2024年12月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

アジア・パシフィック事業 EU事業
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
アジア・パシフィック事業 94,679 62.7 - - -
EU事業 56,240 37.3 - - -

事業内容

3【事業の内容】

当社グループは、純粋持株会社である当社(スミダコーポレーション株式会社)及び国内外連結子会社で構成されており、生産・販売・研究開発体制を基礎とした地域別に「アジア・パシフィック事業」と「EU事業」の2つの事業に区分しています。当社が、製品・サービスについて地域ごとに包括的な戦略を立案・決定し、当社による事業活動の支配・管理の下、各事業では、車載用・産業機器用・家電用等の電子機器に搭載されるコイル関連の部品及びモジュール製品の研究・開発・設計・製造・販売を行っています。

なお、2つの事業は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」に掲げるセグメントの区分と同一です。

なお、当社は特定上場会社等です。特定上場会社等に該当することにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。

主な当社グループ会社の事業系統図は次のとおりです。

 

[事業系統図]

 

 

[主要な事業内容]

 当社グループは、コイル関連の部品及びモジュール製品の設計・製造・販売を行っています。当社グループの製品は、車載関連・インダストリー関連・家電関連といった多岐に亘る電子機器に搭載されています。当社グループの主要製品は次のとおりです。

パワーインダクタ&RFインダクタ

面実装、ピンタイプ、デジタルアンプ用LPFコイル、RFチップインダクタ

 

パワートランスフォーマー

面実装タイプ、ピンタイプ、PoEトランス、スイッチング・パワーサプライ、リアクタ、非接触給電コイル

 

シグナル

RF/通信、RFID、アンテナコイル、他

 

EMC

ACパワーライン、DCパワーライン、ノーマルモードチョーク、コモンモードコイル

 

センサ・アクチュエータ

ローターポジションセンサー、ABSコイル、ソレノイドコイル

 

車載用モジュール

インバーター用チョーク・モジュール、パワー・コンバージョン、フィルターモジュール

 

磁性材料、セラミック部品、EMS、フレキシブル・

 コネクション

セラミック受動部品、電子製品製造サービス(EMS)、フレキシブルフラットケーブル

 

医療機器用コンポーネント

通信用アイソレーショントランス、アイソレーショントランス

 

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月19日)現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)経営成績

①経営成績の概要

当連結会計年度において、世界ではロシアによるウクライナ侵攻の長期化やイスラエル及び周辺国における武力衝突による緊張が高まる中、米国が中国製EV等への追加関税を発動する等、地政学上の不安定さが高まりました。米国においては、インフレが減速に向かう中、底堅い賃金上昇により消費が好調です。欧州においては、自動車を中心に域外への輸出が伸び悩んでおり、とりわけ中核国ドイツの製造業景況感が悪化しています。中国においては、不動産不況が長引いており、住宅ローン金利の引き下げ等の政策の効果も限定的で依然として内需は停滞しています。金融政策においては、米国FRBがインフレ圧力の緩和を受けて計1.0%の利下げを実施し、また欧州ECBもそれを上回る利下げを実施しました。一方で、日銀は3月にゼロ金利を解除した後、7月にも利上げを実施しました。これらを受けて、年初からの円安基調は反転し、第3四半期連結会計期間においては円高が進行しました。その後、11月の米国大統領選挙の結果を受けて、米国における長期金利の上昇等により、年末にかけて再び円安が進行しました。

電子部品業界は、コロナ後の需要増加と供給不安が重なり在庫が膨らんでいましたが、ようやくこれらの在庫が解消に向かい出荷が増加傾向にあると見ています。世界の自動車販売は、供給制約によるペントアップ需要の消化が進む中、自動車ローン金利の高止まり等を受けて車両価格が上昇していることから、消費者が自動車を買いづらい状況が継続しています。EVについては、米国において補助金支給要件が厳格化され、またドイツにおいて補助金が打ち切られる等の環境下で、これら地域における需要が低迷しました。米欧の自動車メーカー各社がEVへの投資時期を遅らせること等を発表したことに呼応する形で、EVの普及を後押しする急速充電ネットワークの構築においても投資を手控える動きが見られました。一方で、xEVの最大市場である中国においては、メーカー各社が値引きを強化したことや政府による買い替え促進政策等を受けて、販売台数は引き続き堅調でした。2025年に入り米国においてEV促進策が撤回された影響も注視しています。

当社グループでは、計画期間を2024年から2026年までの3か年とする中期経営計画を2024年2月に発表しました。本中期経営計画においては、脱炭素化の流れを事業機会と捉え、xEV関連、充電インフラ、太陽光発電、蓄電池等を含む用途群を「グリーンエネルギー関連」と定義し、重点分野と位置づけて更なる成長を目指すことを掲げています。また、地政学リスクの高まりに対処するため、営業、開発、製造の3体制を各地域で完結し、お客様のニーズにより柔軟かつ迅速に対応できる地産地消の体制づくりを進めています。具体的には、中国における生産能力の最適化、北米における研究開発能力の更なる増強、インドにおける新規案件の獲得及びベトナムでの生産能力の拡大等を進めています。

当連結会計年度においては、獲得済み案件を積み上げて作成した増収計画に基づき、3期連続となる最高益更新を掲げました。しかしながら、EVに対する様子見姿勢及び高金利を受けた投資の手控え等の影響を受け、期初に想定していた売上収益拡大が遅れました。最大限の費用抑制努力を継続しているものの、減収による影響を完全に吸収することは難しいと判断したため、7月31日にやむなく業績予想を下方修正しました。しかしながらその後も、特に欧州における車載関連市場・インダストリー関連市場の回復に想定以上の時間を要したため、大胆な構造改革を速やかに実施する必要があると判断しました。構造改革の内容は欧州拠点における人員削減による合理化です。本合理化により、当連結会計年度に退職一時金等に係る事業構造改革費用1,086百万円をその他の営業費用として計上しましたが、2025年12月期に約1,600百万円、2026年12月期以降に1年あたり約1,800百万円の費用削減効果を見込んでいます。

当社グループはカスタム製品の受注生産ビジネスを営んでいるため、獲得した案件には供給責任が発生します。当連結会計年度においては、過年度に引き続き増収を見越して設備及び人員を配置していたものの、売上が実現せず結果として固定費負担が増えて収益性を低下させてしまいました。当社グループでは現在、全社を挙げて損益分岐点の引き下げを進めています。前述した外部環境の変化を受けて、売上の成長は鈍化が懸念されます。このため、足元の逆風下で現実的に見込まれる売上の中で、目標とする利益を出せる体制に変えていく方向に、戦い方を変える判断をしました。欧州での構造改革はこの一環です。加えて、主要な製造拠点である中国においても退職者の補充を行わない形で間接人員の適正化を進めています。また、業務効率化のため営業や生産技術の組織体制を変更しました。

当連結会計年度における当社グループの業績は以下のとおりです。

売上収益は、車載関連で様々な用途の製品需要が堅調に推移した一方で、インダストリー関連で太陽光発電関連及び産業機器向けの需要が低下したこと、家電関連でノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン関連の需要が低下しました。グリーン関連売上は大幅な成長を見込んでいましたが、xEV関連需要の失速を受け微増にとどまりました。当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度比2.5%減の143,978百万円でした。

営業利益は、前連結会計年度との比較において、減収による影響(3,465百万円の減益)、生産数量の減少に伴う固定費負担増加による影響(1,178百万円の減益)、並びに欧州における事業構造改革費用1,086百万円等の影響を受けて、同47.3%減の4,513百万円でした。また、税引前当期利益は同77.9%減の1,295百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同88.3%減の590百万円でした。

 

 

対前年 利益増減(単位:百万円)

 

 

◎参考:期中平均為替レート

 

2023年度

2024年度

米ドル/円

140.21

150.95

ユーロ/円

151.37

163.78

人民元/円

19.78

20.97

 

◎参考:グリーンエネルギー関連売上

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

連結会計期間

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期

2023年

8,123

9,304

9,572

9,788

36,790

2024年

9,507

9,365

9,784

10,293

38,951

 

当社グループは、ROIC(投下資本利益率)及びROE(株主資本コスト)を中期経営計画上のモニタリング指標としています。当連結会計年度においては営業利益が減少した影響でROICは3.4%に低下し、WACCを下回ってしまいました。なお、ROIC及びWACCの算定にあたっては、当社における平時の実効税率21.0%を用いています。

 

▶ROIC(投下資本利益率)

2023年度実績

2024年度実績

6.7%

3.4%

 

▶WACC(加重平均資本コスト)

2023年度実績

2024年度実績

5.7%

5.5%

 

 

■PBRの向上に向けた取組み

当連結会計年度末における当社グループのPBRは約0.5倍であり、ROEが1.0%であることから、PERは約50倍と算定されます。前連結会計年度末においてはこれらROE及びPERについて東証全上場企業の平均値との比較を通じて、特にPERに課題があると分析していましたが、財務レバレッジによる寄与が大きく、実際に当連結会計年度においては収益拡大が遅れる中で大幅に減益となってしまいました。こうした中、ROEの持続的な向上を目指す必要があると再認識し、足元では、当連結会計年度に公表した欧州における構造改革に加えて、中国における間接人員の適正化や経費抑制等による損益分岐点の引き下げを進めています。同時に、製品用途の多様化や顧客の分散等による収益源の多様化も推進しており、稼ぐ力の強化及び業績の安定化の両面に取り組んでいます。なお、PERの逆数は資本コストから期待成長率を差し引いた値と一致することから、当連結会計年度における当社グループの株主資本コストが9.3%であるとき、期待成長率は7.3%となります。当連結会計年度においてROEが大幅に低下した側面はあるものの、期待成長率は前連結会計年度末にマイナスだったところから、当連結会計年度末には改善しています。稼ぐ力の強化及び業績の安定化に取り組むとともに、引き続きIR活動等を通じて当社の取り組み及び成長性に対する理解促進を図っていきます。

 

▶ROE

2023年度実績

2024年度実績

9.9%

1.0%

 

▶株主資本コスト

2023年度実績

2024年度実績

8.9%

9.3%

 

▶期待成長率

2023年度実績

2024年度実績

▲5.3%

7.3%

 

 

②報告セグメントの概況

当連結会計年度における報告セグメントの概況は次のとおりです。

1)アジア・パシフィック事業

アジア・パシフィック事業では、車載関連が堅調に推移した一方で、中国の景況感の悪化を受けてインダストリー関連の需要が減退したことも影響し、売上収益は前連結会計年度比1.1%減の94,679百万円でした。不断の生産効率改善並びに経費節減に取り組んでいるものの、工場の操業度低下が利益の圧迫要因となり、セグメント利益は同42.0%減の3,146百万円でした。

2)EU事業

EU事業では、前連結会計年度に比べ円安/ユーロ高で推移したものの、家電関連及びインダストリー関連での減収影響により、売上収益は前連結会計年度比7.9%減の56,240百万円でした。時短勤務をはじめとする経費節減に努めたものの、現下の厳しい市場環境は当面続くとの判断から人員削減による合理化が必要と判断し、構造改革に係る一時金を計上しました。セグメント利益は同33.5%減の2,679百万円でした。

 

③市場別の概況

当連結会計年度における市場別の概況は次のとおりです。

1)車載関連

世界的な新車生産台数の伸びを背景に、当社グループにおいてはxEV関連及びその他用途群の売上が好調に推移しました。しかしながら、欧州におけるEVへの補助金打ち切りの影響や、米国における政策の行方を注視しています。車載関連の売上収益は前連結会計年度比1.2%増の87,893百万円でした。

2)インダストリー関連

米欧のEVシフトにややブレーキがかかる動きもある中で、当社グループにおいてはxEV向け急速充電インフラ関連等が成長しました。他方で、長引く高金利等の影響を受けて太陽光発電関連の投資を手控える動きが顕著になったこと、並びに中国の景況感が停滞したこと等により当社グループの製品需要が減退しました。インダストリー関連の売上収益は前連結会計年度比9.5%減の36,314百万円でした。

 

3)家電関連

ノートパソコン、タブレット端末、スマートフォン関連の需要が引き続き弱含みで推移したものの、足元では生成AI搭載モデルの販売開始等もあり、需要回復の兆しが見えてきています。家電関連の売上収益は前連結会計年度比4.4%減の19,770百万円でした。

 

 

④販売地域別の概況

当連結会計年度における販売地域別の概況は次のとおりです。なお、経営管理においては、各営業所の活動に実質的な責任を有する販売地域別に売上を再集計しています。このため、本項に記載する販売地域別の売上と、「第5 経理の状況」の連結財務諸表注記に記載する数値との間には不一致が生じます。

1)アジア(中国/台湾除く)

車載関連が全般的に好調な一方で、スマートフォン関連・PC等の家電製品関連向け需要が大きく落ち込みました。また、中国の景気回復に時間を要している影響で、インダストリー関連需要が低迷しました。アジア(中国/台湾除く)の売上収益は前連結会計年度比10.1%減の22,685百万円でした。

2)中国/台湾

スマートフォン関連・PC等の家電製品関連向け需要が伸びた一方で、太陽光発電設備向けの需要が落ち込みました。中国/台湾の売上収益は前連結会計年度比5.9%増の36,744百万円でした。

3)欧州

EVへの補助金打ち切りの影響により車載関連需要が伸び悩む中、前連結会計年度において特に好調だった太陽光発電設備関連の需要が低迷しました。欧州の売上収益は前連結会計年度比8.2%減の57,944百万円でした。

4)北米/その他

当連結会計年度の後半に政策金利が徐々に引き下げられる中、太陽光発電並びに蓄電池関連の需要が成長を牽引しました。北米/その他の売上収益は前連結会計年度比8.2%増の26,603百万円でした。

 

 

 なお、当社グループは、需要の動向や顧客の要求、市場の変化等に柔軟に対応して生産活動を行っており、生産実績及び受注実績は販売実績に類似しています。このため、生産実績は以下「⑤生産地域別の概況」として記載し、受注実績は記載を省略しています。

 

⑤生産地域別の概況

当連結会計年度における生産地域別の概況は次のとおりです。

1)アジア(中国除く)

医療器関連の新製品導入に伴い、タイに新工場を開設し稼働開始しました。ベトナム・クアンガイ工場においては、次世代自動車用部品の需要増と、新エネルギー産業向けビジネスの拡大が見込まれます。また、欧米市場への輸出拠点としてニーズが増えていることから、ベトナム・ハイズオン省に新工場を建設中で、製品に使用する加工部品等を現地で内製する計画です。日本国内においては、2024年に増床した青森工場でインダストリー関連の新規案件の生産を開始しています。アジア(中国除く)で生産した製品による売上収益は、前連結会計年度比14.5%増の11,070百万円でした。

 

2)中国

世界経済が低迷する中、グループの主力生産拠点の中国では、経費削減や生産効率改善に向けた活動を展開しました。設備の内製化や材料調達の最適化、サプライ・チェーンの中間経費削減、重複する仕事の集約等を行い、間接経費の削減に取り組みました。また、筋肉質な体制作りとしてITインフラ投資を行い、省人化を推進しています。足元では、政府の刺激策に因る内需の回復を取り込むため、xEVや産業インフラ関連ビジネスの主要顧客への販売を強化しています。中国で生産した製品による売上収益は、前連結会計年度比4.1%減の75,648百万円でした。

 

3)欧州

当社グループでは、欧州域内の需要に対して、ルーマニアやスロベニアを中心に生産を行い、また中国はじめアジアにおける生産を増やしています。エネルギー価格等の高騰が続く欧州では、特にドイツにおいて自動車関連産業を中心に景況感が悪化しています。こうした中、当社グループでは車載関連市場・インダストリー関連市場の回復に想定以上の時間を要したため、大胆な構造改革を速やかに実施する必要があると判断し、生産拠点における人員削減による合理化を行いました。欧州で生産した製品による売上収益は、前連結会計年度比4.5%減の44,785百万円でした。

 

4)北米/その他

当社グループでは、北米の需要に対して米国内に2工場とメキシコ工場にて生産しています。今後、アジアや欧州域内の需要に対しても、本地域での生産要求が予測されるため、レイアウトの変更等により生産能力を拡充しています。北米以外で設計・開発する案件の生産が増えてきている中、遠隔からのコミュニケーションを効率的に行う目的で3D・スマートグラス等を活用しています。省人化とともにミスの低減を行い、プロセスの標準化を更に推進していきます。北米/その他で生産した製品による売上収益は、前連結会計年度比2.1%増の12,473百万円でした。

 

(2)財政状態

(資産)

当連結会計年度末における資産合計は147,766百万円で、前連結会計年度末比で4,980百万円増加しました。当社の保有資産の9割超は外貨建てですが、当期に進行した円安の影響で、外貨建て資産の評価額が大きくなったことから全体的に資産残高が増加しました。

当連結会計年度末の現金及び現金同等物は4,286百万円でした。手元資金については、国内外連結子会社各社に資金が滞留することにより資金効率が低下するリスクに鑑み、主要子会社の最低手持資金額を設定し毎月その設定額と実際手持資金とを比較することで、グループ全体での余剰資金を削減し借入金の圧縮に努めています。また、3か月先までのローリング・フォーキャストを毎月実施することで資金管理を行っています。

(負債)

当連結会計年度末における負債合計は、有利子負債の借入及び返済による残高の変動等により、前連結会計年度末比1,377百万円増加し、86,851百万円でした。

当連結会計年度末におけるネット有利子負債残高は、前連結会計年度末から127百万円減少し、48,142百万円となりました。当連結会計年度末のネットDEレシオは0.82倍で、前連結会計年度末から0.06ポイント低下しました。当連結会計年度末現在、短期有利子負債(1年内返済予定又は償還予定の長期有利子負債を含む)の残高は36,424百万円で、長期有利子負債の残高は16,004百万円です。なお、当社グループの借入金のうち約70%が変動金利、約30%が固定金利によるものです。

当社グループの保有する資産のうち大部分が外貨建てであることに対応し、為替の影響を少なくするため、現地通貨建てでの調達を原則としつつ、金利コストも考慮した最適な資金調達を行っています。外貨建て借入金の割合が借入金全体の約82%を占めており、借入金の平均金利は4.3%です。

当社グループでは、主要な銀行と定期的にミーティングを行い、良好な関係を築いています。銀行団のオープン・コミットメントラインは110億円を維持しており、これら全てが未使用です。なお、中期的には収益性の向上と財務体質の強化に取り組み、信用格付けを取得し、資金調達の方法についての選択肢を増やす目標を持っています。

(資本)

当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末比3,603百万円増加し、60,915百万円でした。当期利益の計上、配当金の支払、また在外営業活動体の換算差額の変動を主要因としたその他の包括利益の計上等により、当連結会計年度末の親会社の所有者に帰属する持分合計は58,648百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は前連結会計年度末の38.6%から、当連結会計年度末に39.7%となりました。また、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度末の1,687.39円から、当連結会計年度末は1,774.64円となりました。

 

◎参考:期末為替レート

 

2023年12月期

2024年12月期

米ドル/円

141.51

156.15

ユーロ/円

156.54

162.70

人民元/円

19.90

21.34

 

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は前連結会計年度末比1,178百万円増加し、4,286百万円でした。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は14,928百万円(前連結会計年度は18,343百万円の収入)でした。運転資本の増加を抑制できたことが営業キャッシュ・フローの改善に寄与しました。

 当社グループでは運転資本をモニターするKPIとしてCash Conversion Cycle(CCC)を採用しています。当連結会計年度末のCCCは95日で、前連結会計年度末から4日長くなりました。

 当社グループはB-to-Bビジネスを営んでいるため、DSO(売上債権回転日数)の短縮、つまり営業債権の回収期日の短縮は顧客からの値下げ圧力になりかねません。同様に、DPO(仕入債務回転日数)についての取り組みも仕入先からの値上げ圧力になりかねません。したがって、DIO(在庫回転日数)の管理が現実的な取り組みとなっています。DIOはサプライチェーンの混乱等のため顧客から納品の先延ばし要請を受けた影響で、2022年6月末時点で116日まで伸びました。その後、地域別、会社別に毎月モニタリングを実施し棚卸資産を減らす取り組みを行い、当連結会計年度末のDIOは85日でした。

 当連結会計年度末のDSOは73日、DPOは63日でした。

◎参考:Cash Conversion Cycle

 

実績

増減

2023年度

2024年度

DSO(売上債権回転日数)

68

73

5

DIO(在庫回転日数)

84

85

1

DPO(仕入債務回転日数)

61

63

2

Cash Conversion Cycle

91

95

4

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は8,834百万円(前連結会計年度は10,702百万円の支出)でした。当連結会計年度においては、期初に見込んだ売上収益の拡大が遅れていたことから、供給責任を伴う新製品及び増産投資を優先し、生産効率改善等を目的とする投資については抑制しました。有形固定資産の取得による支出は7,860百万円でした。

 当社グループは、顧客からの受注に基づき設備投資をしています。設備投資については、新製品、増産、生産効率改善、更新と目的別に計画を立て、規模の大きい設備投資については、NPV分析、モンテカルロシミュレーション等の手法を採用し、その採算性について検討後、実施を決定しています。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果支出した資金は5,268百万円(前連結会計年度は7,782百万円の支出)でした。借入残高が2,214百万円純減したことによる支出、配当金の支払額1,771百万円、リース負債の返済による支出1,283百万円等がありました。

 当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持及び健全な財政状態を常にめざし、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保を進めています。成長を維持するために将来必要な運転資金及び設備投資資金は、主に手元の現金と営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入等により調達しています。

(単位:百万円)

 

2023年12月期

2024年12月期

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

18,343

14,928

△3,415

投資活動によるキャッシュ・フロー

△10,702

△8,834

1,868

財務活動によるキャッシュ・フロー

△7,782

△5,268

2,513

現金及び現金同等物に係る換算差額

304

352

47

現金及び現金同等物の増減額

163

1,178

1,014

現金及び現金同等物の期首残高

2,944

3,107

163

現金及び現金同等物の期末残高

3,107

4,286

1,178

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第312条の規定によりIFRS会計基準に準拠して作成しています。この連結財務諸表を作成するに当たって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しています。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.重要性がある会計方針 3.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しています。

 

 

セグメント情報

5.セグメント情報

(1)報告セグメントの概要

 当社グループの報告セグメントは、当社グループの構成単位のうち、分離された財務情報が入手可能であり、最高経営責任者(CEO)が、経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっています。当社グループにおいては、純粋持株会社である当社による事業活動の支配・管理の下、国内外においてコイルの製造、販売を行っています。当社グループは、製品・サービスについて地域ごとに包括的な戦略を立案・決定し、事業活動を展開しています。したがって、当社グループは、生産・販売・研究開発体制を基礎とした地域ごとの事業セグメントから構成されており、「アジア・パシフィック事業」と「EU事業」の2つを報告セグメントとしています。各報告セグメントでは、音響・映像・OA・車載用・産業用機器等の電子部品、高周波コイルの研究・開発・設計・製造・販売を行っています。

 

(2)セグメントの収益及び費用

 報告セグメントは、主に製造活動から生じる収益及び外部又は他のセグメントに対する製品の販売から収益を生み出しています。

 報告セグメント間の売上収益は市場実勢価格に基づいています。

 「セグメント利益」は、売上収益から売上原価・販売費及び一般管理費を控除しています。

 各報告セグメントの会計方針は、注記2「重要性がある会計方針」で記載されている当社グループの会計方針と同一の会計方針を適用しています。

 当社グループの報告セグメントごとの売上収益、利益又は損失、及びその他の項目は以下のとおりです。

 

前連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

報告セグメント

調整額

連結財務諸表計上額

 

アジア・パシフィック事業

EU事業

売上収益

 

 

 

 

 

外部顧客への売上収益

88,394

59,278

147,672

147,672

セグメント間の内部売上収益又は振替高

7,304

1,786

9,091

△9,091

合計

95,699

61,065

156,764

△9,091

147,672

セグメント利益

5,422

4,026

9,448

△620

8,828

その他の営業収益

546

その他の営業費用

△809

金融収益

41

金融費用

△2,749

税引前当期利益

5,856

その他の項目

 

 

 

 

 

減価償却費及び償却費

6,128

3,160

9,288

73

9,361

非金融資産の減損損失

4

36

41

41

1.セグメント利益の調整額には、報告セグメントに配分していない全社費用△620百万円が含まれています。

2.減価償却費及び償却費の調整額は、全社資産に係る償却費です。

 

当連結会計年度(自 2024年1月1日 至 2024年12月31日)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

報告セグメント

調整額

連結財務諸表計上額

 

アジア・パシフィック事業

EU事業

売上収益

 

 

 

 

 

外部顧客への売上収益

89,494

54,483

143,978

143,978

セグメント間の内部売上収益又は振替高

5,184

1,757

6,941

△6,941

合計

94,679

56,240

150,919

△6,941

143,978

セグメント利益

3,146

2,679

5,826

△193

5,632

その他の営業収益

215

その他の営業費用

△1,334

金融収益

38

金融費用

△3,256

税引前当期利益

1,295

その他の項目

 

 

 

 

 

減価償却費及び償却費

7,113

3,829

10,942

79

11,022

非金融資産の減損損失

1.セグメント利益の調整額には、報告セグメントに配分していない全社費用△193百万円が含まれています。

2.減価償却費及び償却費の調整額は、全社資産に係る償却費です。

 

(3)製品及びサービスに関する情報

 製品及びサービスごとの外部顧客に対する売上収益は以下のとおりです。

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

車載関連

86,865

87,893

インダストリー関連

40,116

36,314

家電関連

20,691

19,770

合計

147,672

143,978

 

(4)地域別に関する情報

 売上収益及び非流動資産の地域別内訳は以下のとおりです。

外部顧客からの売上収益

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

当連結会計年度

(自 2024年1月1日

至 2024年12月31日)

中国

29,815

28,897

米国

23,618

26,215

ドイツ

22,894

18,832

日本

16,536

15,114

その他

54,807

54,918

合計

147,672

143,978

 

非流動資産

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

(2023年12月31日)

当連結会計年度

(2024年12月31日)

中国

26,090

26,253

ドイツ

16,804

16,782

ベトナム

5,799

6,402

日本

3,588

4,083

その他

19,227

20,962

合計

71,510

74,484

 (注)非流動資産は、資産の所在地によっており、金融商品及び繰延税金資産を含んでいません。

 (表示方法の変更)

前連結会計年度において、「その他」に含めていた「ベトナム」は当連結会計年度より独立掲記することとし、独立掲記していた「香港」は当連結会計年度より「その他」に含めて表示しています。この表示方法の変更を反映させるため、前連結会計年度の注記の組替えを行っています。

 

(5)主要な顧客に関する情報

 当社グループの売上収益の10%以上を占める顧客グループが存在しており、当該顧客グループから生じた売上収益は前連結会計年度において17,112百万円(アジア・パシフィック事業及びEU事業)、当連結会計年度において17,013百万円(アジア・パシフィック事業及びEU事業)です。