2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況等に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のものがあります。文中の将来に関する事項は本有価証券報告書提出日(2025年6月24日)現在において、当社グループが判断したものであります。

なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に経営成績等の状況に与える影響の内容については、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

 

(1) 経済環境の変動によるリスク

当社グループは、経営理念のもと、パワーエレクトロニクスの分野に経営資源を集中・特化し、特にパワー半導体技術と電源機器技術の融合により、地球環境への負荷の軽減を最終的に目指して、エネルギーの効率使用、省エネルギー・省資源及びクリーンエネルギーの活用を実現する製品開発を行い、事業基盤の拡大に取り組んでおります。

当社グループは、特定の地域、産業に偏らない販売戦略をとっておりますが、貿易規制、関税の変動、伝染病や感染症によるパンデミック、経済状況の変化、民間設備投資動向やインフラ整備の動向に影響を受けるところが大きく、世界経済の景気後退や需要の縮小は、当社グループの受注高・受注価格に影響を及ぼす可能性があります。

このような経済環境の変動は、当社の管理可能な範囲を超えるものであり、回避することは困難ですが、販売先・仕入先・取引金融機関等からの情報をいち早く把握し、経営幹部による情報共有を徹底することで、社内において適切な対応策を講じるよう努めております。

 

(2) 事業リスク・戦略リスク

① 品質(製造物責任)

当社グループは、万一、製品に欠陥が発生した場合、多額のコストが発生する可能性があり、当社グループの評価に重大な影響を与える恐れがあります。その結果として、売上の減少など、業績に悪影響を及ぼすリスクも存在することを認識しております。

このようなリスクを未然に防ぐため、当社グループでは、品質環境企画室を中心に、製造・販売・技術部門が密接に連携し、開発段階から出荷に至るすべてのプロセスにおいて、製品の品質向上及び安定化に継続して取り組んでおります。

② 製品開発

当社グループは、お客様のニーズを的確に捉え、魅力的な製品をタイムリーにお客様に届けるよう、活動を強化しておりますが、開発の遅れやタイムリーな供給ができなかった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクを未然に防ぐため、当社グループでは、製品開発及び商品化の進捗状況について定期的に協議を行い、経営層と課題を共有することで、経営資源の適切な配分に努め、リスクの低減を図っております。

③ 他社との提携

当社グループは、販売拡大のため、優位性のある商品についてOEM供給や受託生産の形で、一部の事業分野において他社と共同で事業活動を行っております。しかしながら、経営環境の変化などにより、相手先企業の事情によって協業関係が継続できなくなる場合があり、その結果、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは、技術開発及び品質向上に継続して取り組むとともに、協業テーマごとに状況を確認し、必要に応じて協業関係の維持に向けた協議を行うことで、リスクの最小化に努めております。

④ 素材価格の変動

当社グループの電源機器事業では、銅、鉄鋼、樹脂等の素材を含む部品を多く使用しております。これらの素材価格が急激に変動した場合、引き合いから受注・引き渡しまでに一定の期間を要することから、製品価格への転嫁が遅れ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは、コストダウンや生産性向上、経費圧縮などの取り組みに加え、製造リードタイムを踏まえたうえで、素材価格の変動に応じてお客様との価格交渉を適時に行うことにより、適正な利益の確保に努めております。

⑤ 部品調達

当社グループの製品には、社外から調達する電子部品等が数多く使用されておりますが、車載向け部品などの需要増加により、調達リードタイムが長期化し、必要な部品を適時に確保できなくなる可能性があります。また、一部の部材は海外から調達しており、各国の通関政策の影響を受けて調達が困難になる可能性もあります。さらに、テロや地域紛争、国際関係の悪化による治安・情勢不安に起因する運輸リスク、原油価格の高騰による輸送コストの上昇、コンテナ需給の逼迫による輸送遅延・輸送コストの上昇など、多様な外部要因によるリスクも想定されます。

このようなリスクに対し、当社グループでは、主要部品に関する代替調達先の検討や、複数の仕入先の選定、国内外における新たな調達先の開拓を継続的に進めております。また、部品ごとのリードタイムの変化を常に注視し、必要に応じて先行手配を行うなど、サプライチェーンの寸断による影響を最小限に抑えるべく対策を講じております。

⑥ 設備投資

当社グループは、新製品の開発や生産能力の拡大、製品の競争力維持のために設備投資を行っておりますが、設備投資に対して製品需要が想定を大きく下回った場合、過剰な減価償却費の負担が生じ、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは、設備投資の実施にあたり、投資効果の前提条件を明確化するとともに、投資金額や規模の妥当性について継続的な検証を行い、適切な検討・承認手続きを通じてリスクの回避に努めております。

⑦ 生産委託先(外注先)の経営状況変動

当社グループは、半導体製品の組み立て工程や電源機器製品の生産を外注先に委託している場合がありますが、生産委託先の経営状況の変動により、外注コストの増加や販売に必要な生産数量の確保ができなくなる可能性があります。リスクが顕在化した場合や外注先の倒産等予期せぬ事態が生じた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは、生産委託先との連携を図り経営状況の変化を早期に把握するとともに、生産委託先の見直しを適宜行い、リスクを最小限に抑えるよう努めております。

⑧ 国際情勢

当社グループは、中期経営計画のテーマの一つとして、積極的なグローバル展開を推進しており、販売拠点及び生産拠点を海外に展開しており、地政学的リスク及びカントリーリスクへの対応が求められます。特に戦争、暴動、テロ、伝染病・感染症の流行などによる社会的混乱、また、地震や台風などの自然災害が発生した場合には、原油価格高騰に伴う輸送コストの上昇、現地工場の操業停止、債権回収不能など、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。さらに、各国における関税率の変動は、当社製品の価格競争力に影響を及ぼし、販売実績が下振れるリスクにつながるおそれがあります。

このようなリスクに対し、当社グループでは、海外営業統括部及び海外子会社を通じて、各国・地域における政治・経済状況、社会情勢、文化・宗教、法制度・規制等に関する情報収集を行い、案件ごとにリスクの回避策を講じるなど、リスクの最小化に努めております。関税の変動については、価格転嫁、サプライチェーンの見直しや再構築などに取り組んでまいります。

⑨ 競合及び価格動向

当社グループの製品は、国内外において他社との競争にさらされております。継続的な技術革新やコスト削減等に取り組んでいるものの、予想以上に価格競争が激化した場合、販売価格の下落により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは、継続的な開発投資と品質向上に加え、原材料の現地調達率の向上や生産コストの削減、保守サービス対応力の強化などを通じて、競合他社との差別化に取り組んでおります。また、製品ポートフォリオの見直しを常に行い、当社の強みが発揮できる分野に経営資源を集中することで、価格競争に陥ることなく収益の確保を目指しております。

⑩ 知的財産

当社グループは、知的財産を競争力の源泉であり、経営資源の中でも最も重要なものの一つと位置づけており、その権利化、適切な管理及び活用を通じて、企業価値やブランド価値の維持・向上を図っています。グローバルに事業を展開する中で、当社グループの知的財産権が侵害される可能性があり、そのような場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。このため当社グループでは、模倣品に関する情報を継続的に収集するとともに、必要に応じて製造・販売の差止めを求める訴訟提起など、適切な対応策を講じています。

また、万一当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合には、損害賠償請求や対価の支払等が発生し、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。

こうしたリスクを未然に防ぐため、当社グループは、製品開発段階において事前調査を実施し、第三者の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っております。

 

(3) 経営基盤に関するリスク

① コンプライアンスリスク

当社グループは、国内外で事業を展開しており、輸出貿易管理令、不正競争防止法、贈収賄防止法、建設業法など、多岐にわたる法令・規制を遵守する必要があります。これらに違反する行為や、その疑いを持たれる行為が発生した場合には、課徴金や損害賠償の請求、営業活動の中断、社会的信用の低下、株価の下落など、当社グループの事業運営や財務状況に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは、法令に準拠した社内規程の整備・運用、内部統制システムの構築及び定期的な評価、経営層によるコンプライアンスの発信、eラーニングや研修を通じた従業員の意識向上、内部通報制度の整備と適正な運用などにより、法令遵守体制の維持・強化に努めております。

② 情報セキュリティにおけるリスク

当社グループは、事業を通じてお客様や取引先の個人情報や機密情報を入手することがあり、これらの情報はサイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん・破壊、紛失、漏洩等のリスクにさらされています。また、想定を超えるサイバー攻撃や人為的ミス、盗難等が発生した場合には、情報の流出、破壊、改ざん、あるいは情報システムの停止等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクに対応し、当社グループでは、グループ全体でのセキュリティ強化、委託先の適切な管理、従業員への教育などを通じて、情報管理体制の整備・強化に取り組んでおります。

③ 人材確保

当社グループが競争力を維持し、将来にわたり発展していくためには、優秀な人材を継続的に確保することが不可欠です。しかしながら、近年の日本における生産年齢人口の減少を背景に、有能な人材の獲得競争は一層激化しており、必要な人材を確保できない場合には、事業の拡大に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクに対し、当社グループでは、雇用制度や教育訓練制度の充実を図り、人材の確保と育成に継続して取り組んでおります。さらに、教育機会の整備を通じて付加価値創造型の人材を育成するとともに、DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速によって一人当たりの生産性を向上させることで、事業拡大と業績への影響の最小化に努めてまいります。

 

(4) 環境リスク

① 法的規制

当社グループは、当社及び子会社、並びに代理店を通じて海外で製品を販売しておりますが、欧州のRoHS指令(特定有害物質の使用規制)や中国版RoHS指令など、各国・地域の法的規制の影響を受けます。これらの規制を遵守できなかった場合や、将来的な法改正により対応コストが増加し、十分な対応が困難となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

このようなリスクを未然に防ぐため、当社グループでは、法令に適合した品質管理基準に基づき品質管理を実施するとともに、品質環境企画室を中心に関連部門と連携し、国内外の法的規制に関する情報を継続的に収集し、迅速かつ適切に対応できる体制の整備に努めております。

② 化学物質管理

当社グループは、生産活動において多数の化学物質を使用しており、万一、社外への流出事故が発生した場合には、社会的信用の失墜や補償・対策費用の発生、生産活動の停止などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。

こうしたリスクを未然に防ぐため、当社グループは、品質環境企画室が中心となって国内外の法的規制に関する情報を継続的に収集するとともに、社内関係部門及び生産委託先を含む全関係者が連携し、法規制の遵守と事故防止策の徹底に取り組んでおります。また、標準書・手順書に基づいた万全の対策を講じることで、リスクの最小化に努めております。

③ その他の環境規制・気候変動関連等

当社グループは、廃棄物削減、大気汚染防止、水質汚濁防止などの環境規制の適用を受けております。また、温室効果ガスの排出削減に向けた取り組みが全世界的に強化されております。そのため、当社グループは、地球環境の保全は「次世代への責務」と考え、環境負荷の低減を最重要課題のひとつとして多くの経営資源を投入し、環境整備に努めております。しかしながら、事故や自然災害より不測の環境汚染が生じる場合、また、予期しない規制等が設けられ、対応が遅れた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

生産活動における環境負荷の軽減については、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の欄にて、具体的推進体制を記載しております。

 

(5) 金融リスク

① 為替レートの変動

当社グループの生産活動、営業活動及び調達活動は、全世界を対象にしております。そのため、可能な範囲での地産・地消などで為替のバランスを図ることに努めておりますが、差額として生じた外貨建債権債務については、為替相場の変動によるリスクをヘッジする目的で、常時為替予約等で対策を講じております。

しかし、為替予約、為替バランスを図ることにより為替相場変動の影響を緩和することは可能であっても、影響を全て排除することは不可能であり、業績に少なからず影響を及ぼす可能性があります。

また、各主要市場に販売子会社を設立しているため、連結財務諸表作成上、各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は円換算しており、換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨の価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 金利の変動

当社グループは、金利の変動リスクを回避するための対策を講じておりますが、金利の変動は、業績に影響を及ぼす可能性があります。このため、有利子負債による資金調達を必要最小限に止めることで、リスクの回避に努めてまいります。

 

 

(6)財務リスク

① 長期性資産の減損

当社グループは、多額の有形固定資産等の長期性資産を保有しております。これら長期性資産の連結貸借対照表計上額については、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローにより残存価額を回収できなくなることの兆候を継続的にモニタリングしております。

将来キャッシュ・フローが回収できないと判断される場合には、減損を認識しなければならない可能性があります。

当社グループでは、こうしたリスクの兆候が認められた際には、各資産から得られるキャッシュ・フローの改善策について事前に十分に協議し、適切な対策の検討をしてまいります。

② 退職給付債務

当社グループは、日本の会計基準に従い、退職給付債務を処理しております。しかし、退職給付費用及び退職給付債務等の計算に関する事項(割引率、長期期待運用収益率等)で、実際の結果が前提条件と異なる場合、前提条件が変更された場合及び今後年金資産の運用環境の悪化があった場合は数理計算上の差異が発生いたします。これらの場合、退職給付費用及び計上される債務に影響を及ぼす可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 繰延税金資産

当社グループは、繰延税金資産について将来の回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しております。しかし、今後、経営状況の悪化などにより、一時差異等が将来の課税所得で回収できないと判断された場合には、法人税等調整額が増加し、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、当社グループでは成長性と収益性の向上を常に意識し、事業収支の安定(計画収支の実現)に全社をあげて取り組むことが最も重要であると考えております。

④ 会計制度、税制等の変更

当社グループが、予期せぬ会計基準や税制の新たな導入・変更により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、税務申告における税務当局との見解の相違により、予想以上の税負担が生じる可能性があります。

当社グループとしては、適時に専門家より制度改正に関する情報を入手し、適切な対応に努めてまいります。

 

(7)自然リスクやパンデミック

当社グループの製造拠点、営業拠点等が地震等の自然災害により多大な損害を受けたり、伝染病や感染症によるパンデミック等で通常の事業活動が困難となった場合、工場の操業停止や配送遅延が生じる可能性があります。また、当社グループが直接的に損害を受けなくても、お客様や取引先が損害を受けることにより生産・物流・販売等が計画どおりに実行できない可能性があります。

当社グループでは、地震災害発生時の迅速な初期対応及び業務の早期復旧を図るため、安否確認システムの導入、防災訓練の実施、事業継続計画(BCP)の策定を行っております。しかしながら、実際に災害が発生した場合には、当社グループの生産拠点での操業の中断、施設等の損害、多額の復旧費用が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

事業継続マネジメントについては、「サステナビリティに関する考え方及び取組」の欄にて、具体的推進体制を記載しております。

配当政策

3【配当政策】

 当社は、創立以来一貫して株主の利益還元を最も重要な経営課題のひとつと位置づけております。そのため、安定的かつ継続的な配当を実施することを基本方針として掲げており、1株当たりの年間配当金額は配当性向30%、もしくは40円のいずれか高い方といたします。

 また、事業活動により得られた利益は、主に内部留保資金として確保し、事業基盤の強化や成長のための投資に有効に活用してまいります。

 当社は、剰余金の配当について、株主総会決議または取締役会決議による期末配当及び取締役会決議による中間配当の年2回の配当を行うことを基本方針としております。

 なお、当社は、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定めのある事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる旨を定款に定めております。

 当期(2025年3月期)は、上記方針に基づき、利益(期末)配当金は1株当たり30円を実施することを決定いたしました。

 また、次期の配当については、年間1株当たり配当を40円(中間配当1株当たり10円 期末配当1株当たり30円)とさせていただく予定であります。

※当事業年度に係る剰余金の配当実績

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年11月7日

134

10

取締役会

2025年5月30日

402

30

取締役会