2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

(1)リスクマネジメント体制

事業活動を進めていく上で、様々なリスクが財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性が考えられます。当社グループではこうしたリスクを回避、あるいはその影響を最小限に食い止めるため、「リスク管理・事業継続方針」に基づき、全社リスクマネジメントの強化に取り組んでおります。取締役会及び全社のマネジメントシステムを統括する「EHSS統括委員会」のもと、「リスク管理・BCM委員会」(年4回開催)を組織しており、当社グループにおいて発生する可能性のある重要リスクを抽出した上で、発生頻度と事業に与える影響度の側面からリスクマップにて評価し、対策を管理・推進しております。また、各マネジメントシステムと連携し、半期に1回、全社リスクマネジメントの活動状況やリスク評価・管理指標について、EHSS統括委員会へ報告しております。

 

(リスク管理・事業継続方針)

「企業目的」「経営基本方針」などの目的・方針を実践し、当社グループにおけるリスク管理と事業継続マネジメントを推進するため、以下のとおり定める。

リスク管理

●グループ一体となったグローバルなリスク管理を推進する。

●重要リスクを特定・評価するとともに、損失を最小限に抑えるための対策を行う。

●重要リスクの評価や対応状況を定期的に見直し、経営陣と共有する。

●事案発生時には速やかに情報収集・報告を行い、適宜、事業継続・復旧計画に移行する。

事業継続

●従業員及び関係者の安全確保・安否確認を最優先事項とし、火災や環境汚染などの二次災害の発生防止に努める。

●サプライチェーンを維持するため、迅速な生産復旧・事業復旧をはかる。

●会社として求められる社会的責務の遂行をはかる。

●事業継続マネジメントの推進及び復旧活動は、経営陣の指揮のもと全社一丸となって取り組む。

●事業継続計画を事業環境の変化に応じて定期的に見直し、事業継続マネジメントシステムの継続的な改善に努める。

 

(リスクマネジメント体制図)

 

(リスクマネジメント活動概要)

 

(2)事業等のリスク

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。各リスクについて、影響度と発生頻度を「大」「中」「小」の3段階で評価しております。影響度については、社内で定めた指標に基づき、財務、事業中断、評判・イメージ、安全・人命のいずれかの観点から評価しております。ただし、以下はすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された項目以外のリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。

なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

経営戦略リスク

(1) 事業戦略・市場変動に関するリスク

発生頻度:中

影響度:大

 

 

 

 

 

 

内容

当社グループは注力市場として「自動車関連分野」、「産業民生機器関連分野」、「海外市場」を、また注力商品として「パワー」、「アナログ」を掲げるなど、より成長が見込める市場、あるいは当社グループの強みを発揮できる市場や技術に、重点をおいております。こうした重点分野においては、今後グローバルな競争がより激化する可能性があり、コストダウンの限界を超えた価格競争や熾烈な開発競争に巻き込まれる可能性があります。

また、社会ニーズの様々な変化や各国の政策・規制等により市場成長の鈍化や市場の縮小が起こる可能性があります。例えば、電気自動車の市場成長の鈍化は、それらに採用が進むパワーデバイスを製造する当社グループにおいてリスクとなり得ます。

こうした市場の動向や競争環境の変化により、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローが悪影響を受けるリスクがあります。

主な対策

このようなリスクに対し、顧客ニーズを先取りする提案型の企画・開発体制にするために、マーケティング本部を新設しました。これにより、システムレベルで顧客ニーズを先取りし、当社グループが強みを持つ技術領域を中心とした新製品・新技術の開発を進め競争力を高めております。具体的には以下の通りとなります。

1.マーケティング本部を①マーケティング機能、②Field Application Engineer (FAE)・Application Engineer (AE)機能、③デジタル(Web)マーケティング機能、④マーケティングコミュニケーション(マーコム)機能から組織しました。

2.また、①マーケティング機能をシステムとプロダクトに分離し、システムマーケティングはシステム、アプリケーションレベルで戦略策定・提案活動を行い、プロダクトマーケティングは顧客ニーズを捉え商品仕様に落とし込んだ商品企画を行う体制へ移行します。

3.開発された商品は顧客開発動向を熟知した②FAE・AEが最適なソリューションとして顧客に提案し、きめ細かな技術サポートを担当します。

4.これらの活動は③デジタルマーケティングと連動し、より広範な顧客接点を形成し、技術課題解決サイト「Engineer Social Hub」等を通じて顧客技術課題のより迅速な解決を強化します。

5.④マーコムは新商品、システム提案を様々なメディアで世界中の顧客に発信します。

このように複数のマーケティング機能が相乗的に機能することでカスタマーサクセスの向上を飛躍的に進めます。特に昨今、環境変化が激しい自動車市場による売上への影響を受けるリスクに対して、これまで注力市場としていた自動車、産業機器関連市場に民生市場を加え、特定の市場に偏るリスクの低減を進めます。各市場においては重点アプリケーションを選択し資源を集中して活動してまいります。

(2) M&Aリスク

発生頻度:中

影響度:大

 

 

 

 

 

 

内容

当社グループでは企業価値の向上を目的として、将来的な事業展望を見据えた既存事業の拡大や、既存技術を元にした新規分野への進出、及び新規技術の獲得や有望な人財の確保を視野に入れたM&Aをワールドワイドに検討・実施していく必要性があると考えております。一方、買収前のデューデリジェンスで検証すべきガバナンス・マネジメントの仕組みや体制、業務体制、シナジー仮説などの検証が不十分であると、買収見積額が実際の価値を上回ってしまい、結果的に損失を被る事態にもなりかねません。

買収後においてもPost Merger Integration(PMI)が適切に行われず、想定外の事態の発生や市場動向の著変等が原因で、買収事業が所期の目標通りに推移せず、場合によっては損失を生む可能性があります。

主な対策

M&Aに当たっては、当社の事業戦略に沿った買収候補企業の探索を事前に行います。

実行段階においては、社内に専門のプロジェクトチームを組成するとともに外部アドバイザーを起用して第三者視点を織り込んで十分に調査・検討を行った上、多段階の審議を通じて決定プロセスの適正性を確保しております。

また、買収後のPMIを有効なものとするためにも、買収の実行段階からPMIの視点を入れ計画を策定、実行するとともに、買収事業の目標達成状況をモニタリングし、事業環境の変化等には戦略の見直しを行うなど適時に対応することとしております。

 

 

外部環境リスク

(3) 為替リスク

発生頻度:中

影響度:大

 

 

 

 

 

内容

当社グループは開発・製造・販売の拠点を世界各地に展開しており、多通貨での収益・費用及び資産・負債が発生しております。各拠点の会社通貨の財務諸表への換算、連結財務諸表への円換算は為替レートにより変動し、業績及び財政状態に影響を与えます。

また、当社グループは日本、アジア及びヨーロッパにて生産活動を行うとともに、世界市場において販売活動を行っております。このため、生産拠点と販売拠点の取引通貨が異なり、常に為替レート変動の影響を受けております。概していえば、円高の場合は業績にマイナスに、円安の場合にはプラスに作用します。

主な対策

為替変動リスクを軽減するため、外貨建ての営業債権に対して、一定程度の為替予約を行っております。

(4) 税務リスク

発生頻度:中

影響度:中

 

 

 

 

 

内容

当社グループは開発・製造・販売の拠点を世界各地に展開しており、各国税務当局から追徴課税を課されるリスク、移転価格税制による二重課税リスク、それらの発生に伴い、企業の信用が毀損するリスクがあります。

主な対策

ロームグループ税務方針を制定し、本社並びにグループ各社・関連部門が連携し、各国・地域の税関係法令を遵守し適正な納税に取り組んでいます。税務リスクを認識した場合は必要に応じて外部専門家への助言を求めるとともに、各国・地域の税務当局との信頼構築と良好な関係の維持に努めています。移転価格税制に対しては各社の機能・リスク及び資産に応じた利益配分によって独立企業間価格を算定し、適正な国際間取引を行うことに努めております。

(5) 金融市場変動リスク

発生頻度:中

影響度:中

 

 

 

 

 

内容

当社グループでは、金融市場の様々な変動リスクにより、金融資産の減少や資金調達コストの増加が生じる可能性があります。

主な対策

主要な金融資産である預金は高格付金融機関への預け入れを原則とし、債券等も含めて安全性の高い金融商品を保有しております。資金調達に際しては目的・期間などを考慮し、調達コストの低減に努め、銀行借入や社債発行などを行ってまいりました。今後も資本効率、キャッシュ創出力を向上させ、手元資金を活用するとともに、金融市場・金利動向に応じた調達手法を活用してまいります。

(6) 自然災害に関するリスク

発生頻度:小

影響度:大

 

 

 

 

 

内容

当社グループは日本のみならず世界各地で開発・製造・販売活動を行っており、地震や洪水等の自然災害の発生による稼働率の低下など、当該地域の生産や営業拠点が損害を受ける可能性があります。また、これらのリスクが複数の地域で同時に発生する可能性があり、当社グループのみならず、顧客やサプライヤーなども含めたサプライチェーン全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

当社グループでは、リスク分散のために生産ラインを世界の複数拠点に配置するなどの対策をとっております。また、リスク管理・事業継続方針のもと、各拠点で活動しており、中でも生産機能を持つ国内外の主要拠点では、外部専門機関と協力し、自然災害、感染症、安全、操業・経済・政治リスクの観点からリスクアセスメントを行い、工場ごとにトップリスクを特定・分析・評価しております。その上で、対策委員会等を組織し、事業継続計画の立案や、それに基づく訓練など、有事に備えた様々な取り組みを行っております。

顧客に対する供給維持対策としましては、稼働縮小や一時停止に対応するため、一部の機種を当社グループ他拠点及びOSAT(※)への移管を進め、更にフレキシブル生産ラインや省人化ラインの開発など、起こり得るリスクの低減に向けて長期視点で対策に取り組んでおります。

※ OSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test)

半導体製造における後工程である組み立てとテストを請け負う製造業者のこと。

 

 

(7) 気候変動に関するリスク

発生頻度:中

影響度:大

 

 

 

 

 

内容

世界的な気候変動により、過去に例のない異常気象による被害、炭素税の導入やステークホルダーからの要請への対応に伴う想定を超える費用の発生、また、リスクの顕在化に伴うブランド価値の低下等、事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

環境課題について、2021年4月に「ロームグループ環境ビジョン2050」を策定し、「気候変動対策」、「資源循環型社会の実現」、「自然サイクルと事業活動の調和」を目標として設定し、取り組みを進めております。当社グループでは、気候変動対策に関して、継続的な省エネ施策に取り組むことによる温室効果ガス排出量の抑制に努め、更に太陽光発電を含めた再生可能エネルギーの導入に取り組むなど、グループ全体において気候変動対策を推進しております。

2021年9月に脱炭素社会実現に向けた「2030年中期環境目標」を改定しました。同時に、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)の提言に賛同し、TCFD提言に沿った情報開示を行っております。

また、2022年4月には事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーとすることを目指す国際企業イニシアティブ「RE100」に加盟しました。

※気候変動に関するリスクや対応の詳細は、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動」をご参照ください。

(8) 地政学リスク

発生頻度:大

影響度:大

 

 

 

 

 

内容

ロシア・ウクライナ問題の長期化、台湾海峡や南シナ海、中東における軍事的緊張の高まり、米国・中国の二国間関係、米国関税政策など、各国・地域の国際関係及び通商環境は不確実性を増しております。グローバルで事業を行う当社グループにとって地政学リスクは事業撤退や操業停止など直接的な生産・営業活動への影響だけでなく、材料調達や顧客との取引などサプライチェーン全体に影響をもたらす可能性があります。

また、あらゆる産業の製品に使用される半導体をめぐっては各国・地域が経済安全保障上の重要物資として保護主義的な政策を進めるとともに通商規制を拡大しており、それらに適切に対応できなければ、事業競争力の喪失のみならず行政罰や法的制裁により当社グループの事業活動や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

当社グループでは、有事における従業員の安全確保や事業継続を主な目的として、2024年8月にリスク管理・BCM委員会の傘下に「経済安全保障専門部会」を立ち上げました。また、専門部署である経済安全保障室を中心に全社の各種マネジメントシステム、関連部署や各地域の事業拠点と連携して、経営に影響を及ぼす可能性のある地政学リスクについて事業への影響を最小限に抑えるため、定常的な情報収集やモニタリング、リスク対策を実施しております。

また、半導体関連製品の輸出規制に関しては、全社の関連部署からなる輸出管理専門部会が弁護士と連携しながら適正な安全保障輸出管理を実施しております。

 

 

経営基盤リスク

(9) コンプライアンスリスク

発生頻度:小

影響度:大

 

 

 

 

 

内容

当社グループでは、日本のみならず世界各地で開発・製造・販売活動を行っており、世界各地において適用される競争法、腐敗行為防止法制等の法規制を遵守する必要があります。

これらの法規制に違反した場合、課徴金の支払い、事業活動の中断、ブランドイメージの毀損等により、当社グループの事業や業績に重大な悪影響を及ぼすおそれがあります。

また、当社グループは研究開発活動や事業運営において、公的研究費や公的資金を活用しており、万が一、目的外使用等が判明した場合には、返還義務や行政処分、社会的信用の毀損が発生し、企業価値に影響を及ぼすおそれがあります。

主な対策

当社グループでは、EHSS統括委員会の傘下にあるコンプライアンス委員会が主体となって倫理マネジメントシステムを構築・運用することにより、当社グループにおけるコンプライアンス違反のリスクを管理するとともに、その防止をはかるために、主要なものとして以下の施策を実施しております。

①社内規定の整備・運用

当社グループでは、法令を遵守するために、各種社内規定を整備するとともに、法令の領域ごとに主管する部門を定め定期的に法令の制定及び改正の情報を収集・調査を行うことで、これら社内規定の適時適切な見直し等を行っております。

なお、当社グループにおいては、日々の事業活動のなかで遵守すべき倫理上の基本的なルールを明らかにした「ロームグループ行動指針」を当社グループ全体に展開し、法令のみならず、倫理に違反した行為の未然防止にも努めております。

②教育・啓発活動の実施

当社グループでは、当社グループ全体のコンプライアンス意識の啓発のための施策として、全従業員向けコンプライアンス教育、役員向けリーガルセミナー及び階層別コンプライアンス教育を年に1回実施するほか、必要に応じ各種個別法令別の教育を実施しております。

③内部通報制度の整備・運用

当社グループでは、コンプライアンス体制の実効性を確保するため、内部通報制度として、国内グループ会社においては外部の法律事務所を窓口としたコンプライアンス・ホットラインを設置し、全従業員からコンプライアンス違反に関する通報・相談を受け付けております。また、海外グループ会社においても、各社のコンプライアンス・ホットライン窓口と合わせて、各社の役員の不正行為又はそのおそれがある場合に、その内容を当社に通報できるグローバルコンプライアンス・ホットラインを設置しております。加えて、当社グループのサプライヤー様との公正な取引を促進するため、「お取引先様(サプライヤー様)向けコンプライアンス・ホットライン」を設置しております。

また、公的研究費・資金の受給については、コンプライアンス委員会の下に「公正研究・開発専門部会」、「公的資金管理専門部会」を設置し適正な管理・監査体制を構築するとともに、社内外からの相談・通報窓口の設置や社内での教育・啓発などを実施しております。

(10) 知的財産に関するリスク

発生頻度:中

影響度:中

 

 

 

 

 

内容

当社グループでは、他社製品と差別化できる製品を製造するために様々な新技術やノウハウを開発し、世界中で製品の製造・販売を行っております。これらの製品の製造・販売について、万が一他社の知的財産権の侵害による紛争が生じた場合、知的財産権の侵害による製品の差止や損害賠償の支払い、若しくは和解金の支払いなど、当社事業に影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

当社グループにて使用している新技術やノウハウが他社の知的財産権に抵触することを防止するために、当社グループでは、従業員に対する知的財産の教育を少なくとも年1回実施し、従業員が他社知的財産の尊重に関する正しい認識を持つように努めております。また、製品・技術の開発時において参照される社内規定に、知的財産に関する項目を組み込むことにより、新しい商品・技術の開発時において必ず知的財産に関する確認が行われる仕組みとしております。

 

 

(11) 環境規制リスク

発生頻度:中

影響度:中

 

 

 

 

 

内容

当社グループが事業を行うあらゆる領域において、排気、排水、有害物質の使用及び取扱い、製品含有化学物質の管理、廃棄物処理、土壌・地下水汚染等の調査並びに環境、健康、安全等を確保するためのあらゆる法律・規制を遵守しております。しかしながら、事前に予期し得なかった事態の発生などにより何らかの法的責任を負う場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

当社グループでは、環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001に準拠した環境マネジメントシステムをグループ全体で構築し、運用することで環境負荷削減をはじめとする環境保全に向けた継続的な環境改善を進めております。取り組みに当たっては、当社に設置した「環境保全対策委員会」が中心となり、法令や規制等に基づく生産や各拠点における活動・サービスに起因する環境影響を管理し、拠点ごとの内部監査で明らかになった改善点などをグループ各社に水平展開を行っております。

(12) 人財確保に関するリスク

発生頻度:中

影響度:大

 

 

 

 

 

内容

当社グループは、設計技術、製造技術、品質保証技術、ソリューション提案能力を積み重ね、事業を拡大してきました。近年、その事業活動を支える人財の確保はますます重要性を増しています。国内では、雇用環境の変化や少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少が進行しており、将来的には専門性の高い人財の獲得が一層困難になることが懸念されます。

また、採用活動を取り巻く環境の変化に加え、働く人々の価値観やキャリア志向の多様化により、従来型の雇用慣行や育成モデルでは対応しきれない場面も増えています。社内においても、世代間の意識やスキルギャップへの対応、知見の継承、次世代人財の計画的な育成といった観点で課題が顕在化しつつあります。

今後は、持続的に人財を確保・活用していくため、組織の柔軟性や対応力を高めるとともに、人的資本への投資を中長期的な視点で継続的に行っていく必要があります。これらの課題に対して、戦略的な人財マネジメントが不可欠となっております。

主な対策

当社グループでは、変化する雇用環境や多様化するキャリア志向に対応し、従業員一人ひとりが自身の個性や強みを活かして長期的に活躍できるよう、キャリア支援体制の整備に注力しています。高度な専門スキルを有する従業員をその道の第一人者として認定する「スペシャリスト職制度」や、自発的な異動を促す「ジョブポスティング制度」を通じて、多様なキャリアパスの実現を支援しております。

また、将来を担う若年層の定着に向けた支援体制の強化や、豊富な知見と経験を持つシニア層の活躍推進も、人的リソースを持続的に活用していく上で重要な施策です。さらに、技術革新や事業環境の変化に柔軟に対応するため、従業員一人ひとりのリスキリングや学び直しを支援する制度の整備も進めております。

加えて、世代を超えた知見の継承やスキルギャップの解消にも取り組み、組織としての対応力と柔軟性を高めていきます。また、従業員が心身ともに健康に働き続けられるよう、健康経営の観点から各種施策を推進しております。

これらの取り組みを通じて、従業員が自己成長と組織貢献を実感し、その成果が適切に認められることで、エンゲージメントの向上と人財の定着につなげてまいります。

(13) 情報セキュリティに関するリスク

発生頻度:中

影響度:大

 

 

 

 

 

内容

当社グループでは、事業活動において、当社グループが保有するもののみならず、ステークホルダーの機密情報及び個人情報を保有しこれらを利用しております。また、近年当社グループでは、業務効率や生産性の向上、イノベーションの促進等を実現するため、生成AIをはじめとするDXツールを積極的に導入・活用しています。

一方で、企業を標的にしたサイバー攻撃や、退職者による機密情報の持ち出し・不正利用、国外への技術流出といった情報セキュリティリスクは日々高まっています。また、近年ではプライバシー保護及び経済安全保障の観点から、各国における個人情報保護法令やデータ保護規制の制改定や運用強化、セキュリティ・クリアランス(適格性評価)制度の整備も進んでおり、企業にはますます高度な情報管理能力が求められております。

情報は企業経営の源泉であり、ステークホルダーからの信頼獲得及び当社グループの持続的成長を実現するためには、従業員一人ひとりの情報リテラシーの向上のみならず、技術的・物理的なセキュリティ対策を多重的かつ網羅的に実行することが急務となっております。

これらの対策が不十分であった場合、情報の漏えい・不正利用、システムダウンによる事業停止、法令違反といった重大事故が発生する可能性があります。また、これらの事故により、当社グループのブランドイメージの毀損、社会からの信用失墜、民事上・刑事上の責任及び行政罰による多額の費用負担及び事業活動の差止めなど、当社グループの事業、業績、財政状況に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

 

主な対策

当社グループでは、事業活動の中で取扱う当社グループ及びステークホルダーの機密情報や個人情報について、全社的に情報マネジメントシステム(情報管理のPDCAサイクル)を構築し、統括組織である情報管理委員会によって定期的に当該システムの運用状況をモニタリングし、情報セキュリティリスクの把握及び改善活動を行っております。また、当社グループでは、情報管理委員会の定める目標・方針に従い、組織的・人的・技術的・物理的の4つの側面から、網羅的に情報セキュリティを確保しております。

まず、「組織的施策」として、情報管理にかかる全社方針及び社内規定(情報管理方針、サイバーセキュリティ管理規定、機密情報管理規定、プライバシーポリシー、個人情報保護規定等)を制定しております。これらのルールに従い、グループ各社において情報管理責任者や具体的な情報管理方法を決定・運用し、定期的に内部監査で活動評価を行うことにより、グループ全体で情報管理水準の標準化及び向上をはかっております。また、本社及び国内外の事業上重要な拠点を中心に、情報管理の国際標準であるISO27001やドイツ自動車工業会による情報セキュリティ評価「TISAX (Trusted Information Security Assessment Exchange)」の認証取得・認証範囲の拡大に継続的に取り組んでおります。

次に、「人的施策」として、年次教育や階層・役割別研修、フィッシングメール訓練等の活動を定期的に実施することで、役員・従業員の情報リテラシーの維持・向上に努めております。

また、「技術的施策」として、外部専門機関による24時間365日体制で情報端末の監視及びアクセスログの収集や、脆弱性診断・是正対応、マルウェア対策、仮想事例を用いたインシデント対応訓練等を実施し、サイバー攻撃や内部不正による情報漏えいの予兆を早期に発見・対処する体制を整備しております。

そして、「物理的施策」として、IDカードや監視カメラ、セキュリティゲート等による当社構内、及び入場制限エリアへの入退出管理、施設内のゾーニング、機密情報・個人情報を含む各種媒体に関するアクセスコントロールを多重的に実施することにより、社外の第三者はもちろんのこと、社内の業務上知る必要のない者(Need-not-to-know)による機密情報、及び個人情報の持ち出し・混入、不正利用を防止しております。

(14) 人権リスク

発生頻度:小

影響度:大

 

 

 

 

 

内容

世界的な人権配慮の高まりにより、当社グループだけでなく調達先から顧客までのサプライチェーン全体で人権配慮が求められております。特に開発途上国における強制労働や児童労働、低賃金、職場や地域における安全衛生配慮などが不十分な場合、社会的な信頼の損失につながる可能性があります。

また各国や国際団体等で人権関連のガイドラインや法規制の制定や執行が進む中、サプライチェーンを含めた当社グループの人権に関するリスクを特定し対応しなければグローバルで事業を行えなくなる可能性があります。

主な対策

当社グループはグローバルに事業を展開する企業として、人権が尊重された持続可能な社会の構築が重要との認識のもと、国連グローバル・コンパクトなどの国際原則・規範を支持・準拠し、尊重しております。また、ロームグループ人権方針を定め人権尊重への取り組みやデューデリジェンスに取り組むことを宣言しております。具体的には従業員やサプライヤーを対象としたホットラインの整備、英国現代奴隷法に関する声明の発行等が挙げられます。ホットラインの周知や人権に関する基礎的な理解の促進に向けては、全従業員を対象としたe-learningによる啓発活動を実施しております。

また当社グループだけでなくサプライチェーン全体でその取り組みを進めており、RBA行動規範などの国際規範に基づき当社グループやサプライヤーの労働状況や取り組みに問題がないことを監査や調査票を通じて確認し、必要に応じて改善を要請しております。また、販売代理店を通じた販売等においても、その供給先が各種法令のみならず、人権に関する準則等に違反しないことを誓約いただくなど供給先においても人権侵害が生じないように取り組んでおります。

<当社グループが支持する国際原則・規範等>

国連グローバル・コンパクトの10原則

世界人権宣言

国際労働機関(ILO)「労働における基本原則及び権利」

国連ビジネスと人権に関する指導原則

OECD多国籍企業行動指針

ISO26000

RBA行動規範

責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン

 

事業遂行リスク

(15) 研究開発活動リスク

発生頻度:小

影響度:大

 

 

 

 

 

 

内容

エレクトロニクス分野における研究開発は激しいグローバル競争の中にあり、新製品等の開発の遅れは競争力の低下に直結し、新市場を失うリスクにつながります。

研究開発の遅れを招く要因として、人財の散逸や好適人財の獲得不足による停滞、人財の画一性による視野狭窄、技術の陳腐化による劣敗、規制逸脱やコンプライアンス違反がもたらす活動停止といった具体的なリスクが想定されます。いずれのリスクも、将来の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

当社では、5年程度先を見据えたリソースの重点配分に留まらず、長期的ビジョンに基づく新規分野へのリソース配分を担保し、シームレスな持続的成長につながる研究開発活動の実現を目指しております。多様な人財を獲得しつつエンゲージメントを高め、社内外の有機的な連携や不断のテーマ見直しを行うことで、時代とニーズを先取りするアクティブな研究開発を展開します。加えて、適法かつ公正な研究開発体制を維持することで、インシデントリスクを未然に回避する研究開発を継続します。

また、10年後あるいはそれ以上先の将来に関しては、国内外の多くの大学との共同研究など、外部との連携を強化しております。更に、オープンイノベーションの取り組みとしてCVC(Corporate Venture Capital)を実施しております。

(16) 製品の欠陥リスク

発生頻度:中

影響度:中

 

 

 

 

 

内容

当社グループでは、企業目的で「われわれは、つねに品質を第一とする」を基本理念に掲げており、厳しい品質管理のもとに生産を行っておりますが、すべての製品について欠陥がなく、将来において販売先からの製品の欠陥に起因する損害賠償請求等が発生しないという保証はありません。万一、損害賠償請求があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

当社グループでは、開発本部及び各事業本部の品質部門が設計品質からつくり込み品質を保証しております。

なお、品質本部は、開発本部及び各事業本部の枠を超えた全社の品質保証システムの構築や情報展開及び品質管理業務の監視を行っております。

また、社外で頻発している品質コンプライアンス違反に対するリスク低減を目的に、品質保証部が主導となり、本社及び各生産拠点にて専門部会を立ち上げ、遵守活動を進めております。

開発本部及び各事業本部における新製品開発では、顧客要求を満足する安全で、信頼のおける製品をタイムリーに提供するため、開発検討、設計審査、初期流動、量産の各段階で評価を行います。改善情報は源流にフィードバックするとともに、次期設計にも展開します。

ものづくり革新部における自社開発の組立加工装置では「設備で品質をつくり込む。不良を作れない設備」を目標に、装置自身の自己診断など、不良を作らないようにすることを目指しております。

万一、製品に起因する不具合が発生した場合、当社製品は現品から生産情報(製造時期若しくはロッ卜情報)がトレースできます。ロッ卜情報からは、全工程の4M情報(Man、Machine、Material、Method)が確認でき、それぞれの生産条件、出来映えについて迅速に調査でき、波及性を限定できる体制となっております。

加えて、当社グループでは以下の国際的な品質マネジメントシステム等に基づき、欠陥が発生しない管理体制の構築を進めております。

・ISO9001:品質マネジメントシステム

・IATF16949:自動車産業品質マネジメントシステム規格

・ISO26262:車載電子制御の機能安全に関する国際規格

(17) 生産・調達活動に関するリスク

発生頻度:中

影響度:中

 

 

 

 

 

内容

当社グループでは、垂直統合型のビジネスモデルを採用しておりますが、電子部品の製造にはレアメタルを含む様々な素材を必要とします。そのため、特定の供給元からの調達に制約が発生した場合、生産活動やコスト構造に悪影響を及ぼす可能性があります。

主な対策

事業部門においては、材料などの複数購買を進めるとともに、サプライヤーのBCP状況等に基づき適切な在庫管理を推進しております。

調達部門においては、有事の際にいち早くサプライヤーの被災・安否状況や供給状況の確認がとれるよう、調達部材の製造会社・製造場所の情報を調査し、データベース化するとともに、その調査範囲を二次サプライヤーまで拡大し、サプライチェーンのBCP状況の全体把握に取り組んでおります。

また、重要材料を扱うサプライヤーとは有事発生の際の対応方法を、当社とサプライヤーとの間で事前に合意する取り組みを進めております。

 

配当政策

3【配当政策】

半導体・電子部品業界におきまして、当社グループは設備投資や研究開発、M&Aなどに積極的に資金を投入し、中長期的視点に立って業績拡大にまい進することで株主の皆様のご期待にこたえてまいりたいと考えております。

また、こうした持続的成長に向けての努力を続ける一方で、財務状況や資金需要を考慮の上、投資家の皆様からのご期待にもこたえられる利益配分の在り方を検討し、結果として総合的な企業価値の向上に努める必要があると考えております。

株主還元の方針としましては、連結配当性向30%を目安とし、状況に応じて追加還元策を検討するなど積極的な利益還元に努めてまいります。

事業活動から生み出されるフリーキャッシュフローにつきましては、中長期的な株主価値向上に向けての設備投資やM&Aに積極的に活用するとともに、財務効率の改善にも積極的に取り組み、ROE等の各種指標の改善に努めてまいります。

当期の利益配分につきましては、当期は厳しい業績となりましたが、株主の皆様に対する安定的な利益還元を考慮し、期末配当金として1株当たり25円とさせていただきました。

また、当社は中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当につきましては株主総会、中間配当につきましては取締役会であります。

なお、当社は「取締役会の決議によって、毎年9月30日を基準日として中間配当をすることができる。」旨を定款に定めております。

なお、基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、次のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2024年11月7日

9,649

25.00

取締役会決議

2025年6月25日

9,649

25.00

定時株主総会決議