2024年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    1,179名(単体) 1,621名(連結)
  • 平均年齢
    43.8歳(単体)
  • 平均勤続年数
    10.9年(単体)
  • 平均年収
    5,183,000円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1)連結会社の状況

 

2024年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

国内外食事業

496

(2,241)

宅食事業

588

(813)

海外事業

364

(573)

環境事業

12

(0)

農業

34

(23)

全社(共通)

127

(210)

合計

1,621

(3,860)

 (注)1.従業員数は就業人員であり、パートタイマーの当連結会計年度の平均雇用人員(1日1人8時間換算)は、

( )内に外数で記載しております。

2.全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。

3.当連結会計年度より、新たな子会社の取得に伴い、従来「海外外食事業」としていた報告セグメントの名称を「海外事業」に変更しております。

 

(2)提出会社の状況

 

 

 

 

2024年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

1,179

(3,063)

43.8

10.93

5,183

 

 

セグメントの名称

従業員数(人)

国内外食事業

492

(2,204)

宅食事業

588

(813)

全社(共通)

99

(46)

合計

1,179

(3,063)

 (注)1.平均年間給与は、基準外賃金及びインセンティブを含んでおります。

2.パートタイマーの最近1年間の平均雇用人員(1日1人8時間換算)は、( )内に外数で記載しております。

3.全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。

 

(3)労働組合の状況

 当社においては、ワタミメンバーズアライアンスが組織され、全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟に加盟しております。

 なお、労使関係は円満に推移しております。

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

①提出会社

当事業年度

補足説明

管理職に占

める女性労

働者の割合(%)

(注)1

男性労働者

の育児休業

取得率

(%)

(注)2

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)1

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

19.1

23.1

52.9

77.0

90.3

 (注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。

 

②連結子会社

連結子会社は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)ワタミグループが目指すサステナビリティ経営

 ワタミグループのミッションは、「地球人類の人間性向上のためのよりよい環境をつくり、よりよいきっかけを提供すること」です。

 その環境やきっかけを提供するというワタミの理念はSDGsの考え方に重なります。

 当社グループは、外食事業、宅食事業、原料調達から消費までのサプライチェーンを構成する事業、農業、エネルギー事業において、経済的・社会的・環境的ニーズの充足、従業員の幸せ、地域貢献などの持続可能な企業活動を通して、SDGsを達成します。

 自社グループで栽培した農産物(1次産業)を自社グループで加工(2次産業)し、お客様に提供する(3次産業)ことに加えて、環境負荷を軽減するための取り組みや再生可能エネルギー事業にも取り組むことで、再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業モデルを構築し、経済的・社会的・環境的パフォーマンスを向上し続けることで「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループ」を目指します。

 

 

(2)当社グループのマテリアリティ

ワタミグループのマテリアリティ

KPI(中間目標)

2030年KGI(最終目標)

宅食事業:「いつまでも住み続けられる地域」に貢献

●事業活動から発生する廃棄物を再資源化し、地域資源循環社会を構築。

●弁当の宅配を通じて、高齢者の栄養補完で健康を守り、見守りを含む自治体との協定により安全を図る。宅食事業:「いつまでも住み続けられる地域」に貢献

タスクフォースチーム環境負荷ゼロ容器包装プロジェクト

●弁当容器回収リサイクルシステムを構築し、地域の廃棄物と焼却によるCO2の削減、海洋プラスチック汚染防止に努める。

●ワタミ全事業で使用する容器包装の脱プラスチックを図る。2024年度までに弁当容器回収率60%を達成する。

●外食:テイクアウト容器包装プラスチックを全て代替素材品に切り替える

●宅食:調理済製品容器(弁当容器)の回収率80%

農業事業・外食事業:

オーガニック農業生産の食材提供で、地球環境と生産者・消費者の健康を守る。

●ワタミファームは有機栽培土壌面積拡大で、持続可能な農業生産を推進する。

●外食店舗では、あらゆる出会いとふれあいの場と安らぎの空間の提供、そして安全安心な食材メニューで消費者の健康増進を図る。

タスクフォースチームオーガニックプロジェクト

●有機農業で生産した農畜産品で製品開発を行い、地球環境と生産者の健康保全と消費者の健康増進に貢献する。

●地球環境保全する有機農業による生産を、消費者に啓発し市場を拡大するために、農業体験ツアーを企画・実施する。

●循環型のビジネスモデルの確立

●商品購入者延べ100万人

●農業を通じた雇用と育成

RE100を2040年までに実現し、脱炭素社会構築に貢献する

●すべての店舗、工場、事業所で再エネ電力100%を実現する。

タスクフォースチームRE100プロジェクト

●2024年までに、外食店舗RE100店舗を継続的に増やし、営業活動を通して、消費者や地域社会に啓発を目的としたコミュニケーション活動を行う。

●2025年までに食品生産工場に太陽光発電設備を設け、再生エネルギーへの転換を図る

●全ての事業所で再生エネルギー50%導入

●2040年までにRE100を達成

全ての従業員及びサプライチェーンで働く人たちの人権を尊重し、国籍や性別・年齢・障がいの有無に関わらず、平等で公正なそれぞれの能力を生かされた、働き甲斐のある職場にする。

●女性や障がい者、すべての人に働きやすい職場環境を整備し、子育て支援や介護など働き続けられる制度を整備する。

●従業員の能力開発や技術取得の機会を設ける。

●他企業と協働し、サプライチェーン全体で働く人たちの人権尊重を図る。

タスクフォースチームワタミ人権方針プロジェクト

●2022年にワタミ人権宣言を策定し、従業員やサプライチェーンで働く人たちへ啓発活動を行い人権尊重への意識の向上を図る。

●2024年までに人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、サプライチェーンも含めた人権に関する負の影響を特定・評価・予防・緩和・是正に努める。

●自社だけではなく、ワタミを支えるサプライヤー・国内外ビジネスパートナーに対しても人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築する。

●サプライチェーン・消費者・地域住民などステークホルダーとの対話を継続的に行い、ダイバーシティ・インクルージョンな組織づくりを行う。

ワタミモデル

(1次産業農業x2次産業加工x3次産業販売=6次産業)の食品ロスゼロ・リサイクル100%

●ワタミファーム生産の農畜産物は100%利活用する。

●食品工場の詰め残しを無くす。

●外食店舗の食べ残しを、お客様とのコミュニケーションにより、ゼロにする。

●各地で食品リサイクルループを構築し、商品廃棄ゼロを実現する。

タスクフォースチーム

食品ロスゼロ食品リサイクル100%プロジェクト

●2023年までに食品工場の食品ロスを半減する。

●2024年までに外食店舗の未利用食材ロスを半減させる

●2025年までに弁当工場を含む地域(福岡・山口・栃木)に食品リサイクルループを構築する。

●SDGs12.3:食品ロスを半減する

●SDGs12.5:食品廃棄を削減し、100%リサイクルループで持続可能な農業に貢献する。

●SDGs12.8:お客様に「食べ残しをしないライフスタイル」を啓発する。

 

(3)気候変動への対応

 近年、世界中で気候変動をはじめとする環境課題が深刻化しており、日本国内でも、異常気象による台風などの大規模な自然災害が発生するなど、経営に大きな影響をもたらす状況となっております。

 このような状況の下、ワタミグループは、気候変動をサステナビリティ経営上の最重要課題であると位置づけ、気候変動に伴うリスクや機会は、事業戦略に大きな影響を及ぼすものと認識しております。

 ワタミグループでは、2022年度に5つのマテリアリティを特定し、「脱炭素社会の実現」「循環型社会の実現」「自然共生社会の実現」を目指して、様々な活動に取り組んでおります。

 「低炭素社会の実現」に関しては、Scope1・2排出量の削減、RE100を達成するための再生可能エネルギー化100%の推進、エネルギー消費量の削減、フロン類の削減等に積極的に取り組んでおります。

 また「循環型社会の実現」に関しては、リサイクルループの構築、食品ロスの削減、宅食弁当容器のバイオマス化推進、3+1「4」R等を推進するとともに有機農場の拡大、外食・宅食メニューへの有機特別栽培食材比率の増加、森林事業の拡大、SDGs教育の促進、サプライヤーであるお取引先様や消費者であるお客様と協働したScope3排出量削減活動等に取り組むことで「自然共生社会の実現」を目指します。

 

(4)TCFD提言が推奨する4つの開示項目に沿った情報開示

 「サスティナブル方針」の基本理念に基づき、グループの重点課題(マテリアリティ)を決定するうえで、年々激化する気候変動問題についても非常に重要な項目の一つとしてとらえております。

 「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」※1の最終報告書を受け、気候変動関連リスク及び機会に関する情報開示の準備を始めております。

※1 TCFDとは、G20の要請を受け、金融安定理事会(各国の金融関連省庁及び中央銀行からなる国際金融に関する監督業務を行う機関)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を指します。

 TCFD提言は、すべての企業に対し、「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標と目標」の4つの項目に基づいて開示することを推奨しております。

 ワタミグループは、TCFD提言の4つの開示項目に沿って、気候関連情報を開示いたします。

開示項目

具体的な開示内容

ガバナンス

(a)取締役会が気候関連課題について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象

(b)経営者の気候関連課題に対する責任、報告を受けるプロセス(委員会等)、モニタリング方法

リスク管理

(a)気候関連リスクの特定・評価プロセスの詳細、重要性の決定方法

(b)重要な気候関連リスクの管理プロセスの詳細、優先順位付けの方法

(c)全社リスク管理の仕組みへの統合状況

戦略

(a)短期・中期・長期のリスク・機会の詳細

(b)リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度

(c)関連するシナリオに基づくリスク・機会及び財務影響とそれに対する戦略・レジリエンス

指標と目標

(a)気候関連リスク・機会の管理に用いる指標

(b)温室効果ガス排出量 Scope1・2・3

(c)気候関連リスク・機会の管理に用いる目標及び実績

 

①ガバナンス

(a)取締役会が気候関連課題や人的資本、自然資本を含むESGに関連する当社グループの課題・対応策について報告を受けるプロセス、議題として取り上げる頻度、監視対象

 当社グループは、会長兼社長CEOを議長とする4つの会議(経営戦略会議、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議)を開催しております。

 サスティナビリティ対応については、2019年に策定された、SDGsを経営の中核課題に取り入れた長期目標である「ワタミサスティナブル方針」に基づいて当社の環境・社会的課題に対しての取組みとして、社内4大会議の一角である、会長兼社長CEOを議長とする、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議をはじめとする体制を構築し、全社一丸となって推進しております。

 また、2019年にSDGs推進本部を設立し、本業の中でSDGsに取組むために、各事業本部から選出したメンバーによる社内組織横断タスクフォースチームを発足し、SDGsマテリアリティ(重要課題)を特定し、KPI(中間目標)・KGI(2030年目標)をたて、目標達成のために組織横断で取組んでおります。

 特に従業員の職場環境については、従業員の幸せ実現会議にて、従業員の健康増進、キャリア形成、キャリアアップへの支援等を通し、人的資本育成、お客様、一般市民、行政機関、お取引業者様などステークホルダーとのパートナーシップ、全従業員へのサスティナブル教育の徹底を通し、サスティナブル目標に向かって取組んでおります。

 取締役会は、会長兼社長CEOを議長とする4つの会議(経営戦略会議、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議)で協議・決議された内容の報告を受け、当社グループの環境課題への対応方針及び実行計画等についての論議・監督を行っております。

 

(b)経営者の気候関連課題・人的資本・自然資本を含むESGに対する責任、報告を受けるプロセス委員会等、モニタリング方法

 会長兼社長CEOは、4つの会議(経営戦略会議、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議)の長を担っており、環境課題に係る経営判断の最終責任を負っております。4つの会議(経営戦略会議、従業員の幸せ実現会議、ブランド向上会議、SDGs会議)で協議・決議された内容は、最終的に取締役会へ報告を行っております。

 

 

②リスク管理

(a)気候関連リスクの特定・評価プロセスの詳細、重要性の決定方法

 当社グループは、リスクを戦略の起点と位置づけ、「企業経営の目標達成に影響を与える不確実性であり、プラスとマイナスの両面がある」と定義しており、企業が適切に対応することで、持続的な成長につながると考えております。

 当社グループは、環境課題に係るリスクについて、「SDGs委員会」の中でより詳細に検討を行い、各事業本部と共有化を図っております。各事業本部では、気候変動の取り組みを実行計画に落とし込み、各事業本部長を長とする会議の中で論議しながら実行計画の進捗確認を行っております。その内容について、「グループ経営会議」や「リスクマネジメント委員会」及び「サスティナビリティ委員会」において、進捗のモニタリングを行い、最終的に取締役会へ報告を行っております。

 

(b)重要な気候関連リスクの管理プロセスの詳細、優先順位付けの方法

 当社グループは、気候変動に伴うリスクと機会は、自社の事業戦略に大きな影響を及ぼすとの認識のもと、下記のプロセスを通じて気候変動に伴うリスクと機会を特定し、その重要性を評価しました。

 はじめに、当社グループは、サプライチェーン・プロセスの活動項目である、原材料の調達から商品の製造、物流、販売、廃棄、リサイクルに至るまでのサプライチェーンの各段階ごとに、気候変動に伴うリスクと機会を網羅的に抽出しました。次に、網羅的に抽出した気候変動に伴うリスクと機会の中から、当社にとって重要な気候変動に伴うリスクと機会を特定しました。最後に、特定した気候変動に伴うリスクと機会について「自社にとっての影響度及び発生可能性」と「ステークホルダーにとっての影響度」の2つの評価基準に基づき、その重要性を評価しました。

 当社グループは、上記のプロセスを経て、特に重要と評価された気候変動に伴うリスクと機会について、取締役会による監督体制の下、当社における企業リスクの一つとして当社グループの戦略に反映し、対応しております。

 

(c)全社リスク管理の仕組みへの統合状況

 当社グループは、リスクを全社的に管理する体制を構築することが重要であることを踏まえ、「グループリスク・コンプライアンス委員会」を設置しております。「グループリスク・コンプライアンス委員会」では、外部環境分析をもとに、環境課題に係るリスクを含めた企業リスクを識別・評価し、優先的に対応すべき企業リスクの絞り込みを行い、進捗のモニタリングを行っております。「グループリスク・コンプライアンス委員会」で論議・承認された内容は、取締役会による監督体制の下、当社グループの戦略に反映し、対応しております。

 

③戦略

(a)短期・中期・長期のリスク・機会の詳細

 当社グループは、環境課題が与えるリスクは重要な影響を長期間にわたり、与える可能性があると考えております。そのため、適切な目標と期限を設定し、継続的に推進することが重要であると考えております。当社グループは、マテリアリティ(重要課題)の中間目標(KPI)の実行期間である2025年度まで、SBT目標設定年度及び最終目標(KGI)の達成期間である2030年度を見据え、気候変動がもたらす異常気象等の物理リスク、政府による政策規制の導入、及び市場ニーズの変化等の移行リスクの検討を行い、検討の結果特定したリスク・機会は、当社グループの戦略に反映し、対応しております。

 

期間

定義

中期

2025年度まで

中間目標(KPI)の実行期間

長期

2030年度まで

国連により採択されたSDGs2030アジェンダの達成までの期間であり、最終目標(KGI)の達成期間

 

(b)リスク・機会が事業・戦略・財務計画に及ぼす影響の内容・程度

 当社グループは、気候変動が与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、及び2030年時点の世界を想定した当社グループの戦略のレジリエンスと、さらなる施策の必要性の検討を目的に、シナリオ分析を実施しております。

 シナリオ分析では、国際エネルギー機関IEAや、気候変動に関する政府間パネルIPCCが公表する複数の既存シナリオを参照の上、パリ協定の目標である「産業革命前からの全世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑える」ことを想定したシナリオ、2℃未満シナリオ、及び新たな政策・制度が導入されず、公表済の政策・規制が達成されることを想定した世界の温室効果ガス排出量が、現在より増加するシナリオ、4℃シナリオの2つの世界を想定しました。

 

 最重要マテリアリティの1つである「脱炭素社会の実現」に向け、当社グループの事業活動について、上記シナリオを前提に、気候変動がもたらす影響を分析し、その対応策を検討し、当社グループの戦略レジリエンス強靭性を検証しております。

 

(c)関連するシナリオに基づくリスク・機会及び財務的影響とそれに対する戦略・レジリエンス

 当社グループの温室効果ガス排出量の多くは、購入した製品・サービスに伴う排出(スコープ3のカテゴリ1)及び他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出(スコープ2)とに由来しており、当社グループの温室効果ガス排出量削減の取り組みは、低炭素由来の原材料の調達及び再生可能エネルギー由来の電力の調達に重点を置くことが重要であると考えております。この現状を踏まえ、当社グループは、2030年時点を想定した2つのシナリオにおける事業及び財務への影響のうち、特に日本国内における炭素税の導入及び再生可能エネルギー由来の電気料金の変動が、重要なパラメータ指標になると考えております。そのため、2℃未満シナリオ及び4℃シナリオにおける2つのパラメータについて、当社グループの財務への影響を定量的に試算しております。また、宅食事業の弁当容器回収リサイクルが全ての配達エリアで実施できたことにより、お客様の家から家庭ゴミとして排出される容器が減少し、廃棄焼却されるGHGが減少しております。さらに有機農業やバイオマスプラスティックへの取り組みとCO2吸収効果による影響についても検討を進めております。

・2030年時点を想定したシナリオにおけるワタミグループの事業及び財務への影響

重要なパラメータ(指標)

項目

2℃未満シナリオ

4℃シナリオ

炭素税

・炭素税価格(千円t CO2

15.1

4.9

・炭素税課税に伴うコスト増(百万円)

349

115

再生可能エネルギー由来の電気料金

・再エネ由来の電気料金の価格増(円/kWh)

1~4

・再エネ由来の電気の調達コスト増(百万円)

20~82

(2030年時点に想定される前提条件)

・炭素税価格(※1)100/t CO2 2℃未満シナリオ、33/t CO2 4℃シナリオ(※2)

※1 「Stated Policy Scenario STEPS」IEA、2019を参照。

※2 2030年時点では日本国内でも炭素税が導入されることを想定し、4℃シナリオにおけるEUの炭素税価格で試算。

・ワタミグループ温室効果ガス排出量:約23,000t CO2(2021年度と同水準)

・再エネ由来の電気料金:1~4円/kWhの価格高(再生可能エネルギー以外の電気料金との比較)

・ワタミグループ再生可能エネルギー由来の電気使用量:20,600MWh(再生可能エネルギー比率50%)

 

 当社グループは、2℃未満シナリオ及び2℃シナリオのいずれのシナリオ下においても、中長期視点から高い戦略レジリエンスを強化してまいります。そのため、事業戦略や中期経営計画において、マイナスのリスクに対しては適切な回避策を策定する一方、プラスの機会に対しては、マーケット変化へ積極的に対応する等、新たな成長機会の獲得を目指してまいります。

 

(d)人材育成に関する方針

 ワタミグループは「地球人類の人間性向上のためのよりよい環境をつくり、よりよいきっかけを提供すること」というグループミッションを掲げております。人が成長できる環境、もしくはそのきっかけを一つでも多く提供できる企業でありたいという思いから取り組みを推進しておりますが、その根底にあるのは基本的人権を守るということです。ワタミが事業活動を展開する上で人権に対する負の影響が生じていると判明した場合には、是正に向けて適切な対応をすることにより人権の尊重に努めております。

 2022年には、ワタミ人権方針を策定、重点項目を設定し、達成に向け取り組んでまいりました。

 

(ワタミグループ人権方針)

1、基本的な考え方(尊重する人権)

 ワタミグループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に沿って、国際人権章典、ILO宣言に定める人権を尊重し、OECD多国籍企業行動指針、UNGCの10原則を支持するように努めます。また、事業を行う国や地域の現地法を遵守し、現地法が脆弱又は国際法と矛盾する場合は、国際規範を最大限尊重します。

 

2、適用範囲

 本方針は、ワタミグループ全ての規程、規範の上位方針として位置づけます。ワタミグループは、本方針を、全ての役員と従業員に適用します。またワタミグループを支えているサプライヤー・ビジネスパートナーの皆様にも本方針を理解し、人権の尊重に努めていただくように求めます。

 

3、人権尊重の責任

 ワタミグループは、自らの事業活動において影響を受ける人々の人権を侵害しないこと、また事業活動を展開する上で人権に対する負の影響が生じていると判明した場合には、是正に向けて適切な対応をすることにより人権尊重の責任を果たしてまいります。

 

4、人権デュー・ディリジェンスの実施

 ワタミグループは、「ビジネスと人権に関する国連指導原則」に従って、事業活動で人権侵害(児童労働、強制労働、差別等)を容認しないという方針のもと、人権への負の影響を特定、是正、緩和、防止するためのデュー・ディリジェンスの仕組みを構築し適切かつ効果的に実施してまいります。

 

5、推進体制

 人権尊重のための方針は、経営の最高意思決定機関の取締役会が決定します。具体的な施策の実行にあたっては、全社横断のタスクチームを発足します。

 

6、対話・協議

 ワタミグループは、人権尊重の取り組みや進捗状況を定期的にウェブサイトなどで全てのステークホルダーに対して開示します。

 

7、情報開示

 ワタミグループは、人権尊重の取り組みや進捗状況を定期的にウェブサイトなどで全てのステークホルダーに対して開示します。

 

8、理解浸透・教育

 ワタミグループは、人権方針が浸透するようにすべての役員及び従業員に対して、研修会や社内のイントラネットなどを活用して適切な教育を行います。

 

9、人権における重点項目

 ワタミグループは、以下の人権課題の取り組みが、人権遵守における重点テーマと位置づけております。

 事業活動に大きな影響を持つ以下の取り組みから推進します。

・労働環境の改善     ・ハラスメントの防止       ・救済へアクセスする権利の確保

・ダイバーシティの推進  ・サプライチェーン上の人権尊重

 

 2023年度の取り組みとしましては重点項目で掲げているサプライチェーン上の人権尊重の取り組みをスタートしております。

 「ビジネスと人権に関する指導原則」では、自社内部で発生しうる人権に関するリスクのみならず、サプライチェーンで発生しているリスクに対しても負の影響を防止又は軽減するように努めることが求められております。

 そこで、ワタミグループでは、社会的責任の国際規格である「ISO26000」に基づき専門家のアドバイスを受け、ワタミサプライヤーガイドラインを策定、当ガイドラインのサプライヤー様への周知を図り、アンケート又は署名にて賛同いただけるように努めるとともに主要な御取引先様との人権活動に関する意見交換やフィードバックを行うなど、共同して取り組んでまいります。これらの取り組みにつきましては、その進捗を公開し、情報を更新してまいります。

 

(従業員の幸せに関する7つの項目)

 ワタミグループは、理念を共有し、従業員一人ひとりがそれぞれの夢や目標を実現していく組織を目指すことが、会社の成長につながると考えております。グループ共通で「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」を合言葉に、従業員の幸せ日本一の職場づくりに努めております。従業員の幸せ日本一を目指す上で、会社と一人ひとりの現状と未来を見据えた仕組みを導入しております。

 「従業員の幸せに関する7つの項目」を人材戦略の柱とし、ワタミグループの理念に向けた人事施策を策定しております。

 

・教育と能力開発

 ワタミグループでは、教育及び能力開発として従業員それぞれが、事業戦略に沿った能力を活かすことができるよう実践型の「スキル教育」をはじめ、「理念教育」「階層別教育」「選抜教育」「自己啓発支援」を行って人材の育成を行い、従業員の能力開発や技術取得の機会を設け、人材の育成を行っております。特に、従業員一人ひとりが夢・目標を持ち主人公として自身の思いを形にしていくためにはワタミグループの理念と従業員自身の思いの重なりを確認することが重要であると考えており、理念浸透(理念集の活用、夢手帳の考え方、ワタミモデルの理解)に向けて様々な研修を実施しております。

 また、自発的に成長できるようgrow(e-ラーニング)の導入や、経営者のためのカレッジ等、従業員のキャリアアップの可能性を広げております。

 

・夢達成への支援

 ワタミグループでは、自身の夢や目標の達成に向けて、自ら成長・学ぼうとする従業員には、ビジネススクールや独立希望社員向けのDFC研修など自律的なキャリア形成に向けての積極的な支援を行っております。

 

・ビジネススクール

 ワタミグループでは、「SDGs日本一」を経営戦略としている今後のワタミグループが100年企業として永続的に発展していくために、若手社員の次世代リーダー育成を目的とした「ワタミビジネススクール」を2015年に開校し、2021年より渡邉将也取締役を講師として1年間の講義を行っております。今後も継続してワタミの理念を深く理解し、かつ経営力に長けたリーダーを育成してまいります。

 

・幹部理念研修

 ワタミグループでは、代表取締役会長兼社長CEO渡邉美樹が年に2回、課長以上の役職者を対象に会社の現状や思いを共有します。ミッション、ビジョン、戦略などを伝えていくことで、より強い会社をつくることを目的としております。

 研修会の後半には各事業で分科会を行います。それぞれが予算達成に向けて、業務計画の共有と決意を話し合い、自部署の部下へ共有します。また、その中で役割を明確にし、今日からどのように行動していくかを話し合います。

 

・夢を語る会

 ワタミグループでは、2021年3月より、副社長清水邦晃が全国の社員約1,000名(店長職以下)を対象に、新型コロナウイルスの影響などで業績が厳しい中頑張ってきた社員を労い、そして現場の社員一人ひとりの声を直接聞く機会としてスタートしました。会の中では他事業や他部署で働く社員同士の交流や会社への提言などをテーマにディスカッションなども行っております。

 

(e)ダイバーシティの推進

・多様性の確保についての考え方

 ワタミグループは、「SDGs日本一を実現し地球上で一番たくさんの”ありがとう”を集めます」という形でSDGs宣言をさせて頂いております。具体的にはワタミサスティナブル方針として、外食企業、宅食企業、原料調達から消費までのサプライチェーンを構成する事業、農業、エネルギー事業において、経済的・社会的・環境的ニーズの充足、従業員の幸せ、地域貢献などの持続可能な企業活動を通じて、SDGsを達成することを目指しております。

 ワタミモデル(再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業モデル)をより深化させていくことがSDGs宣言の達成に繋がると考えており、宣言の達成に向け、幅広い各方面の知識・経験を結集させることが不可欠です。

 ワタミグループは、異なる経験・技能・属性(ジェンダーや国籍等)を反映した多様な視点や価値観が存在することが、持続的な成長を確保するうえでの強みとなり、SDGs宣言の実現に資するものと考え、人材の多様性の確保を推進いたします。

 

・多様性確保の状況

 ワタミグループは、タスクフォースチームを組織し多様性の確保に向けた取り組みを実施しております。

 

(1)女性活躍推進の取り組み

 ワタミグループは、女性活躍推進への取り組みに関する方針を具体化するため、経営的視点を伸長させるための教育や、女性がライフイベントを乗り越え働き続けていける制度の充実などに取り組んでおります。

 女性が将来にわたり活躍し続けるためには、結婚や出産などに合わせた人事施策が必要です。残業時間の削減、有給休暇の取得促進、インターバル制度や短時間勤務制度の導入などの取り組みを積極的に行い、女性が長く働くことができる環境を整え離職率の低減を図ってまいります。

取り組み

実績(2024年3月末日時点)

2023年度採用者における女性の採用割合

正社員33.0%

パートタイマー57.2%

2023年度管理職の男女比率

女性19.1%(58名)

男性80.9%(246名)

(注)提出会社の状況であります。

 

(2)中途採用者の管理職への登用

 ワタミグループは、様々なキャリアバックグラウンドを持つ人材の管理職への登用を進めております。

 なお、企業価値向上に資する適切な人材を性別や国籍、過去の経験や経歴を限定せずに登用するという方針に鑑みて、女性、外国人、中途採用者の採用に関して、自主的かつ測定可能な目標について定めておりませんが、更なる多様性の確保に向け現状よりの増加に努めてまいります。

 

・多様性の確保に向けた社内環境整備方針

 ワタミグループは、タスクフォースチームを組織し、多様性の確保に向けた取り組みを実施しており、従業員が出産・育児・介護などに携わりながら職場で継続的に能力が発揮できるよう、出産・育児・介護に関する支援・休職など各種制度、時間短縮勤務や深夜就労・残業の制限などを導入しております。また、健康診断受診率も2020年度には100%を達成し、健康に留意する必要がある従業員には運動プログラムや食事の在り方を提案するなど、健康の維持・管理の支援をしてまいります。

取り組み

実績(2024年3月末日時点)

育児休業取得率

女性100.0%/男性23.1%

(注)提出会社の状況であります。

 

・障がい者雇用の推進

 ワタミグループでは、障がいの有無を超え、ともに働く仲間として学び合い、ともに成長することを目標に、障がい者の雇用に取り組んでおります。障がい者の方に、働く場を提供するだけでなく、ワタミグループの一員として社会に貢献し、やりがいをもって仕事に取り組める環境をつくることが、最も大切だと考えております。現在、ワタミの外食店舗での清掃や仕込み、宅食営業所での事務補助、「ワタミ手づくり厨房」での製造・荷受け・事務補助などの仕事に従事しております。

取り組み

実績(2024年3月末日時点)

障がい者雇用率(法定雇用率2.3%)

2.7%

(注)提出会社の状況であります。

 

・シニア活躍推進

 ワタミグループでは、外食、宅食、食品工場などで60歳以上の方々が多数活躍しております。「高齢者が健康に働ける社会」の実現に向けて、これまでの経験や知識を活用していきいきと働く環境を提供してまいります。

取り組み

実績(2024年3月末日時点)

60歳以上の雇用者数

816名

(注)提出会社の状況であります。

 

(f)労働環境の改善に向けた社内環境整備に関する方針

・健康経営

 ワタミグループは、労働環境改善を経営の最重要課題に位置付け、2016年より外部有識者を交えた「コンプライアンス委員会」と「業務改善委員会」を設置し、コンプライアンス順守のモニタリングとともに労働環境改善の取り組みを進めてまいりました。2019年からは、取締役と人材開発本部、事業教育担当者が参加する「従業員幸せ会議」を毎月開催しております。2023年3月には、経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人(大規模法人部門)2023」に認定されました。さらに「健康経営優良法人ホワイト500」の認定を目指します。

 

・新入社員へのサポート

 ワタミグループでは、入社後、職場の困りごとを上司以外の社員にも気軽に相談できるよう、本部の人材開発本部・教育部の先輩社員が新入社員をサポートできる体制として、メンター制度を導入しております。毎月、労働時間の確認や上司とのコミュニケーションについてなど新入社員が抱えている悩みや不安をヒアリングしてフォローアップを行っております。

 

・業務の効率化への取り組み

 ワタミグループでは、外食店舗の営業がより効率的にできる取り組みとして、テーブル端末(商品注文システム)の導入、主力業態を中心にマニュアルの動画、従業員一人ひとりの勤務時間と作業割り当てをするための「ワークスケジュールシステム」の全店への導入など、事務作業や教育の面でのシステム化を推進しております。また、宅食事業では2022年度からまごころスタッフの会計業務などを手作業からスマートフォンで実施できるようにIT化を強化しております。

 

・勤務インターバル制度の導入

 ワタミグループでは、従業員の健康を守り、生活と仕事のバランスを保ちながら働き続けられるよう、2019年1月1日より、勤務間インターバル制度を導入しております。

制度の開始時期

2019年1月1日

インターバル期間

8時間

対象範囲

全従業員(パート・アルバイト含む)

 

・適正な労働時間管理

 ワタミグループでは、人事部門にて日々勤務時間数を確認、配信することで労働時間が長くなりそうな従業員の上長に対して注意喚起をすることで長時間労働が発生することを未然に防げるように努めております。繁忙期には、本部の人員も交えて営業態勢を整えるなど、全社一丸となって運営と時間管理に取り組んでおります。

 

・ハラスメント研修の実施

 ワタミグループでは、管理職に対して、毎年ハラスメント研修を実施しております。また、人事昇格要件にハラスメントの知識習得を必須とすることで社内の啓発を図っております。

 

・従業員アンケートと「夢を語る会」の実施

 ワタミグループでは、一人ひとりの社員に寄り添い、仕事を通じて「人としての成長」を実感できるフィールドを常に提供し続けるため、2008年より従業員アンケートを年に2回実施しております。また、2022年3月から副社長が全社員と対話する「夢を語る会」を開催し、社員一人ひとりに寄り添い、社員の声に耳を傾け、風通しの良い職場環境の改善に努めております。

 

・メンタルサポートダイヤルの設置

 ワタミグループでは、心身の不調が原因となる遅刻や早退、就労が困難な欠勤、休職など、業務自体が行えないなど状態になる前に把握し、社員一人ひとりの仕事の生産性を高められるよう努めております。例えば、健康診断受診推進に関しては、受診率100%を継続するとともに、健康の維持管理の支援を行っております。また、社員本人だけではなく配偶者及びいずれかの被扶養者が利用できる「メンタルヘルス相談窓口(ワタミグループサポートダイヤル)では、希望に応じて、メンタル不調に関する電話でのカウンセリングやWEB相談、面談によるカウンセリングを受けることができます。今後も社員の健康維持に向けた取り組みを強化してまいります。

 

・「ワタミヘルプライン」の設置

 ワタミグループは、グループ内に存在し得る問題を広く受け付け、積極的に問題の解決に務めることができるよう、グループ全従業員(パート・アルバイトメンバーを含む)及びお取引先業者様に向けた「ワタミヘルプライン」を設置しております。受付窓口は、メールにて社内独立組織である「ワタミヘルプライン事務局」に直接連絡する窓口、そして、電話にて外部委託先である「三好総合法律事務所様」経由で連絡する窓口の計2つを設けております。また、海外においても、メール相談窓口を設置しております。これにより、グループ内に存在する問題の未然防止・早期発見の体制をさらに強化するとともに、引き続き制度の透明性・利便性の向上、通報者の保護の徹底に努めてまいります。

 

・「代表取締役会長兼社長CEOへの直通ダイヤル」を設置

 ワタミグループでは、2022年9月に代表取締役会長兼社長CEOへの直通ダイヤルを開設しました。全従業員が直接意見を伝えることができるようになり、将来に向けてよりよい環境づくりの向上に努めてまいります。

 

④指標及び目標

(a)気候関連リスク・機会の管理に用いる指標

 ワタミグループは、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3温室効果ガス排出量を定め、その実現のため、有機栽培自社農場面積、事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率、循環型社会を目指した容器回収率の指標を定めております。

 

(b)温室効果ガス排出量 Scope1・2・3

 ワタミグループ(一部連結子会社を除く)は、国内外食事業をはじめ、海外事業、お弁当宅配の宅食事業、外食や宅食事業を支える仕入・物流・食品工場部門、農業、電力小売事業などの事業を行っておりますが、さまざまな資源やエネルギーを使用することで、環境に影響を与えております。その環境負荷は、直接管理するものだけでなく、原材料の調達から商品の製造、物流、販売、廃棄、リサイクルに至るまでのサプライチェーンの各段階に及びます。各段階における環境影響を把握し、低減又は相殺する方法を検討していくための基礎となるのが、温室効果ガスのサプライチェーン排出量算定です。

 2022年度は、新型コロナウイルス感染症による規制が徐々に緩和され、業績が大きく改善しました。それに伴い、グループ全体の温室効果ガス排出量は増加しました。中でもスコープ3のカテゴリ1は売上増による仕入れ増の影響もあり、大幅な増加となりました。今後、さらに業績が伸びる見込みであることからサプライチェーンとも連携して脱炭素対策を講じる必要があり、現在、情報収集等の取り組みを始めております。一方、スコープ1、2は中国のゼロコロナ政策を受け、海外外食の直営店舗が撤退したことで減少しておりますが、国内外食、宅食、生産工場ともに売上増、稼働率増に伴い、増加しているため、省エネルギー機器やLEDの導入を行うなどしてグループ全体で排出量を抑制するように努めます。(算定から除いた会社:WATAMI USA GUAM、㈲当麻グリーンライフ、ワタミカミチク㈱)

 ワタミグループでは、環境負荷低減の取り組みを正しく評価・検証するために「2019年度実績」から毎年、サプライチェーンの上下流(原料調達から製造、物流、販売、廃棄等)に渡る事業活動に伴うGHG排出量の第三者検証を実施しております。国際的なGHG算定・報告基準「GHGプロトコル」に準拠し、「Scope1、2」についてソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社による第三者検証を受け、保証書を取得しました。第三者検証を受けることで、透明性のある情報開示を行い、社内外から信頼性の向上につなげてまいります。

 

・ワタミグループ Scope1・2・3温室効果ガス排出量実績

 

温室効果ガス排出量実績 排出量(t-CO2 e)

 

2020年度

2021年度

2022年度

Scope1・2・3排出量 合計

237,524

212,619

235,419

内訳

 

 

 

Scope1排出量

7,875

7,246

6,815

Scope2排出量

26,283

21,585

19,605

Scope3排出量 合計

203,366

183,788

209,000

 

(c)気候関連リスク・機会の管理に用いる目標及び実績

 ワタミグループは、気候関連リスク・機会を管理するための指標として、Scope1・2・3温室効果ガス排出量を定め、その実現のため、事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率(RE100 2030年までに50% 2040年までに100%)及び循環型社会を目指し、2030年までに食品ロスゼロ、リサイクル100%の指標を定めております。

 これらの長期目標達成のため、当社グループは、1998年度から、再生可能エネルギーを供給するためワタミエナジー㈱を設立し、1999年度にはワタミ環境宣言、2018年度にはSDGs宣言、2018年に「RE100」(※)に加盟、2019年度にワタミサスティナブル方針を宣言しました。今後も、カーボンニュートラルの実現に向け、GHG削減のため、有機農業、容器リサイクル、バイオマス発電、再生可能エネルギーの調達促進に取り組みます。

※ 事業活動で使用する電力を、2050年までに100再生可能エネルギーにすることを目標とする国際的イニシアチブ。

 

・ワタミグループの気候関連リスク・機会の管理に用いる目標

指標

目標年度

目標内容

温室効果ガス排出量

2050年

「パリ協定」で掲げられた2050年までに地球温暖化零を目標に段階的かつ具体的な対策を講じてまいります。

事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率

2040年

事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率100%

2030年

事業活動で使用する電力に占める再生可能エネルギー比率50%

容器回収率

2030年

容器回収率80%

 

(d)人材育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績

 上記「③戦略」において記載した、人材育成及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する実績は次のとおりです。なお、当該指標に関する具体的な目標値については今後更なる現状の要因分析を進め、戦略の実現に向けた目標値を取りまとめてまいります。

指標

実績(2024年3月末日時点)

男性の育児休業取得率

23.1%

年次有給休暇取得率

52.2%

障がい者雇用率

 2.7%

管理職に占める女性の割合

19.1%

(注)指標、実績は提出会社の状況であります。

 

 

(5)今後の取り組み

 昨今、天然資源や製品が一度きりの使い捨ての形で使用されることが前提となる、従来型の「リニア・エコノミー」は、大量採取による天然資源の枯渇、温室効果ガス排出による地球温暖化、大量の廃棄物による海洋汚染等、深刻な気候変動をもたらしております。

 ワタミグループは、飲食業を中核とする企業グループである強みを活かし、これらの気候変動に伴うリスクと機会に対応していくことが重要であると考え、

・再生可能エネルギーを利用した循環型6次産業モデルの推進

・気候変動に伴う物理リスクへの対応策の強化による強靭なサプライチェーンの実現

・消費者の消費行動の変化に対応した低炭素製品・サービスへの積極的対応

等に取り組んでまいります。

 今後も、当社グループは、取締役会による監督体制のもと、環境マネジメントにおけるガバナンスの強化を進め、中長期の目標達成に向けた実行計画の立案等、全社的な取り組みを進めてまいります。

 

自然資本への対応

 日本政府は、2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を受けて、2023年3月にそれに対応する「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定しました。これは生物多様性・自然資本を守り活用するための戦略であり、2030年のネイチャーポジティブ実現に向けた目標として定められました。ワタミグループは食品関連事業者として持続可能な6次産業であるワタミモデル(1次産業:農業、2次産業:食品製造業、3次産業:外食事業、宅食事業)を通し、自然資本と密接な関係にあります。そのため、自然との接点や依存関係、影響、リスクや機会などの自然関連課題を評価し、保全・回復に向けて取り組む必要があると認識しております。初年度は全事業部が参加し、それぞれが自然に関わる活動を特定しました。そのうち特に影響が大きいと考えられる農業事業(酪農含む)、外食事業、宅食事業、仕入事業及び管理本部については、各事業で重要と考えられる自然関連の依存関係と影響を評価し、それをもとにヒートマップを作成しました。

 評価の方法はTNFDが推奨する「LEAPアプローチ」に沿って行うこととし今回はLEAPの「Locate段階(L1及びL2)」に取り組みました。

 事業部門はSDGsの実践を目指し推進する「ワタミモデル」による分類としております。

 ヒートマップから自然への依存度・影響度の高い事業の一つとしては農業事業を特定しました。

 ワタミグループの農業部門は千葉県、群馬県、長野県、北海道で事業展開しており、直接操業、バリューチェーン上流における事業活動では、土地の利用及び転換、GHG排出、水使用によって自然に影響を及ぼす可能性が高い一方で、農業生産における地下水利用、有機農業を実践しているため、土壌への負荷は低減されておりますが、土壌に対する依存度が高いことが分かりました。また、有機農業を実践することにより地下水汚染を防ぎ、地中の生物の保全を通して、土壌の健全化が図られる他、化学肥料由来のGHG排出抑制といったプラスの影響も確認できました。

 次回のステップとして、農業事業のリスク・機会の特定、またその他の事業部についてもさらなる分析、評価を進め重視すべき自然資本、生態系サービスの特定に努め、維持・保全に向けて取り組みます。