2024年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況などに関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもリスク要因には該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)事業の環境、外部環境

① 市場の動向について

 当社グループは、インターネット関連サービス市場を主たる事業領域としており、当社グループの事業はこれらの市場動向の影響を受けております。インターネット関連サービス市場には、当社設立後もシェアリングエコノミー、Fintech、MaaSといった新たな事業領域が生まれており、その利用者も急激に増加しておりますが、将来においてインターネットに代わる新たなサービスが提供され、インターネットを利用する機会が減少した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合について

 当社グループが提供するカスタマーリレーション事業における主な事業領域は、今後も成長が期待されている市場であるため、新たに参入してくる競合企業が出現する可能性があり、当社グループの提供するサービスと比較して低コスト・高品質となった場合に、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新たな技術などを利用したサービス、あるいは新たなビジネスモデルが登場し、当社グループの対応が遅れた場合に、当社グループのサービスが不適応化するおそれがあります。その場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 新サービスの開発

 当社グループは、インターネット関連サービス市場を主たる事業領域として、新たなインターネット関連サービスが急激に拡大した際に生じる課題に対して、カスタマーリレーション事業の提供及び新しいサービスを提供していく予定であります。新サービスの開発にあたっては、市場のニーズ及び技術の動向を注視しながら慎重に検討を重ねたうえで取り組んでまいりますが、当該サービスを取り巻く環境の変化などにより、計画どおりの成果が得られない場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 教育予算の動向について

 当社グループの一部の事業は、各都道府県など教育委員会、公立学校、私立学校法人にサービスを提供しているため、政府及び地方自治体の教育予算の動向に影響を受けます。政府及び地方自治体の教育予算の方針変更あるいは財政状況の悪化により教育予算が削減された場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業上のリスク

① 契約解約について

 当社グループは、サービス提供先との契約期間を原則6か月間とし、期限到来後は同じ契約期間毎の更新となっております。契約期間内に解約する場合には、原則として一方の当事者が相手方に3か月前に書面で通知することにより解約が成立する内容となっており、当社グループの意思とは関わりなく突発的な解約が発生する可能性があります。今後、収益性の高い取引先の解約が多発した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

② データの取得について

 当社グループは、インターネットモニタリングにおいて、ソーシャルメディア上で生成されたデータをAPI連携により自動的に収集しております。しかしながら、ソーシャルメディアの運営方針の変更により制限が加えられた場合や禁止された場合に、データの取得が困難になることから、サービスの提供内容及び品質に影響するおそれがあります。また、データを取得するための新たな手段を構築するための対応コストが発生した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ ネットワークトラブルについて

 当社グループは、顧客企業及び利用者のニーズに対応するため、24時間365日のサービス提供体制を構築しておりますが、その業務環境は通信ネットワークに依存しており、サーバーなどの自社設備や第三者の通信設備などのインターネット接続環境が良好に稼働することが前提であります。そのため、サーバーの停止、コンピュータウィルスによる被害、外部からの不正侵入、システムの不具合、災害や停電などによる通信ネットワークの切断などが生じた場合には、サービスの提供に支障をきたし、また、ネットワークトラブルの障害や不具合の原因が当社グループにあった場合には、顧客企業からの信用が低下し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 情報漏洩について

 当社グループにおけるサービス提供において、一部個人情報を含む機密情報や、顧客企業のサービス提供における機密情報を扱っており、これらの情報に関しては高い水準の情報管理体制の構築及び運用が求められております。当社グループにおいては、ISMSの認証取得及びプライバシーマークの認定取得に加えて、顧客企業の機密情報が外部に漏洩することのないよう、当社グループ関係者などとの間で秘密保持契約を締結するとともに、設備面においてもアカウント管理システム、入退室管理システム及び監視カメラ設置などの諸施策を講じております。しかしながら、当社グループにおいて、業務上知り得た機密情報などについて何らかの要因により外部への流出などが生じた場合には、顧客企業からの信頼を著しく低下させ、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 人材の獲得及び育成について

 当社グループは、顧客企業に価値を提供し続けるためには、事業を築いていける人材の確保とその育成が重要な課題と認識しており、社内コミュニケーションの強化、人材育成と抜擢及び外部からの人材登用に努めております。しかしながら、当社グループが属する業界での人材獲得競争が激化することにより、当社グループの人材が外部に流出することや、人材の確保に支障をきたす場合があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループのサービス提供における実務は、臨時従業員(アルバイトスタッフ)によっております。臨時従業員の確保、受け入れ体制の充実及び育成に取り組んでおりますが、採用市場の急激な変化などにより、臨時従業員の確保が困難になった場合、サービスの提供及び販売活動が阻害されるおそれがあり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 大規模な自然災害について

 当社グループは、有事に備えた危機管理体制の整備に努め対策を講じておりますが、台風、地震、津波などの自然災害が想定を大きく上回る規模で発生及び流行した場合、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に影響を及ぼし、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 繰延税金資産の取崩しリスク

 当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、将来の課税所得を見積もったうえで回収可能性を判断し、繰延税金資産を計上しております。しかし、事業環境等の変化による課税所得の減少や税制改正等により回収可能性を見直した結果、繰延税金資産の取崩しが発生し、経営成績及び財政状態を与える可能性があります。

 

⑧ 固定資産の減損について

 当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しております。当社グループの保有する固定資産について、経営環境の著しい悪化等により投資額の回収が見込めなくなった場合、減損損失が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 為替の変動について

 当社グループは、フィリピン共和国に子会社を有しております。現地通貨建ての財政状態及び経営成績は、連結財務諸表の作成のために円換算されており、換算時の為替レートにより、これらの項目は現地通貨における価値が変わらなかったとしても、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。また、当社において一部の顧客は外貨建てにより販売を行っており、換算時の為替レートにより、当社グループの経営成績などに影響を及ぼす可能性があります。

⑩ 継続企業の前提に関する重要事象等

 当社グループは、当連結会計年度(2024年12月期)におきましても営業損失及びマイナスの営業キャッシュ・フローを計上いたしました。売上高の増加や営業利益の黒字化を目指しておりましたが、人材の採用や教育等の人的資本に対する先行投資の回収の遅れや、市場が低迷しているソーシャルゲーム業界の大型案件の解約等により想定以上に業績の回復が遅れたことが主な要因であります。

 これにより「継続的な営業損失又は営業キャッシュ・フローのマイナス」となり、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在していると認識しております。

 

 当社グループは、このような状況を解消するため、事業環境の変化により将来の成長を見込むことが難しいと判断した案件を徐々に縮小し、高い成長率が期待できるカスタマーサクセスや、大規模カスタマーサポート案件に経営資源を集中させ業績回復を図っております。併せて、効率的かつ効果的なコストの配分により、無駄のない事業運営を図り、翌連結会計年度以降の伸長を見据えた事業計画を策定しております。

 また、当面の十分な自己資金も確保しており、翌連結会計年度の事業計画に基づく資金計画による評価を実施した結果、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと判断しております。

 

(3)法的規制に関するリスク

① 労働者派遣法について

 当社は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備に関する法律」(以下、「労働者派遣法」という。)に基づく厚生労働大臣の「一般労働者派遣事業」の許可を取得しており、労働者派遣法に基づく規制を受けております。法令を遵守して人材の確保及び事業の運営をしておりますが、法令違反に該当するような事態が生じた場合、又は今後において関連法令や解釈が変更された場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② インターネットに関連する法的規制などについて

 当社グループが遵守しなければならないインターネット関連法令はごく限られておりますが、当社グループが受注する顧客企業が遵守する必要がある法令として「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備などに関する法律」、「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制などに関する法律」及び「EU一般データ保護規則」などの各種法令や、各法令の監督官庁が定める省令・指針・ガイドラインなどがあります。

 これらの法的規制は、当社グループの事業活動自体を規制するものではなく、今後において新たな法令制定などが生じた場合には、顧客企業における対応のための新たなサービス需要などが生じる可能性がありますが、一方で顧客企業の事業が何らかの制限を受けることとなった場合、又は当社グループの事業が法的規制を受けることとなった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ フィリピン共和国のカントリーリスクについて

 連結子会社であるadish International Corporationは、フィリピン共和国において事業を展開しております。フィリピン共和国は、法改正などが頻繁になされる特徴があり、今後新たな法令の制定などが生じ、当社グループの事業が法的規制を受けることとなった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、台風などの自然災害により通信システムの障害などの発生、従業員の通勤手段の断絶あるいは都市機能が麻痺する場合や、テロ活動が拡大する場合などにより、サービスの提供に支障が生じる場合は、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)当社グループの事業体制について

① 特定人物への依存について

 当社グループの創業者であり、代表取締役である江戸浩樹は、当社グループの事業及び関連市場に関する豊富な知識と経験を有しており、経営方針や事業戦略の決定など、当社グループの事業活動全般において重要な役割を果たしております。現在当社グループでは、同氏に過度に依存しないような体制の整備、人材の登用及び育成などに取り組んでおりますが、何らかの理由により同氏による業務の遂行が困難となった場合、現状においては当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

② ガバナンス体制の強化について

 当社グループの継続的な成長のためには、コーポレート・ガバナンスが適切に機能することが必要不可欠であると認識しており、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、各社内規程及び法令遵守の徹底、従業員の教育に取り組んでまいります。また、コーポレート・ガバナンスを強化していくために、独立社外取締役を2名体制とすることで、モニタリングをさらに強化していく方針であります。なお、利益相反取引が生じる場合には、取締役会において少数株主の利益保護の観点から議論する方針を定めております。さらに、内部監査や監査役監査によるモニタリングを強化することでガバナンス体制の実効性を図ってまいりますが、事業の急速な拡大などにより、コーポレート・ガバナンスあるいは管理体制が有効に機能しなかった場合には、当社グループの事業に何らかの影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)その他

① 新株予約権について

 当社グループは、取締役、監査役及び従業員に対するインセンティブを目的として、ストック・オプションを付与しております。加えて、当社はマイルストーン・キャピタル・マネジメント株式会社に対して無担保転換社債型新株予約権付社債及び新株予約権を発行しております。

 本書提出日現在の潜在株式数は、ストック・オプション98,920株、無担保転換社債型新株予約権付社債143,368株、新株予約権161,300株、合計403,588株であり、発行済株式総数1,854,202株に対し、ストック・オプションが5.3%、無担保転換社債型新株予約権付社債が7.7%、新株予約権が8.7%、合計21.8%に相当しております(注)。当社グループの株価が行使価格を上回り、かつ、権利行使についての条件が満たされ、同ストック・オプションが行使された場合並びに無担保転換社債型新株予約権付社債及び新株予約権が株式に転換された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化することになります。

(注)各潜在株式の数及び発行済株式総数には、2025年3月1日から本書提出日までのストック・オプション並びに新株予約権の行使、無担保転換社債型新株予約権付社債の転換により発行された株式数は含まれておりません。

 

② 配当政策について

 当社グループは、株主に対して利益を還元していくために、カスタマーリレーション事業における競争力を高め、事業を拡大していくことを経営の重要課題として位置づけております。このことから、創業以来配当は実施しておらず、今後においても当面の間は内部留保の充実及び事業への投資を推進する方針であります。各事業年度の経営成績を勘案しながら将来的には株主への利益還元を検討していく方針でありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期などについては未定であります。

 

③ 主要株主の存在について

 株式会社ガイアックスは、当社の当連結会計年度末現在の総議決権の18.23%を占めており、当社グループの主要株主であります。

 同社の当社経営方針への考え方、議決権行使等が当社の事業運営及びコーポレート・ガバナンスに影響を与える可能性があり、同社が当社の経営方針についての考え方や株式の保有方針について変更した場合には、当社の株価や財政状態、経営成績、キャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 剰余金の配当については、企業としての競争力の確保とさらなる事業拡大の実現が株主に対する最大の利益還元につながるという考えのもと、当面の間は内部留保の充実及び事業投資の推進を図ることを基本方針としております。

 当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、これら剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

 当事業年度においては、基本方針に従い、事業拡大及び内部留保の充実に注力したことから、配当を実施しておりません。将来的には各事業年度の経営成績を勘案しながら株主への利益還元を検討していく方針でありますが、現時点においては配当実施の可能性及びその実施時期などについては未定であります。

 内部留保資金については、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、当社サービスの開発及び技術革新、人材の獲得に向け有効投資してまいりたいと考えております。

 なお、当社は「取締役会の決議によって、毎年6月30日を基準日として中間配当をすることができる。」旨を定款に定めております。