人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数43,781名(単体) 158,056名(連結)
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平均年齢44.8歳(単体)
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平均勤続年数23.1年(単体)
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平均年収8,630,560円(単体)
従業員の状況
5 【従業員の状況】
(1) 連結会社の状況
2025年3月31日現在
(注)従業員数は就業人員(連結会社への出向者を除き、連結会社からの出向者を含む)であり、臨時雇用者数(期間従業員、人材派遣会社からの派遣社員、パートタイマー、契約社員等を含む)は、年間の平均人数を括弧内に外数で記載しています。
(2) 提出会社の状況
2025年3月31日現在
(注1)従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む)であり、臨時雇用者数(期間従業員、人材派遣会社からの派遣社員、パートタイマー等を含む)は、年間の平均人数を括弧内に外数で記載しています。
(注2)平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
(注3)当社は、「日本」の単一セグメントであるため、セグメント別の従業員の状況の記載を省略しています。
(3) 労働組合の状況
連結会社においては、当社及び主たる国内関係会社の労働組合は全トヨタ労働組合連合会に加盟し、全トヨタ労働組合連合会を通じて全日本自動車産業労働組合総連合会に加盟しています。
なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。
(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
(注1)「管理職に占める女性労働者の割合」及び「労働者の男女の賃金の差異」は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。
(注2)「男性労働者の育児休業取得率」は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものです。前連結会計年度に配偶者が出産した労働者が、当連結会計年度に育児休業等及び育児目的休暇を取得することがあるため、取得率が100%を超えることがあります。
(注3)パート・有期労働者には、期間従業員、定年後再雇用者、アルバイト等を含みます。
(注4)「-」は集計対象となる従業員がいないことを示しています。
<D&I・女性活躍推進の考え方とこれまでの取り組み>
当社では、イノベーションの源泉は、異なる意見・アイデアを自由闊達に交わせる共創環境であると考えています。その環境を生み出すには、ダイバーシティ&インクルージョンが重要であり、これまでも、ヒトづくりの柱の一つとして「多様性」を掲げ、異なる知恵やアイデアを融合させることで、製品実現力を向上させ、会社の成長を促進してきました。特に、女性活躍推進においては、あらゆる階層や場面において、女性が男性と同じように意思決定プロセスに参画することで、男性多数の議論では出にくい発想や発言が加わり、より社会に喜ばれる価値が提供できるものだと考えています。しかしながら、当社では、全社員に占める女性の割合が約16%と男性と大きく差があります。これは、当社が技術・技能を中心とするモノづくりの会社であり、日本においては、理系・工業系を専攻する女性が少ないことに起因しています。そこで、2014年から女性活躍推進の専任組織を立ち上げ、CHROリードの下で女性の採用活動を強化し、女性の在籍比率を高める取り組みを進めるとともに、アンコンシャスバイアスを払拭する研修や女性のキャリアを後押しする人財育成、育児や介護の制度の拡充、柔軟な勤務制度の導入等にも取り組んできました。結果として、専任部門を設置した当初の女性管理職数は約40人でしたが、現在は4倍の160人にまで増加させることができました。また、部長格の女性も複数名輩出することができ、より多くの意思決定プロセスに女性が参画する場面も増えてきています。しかしながら、未だ管理職に占める女性の割合は低く、是正に向けて以下の通り取り組みを進めています。
<管理職に占める女性の割合>
当社においては、管理職に占める女性の割合は約2%であり、全社員に占める女性の割合約16%と比較しても低くなっています。この主要因としては、①在籍人員の年齢構成 ②職種における男女差の2点が挙げられます。
① 在籍人員の年齢構成
当社の、男性における40歳以上の比率は約65%に対し、女性におけるその比率は約45%となっており、女性の経験年数の短さが、管理職比率の低さにつながっています。これは、男性は、過去から安定的に採用していた一方、女性は約15年前に女性活躍推進を強化するまで、女性の入社者が少なかったことに起因しています。現在では、毎年一定数の女性に入社していただくべく、新卒の女性採用比率目標を事務50%、技術15%、技能30%と定めて取り組みを進めています。この目標値は、当社がターゲットとしている採用市場における女性比率と比較し、同等又は高い目標であり、応募フェーズからより多くの女性に選んでいただけるように採用PR等を強化しています。なお、各職種における応募時点での女性比率と入社時の女性比率は同等となっており、選考過程における男女の差はありません。
② 職種における男女差
当社では、2023年度まで、アシスタント業務を中心に行う職種として、「実務職コース」を設けていました。当コースを選択していた社員は約1,800人おり、その99%は女性です。全女性社員(事務・技術)の約6割が実務職であり、当職種では、昇格に上限があったため、多くの女性が非管理職に留まっていました。そこで、2024年度に実務職コースと総合職とのコースを統合し、旧実務職社員には自身の今後のキャリアを考える研修を計2回実施しました。昇格の上限も撤廃した結果、25年1月には旧実務職から新たに係長格の社員が40人生まれ、今後の管理職候補となる人財の育成が進んでいます。
<男女間賃金差異>
当社では、給与規程や賃金項目において性差はなく、同等の資格レベルであれば、人事制度上、男女で賃金格差が生じることはありません。
しかしながら、正社員における男女間賃金差異は68.9%であり、その主要因は、前述の女性の管理職の少なさに加え、家事育児等の両立における男女の差もあげられます。短時間勤務の取得者ならびに、夜勤・残業の免除対象者に女性が多いこと等も、月収や交替勤務手当・時間外労働手当の額に影響し、賃金の差につながっています。
家事育児等の両立における男女差を是正するために、当社では男性の育児参画を促進しており、子どもが小さいうちから男性が育児に従事できるよう、男性育児休業取得率と取得期間に目標を定めて取り組んでいます。
特に取得期間については、真に育児に参画してほしいという意図を込め、期間の目標を1カ月以上としています。子どもが生まれる予定のある男性社員に対し、会社が積極的に取得を呼びかけ、上司による個人面談を必須化した結果、2024年度の育児休業取得率(配偶者の出産に伴う公休を含まない)は、2020年度(9%)から約8倍の71.7%・平均73日となり、目標値を達成しています。なお、配偶者の出産に伴う公休を含む育児休業等取得率は、97.7%となっています。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
(1) 全体像
当社は創業以来、社会のため、お客様のために、事業を通じて社会課題解決に貢献するサステナビリティ経営を進めてきました。サステナビリティ経営の考え方は、当社の社是にもその精神が記され、脈々と受け継がれた当社経営の根幹であり、成長の原動力と考えています。サステナビリティ経営の着実な実践に向け、社会課題を当社の長期ビジョン、優先取組課題(マテリアリティ)に落とし込み、事業活動を通じてその解決に取り組んでいます。長期ビジョンでは事業を通して貢献できる分野を「環境」「安心」及び「共感」と設定しました。また、社会課題の中から、持続可能な社会実現のために重要度が高く、当社が貢献すべきテーマをマテリアリティに選定するとともに、各テーマに対し目標を定め、その達成に向けた取り組みを進めています。
昨年、社会課題及び当社を取り巻く事業環境の変化を踏まえ、マテリアリティの見直しを行いました。当社にとっての財務的影響と当社が社会に与えるインパクトの両観点から機会とリスクの特定を行い、また顧客、取引先、投資家、従業員等のステークホルダーとの対話を通じていただいた意見や期待を加味してマテリアリティを再設定しました。現在、マテリアリティごとの目標・指標や活動計画等を策定しています。なお、昨今のサステナビリティを取り巻く社会動向を踏まえ、サステナビリティ経営のガバナンス体制の強化を見据えて「サステナビリティ会議」を創設しました。
当社のサステナビリティ経営の推進に向けた基本的なマネジメント体制は以下のとおりです。
サステナビリティ経営推進体制
① ガバナンス
<責任機関(役割・権限、スキル等)>
当社にとっての財務的影響と当社が社会に与えるインパクトの両観点から機会とリスクの特定を行い、策定したデンソーグループのマテリアリティ案の審議及び活動のフォローアップと軌道修正を行う等、サステナビリティ経営の推進に責任をもつ機関としてサステナビリティ会議を設置しています。取締役副社長が議長を務め、経営戦略部が事務局を担っています。またマテリアリティごとに推進責任者(役員クラス)を構成メンバーとして任命しています。議長は、サステナビリティ担当役員の経験を有しており、また各マテリアリティ推進責任者も各マテリアリティに関する業務経験を有しています。加えて、マテリアリティの選定プロセスの参画や、最新の社会課題動向等の共有・議論等、同会議への参画を通じて、サステナビリティに関する専門知識・スキルを深めています。習得した専門知識やスキルを基に、社会への影響やリスク・機会の特定、及びそれに基づくマテリアリティの見直しに反映しています。
マテリアリティごとの目標・指標や活動計画の策定にあたっては、マテリアリティ推進責任部門が各専門委員会等で審議した目標・指標案や活動計画案をサステナビリティ会議へ報告・審議にかけます。サステナビリティ会議における審議事項は、必要に応じて経営審議会にて審議し、最終的に取締役会が承認し決定します。
リスクの特定にあたっては、「リスクマネジメント会議」が主体となり、関連部門に対して定期的にリスクの洗い出しやリスク低減計画の策定等を行います(詳細は「②リスク管理」を参照)。サステナビリティ会議はリスクマネジメント会議とリスクの情報を共有・連携をとりながら、マテリアリティ選定に向けたリスクの特定を行っています。
なお社会への影響やリスク・機会の特定を含むマテリアリティの見直しは年1回、また各マテリアリティ目標に向けた活動計画の進捗状況の確認は年2回実施しています。
<事業戦略・意思決定プロセスへの統合>
当社は、社会課題の解決を経営の目的のひとつとして位置づけ、現在、マテリアリティごとの目標・指標や活動計画等を検討しています。特に、環境・安心の重要戦略等については、「財務目標」だけでなく、社会への価値提供を可視化するよう「社会インパクト目標」の両観点から目標を設定しています。
<サステナビリティ関連指標と報酬の連動>
当社は、サステナビリティ経営への意欲向上を目的に、2022年度より取締役(非業務執行取締役及び社外取締役を除く)の業績連動報酬額の決定にサステナビリティ関連指標の達成度評価を導入しています。サステナビリティ関連指標の評価ウェイトは20%、指標の種類は「CO2総排出量」「環境・安心製品の普及」「従業員エンゲージメント」「海外拠点長における非日本人比率」「女性マネジメント比率」です。これらの指標の当該事業年度の目標に対して、達成状況を総合的に評価しています。
<情報発信・コミュニケーション>
当社はサステナビリティに関する情報(非財務情報)に関し、積極的に情報発信あるいはコミュニケーションを行っています。社外ステークホルダーに対しては、会社WEBサイトや統合報告書等の媒体、あるいは決算発表やダイアログデー等の対話の機会を通じて情報発信を行っています。
また社内に対しては、従業員の個人年度目標の設定において、自身が関わる社会課題とのつながりを見える化することで、当社のサステナビリティ経営の担い手としての意識を醸成しています。なお、職場におけるサステナビリティ浸透の牽引役として、当社では各部門1名、国内グループ会社は各社1名、海外グループ会社は各地域統括会社1名のサステナビリティリーダーを選任し、サステナビリティの浸透・定着・情報発信を図っています。
② リスク管理
当社では、多様化するリスクを最小化すべく、自社にとってのリスクを常に把握し、被害の最小化と事業継続の両面からリスクマネジメントを行っています。
具体的には、リスクマネジメント統括責任者「チーフ・リスク・オフィサー(CRO)」を議長とする「リスクマネジメント会議」を設置し、グループ全体のリスクマネジメント体制・仕組みの改善状況の確認、社内外の環境・動向を踏まえた重点活動の審議・方向付け等を推進しています。事業部、地域統括会社、国内外グループ会社においては、それぞれにリスクマネジメント責任者である「リスクオフィサー」「リスクマネージャー」を任命し、平時における経営被害の未然防止と有事における被害最小化に向けた対応力強化を推進しています。また、クライシス発生時(有事)に迅速かつ的確に対応できるよう「緊急事態初動対応マニュアル」を制定し、事態の重要レベル判断、報告基準、報告ルート、社内外対応の基本等を明確にしています。さらに、事態の大きさや緊急度によって専門の「対策組織」を編成し、責任機能部が対策リーダーとなり、被害の最小化に向けて機動的に対応できるようにしています。
2024年度は、取り巻く事業環境を踏まえて、当社の生命・環境・信用・財産・生産を毀損する可能性のあるリスクを抽出し、各リスク責任機能部にてその発生原因と発生後の被害拡大要因を洗い出し、それらを防ぐための未然防止策と初動・復旧対応策を明確にしました。その対策の実施状況を踏まえて、各リスク項目の残存リスクの大きさを影響度と発生頻度の観点から査定しました。その中で、特に残存リスクが大きく、リソースを投入し対策を推進するリスクを「重点リスク」に選定し、リスクマネジメントのさらなる強化に向けた2025年度の活動計画と目標を設定し、リスクマネジメント会議で決定しました。なお、重点リスクへの対策活動は、重点リスクそれぞれに会社目標として定量的な業績評価指標(KPI)を設定し、取締役会においてもその進捗状況を確認しています。さらに、これらのリスクマネジメントプロセスは、内部監査・外部機関による監査対象として、点検を実施しています。
また、当社は法令遵守及び倫理的な事業運営を最優先事項とし、コンプライアンスの意識向上に向けた活動にも注力しています。具体的には役員が率先してコンプライアンスを順守する姿勢と行動を示すとともに、各職場での定期的な教育とトレーニングを通じて社員に法令や規則順守の重要性の浸透を図っています。これらの取り組みを通じて、全従業員がコンプライアンスの重要性を認識し、法令遵守と倫理的行動を徹底する企業文化の醸成を目指しています。
(2) 気候変動
気候変動の危機が迫るなか、当社では、持続可能なモビリティ社会のあり方を模索し、2030年長期方針で掲げた「環境」の提供価値を最大化する目標に向けてサステナビリティ経営を加速させています。2019年に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」への賛同を表明し、気候変動が事業に与える影響とそれによるリスクと機会をシナリオに基づいて分析、事業戦略へ反映していくよう検討を進めています。
① ガバナンス
当社は、環境方針「エコビジョン2025」の実現に向けた短・中・長期の目標や、シナリオ分析結果を含む環境全般に関する課題と活動の進捗状況の共有、対応策を指示する等、デンソーグループ全体の環境活動推進に関し責任を負う会議体として、全社安全衛生環境委員会を設置しています。同委員会は取締役副社長が委員長を、安全衛生環境部が事務局を務め、年2回開催されます。事業に重要な影響を及ぼすと判断された案件(中期経営戦略、大型投資等)については経営審議会あるいは取締役会で審議しています。
特に「気候変動関連」については、デンソーグループのマテリアリティの1つとして設定しており、全社安全衛生環境委員会が審議・策定した目標・指標案や活動計画案はサステナビリティ会議及び経営審議会にて審議し、最終的に取締役会が承認し決定します。
また目標の達成状況のモニタリングは、全社安全衛生環境委員会のほか、サステナビリティ会議、経営審議会及び取締役会が行っています。
② 戦略
気候変動が事業に及ぼす影響の把握と気候関連の機会とリスクを具体化するために、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の外部シナリオをベンチマークとして参照しました。また、自動車産業のシナリオ分析を確認しつつ、自社の中長期戦略における事業環境認識と照合し、総合的にシナリオを想定の上、シナリオと自社中長期戦略との差異分析により気候関連の機会とリスクを抽出しました。
なお、上記シナリオの想定移行リスクはIEA「World Energy Outlook」の「SDS」「NZE」シナリオをそれぞれ推進的・野心的シナリオと定義し、範囲は2040年までのCO2排出量、炭素税、原油価格、再エネ率、新車電動車率を定量化し、自社戦略との差より機会とリスクを分析しました。また物理的リスクでは、IPCC第6次報告書の「SSP5-8.5」「SSP2-4.5」をそれぞれ鈍化、推進シナリオと定義し、気象災害、海面上昇、生態システム悪化、水食糧不足等を定性化し、自社戦略との差より機会とリスクを分析しました。
主なリスクと機会、重要項目への対応策は以下のとおりです。
主なリスク
主な機会
(注1)2025年6月11日時点における暫定値です。確定値は2025年9月末発行予定の「統合報告書2025」において記載予定です。
(注2)SOEC:Solid Oxide Electrolysis Cell(固体酸化物形水電解用セル)
(注3)SOFC:Solid Oxide Fuel Cell(固体酸化物形燃料電池)
<経営戦略への影響>
前述のとおり、2030年を想定した気候変動に対する機会とリスクの分析結果より、特にカーボンニュートラルの動きは当社の製品開発と生産に大きな影響を与えることが分かりました。
そのような状況を踏まえ、環境への目標を、野心的な「カーボンニュートラル」へと引き上げ、経営戦略に反映しました。
具体的には、会社の環境経営方針「エコビジョン2025」(2016年策定)に定めるCO2排出量削減計画に「カーボンニュートラル」の視点を追加し、モノづくり(生産)に関しては、「2025年度には電力のカーボンニュートラル(ガスはクレジット活用)・2035年度にはガスも含めたモノづくりにおける完全なカーボンニュートラル」を掲げ、当社が得意とする省エネルギー活動を継続するとともに、質がよく経済的にも最適な再生可能エネルギー由来電力の導入やクレジット活用等の取り組みを進めています。このような省エネルギーや再生可能エネルギー等CO2排出量削減に寄与する投資の加速に向けて、投資判断にインターナル・カーボンプライシング(ICP)を導入しています。
モビリティ製品については、電動化技術開発を推進することで可能な限りCO2排出量を削減し、さらには水素を使ってグリーンエネルギーをつくる技術等により、CO2をマイナスにすることで、社会全体のカーボンニュートラルを目指していきます。さらに環境への貢献と事業成長を両立させるために、収益性・成長性に加えCO2排出量/削減量も評価軸に据えて、事業ポートフォリオの入れ替えを定期的に議論し、推進しています。
このカーボンニュートラル戦略を着実に推進させる体制として、安全衛生環境部に専門部隊を発足させるとともに、工場の生産活動まで踏み込んだカーボンニュートラルな製造業を全社一丸となって実現するため、環境ニュートラルシステム開発部、水素事業推進部を設置しています。
一方、気候変動により増加する洪水等の物理的リスクに対しては、工場への被害やサプライチェーン分断による操業停止リスクの最小化に向け、工場(建物・構造物等)への災害対策の実施や部材発注先の複数化、F-IoTプラットフォームの導入等により、気象災害等による生産変動にも即座に対応できるグローバルな生産需給体制を構築していきます。
<財務計画への影響>
カーボンニュートラルを背景に、電動化技術開発の加速や水素燃料、バイオ燃料等の新燃料に対応した製品へのシフトが必要です。またモノづくりにおけるカーボンニュートラルに向けた、再生可能エネルギー由来電力の調達費用やCO2オフセットの証書、クレジットの購入も必要となります。したがって、財務計画には、電動化や新燃料対応等への研究開発費の増加や再生可能エネルギー等の導入関連費用を反映しています。
③ リスク管理
当社では、急速に変化する事業環境の中で、多様化するリスクを常に把握し、被害の最小化と事業継続の両面からリスク管理を行っています。気候変動関連のリスクについては、サステナビリティ会議が毎年1回、マテリアリティを見直し、全社安全衛生環境委員会が、サステナビリティ会議と連携してリスク・機会を含めた見直しを行い、重要項目の把握と対応を明確化しています。
なお、気候変動関連のリスク(物理的リスク)は、リスクマネジメント会議が特にリソーセスを投入して対策を推進する重点リスクの一つとして選定されており、全社リスク管理の観点からグループ全体でリスク対応を強化しています。
④ 指標及び目標
「エコビジョン2025」に基づく活動計画の進捗状況や社会からの要請・期待を踏まえ、2021年度より一層高い目標として「カーボンニュートラル」を掲げ、活動を開始しています。
目標については、2025年中期方針で明確化するとともに、優先取組課題(マテリアリティ)に関するサステナビリティ目標の一つとして会社経営目標に落とし込みました。前述の全社安全衛生環境委員会だけでなく、サステナビリティ会議で進捗状況をフォローアップし、経営審議会及び取締役会に報告しています。
なお、指標及び目標はデンソーグループ全体に効果的にアプローチするため、連結子会社(持分比率50%超)の排出量100%を対象とする、経営支配力アプローチに従って算定しています。
<Scope1・2 モノづくりにおける完全なカーボンニュートラルを達成>
製造工程のさらなる効率化によりエネルギー使用量を減らしてCO2排出量を減少させていくことや、太陽光等の再生可能エネルギーの利用、さらには、再生可能エネルギーを使って生成したグリーン水素の利活用によって、生産の過程で発生するCO2を削減し、モノづくりにおけるカーボンニュートラルを目指します。
これまでの実績及び従来の強みである省エネルギー活動を徹底的にやり切り、再生可能エネルギーの導入やクレジットの活用等により、2023年度にはCO2排出量を2020年度比–50%の目標を達成、2024年度も目標-75%を達成する見込みです。なお、確定値は2025年9月末発行予定の「統合報告書2025」において記載予定です。
<Scope3(上流) 当社とサプライヤーとの協働によりカーボンニュートラルを実現>
カーボンニュートラル実現を目指すため、サプライヤーとの対話を通じ、相互理解のもと、サプライヤーとともに活動を進めています。
具体的には、サプライチェーンの排出量を見える化した上で、サプライヤーと中期目標「CO2排出量を2030年度までに2020年度比25%( = 2.5%/年)削減」、長期目標「2050年度にカーボンニュートラル実現」を共有し、活動の推進をお願いしています。2021年10月には、当社の省エネルギーの進め方や事例をご覧いただけるショールームの常設、お客様・サプライヤーから行政機関・地方自治体等、現在までに延べ1,500名が来場しました。省エネルギー診断やエネルギー計測器の貸し出し等の支援により、サプライヤーの省エネルギーを促進しています。また、再生可能エネルギー導入支援や低CO2材(アルミ、樹脂材料等)の積極採用等の取り組みも行っていきます。
さらには、活動を通じて得たサプライヤーの困りごとや要望を取りまとめ、業界団体等へ提言することで、サプライチェーン全体の活動環境の整備を牽引していきます。
<Scope3(下流) クルマの電動化に貢献しCO2を可能な限り削減>
HEV・BEV・FCEV等の電動車の普及を支える製品・システムの開発を通して、クルマ使用時のCO2排出量削減に貢献します。また、自動車業界で培った電動化技術を空のモビリティにも応用し、CO2排出量削減への貢献に向けて取り組んでいきます。
<エネルギー利用におけるCO2排出量 再生可能エネルギーを有効活用する技術を開発・普及>
場所や時間の制約なく、エネルギーを高効率に利活用する技術を確立し、世の中に広く普及させることで、エネルギー循環社会の実現に貢献します。
例えば、クルマで培ってきた熱マネジメント技術と材料技術を応用して、水素から電気をつくるSOFCと、電気から水素をつくるSOECの実証実験を開始しました。今後様々な実証を通じて、グリーン水素エネルギーをムダなく使う「効率性」と、システムを安全に長期間使用できる「耐久性」を探求し、環境と経済合理性の両立を目指した開発に挑戦していきます。
環境パフォーマンスデータ/デンソーグループ(グローバル)
Scope1 排出量とその内訳 (千t-CO2)
(注)GHGプロトコル、IPCCガイドラインに基づいて算出
Scope2 排出量とその内訳
(1) マーケット基準に基づく排出量 (千t-CO2)
(2) ロケーション基準に基づく排出量 (千t-CO2)
Scope3 排出量内訳 (千t-CO2)
(注1)Scope2で計上
(注2)該当事業なし
CO2排出量算定方法
CO2排出量算定は見積法にて実施しています。算定時に使用した活動量及び排出係数は以下のとおりです。
排出係数
・Scope1:温室効果ガスインベントリのためのIPCCガイドライン/第2章:定置燃焼/表2.3、
IPCC第6次報告書(AR6)
・Scope2:環境省 温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度 算定方法・排出係数一覧
電気事業者別排出係数一覧、IEA Emissions Factors -2023 edition
・Scope3:「Scope3 排出係数一覧」を参照
活動量(Scope1・2)
Scope3 排出係数一覧
(3) 人的資本
① 人財の多様性の確保を含む人財の育成に関する取組
ⅰ) 戦略
<資本強化の取組概要>
当社で働くすべての社員の幸せと、会社理念の実現を両立し、持続的な企業価値向上を図ることが当社の経営の根幹です。そのため、人と組織のビジョン&アクション「PROGRESS」のもと、目指す人財像として「情熱で自己新記録に挑むプロフェッショナル」、目指す組織像として「多彩なプロが出会い・共創する舞台」を掲げ、人事施策・制度の改革等を通じ、人的資本の価値を最大化することを経営の中心に据えた人的資本経営を推進しています。
<当社の人的資本経営に対する想い>
当社は、1949年の創業以来、“人”を最も重要な資本と位置付け、人を大切にする経営を進めてきました。1954年、技術と技能の両輪を強化すべく技能者養成所を開設したことを皮切りに、人財の育成に力を注ぎながら、まだこの世に存在しないモノを生み出す力、すなわち「実現力」を高め続けてきました。その結果、180を超える世界初の技術・製品を生み出してきました。そしていま、変化の激しい時代だからこそ、改めて創業の原点を大切にし、人と組織が生み出す実現力を一層高めることにより、企業価値をさらに向上させていく必要があります。
人的資本経営の実践にあたっては、人財戦略を事業・経営戦略と連動させることが肝要と考えています。それは、人的資本の価値を高める活動(インプット)が、どのような結果(アウトプット)を生み出し、最終的にどのような事業的・財務的価値、そして社会への新たな価値創出(アウトカム)につながるかを明確化することです。これが、創業以来継承してきた「モノづくりはヒトづくり」という考え方そのものであり、当社の人的資本経営だと考えています。
<当社における人的資本経営の考え方(価値創造パス)>
活動(インプット):社員のキャリア実現支援や学び・成長促進、風通し良く活力ある職場づくり等、人と組織のビジョン&アクション「PROGRESS」として推進する人事施策・制度の改革です。時代・環境に見合わなくなった福利厚生等を見直し、原資を有効に生み出しながら、人的資本の価値向上に効果的な活動への投資を強化していきます。
結果(アウトプット):人の観点では、当社で働いて良かった、夢がかなったと実感する社員がより多くなること、つまり、社員エンゲージメントの向上です。組織の観点では、事業・経営戦略実現に必要な人財の質・量がより充足し、人財ポートフォリオの変革が進むことです。具体的なKPIを設定し、課題の明確化と対応スピードの向上を図ります。
提供価値(アウトカム):人の観点では、人的資本を最大限に磨き上げ、社会・お客様に対し価値を創出することです。組織の観点では、成長事業と総仕上事業のポートフォリオ入れ替えを通じて、環境・安心の理念の実現と収益性を両立すること、つまり事業ポートフォリオ変革です。経営として、当社で働くすべての人と組織が、社会・お客様に喜んでいただける価値を持続的に提供できているか、すなわち「人と組織の実現力」が高まっているかを検証するため、「人的投資生産性」を設定し、トレンドを確認しています。
人と組織の実現力(人的投資生産性)は、社員エンゲージメントの向上と、事業・経営戦略実現に必要な人財の質・量の充足(人財ポートフォリオ変革)によって高まると考えています。エンゲージメントの向上により、個人として高い目標に挑戦する人財の集団となり、人財ポートフォリオ変革によって組織として成果を上げる力がさらに高まるからです。そのため、この2点を人的資本経営で目指す結果(アウトプット)としてコミットしています。世界中で働く約16万人の社員のエンゲージメント向上は重要な経営課題の一つであり、サステナビリティ経営KPIに位置付け、グループ各社で実態を把握し、課題を可視化して改善に向けたアクションを重ねています。
ⅱ) 指標及び目標
デンソーグループでは、全社員・全職場を対象としたエンゲージメント調査をグローバルに実施し、調査結果を科学的アプローチで分析することで、どの要素が人と組織の実現力につながるエンゲージメント向上に寄与するかを見極めています。例えば、北米では、事務・技術職場の社員よりも製造職場の社員のエンゲージメントが低いことや退職率が高いことを踏まえ、製造部門の社員のキャリアの選択肢や育成ステップを見える化し、研修体系の整備を進めています。また、日本においては、職種・世代等、多角的な切り口で課題を特定し、全員総活躍に資するアクションにつなげています。結果として、2024年度は、北米地域で前年度比+1%、日本地域で前年度比+2%となる等、全体的に緩やかな改善が見られました。
人財ポートフォリオ変革全社戦略として取り組んでいる事業ポートフォリオ変革では、人財の質・量を充足させるための人財獲得・育成・最適配置を通じ、人財ポートフォリオ変革を実践しています。人財の質の観点では、当社においては、全社40領域で求められる専門性を計535分類に定義し、約15,000人の事務・技術系社員は、自身の専門性をどこでどのように伸ばしたいのか、上司との面談を通じて目標の明確化を行うとともに5段階で申告します。その上で、ソフトウェア・システム・デジタル・半導体等の各領域に人財育成コミッティを設置し、専門性の向上につながる育成・配置策を実行しています。
人財の量(社員数)の観点では、特に注力している電動化・ソフトウェア領域へ、採用強化と社内公募を合わせ2025年度までに約4,000人という大規模人財シフトを進めています。中でもソフトウェア領域では、ソフトウェアリカレントプログラムを通じ、2024年度までの実績として約220人の技術者がハードからソフトウェア技術者への転身に挑戦しました。2030年に向け、メカ・エレクトロニクス・ソフトウェア人財の最適なポートフォリオを実現しつつ、特に、社会・車両視点で事業をまたいだ最適な機能設計ができ、当社の技術開発の要となるシステム人財の増強を計画的に実行していきます。
全社員のITデジタル活用力強化も経営課題として推進しており、社員の内発的な挑戦意欲を大切にしながら、実践を通した効果の高い人財育成を行っています。24年度の実績として、チームで学ぶDX基礎コースは約5,300人の社員が自らの希望で受講しました。また、機械学習勉強会(より高度なAIの利活用)には約1,500人の社員が自主参加しました。加えて、自身のITデジタルスキルを他部門の課題解決に活用するデジタル越境チャレンジ(社内副業)においては、38人が挑戦を開始しました。ITデジタルツールの高度活用人財も41%に到達する等、取り組みを強化しています。
高い専門性を持ち、イノベーションと価値を生み出せる人財が、多様な事業・領域で活躍していることが当社の競争力の源です。以上の活動を通じ、事業・経営戦略の実現に必要な人財の質・量の充足を図ります。
結果(アウトプット)の目標KPIと実績
エンゲージメント向上率(肯定回答率) 対前年度比
女性管理職比率
今後も当社らしい人的資本経営に向けて人的資本への戦略的な投資を強化し、社員とチームの挑戦をさらに後押しすることで、人と組織の実現力を高め、企業価値を向上させるという新たな経営のステージを目指します。これからも、当社らしさを大切に、現場で人が育ち、社会課題解決に向けた新しい価値を生み出す人的資本経営を推進していきます。
② 社内環境整備に関する取組
ⅰ) 戦略
a) 安全衛生
デンソーグループとしての事業基盤の確立のためには、安全衛生管理の向上は必要不可欠です。
当社が制定した「安全衛生環境基本理念」(1969年)に基づき、「安全で働きやすい職場づくりこそ、人間尊重と高生産性を両立させ得る最善策」という方針のもと、デンソーグループにおける安全衛生の継続的な向上に取り組んでいます。
b) 社員とともに進める健康づくり
心身の健康は、いきいきと働くための源であり、社員とその家族の幸せに不可欠なものです。当社では、社員の健康増進を経営課題の一つと位置づけ、「健康経営(注)」を推進しています。
2016年9月に「健康宣言」を発表するとともに、健康増進に向けた社員の意識向上と職場単位の活動促進を図るため、心身両面の健康施策の充実に取り組んでいます。
また、国内外のデンソーグループ各社で健康経営を推進するため、2019年2月に「デンソーグループ健康経営基本方針」を策定しました。この基本方針をグローバルに共有し、各国・各社の実情を踏まえた健康経営を実践することで、一人ひとりの健康意識(ヘルス・リテラシー)を向上させ、より働きやすい環境づくりにグループ全体で努めていきます。
(注)健康経営:NPO法人健康経営研究会の登録商標
ⅱ) 指標及び目標
a) 安全衛生
<デンソーグループ安全衛生管理状況>
労働安全衛生上の指標である、休業度数率(延べ労働時間100万時間当たりの死傷者数)において、デンソーグループは同業他社と比較し良好な状態を継続しています。
休業災害度数率 実績
(注)「厚生労働省 労働災害動向調査(事業所調査(事業所規模100人以上)及び総合工事業調査)の概況」の「輸送用機械器具製造業」より抜粋
<目標及び実績>
災害の原因となった危険源の種類のうち、社会的災害防止の要求が強い、機械作動部、重量物、薬液、高所、感電等による災害を1種災害と定義しました。「2020年度比で1種災害件数の半減」を2025年度中期目標として設定しています。
2024年度は部門トップによる安全コミュニケーション巡回、チョコ停リスク低減、高リスク設備の爆発火災防止点検等、全員参加の安全衛生活動を推進しました。結果、重大災害・爆発火災はグループ全体で0件を継続できましたが、1種災害件数目標は国内グループで未達となりました。今後苦戦拠点の支援を強化するとともに、全体の更なるレベルアップに向け「人の弱みを補う設備防護対策・改善の促進」を進めていきます。
1種災害件数(単位:件)
b) 社員とともに進める健康づくり
当社オリジナル指標「生活習慣スコア(注)」を2024年度にリニューアルし、国内グループ共通の健康経営指標として「健康スコア」を導入しました。「健康スコア」は、健康診断時の問診回答内容に基づき、一人ひとりの健康行動の実践状況を見える化した指標です。健康経営KPIを「健康スコア8個の評価項目の内、6個以上達成している社員割合」とし、国内グループ全体の目標値を35年度までに60%以上の社員が達成することと定めて、活動を実施しています。
各職場へは、健康推進リーダー経由で健康経営KPIの職場別集計値を通知し、効果的な健康アクションプランの立案を促進しています。また個人に対しては、健康診断の結果に基づき、各個人の強みや弱み、同年代の比較・今後取り組むべきアドバイスを記載した通知書を配布しています。さらに、各健康サポートセンターと製作所や食堂とも連携し、啓発支援を実施しています。
(注)生活習慣スコア:厚労省策定の方針である「健康日本21」で目標値が設定されている「健康行動」と「健康データ」に該当する、個々人の健診データより点数化した指標で、2017~2023年度に当社のみで運用し、全社平均値を会社経営目標としていました。
<健康スコア6個以上達成率の実績と目標値(国内デンソーグループ)>
健康スコア8項目