人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数13,083名(単体) 74,464名(連結)
-
平均年齢43.4歳(単体)
-
平均勤続年数18.6年(単体)
-
平均年収8,009,000円(単体)
従業員の状況
5【従業員の状況】
(1)連結会社の状況
|
2024年3月31日現在 |
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
プリンティングソリューションズ事業 |
49,991 |
ビジュアルコミュニケーション事業 |
9,325 |
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業 |
11,093 |
報告セグメント計 |
70,409 |
その他 |
433 |
全社(共通) |
3,622 |
合計 |
74,464 |
(注)1.従業員数は、就業人員数です。
2.全社(共通)として記載している従業員数は、特定のセグメントに区分できない管理部門に所属しているものです。
(2)提出会社の状況
|
|
|
2024年3月31日現在 |
従業員数(人) |
平均年齢(歳) |
平均勤続年数(年) |
平均年間給与(千円) |
13,083 |
43.4 |
18.6 |
8,009 |
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
プリンティングソリューションズ事業 |
6,067 |
ビジュアルコミュニケーション事業 |
1,481 |
マニュファクチャリング関連・ウエアラブル事業 |
2,421 |
報告セグメント計 |
9,969 |
その他 |
- |
全社(共通) |
3,114 |
合計 |
13,083 |
(注)1.従業員数は、就業人員数です。
2.平均年齢、平均勤続年数および平均年間給与は、提出会社の正規従業員を基に計算しております。
3.平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。
4.全社(共通)として記載している従業員数は、特定のセグメントに区分できない管理部門に所属しているものです。
(3)労働組合の状況
当社および一部の連結子会社において労働組合が組織されております。
当社および一部の連結子会社における労使関係は良好であり、特に記載すべき事項はありません。
(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
① 提出会社
当事業年度(2023年度) |
補足説明 |
||||
管理職に占める女性労働者の割合(%) |
男性労働者の育児休業 取得率(%) |
労働者の男女の賃金の差異(%) |
|||
全労働者 |
正規雇用 労働者 |
非正規雇用 労働者 |
|||
4.7 |
85.2 |
76.5 |
76.8 |
79.3 |
賃金制度上、同一資格等級での男女の賃金差異はないが、上位職位・資格等級に占める女性の割合が少ないことが差異の主な理由 |
(注)1.管理職に占める女性労働者の割合および労働者の男女の賃金の差異は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
2.管理職に占める女性労働者の割合は、セイコーエプソン株式会社組織における女性管理職の割合です。
3.男性労働者の育児休業取得率は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。
4.労働者の男女の賃金の差異は、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を示しております。
5.男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異は、セイコーエプソン株式会社元籍社員(グループ他社からの出向者を含まない)の集計値から算出したものです。
6.労働者の男女の賃金の差異において、管理職層における賃金差異は97.9%です。
② 連結子会社
エプソンの国内グループ会社のうち、101人以上の常用雇用者を持つ関係会社について、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」で常用雇用者301人以上の会社に求められる3項目を記載しています(2024年3月時点)。なお、提出会社と下記の国内グループ10社の合計従業員数は、国内従業員数の約99%をカバーしています。
当事業年度(2023年度) |
補足説明 |
|||||
名称 |
管理職に占める女性労働者の割合 (%) |
男性労働者の育児休業取得率 (%) |
労働者の男女の賃金の差異(%) |
|||
全労働者 |
正規雇用 労働者 |
非正規雇用労働者 |
||||
エプソン販売株式会社 |
6.9 |
95.0 |
84.0 |
78.5 |
120.7 |
|
東北エプソン株式会社 |
4.3 |
100.0 |
76.4 |
76.5 |
57.8 |
非正規雇用労働者の男女賃金差異は契約社員の契約内容によるもの |
秋田エプソン株式会社 |
6.7 |
100.0 |
79.1 |
80.7 |
87.6 |
|
宮崎エプソン株式会社 |
0.0 |
40.0 |
78.4 |
75.0 |
87.4 |
|
エプソンアヴァシス 株式会社 |
19.2 |
66.7 |
76.8 |
77.9 |
47.7 |
非正規雇用労働者の男女賃金差異は契約社員の契約内容によるもの |
エプソンアトミックス 株式会社 |
11.1 |
36.4 |
98.9 |
84.9 |
- |
非正規雇用労働者は男性のみ |
エプソンダイレクト 株式会社 |
6.3 |
- |
84.5 |
94.4 |
119.6 |
男性育休については該当者なし |
エプソンロジスティクス 株式会社 |
0.0 |
- |
111.3 |
113.4 |
90.5 |
男性育休については該当者なし |
エプソンミズベ 株式会社 |
10.0 |
100.0 |
99.1 |
100.4 |
89.0 |
|
エプソンリペア 株式会社 |
0.0 |
100.0 |
74.5 |
78.0 |
122.4 |
|
(注)1.管理職に占める女性労働者の割合および労働者の男女の賃金の差異は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
2.管理職に占める女性労働者の割合は、各会社組織における女性管理職の割合です(在籍ベース)。
3.男性労働者の育児休業取得率は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。
4.労働者の男女の賃金の差異は、男性の賃金に対する女性の賃金の割合を示しております。
5.男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異は、各社元籍従業員(グループ他社からの出向者を含まない)の集計値から算出したものです。
③ 連結(提出会社および国内グループ会社10社)
当事業年度(2023年度) |
補足説明 |
||||
管理職に占める女性労働者の割合(%) |
男性労働者の育児休業 取得率(%) |
労働者の男女の賃金の差異(%) |
|||
全労働者 |
正規雇用 労働者 |
非正規雇用 労働者 |
|||
5.5 |
84.4 |
73.9 |
74.5 |
80.9 |
連結の範囲は、上記 ① 提出会社(セイコーエプソン株式会社)と ② 連結子会社(国内グループ会社10社)として合計値を記載 |
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2【サステナビリティに関する考え方及び取組】
ESG投資の拡大や各国・地域のサステナビリティ関連政策の策定など、世界中でサステナビリティをめぐる動きが加速しています。このようななか、企業は事業活動を通じて、社会が抱える課題にどう対応していくかという姿勢をますます問われるようになっています。エプソンは、これまでも商品・サービスの提供を通じ、さまざまな社会課題の解決に貢献してきました。今後も、パーパスを旗印に、長期的な視点からお客様やパートナーの皆様と「持続可能でこころ豊かな社会」を実現するため、社会のサステナビリティとエプソンのサステナビリティの同期化を進めていきます。
(1)サステナビリティ共通
①ガバナンス
エプソンでは、社長直轄の組織としてサステナビリティ推進室を設置し、その責任者に執行役員 CFOが任命され、グループ全体のサステナビリティ(社会要請に基づく持続的成長性)活動に関する責任を担っています。また、社長の諮問機関として、本部長、事業部長などの経営層に加え、社外取締役、監査等委員により構成される「サステナビリティ戦略会議」を設置しています。サステナビリティ戦略会議では、社会動向レビューに基づきグループ全体に係るサステナビリティに関する中長期戦略を策定し、活動の実践状況のレビューや重要課題への取り組みなどについて審議しています。
さらに、サステナビリティ戦略会議の下部組織として、「サステナビリティ推進会議」を設置し、サステナビリティ活動に関する専門事項について協議・検討を行っています。この推進会議は、関係主管部門長により構成され、サステナビリティ戦略会議へ上申および答申します。サステナビリティ推進室はこれら2つの会議体の事務局を担当するとともに、定期的な取締役会への報告を実施し、より効果的なサステナビリティ活動の推進に努めています。
なお、役員報酬に関しては、より実効的なサステナビリティガバナンスの体制を構築する観点から、マテリアリティに紐づくサステナビリティ重要テーマの指標4項目(脱炭素、サプライチェーン、人権・ダイバーシティ、ガバナンス)を、譲渡制限付株式報酬と連動させています。
■ 推進体制図
②戦略
エプソンは、SDGs、ISO26000などで示された社会課題やメガトレンドを分析するとともに、社会インパクトにつながる自社の強みを検討し、社会課題解決に向けエプソンが取り組むべき重要度の高い課題である4つのマテリアリティ(「循環型経済の牽引」「産業構造の革新」「生活の質向上」「社会的責任の遂行」)を特定しました。
社会課題を解決することで事業成長を果たし、事業成長をすることでより多くの社会課題を解決するサステナビリティ経営で、持続可能でこころ豊かな社会の実現を目指します。
■ エプソンのサステナビリティ経営
エプソンの企業経営の根幹を成すマテリアリティは、社会課題をベースにしており、エプソンの事業活動は社会課題の解決そのものと捉えています。社会課題を起点にした活動を一層強化することで事業成長を果たし、事業成長することでさらに多くの社会課題を解決し、社会とともに成長することがエプソンにとっての企業価値向上です。そして、社会のサステナビリティとエプソンのサステナビリティを同期するのに必要な経営・事業変革こそが、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」であると位置づけています。
■ 4つのマテリアリティと特定プロセス
エプソンは、以下のマテリアリティを企業経営の根幹として事業展開しています。
<循環型経済の牽引>
電力やエネルギー、水などの資源の有効利用や地下資源の使用削減などによって、資源を循環し、気候変動を抑制することで、持続的な経済活動を牽引する取り組みです。
<産業構造の革新>
従来のプロセスを変えることで、社会課題の解決につなげる取り組みです。例えば、ものづくりのプロセスをアナログ手法からデジタルに転換することによって、環境汚染や労働問題などの改善につなげることを意図しています。
<生活の質向上>
人々が健やかに暮らせるような健康面での貢献や、人の成長、成熟に関わる教育面での貢献です。エプソンが提供する商品やサービスを通じて、多様なライフスタイルを選択することを可能とし、健やかで、彩りのある暮らしにつながる取り組みを進めていきます。
<社会的責任の遂行>
エプソンが、持続可能でこころ豊かな社会を実現するために必要な企業責任を果たすことを示しています。多様なステークホルダーとの対話、調達部材やサプライヤーに関する環境・社会的側面での責任、人権の尊重とダイバーシティの推進、事業継続に関する対応力など、社会から期待される企業のあるべき姿の実現に資する取り組みです。
■ マテリアリティごとの機会とリスク、取り組みテーマ
マテリアリティ(サステナビリティ重要テーマ)ごとの機会とリスクを下記のとおり評価し、Epson 25 Renewedの目標達成に取り組んでいます。
マテリアリティ:循環型経済の牽引 |
||
サステナビリティ 重要テーマ |
機会(〇) |
リスク(●) |
脱炭素の取り組み
資源循環の取り組み
お客様のもとでの 環境負荷低減
環境技術開発 |
〇炭素税導入、電気料金高騰、廃棄物処分コストの上昇、適量生産・資源削減などにより、環境に配慮した商品・サービスへのニーズの高まり ○地球温暖化対策分野や廃棄物処理・資源有効活用分野の市場成長 ○サーキュラーエコノミー(循環型経済)へのシフトにより、再生プラスチック、バイオプラスチック、金属リサイクルの市場成長 |
●森林保護意識観点からのペーパーレス化気運の高まり ●政策・法規制の変化による操業コスト増 ●「脱炭素」と「資源循環」への対応遅れによる信用低下、企業価値の毀損 ●環境負荷低減につながる環境技術開発の計画未達もしくは遅延による企業価値の毀損 |
マテリアリティ:産業構造の革新 |
||
サステナビリティ 重要テーマ |
機会(〇) |
リスク(●) |
デジタル化・自動化 による生産性向上 |
○消費者ニーズ多様化、環境配慮の重要性の高まりによる省資源で高効率な生産プロセスへの移行 ○地政学的なリスクなどを踏まえたBCP対応を目的とした生産工場の分散化 |
●市場要望に合致した商品・サービスの投入遅れによるビジネス機会の損失 ●扱いやすいソリューションやデジタルサービスの展開の遅れ |
労働環境・教育環境の 改善
|
○働き方の多様化やIT技術の進展にともなうオフィスの変化 ○少子高齢化などを背景とした世界的な労働力不足を補うロボットを用いた自動化ニーズの高まり・広がり ○労働環境の改善やものづくり現場のレジリエンス強化を目的とした生産システムの革新ニーズの高まり ○在宅勤務やWeb会議における物理的コミュニケーション低下によるストレス負荷・業務効率低下解消ニーズの高まり ○世界共通の脱炭素目標の実現(人の移動で生じるCO2の削減)機運の高まり ○開発途上国における学びの場や機会の格差の解消に向けたICT活用拡大 ○デジタル教材、教育プラットフォームの普及 ○新興国、開発途上国における就学人口増大による教育市場の拡大 ○ICTによる教師不足、教務支援不足の解消 ○在宅学習支援プログラムの拡大 |
●市場要望に合致した商品・サービスの投入遅れによるビジネス機会の損失 ●労働力豊富な地域(新興国、開発途上国)への生産移転により人作業中心の労働集約型が継続 ●自動化を実現できる人材の不足 ●アフターコロナにおけるオフィス出社率向上にともなう、リアルとリモートをつなぐニーズの減少 ●プロジェクター以外の大型表示装置・個人端末との競争激化、自社ソリューションの相対的なプレゼンス低下 ●タブレットなどの電子機器活用の拡大による教育市場でのプリントニーズの低下 ●開発途上国の経済発展遅れ、政情不安による、健全な教育予算編成・資金投下の遅れ |
マテリアリティ:生活の質向上 |
||
サステナビリティ 重要テーマ |
機会(〇) |
リスク(●) |
多様なライフスタイル の提案 |
○ライフスタイルの多様化にともなうさまざまなスポーツでのデータ活用による上達支援のニーズの拡大 ○健康支援などの新たなデータサービスビジネスの立ち上がり ○先進国における生産年齢人口の減少や社会保障費の増大への対応として、国をあげた健康寿命延伸への政策的取り組み |
●競合データサービスの進化によるプレゼンス低下 ●健康志向への関心低迷によるデータサービスビジネスへの影響 |
豊かで彩のある暮らし の実現 |
○多様な価値観、趣味、趣向に応える嗜好品の需要 |
●価値観の変化によるウエアラブル機器市場におけるプレゼンス低下 |
マテリアリティ:社会的責任の遂行 |
||
サステナビリティ 重要テーマ |
機会(〇) |
リスク(●) |
ステークホルダーエン ゲージメントの向上 |
○サステナビリティに関するステークホルダーからの関心の高まり |
●不適切な対応によるステークホルダーからの信頼の失墜、企業価値の毀損 |
責任あるサプライ チェーンの実現 |
○世界的な「ビジネスと人権」への関心の高まり |
●当社およびサプライチェーンにおける人権侵害の発生 |
人権の尊重と ダイバーシティの推進 |
○自由闊達で風通しの良い組織風土の醸成による企業パフォーマンスの向上 ○世界的な「ビジネスと人権」への関心の高まり ○DE&Iの認知や理解、社会的マイノリティに対する意識の変化 |
●組織風土の改善が進まないことによるエンゲージメントの低下、イノベーションの欠如 ●サプライチェーンを含め、重大な人権侵害が発生した場合、企業価値の毀損 ●DE&Iが進まないことによるエンゲージメントの低下 |
ガバナンスの強化 |
○ガバナンス体制の強化による戦略推進の加速、変化への対応力向上 ○適切なリスクテイクによる競争力の向上 |
●ガバナンス不全にともなう戦略進捗の遅れ、組織力低下 ●コンプライアンス違反による損失の発生、社会的信用の失墜 |
③リスク管理
企業を取り巻く環境が複雑かつ不確実性を増すなか、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクに的確に対処することが、経営戦略や事業目的を遂行していくうえでは不可欠です。エプソンは、サステナビリティに関連するリスクを経営上の重大な影響を及ぼすリスクとして位置付け、適切に管理しています。
■リスク管理プロセス
④指標及び目標
■ マテリアリティとサステナビリティ重要テーマ、KPI
社会課題解決に向けエプソンが取り組むべき重要度の高い課題である4つのマテリアリティへの取り組みを実効性のあるものにするため、12のサステナビリティ重要テーマを設定し、取り組み目標(KPI)を定め、中期活動計画に反映し着実に推進しています。
■ サステナビリティ重要テーマ目標と実績
マテリアリティ:循環型経済の牽引 |
||||
サステナビリティ 重要テーマ |
取り組みテーマ |
評価指標(KPI) |
2023年度 |
2023年度 実績 |
脱炭素の 取り組み |
2050年「カーボンマイナス」に向けた、設備の省エネ、温室効果ガス除去、サプライヤーエンゲージメント、脱炭素ロジスティクス |
・スコープ1,2 GHG排出量(総量)削減率 ・スコープ3 GHG排出量(事業利益原単位)削減率 |
・2017年度比 65%削減 ・2017年度比 45%削減 |
・2017年度比 80%削減 ・2017年度比 17%削減 |
再生可能エネルギーの活用 |
再生可能エネルギー導入率 |
グローバルで 100% |
グローバル導入率 100% |
|
資源循環の取り組み |
2050年「地下資源(※1)消費ゼロ」に向けた ・小型軽量化/再生材活用などの資源の有効活用 ・生産ロスを極小化する循環型生産システムの構築 |
サステナブル資源率 (※2) |
27% |
32% |
最終埋立率 (※3) |
1%以下 |
0.6% |
||
お客様のもとでの環境負荷低減 |
環境負荷低減に資する商品・サービスによる削減貢献量の最大化 (※4) |
商品サービスによる削減貢献量 |
新しい算定ロジックによる算出開始と目標値策定 |
(※5) |
マテリアリティ:循環型経済の牽引 |
||||
サステナビリティ 重要テーマ |
取り組みテーマ |
評価指標(KPI) |
2023年度 |
2023年度 実績 |
環境技術開発 |
ドライファイバーテクノロジーを応用した再生材/天然素材による脱プラスチック・資源循環の実現 ・梱包材(従来材の置き換え) ・外装材(従来材の置き換え) |
開発プロセスの進捗状況 |
実用化範囲拡大 |
・梱包材:活用拡大に向けた開発(コットン端材) ・外装材:複合プラスチックの素材開発(素材性能向上) |
スクラップ金属の高付加価値リサイクル技術確立 |
開発プロセスの進捗状況 |
金属粉末(造形材)の高付加価値化技術の実用化 |
造形材としての要素技術開発を完了しPoC(※6)推進中 |
|
マテリアリティ:産業構造の革新 |
||||
サステナビリティ 重要テーマ |
取り組みテーマ |
評価指標(KPI) |
2023年度 |
2023年度 実績 |
デジタル化・自動化による生産性向上 |
インクジェット技術と多様なソリューションにより、商業・産業印刷のデジタル化を主導し、クリーンでスペース効率の良い現場作りと環境負荷低減・生産性向上を実現する |
商業・産業向けインクジェットプリンター対前年売上伸長率 |
10% |
1% |
労働環境の改善・教育環境の改善 |
インクジェット技術とオープンなソリューションにより、環境負荷低減・生産性向上を実現し、在宅学習や分散オフィスの印刷の進化を主導する |
SOHO・ホーム向け大容量インクジェットプリンター対前年売上伸長率 |
5% |
△9% |
ロボットを用いた自動化による労働力不足の解消 |
労働力不足解消数(※7) |
28,000人 |
26,000人 |
|
臨場感と情報量を両立し、リアルとリモートを組み合わせた境界のない公平・自然で快適なコミュニケーション環境を提供する |
共創・協業案件数 またはパートナー数 |
共創・協業案件:1件 |
共創・協業案件:2件 |
|
大画面コミュニケーションをコンパクトに実現するスマート型の携行型ディスプレイにより均質な学びの機会を創出し、地域や社会情勢の違いによる学びの格差を緩和する |
共創・協業による現地実証プログラム数 |
価値実証件数: 20件 |
価値実証件数: 29件 |
マテリアリティ:生活の質向上 |
||||
サステナビリティ 重要テーマ |
取り組みテーマ |
評価指標(KPI) |
2023年度 |
2023年度 実績 |
多様なライフスタイルの提案 |
独創のセンシング技術とアルゴリズムにより、パーソナライズされた価値をビジュアルで分かりやすく提供することで、生活習慣病予防やスポーツ上達支援によって人々の多様なライフスタイルを彩る |
売上に占める支援サービスのデータビジネス比率(※8)収益比率 |
20% |
22% |
豊かで彩のある暮らしの実現 |
「省・小・精の技術」と匠の技能で、魅力ある上質な商品を提供し、お客様の多様なライフスタイルを彩る |
魅力ある上質な商品の対前年売上伸長率 |
4% |
4% |
マテリアリティ:社会的責任の遂行 |
||||
サステナビリティ 重要テーマ |
取り組みテーマ |
評価指標(KPI) |
2023年度 |
2023年度 実績 |
ステークホルダーエンゲージメントの向上 |
ステークホルダーとの対話強化 によるニーズ・社会要請への対応 |
社会支援活動 支援金額 |
売上の0.1%以上 |
売上の0.1% |
株主・投資家との対話回数ならびに経営への意見反映 |
株主・投資家との対話200回以上 |
株主・投資家との対話240回 |
||
外部評価機関の評価指数 |
高評価を得る |
高評価(※9)を獲得 |
||
責任あるサプライチェーンの実現 |
サプライチェーンBCM強化 |
サプライチェーン途絶・停滞によるお客様への影響(2024年度販売影響) |
サプライチェーン途絶による販売影響を限りなくゼロとする |
サプライチェーン起因による影響:ゼロ |
責任あるサプライチェーンの実現 |
サプライヤーにおけるCSRリスクレベル |
主要サプライヤーのCSRリスクランク: (直接材) ・ハイリスク:0% ・ミドルリスク:4%以下 (間接材) ・ハイリスク:0% |
(直接材) ・ハイリスク:0% ・ミドルリスク:4.2% (間接在) ・ハイリスク:0% |
|
責任ある鉱物調達の実現 |
・製品のコンフリクトフリー(CF)率 ・調査回答率 (※10) |
・CF戦略製品のCF情報リリース ・調査回答率:100% |
・CF情報の実績開示に向け準備 ・調査回答率:100% |
マテリアリティ:社会的責任の遂行 |
||||
サステナビリティ 重要テーマ |
取り組みテーマ |
評価指標(KPI) |
2023年度 |
2023年度 実績 |
人権の尊重とダイバーシティの推進 |
自由闊達で風通しのよい組織風土 づくり |
組織風土アセスメント「チームで働く力」スコア |
・モチベーションクラウド・エンゲージメントレーティング:BB ・レーティングD職場数:31 |
・モチベーションクラウド・エンゲージメントレーティング:BB ・レーティングD職場数:45 |
こころの健康診断「総合健康リスク」ハイリスク職場数 |
「総合健康リスク」ハイリスク職場数ゼロに向けて前年より減 (※11) |
2022年度よりハイリスク職場数が増 |
||
ハラスメント防止施策の実施(教育・研修、事案共有、任用プロセス等)、事案の本社報告の徹底 |
・社会動向、発生事案、共通課題を踏まえた研修コンテンツの改訂 ・相談窓口担当者研修の定期開催 |
計画した研修については、コンテンツの刷新含めて計画通り進行 |
||
・全社傾向の把握 ・標準業務の見極め、高負荷窓口一部外部化の検証 |
相談窓口外部委託化の選定完了、運用準備 |
|||
新「人権方針」のグループ内浸透 による人権の尊重 |
人権尊重のコミットメント、人権デューデリジェンス(DD)・救済メカニズムの定着・改善 |
人権尊重のためのPDCAサイクルの定着・改善 ・国内:各種相談窓口との連携体制の構築 ・海外:各現法窓口からの報告ルール明確化による情報集約・状況把握体制の整備 |
(PDCAサイクル) ・RBAのスキームを活用した人権尊重の活動の継続 ・人権侵害リスクを再評価し、人権DDを実施 (救済メカニズム) ・国内:社内窓口の連携体制構築、社外向け相談窓口としてJaCER(※12)の利用を開始 ・海外:当該案件の情報集約に着手 |
|
ダイバーシティを尊重した人材の 活用 |
・女性管理職比率 (当社) ・女性執行役員数2025年度までに1名以上(国内) |
・管理職女性比率5% ・女性係長級比率8% |
・女性管理職比率4.7% ・女性係長級比率 7.7% |
マテリアリティ:社会的責任の遂行 |
||||
サステナビリティ 重要テーマ |
取り組みテーマ |
評価指標(KPI) |
2023年度 |
2023年度 実績 |
ガバナンスの強化 |
コンプライアンス経営の基盤強化 |
重大なコンプライアンス違反事案(※13)の発生件数 |
0件 |
0件 |
グループコンプライアンスレベル の引き上げ |
グループ全社へのコンプライアンス教育(e-ラーニング)実施率 |
グループ全社での実施率100% |
グループ全社での実施率100% |
|
透明・公正かつ迅速・果断な意思 決定を実現するガバナンス体制の 維持・強化 |
・取締役会の社外取締役比率 ・選考/報酬審議会の社外取締役比率 |
・取締役会の社外取締役比率1/3以上を維持 ・選考/報酬審議会の社外取締役比率80%以上を維持 |
・取締役会の社外取締役比率1/3以上を維持 ・選考/報酬審議会の社外取締役比率80%以上を維持 |
|
情報セキュリティーの強化 |
重大な情報セキュリティーインシデント発生件数 |
0件 |
0件 |
※1 原油、金属などの枯渇性資源
※2 原材料に対するサステナブル資源(再生可能資源+循環資源+低枯渇性資源)の比率
※3 資源投入量に対する生産系埋立量の比率
※4 商品・サービスが社会のGHG排出量の削減に資する量を定量化したもの
※5 2023年度実績は2024年8月上旬頃、下記の当社ウェブサイトで開示予定
https://corporate.epson/ja/sustainability/initiatives/materiality.html
※6 PoC(Proof of Concept、概念実証):新しい技術などの実現可能性や実際の効果などを検証するプロセス
※7 エプソン社内プロジェクトの効果ベースで換算
※8 データをアルゴリズム変換し価値提供を行うビジネスモデル
※9 Sustainalytics:Low、FTSE:4点以上、東洋経済新報社「CSR企業ランキング」トップ50以上
※10 調査依頼サプライヤーに対する回答提出サプライヤーの率
※11 目標値管理は回答者10名以上の職場を対象
※12 JaCER:ビジネスと人権対話救済機構
※13 適時開示事由に該当するような違反事案
(2)気候変動(TCFD)
気候変動が社会に与える影響は大きく、エプソンとしても取り組むべき重要な社会課題だと捉えています。パリ協定の目指す脱炭素社会(世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする)の実現に向け、エプソンは2030年に「1.5℃シナリオに沿った総排出量削減」の目標達成を目指しています。また、「Epson 25 Renewed」の公表に合わせ「環境ビジョン2050」を改定し、その目標として掲げる2050年の「カーボンマイナス」「地下資源(※14)消費ゼロ」に向け、脱炭素と資源循環に取り組むとともに、環境負荷低減を実現する商品・サービスの提供、環境技術の開発を推進しています。
エプソンは2019年10月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明して以降、株主・投資家をはじめとする幅広いステークホルダーとの良好なコミュニケーションがとれるように、TCFDのフレームワークに基づき、情報開示(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を進めています。2021年には財務影響度をエプソンとして初めて定量的に開示することにしました。さらに、2022年はTCFD提言の改訂を受けて、GHG排出量の削減を目的とした具体的な取り組み実績などの開示強化を行いました。2023年以降は気候関連のリスク・機会に対する取り組みのハイライトや具体的成果に関する定性・定量情報の充実化を行っています。
※14 原油、金属などの枯渇性資源
■ シナリオ分析の結果
TCFDのフレームワークに基づいて、シナリオ分析を実施し、気候関連リスク・機会がエプソンの戦略に与える財務影響度を定量的に評価しました。その結果、脱炭素社会へ急速に進んだ1.5℃シナリオの場合、市場の変化・政策・法規制による操業コスト増加の移行リスクはあるものの、インクジェット技術・紙再生技術に基づく商品・サービスの強化により財務影響へのインパクトは限定的と予想しています。
エプソンは、2021-30年までの10年間で約1,000億円(2021-25年は約250億円、2026-30年は約750億円)を投入し、脱炭素・資源循環・環境技術開発への取り組みを加速します。また、気候関連リスクへの解決は、私たちが設定したマテリアリティである「循環型経済の牽引」「産業構造の革新」に合致し、エプソンの強みである低環境負荷(消費電力・廃棄物など)の商品・サービスで、事業拡大の機会につながります。この機会の拡大は、お客様のもとでの環境負荷低減や気候変動の抑制に貢献するものです。
こうした評価結果から、エプソンは社会にとっても自社にとっても合理的であるパリ協定の目指す脱炭素社会の実現に向け、認識したリスクに対処しながら、機会を最大化するための取り組みを継続的に進めています。
なお、世界が現状を上回る対策をとらずに温暖化が進んだ4℃シナリオの場合でも、異常気象にともなう災害の激甚化による国内外の拠点に対する物理リスクの影響は、小さいことが確認されています。
①ガバナンス
気候変動に係る重要事項は、社長の諮問機関としてグループ全体のサステナビリティ活動の中長期戦略を策定・実践状況のレビューを行う「サステナビリティ戦略会議」で議論のうえ、定期的に(年に1回以上)取締役会に報告することで、取締役会の監督が適切に図られる体制をとっています。
また、気候関連問題に対する最高責任と権限を有する代表取締役社長は、サステナビリティ推進室長(執行役員 CFO)を気候関連問題の責任者に任命し、サステナビリティ推進室長は、TCFDを含む気候変動に関する取り組みを管理・推進しています。
なお、推進体制については「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」の推進体制図と同様です。
②戦略
エプソンは、「循環型経済の牽引」「産業構造の革新」をマテリアリティとして設定しています。これを達成するために、エプソンの技術の源泉である「省・小・精の技術」を基盤に、イノベーションを起こし、さらなる温室効果ガス(GHG)排出量削減に取り組んでいます。さらに、気候変動に対するレジリエンスの強化を図るため、「環境ビジョン2050」の実現に向け、環境戦略定例会および下部組織の部会にて活動を推進し、2023年度は以下の取り組みを中心に活動の実践状況のレビューや各種経営会議への審議・報告を行いました。
レジリエンス強化 |
2023年度取り組み実績 |
|
環境戦略定例会の |
脱炭素 |
・スコープ1排出量ゼロに向けた中期削減ロードマップ確定(電化・燃料転換の設備更新) ・再生可能エネルギーの持続的・安定的な調達の実行と自社発電計画の策定 ・サプライヤーエンゲージメント(サプライヤーの削減計画・再エネ切り替え調査等) |
資源循環 |
・地下資源消費ゼロに向けた資源循環指標・目標の運用開始 ・小型軽量化・再生材活用、サステナブル資源化の各事業/全社中期計画策定 |
|
お客様のもとでの 環境負荷軽減 |
・社会の環境負荷低減に寄与する製品ジャンルについて、客観性・公平性のある削減貢献量の算定開始 |
|
環境技術開発 |
・ドライファイバーテクノロジー応用テーマの具体化(梱包材、セルロース複合バイオプラ開発) ・金属粉末(造形材)の高付加価値化技術の実用化に向けた要素技術開発 |
■ 気候関連のリスク・機会に関するシナリオ分析
エプソンは、気候関連のリスク・機会の重要性評価に向け、「移行リスク」「物理リスク」「機会」の区分でシナリオ特定と評価を実施し、7つの評価項目を選定しました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)と国際エネルギー機関(IEA)が提示する気温上昇1.5℃に相当するシナリオと社内外の情報に基づき、事業インパクトと財務影響度を評価しました。
■ 1.5℃シナリオにおける気候関連リスク・機会
シナリオ分析に基づいた気候関連リスク・機会の評価結果は以下のとおりです。
区分 |
評価項目 |
顕在 時期 |
事業インパクト |
財務影響度 |
|
移行リスク |
市場の変化・政策・法規制 |
ペーパー需要 |
短期 |
インパクト ・気候変動とペーパー需要の変化に関する強い関連性は見出せないが、印刷・情報用紙の需要は減少傾向にあると想定する。COVID-19によるトレンド変化(分散化によるオフィス印刷の縮小など)によりペーパーレス化がさらに進んだ場合においても、インクジェット技術・紙再生技術に基づく商品・サービスの強化(印刷コスト低減、環境負荷低減、印刷の快適性向上、紙情報の有用性訴求)により財務影響へのインパクトは限定的と予想される |
小 |
(環境ビジョン2050の取り組み) ・脱炭素 ・資源循環 ・環境技術開発 |
短期 |
インパクト ・世界的に共通した社会課題である「気候変動」と「資源枯渇」に対し、商品・サービスやサプライチェーンの「脱炭素」と「資源循環」における先進的な取り組みが求められる ・飛躍的な環境負荷低減につながる環境技術開発により、科学的かつ具体的なソリューションが求められる
リスクへの対応 ・脱炭素 ●再生可能エネルギー活用 ●設備の省エネ ●温室効果ガス除去 ●サプライヤーエンゲージメント ●脱炭素ロジスティクス ・資源循環 ●資源の有効活用 ●生産ロス極小化 ●商品の長期使用 ・環境技術開発 ●ドライファイバーテクノロジー応用 ●天然由来素材(脱プラ) ●原料リサイクル(金属、紙) ●CO2吸収技術 |
2030年 までに合計 約1,000億円を投入 |
||
物理リスク |
急性 |
洪水による |
長期 (21世紀末) |
インパクト ・36拠点(国内17、海外19)を対象にリスクを評価した結果、洪水(河川氾濫)、高潮、渇水によるエプソンに将来的な操業リスクの変化は限定的 ・サプライチェーンに関する短期気候変動リスクについては、BCP(事業継続計画)で対応 |
小 |
慢性 |
海面上昇による |
||||
渇水による |
|||||
機会 |
商品・サービス |
(環境ビジョ 2050の取り組み) ・お客様のもとでの環境負荷低減 |
短期 |
想定シナリオ ・炭素税導入、電気料金高騰、廃棄物処分コストの上昇、適量生産・資源削減などにより、環境に配慮した商品・サービスへのニーズが高まる
事業機会 ・「Epson 25 Renewed」における成長領域として、①環境負荷低減・生産性向上・印刷コスト低減を実現するインクジェット技術によるオフィスプリンティング、商業・産業プリンティング、プリントヘッド外販、②環境負荷低減を実現する新生産装置の拡充による生産システムの提供、により売上収益成長CAGR(年平均成長率)15%を見込む |
大
2025年度 までに 成長領域CAGR15% 見込 |
環境ビジネス |
短期 |
想定シナリオ ・地球温暖化対策分野や廃棄物処理・資源有効活用分野の市場成長が見込まれる ・サーキュラーエコノミー(循環型経済)へのシフトにより、再生プラスチック、高機能バイオ素材、バイオプラスチック、金属リサイクルの市場成長が見込まれる
事業機会 ・地球温暖化対策やサーキュラーエコノミーへのシフトに対する有効なソリューションとして、紙再生を含むドライファイバーテクノロジー応用、天然由来素材(脱プラ)開発、原料リサイクル(金属再生、紙循環)などの技術確立を通じ、価値変換(高機能化)、脱プラ化(梱包材、成形材)、高付加価値新規素材の創出などにより売上収益を獲得 |
中 |
顕在時期 短期:10年未満 中期:10年~50年 長期:50年超
財務影響度 小:10億円未満 中:10億円~100億円 大:100億円超
エプソンは、脱炭素、資源循環、環境技術開発、お客様のもとでの環境負荷低減に向けた取り組みを進めています。2023年度の取り組み実績は以下のとおりです。
区分 |
評価項目 |
2023年度取り組み実績 |
2023年度 定量実績 |
|
移行リスク |
市場の変化・政策・法規制 |
ペーパー需要 |
・オフィス・ホームプリンティングのインクは、インクカートリッジの減少を、本体市場稼働台数の増加に伴う大容量インクボトルとオフィス共有インクの増加が補い、安定的に推移しており、エプソンがターゲットとしているマーケットでのペーパー需要変動による財務影響は限定的 |
小 (※15) |
脱炭素 |
・エプソングループ全世界の拠点(※16)での100%再生可能エネルギー化完了 ・再生可能エネルギーの長期安定調達化に向けたロードマップ策定と自社初のバイオマス発電所建設を計画化(2026年稼働予定) |
47.9億円 (内訳) ・投 資:15.4億円 ・費 用:17.3億円 ・人件費:15.2億円
環境ビジョン2050 累積投入費用・投資 合計 126.4億円 |
||
資源循環 |
・再生プラスチック使用製品の拡大、リファービッシュ/リユースによる商品の長期使用の拡大 ・不要な金属を、金属粉末製品の原料として資源化する新工場の建設を開始(2025年6月稼働予定)(エプソンアトミックス) |
|||
環境技術開発 |
・ドライファイバーテクノロジーを応用した繊維再生の新技術開発へ向けた外部連携、セルロース複合バイオプラの開発体制強化と開発推進 ・分離膜を用いたCO2分離・回収、藻類を活用したCO2吸収技術開発推進 |
|||
物理リスク |
急性 |
洪水による 事業拠点の被災 |
・36拠点(国内17、海外19)を対象にIPCC第6次評価報告書に基づきリスクを評価(※17) -洪水(河川氾濫)、高潮、渇水によるエプソンへの将来的な 操業リスクの変化は限定的であることを確認。豊科事業所 (※18)における低階層の設備浸水リスクに対しBCP施策 (設備更新時の移設)で対応 |
─ |
慢性 |
海面上昇による 事業拠点の被災 |
|||
渇水による 操業への影響 |
||||
機会 |
商品・サービス |
お客様のもとでの 環境負荷軽減 |
・「Epson 25 Renewed」における成長領域(オフィスプリンティング、商業・産業プリンティング、プリントヘッド外販、生産システム)への取り組みを推進 |
2020年度→23年度 売上収益 CAGR +14.7% |
環境ビジネス |
・ドライファイバーテクノロジーを核技術としたビジネス展開に向け、繊維リサイクルビジネスモデルの検証開始 |
─ |
※15 財務影響度 小:10億円未満
※16 一部販売拠点などの賃借物件は除く
※17 IPCCの気候変動シナリオRCP2.6(2℃)、RCP8.5(4℃)にて評価
※18 国内拠点で長期的洪水リスク(21世紀末)を有する主要拠点
③リスク管理
企業を取り巻く環境が複雑かつ不確実性を増すなか、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクに的確に対処することが、経営戦略や事業目的を遂行していくうえでは不可欠です。エプソンは、気候関連問題を経営上の重大な影響を及ぼすリスクとして位置付け、適切に管理しています。
■ 気候関連リスクの識別・評価・管理プロセス
1 調査 |
2 識別・評価 |
3 管理 |
・IPCC第6次評価報告書の変化点を加味して、国内外の主要拠点を対象に、気候変動に起因した自然災害リスクに関する調査を実施 ・社会動向を調査 |
・「Epson 25 Renewed」「環境ビジョン2050」の方針や施策からリスク・機会を洗い出し ・サステナビリティ戦略会議と取締役会を通じて、シナリオ分析を評価 |
・サステナビリティ戦略会議と取締役会を通じて、適切に管理 |
④指標及び目標
エプソンは、「環境ビジョン2050」の実現に向け、中長期的な温室効果ガス(GHG)の排出削減目標の達成を目指します。そのため、エプソンの技術の源泉である「省・小・精の技術」を基盤に、商品の環境性能向上や再生可能エネルギーの活用、事業活動などバリューチェーンを通じた環境負荷低減に積極的に取り組んでいます。
■ GHG削減目標(「1.5℃シナリオ」に沿った野心的な排出総量削減目標の目安)
スコープ1、2、3(※19) |
2030年度までに2017年度比でGHG排出量を55%削減 |
※19 スコープ1:燃料などの使用による直接排出
スコープ2:購入電力などのエネルギー起源の間接排出
スコープ3:自社バリューチェーン全体からの間接的な排出
■ GHG排出量実績(スコープ1、2)
|
2017年度(基準年) |
2019年度 |
2020年度 |
2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
2025年度(SBT) |
スコープ1 (千t-CO2e) |
137 |
122 |
125 |
118 |
142 |
101 |
- |
スコープ2 (千t-CO2e) |
455 |
363 |
345 |
230 |
93 |
15 |
|
スコープ1,2合計 (千t-CO2e) |
592 |
486 |
470 |
348 |
235 |
117 |
391 |
事業利益原単位 (千t-CO2e/億円) |
0.79 |
1.19 |
0.76 |
0.38 |
0.24 |
0.18 |
- |
(注) 端数処理の関係で合計が合わない項目があります。
(3)人的資本・多様性
■ 人的資本に関する考え方・取り組み
エプソンは、中長期的な企業価値の向上および持続的な成長に向けて、パーパスに基づき事業を通じた社会課題解決への貢献に取り組んでいます。そのためには、長期ビジョン「Epson 25 Renewed」において定めた事業領域別の位置付けや戦略・方針に沿い、「環境」「DX」「共創」の取り組みによって事業を拡大・創出していくことが必要です。これらの活動を支えるのが、人材戦略による経営基盤強化の取り組みです。社会が変革を遂げるなかで求められるサービスは何か、どうすれば社会課題解決につながるソリューションを提供できるのか、それらを自律的に考え、生み出す力を持った人づくりや、力を発揮できる環境づくりのため、エプソンは「強化領域への人材重点配置」「人材育成強化」「組織活性化」を人材戦略の柱として推し進めています。
■ 人材戦略の基本的な考え方
エプソンは、信州に生まれ、育った企業です。現在も信州に事業運営の核となる機能・基盤を置きつつ、売上収益の8割以上、従業員数の7割以上を占める海外各国・地域に107か所の研究開発、生産、営業拠点を整備し、グローバルにビジネスを展開しています。そのため、エプソンにおいては、地域の雇用の確保と、それにともなう比較的長期の雇用を強みに変えつつ、一方で積極的に外部人材を獲得し、多様性を実現すること、グローバルに厳しい競争を勝ち抜き、経営目標・事業成長を達成するための人的基盤を構築することが人材戦略の要諦となります。具体的には、以下がポイントとなります。
◆ さまざまなお客様のニーズを的確に把握し、素早く、柔軟に対応できるよう事業の変革・革新を進める。そのために成長領域・新領域や高度専門領域のスペシャリスト、経営目線を持って活躍できるマネジメント人材を積極的に外部から獲得するとともに、内部人材へ専門教育・転換教育を行って、強化領域への重点配置を進め、グローバルな視点で最適なフォーメーションを構築する。
◆ エプソンは、長期の時間軸で「人が自律的にキャリアを形成し、成長し続ける会社」として、各種研修やリスキリング、ローテーション、社内公募制度等の挑戦の機会を提供し、従業員一人ひとりが内外の環境変化への対応力を高める。また、グローバルな視点での最適なフォーメーション構築のため、海外人材を含めグローバルに活躍できる人材を育成・配置する。
◆ 女性や外国人、中途採用者、障がい者、高年齢者など多様な人材を確保し、生かすことにより、創造性を高めイノベーションを実現するとともに、組織風土への取り組みや、信州の恵まれた自然環境、職住接近など、地方企業としての利点を生かした働きやすい環境づくりを通じて、従業員のエンゲージメントを高め、組織の総合力を最大化して、価値を創出し続ける。
①ガバナンス
人材戦略に係る重要事項は、社長がその責任者として人的資本・健康経営本部長(CHRO)を任命し、CHROが全社的な企画立案、管理、推進の責任を担っています。
CHROは、中期経営戦略に基づき、中期人事戦略を立案し、中期戦略審議などにおける議論・審議を経て、中期経営計画の一部として取締役会に報告しています。CHROは、各事業部・本部と連携し各事業の要員ニーズやさまざまな意見を踏まえつつ、全社観点で要員配分・要員配置を最適化し、人材戦略を推進しています。
中期人事戦略において設定した、「強化領域への人材重点配置」「人材育成強化」「組織活性化」に関する主要な事項の実施にあたっては、都度経営会議や人材開発戦略会議において審議・報告を行っています。その中でも経営上重要な、経営幹部層の後継計画・育成、ダイバーシティに関する事項、ハラスメント等については年1回以上定例的に取締役会に付議または報告することで、取締役会の監督が適切に図られる体制をとっています。
また、エプソンにとって特に重要な課題として認識しているダイバーシティの推進に関しては、管理職女性比率や女性執行役員数を役員報酬と連動させ、責任と役割を一層明確にした仕組みを構築しています。
なお、役員の選任および報酬に関しては、社外取締役を委員長とし、委員の過半数を社外取締役で構成する取締役選考審議会・取締役報酬審議会において、後継者計画の策定および役員の指名プロセスの検討、ロードマップの確認、候補者の選出、育成計画の策定・実施、候補者の評価・絞り込み・入れ替え、役員報酬制度、基本報酬・賞与の個別支給額などを確認しています。
■ 推進体制
②戦略
■ 求める人材像
経営戦略の実現・事業遂行のため、エプソンは、パーパス、エプソンウェイの浸透と、長期ビジョンに定めた事業の方向性の共有をベースとしながら、広い視野と高い専門性を持って変化に素早く対応し、お客様の立場に立って自立的・自律的にお客様価値を作り上げることのできる人材を必要としています。
今後さらに国内での少子高齢化や労働人口減少が進むことも見据え、グローバルベースでの人材ポートフォリオ策定に取り組んでいます。当期は、特定の事業部門を対象に、事業戦略の策定・遂行および新たなビジネスモデルの確立に必要となる人材要件を、スキルと行動特性を軸に定義して、現状の人材ポートフォリオを可視化する試みを行いました。次のステップとして、当期の取り組みを全社に展開するとともに、次期の長期ビジョン検討に合わせてあるべき姿を描き、量的・質的両面で現状とのギャップの把握を進めます。これにより、採用、リスキリング、最適配置等の適切な施策に展開し、全社最適人員構造を構築し、中長期戦略の実現につなげていきます。
■ 人材戦略と機会、リスク
エプソンは、求める人材像で描く人づくりと、人材が存分に活躍できる組織風土づくりを中心に据えた人材戦略を掲げています。リスク・機会を下記のとおり評価したうえで、「強化領域への人材重点配置」「人材育成強化」「組織活性化」の3つの人材戦略に取り組んでいます。
人材戦略 |
機会(〇) |
リスク(●) |
強化領域への 人材の重点配置 |
〇強化領域(成長領域や新領域等)への人材の重点投入、最適配置による事業成長の加速 〇意欲に応え、やりがいや成長機会を提供することによる社員のモチベーション、エンゲージメントの向上、生産性向上 |
●必要な人員の質・量を確保できないことによる、事業遂行上の障害の発生 ●その結果として、成長機会の逸失と財務的損失 |
人材育成強化 |
〇やりがいや成長機会の提供に対し、社員が成長を実感することによるモチベーション、エンゲージメントの向上、生産性向上 |
●必要な人員の質・量を確保できないことによる、事業遂行上の障害の発生 ●その結果として、成長機会の逸失と財務的損失 ●学びの意欲や成長への期待に応えられないことによる社員のモチベーションの低下、離職の増加 ●必要な能力・スキルを獲得し、変化に対応できる人材を育成できないことによる事業遂行への障害、財務的損失 |
組織活性化 |
〇多様な人材の多様な発想・創造力によるイノベーションが起きやすい環境の醸成 〇優秀な人材の確保、定着化による採用コストの削減、競争力の向上 〇多様な人材が働きやすい環境を整備することによるモチベーション、エンゲージメントの向上、生産性向上 |
●社員のモラルやモチベーションの低下による業務効率の悪化、コンプライアンス違反の発生、倫理観の欠如等による信頼の失墜 ●ハラスメントの発生、心身の健康への悪影響等によるモチベーションやチームで働く力の低下、その他働く場におけるさまざまな人権侵害のリスク ●労働事故発生等による追加コスト |
■ 人材育成方針
人材戦略① 強化領域への重点配置
エプソンでは、事業運営の基盤として、将来の要員構造の推移の予測と、事業戦略を実現するための要員ニーズに基づいて要員計画を策定しています。中期的には、新卒・中途を合わせて、毎年350人以上の採用を計画的・安定的に行う方針です。
成長領域であるプリンティング(オフィス、商業・産業)や生産システム(ロボット)、新領域である環境ビジネス・環境技術、センシング分野へは、採用した人員の重点配置に加え、内部人材へ専門教育・転換教育等を行って強化領域に投入するとともに、人材要件を明確にしたうえで外部からマネジメント人材やDXを含むスペシャリストを獲得し、強化領域へ配置しています。
人材戦略② 人材育成強化
<人材育成>
エプソンでは年1回、各組織において要員状況を俯瞰し、また管理職等の重要ポジションの役割や要件を定義し、それに基づき後継計画を策定しています。また将来の経営層・管理職層、グローバル人材の候補者をリストアップし、育成計画を策定しています。
人材育成は、業務を通じた育成(OJT)を基礎に、教育体系を整備して階層別の教育や各種の専門教育をOFF-JTとして行っているほか、個々の変化対応力を強化し、またバリューチェーンの効果的・効率的な運営に資するため、本人の能力や経験・知識の幅を広げるローテーションに積極的に取り組んでいます。
リーダー人材の育成には、選抜型の階層別教育プログラムを整備しています。
さらに今後は、人材ポートフォリオを活用して、新たな職場・職種で働くために必要なスキルや行動特性などの要件を明らかにし、それに基づき早期に活躍するために必要な専門教育・転換教育を受けられるリスキリングの仕組みを整備し、強化領域への重点配置を進めていきます。
<グローバル人材の育成>
お客様に価値ある製品をお届けするためには、グローバルに展開しているバリューチェーン全体が効果的・効率的に運営されることが欠かせません。そのためには、世界中に分散している様々な機能について幅広い知識と経験を持ち、全体最適の観点から各機能間の調整を行い、現場で的確・迅速な意思決定ができるグローバル人材が必要です。世界各地で、共通の価値観を持って活躍するリーダー人材を育成するため、海外現地法人の経営リーダー層の養成を目的としたセミナーを毎年開催しているほか、地域を超えた人材交流を進めています。また、海外人材についても国内と同様に、現地のトップマネジメント・人事部門と連携して役割や要件定義を行い、重要ポジション・重要人材についての後継計画・育成計画を策定しています。このような活動を基盤として、最適機能配置に関する社内議論を継続して行い、グローバル視点での最適なフォーメーションの構築に取り組んでいます。
■ 社内環境整備方針
人材戦略③ 組織活性化
エプソンは、従業員一人ひとりの内外環境変化への対応力強化、多様性確保、従業員が働きやすい環境と組織風土づくり、健康経営、労働安全衛生等の取り組みを通じて、従業員のエンゲージメントを高め、組織の総合力を最大化することを目指しています。2022年度から行っている外部ツールを利用した「エンゲージメントサーベイ」の全社総合レーティングは、2022年度Bランクでしたが、2023年度はBBランクへと1ランク改善しました。今後も、これらの取り組みを継続し、組織力を高めていきます。
<DE&I>
エプソンは、変化の激しい時代のなかで、多様なお客様を理解し、その人々に驚きや感動を与える新たな価値を創出していきます。そのために、多様な人材が世界中のエプソンに集まり、公平な環境で、一切の偏見なく、すべての社員が互いの個性を当たり前に尊重し合い、全社員が楽しく働きながら、社会の一員として責任を持ち、会社とともに成長し、そして挑戦することによって、イノベーションを起こし続けることを目指しています。
エプソンは、まず日本国内におけるジェンダー平等を喫緊の課題と認識し、管理職層や経営層の女性比率が全社員の女性比率と同じになる状態を早期に実現することを目指し、将来の女性管理職候補層を増やすためのキャリアアップ応援強化施策等に取り組んでいます。また、インクルーシブな障がい者活躍、すなわち「障がいの有無に関わらず、個々の役割に応じたステップで挑戦し成長し続けることで、成果創出に貢献している状態」を目指します。そのために、グループ全体で障がい者採用に積極的に取り組むとともに、特例子会社の新規事業開拓等を進め、障がい者との接点づくりや各種情報発信を通じて障がい者活躍の風土を醸成します。
これらの活動の基盤として、社員の意識変革を促すため、経営トップからのメッセージ発信や、管理職向けダイバーシティマネジメント研修、社内向けDE&Iフェアを開催しています。また、属性に制限されない活躍を支援するため、公平で働きやすい職場づくり、相談窓口によるサポート、男性の育休取得推進等にも取り組んでいます。さらに、多様な人材それぞれのキャリア形成をサポートし、活躍を促進するため、各種キャリア支援プログラムや、自発的な学びなおしの機会を提供する教育体系の整備を進めています。
<組織風土>
エプソンは、組織風土の現状を把握するため、2005年より組織風土に関する調査を毎年行い、従業員一人ひとりが従来以上にやりがいと自発性を持ち、また多様な人材が自律的にいきいきと働ける環境を目指しています。上述の「エンゲージメントサーベイ」の結果に基づき、組織風土の課題として、理念の浸透と自分事化、変革意識と外向き視点の向上、仕事を通じた成長と貢献感獲得の3つを設定しました。その改善のためには、特に職場のマネジメント力強化が重要と考えており、1 on 1研修の開始、管理職前後層教育研修体系の見直し、管理職向け相談窓口設置、個別の職場支援などを行っています。これらの取り組みにより、「自ら考え自ら行動する人材」の育成と、「職場での強固な信頼関係の構築」による組織力強化を通じた生産性向上を目指しています。
<働きやすい環境づくり>
エプソンでは、社員がやりがいを持ち、さまざまなライフステージ等の変化に適応しながら、いきいきと、心身ともに健康で安全に働ける環境を目指しています。特に、フレックスタイム制度や在宅勤務等、働く時間や場所を選ばない柔軟な働きかたを進め、育児・介護・療養・不妊治療と仕事の両立ができる環境づくりを行っています。また職場におけるハラスメント防止や労働時間の適正化等の施策を推進しています。
信州に主要な拠点が集中するエプソンにおいては、マネジメント人材やスペシャリストをはじめとする多様な人材の採用・定着をベースとしてダイバーシティを進めるためにも、労働時間と勤務場所の柔軟化をさらに推進し、多様な人材がそれぞれのキャリア形成を実現できる環境づくりが重要であると考えています。
<健康経営>
会社にとってグループすべての働く人の健康が最重要と考え、パーパス、エプソンウェイ、エプソングループ労働安全衛生基本方針およびエプソングループ健康経営宣言に基づき、働く人の健康状態の向上とともに、仕事にやりがいを感じ、いきいきと働いている状態の実現を目指しています。2022年4月には、中期健康管理計画「健康Action 2025」を制定し、自律性の醸成・働くことと健康の調和を目指す「こころとからだの健康」と、安全配慮の徹底とチームでいきいきと働く組織風土の醸成を目指す「職場の健康」の2つを重点分野として取り組んでいます。
これまでの活動が評価され、2024年3月に「健康経営銘柄」に3年連続で選定されています。
<労働安全衛生>
エプソンは、2000年度に、国際労働機関(ILO)の指針に準拠した労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)をベースとした方針・プログラムを策定し、「安全」「健康」「防火・防災」「施設」を4本柱とした取り組みを行ってきています。これをさらに国際規格であるISO45001に基づく活動に進化させ、グループすべての働く人が安心・安全・健康でいきいきと働けるよう、職場の安全衛生環境のさらなる向上を目指した取り組みを行っています。
③リスク管理
企業を取り巻く環境が複雑かつ不確実性を増すなか、企業活動に重大な影響を及ぼすリスクに的確に対処することが、経営戦略や事業目的を遂行していくうえでは不可欠です。エプソンは、人的資本・多様性に関わる課題を経営上の重大な影響を及ぼすリスクとして位置付け、適切に管理しています。
■ 人的資本・多様性関連リスクの識別・評価・管理プロセス
1 調査 |
2 識別・評価 |
3 管理 |
・人的資本・健康経営本部を中心に、国内外の主要拠点を対象に、人的資本・多様性に起因したリスク・機会を調査 |
・「Epson 25 Renewed」の方針や戦略からリスク・機会を洗い出し ・人材ポートフォリオの策定において、現状とあるべき姿のギャップを把握 |
・経営会議と取締役会を通じて、適切に管理 |
④指標及び目標
エプソンは、人材戦略の3つの柱「強化領域への人材重点配置」「人材育成強化」「組織活性化」にそれぞれKPIを設定し、主要な施策について目標を明確にするとともに、その目標に対する進捗状況を管理しています。
戦略 |
指標 |
実績 |
目標 |
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2021年度 |
2022年度 |
2023年度 |
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人材戦略① 強化領域への 重点配置 |
採用人数 |
新卒 200人 中途 48人 |
新卒 250人 中途 241人 |
新卒 344人 中途 204人 |
毎年度(※20) 350人以上を継続 |
人材戦略② 人材育成 |
ローテーション率 |
9.0% |
10.0% |
10.1% |
毎年度 15%以上 |
人材戦略③ DE&I |
管理職女性比率 |
3.7% |
4.1% |
4.7% |
2025年度 8% |
係長級女性比率 |
6.9% |
7.1% |
7.7% |
同 10% |
|
女性執行役員数 (取り組み状況を ( )で記載) |
(社内選抜研修女性受講者数12名) |
(社外経営戦略研修への女性社員派遣2名) |
(京都大学リーダー研修に2名、マッキンゼープログラムに1名派遣) |
2025年度までに 1名以上 |
|
障がい者雇用率 (※21) |
2.69% |
2.70% |
2.65% |
2030年度 3.0% |
|
労働者の男女の 賃金の差異 (※22) |
全労働者 74.9% 正規 75.7% 非正規 |
全労働者 76.5% 正規 76.7% 非正規 |
全労働者 76.5% 正規 76.8% 非正規 |
女性管理職を増やす等の取り組みにより差異を縮小させていく (賃金制度上、同一資格等級での男女の賃金差異はないが、上位職位・資格等級に占める女性の割合が少ないことが差異の主な理由であるため) |
|
(参考) 管理職層 97.8% |
(参考) 管理職層 97.1% |
(参考) 管理職層 97.9% |
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従業員エン ゲージメント |
従業員エンゲージメント総合レーティング |
- |
レーティング B (スコア51.8) |
レーティング BB (スコア52.9) |
2025年度までに ①全職場レーティングA(58以上) ②レーティングD職場ゼロ |
働きやすい |
男性育休取得率 |
50.8% |
97.2% |
85.2% |
毎年度 100% |
ハラスメント防止 e-ラーニング受講率 |
92.4% |
96.8% |
97.6% |
受講率毎年度 100% |
|
ハラスメント重要事案の本社報告徹底 |
報告漏れ |
報告漏れ |
報告漏れ |
各組織・関係会社窓口との連携継続強化 |
|
年間総実労働時間 |
1,854時間 |
1,845時間 |
1,866時間 |
2024年度 1,845時間 |
|
健康経営 |
こころの健康診断 「総合健康リスク」 ハイリスク職場数 |
2.7% (3人以上の職場でカウント) |
1.0% (10人以上の職場でカウント) |
1.7% (10人以上の職場でカウント) |
2025年度 ゼロ |
労働安全衛生 |
重大労働災害・ |
1件 |
0件 |
0件 |
毎年度 ゼロ |
※20 各年度4月1日入社の新卒社員数と各年度の中途入社者数の合計
※21 各年度6月1日時点
※22 労働者の男女の賃金の差異は、男性の賃金に対する女性の賃金の割合
※23 海外を含むグループ会社全体。他の指標はセイコーエプソン株式会社単体
(4)知的財産
エプソンは、知的財産に関し「知的財産権だけでなく、ブランドやデータなどを含む広い意味での『知的財産』を価値に変換し、企業価値の持続的成長の実現を支援する」ことが重要であると考えています。
その考えのもと、長期ビジョンが目指す「持続可能でこころ豊かな社会」の実現のため、知的財産本部が経営・事業部・開発部門・戦略部門と密接に連携し、あらゆる知的財産を主体的 (Proactive) に活用することで価値に変換し、その弛まぬ活動の展開によって、企業価値を向上させ、持続的成長を支援しています。
例えば、エプソンの競争優位の源泉の一つに創業以来培ってきた超微細精密加工技術があります。独創のマイクロピエゾプリントヘッドは、この超微細精密加工技術によって磨き上げられただけでなく、当社の強力な知的財産保護のもとで進化してきました。エプソンプリンターへの搭載によるラインアップの拡充や積極的な大型設備投資による量産化が実現し、プリンティング事業のさらなる成長に貢献しています。加えて、プリントヘッドの外販ビジネスを展開することで、商業・産業のさまざまな分野に当社プリントヘッドのユーザー層が広がり、デジタル印刷市場の拡大につながっています。これらの事業成長も当社の強固な知的財産を基盤として進んでいます。
また、スタートアップへの出資やオープイノベーションによる第三者との共創による、ポテンシャルの高い新規市場の開拓も、知的財産面からの支援により加速しています。このように、強固な知的財産基盤があるからこそビジネスの好循環が実現され、研究開発へのさらなる投資が可能となり、プリントヘッドをはじめとするエプソンの製品や技術は格段の進化を遂げて、その競争優位性を持続的に高めることができるのです。
すなわち、このような成長戦略ストーリーを支えるもの、それが、私たちが創出する知的財産なのです。
もちろん、私たちの取り組みはプリンティング分野にとどまりません。「環境ビジョン2050」で主要な取り組みに位置付けた資源循環や環境技術開発に貢献する「ドライファイバーテクノロジー」へのアプローチもその一つです。(詳細は「②戦略」に記載しています。)
■ 知的財産による成長戦略ストーリー(例:プリンティング分野/超微細精密加工技術)
①ガバナンス
エプソンでは、独自のコア技術を守るための開発戦略や事業戦略と連動した知財財産戦略を策定するために、事業ごとの「事業部長/開発本部長、知的財産本部長による2者懇談会」を開催し、必要に応じて「社長、事業/開発本部長、知的財産本部長による3者懇談会」も開催しています。
また、知的財産戦略については定期的に取締役会で報告・議論し、戦略に反映しています。直近の取締役会では、イノベーションを促進する取り組みや、知的財産活動のKPIについて有意義な議論がなされ、「Epson 25 Renewed」の実現に向けた今後の活動の方向性について確認されています。
■ 知的財産戦略の推進体制
②戦略
エプソンは、知的財産を基盤として新たなビジネスの好循環を引き起こし、知的財産を企業価値に変換し、持続的成長を目指しています。これを実現するため、具体的には下記事例のような知的財産に基づく支援活動を行っています。
<事例:当社独自のドライファイバーテクノロジー>
エプソンは「環境ビジョン2050」として、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源消費ゼロ」を掲げています。この高い目標を達成するべく取り組んでいる「環境技術開発」において、将来性のある技術として期待しているのが「ドライファイバーテクノロジー」です。
ドライファイバーテクノロジーは水を使わず(※24)繊維素材を価値あるカタチに変え、用途に合わせた繊維化や、結合、成形を行い素材の高機能化を実現するエプソン独自の技術です。ドライファイバーテクノロジーを適用し、大量の水を使わず、使用済みの紙から再生紙を作ることを実現したのが乾式オフィス製紙機「PaperLab」です。施設に輸送して大量の水で使用済みの紙を溶かす紙再生方法に比べ、PaperLabは紙の製造に使用される水の消費量を大幅に削減できることに加え、オフィス内で紙を再生できるため、使用済みの紙の輸送におけるCO2排出量の削減にも貢献できます。
※24 適度な湿度は必要
◆ ドライファイバーテクノロジーの可能性
ドライファイバーテクノロジーはPaperLabだけでなく、さまざまな応用が考えられます。例えば、使用済みの紙を使ってプリンターのインク吸収剤を生産しています。また、ドライファイバーテクノロジーによって使用済みの紙から製造される素材に吸音効果がある特性を活かし、機器の内壁に使用される吸音材として使用されています。他にも素材の硬さや厚さを調節することにより衝撃を吸収する効果もあるため、緩衝材としての活用も進めています。さらに、紙以外の素材では、コットン衣類の縫製過程で発生する端材を原料として新たな包装材を開発し、ウオッチ商品の包装材として活用しています。
一方、当社の知見が乏しい分野への応用についてはオープンイノベーションを進めています。
循環型経済の確立に向け、例えば、バイオプラスチックや再生プラスチックの使用範囲の拡大を促進するため、エプソンでは、ドライファイバーテクノロジーによって生成されたセルロース繊維とプラスチック材料を複合化し、バイオプラスチックや再生プラスチックの強度、耐久性などの課題解決を目指すなど、繊維複合型プラスチック材料による造形技術の共同研究を進めています。
また、世界的に高まる再生繊維のニーズに応えるため、ドライファイバーテクノロジーを応用し、再生が困難な繊維の解繊技術を確立し、新たな衣類再生のリサイクルソリューションの提供を目指す共同開発を進めています。
◆ ドライファイバーテクノロジーを支援する知的財産活動
■ 特許ポートフォリオ構築
特許ポートフォリオ構築にあたっては、知的財産本部と開発部門による2者懇談会において、IPランドスケープを活用した量的・質的な競争優位性の評価を確認したうえで、開発活動と連携した知的財産戦略を定めています。
ドライファイバーテクノロジーは知的財産の観点でも競争優位性のある技術です。同分野において、エプソンはドライファイバーテクノロジーによる事業の競争優位性を支援するため、知的財産戦略に基づいて開発黎明期から特許出願を継続的に行っており、量的に他社を圧倒する強力な特許ポートフォリオを構築しています。
また、同分野の特許ファミリーの競争力指標(Competitive Impact)が上位5%となる質の高い特許ファミリーの特許権者毎の保有比率においても当社がNo.1であり、知的財産戦略に基づき、量だけでなく、質の面でもドライファイバーテクノロジーの強い特許ポートフォリオを構築しています。
ドライファイバーテクノロジー分野での年別特許出願件数の ドライファイバーテクノロジー分野の
評価(LexisNexis PatentSightを使用して当社作成) 特許ファミリー競争力指標(Competitive Impact)
上位5%の権利保有率
エプソンの競争優位性のある優れた技術は、(公社)発明協会主催「全国発明表彰」にて多くの賞を受賞しています。令和時代に入っても内閣総理大臣賞、文部科学大臣賞、日本弁理士会会長賞などの特別賞を受賞しています。全国発明表彰などの社外表彰において高い評価を受けることにより、当社技術が競争優位性を有することを対外的に明らかにし、企業価値を向上する取り組みを行っています。
ドライファイバーテクノロジーについても、強力な特許ポートフォリオから中核技術である「2段ふるい」の特許第6127882号が令和元年度全国発明表彰において朝日新聞社賞を受賞しました。この受賞によってドライファイバーテクノロジーが科学技術の振興、産業経済の発展に大きく貢献していることが社外の評価を通じて明らかになりました。
■ IPランドスケープによるイノベーション支援
エプソンでは、スタートアップへの出資やオープンイノベーションによる第三者との共創にともない、IPランドスケープを活用した知的財産面からのイノベーション支援を行っています。例えば、スタートアップへの出資を判断する際には、スタートアップ企業が保有する知的財産の価値評価を行っています。また、オープンイノベーションにおいては、IPランドスケープによってその分野の開発状況と知的財産の取得状況を全体俯瞰図にまとめ、技術の将来性について評価しています。
さらに、開発テーマを事業の成長戦略に結びつけるために、その開発テーマの応用範囲の拡大や基盤技術強化などについて、IPランドスケープを活用した分析に基づき、知的財産面からの提案を含めたイノベーション支援を行っています。
ドライファイバーテクノロジーによるバイオプラスチック生成においては、IPランドスケープを活用した分析に基づいて、当社技術と親和性・将来性があって他社知的財産権の障壁の低い複数の開発プランを開発部門に提案し、当社独自の開発テーマとなるように方向づけました。このように、IPランドスケープの活用により、ドライファイバーテクノロジーによるイノベーション支援を進めています。
■ 第三者との共創スキームにおける契約サポート
エプソンでは、ドライファイバーテクノロジーを核としてさまざまなオープンイノベーションを同時並行で進めています。その際に重要となるのが、共創相手の重要な情報資産である機密情報の管理です。特に同一テーマで共創を同時並行で進める際に機密情報のコンタミネーションのリスクが高まります。そこで、リスク低減のための共創用の機密保持契約(NDA)のひな型を制定するとともに、考え方をガイドラインとして制定し、社内で周知を図っています。当社では共創相手と良好な関係を構築するための契約も重要な知的財産と捉え、法務部門と協力して社員のリーガルマインドの向上を図っています。
■ 技術のブランド化
技術は目に見えるものではなく、技術の専門家でないとその価値を理解することが難しいものです。そこで、「ドライファイバーテクノロジー」という技術の特徴を端的に表した商標権を取得し、お客様に技術名称を認知していただくことで技術のブランド化を進めています。