2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。なお、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績及び財政状態等に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。

 

(1)事業に関するリスク

①少子化や待機児童減少について

 チャイルドケアサービス(ナニーサービス、ベビーシッターサービス)においては、少子化の進行により、将来、待機児童が減少した場合には、ベビーシッターのニーズも減少する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 一方で、女性の社会進出やベビーシッター利用への社会的認知度の増大により、ベビーシッター市場は、当社独自の推計(※)によれば、2020年の320億円から2030年には1,000億円規模に到達するものと推定しております。

 当社グループでは、顧客ニーズの多様化や個別化に対応したチャイルドケアサービス事業の展開を行っており、少子化の進行ペースを上回る、さらなる事業拡大に努めてまいります。

※ 国立社会保障・人口問題研究所 「日本の将来推計人口(平成29年推計)」、厚生労働省「2021年国民生活基礎調査」、全国保育サービス協会「ベビーシッターNOW 2022」、リンナイ「世界5カ国の「ワーキングママの育児事情」に関する意識調査(2019年)」、ほかに基づき当社独自推計

 

 エデュケア事業においては、待機児童解消に向けた取組みを目的とした「待機児童解消加速化プラン」が2013年4月に安倍内閣により公表されて以降、新規参入を含む多数の事業者が保育所を開設して2017年度末までの5年間で約53.5万人分の保育の受け皿が拡大しております。また、2017年6月に「子育て安心プラン」が公表され2020年度末までに32万人分の保育の受け皿整備が行われております。こうした待機児童解消に向けた施策により、2023年4月1日時点での全国の待機児童数は2,680人で前年比264人の減少となりました(厚生労働省「保育所等関連状況取りまとめ(2023年9月1日)」)。2019年10月から保育の無償化が開始されたことで保育所の利用率の上昇傾向が継続する一方で、少子化の進行はコロナ禍の影響もあって加速しており、将来的には想定した園児数の獲得が困難となる可能性があります。エデュケア事業の収益は主に園児や児童の人数に応じて増減するため、想定した園児数等の獲得ができない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 人材派遣・紹介事業においては、将来待機児童が減少した場合、保育士等の紹介や派遣需要が減少する可能性があり、その場合には経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 当社グループの対応策としては、既に進めている保育士等の紹介事業についての事業縮小対応を完遂しつつ、派遣事業と一体的な営業・オペレーション体制の効率化を進めると共に、保育・学童施設の利用者の動向や事業環境の変化に対応した「働く女性の支援」に資する事業の在り方を継続して検討してまいります。

 

②国や自治体による方針の改訂について

 当社グループは、2023年12月現在8つの自治体から居宅訪問型保育事業(※)の認可を受け、ナニーサービスを提供しております。今後ベビーシッター事業に関連する国や自治体の方針が変わり、居宅訪問型保育事業が縮小された場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

※ 子ども・子育て支援法における地域型保育事業の一つとして位置づけられており、主に医療的ケアが必要な幼児の居宅において、保育者による1対1の保育を行うものであり、待機児童の多い都市部の保育では、この仕組みを利用した、待機児童対策が行われております。

 

 当社グループのシルバーケアサービス(高齢者在宅ケア)事業のうち介護保険の対象となる訪問介護については、「介護保険法」の規制の対象となります。将来、介護保険法が改正され、介護保険適用対象になるサービス受給者ないし受給額が減少した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 当社グループのエデュケア事業のうち認可保育所及び認証保育所については、国あるいは地方自治体の許認可が必要であり、待機児童の動向等を考慮して、自治体ごとに年度の新設保育所の数が決定されます。したがって、国や自治体の政策変更により新規保育所募集の数が減少した場合には、当社グループの保育施設開設計画に影響を及ぼす可能性があります。また、既存の認可保育所及び認証保育所についても、将来、補助金の減額が行われることも考えられます。したがって、かかる政策変更が行われた場合には、当社グループにおける子育て支援事業の成長が止まり、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 研修事業において現在、保育士の待遇向上と専門性の強化に向けて厚生労働省が定めた保育士等キャリアアップ研修や子育て支援員研修の国や自治体の研修委託を多数受けておりますが、今後待機児童問題が解消し、保育士不足の問題が一巡して国や自治体の方針が転換された場合、研修受託が減少し、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 

 当社グループの対応策としては、各事業に関連する政策動向を緊密にモニタリングすることで、かかる事業の顕在化リスクの早期把握に努めており、国や自治体の方針改訂に対応した「働く女性の支援」に資する事業の在り方を継続して検討してまいります。

 

③新規保育施設の開設施策及び賃貸借契約について

 保育施設に適した物件の確保は、立地条件、環境、物件の質、広さ等の条件を満たすものでなければならず、物件の選定が他の業種と比較して困難であることから、絶対的な物件数が少ない状況にあります。また、各自治体や保育施設の運営を当社グループへ委託する法人顧客への提案は、新規開設に適した物件を確保しておくことが必要不可欠であり、物件確保は新規保育施設開設を計画どおりに進めていくための重要な課題であります。

 当社グループにおいては、保育施設の環境とともに採算性を重視しており、保証金、賃借料等の開設条件に見合う物件が確保できない場合には、保育施設の開設計画が遅れることになり、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 また賃貸物件の契約が更新できない場合、又は契約更新時に賃借料が上昇した場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社グループの対応策としては、情報網の整備と、デベロッパーとの事業提携によりさらなる物件確保ルートの強化に努めてまいります。

 

④食の安全について

 当社グループのエデュケア事業では、食育を重視しており、本社の栄養士チーム監修による献立に基づき、各施設にて素材にこだわった給食やおやつを手作りで提供しております。そのため、新鮮さ、栄養価、安全性など食材の品質に留意しております。また、「食品衛生法」に沿った厳正な食材管理及び衛生管理と食品アレルギー対策の徹底により、食中毒やアレルギー等の事故の防止に努めております。また、ナニー、ケアスタッフ、家事支援スタッフがご家庭で調理を行う場合も同様の衛生管理の徹底を行っております。

 しかしながら、何らかの原因により食の安全性に重大な問題が生じた場合、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、マニュアルを作成し、研修を実施するなど食の安全を確保するための取り組みを行うとともに、重大な問題が生じた場合、品質管理会議(月1回)において報告と改善状況を監視するとともに、本支社役職員及び各施設の施設長が参加する全体会議において、通達事項の共有及びISO9001QMSのトラブルを共有し、原因究明と再発防止に努めております。

 

(2)組織体制に関するリスク

①人材の確保、育成について

 2023年12月の保育士の有効求人倍率は3.45倍と、前年同月(2022年12月:3.16倍)を大きく上回る水準となり、他業界を含めた人材の獲得競争が激化しております。当社グループでは、処遇改善のほか、働き方改革による残業削減や、働き甲斐のある職場づくりに努めてまいりますが、万一、予定した人材の確保に遅れ等が生じた場合、既存施設の運営計画や新規施設の開園計画に遅延等を及ぼす可能性があるため、当社グループの経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社グループでの対応策としては、保育士に「副業・兼業制度」を導入するとともに、保育士たちが保育施設で働きながら副業としてベビーシッターとしても活躍できる「ベビーシッター付ナーサリー」を推進しております。

 また、当社グループでは、ナニー及びベビーシッターやケアスタッフ、家事支援スタッフ等各事業サービスを運営する人材を確保することは重要な経営課題であります。人手不足が深刻化する中で、各種人材の採用も年々難しくなる中、共働き世帯の増加による働く女性の拡大に伴い、当社グループが提供する各種サービスの利用ニーズは増える一方となっております。採用活動の強化やナニー検定、ナニースクール等に基づく人材育成を図っておりますが、万一、欠員補充や新規人材の確保が計画どおり進まず、サービス提供体制の維持や人員基準を満たせなくなった場合や、ナニーやケアスタッフなどの稼働状況が想定を下回った場合には、サービス提供に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの対応策としては、急激な需要の拡大にも対処できるよう、採用活動の強化やナニー検定、ナニースクール等に基づく人材育成プログラムの充実を図るとともに、集合・対面研修だけでなく、動画配信や双方向型のオンライン研修を組み合わせたハイブリッド型の教育研修の仕組みを拡充することで、質の高い人材の確保、育成に努めてまいります。

 

②内部管理態勢について

 当社グループでは、業務上の人為的ミスや社員による不正行為等が発生することのないよう、教育研修強化及び内部牽制機能の強化に努めております。しかしながら、将来的に内部管理上の問題が発生した場合、ステークホルダーからの信頼性が低下し、当社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの対応策として、法務コンプライアンス部が中心となり、マニュアルの作成や研修の実施、内部通報制度の運用など、予防対策の徹底、当社グループ内の遵守に努めております。

 

③個人情報の流出について

 当社グループでは、園児や児童から高齢者まで様々な年代のお客様及びその保護者・家族の氏名や住所に加えて人材派遣・紹介サービス登録者など多くの個人情報を保持しているため、個人情報を厳重に管理のうえ、慎重に取り扱う体制を整えております。万が一漏洩するようなことがあった場合には、利用者を含め広く社会的な信用を失うこととなります。その結果、ナニーサービス及びベビーシッターサービスやシルバーケアサービス利用者の退会、園児の退園、人材派遣・紹介登録者の減少、保育施設等の新規開設等に影響が出ることにより、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、2017年には、情報セキュリティマネジメントに関する国際品質規格ISO27001(品質マネジメントシステム)の認証を取得いたしました。事業の全ての領域において、積極的に情報セキュリティに取り組み、お客様の情報資産を安全に管理することが、経営課題であると自覚し、情報セキュリティを確保することで安全・信頼・最高水準のサービスという創業以来、当社グループが積み重ねてきたブランドイメージをさらに高め、顧客満足度を向上させてまいります。

 また、具体的な対応策として、本支社担当役職員、ISO内部監査員が参加する品質管理会議(月1回)において、ISO27001ISMSによる情報インシデントについて報告と改善状況を監視しており、原因究明と再発防止に努めております。

 

④多様な人材の活用(外国人材、アクティブシニア等)について

 当社グループでは、女性とシニア、そして外国人材の活用に取り組んでおります。しかしながら、これらの多様な人材が十分確保できなかった場合は、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(3)外部環境に関するリスク

①法的規制等について

 エデュケア事業では、各保育所の多くが認可保育所、東京都認証保育所、事業所内保育所など運営上、様々な法的規制のもとで運営されております。また、高齢者在宅ケア事業では介護保険対象外のVIPケアを主力としているものの、介護保険法等諸制度に基づいたサービスの提供も行っております。したがって、今後、法的規制が何らかの形で強化あるいは変更された場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの対応策としては、このような制度変更リスクから受ける影響をできる限り緩和するべく、保育所の運営形態を多様化するとともに、制度上の影響を受けないチャイルドケアサービス事業の強化育成など、事業ポートフォリオのバランスをとるべく努力しております。

 なお、当社グループの事業に関連する主な法的規制等は以下のとおりであります。当社グループにとって主要な関連法令である児童福祉法においては、万一、関係法令の規定水準に達しない場合や、給付費の請求に関し不正があったとき、また、改善命令や事業の停止命令に従わず違反したときには、許認可が取り消される場合があり、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

ⅰ)チャイルドケアサービス事業

 児童福祉法

ⅱ)シルバーケアサービス事業

 介護保険法、食品衛生法

ⅲ)エデュケア事業

 児童福祉法、児童福祉施設最低基準、食品衛生法

ⅳ)人材派遣・紹介事業

 職業安定法

 有料職業紹介事業の許可要件労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)

 

②雇用情勢の変化等について

 人材派遣・紹介業界は、産業構造の変化、社会情勢、景気変動、法改正に伴う雇用情勢の変化等に影響を受けます。現状の需要は堅調に推移しておりますが、今後、様々な要因により雇用情勢もしくは市場環境が悪化した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。景気後退に伴う新規人材需要の減少や既存の顧客企業における業務縮小・経費削減等により人材需要が大きく減退した場合、人材派遣における労働者派遣契約数の急激な減少、転職市場における求人需要の大幅減少に伴う人材紹介事業の事業規模縮小など、当社グループの事業運営に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他のリスク

①感染症について

 当社グループでは、施設や居宅において子育てや介護支援のサービスを提供しており、顧客や従業員が新型コロナウイルスをはじめとする感染症に罹患する可能性があります。当社グループでは、安全・安心なサービス環境を確保するため、感染症対策を徹底しております。

 しかしながら、新型インフルエンザやコロナウイルス等、人類が免疫を持たない未知の感染症が流行した場合、従事する保育士や指導員、ベビーシッター、ケアスタッフ等が多数欠勤することで施設の運営が困難となりうる他、感染症蔓延地域におけるベビーシッターのキャンセルなど、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、新型コロナウイルス感染症等に対するリスク管理に万全を期すため、危機管理委員会を開催し、感染症の流行に対する予防対策の徹底、予兆の発見と対処、感染者発生時の対処と原因究明、再発防止策の指示を行っており、引き続き対応を図ってまいります。

 

②事故・安全管理について

 当社グループのチャイルドケアサービス事業やエデュケア事業では0歳から学童までを対象としております。そのため、サービス提供の際に不測の事故等が発生する可能性を完全に排除することは困難であると考えております。また、昨今、小学校等において外部侵入者に対する危機管理の徹底が行われつつあります。保育施設でも同様な管理体制が不可欠ですが、保育事業は学童よりさらに低年齢の園児が対象であり、かつスタッフもまだまだ男性が少ないことからも、さらに徹底した対策が必要になります。万一これらの事故が発生して当社グループの責任が問われるような事態が発生した場合には、当社グループへの信頼の低下、ブランド価値の毀損及び訴訟等の費用により、当社グループの今後の事業展開及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、定期的に行う全体会議や施設長ミーティング等で、起こりうる事故や起きてしまった事故の情報共有や対策検討を徹底しており、ISO9001による従業員への定期的教育及び業務マニュアルの遵守、また保険への加入等対応には万全を期しております。さらに、保育施設では、施錠の徹底や外部セキュリティ管理機関との契約等により、施設入出管理には徹底した配慮を行っており、当社グループは、施設の運営において園児や児童の安全に配慮し、万全の体制で臨んでおり、これまでに経営成績に大きな影響を与えるような事故等は発生しておりません。

 シルバーケアサービス(高齢者在宅ケア)事業では、介護保険適用サービス対象の顧客は主に要介護認定を受けた高齢者を対象としていることから、サービス提供時には身体に負担を与えることも考えられ、その結果、顧客の体調悪化等が生じる可能性があるほか、介護サービス提供時における事故の可能性も否定できないと考えております。万一これらの事故が発生して当社グループの責任が問われるような事態が発生した場合には、当社グループへの信頼の低下、ブランド価値の毀損及び訴訟等の費用により、当社グループの今後の事業展開及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社グループでは、定期的に行う全体会議等で、起こりうる事故や起きてしまった事故の情報共有や対策検討を徹底しており、ISO9001による従業員への定期的教育及び業務マニュアルの遵守、また保険への加入等対応には万全を期しております。

 

 さらに、当社グループでは、本支社担当役職員、ISO内部監査員が参加する品質管理会議(月1回)において、ISO9001QMSの品質管理目標の進捗とケガ・事故・クレームなどのトラブルについて報告と改善状況を監視するとともに、前述のとおり、本支社役職員及び各施設の施設長が参加する全体会議において、通達事項の共有及びISO9001QMSのトラブルを共有し、原因究明と再発防止に努めております。

 

③自然災害について

 当社グループでは、全国において保育施設、学童施設等運営のサービスを展開しております。地震や津波等の大規模な自然災害が発生した場合、当該エリアにおいて、スタッフ等の安全への懸念及び当社グループの事業所が稼動できない状況になると考えられます。当社グループでは、事業所機能の早期復旧や支援スタッフの派遣等、サービス提供体制の維持に努めてまいりますが、サービス提供ができなくなる場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 本社・各支社・事業所において、緊急時における事業継続に係るリスク対策を総点検し、顧客の安全を最優先とした危機管理体制の強化を図ってまいります。

 当社グループでは、危機管理委員会において、災害発生時に備えた備蓄や訓練、想定される被害を最小限に抑制するための対策の徹底、災害発生時の対処と事後復旧策の指示を行っており、引き続き対応を強化してまいります。

 

④競合他社の参入について

 女性の社会進出拡大により実際に保育所への入所を希望する児童数(待機児童)は、首都圏においても減少傾向にあります。このような状況下、エデュケア事業における保育所の受託競争は激化しており、一部の地域では価格競争になるケースもあります。また、既存の保育所においても、待機児童解消のため近隣に新たな認可保育所が開設された結果、園児の獲得競争になるケースも発生しております。当社グループでは、価格競争の受託案件には参加せず、自治体や委託法人から「高品質の保育」の維持に対する理解を得ることにより、高付加価値サービスの提供に努めておりますが、今後多様な業種からの参入が相次ぎ、競合他社との競争がさらに激化した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 チャイルドケアサービス事業のナニーサービスにおいては、当社グループの自社開発システムであるポピンズシステムを活用した顧客情報の管理とスタッフによる適切な登録ナニーのマッチング体制を整えております。当社グループは、ベビーシッター事業者最大手として長年蓄積してきた実績とブランド力に加えて、顧客に最高水準のサービスを提供できるナニーを育成する充実した教育体制を備えており、これは一朝一夕でできるものではないため、高付加価値を求める顧客層向けのナニーサービスにおける参入障壁は高いと考えております。また、ベビーシッターサービスについても、お客様がオンライン上で自らベビーシッターを選ぶことができるサービスの利便性・自由度に加えて、ナニーサービスで培ったノウハウや、それらを基盤とした基礎研修や事故・お怪我・クレーム対応の共通化を掛け合わせることや、ポピンズブランドへの厚い信頼等により、他社が提供するオンラインマッチング型のサービスとは、高いレベルで差別化がなされていると考えております。一方で、他業界から大手企業が新規参入した場合もしくは価格競争が激化した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 シルバーケアサービス(高齢者在宅ケア)事業においては、当社グループは介護保険適用外のVIPケアサービスを事業の主力としており、現状では同様のニーズを満たしたサービスを提供する事業者には限りがありますが、今後同様のサービスを提供する競合他社が参入し、競合他社との競争がさらに激化した場合には、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 当社グループの対応策としては、競合他社の動向や新規参入などを緊密にモニタリングすることで、かかる事業の顕在化リスクの早期把握に努めており、競争環境の変化に対応した「働く女性の支援」に資する事業の在り方を継続して検討してまいります。

 

⑤減損会計が適用されるリスクについて

 当社グループの保育施設は、土地及び建物を賃借しておりますが、一部の保育施設については内装設備等を資産計上しております。今後、固定資産を保有する保育施設の収益性が低下する等、固定資産の減損に係る会計基準及び固定資産の減損に係る会計基準の適用指針により減損損失を認識する事態が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 当社グループの対応策としては、各業態単位で施設の収益管理PDCA(人員配置、定員管理、コスト管理)を徹底し、必要に応じて施設ごとの改善対策を明確化することで、損失処理の発生を未然に予防するとともに、発生した場合の最小化に努めてまいります。

 

⑥季節変動について

 当社グループにおける保育施設等は4月に新規開設されるものが多くなります。また自治体より受託している保育士研修事業等は6月以降に開始され翌年2月頃まで実施されることが多い傾向があります。そのため、第2四半期連結会計期間(4月~6月)において、備品等の新規開設費用が計上されることや一部事業で売上が減少することにより利益が一時的に低下する傾向にあります。

 

⑦グローバル展開について

 今後は海外の事業者との戦略的提携によるグローバル展開や、海外での保育施設運営を目指してまいりたいと考えておりますが、海外特有の法的規制やカントリーリスク、為替リスクなど様々なリスクがあり、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 

⑧新規事業への取組みについて

 当社グループでは、新規事業として、全国の保育施設を運営する事業者等に向けた経営支援コンサルティング業務や、不妊予防事業、ペットケアサービス等を展開しております。しかしながら、新規事業の取組みには不確実な要素が多く、市場環境の大きな変化や競合他社の動向など様々な要因により、計画通り新規事業を拡大することが困難な可能性があります。

 当社グループの対応策としては、新規事業の成長性と収益性について、経営会議においてフォローアップと検証を行ってまいります。

 

⑨案件を厳選したM&Aの推進について

 当社グループでは案件を厳選したM&Aにより事業の拡大を図る場合がありますが、それに見合った収益が得られない場合や、資金の回収が滞る可能性があります。

 

⑩デジタルトランスフォーメーション(ICT、AIの活用による生産性向上とビジネスの拡大)について

 当社グループでは、デジタルトランスフォーメーション部(DX部)を設置し、情報のデジタル化とデータの有効活用に取り組んでおりますが、ICTやAIを活用したビジネス拡大や生産性向上が計画通り進展しない場合、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。

 当社グループの対応策としては、DX部が中心となり、検討と推進を行ってまいります。

 

⑪資金調達について

 当社グループにおきましては、保育施設の新規開設に関する設備資金、新規事業もしくはM&Aに関する投資資金は、金融機関からの借入等により調達しております。総資産に対する有利子負債合計の割合は、2021年12月期17.4%、2022年12月期11.7%、2023年12月期18.2%と推移しておりますが、今後、新規開設やM&A等に伴い借入が増加する可能性があり、金利の急激な変動や金融情勢の変化によって計画どおり資金調達ができなかった場合には、設備投資や新規事業が制約されるなど当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑫レピュテーションリスクについて

 従業員による不正・不祥事や、個人情報等の業務上の機密情報の不適切な取り扱い・流出により、当社グループの信頼性・企業イメージが低下し、経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 当社グループの対応策として、法務コンプライアンス部が中心となり、予防対策の検討、当社グループ内の実施徹底を図るとともに、本支社担当役職員、ISO内部監査員が参加する品質管理会議(月1回)において、ISO27001ISMSによる情報インシデントについて報告と改善状況を監視しており、原因究明と再発防止に努めております。

 

⑬大株主について

 当社の代表取締役社長である轟麻衣子は、轟氏、その親族、および株式会社スピネカ(轟氏及びその親族の資産管理会社)の所有株式数を含めると、本書提出日現在で発行済株式総数(自己株式を除く。)の61.2%を所有しております。

 轟氏は、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。当社といたしましても、轟氏は安定株主であると認識しておりますが、何らかの事情により、大株主である轟氏の持分比率が低下した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は利益配分につきましては将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ安定した配当を継続して実施することを基本方針としておりますまた内部留保金は将来の企業価値を高めるための既存事業拡大や新規事業・M&ADX及びグローバル戦略の展開等に備えて充実を図りSDGsの考えに準拠して持続的な成長に向けた投資等に活用いたします

 当社の剰余金の配当につきましては、期末配当の年1回を基本的な方針としております。また、当社は、株主への機動的な利益還元を可能とするため、剰余金の配当等の会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会決議によって定める旨を定款に定めております。期末配当については、連結配当性向40%前後を基本とし、利益や剰余金の水準を勘案のうえ、配当額を決定しております(ただし、特別な損益等の特殊要因により親会社株主に帰属する当期純利益が大きく変動する事業年度についてはその影響を考慮し配当額を決定いたします。)。なお、取締役会の決議により毎年6月30日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

 上記の基本方針に基づき、当事業年度の配当につきましては、2024年2月21日開催の取締役会で1株当たり40円の配当を実施することを決定しました。この結果、当事業年度の連結配当性向は57.3%となりました。

 

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年2月21日

388

40

取締役会決議