2023年12月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。これらのリスクのうち、既に顕在化しているあるいは顕在化の可能性が高いものについては、リスク項目の右側に「※」を付しております。

文中の記載のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 外部経営環境

① 為替の変動 ※

当事業年度における当社(提出会社)の売上高8,405,966千円のうち、7,494,110千円と約90%を占める海外への売上高は主に米国ドル建であり、加えて、生産委託先からの仕入高についても米国ドル建であるため、為替相場の変動は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。具体的には、売上高及び仕入高については、それぞれ販売及び仕入れをした日のレートで円換算されるため、同レートに応じて円換算後の売上高と売上総利益が増減いたします。すなわち、円高となった場合は売上高と売上総利益が減少いたします(円安の場合は増加)。

なお、イタリアに本社を置く販売代理店、Mogar Music S.r.l.に加え、2023年1月よりドイツに本社を置くSound- Service Musikanlagen-Vertriebsgesellschaft mbHが連結子会社となったことから、ユーロの変動についても当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、棚卸資産の評価基準として総平均法を採用しているため、円高傾向が継続した場合、売上原価は過去の円安時に円換算された仕入価格の影響を受けることから、売上原価率が上昇する傾向にあります(円安傾向が継続した場合は下落)。

更に、当社の外貨建資産と外貨建負債のほとんどが米国ドル建であるため、為替相場の変動に応じて為替差損益を計上する可能性があります。

当社では、円高のリスクを取込んだうえで予算を作成すること、米国ドル建資産と米国ドル建負債のバランスを保つこと、及び一部米国ドル建て売掛金に対して為替予約を行うことにより、当社グループとして上記リスクに対応しております。

② 各国の経済状況及び市場の動向

当社グループの製品は世界各国で販売されているため、各国の経済状況や競合他社との価格競争を含む市場の動向に大きな変化がみられた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

特に、当社グループの顧客には比較的若いユーザーが多いため、主に先進国で見られる少子化は将来の顧客数に影響を与える可能性があります。

また、趣味の多様化により当社グループの製品カテゴリーの対象顧客が減少する可能性があります。

更には、ミュージシャンやクリエイター等がターゲットユーザーである製品が多いため、限られたユーザーの動向が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、新しい製品カテゴリーを継続して開拓していくことを戦略目標の一つとすることにより、上記リスクに対応しております。

③ 競合

スマートフォンが携帯音楽プレーヤー、カメラや携帯電話の市場を取込んだように、技術革新や新しいコンセプトの製品の誕生により、思いもよらない製品が将来当社製品の競合となる可能性があります。

また、資金力や技術力がある企業が、新たに当社グループの製品が属するカテゴリーに参入することにより、競争が激化する可能性があります。

当社グループでは、商品開発5か条に基づき他社製品にはないユニークでオリジナリティのある製品を継続して開発することにより、上記リスクに対応しております。

 

④ 法的規制 ※

当社グループは日本国内において電波法、会社法、法人税法、独占禁止法、個人情報保護法、製造物責任法、景品表示法など様々な法的規制を受けております。これらの法改正や新たな法的規制が設けられる可能性があり、その場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループでは製品を世界各国の販売代理店を通じて販売しているため、各国の現地の法的規制を遵守するよう努めております。しかしながら、現地の法的規制が改正又は新たに設定された場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

なお、関税について、米国政府は中国からの輸入品の一部に対して追加の関税を賦課する政策をとっております。現在、当社が中国の生産委託先で製造する製品のうち、賦課対象となっているのはマルチエフェクター等の一部の製品カテゴリーに留まっておりますが、ハンディオーディオレコーダー等の他の製品カテゴリーへ賦課対象が拡大した場合には、米国市場においてコスト競争力が低下し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、現地販売代理店又は会計・法律事務所から、法改正や新たなる規制の導入についての最新の情報を継続的に入手し、リスクの高い項目については事前に対応策を検討すること等により、上記リスクに対応しております。

特に税務については、海外の税法に関する知識不足や見解の相違が原因で、当社又は子会社の税務申告が否認され追徴課税されること等により巨額の損失が発生する可能性があるため、移転価格税制やタックスヘイブン税制等税務リスクが高い分野について専門のコンサルタントから助言を受け、事前にリスクを低減するよう努めております。

⑤ 原材料の調達 ※

当社の製品は、機種により数十から数千個から成る部材で構成されております。ある機種の部材が一つでも調達ができなくなった場合には、当該機種の製品が生産できなくなることから、全ての部材について十分な在庫の確保に努めております。何らかの理由により特定の部材の購入が困難となった場合、必要な数の製品が生産できず販売機会損失が発生することから、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、重要な部材については十分な量の在庫を保有することに加え、複数の調達ルートや代替となる部材を確保すること等により、上記リスクに対応しております。

⑥ 戦争、テロ、感染症又は自然災害等 ※

当社グループは、開発拠点を日本に、生産拠点を中国及び東南アジアに、販売拠点を日本及び海外に置いております。これらの拠点において、地震、水害等の自然災害、新型コロナウイルス・新型インフルエンザ等の感染症や疫病の発生、戦争・テロ又は第三者による当社グループに対する非難・妨害などが発生するリスクがあります。

当社グループでは、一定規模の災害等を想定したリスク対応策を講じておりますが、こうしたリスク等により、短期間で復旧不可能な莫大な損害を被り、部品・資材の調達、生産活動、製品の販売及びサービス活動に遅延や中断が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、ロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻については、引き続き状況を注視しております。なお、2023年12月期の連結売上高に占める両地域への売上高の割合は、合計で1.1%となっております。

 

 

(2) 新製品開発及び製造

① 製造物責任

当社グループは製品の開発、製造及び販売に当たり、適切な品質管理の実施に努めておりますが、予期せぬ欠陥が生じることによりリコールや訴訟が発生する可能性、また、その後のレピュテーションリスクやブランド力の毀損のリスクが考えられます。

更に、製造物責任賠償保険に加入しているものの、保険で賠償額が十分にカバーされなかった場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、品質管理部門において品質管理を一元化するとともに、週次で品質管理ミーティングを開催し問題が深刻化することを未然に防止することにより、上記リスクに対応しております。

② 新製品開発 ※

当社グループは世界初のユニークな製品を開発することを目指しておりますが、期待どおりの成果が得られず製品化を断念した場合、あるいは開発の遅延により予想外の追加コストが発生した場合や販売開始が遅れた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、週次で開発会議を開催し進捗をコントロールするとともに、複数の新製品開発を同時並行で行うことでリスクを分散することにより、上記リスクに対応しております。

③ 生産コストの上昇 ※

当社グループの生産は、中国及び東南アジアにあるEMS企業へ委託しているため、今後EMS企業の所在地の人件費や物流費用の上昇等の理由により生産コストが上昇する可能性があります。

当社グループでは、必要に応じて製品出荷価格の値上げを行うほか、特定の国に偏重しないようEMS企業を選定することにより、上記リスクに対応してまいります。

④ 特定の生産委託先及び原材料購入先への依存 ※

当社グループの生産は外部に委託しており、特にHong Kong Tohei E.M.C. Co., Ltd.へは、主力製品のハンディオーディオレコーダーの大部分を生産委託しており、当社の生産委託全体の64.6%(2023年12月期)を同社が占めております。また、原材料についても高い品質や技術が必要な部品を低価格で調達しようとすると、特定の購入先に依存せざるをえない場合があります。何らかの理由により特定の生産委託先又は原材料購入先からの購入ができなくなった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、生産及び基幹部品の購入について、特定の取引先への依存度を下げることにより、上記リスクに対応してまいります。

 

(3) 知的財産権 ※

当社グループでは、製品の開発にあたり知的財産権を使用することから、知的財産侵害の指摘を受け他社との間で紛争や訴訟が生じた場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、新製品開発に当たり他社の知的財産権の調査を行い、特に新製品で使用する技術が他社の特許権を侵害しないか、新製品の名称が他社の商標権を侵害していないか、に留意して調査することにより、問題の発生の防止に努めております。

また、当社グループが保有する商標権や特許権等の知的財産が侵害されることにより市場において当社ブランドとの混同や模倣製品が流通すること等によって、当社のブランド価値に毀損が生じることにより、中長期的に当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、知的財産の侵害を発見した場合には決して容認せず、毅然とした態度で法的措置等を含めた対応をとることにより、上記リスクに対応してまいります。

 

 

(4) 特定製品カテゴリーへの依存

当社グループは多種多様な製品を販売しておりますが、ハンディオーディオレコーダーの売上割合が22.9%(2023年12月期)を占めております。ハンディオーディオレコーダー以外の他の製品カテゴリーの製品開発や販促に取り組むことにより売上割合は減少しつつあるものの、なんらかの理由によりハンディオーディオレコーダーの製品の出荷数が落ち込んだ場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、新しい製品カテゴリーの開拓を継続していくことを戦略目標の一つとすることにより、上記リスクに対応しております。

 

(5) 海外の販売代理店への依存

当社グループの海外売上高比率は85.7%(2023年12月期)と非常に高く、その全ては海外の販売代理店経由の売上となっております。販売代理店が子会社である北米、南欧及び中欧(2023年1月より)を除き、各国での当社製品のプロモーションや営業活動は、原則として当該国担当の販売代理店が独自で行うため、各販売代理店の販売戦略等は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、主要な販売代理店との契約終了や関係の悪化が、小売業者や顧客の喪失、競合他社へのノウハウの流出、当社グループの営業力の減退をもたらし、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

更に、販売代理店に対するモニタリングが不十分であった場合、当社グループの評判又は信用が毀損し、又は小売業者や顧客との関係を悪化させ、その結果、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、主要な代理店については定期的にミーティングを行うとともに、新製品について各主要代理店の営業担当に対しトレーニングを行うことでコミュニケーションの円滑化を図ることにより、上記リスクに対応しております。

 

(6) 人材の確保と育成

当社グループの製品は、競合商品の出現や技術革新により販売台数が減少する傾向にあることから、持続的な成長のためには継続的に新製品を開発し、発売していくことが不可欠となります。製品開発に当たってはエンジニアの数と質が制約条件となるため、優秀なエンジニアの確保と継続的な人材の育成に努めてまいります。

しかしながら、我が国では若年層及び生産年齢人口が減少の一途を辿っていることもあり、優秀な人材の確保や育成が予定どおり進捗しない場合や優秀な人材の流出が続いた場合、競争力の低下や事業計画の予定どおりの遂行ができなくなり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、エンジニアについては新卒採用の間口を広げるとともに、学生との接点を増やすことにより毎年必要な新卒を継続的に採用し、大学院派遣やジョブローテンションを実施し、スキルアップを図ることにより人材を育成するとともに、必要に応じて中途採用を行うことにより、優秀な人材の確保に努めております。

 

(7) システムトラブルと情報漏洩

当社グループは、生産管理、部品や製品の発注、在庫管理、販売管理に基幹システム及び情報システムを利用しております。これらのシステムが、不正アクセスやシステムの不具合、自然災害等により、アクセスできなくなる等の障害が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、業務を通じて取引先の機密情報やユーザーの個人情報等を保有しており、これらの情報を保護するために個人情報保護等の規程の整備を含めた情報セキュリティ体制を構築、運用しております。

しかしながら、コンピューターウイルスの感染やパソコンの盗難等の不測の事態により機密情報が漏洩した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、システムのバックアップやファイアウォールの設定等不正アクセスを防止するための措置を講ずるとともに、定期的にセキュリティの見直しを行うこと等により、上記リスクに対応しております。

 

 

(8) レピュテーションリスク

当社グループの製品は主として個人向けであり、スマートフォン、タブレット及びパーソナルコンピューターとの連携を前提とした製品も多いため、ネットリテラシーの高いユーザーが多く、ユーザーからの感想や要望がソーシャルメディアやブログ等に多くあがっております。事実の有無にかかわらず、インターネット上で当社若しくは当社製品への誹謗・中傷が広がった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、ソーシャルメディア運用管理規程等を定め、いわゆる“炎上”が起こらないように注意することにより、上記リスクに対応しております。

 

(9) 売掛金の回収リスク

当社グループの主要取引先に対しては、主として売上の1か月から2か月分の与信を設定しております。取引先には、有力な卸、小売店又は販売代理店が多いため売掛金残高も多額となるケースがあり、倒産等により売掛金の回収が不可能となった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、主要取引先に対しては定期的に信用調査を行うなど慎重に与信管理を行うことに加え、一部販売先の売上債権に対して金融機関の保証ファクタリングを利用することにより、上記リスクに対応しております。

 

(10)重要な訴訟

当社グループの製品は世界中で利用されているため、様々な理由で訴訟の提起を受ける可能性があり、その場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

当社グループでは、コンプライアンス規程及びコンプライアンス・マニュアルを制定し、法令及び契約の遵守に努めることにより、上記リスクに対応しております。

 

(11)業績の季節変動 ※

当社グループの主たる市場である欧米においては年末商戦における需要が強いことから、当社グループの売上及び利益は上期に比べて下期に増加する傾向があります。このため、為替の変動や生産コストの上昇等何らかの理由により下期の売上及び利益が予想を下回る場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様への利益還元を重要な課題と認識しており、事業年度ごとの利益の状況、将来の事業展開などを勘案しつつ、安定した配当を維持するとともに株主の皆様への利益還元に努めることとしております。具体的には、配当性向30%以上を目安に安定的な配当を実施する方針としており、この方針のもと、当事業年度の年間配当金は1株当たり30円の配当を予定しております。

なお、新たに策定した「第4次中期経営計画2024-2026」においては、配当性向30%以上を目安に減配なしの累進配当を実施する方針としており、翌事業年度以降については当該方針に基づき配当を行う予定であります。

当社の剰余金の配当は期末配当の年1回を基本的な方針としており、配当の決定機関は、株主総会であります。また、当社は、取締役会の決議によって、毎年6月30日を基準日として、中間配当をすることができる旨を定款に定めております。

内部留保資金につきましては、今後の事業展開への備えと研究開発費用として投入していくこととしております。

なお、基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たり配当額

(円)

2024年3月28日

定時株主総会

129,769

30