リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には、以下のようなものがあります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業展開のための人員の確保について
当社グループは、在宅ホスピス事業を展開するにあたり、看護師及び介護士の積極的な採用を行い、組織体制の強化及び質の高いケアサービスを提供することで、医療機関等をはじめとした地域医療との連携を図っていく方針であります。
また、末期がんやALS(筋萎縮性側索硬化症)等の難病のケアには非常に高い専門性が求められることから、訪問看護・介護業務に関する経験の浅い看護師・介護士に対して、経験豊富なベテラン社員によるOJT(職場内実施研修)をはじめとした、個々人のスキルアップを図る施策を積極的に行ってまいります。またそれと同時に、マネジメント研修など管理職に対する教育体制の充実を図り、安定した人員の確保に努めてまいります。しかし、今後、必要とする看護師及び介護士の採用及び確保できない場合、十分な研修等を実施できず、看護師及び介護士等の育成が困難となった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 事業所の新規開設について
当社グループにおいて、ホスピス住宅の開設候補地の選定は、事業運営における重要課題であることから、十分な時間をかけて多角多面的なマーケットリサーチを行い、候補地の選定と確保に努めております。
ただし、不動産開発においては、自治体等の各種規制により候補地選定に制限を受ける場合、建設工事期間中の台風や大雪等の不可抗力事由が生じた場合、景況感や各種相場や需給の変化といった予測困難な事由が生じた場合、好立地物件は医療・介護業界に限らず需要が高いことから、様々な業種の他企業との競合により好立地に候補地を確保できない場合等、開設計画の実現においては様々な不確定要素が存在いたします。先に記載した不確定要素の他、何らかの事由で開設時期に遅れる等、事業計画と大幅な乖離が生じたときは、当社グループの業績及び利益計画や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 訪問看護及び訪問介護に関する法的規制について
① 訪問看護及び訪問介護の医療及び介護報酬に係るリスク
当社グループは、「医療保険制度」「介護保険制度」「障害者総合支援法」のそれぞれに基づく訪問看護及び訪問介護を行っております。このうち「医療保険制度」に基づく診療報酬は2年に1度、「介護保険制度」に基づく介護報酬は3年に1度の頻度で制度の改定が行われます。今後、診療報酬及び介護報酬の見直しにより、大幅な改定が行われた場合には当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
② 訪問看護及び訪問介護等に必要な指定に係るリスク
当社グループは、訪問看護及び訪問介護を行うために「健康保険法」ならびに「介護保険法」に基づく、各サービス事業者の指定を各都道府県知事から受けております。それぞれの指定には、資格要件、人員要件、設備要件及び運営要件が規定されており、これらの規定に従って事業を運営しております。
当社グループでは、看護師・介護士等の有資格者の入退社や新規施設の開設に伴い、自治体等の基準の確認及び変更に必要な届け出を怠らないよう細心の注意を払って運営しており、当連結会計年度末現在、事業運営の継続に支障を来すような状況は生じておりません。しかしながら、これらの基準を遵守できなかった場合や診療報酬及び介護報酬等の不正請求が認められた場合には、指定の取消又は停止等の処分を受けるおそれがあります。特に介護保険法に基づく各種指定について、当社グループ内のいずれかの会社が指定取消を受けた場合、当該会社において、指定取消から5年以内における新たな指定の取得及び介護サービス事業所としての更新が出来なくなります。その場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社各事業所が受けている指定は次のとおりです。
取得 |
所轄官庁 |
許認可名称 |
許認可内容 |
有効期限 |
主な許認可取消事由 |
当社 各事業所 |
厚生労働省 地方厚生局 |
指定訪問看護事業者 |
健康保険法の訪問看護事業 |
6年毎 の更新 |
健康保険法 第95条(指定訪問看護事業者の指定の取消し) |
都道府県又は 政令指定都市 |
指定訪問看護事業者 |
介護保険法の訪問看護事業 |
介護保険法 第77条(指定の取消し等) |
||
都道府県又は 政令指定都市 |
指定訪問介護事業者 |
介護保険法の訪問介護 |
介護保険法 第77条(指定の取消し等) 障害者総合支援法 第50条(指定の取消し等) |
||
都道府県又は 政令指定都市 |
指定居宅介護支援事業者 |
介護保険法の居宅介護支援 |
介護保険法 第77条(指定の取消し等) |
||
都道府県又は 政令指定都市 |
通所介護事業者 |
介護保険法の通所介護 |
介護保険法 第77条(指定の取消し等) |
||
都道府県又は 政令指定都市 |
看護小規模多機能型居宅介護 |
介護保険法の看護小規模多機能型居宅介護 |
介護保険法 第77条(指定の取消し等) |
(4) 訴訟リスクについて
当社グループの看護師は、主治医の訪問看護指示書に基づいて訪問看護を行っており、訪問介護士はケアマネージャーの作成するケアプランに沿って訪問介護を行っております。また、当社グループでは、社内でのOJTによる研修をはじめとした教育研修の充実を図り、安全衛生管理に係る規程や各種の運営マニュアルを遵守することにより、事故防止や緊急事態の対応が出来るように取り組んでおります。
しかしながら、従業員の人為的なミスまたは不測の事態の発生等によって利用者の健康状態が悪化し、利用者、そのご家族または主治医等からの信頼が失われる等により訴訟が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 個人情報の漏洩について
当社グループは事業を運営するにあたり、利用者あるいはそのご家族の重要な個人情報を取り扱っております。当社グループは、「個人情報保護規程」を制定し、個人情報については厳重に管理する等、様々な情報漏洩防止対策を講じていますが、万が一情報が流出するなどして、当社の信用が低下した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 風評等の影響について
当社グループの事業は、利用者やそのご家族に限らず、行政や医療機関等との連携によって円滑な運営が可能になっているものと考えております。当社グループでは、安定的かつ質の高いサービスを提供するために、技術的な研修を行うとともに、企業方針を浸透させるなどの教育を行っております。しかし、従業員の不祥事等何らかの事象の発生や、当社グループに関する不利益な情報や風評が広まった場合には、利用者、行政、医療機関等との関係が悪化し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 利用者の逝去、退去等について
当社グループは、行政や医療機関等との連携によって、安定的な利用者の確保に努めており、当社グループのサービスは、高齢者の増加と共に市場が拡大し需要が増加している状況にあると認識しております。しかしながら、新規開設施設等において想定通り入居者が集まらない場合、ターミナルケアに特化した施設であることから、当社グループが想定する以上の入居者の逝去、退去等があった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 差入保証金の返還について
当社グループは、ホスピス施設又は事務所等を賃借する場合に、契約時に賃貸人に対し保証金を差し入れている場合があります。当該保証金は期間満了等による契約解消時に契約に従い返還されることになっておりますが、賃貸人の経済的破綻等によりその一部又は全額が回収できなくなる可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 賃貸借契約に係る解約違約金について
当社グループは、一部のホスピス住宅施設に関しては、ホスピス施設を保有するオーナーと賃貸借契約の締結に際し、株式会社LAリビングソリューションズとの間で賃貸借契約の中途解約に関する契約を締結しております。ホスピス施設に係る賃貸借契約の中途解約時の解約違約金支払義務の免責を図っておりますが、賃貸借契約の中途解約に関する契約を締結していないホスピス施設については、賃貸借契約に定められた期間満了日前に中途解約をした場合は、契約内容に従って多額の解約違約金の支払いが必要となります。何らかの理由によりホスピス施設の運営を中止し、多額の解約違約金を支払う場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 大規模な災害等の影響について
当社グループは、関東(東京都、神奈川県)、東海(愛知県)、関西(京都府、兵庫県、大阪府)、北海道の各エリアにて事業展開を行っておりますが、大規模な地震、台風等の災害により、事業所建物や看護師、介護士及び利用者が損害を被った場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 固定資産の減損について
当社グループの事業は、医療・介護サービスの提供という事業の特性上、特定の事業所の損益が悪化した場合でも、利用者の受入先の確保や、医療機関や行政との関係性維持の観点から、即時撤退が困難で、低採算での運営を続けなければならない可能性があります。そのため、固定資産の減損会計の適用に伴う損失処理が発生しないよう、各事業所の損益管理を徹底しております。当連結会計年度末においては、減損の兆候はないと判断しておりますが、万が一、不採算事業所の増加や閉鎖が集中した場合、多額の減損損失が発生し、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 有利子負債について
当連結会計年度末における有利子負債残高(リース債務を含む)は10,893,614千円、有利子負債依存度(リース債務を含む)は71.9%となっており、有利子負債依存度が高い状況となっております。これらの主な要因は、ホスピス住宅に関して所有者との間で締結している一部の賃貸借契約について、所有権移転外ファイナンス・リース取引として通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行っていることによるものでありますが、金利水準が上昇した場合や、計画通りの資金調達が出来なかった場合には、支払利息が増加し、当社グループの事業展開のスピードが減速するなど、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 特定経営者への依存について
当社の代表取締役社長である高橋正は、当社グループの経営方針や事業戦略の立案・決定における中枢として重要な役割を果たしております。取締役会や経営戦略会議等において、役員及び社員への情報共有や権限移譲を進める等、組織体制の強化を図りながら、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めております。しかしながら、何らかの理由で同氏が当社の業務を継続することが困難になった場合には、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(14) M&Aについて
当社グループでは、同業他業の他社に対するM&A(子会社化や事業譲受等)を実施することにより、当社グループの事業を補完及び強化することが可能であると考えております。その実施にあたっては、対象企業や対象事業の状況及び財務、税務、法務、業務ほか各種デューデリジェンスを行うなど、意思決定に必要な情報を十分な時間をかけて収集、分析、精査及び検討することで、可能な限りリスクの低減に努めております。しかしながら、M&Aの実施後に当社グループが事前には認識し得なかった事項が判明、または問題が明らかになった場合や、何らかの理由で取得した企業や事業の経営が計画どおりに進まない場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(15) 新株予約権行使の影響について
当社は、当社グループの役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社の株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、2024年2月29日現在これらの新株予約権による潜在株式数は274,500株であり、発行済株式総数8,196,000株の3.3%に相当しております。
(16) 配当政策について
当社グループは将来に向けた事業の拡大に向け、必要な人材の確保及び新規開設に係る設備投資等の先行投資を行うため、また迅速な経営に備えるために、内部留保の充実が重要であると認識しております。そのため、第1期から第7期の配当金については無配としております。しかしながら、株主に対する利益還元として配当を行うことも重要な経営課題の1つであることから、今後につきましては利益を確実に計上できる体制の確立を図ることによって財務体質の強化を行い、財政状態及び経営成績を勘案しながら、配当を実施していく方針であります。ただし、当社グループの業績が計画通り進展しない場合等、当社グループの業績が悪化した場合には、継続的に配当を行えない可能性があります。
(17) 集団感染・自然災害・事故等に関するリスク
当社グループでは、有事に備えた危機管理体制の整備に努め対策を講じておりますが、感染症や医療依存度が高い高齢者や障害者が共同生活を営むホスピス施設ならではの食中毒等への集団感染及び地震、津波、台風等の自然災害、及び火災等の生命に関わりうる事故のリスクがあります。当社グループでは、地震や風水害への備えを行い、防犯環境を整える等の対応により利用者の安全管理などに細心の注意を払っております。この他に、利用者と従業員の健康管理に注意を払い、日ごろ手洗いや手指消毒を励行、定期的に社内研修では感染症の予防、流行及び対応を学ばせ、マニュアルを整備し、これを適切に運用することで集団感染の発生リスクの低減に努めています。しかしながら、想定を上回る規模の集団感染や自然災害、事故が発生し、当該ホスピス施設の稼働が長期に亘って困難になった場合には、当社グループの管理責任が問われ、当該ホスピス施設のみならず当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(18) 物価高騰に関するリスク
木材、鋼材、エネルギー資源、ホスピス施設で使用する消耗品等のインフレにより、既存ホスピス施設の運営費が増加する可能性があります。また、今後更なるインフレによって、前述の費用に加え、地代家賃や建築費用等の新規ホスピス施設の調達コストが増加し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は将来に向けた事業の拡大に向け、必要な人材の確保及び新規開設に係る設備投資等の先行投資を行うため、また迅速な経営に備えるために、内部留保の充実が重要であると認識しております。そのため、第1期から第7期の配当金については無配としております。しかしながら、株主に対する利益還元として配当を行うことも重要な経営課題の1つであることから、今後につきましては利益を確実に計上できる体制の確立を図ることによって財務体質の強化を行い、財政状態及び経営成績を勘案しながら、配当を実施していく方針であります。
内部留保資金につきましては、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大発展を実現させるための資金として、有効に活用していく所存であります。
なお、剰余金の配当を行う場合は、年1回の剰余金の配当を期末に行うことを基本としており、決定機関は株主総会であります。なお、当社は、取締役会の決議によって、毎年6月30日の最終の株主名簿に記載又は記録された株主又は登録株式質権者に対し、会社法第454条第5項に定める中間配当をすることができる旨を定款に定めております。