リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
尚、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月26日)現在において当社グループが判断したものであります。
(1)需要及び価格の変動
国内においてのトラック・バス等の販売は、国及び地方自治体による環境規制強化の実施の有無による需要の変動に大きく影響を受けます。また、国内貨物輸送の低迷や物流改革の進行により今後のトラック需要は減少する可能性があります。さらに、他社との価格競争により当社製品の価格変動を引き起こす可能性があります。
海外においてのトラック・バス等の販売は、国・地域及びその市場における経済状況の影響を受け、かつ、他社との価格競争により当社製品の価格変動を引き起こす可能性があります。
これらの需要及び価格変動に対応するため、当社グループは商品力の強化と適正な生産体制の構築、原価改善等を推進し、需要・価格変動に強い企業体質を目指しております。
(2)材料価格の変動
当社グループは国内及び海外の複数のメーカーから鋼材等の資材、部品等を調達し、トラック・バス、エンジン等を生産しております。これらの材料価格は、業界の需要や原材料の価格に伴い変動しております。材料価格が高騰し、かつ、長期化する場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループはこれらの材料価格の変動に対応するため、原価改善等を推進しております。
(3)為替の変動
当社は円表示で連結財務諸表を作成しており、海外における現地通貨建の売上高、費用、資産等の項目は、連結財務諸表作成時に円換算されるため、換算時の為替レートによって、円換算後の価値が影響を受ける可能性があります。
また、国内外での原材料等の仕入れや製品の販売において、外国為替相場の変動は当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。この為替変動リスクを抑えるために一部でデリバティブ取引を行っておりますが、それによって本来得られた利益を逸失する可能性があります。
当社グループは、これらリスクに対応するため、適切なグローバル調達・生産・販売体制を検討・構築しております。
(4)金利の変動
資金調達に係るコストは、市場金利が急激に上昇した場合、支払利息の負担が増大するなど、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは親会社であるトヨタ自動車株式会社とのインハウスバンキングを通じた資金調達のグローバル化等によって当該リスクの最小化を図っております。
(5)貸倒れリスク
当社グループは当社で生産したトラック・バスを全国の販売会社を通し様々な取引先に販売をしております。
これらの取引先において信用不安などにより予期せぬ貸倒れリスクが顕在化し、追加的な損失や引当の計上が必要となる場合には、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは取引先の信用リスク情報などを適時入手し、当該リスクの最小化を図っております。
(6)親会社との取引
当社グループは、親会社であるトヨタ自動車株式会社より乗用車及び一部の小型トラックの生産を委託されており、また小型トラックのOEM供給を行っております。当連結会計年度の売上高の6.2%を同社に依存しております。
尚、当社とトヨタ自動車株式会社との取引は、「関連当事者情報」に記載しております。
(7)国内外での事業活動
当社グループは、日本をはじめアジアを中心とした世界各地で事業活動を展開しております。それらの事業活動には、通常、予期しない法律や規制の変更、産業基盤の脆弱性、人材の採用・確保の困難等、経済的に不利な要因の存在又は発生、テロ・戦争・自然災害・その他の要因による社会的又は政治的混乱等のリスクが存在します。こうしたリスクが顕在化することによって、当社グループの事業活動に支障が生じ、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
尚、当社グループの世界各地域における事業活動は、「セグメント情報」に記載しております。
(8)法規制等
当社グループは、国内外でのトラック・バス等の販売において、安全性や排出ガス、燃費、騒音、公害などに関する法規制等やその他各国の様々な法規制等の適用を受けているため、これらの規制に適合するために費用を負担しております。これら法規制等の制定又は改正が行われた場合、費用負担が増える可能性があります。
(9)製品の欠陥
当社グループは、基礎研究段階を含め、商品企画・開発からアフターサービスまでの各ステップにおいて、安全性への細心の配慮を行うとともに、品質の確保に努めております。
しかし、すべての製品について欠陥が無く、将来にわたりリコールや製造物責任賠償が発生しないという保証はありません。そのため、これらのリスクが顕在化する場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(10)エンジン認証不正問題
当社の日本市場向けエンジンの複数機種について、認証手続上の不正行為があったことが判明し、国土交通省より、一部製品の型式指定の取消等の行政処分を受け、現在も国土交通省やお客様をはじめとして関係各所とのコミュニケーションを継続して行っています。また、当社の米国市場向け2010年モデルから2019年モデルのエンジン認証に関する法令違反の疑いについて、米国司法省及び他の当局による調査が行われております。これに関し、当社及び当社子会社に対し、2004年から2021年に米国で販売された車両に関する損害の賠償を求める訴訟が暫定的な集団訴訟として、米国フロリダ州南部地区連邦地方裁判所で提起されました。2023年10月25日に開示しましたとおり、当社及び当社子会社は、同日、2010年から2019年モデルのエンジンを搭載して米国内で販売・賃貸されたオンロード車両を購入した者又は賃借した者との間で、総額237.5百万米ドルの和解契約を締結しました。この和解契約は、2024年4月1日に裁判所の最終承認を受けた上で、同月11日に上記和解金の支払いを完了し、当該和解は、同年5月2日に確定しております。米国司法省及び他の当局による調査は、引き続き継続中です(なお、当社は2020年エンジンモデル以降米国向けに自社製エンジン搭載車は販売しておりません。)。また、オーストラリアにおいても当社及び当社子会社に対する訴訟が集団訴訟として提起されているほか、カナダにおいても当社及び当社子会社に対する2件の訴訟が集団訴訟として提起されております。今後も米国、オーストラリア、カナダ、その他の法域においてこれらと同様の訴訟を提起される可能性があります。さらに、米国以外の欧州法規等の対象エンジンについても認証手続の総点検を継続中です。これらに関連して当社に生じる金銭的負担について、現時点で合理的に見積もることは困難ですが、上記の当局調査の結果科される罰金などの行政、刑事手続上の制裁に加え、損害賠償や市場措置などにより当社の経営、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に対し、重大な悪影響を及ぼす可能性があります。
(11)三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合の成否及び条件等に関するリスク
当社は、2023年5月30日に、当社、三菱ふそうトラック・バス株式会社(以下「三菱ふそう」という。)、当社の親会社であるトヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」という。)及び三菱ふそうの親会社であるダイムラートラック社(以下「ダイムラートラック」という。)の4社で、当社と三菱ふそうとの経営統合(以下「本経営統合」という。)に関する法的拘束力のない基本合意書(以下「本基本合意書」という。)を締結し、今後、当社、三菱ふそう、トヨタ及びダイムラートラックの4社において、本経営統合を実現するための取引の諸条件に関する法的拘束力のある契約(以下「最終契約」という。)を締結する予定です。本経営統合の詳細については、「第2 事業の状況 5.経営上の重要な契約等 (7)三菱ふそうトラック・バス株式会社との経営統合に係る基本合意書の締結」をご参照ください。上記(10)のエンジン認証不正に関連して当社に生じる金銭負担の金額規模及びそれが判明するタイミング次第では、①本経営統合に関する最終契約の締結に至らないおそれ、②最終契約の締結に至った場合であっても、統合比率の決定内容又は調整の結果、当社株主の株式保有割合に著しい希薄化が生じるおそれ、③最終契約の実行に関する前提条件を充足せず、その結果、本経営統合の実施に至らないおそれ、及び④本経営統合の最終契約の規定に基づき、ダイムラートラック及び一定の条件に同意する三菱ふそうのその他の株主に対して特別補償の責任を負うおそれがあり、本経営統合の成否及び条件等、さらには当社の経営、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
また、最終的に競争法その他法令上必要なクリアランス・許認可等が取得できないことにより、本経営統合の実施に至らない可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、財務体質の強化を図りつつ、毎期の業績、新規投資等を勘案しながら、連結配当性向30%を目安に安定的・継続的に行うよう努めていきます。
当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本方針としており、これらの配当は、定款に基づき、取締役会で決議しています。
尚、当社は株主への機動的な利益還元を可能とするため、取締役会の決議によって、会社法第459条第1項各号に掲げる事項を定めることができる旨を定款に定めております。
当事業年度の剰余金の配当につきましては、固定資産、投資有価証券の売却等により親会社株主に帰属する当期純利益170億87百万円を計上いたしましたが、認証不正による損失が当社グループの業績に与えた影響は大きく、財務基盤を回復・強化することが当面の課題でありますことから、誠に遺憾ながら無配といたしました。内部留保資金については、新製品の開発を含む商品力の強化、生産設備の更新、改善等、将来の持続的な成長へ向けた投資に活用いたします。