リスク
3【事業等のリスク】
当社グループが営む事業におけるリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は以下のとおりであります。当社グループでは、前述の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の経営理念や経営戦略等を踏まえつつ、財務の健全性及び業務の適切性を確保し、保険契約上の責務を確実に履行することを目的として、「グループリスク管理基本方針」等を定め、それに則り、グループを取り巻く様々なリスクを総体的に把握し、リスクの特性等に応じた適切な方法で、リスクの発生の回避及び発生した場合の対応に努めております。
当社グループでは、半期ごとにリスクのプロファイルを更新し、現在グループとして抱えているリスクの洗い出しやそれへの対応状況等についての把握を行っております。また、その一環として、これまでとは異なる要因や環境の変化により発生し、企業に重要な影響を及ぼすリスクである「エマージングリスク」についてのプロファイルも実施し、可能である限り網羅的なリスクの特定に努めておりますが、現時点では予見出来ない、あるいは重要とは見なされていないリスクによる影響を、将来的に受ける可能性があります。
当社グループがプロファイルしたリスクを項目ごとに分類した一覧は下表のとおりであり、それぞれのリスクの概要や主要な管理方法については、以下(1)から(12)までに記載しております。
大分類 |
小分類 |
(1)保険引受に関するリスク |
① 損害保険の引受に関するリスク ② 生命保険の引受に関するリスク ③ 少額短期保険の引受に関するリスク ④ 再保険に関するリスク |
(2)保険業界を取り巻く環境に関するリスク |
① 我が国の経済動向に起因するリスク ② 保険業界における競争激化に起因するリスク ③ 保険マーケットの変化に起因するリスク ④ 新技術又は技術革新に対応出来ないリスク ⑤ 保険業法の規制に関するリスク ⑥ 当社グループの事業運営に係る法規制等の改正や新設に関するリスク |
(3)資産運用に関するリスク |
① 金利変動に関するリスク ② 株価変動に関するリスク ③ 為替変動に関するリスク ④ 信用リスク |
(4)流動性リスク |
① 資金繰りリスク ② 市場流動性リスク |
(5)事業運営に関するリスク |
① 事務リスク ② 従業員、代理店、外部の業務委託先及びお客様等の不正により損失を被るリスク ③ 外部の業務委託先に関するリスク ④ 人材確保・労務に関するリスク |
(6)事業中断に関するリスク |
- |
(7)情報漏えいに関するリスク |
- |
(8)システムリスク |
- |
(9)風評リスク |
- |
(10)M&Aに関するリスク |
- |
(11)リスク管理の有効性に関するリスク |
- |
(12)予測が困難な外的要因によるリスク |
- |
これらの当社グループを取り巻くリスクが、いつ発現するかを完全に予測することは困難であるため、当社グループでは、常にこのようなリスクに直面あるいは内包しているものとしてリスク管理を行っております。そのため、「(1)保険引受に関するリスク」や「(3)資産運用に関するリスク」のように、定量的に評価可能なリスクについて、いつ発現するかは不明であり、かつ極めて稀な確率でしか発現しないものの、発現した場合には大きな影響を受けるケース(例:200年に一度しか発生しないような大規模な市場変動等)を想定した「予想最大損失額」を一定の条件の下で算出し、保険金の支払余力や財務への影響等を確認・評価しております。
このような定量的な評価結果やリスクプロファイルの結果等、更には予見可能性も踏まえて、顕在化した場合に一定の影響を受けるリスクは以下であると認識しております。
顕在化した場合の影響度 |
リスクカテゴリー |
大 |
(1)保険引受に関するリスク (3)資産運用に関するリスク (5)事業運営に関するリスク(①事務リスク) (6)事業中断に関するリスク |
中 |
(4)流動性リスク (5)事業運営に関するリスク(④人材確保・労務に関するリスク) |
これらに加えて、当社グループでは、持続的な企業価値の向上に向け、統合的リスク管理(ERM:Enterprise Risk Management)態勢の整備も進めております。
具体的には、以下のような関係となる、収益(リターン)・リスク・資本をバランスよく一体的に管理し、財務の健全性を確保しつつ、収益性や資本効率の向上を図ることとなりますが、当社グループにおいては、その達成に向けた様々な取り組みを実施しております。
なお、文中の将来に関する事項については、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)保険引受に関するリスク
① 損害保険の引受に関するリスク
当社グループの損害保険事業においては、自動車運転に関わるリスクや地震・台風等の自然災害に関わるリスク等を引き受けております。保険料設定時に想定している経済情勢や保険事故発生率等が、その想定に反して変動した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性がありますが、とりわけ、地震・噴火・台風・水災・大雪その他の大規模な自然災害が、広範囲あるいは人口密集地において発生した場合には、更にその影響が大きくなる可能性があります。このような場合に備えて、当社グループは保険業法の定めにより異常危険準備金等を積み立てておりますが、この準備金等が実際の保険金支払いに対して十分ではない可能性もあります。このような予測を超える頻度や規模で自然災害が発生した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
本リスクに係る主な管理方法として、定期的な損害率等の主要な指標に関するモニタリングの実施、特定のシナリオに基づくストレステストの実施による影響度の把握とアクションプランの整備及び再保険を活用したリスクの移転等が挙げられます。
② 生命保険の引受に関するリスク
当社グループの生命保険事業における収益は、保険料率の設定や責任準備金の額を決定するために使用する計算基礎率(予定死亡率・予定利率・予定事業費率)が、どの程度実績値と一致するか等によって大きく左右されます。予定死亡率よりも実際の死亡率が高かった場合、予定利率より実際の資産運用利回りが低かった場合及び予定事業費率よりも実際の事業費率が高かった場合には、想定よりも低い水準での収益しか得られないこととなります。生命保険事業においては、保険期間が長期に亘るという契約の特質上、このような前提としている指標に関する不確実性が内在するため、想定と大きく異なった保険金支払い等の事象が発生した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
また、生命保険事業だけではなく、損害保険事業等においても同様ですが、保険業法及びその施行規則に従い、将来の保険金や給付金の支払いに備えて、「責任準備金」を積み立てる必要があります。これは、保険契約にて保障(補償)される事象の発生する頻度や時期、保険金等の支払額、資産運用額等についての一定の前提を置いた上での見積りとしていますが、このような前提と実際の結果に乖離が生じた場合や、環境の変化等により将来乖離することが想定される場合には、責任準備金の積増しが必要となることがあります。この責任準備金は、当社グループにおける負債の中で最も大きな部分を占めますが、その内訳として生命保険事業に係るものが最大の割合を占めているため、特に生命保険事業において大きな乖離等が生じた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
本リスクに係る主な管理方法として、定期的な事故発生率等の主要な指標に関するモニタリングの実施、特定のシナリオに基づくストレステストの実施による影響度の把握及び再保険を活用したリスクの移転等が挙げられます。
③ 少額短期保険の引受に関するリスク
当社グループの少額短期保険事業においては、地震・台風等の自然災害に関わるリスクからペットの診療費に関わるリスクまで、様々なリスクを引き受けております。保険料設定時に想定している経済情勢や保険事故発生率等が、その想定に反して変動した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性がありますが、とりわけ、地震・噴火・台風・水災・大雪その他の大規模な自然災害が、広範囲あるいは人口密集地において発生した場合には、更にその影響が大きくなる可能性があります。このような場合に備えて、当社グループは保険業法の定めにより異常危険準備金等を積み立てておりますが、この準備金等が実際の保険金支払に対して十分ではない可能性もあります。このような予測を超える頻度や規模で自然災害が発生した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
本リスクに係る主な管理方法として、定期的な損害率等の主要な指標に関するモニタリングの実施、特定のシナリオに基づくストレステストの実施による影響度の把握及び再保険を活用したリスクの移転等が挙げられます。
④ 再保険に関するリスク
当社グループにおいては、引き受けた保険責任を分散し収益を安定させることを目的として再保険を利用しておりますが、再保険市場の環境変化により再保険料が高騰する場合や十分な再保険の手当てが出来ない場合があります。また、再保険会社の破綻等により再保険金が回収不能となる信用リスクも伴うため、これらの事象が発生した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
本リスクに係る主な管理方法として、出再先の再保険会社の財務格付け等に関するモニタリングや出再先の分散等が挙げられます。
(2)保険業界を取り巻く環境に関するリスク
① 我が国の経済動向に起因するリスク
当社グループが営む事業においては、その収益の多くが日本国内にて生み出され、かつ個人向け保険商品の販売に起因するものであることから、国内の景気や個人消費の動向等による影響を受けやすいものとなっております。今後個人消費が大きく低迷する経済局面が到来した場合には、当社グループの保険商品への需要の低下や個人保険の解約・失効の増加、資産運用収支の悪化等のおそれがあり、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
② 保険業界における競争激化に起因するリスク
当社グループは、保険マーケットにおいて、他の損害保険会社や生命保険会社等との激しい競争に直面しております。競合他社の中では、当社グループに比べて、商品内容やラインナップ、保険料水準等において優位性を有している会社があります。また、新規参入や経営統合によるシナジー効果の発揮等により、高い競争力を有した会社が今後新たに出現し、当社グループが、価格面や商品面等でこのような会社に劣後した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
また、SBI損害保険株式会社は、いわゆるダイレクト損保に分類される保険会社でありますが、マーケットにおいて、ダイレクト損保は、それ以外の競合他社に比べて価格優位性はあっても、サービス品質が低いとのイメージが広まった場合、ダイレクト損保のマーケットシェアが拡大せず、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
③ 保険マーケットの変化に起因するリスク
人口減少や少子高齢化、回復基調ではあっても大きくは回復しない個人消費の動向等を背景として、我が国の生命保険マーケットは、総保有契約高の減少をはじめとする様々な影響を受けております。とりわけ青壮年層の人口減少や保険ニーズの低下は、マーケット規模の縮小を生み、これにより当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
また、当社グループが取り扱う損害保険商品のうち、基幹商品となるのは自動車保険でありますが、自動車保険マーケットは、新車登録台数の動向が不安定であることや軽自動車等の比較的安価な車両の保有割合が上昇していること等により、ほぼ横ばいの状態であります。今後マーケット規模が大幅な縮小に転じた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。本リスクについては、前述の「エマージングリスク」に係る管理を通じて、想定されるリスクの洗い出しや今後の施策の整備等について、継続的に対応してまいります。
④ 新技術又は技術革新に対応出来ないリスク
自動車における自動運転技術の普及や医療技術の進歩等、近年保険業界を取り巻く技術水準の進化は急速に進んでおります。そして、これら技術革新を金融分野に応用するいわゆるFinTechについても、今後その本格的な推進が想定されます。例えば、自動車の自動運転技術が一般化すれば、自動車事故が減少し保険ニーズが低下することが想定され、これにより自動車保険マーケットは大きく変貌することとなります。また、疾病の発症予測精度の向上や新しい診断・治療技術の開発等により、現行商品の補償(保障)内容や補償(保障)額ではお客様のニーズに応えられなくなり、競争力を失ってしまうリスクがあります。当社グループは、このような技術革新に合わせた商品やサービスを提供しつつ、事業の継続的な拡大を図っていく必要がありますが、これへの対応が出来ない、あるいは不十分である場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。本リスクについても、前述の「エマージングリスク」に係る管理を通じて、想定されるリスクの洗い出しや今後の施策の整備等について、継続的に対応してまいります。
⑤ 保険業法の規制に関するリスク
当社グループは、保険業法及び関連法令の下、金融庁による包括的な規制等の監督を受けております。例えば、保険業法においては、業務範囲の制限、資産運用における運用範囲の制限、一定の準備金の確保及び最低限のソルベンシー・マージン比率(※)の維持等が定められております。また、同法においては、内閣総理大臣に対し、各種の報告徴求や会計記録等に関する立ち入り検査の実施等、広範な権限を与えております。
我が国において、保険持株会社、損害保険会社及び生命保険会社は免許制であり、少額短期保険業者は登録制であります。免許や登録に特段の期限の定めはないものの、これらの会社が、法令や定款に違反した場合、又は公益を害する行為をした場合等には、内閣総理大臣は、業務の全部もしくは一部を停止させる、あるいは免許を取り消すこと等ができる旨も保険業法により定められております。
本書提出日現在において、当社グループにおいて上述の事由に該当する事実はありませんが、将来において免許が取り消される等の事態が生じた場合には、その会社は事業の継続が出来なくなり、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
(※)「ソルベンシー・マージン比率」について
保険会社は、一定程度の保険金等の支払いの増加や金利の低下による収入減など「通常予測できる範囲のリスク」に対しては、保険金の支払いを予め見込んで「責任準備金」として積み立てています。一方で、大規模な災害による保険金支払いの急激な増加や運用環境の悪化等の「通常の予測を超えたリスク」に対しては、「自己資本」や「準備金」等で対応することになります。つまり、「ソルベンシー・マージン比率」とは、保険会社が、「通常の予測を超えたリスク」に対して、どの程度「自己資本」や「準備金」等の支払余力を有するかを示す財務健全性に関する指標となります。
ソルベンシー・マージン比率は、保険会社に対して、早めの経営改善を促すための指標となるものであり、これが200%を下回ると、内閣総理大臣により早期是正措置命令が発動されることになります。
⑥ 当社グループの事業運営に係る法規制等の改正や新設に関するリスク
当社グループの保険事業に係る法規制等の改正や新設があった場合、当社グループの事業運営に大きな影響を及ぼす可能性があります。例えば、国際会計基準審議会は、保険負債の現在価値評価を含む、保険契約に係る新しい会計基準を公表しております。この新しい会計基準が導入された場合や現在検討が進んでいる経済価値ベースでのソルベンシー規制においては、その時々の金利水準等の要素を考慮して責任準備金を計算することとなりますが、想定している以上の責任準備金の積立てが必要となる可能性があります。このように、当社の事業運営に関わる法規制等に改正や新設が生じた場合には、これへの対応に係る追加的なコストの発生等も含めて、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
なお、上記の経済価値ベースのソルベンシー規制の導入に向け、当社グループでは、SBI損害保険株式会社及びSBI生命保険株式会社を中心にして、基準指標となるESR(Economic Solvency Ratio : 経済価値ベースのソルベンシー比率)を定期的に算出し、その結果や変動要因等をORSA(Own Risk and Solvency Assessment : リスクとソルベンシーの自己評価)結果等にて経営に対して報告する一方、当該規制の導入に向けた検討や態勢整備等を進めております。
(3)資産運用に関するリスク
① 金利変動に関するリスク
保険契約が長期に亘る生命保険事業を行っているSBI生命保険株式会社においては、保険契約の引受によって生じる負債の特性に合わせて運用資産を適切に管理し、長期的にも資産・負債のバランスを保ちながら、安定的に収益を確保することを目的として、「ALM」(Asset Liability Management:資産・負債の総合的管理)を実施しております。ALMにおいては、保険契約者に対する債務のデュレーション(残存期間)と運用資産のそれをマッチさせることが基本となりますが、これがミスマッチとなった場合には、金利変動リスクが生じる可能性があります。
具体的には、金利の低下局面においては、平均運用利回りが低下する一方で、既に保有している保険契約において設定している予定利率は変わらないため、いわゆる逆ざやが発生することがあり、これにより当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
これとは逆に、金利の上昇局面においては、平均運用利回りも上昇しますが、保有する公社債の価格が下落することにより、評価損や減損が発生することがあります。また、保険契約者がより高利回りとなる他の金融商品を選好することにより、解約率が上昇することがあります。これらにより当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
② 株価変動に関するリスク
株式市場の下落による、有価証券評価損・売却損の発生又は有価証券含み益・売却益の減少を通じて、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。また、保有するその他有価証券の評価差額金が減少する場合には、当社グループの純資産の減少及びソルベンシー・マージン比率の低下が生じる可能性があります。
本リスクに係る主な管理方法として、株式市場の状況等に関するモニタリングや、保有する株式の価値が、設定した一定の基準に抵触するまで下落し、その後も回復が見込めないと判断される場合には、それを売却して損失を確定させる等とする「ロスカット・ルール」の運用等が挙げられます。
③ 為替変動に関するリスク
当社グループは、外貨建て資産を保有しておりますが、為替相場に大きな変動が生じた場合、為替ヘッジをしていない資産において、あるいはフルヘッジとしていたとしても、国内外の金利差が拡大し、ヘッジコストが高まった場合には損失が発生し、これらにより当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
本リスクに係る主な管理方法として、為替相場やヘッジコストの状況等に関するモニタリングの実施等が挙げられます。
④ 信用リスク
当社グループが保有する債券において、信用格付けの引き下げ等により、その発行体の信用力が低下した場合には、当該債券の市場価格も低下し、有価証券売却損や有価証券評価損が発生することがあります。また、発行体の財政状態が悪化することにより、元利金の不払い等の債務不履行に陥ることがあります。これらにより当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
本リスクに係る主な管理方法として、与信先の財務状況等に関する定期的なモニタリングの実施等が挙げられます。
(4)流動性リスク
当社グループが営む保険事業においては、保険金、給付金及び解約返戻金等の支払いに備え、流動性を確保する必要があります。当社グループにおいては、各社の事業特性に応じて、十分な流動性資産を保有する等の適切な流動性の管理を行っております。その一方で、公社債等の流動性が低い資産も保有しているため、大量あるいは大口解約に伴う解約返戻金支出の増加、大規模な自然災害の発生による支払保険金の増加等により資金ポジションが悪化した結果、著しく低い価格でこれを売却することを余儀なくされることも含め、通常よりも著しく高いコストでの資金調達が必要となる場合もあります。この場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
本リスクに係る主な管理方法として、資金繰りの状況に関する定期的なモニタリングの実施や特定のシナリオに基づくストレステストの実施による影響度の把握等が挙げられます。
(5)事業運営に関するリスク
① 事務リスク
当社グループの事業運営においては、保険契約の申込み、保険料の請求、保険金等の支払の保険契約の管理や資金決済等をはじめとして、極めて多岐に亘る事務プロセスが存在します。そのため、当社グループでは、手順書の整備や、重大な事務事故が発生した場合には、その事例検証に基づく再発防止策の策定等により、事務リスク管理を行っております。しかしながら、これが十分に機能せず、重大な過失や不正行為等により、お客さまが損害を被った場合や当社グループの事務プロセスを大幅に見直す必要が生じた場合、あるいは訴訟等が提起され、その解決に相当程度の時間及び費用を要した場合や結果として損害賠償を命じられた場合等には、その補償や追加的なコストの発生等により、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
② 従業員、代理店、外部の業務委託先及びお客様等の不正により損失を被るリスク
当社グループの事業運営においては、従業員、代理店、外部の業務委託先及びお客様等の詐欺やその他の不正行為により、損失が生じるリスクがあります。
当社グループの従業員や保険代理店は、営業活動等を通じて、お客様の個人情報・経済情報を知りうる立場にあるため、この情報を利用して、詐欺、違法な販売活動やなりすまし犯罪等の不正が行われる可能性があります。また、お客様も、反社会的勢力であることを秘匿して当社グループと取引をする、あるいは保険契約を利用した詐欺やマネーローンダリング等の不正行為をすることがあります。当社グループでは、契約引受時や保険金支払時等において、これらを防止するあるいは見破るための態勢を整備しておりますが、完全には排除できない可能性があります。
これらの事象が生じ、当社グループのイメージが大きく低下した場合、あるいは訴訟等が提起され、その解決に相当程度の時間及び費用を要した場合や結果として損害賠償を命じられた場合、行政処分を受けた場合等には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
③ 外部の業務委託先に関するリスク
当社グループにおいては、例えば、情報システムの開発・保守・運用、お客さまへの各種通知等の印刷、SBI損害保険株式会社にて提供しているロードサービスや損害調査サービス、文書保管等のように、一部の業務を外部業者に委託しております。この外部業者において何らかの事故等が生じ、委託している業務の一部又は全部が停止した場合には、当社グループからお客さまに対しサービスが提供出来なくなる可能性があります。更には、このような業務の停止が長期化する場合には、当社グループでは代替手段を検討することとなりますが、速やかかつ合理的なコストでの導入が困難である可能性があります。このような場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
本リスクに係る主な管理方法として、社内規程にて定める事前確認や審査に基づく委託契約の締結や、委託後における適切な業務の遂行に係る指導や管理、そして定期的な監査の実施等が挙げられます。
④ 人材確保・労務に関するリスク
当社グループが営む保険事業においては、特に保険数理、資産運用及びリスク管理等の分野について、高度な専門性を有した人材を配置する必要があります。そのため、当社グループでは、優秀な人材の確保、育成・定着に努めておりますが、これらが不十分であった場合には、当社グループの商品性や収益性等が他社に比べて劣後することとなるため、経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
また、処遇や勤務管理等の人事労務面や、職場の安全衛生管理面での問題等に起因して、当社グループ従業員から訴訟等が提起される可能性があります。この場合には、その解決には相当程度の時間及び費用を要する場合があり、また、結果として損害賠償を命じられた場合には、当社グループの社会的信用、経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
本リスクに係る主な管理方法として、専門性の高い人材に係る採用や配置をより効果的・効率的に行うための当社によるグループ一元管理の推進、「目標管理制度」や「360度評価制度」等による公平な人事制度の運用及び時間外労働時間や休暇の取得状況に関するモニタリング等が挙げられます。
(6)事業中断に関するリスク
当社グループは、地震・噴火・台風・水災・大雪等の大規模な自然災害、新型インフルエンザ等の感染症の大流行、電気・ガス・水道等の社会インフラの大規模な障害等の発生に備えて、事業継続計画等を策定し、これら不測の事態においても、継続的に事業を運営出来る体制の整備に努めておりますが、このような危機管理にもかかわらず、当社グループの事業継続が阻害された場合、あるいは想定を超える影響を受け、設備やインフラの回復等に多額の費用や長期間を要することとなった場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
また、このような状況下において、当社グループの事業が継続出来ていたとしても、社会・経済全体の活動が低下することによる影響を受けることにより、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
(7)情報漏えいに関するリスク
当社グループ(業務運営上、関連する外部の業務委託先を含みます。)においては、個人情報を含む大量のお客さま情報や当社グループ各社の経営情報等の機密情報を保有しております。その中でも、個人情報については、個人情報の保護に関する法律等の関係法令に基づき、特に適切な取扱いが求められておりますが、近年サイバー攻撃等が多発している状況に鑑み、より厳重な管理態勢を整備しなければならないものと当社は認識しております。
そのため、当社グループでは、プライバシーポリシーを策定するとともに、情報漏えいに関する規程を整備し、これに則った事業運営を実施するほか、情報セキュリティに係るインシデントが発生した場合に、その通知を受け取る窓口として機能し、その状況を他のセキュリティ関連組織と連携して把握・分析し、適切に対応する社内組織である「CSIRT」(Computer Security Incident Response Team)も運営しており、これらの取り組みを通じて厳重な管理に努めております。当社グループ従業員が個人情報を紛失する、あるいは外部からの不正アクセス等によりこれら情報が不正利用等された場合には、訴訟等が提起され、その解決に相当程度の時間及び費用を要する可能性や結果として損害賠償を命じられる可能性、あるいは行政処分を受ける可能性があり、これにより当社グループに対する信頼が損なわれることによる新契約の減少や解約の増加や、これへの対応に要する追加的なコストの発生等により、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
(8)システムリスク
当社グループは、情報システムを利用して、保険募集、契約管理、保険金支払や資産運用等を行っておりますが、その中でも、保険募集においては、インターネットを活用した募集チャネル(ダイレクト募集チャネル)をメインチャネルとしていることもあり、事業運営上、情報システムは極めて重要な機能を担っており、更には、それへの依存度はかなり高い事業体であると言えます。
そのため、自然災害、事故、サイバー攻撃等による不正アクセスや情報システムの開発・運用における不備等により、情報システムの停止・誤作動、不正使用等が発生した場合、事業運営に深刻な影響が生じることを当社は十分に認識しており、上記「CSIRT」のほか、ファイアウォールの設定やウイルス対策ソフトの導入等によるセキュリティ対策の実施や事業継続計画の策定等の各種の対策を講じております。これらにもかかわらず重大なシステム障害が発生した場合には、訴訟等が提起され、その解決に相当程度の時間及び費用を要する、あるいはその結果として損害賠償を命じられることも含めた直接的あるいは間接的なコストの発生や、当社グループに対する信頼が損なわれることによる新契約の減少や解約の増加等により、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
(9)風評リスク
当社グループに対する否定的な風評が、マスコミ報道やインターネット上の記事・投稿等により流布した場合、それが事実に基づいたものであるか否かにかかわらず、当社グループの社会的信用に影響を与える可能性があります。当社グループにおいては、これら風評の早期発見に努めるとともに、風評が発生した場合には影響の極小化を図る態勢を整備しておりますが、悪質な風評が流布した場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
(10)M&Aに関するリスク
当社グループでは、M&Aを当社グループの成長戦略の一角と位置付けております。そのため、買収対象企業の安定的な確保、買収価格を含む適切な買収対象の選定と買収の実行、及び買収後における当社グループの事業運営や企業文化等への適切な適合を行うこと等により、リスク管理を実施しております。
しかしながら、そもそも買収対象が存在しない場合や、条件の合意に至らずに買収が成立しない場合等が想定されるため、必ずしもM&Aという手法を用いた当社グループの成長が保証されているものではありません。また、買収に至った場合であっても、買収後に当該企業の価値が低迷した場合には、減損処理が必要となるリスクもあります。その他にも、当社グループにおける既存事業との補完が十分とはならない場合や、買収企業が展開する商品やサービスにおいて継続的な需要が減衰する場合もあります。これらの事象が生じた場合には、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
(11)リスク管理の有効性に関するリスク
当社グループでは、保険引受リスク、資産運用リスク、流動性リスクやオペレーショナルリスク等にリスクを分類し、これらの管理手法等を定めた規程を制定すること等により、リスク管理を実施しております。
しかしながら、これらは、過去の経験や歴史的データをベースにして実行しているものであるため、将来発生するリスクを正確には予測出来ず、大きな変動が生じた場合や外部環境が急激に変化した場合等においては、有効に機能しない可能性があります。当社グループでは、当社グループを取り巻くリスクの状況を定期的に把握し、必要に応じてリスク管理手法の最適化を継続的に図っておりますが、これが有効でない場合には、予期していない損失を被る、あるいは行政処分を受ける等の可能性があり、これにより当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
(12)予測が困難な外的要因によるリスク
上記に掲げるリスク以外にも、国内外での紛争、暴動、テロリズム、過去に例のない大規模な事故・事件等の事前の予測が困難な外的要因により、当社グループの経営成績や財政状態に影響が生じる可能性があります。
以上の当社グループがプロファイルしたリスクのほか、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項は次のとおりであります。
SBIグループとの関係について
① SBIホールディングス株式会社との資本関係等について
親会社であるSBIホールディングス株式会社は、当社役員の選任・解任、他社との合併等の組織再編、定款の変更等の当社の株主総会決議の結果に重要な影響を及ぼす可能性があります。
② 「SBI」の商標使用について
当社グループは、SBIホールディングス株式会社に対し商標使用を申請しその使用の承諾を得て「SBI」の名称を使用しております。当社が、SBIホールディングス株式会社の子会社・関連会社等でなくなった場合等には、「SBI」の商標を使用できない可能性や使用条件が変更される可能性があります。
③ SBIグループとの取引について
当社グループとSBIホールディングス株式会社を頂点とするSBIグループ各社は、第三者である他社と同等の条件により、営業取引等を行っております。2024年3月期における当社グループと当社グループを除くSBIグループとの主な取引は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(関連当事者情報)」に記載した取引のほか、以下のとおりであります。
取引内容 |
会社名 |
取引金額 (百万円) |
取引条件の決定方法等 |
クレジットカード等の決済関連費用の支払 |
株式会社ゼウス |
653 |
外部との一般取引条件を考慮し、決定しております。 |
オフィス転貸借契約に伴う賃料等の支払 |
SBIホールディングス株式会社 |
430 |
SBIホールディングス株式会社が一括して賃借したオフィスの転貸借契約に基づく利用であり、専有面積に応じて負担しております。 |
コールセンター運営に関する業務委託費の支払 |
SBIビジネス・イノベーター株式会社 |
423 |
外部との一般取引条件を考慮し、決定しております。 |
代理店業務に係る委託手数料等の支払 |
SBIマネープラザ株式会社 |
356 |
外部との一般取引条件を考慮し、決定しております。 |
Webサイト「保険の窓口インズウェブ」を通じた保険見積請求サービスや保険資料請求サービス費用の支払 |
SBIホールディングス株式会社 |
349 |
収入保険料に占める割合や外部との一般取引条件を考慮し、決定しております。 |
人材派遣料の支払 |
SBIビジネス・イノベーター株式会社 |
316 |
外部との一般取引条件を考慮し、決定しております。 |
なお、当社グループは、取引条件の適切性を確保するため、SBIグループ各社との間で取引が見込まれる際には、事前に取締役会等において当該取引の必要性及び当該取引の条件が第三者との通常の取引の条件と著しく相違しないことを十分に審議した上で意思決定を行っております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、グループ各社の利益成長、今後の経営環境の変化への対応及び財務体質強化のための内部留保との調和を図りつつ、株主に対して安定的な利益配当を継続していくことを基本方針としており、2023年5月に策定した中期経営計画(2024年3月期~2028年3月期)において、配当については連結配当性向30%前後の水準で実施することを掲げております。また、毎事業年度における配当回数についての基本的な方針は、年1回(通期の連結業績を踏まえて実施する期末配当)としております。
これらの方針に基づき、当期(2024年3月期)につきましては、普通配当15円に上場5周年の記念配当3円を加えた1株当たり18円の期末配当(連結配当性向は30.8%)を実施することを決定いたしました。なお、内部留保資金につきましては、グループ各社の利益成長、今後の経営環境の変化への対応及び財務体質強化のために有効活用してまいります。
当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年5月9日 |
446 |
18 |
取締役会決議 |
(注)1株当たり配当額の内訳 普通配当15円、上場5周年の記念配当3円
当社は、前述のとおり、毎事業年度における配当回数についての基本的な方針を年1回としておりますが、株主のみなさまへの機動的な利益還元を行うことを目的に、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる旨定款に定めております。