶成長を自社で実施し、半導体レーザチップ加工及びモジュール実装を、社外協力会社に製造委託する水平分業体制によるファブレス製造を実現し、ハイエンド技術を基にした事業となっております。

当社は半導体レーザの特性を決める活性層成長を担っており、特に量子ドットの結晶成長については他社にはないノウハウを有しております。また、研究機関からの基礎技術の研究開発や、メーカの新規アプリケーションの光源開発を行う開発受託業務も行っています。

 

当社の技術が使われている製品は以下のとおりとなっております。

名称

用途等

 

1240-1310nm量子ドットレーザ


 

 

半導体レーザの活性層(発光部)に量子ドット構造を採用しており、温度安定性に優れ、高温にて動作可能です。この温度安定性により、従来の量子井戸レーザ(※)に比べてレーザの評価や調整を極めて容易に行うことができます。波長1300nm帯でレーザ発振するため、データ通信用の光源として利用されています。

※量子井戸レーザとは、一般に使用される光通信用レーザです。

 

1300nm高温度動作量子ドットレーザ

 


 

 

150℃以上での動作に耐性のある波長1300nm量子ドットFPレーザです。このレーザは砂漠や工場、地中資源探査といった過酷な温度環境下でのデータ伝送やセンシング等様々な応用に適しております。

 

シリコンフォトニクス用量子ドットレーザ


 

 

量子ドットレーザは、1)温度が100℃以上の高温のCPUの近くでも安定して動作する、2)反射戻り光に強いためアイソレータが不要となり低コスト化できる、3)高温度で動作させても長寿命である、という3つの特長があり、シリコンフォトニクス用光源として光コネクタ、チップ間インターコネクトやLiDARなどへの適用・検討が進められております。シリコンフォトニクスチップの設計に合わせて、単一チャネル型だけではなく複数の発光点を持つマルチチャネル型も作製することができます。

 

 

1020-1180nm材料加工・センサ用DFBレーザ


 

 

波長1020-1180nmの単一モードDFBレーザで、連続動作から短パルス動作まで極めて安定に動作します。

単一モード安定性は、精密加工用、LiDAR用、ウエハ表面検査用ファイバレーザの種光、ガスセンシング等様々な応用に適しております。

 

 

640-905nm高出力FPレーザ(モニタPD付き)

 


 

 

波長640,660,785,830及び905nmの高出力ファブリペローレーザで、マシンビジョン、パーティクルカウンター、モーションセンシング、セキュリティ、半導体ウエハ自動搬送機及びレベラー等の様々な産業用途に最適です。

 

532,561,594nm小型可視レーザモジュール

 


 

 

半導体DFBレーザと非線形光学素子PPLN(周期的分極反転ニオブ酸リチウム)を組み合わせた波長変換技術により、低消費電力を実現しております。DPSS(半導体励起固体)レーザと異なり、100MHzまでのパルス変調動作やピコ秒での動作が可能です。顕微鏡、フローサイトメータ、セルソータ、分光及びセンシング等のアプリケーションに使用されています。

 

高品質エピタキシャルウエハ

 


 

 

様々な光デバイス・電子デバイス用途に、カスタマイズした分子線エピタキシー(MBE)装置を用いたGaAs基板上の高品質エピタキシャルウエハです。量子ドットウエハには、テレコム/データコム用温度安定レーザや、220℃までの高温度環境で動作するレーザで、世界最高水準の量子ドット技術が適用されております。

 

 

Lantana

 


 

 

波長532,561,594 nmの小型可視レーザとドライバを内蔵したオールインワン型のユニットです。超小型ながらプラグアンドプレイが可能で、シリアル通信制御の単一波長光源のため、バイオメディカル用装置の小型化や設計自由度の向上に貢献いたします。

 

 

 

上記製品を搭載している主な製品機器の一例として、次のようなものがあります。

1.光通信・シリコンフォトニクス(※1)

名称

用途等

製品特性・概要

 

シリコンフォトニクス

 


 

 

シリコン基板上に光機能素子を集積し、低コストで高性能な光回路を実現する技術です。現在は量子井戸レーザが使用されていますが、量子ドットレーザを用いたデータ通信、ボード間・LSIチップ間通信やLiDAR等の開発が進められています。

 

量子ドットレーザを使用することにより、温度が100℃以上の高温のCPUの近くでも安定して動作する、反射戻り光に強いためアイソレータが不要となり低コスト化できる、高温度で動作させても長寿命である、という3つの特長があります。

 

 

 

2.バイオ系検査装置

名称

用途等

製品特性・概要

 

フローサイトメータ(※2)

(細菌検査装置)


 

細胞の測定装置で、細胞の浮遊液や懸濁液を細管に通し、細胞数の計測、蛍光や散乱光の測定等を、短時間で多量に行います。分子生物学、病理学、免疫学、植物生物学、海洋生物学等各種分野にて応用されております。

 

世界初の緑・黄緑・橙半導体レーザです。

1μm帯DFBレーザ技術と波長変換技術を組合せた小型モジュールになります。黄緑・橙色は直接半導体では発光できない波長帯で、独自の技術をもって実現しております。

小型・低消費電力特性を活かし、フローサイトメータ(細胞検査装置)やバイオメディカル用顕微鏡光源として採用されております。

 

蛍光顕微鏡


 

 

蛍光タンパク質や蛍光抗体を標識に用いて、細胞やタンパク質を生きたままで観察できる顕微鏡で、生物学・医学における研究、臨床検査、浸透探傷検査等に使用されております。

 

 

3.精密加工

名称

用途等

製品特性・概要

 

ファイバレーザ(※3)


 

 

固体レーザ(※4)の一種ですが従来の固体レーザに比べ、繰り返し周波数の自由な設定が可能、ビーム品質が高い、小型軽量で電気-光変換効率が高い、長寿命といった特長があり、金属やセラミック、ガラス等のマーキング、微細加工、溶接、切断等に使用されます。

 

1064nm帯短パルスレーザを使用することにより、結晶成長技術、グレーティング設計技術、半導体レーザ設計技術により1064nmDFBレーザのナノ秒、ピコ秒の短パルス動作を実現しております。

ナノ秒・ピコ秒の短パルス特性を活かし、ファイバレーザの種光として、多くのファイバレーザメーカに採用されております。

 

 

4.各種センサ

名称

用途等

製品特性・概要

 

パーティクルカウンター(※5)

 


 


 

 

マシンビジョン(※6)

 


 

 

空気中や液体中にある塵・ホコリ・異物・ダスト等をカウントする計測器で、工業用クリーンルームと医薬品・食品及びバイオテクノロジー分野向けとして、主に空気中の浮遊微粒子や微生物を制御・管理したクリーンルームやクリーンベンチの管理目的で使用されます。

 

640,660,785,830及び905nmでレーザ発振する半導体レーザで各種センサ、マシンビジョン、パーティクルカウンター、水準器、血液検査計、距離計、半導体ウエハ自動搬送機等の産業用途にレーザを提供しております。

 

光電センサ


 

 

物体の有無や表面状態の変化等を検出するセンサで、工場等での外観検査、自動搬送器、駅のホームドア等幅広い用途に使用されます。

 

半導体ウエハ自動搬送機

 


 

 

半導体工場内のウエハ自動搬送機に搭載されたレーザを照射し、他機との距離を検出することで衝突を回避します。

 

 

 

 

名称

用途等

製品特性・概要

 

距離計

 


 

 

スマートフォンのイヤホンジャックに挿して電源を入れ、計測ガイド(測定点を表示するガイド)用のレーザを照射させ、部屋の壁面等2点間の距離を測定します。

 

同上

 

 

(視覚情報デバイス事業)

視覚情報デバイス事業は、レーザ網膜投影技術を使ったメガネ型ディスプレイや非メガネ型網膜投影製品の製品開発・ファブレス製造を行っています。

ファブレス製造とは、製品の企画、設計を自社内で行い、部品及び最終製品の製造及び組立てを協力会社に依頼しているものです。当社からは、部品及び最終製品の製造・調整に必要な製品仕様、部品リスト、部品仕様書、回路図、実装図、プリント配線板製造データ、組み立て指示書、検査指示書、ソフトウエアを協力会社に供給し、製品製造・検査を委託しております。

また販売に関しましては、一般顧客向けには販売パートナー(代理店、メガネ店、通販業者)を通じ販売し、法人顧客向けには直販及び代理店経由での販売を行っております。

網膜走査型レーザアイウェアは、超小型レーザプロジェクタから、VISIRIUM Technologyにより網膜に直接画像を投影し、装着者の視力やピント位置に影響を受けることなく(フリーフォーカス)、カメラの撮像画像や外部入力されたデジタル情報を見せることができる製品となっております。2022年度に発売した非メガネ型の網膜投影機器は、フリーフォーカスに加えて網膜への投影範囲を大きく拡大し、その周辺部にまで明るくはっきりとした映像を届けられる製品です。

 

 

 

網膜走査型レーザアイウェアの仕組みは以下のとおりとなります。

 


 

網膜走査型レーザアイウェアは、メガネ型民生用機器、医療用機器、非メガネ型民生用機器を販売しておりましたが、医療機器に関しては2024年度に販売を終了しました。

 

メガネ型民生用機器は、「RETISSA Display」を2018年7月に販売を開始しました(現在は販売終了)。後継機として「RETISSA DisplayⅡ」を2019年12月に販売を開始しております。2021年8月からはRETISSA DisplayⅡ向けの専用のアクセサリカメラ「RD2CAM」の販売を開始しましたが、2024年11月の中計において生産中止を発表いたしました。ただし、販売は継続しております。

 

名称

用途等

 

網膜走査型レーザアイウェア「RETISSA DisplayⅡ」

 


 

「RETISSA Displayシリーズ」のフリーフォーカスの特性は、見ることが次第に困難となってきた高齢者の見え方を助けることができます。さらに、装着者に対して完全な拡張現実(Augmented Reality: AR、現実の視界に情報を重ね合わせて表示すること)を実現できるため、組み立て作業中に手順書を見ることや医師が手術中に画像診断情報を見ること等の作業支援用途や、スポーツ観戦や観劇において、解説情報や多言語対応の情報を見せる等の情報支援用途にも応用が可能となっております。
視力0.8相当の高解像度とレーザディスプレイならではの高い色再現性によって、美しい映像をご覧いただけます。

 

 

医療用機器は「RETISSA メディカル」を2021年3月に日本国内で販売を開始しております。眼鏡フレームの中央にカメラを内蔵した網膜走査型レーザアイウェアで、カメラで撮影した画像をリアルタイムに装着者の網膜に投影します。

日本においては2018年10月に治験を終了し、2020年1月に国内医療機器製造販売承認を取得いたしました。

ヨーロッパでは2018年8月に治験を開始、2019年10月に終了し、2021年6月にフォローアップを含めて完了いたしました。2024年10月をもって販売は終了いたしました。

名称

用途等

 

不正乱視向け視力補正機器

網膜走査型レーザアイウェア

「RETISSA メディカル」

 

 

 


カメラで撮影した画像を網膜に投影することによって、次の3つの効果が期待されます。

①遠くを見る視力の向上

②読書の速度の向上

③読書で文字を読むときの視力の向上

出典:前眼部疾患に起因する低視力患者を対象とした網膜走査型レーザアイウェアの検証的試験 治験総括報告書第1.0版

医療機器承認番号:30200BZX00025000

使用目的:本品は、不正乱視によって視力が障害された患者(既存の眼鏡又はコンタクトレンズを用いても十分な視力が得られない患者)に対し、視力補正をする目的で使用されます。

 

 

2022年度にはレーザ網膜走査の技術を利用した非メガネ型民生用機器が加わりました。

名称

用途等

 

「RETISSA ON HAND」

 


 

利用シーン:公共空間(図書館、美術館・博物館・劇場・サッカースタジアムなどでの読書、文化芸術鑑賞、スポーツ観戦等)で来館者が使用する手持ち型機器

 

民生機器「RETISSA ON HAND」はレーザ網膜走査技術を応用・発展させて、公共の場所で、誰もが手軽に本や書類を読んだり、書類に記入や署名できることを目指して開発しました。この「RETISSA ON HAND」は、網膜投影の効果によって、本の見開き全体を見て、書類全体を素早く把握したり、書きたい文字を書くことができることから、各自治体で認知され始めています。図書館、市町村区役所、病院、学校、等の各行政機関で使って頂けるよう、都・県議会、市区町村に働きかけ、行政サービスへの採用検討が進んでいます。現在は、東京都庭園美術館での鑑賞時貸出や、東京文化会館でのオペラ鑑賞時の鑑賞支援機器としての利用が開始されたり、サッカースタジアムでのスポーツ観戦に利用されるなど、文化・芸術施設やスポーツ施設への導入、利用が進んでおります。

民生用新製品「RETISSA ON HAND」は、2023年3月に発売いたしました。代理店を通じて販売中です。2024年3月には米国でも販売を開始しました。

 

 

「RETISSA NEOVIEWER

 


ロービジョン者の行動・見えるの範囲を拡張するデジタルカメラ・ビューファインダー

 

民生機器「RETISSA NEOVIEWER」はレーザ網膜投影の画角をレーザアイウェアの26度から60度まで広げた、デジタルカメラ用ビューファインダです。網膜投影の効果によって画面全体を一度に把握できるため、最適なフレーミングが可能であるだけでなく、老眼や近視等、使用者自身の眼のピント調整機能の影響を受けずに撮影できます。さらに、デジタルカメラの高倍率光学ズームを併用することによって、網膜症を含むロービジョンの方々の最善の視機能支援手段となり得ます。

民生用新製品「RETISSA NEOVIEWER」は、ソニー株式会社のコンパクトデジタルスチルカメラとのセット"DSC-HX99 RNV kit"としてソニー社より2023年3月に発売され、全国5店舗のソニーストアで販売中です。2023年7月からは米国でも販売しています。

*従前の名称「SUPER CAPTURE」から変更しました。

 

「RETISSA MEOCHECK」


民生機器「RETISSA MEOCHECK」はレーザ網膜投影技術を応用した、眼のルフチェックができる小型装置です。

機器の販売に加え、「眼のセルフチェックサービス」を実施するサービスビジネスも実施しております。

ただし、「MEOCHECK」および「眼のセルフチェックサービス」の判定結果が受診勧奨にあたることが判明し、自主回収とソフトウェアの改修を進めております。法令に適合した製品を市場に投入できるまでは全ての営業活動は停止しております。

 

 

当社の事業構造につきましては、下記のとおりとなっております。

(レーザデバイス事業)

独自技術を駆使した半導体ウエハを作成し、協力会社に当該ウエハを組み込んだ半導体レーザチップの作製及びモジュールの実装を委託し、当社で品質基準への適合性を検査した後、お客様に製品をお届けしております。

 

(視覚情報デバイス事業)

網膜走査型レーザアイウェアをはじめとする網膜投影製品を製造しております。一般顧客の場合、販売パートナーを通し、法人顧客からは当社が直接及び代理店経由にて受注しております。製造は協力会社に対して、当社が供給した仕様書に基づき、パーツや最終製品の製造及び組立を委託し、当社にて検査を行った後に販売パートナーまたは直接お客様へ製品をお届けしております。

 

当社の「レーザデバイス事業」及び「視覚情報デバイス事業」の事業系統図は以下のとおりとなります。

なお、当事業年度より、報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。

 


 

本項「3.事業の内容」にて使用しております用語の定義について以下に記します。

 

No

用語

用語定義

 

 

シリコンフォトニクス

 

 

シリコンフォトニクスとは、 LSI(大規模集積回路)やIC(集積回路)に使用されるシリコン基板上に、光集積回路を作製し、様々な光機能をシリコン上に作製する技術です。

 

 

 

フローサイトメータ

 

 

 

フローサイトメトリーと呼ばれる分析手法に用いられる分析装置です。主に細胞を個々に観察する際に用いられます。フローサイトメトリーとは、細胞を含む流体にレーザ光を当てて、その散乱光や蛍光検出により細胞を特定する手法です。

 

 

 

ファイバレーザ

 

 

 

ファイバレーザとは、希土類を添付した光ファイバを増幅媒体とするレーザの一種です。光ファイバ、種光、励起光で構成されております。ビーム品質が高い、小型化可能、長寿命と従来の固体レーザに比べてメリットが多いです。

固体レーザ

固体レーザとはYAG結晶等の絶縁性固体材料を増幅媒質とするレーザです。

 

 

 

 

 

 

 

パーティクルカウンター

 

 

 

 

 

 

 

パーティクルカウンター(Particle Counter)とは、空気中や液体中にある塵・ホコリ・異物・ダスト等をカウントする計測器のことで、日本では微粒子計と呼ばれることもあります。
 パーティクルカウンターは、一般にICR(Industrial Clean Room)と呼ばれる工業用クリーンルームと、BCR(Biological Clean Room)と呼ばれる医薬品・食品及びバイオテクノロジー分野向けとして、主に空気中の浮遊微粒子や微生物を、制御・管理したクリーンルームやクリーンベンチの管理目的で使用されております。

 

 

 

 

 

マシンビジョン

 

 

 

 

 

マシンビジョン(Machine Vision, MV)とは、産業(特に製造業)でのコンピュータビジョンの応用を意味し、自動検査、プロセス制御、ロボットのガイド等に使われます。

コンピュータビジョン(人間の視覚システムをコンピュータが代替する技術)とは、ロボットの目の役割(様々な自動機械が画像認識をする)を果たすものです。

 

 

回折格子形成

 

 

半導体レーザにおいて単一波長で発振するレーザを、DFB(Distributed Feedback)レーザと呼んでおります。波長を選択するためにレーザ内部に周期的な凹凸を形成しますが、それを回折格子形成と呼びます。

 

 

 

クラッド再成長

 

 

 

半導体レーザ用結晶の成長においては、まず半導体レーザの発光層となる量子ドットや量子井戸を形成します。その後、波長を選択する回折格子を形成します。その上部に光を閉じ込める層であるクラッド層を形成します。この層を形成する工程をクラッド再成長と呼びます。

 

 

電極プロセス

 

 

半導体レーザ作製には、クラッド再成長後に光を導波させるためのメサ構造や、電流を注入するための電極形成が必要になります。それらの工程を総称して電極プロセスと呼びます。

10

 

端面コート

 

半導体レーザをレーザ発振させるために、チップ前後に光を反射させる膜を形成する必要があります。この膜形成の工程を端面コートと呼びます。

11

 

チップ選別検査工程

 

協力会社にて作製した半導体レーザチップを、当社において光出力や波長を検査する工程をチップ選別検査工程と呼びます。

12

 

 

 

光学調整

 

 

 

網膜投影製品では、光の三原色であるRGBの半導体レーザの光が精密に設計された光学系によって導かれ、画像を投影します。光学系に関わるパーツでは、投影の品質や安全性が担保できるよう、あらかじめ定められた基準に従った調整を行います。

13

 

光学・外観検査

 

完成した製品は、消費生活用製品安全法やあらかじめ定められた基準に適合していることを確認するために検査されます。

 

業績

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状況、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

① 経営成績の状況

当事業年度における世界経済は、高金利と地政学リスクが継続する中、各国で景気減速の懸念が強まりつつも、インフレは徐々に鎮静化しつつありましたが、年度終盤にはトランプ米国大統領による各国への関税政策に懸念が高まり、依然として残る各地の地政学リスクへの警戒感とともに、先行き不透明な状況が続いております。わが国においては、個人消費や賃金の持ち直しに支えられつつも、それらを上回る物価上昇がみられており、今後も外部環境の不確実性や物価動向への懸念などは継続するものと思われます。

このような状況の中、当社では2024年6月に新経営体制に移行し、「人の可能性を照らせ。」のコーポレートスローガンのもと、新波長の小型可視レーザやオールインワン小型可視レーザ「Lantana」、半導体検査用超高速DFBレーザ及びアイトラッキング駆動システムを含む次世代アイウェアの開発、既存レーザ製品の拡販やレーザ網膜投影機器の販路開拓を進めてまいりました。

また、2024年11月14日に中期経営計画を発表し、「攻め」の土台となるベースライン計画と、その土台に基づく積極的な「攻め」となる成長可能性追求の両立に向けた道筋について示すとともに、2027年3月期での黒字化を明確な目標とし、事業領域の再編成、共同事業化を含めた他社との提携の検討など計画達成のための取り組みを開始いたしました。

当社製品の販売状況としては、レーザデバイス事業では売上高は前事業年度から増加しました。製品別ではDFBレーザ、小型可視レーザ、高出力レーザが前事業年度から増収となりましたが、量子ドットレーザが前事業年度から減収となりました。視覚情報デバイス事業では売上高は前事業年度から減少しました。

この結果、当事業年度の売上高は1,308,870千円(前事業年度比4.9%増)、視覚情報デバイス事業の販売方針変更による販路等構築途上のために依然として販売費及び一般管理費が売上総利益を上回り、営業損失は445,689千円(前事業年度は営業損失604,014千円)、経常損失は443,547千円(前事業年度は経常損失600,972千円)、当期純損失は445,768千円(前事業年度は当期純損失642,627千円)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

なお、当事業年度より、従来「レーザアイウェア事業」としていた報告セグメントの名称を「視覚情報デバイス事業」に変更しております。この変更は報告セグメントの名称変更のみであり、セグメント情報に与える影響はありません。

a.レーザデバイス事業

当事業年度におきましては、売上高は、量子ドットレーザが開発用途向けの販売減少等により9.4%前事業年度から減少しましたが、DFBレーザが加工用途やセンサ用途向けの販売増加等により33.6%、小型可視レーザがバイオセンサ用途向けの販売増加等により27.5%、高出力レーザがセンサ用途向けの販売増加等により3.5%、それぞれ前事業年度から増加したことにより、全体として前事業年度から19.9%増加しました。量子ドットレーザは前事業年度における期ずれの影響を受けたために開発用途向けの売上が減少しておりますが、量産向けは顧客へは希望納期に沿った出荷を行いました。

この結果、当事業年度の売上高は1,120,719千円(前事業年度比19.9%増)、セグメント利益は141,249千円(前事業年度比241.6%増)となりました。

 

b.視覚情報デバイス

当事業年度におきましては、売上高は、次世代網膜投影型アイウェア(スマートグラス)に向けた各種要素技術の開発受託が、アイトラッキング駆動システムの開発を中心とした受注拡大により44.0%前事業年度から増加しましたが、デジタルカメラ用網膜投影ビューファインダ「RETISSA NEOVIEWER」等の網膜投影製品ビジネスが83.9%前事業年度から減少し、全体として前事業年度から39.9%減少しました。

この結果、当事業年度の売上高は188,151千円(前事業年度比39.9%減)、セグメント損失は311,751千円(前事業年度はセグメント損失375,604千円)となりました。

 

② 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末における総資産は前事業年度末から640,484千円減少し、5,505,868千円となりました。流動資産は4,554,880千円となり、前事業年度末から1,207,137千円減少しております。これは主にレーザデバイス事業の拠点移転準備や運転資金の支出により現金及び預金が1,082,105千円、売掛金の回収により売掛金が16,485千円、消費税の還付等により未収入金が67,259千円、出荷及び評価減により商品及び製品が16,181千円減少したこと等によるものであります。固定資産は950,987千円となり、前事業年度末から566,652千円増加しております。これは主に小型可視レーザ製造設備稼働による建設仮勘定からの振替により機械及び装置が62,150千円、レーザデバイス事業の拠点移転準備により長期貸付金が378,617千円、長期前払費用が220,059千円、差入保証金が37,200千円増加した一方、レーザデバイス事業拠点移転決定に伴う償却期間短縮による減価償却費増により建物附属設備が57,781千円、設備稼働に伴う本勘定への振替により建設仮勘定が70,837千円減少したこと等によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債は前事業年度末から191,958千円減少し、286,602千円となりました。流動負債は256,096千円となり、前事業年度末から188,461千円減少しております。これは主に設備代金決済等により未払金が183,221千円減少したこと等によるものであります。固定負債は30,506千円となり、前事業年度末から3,497千円減少しております。これは主に業績連動報酬引当金が取締役2名の評価期間の途中での退任により1,621千円、レーザデバイス事業拠点移転決定に伴う償却期間短縮により繰延税金負債が1,578千円減少したこと等によるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産は前事業年度末から448,525千円減少し、5,219,265千円となりました。これは主に利益剰余金が純損失の計上により445,768千円減少したこと等によるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、3,754,424千円(前事業年度末比1,082,105千円の減少)となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における営業活動の結果減少した資金は506,823千円(前事業年度は443,446千円の減少)となりました。主な資金増加要因は減価償却費98,792千円、貸倒引当金の増加26,620千円、売上債権の減少16,485千円、棚卸資産の減少27,403千円、その他の流動資産の減少42,881千円であり、主な資金減少要因は税引前当期純損失443,547千円、長期前払費用の増加220,059千円、仕入債務の減少12,894千円、その他の流動負債の減少33,719千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における投資活動の結果減少した資金は568,605千円(前事業年度は138,133千円の減少)となりました。主な資金減少要因は有形固定資産の取得による支出167,320千円、長期貸付けによる支出375,331千円、敷金及び保証金の差入による支出37,200千円であり、主な資金増加要因は短期貸付金の回収による収入12,000千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における財務活動の結果減少した資金は9,512千円(前事業年度は1,835,702千円の増加)となりました。主な資金減少要因は長期借入金の返済による支出8,651千円であります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

(a) 生産実績

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

レーザデバイス事業  

710,554

122.54

視覚情報デバイス事業

155,562

51.68

合計

866,116

98.32

 

(注) 1.金額は製造原価によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

2.上記の金額には、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載の棚卸資産の評価損が含まれております。

(b) 仕入実績

当事業年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

レーザデバイス事業  

528,707

121.89

視覚情報デバイス事業

87,382

39.07

合計

616,089

93.71

 

(注) 1.金額は仕入価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

 

(c) 受注実績

当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

レーザデバイス事業  

1,148,244

127.11

333,597

112.27

視覚情報デバイス事業

184,354

58.73

2,325

37.25

合計

1,332,598

109.48

335,922

110.73

 

(注) 1.金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。

 

(d) 販売実績

当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

レーザデバイス事業 

1,120,719

119.91

視覚情報デバイス事業

188,151

60.15

合計(千円)

1,308,870

104.92

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

前事業年度

(自 2023年4月1日

 至 2024年3月31日)

当事業年度

(自 2024年4月1日

 至 2025年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

日本電計株式会社

136,426

10.94

190,955

14.59

Beckman Coulter, Inc.

166,665

12.73

Fabrinet Co., Ltd.

160,723

12.28

 

(注)前事業年度におけるBeckman Coulter, Inc.及びFabrinet Co., Ltd.に対する販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満のため記載を省略しております。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準等に基づき作成されております。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債や収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社の財務諸表で採用する重要な会計方針及び見積りは「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計方針)」及び「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(a) 経営成績の分析
a.売上高

当事業年度における売上高は1,308,870千円(前事業年度比61,385千円の増加)となりました。これは主に、DFBレーザ、小型可視レーザ、高出力レーザが前事業年度から増収となり、量子ドットレーザ及び視覚情報デバイス事業における前事業年度比減収を上回ったことによるものであります。

b.売上原価、売上総損失

当事業年度における売上原価は865,014千円(前事業年度比63,389千円の減少)となりました。これは主に前事業年度の棚卸資産の評価損が多額なものであったことから、それが減少したことによるものであります。この結果、売上総利益は443,855千円(前事業年度比124,774千円の増加)、売上総利益率は33.9%(前事業年度は25.6%)となりました。利益率の増加は主に棚卸資産の評価損の減少によるものであります。

c.販売費及び一般管理費、営業損失

当事業年度における販売費及び一般管理費は889,545千円(前事業年度比33,550千円の減少)となりました。これは主に、試作材料費の時期ずれや役員減少による役員報酬及び株式報酬費用の減少等によるものであります。この結果、営業損失は445,689千円(前事業年度は営業損失604,014千円)となりました。

d.営業外収益、営業外費用、経常損失

当事業年度において受取利息、為替差益等により営業外収益が10,657千円(前事業年度比22,286千円の減少)、資金調達費用等により、営業外費用が8,514千円(前事業年度比21,387千円の減少)発生しております。この結果、経常損失は443,547千円(前事業年度は経常損失600,972千円)となりました。

e.特別利益、特別損失、当期純損失

当事業年度において特別利益、特別損失は発生しておりません(前事業年度は特別損失37,709千円)。この結果、当期純損失は445,768千円(前事業年度は当期純損失642,627千円)となりました。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社の運転資金需要のうち主なものは、材料仕入、外注費、人件費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要の主なものは半導体レーザウエハ結晶成長装置、小型可視レーザ製造装置、測定装置等の機械及び装置等であります。

運転資金、投資資金ともに自己資金から確保することを基本方針としております。当事業年度末の現金及び現金同等物は3,754,424千円であり、現状の事業運営に必要な運転資金、投資資金は十分であると考えておりますが、500,000千円の金融機関のコミットメントライン枠を有しているほか、必要に応じて銀行借入を中心とした調達手段を検討してまいります。

 

④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討

当社の経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標は売上高総利益率であり、当事業年度の売上高総利益率は33.9%(前事業年度は25.6%)となりました。これは主に前事業年度においてはレーザアイウェア事業(現視覚情報デバイス事業)の棚卸資産の評価損が多額なものであったことから、それが減少したことと、レーザデバイス事業における価格見直し等のためであります。2026年3月期については売上高総利益率の目標を39.8%としております。

レーザデバイス事業の指標としましては認定顧客数の20%増加としており、当事業年度末の認定顧客数は82社(前事業年度末は77社)で前事業年度末から6%増加となりました。これは高出力レーザ、DFBレーザおよび小型可視レーザにおいて新規認定顧客が増加したためであります。今後も量子ドットレーザを含め、認定顧客を増やしていく方針ではありますが、各アプリケーションにおいて主要なお客様に認定されていることから、今後はお客様内での認定製品の数を増やすことにも重点をおき、認定製品数を指標といたします。

視覚情報デバイス事業の指標としましてはこれまで累計販売10万台・年間生産5万台と定めておりましたが、2024年11月14日公表の中期経営計画で発表した通り、事業領域の再構築を図っているところであり、新たな指標は未定となっておりますが、当面は光学ユニット新規受注数を客観的指標といたします。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社の事業に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。