2023年12月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

 以下において、当社の事業展開その他に関連するリスク要因となる可能性があると考えられる主な項目を記載しております。また、必ずしも事業上のリスク要因とは考えていない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。

 当社はこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対処に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、以下の事項等のリスク及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えます。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

(1) 事業に関するリスク

ロボアドバイザー市場に関するリスクについて

 当社は、本書提出日現在、ロボアドバイザー事業の単一セグメントです。当社では、ロボアドバイザー市場が今後も拡大していくことを前提に、提供サービスの充実化、お客様基盤の拡大に向けた広告宣伝活動、提携パートナーの拡充等を進め、預かり資産を継続的に伸ばし、収益拡大を図る方針です。

 しかしながら、新たな法的規制の導入や改正、その他予期せぬ要因により、当社の想定通りにロボアドバイザー市場が成長せず、広告宣伝費に見合うお客様基盤の拡大が困難になることや、提携パートナーやその候補先の事業方針が変更となる場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 商品特性に関するリスクについて

 当社は、お客様が「長期・積立・分散」の資産運用を続けられるようサポートをしております。当社サービスである「WealthNavi(ウェルスナビ)」の機能を拡充させ、また、コラム、ビデオメッセージ及びセミナー等で日々情報発信をしております。さらに、お客様の継続期間と運用金額に応じて手数料率が低減する仕組みである「長期割」など、長期投資を奨励する施策も導入しております。

 しかしながら、世界的に金融マーケットが大きく変動するなどで、お客様が長期投資に挫折してしまう場合には、解約の増加等の可能性は排除できず、預かり資産残高の減少を招き、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 金融市場に関するリスクについて

 当社の営業収益の中心である受入手数料は、お客様から頂く手数料であり、預かり資産に連動しております。預かり資産残高は、投資対象資産の時価が変動することによっても増減するため、世界経済や世界的な金融マーケットの変動により資産価格が下落した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社サービスである「WealthNavi(ウェルスナビ)」では、長期の国際分散投資において、基軸通貨である米ドル建てで資産を効率的に増やすことが重要であるとの考え方に基づき、お客様の資産配分の最適化を米ドル建てで実施しております。一方で、営業収益は円建てで算定されることから、米ドル・円の為替レートの変動は、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 他社との競合に関するリスクについて

 当社は、国内ロボアドバイザー市場において、預かり資産、運用者数ともに国内第1位(注)を継続的に確保しております。しかしながら、今後国内外の大手金融機関などがロボアドバイザー事業に積極的に経営資源を投入した場合や、業界内における統廃合等で競合他社の規模が拡大した場合は、その地位が変化する可能性があります。当該競争環境の変化が起こり、当社がその変化に柔軟に対応できなかった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当該競争環境の変化が、運用手数料の過当引下競争をもたらしたり、新規参入者又は既存の競合他社による従業員の引き抜き競争をもたらしたりする可能性があります。そのような事態が発生した場合には、預かり資産残高の減少などの悪影響を及ぼす可能性があり、その結果として当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、2024年1月からは、非課税の投資枠を拡大し期間を恒久化した新しいNISA制度が始まり、「貯蓄から投資へ」の流れの更なる加速が期待され、当社サービスである「WealthNavi(ウェルスナビ)」の運用者数や一人当たり預かり資産の増加を期待しています。一方で、新NISA制度に対応したサービスを提供する金融機関間での競争が激化する可能性があり、当社がお客様のニーズに合致したサービスが提供できないなどの場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(注) 一般社団法人日本投資顧問業協会「契約資産状況(最新版)(2023年9月末現在)」より当社作成。

 

⑤ システムに関するリスクについて

 当社では、「情報セキュリティ管理規程」を定め、情報セキュリティの管理体制、管理方針、リスクの統制に係る方針を定め、重要な情報資産をさまざまな脅威から保護し、各種リスクをコントロールしております。

 しかしながら、当社のサービスは、当社コンピューターシステム、また当社サービスは外部クラウドサーバー(Amazon Web Services。Amazon.comが提供するクラウドコンピューティングサービス)などのITシステムに依拠する割合が高いことから、それらに重大な障害が生じた場合等には、受入手数料の計上に係る財務報告を含む当社の業務に影響を及ぼす可能性があります。事故・災害等の自然災害や外部からのサイバー攻撃、外部からの不正アクセスにより想定以上のシステム障害や顧客資産の流出等が発生した場合には、当社が第三者に生じた損害を賠償する責任を負うだけでなく、監督当局から行政処分を受け、お客様やマーケットの信頼を失うこと等により預かり資産残高の減少等の悪影響が発生し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 技術革新に関するリスクについて

 当社サービスである「WealthNavi(ウェルスナビ)」は、インターネットを通じてスマートフォンやパソコン等より、口座開設からその後の運用まですべての取引が完結する設計となっていることが大きな特徴となります。また、「ものづくりする金融機関」として、既存技術の活用と合わせて新技術を積極的に採用し、分かりやすい、使いやすいサービスとなるよう、継続的に改善に取り組んでいることが、お客様に選ばれている背景の1つと考えております。

 しかしながら、インターネット及びスマートフォン等の高機能端末を取り巻く環境は、急速な技術革新が進んでおり、将来的に技術革新等への対応の遅れにより市場環境の変化に適切に対応できない場合や、多額の開発費用が生じた場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 法的規制に関するリスクについて

 当社は、第一種金融商品取引業、投資運用業、投資助言・代理業及び資金移動業の登録を以下のとおり行っており、「金融商品取引法」、「資金決済に関する法律(資金決済法)」を中心として、当社事業に関連する各種法令に基づく規制を受けております。

 

取得年月日

2015年12月17日

2015年12月17日

2015年12月17日

2019年11月22日

許認可等の名称

第一種金融商品取引業
(関東財務局長
(金商)第2884号)

投資運用業
(関東財務局長
(金商)第2884号)

投資助言・代理業
(関東財務局長
(金商)第2884号)

資金移動業
(関東財務局長
第00071号)

所管官庁等

金融庁

金融庁

金融庁

金融庁

法令違反の要件
及び主な許認可等の取消事由

金融商品取引法
第52条、第54条

金融商品取引法
第52条、第54条

金融商品取引法
第52条、第54条

資金決済法
第56条第1項

及び第2項

有効期限

 

 

 当社は、これらの法令や諸規制を遵守するための対策を講じており、主要な事業活動の前提となる事項について、その継続に支障を来す要因は発生しておりません。しかしながら、仮にこれらの法令や諸規制への抵触を完全に防ぐことができず、法令違反等が発生した場合には、罰金、一部の業務の停止、社内管理態勢の改善等に関する命令、又は営業登録の取消しなどの処分を受ける可能性があります。また、これらの法令や諸規則の改正又はその解釈や運用の変更が行われる場合において、通常業務への制限、コストの増加等の悪影響が考えられ、その結果として当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 加えて、法解釈等の違いにより、監督当局からの行政指導・処分を受けるなどした場合には、運用資産残高の減少等の悪影響が発生し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。さらには、売買益に関する税率が変更される等の税制の変更や、解釈の変更による影響が生じた場合には、お客様の投資意欲への影響が生じ、解約又は新規流入の減少による運用資産残高の減少を招き、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 組織体制に関するリスク

① 人材の確保に関するリスクについて

 ロボアドバイザー事業の継続的な成長や、生涯にわたりお客さまのお金の課題を解決する総合アドバイザリー・プラットフォーム(MAP:Money Advisory Platform)の開発・提供の実現に向けて、金融業界やテクノロジー業界をはじめとする多様なバックグラウンドをもった優秀な人材を採用し、強い組織体制を整備することが重要だと認識しております。そのため、従業員が中長期にわたって活躍しやすい環境の整備、企業カルチャーの醸成及び人事制度の構築等を進め、組織力の強化に取り組む方針であります。しかしながら、人材採用・育成が計画どおりに実現できなかった場合や、優秀な人材が社外に流出した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 内部管理体制の整備状況に関するリスクについて

 当社では、企業価値を継続的かつ安定的に高めていくためには、コーポレート・ガバナンス及びコンプライアンス体制が有効に機能するとともに、適切な内部管理体制の整備が必要不可欠と認識しております。業務の適正性及び財務報告の信頼性確保のための内部統制システムの適切な整備・運用、また法令・社内規程等の遵守を徹底しております。また、重要な社内規程については、役員及び全従業員を対象として社内研修を実施し、周知徹底を図っております。

 しかしながら、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の整備が追いつかない状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難になり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 個人情報管理に関するリスクについて

 当社では、事業活動を通じて取得した個人情報及び当社の役職員に関する個人情報を保有しております。個人情報の取扱いについては「個人情報等取扱規程」、「特定個人情報等取扱規程」を策定の上、その遵守を徹底しております。

 しかしながら、万一、当社の保有する個人情報が外部に漏洩した場合又は不正使用された場合には、当社が第三者に生じた損害を賠償する責任を負うだけでなく、監督当局から行政処分を受け、お客様やマーケットの信頼を失うこと等により運用資産残高の減少等の悪影響が発生し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 特定人物への依存に関するリスクについて

 当社の代表取締役CEOである柴山和久は、設立以来当社の事業に深く関与し、ロボアドバイザー事業に関する豊富な知識と経験を有しており、経営戦略の立案やその実行に際して重要な役割を担っております。当社は、特定の人物に依存しない体制を構築すべく権限委譲、組織体制の強化を図り、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同氏が当社の経営執行を継続することが困難になった場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) その他のリスク

① 株式価値の希薄化について

 当社は、中長期的な企業価値向上に対するインセンティブとして、当社の役員、従業員に対して新株予約権及び譲渡制限付株式の付与を行っております。また、今後においても新株予約権又は譲渡制限付株式等を利用したインセンティブプランを活用する可能性があります。これらの新株予約権の権利行使や譲渡制限付株式の発行に伴い、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、当事業年度末時点の新株予約権による潜在株式数は1,741,683株であり、発行済株式総数49,490,339株の3.52%(小数点以下第3位を四捨五入)に相当しております。

 

② 配当政策について

 当社は、現在成長段階にあると認識しており、事業拡大や組織体制整備への投資のため、内部留保の充実が重要であると考え、会社設立以来配当を実施しておらず、今後の配当実施の可能性及び時期については未定であります。しかしながら、株主還元を適切に行っていくことが経営上重要であると認識しており、事業基盤の整備状況や投資計画、業績や財政状態等を総合的に勘案しながら、将来的には、安定的な配当を行うことを検討していく方針であります。

 

③ 税務上の繰越欠損金について

 2023年12月期末時点において、当社は税務上の繰越欠損金を有しております。当社の業績が順調に推移することにより、繰越欠損金が解消された場合には、所定の税率に基づく納税負担が発生するため、当期純利益及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 訴訟等について

 当社の事業に重大な影響を及ぼす訴訟等は現在存在せず、重大な影響を及ぼすような訴訟に発展する可能性のある紛争も現在ありません。しかしながら、関連法規や各種契約などに違反し、お客様に損失が発生した場合等には訴訟を提起される可能性があります。このような訴訟が提訴された場合には、訴訟の内容及び結果によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3 【配当政策】

 当社は、現在成長段階にあると認識しており、事業拡大や組織体制整備への投資のため、内部留保の充実が重要であると考え、会社設立以来配当を実施しておらず、今後の配当実施の可能性及び時期については未定であります。しかしながら、株主還元を適切に行っていくことが経営上重要であると認識しており、事業基盤の整備状況や投資計画、業績や財政状態等を総合的に勘案しながら、将来的には、安定的な配当を行うことを検討していく方針であります。

 なお、剰余金の配当を行う場合、年1回の期末配当を基本としており、その他年1回中間配当を行うことができる旨及び上記の他に基準日を設けて剰余金の配当を行うことができる旨を定款で定めております。