2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 個人情報の保護について

 当社グループでは、在宅訪問薬局事業、プライマリケアホーム事業において業務の特性上、患者の病歴及び薬歴等の個人情報を取り扱っております。個人情報の保護に関しては「個人情報の保護に関する法律」により企業が本人に同意を得ずに個人情報を第三者に提供した場合には、行政処分が課され、場合によっては刑事罰の適用を受けることもあります。また、調剤薬局において個人情報を扱う当社グループの従業員の多くが薬剤師であり、薬剤師には刑法第134条第1項(秘密漏示)にて重い守秘義務が課せられております。

 当社グループは、個人情報について厳重な管理を行うとともに、個人情報等の保護に関する社内規程の整備、JAPHIC(ジャフィック)マーク認証制度に準じた自社チェックなど情報漏洩を防止するための対策を講じております。しかしながら、万一、外部からの不正アクセスや社内管理上のミス等により個人情報の漏洩があった場合には、多額の賠償金の支払いや行政処分、それらに伴う既存顧客の信用及び社会的信用の低下等により当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 新型感染症等の拡大による影響について

 当社グループは、新型感染症等の拡大に対し、店舗及び施設では消毒対策の他、空調機を刷新し店舗及び施設内の換気対策等を行い、患者及び従業員の安全確保に注力しております。しかしながら、新型感染症等の拡大により、門前医療機関への受診控え並びに長期処方の増加によって、処方箋枚数が減少することにより当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社従業員が罹患するような事態が発生した場合には、人員減少による当社グループの店舗運営等が困難になり、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 固定資産の減損について

 在宅訪問薬局事業は、調剤薬局の店舗資産やのれん等の長期性資産を保有しております。これら資産については減損会計を適用し、当該資産から得られる将来キャッシュ・フローによって資産の残存価額を回収できるかどうかを検証しており、現状、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っております。しかしながら、店舗の移転や病院の閉院等により当初期待した事業の収益性を下回るなど減損計上の対象となった場合には、特別損失が計上され当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 事業展開について

 在宅訪問薬局事業においては、店舗のM&A(合併・買収)を含め、今後も高い採算性の見込める案件を中心に、収益性を重視した新規出店政策を採ってまいります。M&Aにおいては、対象会社から得られる将来キャッシュ・フローにより一定の年数以内で投資額を回収できる水準でM&Aを行うことを基本方針としておりますが、出店条件に合う物件が確保できないことにより計画どおり出店できない場合、競合状況や医薬分業の進展の遅れ等の要因により出店後に計画どおり売上高が確保できなかった場合、医療機関の移転又は廃業等により店舗の売上高が減少する場合、買収後の経済状況や業界環境の変化等により事業計画と実績に乖離が生じた場合及び当初想定したシナジーが得られない場合にはのれんに係る減損損失が発生し、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 損害賠償リスクについて

 当社グループは、医療安全対策を経営上の重点課題と位置付け、薬剤師の技術の向上、医薬品に関する知識の充実について研修会を実施するなど積極的に取り組むとともに、調剤過誤を防止すべく機械化の推進及び調剤、鑑査、投薬という行動では、人によるダブルチェックが機能するように行動がルール化され、問題があればすぐに報告・是正され、全店展開が可能な体制を築いて細心の注意を払い調剤をしております。また、万が一に備え全店舗において「賠償責任保険」に加入しておりますが、調剤過誤等が発生し、社会的信用が失墜した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6) 薬価基準の改定及び調剤報酬改定について

 在宅訪問薬局事業の売上は、厚生労働省告示に定められた薬価基準に基づく薬剤収入と同省告示に定められた調剤報酬点数に基づく調剤技術に係る収入との合計額であります。

 このため、毎年の改定により薬価基準が下げられ薬剤の仕入価格が同程度引き下げられなかった場合、または2年毎にある調剤報酬の改定(直近の改定は2024年4月)によって調剤報酬点数の引き下げがあった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 仕入価格の暫定処理について

 調剤薬局業界では慣例的に、薬価基準の改定が実施された場合、医薬品卸業者との間で最終的な仕入価格を妥結するまでの期間は、合理的であると見積もった暫定価格での仕入計上を行い、仕入価格が未定の状態のまま納品が行われることが通例となっております。

 このように仕入価格が未決定の状態で納品が行われる場合、最終的な仕入価格の妥結に至るまでは、最終的な仕入価格妥結時の四半期決算において、暫定価格と最終的な仕入価格の精算処理がなされることになります。このため暫定価格と最終的な仕入価格に重要な差異が生じた場合においては、経過した四半期と精算処理を行った四半期とで当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 消費税等の影響について

 当社グループにおいて、調剤・介護における売上は消費税法により非課税売上となる一方で、医薬品等の仕入は同法により課税されております。このため、当社グループは消費税等の最終負担者となっており、当社グループが仕入先に対して支払った消費税等は、製造原価の区分に費用計上されております。過去の消費税率改定時には、消費税上昇分が薬価改定幅に考慮されておりましたが、今後消費税率が改定され、薬価基準が消費税率の変動率に連動しなかった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 法的規制について

 当社グループの事業運営を行うにあたり、医薬品医療機器等法や健康保険法、介護保険法等による法的規制があります。当社グループは店舗・施設ごとに必要な許可・指定・登録・免許等を受けて営業をしております。当社グループは、これまで店舗の営業停止または取消等の処分を受けたことはありませんが、厳重に注意し、免許切れなどの手続不備がないよう確認を行っております。しかしながら、必要とされる許可・指定・登録・免許等を受けることができない場合、更新及び登録・届出の手続きを怠った場合、関連する法令改正等に違反した場合、またはこれらの法令が改正された場合において当社グループの出店計画及び業績等に影響を及ぼす可能性があります。

許可、指定、免許、登録、届出の別

有効期間

関連する法令

登録交付者

薬局開設許可

6年

医薬品医療機器等法

各都道府県知事又は所轄保健所長

医薬品販売業許可

6年

医薬品医療機器等法

各都道府県知事又は所轄保健所長

保険薬局指定

6年

健康保険法

各所轄厚生局長

管理医療機器販売届出

無期限

医薬品医療機器等法

各都道府県知事

高度管理医療機器等販売業許可

6年

医薬品医療機器等法

各都道府県知事

毒物劇物一般販売業登録

6年

毒物及び劇物取締法

各都道府県知事又は所轄保健所長

麻薬小売業者免許

3年

麻薬及び向精神薬取締法

各都道府県知事

住宅型有料老人ホームの設置の届出

無期限

老人福祉法

各都道府県知事

 

(10) 人材の確保及び育成について

 当社グループが事業を拡大していくためには、人材の確保が非常に重要な課題となります。当社グループは在宅訪問薬局事業における薬剤師、プライマリケアホーム事業における看護師、介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)など専門資格を有した人材を必要としているだけでなく、きらりプライム事業、タイサポ事業の営業人材、ITシステム開発エンジニアなど資格保有者以外の事業を拡大させるための人材を採用、育成していく必要があります。そのため、新卒、中途採用の強化、社員の定着率向上のための活動に注力しております。

 しかしながら、こうした人材の確保が計画どおりに進まなかった場合、又は育成が計画どおりに進まず、あるいは重要な人材が社外に流出した場合には、事業拡大の制約要因が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(11) 他社との競合について

 当社グループは、きらりプライム加盟店に対し、当社グループの培ってきた在宅訪問ノウハウやそれに合わせた自社開発のシステムを提供していることを強みとしておりますが、新規参入事業者の登場により競争が激化した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12) システムインフラ等への投資について

 当社グループは、事業の拡大に応じて、システムインフラ等への投資を計画、実施しておりますが、当社グループの想定を超える急激なユーザー数及びアクセス数の増加、IT技術等の急速な進歩に伴い、予定していないハードウエアやソフトウエアへの投資等が必要となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13) 介護保険法の改正、介護報酬の改定について

 当社グループは、介護保険法をはじめとする各種関連法令によって規制を受ける公的介護保険法内のサービスが中心となっております。これらのサービスは3年毎の介護保険法の改正(直近の改正は2024年4月)、3年毎の介護報酬の改定(直近の改定は2024年4月)より、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14) 施設利用者に対する安全配慮について

 当社グループの介護サービスは、主に要介護認定を受けた介護度の高い高齢者を対象としており、高齢者の特性に起因する事故等が発生し、利用者の命に係わる重大な事故に発展する可能性もあります。これらにより、当社グループ側の過失責任や管理責任が問われた場合には、損害賠償の支払い等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループは高齢者虐待防止法で求められる養介護施設従事者等による身体的虐待、介護・世話の放棄・放任等の高齢者虐待の防止に関する取り組みとして、従業員に対する研修の実施、虐待防止マニュアルを定め、不適切ケア及び虐待防止に努めておりますが、虐待や不適切な身体拘束が発生した場合には、法令による処罰・訴訟の提起・社会的信頼の失墜等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(15) 大株主について

 当社グループの大株主であるエムスリー株式会社(以下、「同社」という。)は、医療従事者専用サイトの運営等を行っており、同社の連結子会社等の所有する株式数を含めると、本書提出日現在で当社発行済株式総数の28.2%を所有しております。同社グループは、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求すると共に、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。

 当社グループと同社グループとの間に役員の招聘等の人的関係はなく、同社グループからの資金の借入、及び同社グループに対して事前承認や事前報告を要する事項等はありません。また、当社グループは同社グループから人材の派遣や紹介等を受けておりますが、同社グループとの取引については、他の企業の取引条件との比較等により取引条件の適正性等を確保しております。

 現在、同社グループの事業領域は患者に提供される地域包括ケアシステムにおいて支援アプローチの点で当社グループと相違しており、今後においても競合等が想定される事象はないものと認識しておりますが、将来において、何らかの要因により同社の経営方針や事業戦略(当社株式の保有方針も含む。)を変更した場合、当社グループ事業、当社株式の流動性及び株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16) ストック・オプション等による株式の希薄化について

 当社グループは、取締役及び従業員に対して、経営への参画意識を高めるため、ストック・オプション等のインセンティブプランを採用しております。これらのストック・オプション等が行使されれば、既存の株主が有する保有株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日の前月末現在における新株予約権による潜在株式数は333,000株であり、発行済株式総数の4.6%に相当しております。

 

(17) 風評等の影響について

 当社グループは、多数の介護施設と顧客紹介契約を結んでおり、当社グループの各事業において関係のあるネットワークを通じて広く柔軟に施設を紹介するサービスを提供しておりますが、紹介先の介護施設における事故等、安全性を脅かすような事象が発生し、当社グループに不利益な風評が流れた場合には、当社グループのサービスに対して、報道等により利用者の不安心理が高まり、利用者が減少するなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主への利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しておりますが、当社は現在成長過程にあり、財務体質の強化と事業拡大のための投資等に内部留保資金を充当し、一層の業容拡大を目指すことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。

 そのため、今後の事業展開及び財務基盤強化のために必要な内部留保の確保を優先し、当面は無配を予定しておりますが、今後の経営成績及び財政状態を勘案しながら、利益配当についても検討してまいります。なお、配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定であります。

 なお、剰余金の配当を行う場合、年1回の期末配当を基本方針としており、その他毎年9月30日を基準日としての中間配当及び上記の他に基準日を定めて剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めております。配当の決定機関は、期末配当及び基準日を定めての配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

 当期の期末配当金につきましては、上記の方針を考慮し、無配といたしました。