2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3【事業等のリスク】

(1)リスクマネジメントの考え方

当社グループは、リスクマネジメントを事業の持続的成長と中長期的な企業価値の向上を実現するための「経営・事業運営の基盤=攻めの経営を支える基盤」と位置付け、事業のグローバル化、サプライチェーンの複雑化などにより多様化するリスクに対して、今後起こり得るリスクやそれらによる事業への影響度に応じて被害を回避又は最小化するための取り組みを進めています。

 

(2)当社グループにおける主要リスクについて

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識しているリスクを可視化し、それらの発生可能性、事業への影響度、リスク対策の実施状況等の観点から評価したリスクマップを整備し、その中から優先順位付けした当社グループの主要リスクを示しています。

<リスクマップ(当社グループの主要リスク)>


当社グループにおける主要リスクの内容と対応については次のとおりです。なお、文中においては将来に関する事項が含まれていますが、当該事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

①経営・事業戦略リスク

1)経営構造改革に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループは、注力事業の成長と収益体質への変換を図るため、事業ポートフォリオ改革、コスト構造改革、経営体制・経営管理の強化を含む経営構造改革に取り組みます。この経営構造改革には一定の費用が伴う一方で、経済・事業環境の変化、将来の不確実な要因等により、その遂行が困難になる可能性や当初計画していた効果が得られない可能性がある他、当初の見込みを上回る費用が発生する可能性が考えられます。その結果、当社グループの業績及び財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

経営構造改革の各種施策全てについて主管・担当役員を充て、施策内容と実行時期を明確にしたうえで、取締役会において進捗状況をモニタリングしながら、進めていきます。

 

2)顧客ニーズ及び新技術の導入に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループの事業は、自動車やスマートフォンをはじめとして技術革新のスピードが非常に早く、顧客要求の変化や新製品・サービスの導入が頻繁な市場であり、新たな技術・製品・サービスの開発により短期間に既存の製品・サービスが陳腐化して市場競争力を失い、販売価格が大幅に下落することがあります。また、コンポーネント事業においては、スマートフォン向けカメラ用アクチュエーターの映像の高精細化、高画質化の動きが進み、センサー・コミュニケーション事業やモジュール・システム事業の車載ビジネスにおいては、システム及びソフトウェアの高度化やセキュリティー対策など、急速に技術革新が進んでいます。そのため、それらの市場の変化に迅速な対応ができない場合や、製品の販売が想定した台数に達しない場合、又は顧客ニーズに合わせた新製品の導入ができない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

新技術の導入に当たっては、これらの変化に対応すべく、個々の開発テーマに対し、開発・設備や人的資本に関する投資を計画的かつ適切に投資を行っていくことで、技術力強化と人財育成を図っていきます。

また、営業・マーケティング部門が市場動向・顧客動向を把握し、技術部門等にフィードバックを図ることにより、市場変化に対応した新技術開発を進めています。

 

3)M&A及び業務提携・戦略的投資、並びに事業再構築に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループは、持続的な成長と中長期的な企業価値向上、また、グローバル競争力及び顧客価値の向上、更に、よりスピーディーな事業立ち上げと成果に結びつけるため、新規事業領域への参入、新技術の獲得、現行事業の競争力強化を目的として、M&A及び業務提携・戦略的投資を実施しています。しかし、市場環境の著しい変化や、買収した事業を計画通りに進めることが出来ず、投下資本の回収に計画以上の期間を要する又はその回収ができないことにより、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、成長性が高く、安定的な収益の得られる事業構造の確立のため、事業ポートフォリオ改革における非注力・ノンコア事業/不採算事業の整理、終息の取り組み(カーブアウト)を進めています。しかし、各国の規制、雇用問題、当社グループが売却を検討している事業に対する市場における需要不足等により、これが実行されない可能性があります。これらが実行された場合においても、顧客又は従業員からの評価の低下等、予期せぬ結果をもたらす可能性もあります。

<主な取り組み>

M&A及び業務提携・戦略的投資の実施に当たっては、当社事業計画に照らし合わせ、市場・技術動向や顧客ニーズ、相手先企業のポテンシャル等のリスクを十分に分析した上で、慎重に進めています。

また、事業再構築に当たっては、市場・業界動向、戦略、売却価格、プロセス及び潜在リスクなど様々な視点からの分析した上で、慎重に進めています。

 

4)製品品質に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループの製品の品質に起因して顧客の損失が発生した場合、生産物賠償責任保険の適用を超える賠償責任を問われる可能性があります。その結果として、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループでは、品質保証体制を構築し、品質改善活動を通じ品質の維持・向上に努め、また問題発生の未然防止に取り組んでいます。

 

5)固定資産の評価及び減損損失に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループの当連結会計年度末における有形固定資産及び無形固定資産の帳簿価額は1,607億円です。当社グループは顧客の需要予測による将来の販売計画に基づいて設備投資を行っていますが、固定資産の回収可能性は、個人消費の動向、新製品の導入タイミング、新仕様や規格変更への対応及び技術革新のスピード等に影響を受けます。

また、特に自動車市場においては、エレクトロニクスの重要性が高まり市場拡大が見込まれますが、自動車販売台数に基づく顧客の需要変動や顧客ニーズの変化、技術革新への対応等が遅延した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、投資判断を行う際、その収益性・投資回収予定時期を社内で厳格に精査することで減損損失の計上リスクの軽減に努めています。しかし、急激な経営環境の悪化により収益性が低下し、帳簿価額の全部又は一部を回収できないと判断した場合、減損損失を計上する可能性があります。実際に、2023年度にはモジュール・システム事業を構成するモジュール製品及びセンサー・コミュニケーション事業に含まれる一部車載市場向け製品に係る事業用固定資産372億円の減損損失を特別損失に計上しました。

<主な取り組み>

当社グループは、各市場における製品ライフサイクルを分析し生産設備等の経済的耐用年数を設定しています。また、投資判断を行う際、その収益性・投資回収予定時期を社内で厳格に精査することで、減損損失の計上リスクの軽減に努めています。

 

②地政学・経済安全保障リスク

<リスクの内容>

ロシア・ウクライナ情勢、米中デカップリング及び台湾情勢等の影響により、原油及び天然ガス等の価格高騰、サプライチェーンの混乱、インフレ対策を主眼とした各国中央銀行の利上げ等による為替相場の急変が続くこともあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、特に下記③ 4)顧客の生産計画に係るリスク及び5)特定の部品の供給体制に係るリスクに記載の影響を及ぼす可能性があります。

また、各国における経済安全保障の強化の動きは、自国の技術力強化と対外的な先端技術流出阻止の動きに拍車をかけ、法規制や制裁の強化によりサプライチェーンに大きな影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループ内で適時情報収集する体制を整え、上記リスクにつながる状況が発生した場合には、タスクフォース等を立ち上げ、即時の対応をとれるようにしています。

 

③市場環境リスク

1)経済状況の変動に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループは、コンポーネント事業、センサー・コミュニケーション事業、モジュール・システム事業を中心としてグローバルに事業を展開しており、当連結会計年度の海外売上高は89.2%を占めています。従って、当社グループは直接あるいは間接的に、自動車やスマートフォンなどをはじめとし、IoT、AIの活用により新たなビジネスも生まれているEI市場など、グローバルの各市場における経済状況の影響を受ける環境にあり、各市場における景気の変動等によって、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、物流コスト・各種原材料・エネルギーコストの高騰、貿易摩擦、テロ・戦争・感染症拡大・その他の社会的混乱、不利な政治又は経済要因、予期しない法律又は税制の変更等のリスクが常に内在しています。従って、これらの事象が起きた場合には、当社グループ事業の遂行が妨げられ当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループでは、生産拠点と販売拠点が綿密に連携し、迅速に顧客に販売動向や市場の動向を共有することで、生産規模の最適化を図っています。

 

2)外国為替に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループは、グローバルに事業展開しており、結果として為替レートの変動による影響を受けます。一例として、外国通貨に対する円高、特に米ドル、ユーロ及び人民元に対して円高に変動した場合には、当社グループの業績にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。為替レートの変動が想定から大きく乖離した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループでは、先物為替予約、通貨オプション及び外貨建て債権債務の相殺等、為替変動による影響額の極小化を図っています。

 

 

3)有価証券の時価変動に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループは、売買を目的とした有価証券は保有していませんが、当連結会計年度末において、718億円の有価証券を保有しています。時価を有するものについては全て時価評価を行っており、株式市場における時価の変動が当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループでは、事業上必要である場合を除き、投資株式を取得・保有しないこととし、現在保有している株式については、合理性を確認しながら保有の是非を判断しています。

 

4)顧客の生産計画に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループは国内外のメーカーからの受注生産が大部分を占めるため、顧客の生産計画の影響を直接受けます。地政学上の各種影響による高まりを受けたエネルギー問題、物流費や部材の高騰など不確実な政治経済状況によるサプライチェーン全体への混乱で見通しが立てづらい状況が加速しています。当社グループは、顧客の生産計画に基づき、市場動向、部材の調達リードタイム、安定供給を勘案して取引先に部材手配を行っていますが、市場環境や上記地政学上の各種影響等に伴う顧客の生産計画の変動影響を受け、生産調整、過剰在庫が発生するリスクがあり、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループでは、販売部門、生産部門及び購買部門が綿密に連携し、顧客や市場の動向を迅速に共有化し、生産規模及び在庫の適正化を図る取り組みを進めています。

 

5)特定の部品の供給体制に係るリスク

<リスクの内容>

ロシア・ウクライナ情勢、米中デカップリング及び台湾情勢等に基づく地政学上の各種影響による生産調整のため、売上減少や、電子部品の需給逼迫による材料費上昇、サプライチェーンの混乱による物流費の高騰や生産ロスが発生しています。当社グループでは、重要部品を当社グループ内で製造するよう努めていますが、一部の重要部品については、当社グループ外の企業から供給を受けています。従って、これらの供給元企業が災害・事故等の事由により当社グループの必要とする数量の部品を予定どおり供給できない場合、生産遅延や販売機会の損失等が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

供給問題を未然に防ぐ対策として、サプライチェーンマネジメントの強靭化に取り組み、代替調達先の確保や、災害・事故等の発生時は調達部品の生産地を特定できるシステム等により、迅速な対応が取れるよう取り組んでいます。また、喫緊の電子部品逼迫への対応策として、各取引先との契約及び発注単位や条件の見直しにより必要な部材の安定的な確保を図ることで、生産遅延や販売機会の損失等を最小限に留める取り組みを進めています。

 

6)競合に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループは、コンポーネント事業におけるスマートフォン向けカメラ用アクチュエーターをはじめとしたデジタル機器向けコンポーネント製品、センサー・コミュニケーション事業やモジュール・システム事業におけるCASEに対応した各種センサー、デバイス製品、インフォテインメント機器など全ての事業分野において、他社との激しい競争に晒されています。特に車載ビジネス分野においては、CASEやADAS(先進運転支援システム)の進展により、IT・通信分野など業種・業態の垣根を越えた企業間の開発競争が激化しています。また、従来製品・技術においては市場成熟化の中でコスト競争が激化し、新興国競合が低コストを武器に当社グループと競合しています。それらに起因する失注などの不測事態の発生によって、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループは、新製品の導入や高品質の製品供給、グローバルネットワークの整備・拡充、M&Aや業務提携の推進等により、顧客満足を得るべく努め、同時にコスト構造改革を進めています。

 

7)顧客の財務状況に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループの実質的な売掛金を保有している顧客が、景気低迷等のために支払いが困難になり、その売掛金を償却しなければならない場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループの顧客が適時に支払うことができないことから生じる見積損失について、売掛金に関連する貸倒引当金を維持しています。貸倒引当金は当連結会計年度末において3億円計上しています。なお、通常の業務の過程に関連する売掛金は、担保又は信用保険の対象にはなりません。

 

④サステナビリティー関連リスク

1)気候変動に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループは、気候変動に伴うリスクが事業活動に大きく影響すると認識しています。低炭素経済への移行に伴い、広範囲に及ぶ政策・法規制・技術・市場の変化が生じることに起因する移行リスクとして、炭素税導入によるエネルギー調達コスト増加、排出量取引の導入によるCO2排出量削減対策や排出権導入に伴うコスト増加などを想定しています。異常気象に伴う災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や自社操業の停止による売上減少、生産継続・復旧対応コストの増加などの物理リスクを想定しています。それらが当社の想定した範囲を超えて発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループは、2020年9月に気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)への賛同を表明し、その開示項目に沿ったシナリオ分析を実施し、事業戦略につなげることで、持続可能な成長及びリスクへの適正な対応を目指していきます。

上記移行リスクに対応する取り組みとして、2030年までに使用する電力の100%再生可能エネルギー化を目指し、省エネ推進、太陽光発電設備導入、再エネ由来電力への切り替え、再エネ電力証書の購入などの施策をグローバルで推進しています。また、物理リスクに対応する取り組みとして、生産拠点の自然災害リスクに鑑み、生産移管や複数社購買の検討など、BCP対応の強化を行っています。

 

2)環境汚染及び環境負荷物質に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループの事業活動を通じて環境汚染が発生した場合、汚染除去費用や損害賠償費用等の対応費用が発生し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、欧州や中国を中心に環境負荷物質に対する規制が強化される方向にあり、必要な要件を満たせない場合、販売機会の損失や市場における回収に繋がるリスクがあります。

<主な取り組み>

当社グループは、企業ビジョンにおいてグループ経営、コンプライアンス及び環境保全についての基本理念と行動指針を定めて当社及び当社子会社に展開しています。その中で、経営姿勢の一つとして、地球との調和を掲げ、環境リスク対策への取り組みを行っています。具体的には、化学物質を含む環境汚染物質の管理及び排出削減、大気汚染物質の排出モニタリングと排ガス処理装置の定期点検、国内事業所における土壌・地下水の浄化等を実施しています。

なお、サステナビリティー関連リスクに関する施策について、執行役員で構成される「サステナビリティ委員会」で進捗管理、評価、個別施策の審議を行い、取締役会が監督及びモニタリング機能を果たすことにより、サステナビリティーの重点課題目標達成と企業価値向上を目指しています。

 

⑤法務・コンプライアンスリスク

<リスクの内容>

当社グループは、事業を展開する各国において法令などの遵守を求められています。そのため、例えば、高いシェアを有する製品については、独占禁止法に関する調査手続きを受ける可能性、当社グループの製造する自動車向け製品については、その不具合に伴って顧客・消費者から訴訟提起を受ける可能性を否定できません。これらの事象が発生した場合には、当該対応に要する費用が生じることで、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、法令、社内規程や社会規範等のコンプライアンス違反や人権侵害、ハラスメントによる問題、製品品質に関する不正等が生じることにより、当社グループの企業イメージ毀損、当社製品の生産及び出荷の停止、顧客からの損害賠償請求等、当社グループの事業、業績及び財務状況に影響する可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループにおいては、定期的に役員・従業員向けの社内研修を実施するなど、法令遵守・品質維持などを謳う「アルプスアルパイングループ行動規範」の遵守体制を確保しているほか、有事の際には法務部門と社外弁護士などが連携し適切な措置を講じる体制を確保しています。

 

⑥自然災害・感染症リスク

1)自然災害に係るリスク

<リスクの内容>

当社グループが事業を展開する地域において、地震、津波、風水害などの自然災害が発生し、当社の想定範囲を超えた場合、設備等への被害、重要な業務の中断、顧客への納期問題等の発生により収益性が悪化し、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループは、自然災害の発生に備え、防災対策や重要な情報インフラのバックアップ体制の整備を行っています。また、事業に重大な影響を及ぼしうる自然災害が発生した際は、危機対策本部を設置するなど、迅速に対応に当たる体制を構築しています。各拠点において、事業活動が停止又は停止に至る可能性のある事象が発生した際は、拠点責任者が予め定められたルールに基づき報告し、全社で収集した情報を共有する体制を整えています。また、顧客に当社グループの被害状況や納入への影響を報告する体制を整備しています。

 

2)新型コロナウイルスなどの感染症の感染拡大に係るリスク

<リスクの内容>

2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に移行され、日本を始め、世界的に経済活動の制限が緩和されています。

一方で、新たな感染症が拡大するリスクは常にあり、当社グループ内に拡散した場合、又は、経済活動の停滞が生じた場合、操業停止やサプライチェーンの停止等により、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループ従業員への感染を未然に防止するため、テレワーク、フレックスタイム勤務を活用した時差出勤、衛生管理の徹底を継続することにより、感染予防と拡散防止に努めます。

 

⑦財務リスク

1)資金繰りに係るリスク

<リスクの内容>

当社グループは、取引先銀行とシンジケートローン契約及びシンジケート方式のコミットメントライン契約を締結していますが、これら契約の財務制限条項に抵触した場合には、借入金の繰上げ返済請求を受けることがあり、当社グループの財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループでは、財務制限条項に抵触しないよう、財務部門において各事業の事業計画を横断的にモニタリングし、資金調達リスクの低減を図っています。

 

 

 

2)繰延税金資産に係るリスク

<リスクの内容>

当連結会計年度末において、繰延税金資産を169億円計上しています。当社グループは将来の収益力に基づく課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しています。将来課税所得の見積りは、事業計画及びグループ会社間の取引価格を基礎としています。事業計画は、主に、各事業の主要顧客への販売数量及び販売価格、予測されている営業利益率、売上規模に応じた固定費の見積り及び想定為替レートを前提に策定しています。当社グループは、経営環境の変化に応じて事業計画を見直し経営成績の維持を図るとともに必要な税務戦略を考慮しています。しかし、将来において事業計画の主要な仮定が変化した場合、繰延税金資産の取崩しが発生する可能性があります。

<主な取り組み>

当社は、繰延税金資産に影響を与えるような事業計画の変動要因や、各国・地域の税制変更を定期的に確認しており、将来の見通しの変化等により事業計画の変動が判明した場合には、繰延税金資産の回収可能性に関しての見直しの要否を適時に判断しています。

 

⑧人財・労務リスク

<リスクの内容>

当社グループの事業の中核の一つである自動車市場では、CASEをはじめとする技術革新が加速しています。これらの環境下、ビジネスを確立・拡大していくためには、デジタル分野など多様な分野において優れた専門性を有した人財の必要性がますます高まっています。一方、同業他社を含む各社の採用意欲の高まりや、少子高齢化に伴う労働人口の減少、デジタルトランスフォーメーションの進展などにより、年々、人財の確保に関する難易度が高まっています。雇用環境の変化などにより、当社が求める人財の確保やその定着・育成が計画通りに進まなかった場合には、当社グループの将来の成長に影響を及ぼす可能性があります。

<主な取り組み>

当社は、継続的な年間約200名の新卒採用に加え、中途採用においても次世代自動車向けソフトウェアの開発力強化に向けたデジタル人財をはじめ、必要な人財の積極採用を進めるとともに、新卒・中途採用に関わらず入社時からの体系的な人財育成や、人事理念に基づく評価、昇進・昇格、賃金制度等により、社員の能力・意欲を高める取り組みを行っています。また、ビジネスのグローバル化に対応し、日本においても継続して、外国籍社員の採用にも積極的に取り組んでおり、新卒の約1割を目指しています。更に、社員の高齢化や、定年再雇用者が増加する中、各人の適性に応じた職務の割当てにより、社員一人ひとりの豊富な経験や能力を十分に発揮できる環境の整備に努めています。

風通しのよい組織風土を醸成するため、経営陣と従業員が対話を行うタウンホールミーティングを開催し、従業員のエンゲージメントの向上に努めます。

 

⑨IT・情報セキュリティーリスク

<リスクの内容>

昨今のサイバー攻撃の高度化や、ITを活用したビジネス詐欺の巧妙化に伴い、当社が事業活動を通じて創出した情報、顧客・サプライヤー又はその他団体及び個人(従業員含む)からお預かりした情報の漏洩、改ざん、破壊等の被害が発生するリスクがあります。

また、新型コロナウイルス等による従業員の働き方の多様化に伴う情報の持ち出しや不適切な取扱いにより秘密情報の外部漏洩が発生するリスクがあります。更に、クラウドシステムの活用推進は、事業活動のDX化を促し、大きな利便性が得られる反面、当社グループが直接管理できないリスクの増大にも繋がっています。

このようなリスクが具現化した場合、当社製品の生産及び出荷の停止、顧客やその関係者の機密情報漏洩に起因する損害賠償請求、企業戦略や新技術の漏洩による競争力低下、並びに当社グループの企業イメージ毀損による販売機会の損失等、当社グループの事業、業績及び財務状況に影響する可能性があります。

また、通信機能を有する車載製品の需要が増加してきており、サイバーセキュリティー体制整備が顧客の採用条件として明示されるようになり、対策の遅れが販売機会の損失に繋がる可能性もあります。

<主な取り組み>

2023年7月及び9月に第三者による当社グループのサーバーへの不正アクセス、同年12月に当社を退職した元従業員が当社秘密情報の不正取得により逮捕される事件が発生しました。

当該事件を踏まえ、当社では、ISMS(情報セキュリティーマネジメントシステム)体制を構築し、サーバーアクセスの認証強化、社内ネットワーク脆弱性診断の定期実施、危機管理規定の見直しを含む、当社及び当社サプライチェーン全体での情報管理強化対策に取り組んでいます。また、社内研修による従業員の知識習得とコンプライアンス意識向上を継続実施します。これらを通じて、再発防止に努め、信頼回復を図っていきます。

 

⑩知的財産リスク

<リスクの内容>

特許、その他の知的財産は、当社グループ製品の市場の多くが技術革新に重点を置いていることなどから、重要な競争力の要因となっています。当社グループは、自社開発技術、製品、サービスにおいて、特許、商標及びその他の知的財産権を取得し、場合によっては特許、その他の知的財産権を行使することなどにより、当該技術、製品、サービスの保護を図っています。一方、製品開発に当たっては第三者の知的財産権を尊重した開発を行っていますが、実際に侵害しているか否かを問わず第三者による知的財産権侵害の申し立てを受ける可能性があります。

また、当社グループが知的財産権を侵害しているとして提訴されている訴訟案件については、裁判の経過により将来において損害賠償等が確定した場合には、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。更に当社グループの製品には、他社の知的財産権のライセンスを受けているものもありますが、当該知的財産権の保有者が将来において、ライセンスを当社グループに引き続き与えるという保証はありません。当社グループにとって好ましくない事態が生じた場合には、当社グループの事業はその影響を受ける可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループでは、従業員向けに知的財産権に関する定期的な教育・研修を実施するとともに、当社グループ従業員による知財侵害者発掘奨励制度を導入し、知的財産権保護に努めています。また、他社の知的財産権の侵害を未然に防止するために、先行する知的財産権の調査を徹底するとともに、外部の特許事務所を活用するなどの対策を講じています。

 

⑪公的規制リスク

<リスクの内容>

当社グループは、事業展開する各国・各地域において事業・投資の許可、関税をはじめとする輸出入規制等、様々な政府規制・法規制の適用を受けています。更に、昨今の国際情勢は、各国・各地域の各種規制に影響を及ぼしており、特に、経済安全保障に基づく企業活動への規制が強化される傾向にあります。これらの規制が、当社グループが対象としている市場やサプライチェーン等に影響を及ぼし、売上の減少及び対応コストの増加につながる可能性があります。また、仮に強化された規制等の違反が認定された場合には制裁金等の負担が発生する可能性があります。

<主な取り組み>

当社グループでは、各省庁や業界団体等から情報収集し分析を行うことで、各国・各地域における規制や政策の動向を注視しています。また、経済安全保障分野においては、規制が厳しくなる方向であると捉えており、国内外の規制動向、更には政府・企業の動向も注視し対策を実施しています。

 

 

配当政策

 

3【配当政策】

当社は、資本政策として、成長投資・健全な財務・株主還元の3つのバランスを取る方針としています。

剰余金の配当は、第2四半期末日を基準日とする中間配当と期末配当の年2回とし、それぞれの決定機関は、取締役会と定款に定めています。ただし、当面は、原則として期末配当の決定を株主総会に諮ることとしています。

当事業年度の配当については、業績動向、経営環境等を勘案し、中間配当として1株当たり20円、期末配当については1株当たり10円とし、年間配当を1株当たり30円としました。

当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2023年10月30日

取締役会決議

4,111

20.00

2024年6月26日

定時株主総会決議

2,055

10.00

 

 

今回、2024年3月期通期決算で公表の経営構造改革を推進し、第3次中期経営計画期間の早期にPBR1倍以上を目指し、同時に企業価値向上の成果を、より中長期に安定的かつ継続的に株主の皆様へ還元することを経営上の重要課題と捉え、株主還元方針を変更することとしました。2025年3月期からは、株主還元の指標として、中長期に安定的かつ継続的に還元するためにDOE(自己資本配当率)を採用のうえ、3%を目安とし、今後原則として4年間運用し、2028年度から始まる第4次中期経営計画のタイミングで必要な見直しを行います。

また、内部留保資金については、企業価値の最大化を実現するための成長投資及び健全な財務の維持に充てていきます。