リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 経済情勢の急激な変動によるリスク
当社グループは世界の電子機器メーカー等に抵抗器、モジュール製品等の電子部品を製造販売しておりますが、電子機器の需要動向は、日本、欧米、アジアの各市場における経済情勢に大きく左右されます。そのため、各市場における景気後退など経済情勢の急激な変動は、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
当社グループは、安定的な受注の確保を図るため、ライフサイクルの長い自動車向けの拡販を進めるとともに、幅広い分野で使用されるよう製品開発および拡販を進めております。また、急激な受注の減少に伴い発生する余剰コストを抑制するため、製販拠点の綿密な連携により市場および顧客の生産動向を迅速に把握するとともに、生産拠点の分散化や稼働日数の柔軟な調整等により機動的に対応しております。
(2) 原材料等の調達におけるリスク
原材料等の調達におけるリスクとしては、各国の輸出入規制や治安悪化、感染症の蔓延、災害などによる原材料等の供給中断、資源の枯渇による供給停止や、市況の変化等による価格の高騰が生じる可能性があります。これらの場合、製造原価の上昇、生産調整さらには生産停止を招く等、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、技術革新のスピードが速く、価格競争が激しい電子部品業界に属しており、想定外の市場環境の変化などにより過剰在庫が生じる可能性があります。当該過剰在庫に係る評価損の計上により業績および財務状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
原材料の調達状況については随時モニタリングを行い、適正在庫の確保、複数のサプライヤーからの調達、複数国からの調達を進めております。また、過剰在庫が生じないよう、顧客からの発注及び発注見通しならびに市場動向の分析に基づき生産計画を決定しています。
(3) 新技術・製品開発に関するリスク
当社グループが扱う電子部品事業は、技術革新のスピードが速く、顧客要求の変化も激しくなっており、将来にわたって当社グループの企業価値や企業収益を維持・拡大していくためには市場の需要に応え適切なタイミングで価値ある新製品の開発を進めていくことが、益々重要になっております。しかし、変化の激しいエレクトロニクス業界の将来の需要を的確に予測し、技術革新による魅力的な新製品をタイムリーに開発・供給し続けることが出来るとは限りません。市場の急激な変化や急速な技術革新に当社が遅れを取った場合には、当社グループの事業・業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
新製品開発にあたっては開発活動の各段階で、新たに組織化したマーケティング部門が新製品の市場性の分析や技術動向の予測をフィードバックし、市場変化への対応を進めております。また、新規事業を推進するための機能を強化し、開発成果の評価・検証を行い開発の実効性と効率性を高めております。さらに、現有技術分野における新商品開発に加え、これらを活用したソフトウエア技術を含むサービス分野にまで幅を広げた商品の開発を進めております。
(4) 為替相場および株価の急激な変動に伴うリスク
当社グループの連結ベースでの海外売上高比率は、当期58.5%(前期は55.9%)と高水準にあり、生産拠点も海外に展開していることから、為替変動は当社グループの外貨建取引から発生する収益・費用や資産・負債の評価額を変動させ、業績および財務状況に影響を及ぼします。また、当社グループでは時価のある有価証券を保有しており、株価の下落や低迷により、有価証券の減損が必要となるリスクがあります。これらのリスクにより、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
米ドル建ての製品販売が多いこと、また、米ドルおよびアジア通貨に対する円との為替相場の変動が大きいことを踏まえ、当社と海外子会社との取引(部材の支給、製品の仕入、製品の販売)は原則米ドル建てとし、海外子会社の為替変動リスク低減を図っております。一方、日本サイドは資材調達において米ドル建てを活用することで、米ドル建て収益との相殺を図るとともに、米ドル円相場の変動に伴うリスクに対し、為替予約等を行い低減に努めております。また、有価証券のうち政策保有株式については、リターンを踏まえた中長期的な観点から、毎期、保有継続の是非を判断しており、保有意義が希薄化した株式は順次売却・縮減していく方針としております。
(5) 固定資産の減損リスク
当社グループは主として電子部品の製造のために固定資産を保有しておりますが、減損の兆候を把握し、将来のキャッシュ・フローにより固定資産の簿価を回収できないと判断される場合には、減損損失の計上により、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
当社グループは、従来の家電や情報通信機器向けから、今後成長および安定した収益が見込める自動車向けに事業の主体を移しており、現時点では、事業収益の構造的な悪化は見込んでおりません。また、設備投資に当たっては、複数の生産拠点および多品種で使用できるよう汎用性を高めるなど、回収不能リスクも踏まえて開発・検討を行うことで、将来の減損回避に努めております。
(6) 税務に関するリスク
当社グループは、国内外に製造拠点、販売拠点を有しており、グループ会社間の取引も多く発生しております。グループ会社間の国際的な取引価格に関しては、適用される各国の移転価格税制等の観点からも適切な取引価格となるよう留意しております。しかしながら、税務当局との見解の相違等により、取引価額が不適切であるとの指摘を受け追加の税負担が生じる可能性があり、このような事態が生じた場合、当社グループの業績および財務状況に悪影を及ぼす可能性があります。また、繰延税金資産について、業績の悪化等により評価性引当額の積み増しが必要となった場合、当社グループの業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
毎期、同期文書の作成を通してリスク分析を行うとともに、商流の変更時や新規取引開始時には、外部専門家への相談を行うなど、リスクの回避に努めております。また、繰延税金資産の回収可能額算定に使用する将来の課税所得については、事業計画だけではなく、過年度の業績を加味し、未達成リスクも織り込むことで、評価性引当額積み増しリスクの低減を図っております。
(7) 特定の取引先、製品、技術等への依存度が高いモジュール製品の動向
モジュール製品の販売は、回路設計技術、高密度実装技術を背景として顧客の開発段階から参入し、資材調達、製造も含めた総合的な製品力をもって拡販するため、経営資源(人、物、金)投入の観点から、特定顧客への依存度が高くなっております。また、モジュール製品の販売は、特に自動車市場向けの売上比率が高く、その市場動向によって当社グループの業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
当社グループの製品を幅広い用途、顧客に販売するなど、特定の顧客への依存度を下げる取組を実施しております。また、サステナビリティ関連やDX関連のニーズが高まることにより、当社の技術を活かした製品の開発・販売を進め、特定の製品への依存度を下げる取組を進めております。
(8) 新製品の拡販
当社グループは、成長分野であるカーエレクトロニクス、IT関連をターゲットにMEMSセンサ、小型湿度センサ、超薄型圧電積層素子、極小チップ部品、無線モジュールなどの新製品の拡販を図っております。また、今後成長が見込まれているIoT関連向けでは無線システムの引き合いが多くなっております。こうした成長分野においては、グローバルな競争がより激化し、過度な価格競争に巻き込まれる可能性があります。また、同業他社が当社より優位な製品を先駆けて販売する可能性もあります。
上記リスクをはじめとして、将来、当社グループが予測していない状況変化が生じ、新製品の拡販が未達となった場合、業績および財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(9) 海外(中国)依存による事業展開リスク
当社グループは、中国及び東南アジアに生産拠点を展開しており、それぞれの地域・国における経済動向および政治・社会情勢に変化が起こった場合あるいは予期せぬ災害等が発生した場合、事業の遂行に問題が生じ、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に米中の緊張感の高まりやウクライナ情勢、感染症の拡大など、国際情勢の変化が大きくなっていると認識しております。
(主な対応策)
当社はグローバルな地政学リスクの影響を勘案し、多方面から情報を収集し有事に対応できる体制を整えるとともに、東南アジアでの生産体制を増強するとともに安定生産を図り、リスクの分散を進めております。
(10)法規制等のリスク
当社グループが事業を展開する国内外において、商取引、反トラスト、知的財産権、製造物責任、環境、労務、税制、事業投資の認可、輸出入規制等の様々な規制を受けております。当社グループではこれらの規制を遵守し事業活動を行っておりますが、関連する規制への抵触、役員・従業員による不正行為が完全に回避できない可能性があります。このような事象が発生した場合、法的な処分、訴訟の提起、さらには事業停止に至るリスクや企業ブランドの低下、社会的信用の失墜等のリスクがあります。また、規制が強化された場合、規制対応のための多額な費用負担等で事業に影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
当社グループでは、コンプライアンスに関するリスク低減とコンプライアンス意識向上に向け、以下の活動を実施しております。
・サステナビリティ委員会にガバナンス/コンプライアンス部会を設置し、コンプライアンス情報の収集、分析を進め取締役会に報告
・グループ会社を含めた社内コンプライアンス教育の実施
(11)気候変動リスク
気候変動リスクには、政策・規制の強化、技術の進展、市場や評判の変化など脱炭素社会への移行に起因する「移行リスク」および急性的な異常気象の激甚化、慢性的な気温・海面上昇など気候変動による物理的な影響に起因する「物理的リスク」があります。
当社における「移行リスク」および「物理的リスク」は以下のとおりです。
「移行リスク」
・再生可能エネルギーの調達要求などによるコストの増加
・炭素税、燃料・エネルギー消費への課税、排出権取引などに伴うコストの増加
・製品開発の遅れによる販売機会の逸失や既存製品の陳腐化による売上高の減少
「物理的リスク」
・気候変動に伴う台風や洪水などの災害により、グループ会社が操業できなくなるリスクおよび仕入先の操業停止や交通インフラの麻痺などで部品調達ができなくなるリスク
(主な対応策)
移行リスクについては、事業活動において発生する温室効果ガスの排出を削減するために、省エネの推進、再生可能エネルギーの導入および環境配慮型製品の開発に取組んでおります。物理的リスクについては、BCP管理体制を強化するとともに、BCP運用状況の評価を年1回以上実施しております。
(12)情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、取引先の機密情報や個人情報を有しております。これらの情報は、グループ全体で管理体制を構築し、運用管理と情報セキュリティの強化を実施しております。しかしながら、複雑化するサイバー攻撃や不正アクセス、内部の過失等により、これら情報の破壊や改ざん、流出、または情報システムの停止等が発生する可能性があります。
(主な対応策)
当社グループでは、情報セキュリティシステムによる不正アクセスの制限と監視、外部機関による情報セキュリティの脆弱性診断を実施し、管理体制の強化に努めております。また、当社情報セキュリティ規定に基づくソフトウエアや情報機器持出し制限や監視、情報リテラシーを高める目的での社員セキュリティ教育、万が一の脅威に備え迅速に対応するためのウイルス対策訓練等、事業活動停止を回避する対策の実施に取り組んでおります。
(13)知的財産権に関するリスク
当社グループは、知的財産権を重要な経営資源と捉え、事業活動を支える技術を保護し、他社との差別化を図り、事業を拡大するために、特許・意匠・商標等の知的財産権を獲得しております。しかし、競合他社が同様の技術を開発することで当社の独自性が低下したり、海外において充分な保護の措置が取られなかったり、当社の製品が模倣され商機を失うようなリスクがあります。また、当社が第三者の知的財産権を侵害するとして、第三者から販売の差し止めや損害賠償の請求を受けたり、実施許諾料を求められたり、あるいは訴訟を提起されるリスクがあります。さらに他社との協業や共同研究・共同開発が活性化している中、知的財産権に関する契約のトラブルなどが発生すると、当社事業に悪影響を与えるリスクがあります。
(主な対応策)
当社グループでは、特許などの出願前に、先行技術調査を徹底すると共に、各国の知的財産に関する法律・審査基準やプロセスを把握し、更に、海外での特許取得の効果・意義の検討を加え、知的財産権取得の精度アップ、効率向上に努めております。また、自社製品・サービスの開発段階から、第三者の知的財産権の調査を行い、自社製品・サービスとの比較検討を行うことで、第三者の知的財産権を侵害するリスクを低減することや、開発効率の向上に努めております。製品・サービスの開発に関わる技術者全員には、知的財産の重要性や第三者の知的財産権侵害リスク等について啓蒙を図ることのみならず、技術者自らが先行技術を調査できるよう教育を進めております。さらに、他社との協業や共同研究・共同開発においては、事前の契約内容について、専門部署を含めた精査を充分に行った上で事業を進めております。
(14)感染症に関わるリスク
当社グループは、新型コロナウイルス等の全世界的な感染症の流行に備え、従業員の安全と社内外への感染拡大抑止を第一に対策を講じておりますが、感染症の拡大や長期化の状況によっては、当社グループが事業を展開している国・地域における活動規制や企業活動の停滞等により当社グループ全体の事業活動、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
当社グループは、事業継続計画(BCP)を策定しており、リスク低減策を講じております。また、今後、新たな感染症などのリスクが顕在化した場合には、これまでの経験を活かして具体的な対応策を策定し、感染予防・拡大防止策の実施に努めてまいります。
(15)顧客の信用リスク
当社は世界各地の機器メーカーを中心に電子部品を供給しておりますが、顧客の業績が悪化した場合、売上債権等の回収ができず、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
当社グループは、新規取引時には外部信用リスク評価も参考にして取引条件等の設定を行い、顧客の財務状況の定期的確認や随時、売上債権の状況を把握すること等により、債権回収リスクの低減に努めております。
(16)M&A、業務提携、戦略的投資に係るリスク
当社グループは、持続的な成長と企業価値向上に向けた新技術の獲得、新規事業領域への参入、既存事業の競争力強化を目的として、必要に応じてM&A、業務提携、戦略的投資を実施しております。しかしながら、市場環境や競争環境に著しい変化が発生した場合は、事業計画通りに投資効果を得られず、当社グループの業績や成長に影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
検討に際しては、当社の事業計画に照らし合わせ、市場、新規技術の動向や顧客ニーズ、相手先企業の経営状況等のリスク分析を行ったうえで判断しております。また実行された案件についての定期的な検証を行い、戦略の見直しを実施しております。
(17)人材の採用・確保に係るリスク
当社グループは、品質と技術を重視した製品づくりを進めておりますが、事業を拡大していく上で、専門性や多様な能力を有する人材確保の必要性がますます高まっています。一方、少子高齢化や労働人口の減少等、雇用環境の変化が進んでおり、人材確保が進まなかった場合、事業展開、業績及び成長に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
人材確保のために、計画的な新規採用や経験者の中途採用に積極的に取り組んでおります。また、公正な評価での登用・処遇を行うことで、従業員エンゲージメントを高め、多様な人材が中核人材として活躍できるよう、人材の定着を図っております。
(18)製品の品質、製造物責任に関するリスク
当社グループは、至誠の精神に基づく「お客様第一」「品質重点」を基本方針とし、国内外製造拠点において国際品質マネジメント規格(ISO9001、IATF16949他)に従い、徹底した品質管理を行い多様な製品を製造しております。しかしながら、全ての製品に欠陥が発生しないという保証はなく、将来において予期せぬ不具合が発生すること等により、製造物賠償責任保険の範囲を超える賠償責任を問われる可能性があります。その結果、当社グループの事業、業績、財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
(主な対応策)
当社グループでは、製品の開発段階より設計審査でのデザインレビューを十分に重ねた信頼のおける製品を量産化し、工程パトロール、内部品質監査、購入先監査、信頼性試験等を通じて品質保証体制の向上に努めております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、配当金につきましては財務基盤の強化と株主の皆様への利益還元を両立することを基本としながら、連結配当性向20%以上および純資産配当率2.5%以上をともに満たすよう行っていく方針としております。
当期の純利益は、連結では2,538百万円、単体では2,361百万円となったことから、期末配当はその他利益剰余金を原資として、1株当たり60円で、2024年5月10日開催の取締役会で決議いたしました。
なお、中間配当については実施を見送っております。
また、当期に係る剰余金の配当は次のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年5月10日 |
489 |
60.00 |
取締役会決議 |